JP2009215482A - 金属加工油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】極微量加工油供給方式に適用した場合に、切削や研削等の加工性能に優れる金属加工油組成物を提供する。
【解決手段】脂肪酸エステルと、α−オレフィンとを配合してなる金属加工油組成物であって、前記脂肪酸エステルは、エステル結合を分子内に2〜6個有し、前記α−オレフィンの炭素数は6〜18であり、組成物全量基準で、前記α−オレフィンを0.5〜20質量%配合したことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属加工油組成物に関し、さらに詳しくは、各種金属の切削、研削、圧延、絞り、および鍛造等の際にミスト状に噴霧して用いられる金属加工油組成物に関する。
金属加工油としては、鉱油に種々の添加剤を配合した不水溶性タイプ、あるいは、鉱油や合成油に種々の添加剤を配合したものを水で希釈して使用する水溶性タイプが広く用いられている。
一方、近年になって、環境問題により廃油量の低減、消費電力の低減の要求があり、これに対して、油剤をミスト状にして金属加工を行う方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、通常の十万分の一から百万分の一程度といった極微量の金属加工油を圧縮流体(例えば圧縮空気)と共に加工部位に供給しながら切削・研削を行う方法である。このような極微量加工油供給方式によれば、圧縮空気による冷却効果が得られ、また極微量の金属加工油を用いるために廃棄物量を非常に低減することができる。従って、廃棄物の大量排出に伴う環境への負荷も低減することができる。
特開2001−354983号公報
前記したような極微量加工油供給方式を利用する切削・研削加工に求められる性能としては、金属加工油自体の使用量が少ないことや冷却機能だけではない。すなわち、金属加工油である以上、切削時や研削時における加工性が良好であることが本来的に求められる。また、極微量の金属加工油を用いた場合であっても良好な表面を持った加工物が得られることが必要であり、工具摩耗が少ないことや工具寿命が長いことも求められる。
しかしながら、特許文献1等に開示された従来の金属加工油では、極微量加工油供給方式に用いた場合に、加工性能では不十分な面があった。
そこで本発明は、極微量加工油供給方式に適用した場合に、切削や研削等の加工性能に優れる金属加工油組成物を提供することを目的とする。
前記した課題を解決すべく、本発明は、以下のような極微量給油式金属加工油組成物を提供するものである。
(1)脂肪酸エステルと、α−オレフィンとを配合してなる金属加工油組成物であって、前記脂肪酸エステルは、エステル結合を分子内に2〜6個有し、前記α−オレフィンの炭素数は6〜18であり、組成物全量基準で、前記α−オレフィンを0.5〜20質量%配合したことを特徴とする金属加工油組成物。
(2)上記(1)に記載の金属加工油組成物において、前記脂肪酸エステルが、脂肪酸と2〜6価の多価アルコールとのエステルであることを特徴とする金属加工油組成物。
(3)上記(1)または(2)に記載の金属加工油組成物において、前記脂肪酸の炭素数が6〜24であることを特徴とする金属加工油組成物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の金属加工油組成物において、該金属加工油組成物が被加工部位へミスト状で供給されることを特徴とする金属加工油組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の金属加工油組成物がアルミニウム加工用であることを特徴とする金属加工油組成物。
本発明の金属加工油組成物によれば、極微量加工油供給方式に適用した場合に、切削や研削等の加工性能が高い。それ故、長期間使用しても、工作機械、ワークあるいは工具等に摩耗を発生させるおそれも少ない。
以下に、本発明の金属加工油組成物(以下、「本組成物」ともいう)について、実施形態を詳細に説明する。
本組成物は、特定の脂肪酸エステルに、さらに特定のα−オレフィンを配合してなるものである。以下、これらの各化合物について具体的に説明する。
〔脂肪酸エステル〕
本組成物に用いられる脂肪酸エステルは、基油として用いられ、分子内にエステル結合を2〜6個、好ましくは2〜4個有するものである。このような脂肪酸エステルとしては、いわゆるポリオールエステルが好適である。ポリオールエステルを構成するアルコールとしては、水酸基を2〜6個有する多価アルコールが好ましく用いられる。
2価アルコール(ジオール)としては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2ーメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。また、3価以上のアルコールとしては、具体的には例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜3量体)、1,3,5ーペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオースなどが挙げられる。これらの中でも、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールが好ましい。
また、本組成物に用いられるポリオールエステルは、完全エステルでも不完全エステルでもよいが、ミスト状で供給する場合の加工性の観点より、完全エステルが好ましい。
完全エステルとしては、1種の脂肪酸と1種の多価アルコールとの完全エステル 、2種以上の脂肪酸と1種の多価アルコールとの完全エステル 、1種の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとの完全エステル 、2種以上の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとの完全エステル のいずれであってもよい。
本組成物に用いられるポリオールエステルとしては、より安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールの完全エステル がより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトールの完全エステル がさらにより好ましい。
特に、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールの完全エステルが加工性および安定性の点で最も好ましい。
上述したポリオールエステルは、単一の構造のポリオールエステルの1種からなるものであっても良く、構造の異なる2種以上のポリオールエステルの混合物であっても良い。
本組成物における脂肪酸エステルは、基油として用いる観点より、その配合量は、組成物全量基準で50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
〔α−オレフィン〕
本組成物には、炭素数6〜18、好ましくは炭素数8〜16、より好ましくは炭素数10〜16、さらに好ましくは炭素数12〜16のα−オレフィンが配合される。このような特定のα−オレフィンを前記した特定の脂肪酸エステルと混合して使用することにより加工性を飛躍的に高めることができる。α−オレフィンとしては直鎖状のものが潤滑性の観点より好ましい。
炭素数が5以下のα−オレフィンを用いると、例えばミスト給油過程において成分が揮発してしまい、加工物の加工点への到達が困難となる。一方、炭素数が19以上のα−オレフィンは、組成物中で固体状となるおそれがあり、安定性の点で使用が困難である。
α−オレフィンの具体例としては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンあるいはこれらの混合物などを挙げることができる。これらのα−オレフィン は、様々な製法によって得たものを用いることができるが、例えばエチレンを通常の手段で重合させて得たエチレンオリゴマーを使用することができる。
α−オレフィンの配合量は、組成物全量基準で、0.5〜20質量%であり、好ましくは、1〜15質量%であり、より好ましくは2〜10質量%である。α−オレフィンの配合量が0.5質量%未満であっても、逆に配合量が20質量%を超えても、極微量加工油供給方式を用いた場合の加工性が低下する。
〔他の添加剤〕
本発明の金属加工油組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することができる。
これらの添加剤としては、酸化防止剤、油性剤、極圧剤、防錆剤、金属不活性化剤、および消泡剤などを挙げることができる.これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤としては、従来の炭化水素系合成潤滑油に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤を使用することができる。これらの酸化防止剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどのモノフェノール系化合物、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などのジフェノール系化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、五硫化リンとピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤の配合量は、組成物全量基準で、0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.03〜5質量%である。
油性剤としては、脂肪族アルコール、脂肪酸や脂肪酸金属塩などの脂肪酸化合物、ポリオールエステル、ソルビタンエステル、グリセライドなどのエステル化合物、脂肪族アミンなどのアミン化合物などを挙げることができる。油性剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.1〜30質量%程度であり、好ましくは0.5〜10質量%である。
極圧剤としては、硫黄系極圧剤、リン系極圧剤、硫黄および金属を含む極圧剤、リンおよび金属を含む極圧剤が挙げられる。これらの極圧剤は一種を単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。極圧剤としては、分子中に硫黄原子および/またはリン原子を含むものが極圧性の観点より好ましい。分子中に硫黄を含む極圧剤としては、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チアジアゾール化合物、アルキルチオカルバモイル化合物、トリアジン化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物などを挙げることができる。
これら極圧剤の配合量は、配合効果および経済性の点から、組成物全量基準で、0.01〜30質量%程度であり、より好ましくは0.01〜10質量%である。
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステルなどを挙げることができる。これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.05〜5質量%である。
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。これら金属不活性化剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.01〜1質量%である。
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、ポリアクリレートなどを挙げることができる。これらの消泡剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.0005〜0.01質量%程度である。
本発明の金属加工油組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で他の基油を併用することができる。その他の基油としては、例えば、鉱油や合成油の中から適宜選ぶことができる。
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油またはナフテン系原油を常圧蒸留するか、あるいは常圧蒸留残渣油を減圧蒸留して得られる留出油、これらの留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油、具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油などが挙げられる。
合成油としては、例えば、低分子量ポリブテン、低分子量ポリプロピレン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどのアルキルアロマ系化合物、シリコーン油、フッ素系オイル(例えば、フルオロカーボン、パーフルオロポリエーテルなど)などが挙げられる。ただし、加水分解性の観点より、エステル系化合物は好ましくない。
これらの基油は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の金属加工油組成物は、特定の脂肪酸エステルを基油としており、特定のα−オレフィンを有しているため、極微量でも切削・研削等の加工時の潤滑性に優れている。本組成物を用いると、加工精度が高く、加工面の表面粗さを小さくできる。本発明の金属加工油組成物は、特にアルミニウム加工用として優れている。
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
〔実施例1〜5、比較例1〜11〕
下記に示す基油と添加剤を配合し、実施例および比較例の金属加工用組成物(試料油)を調製した。配合組成を表1ないし表3に示す。なお、基油と添加剤は、あくまで便宜的に区分したものである。
用いた基油は以下の通りである。
(1)トリメチロールプロパントリn−オクチルエステル
(2)ペンタエリスリトールテトラオレエート
(3)2−エチルヘキシルパルミテート
(4)イソブチルオレエート
(5)鉱物油(パラフィン系、60N)
用いた添加剤は以下の通りである。
(1)α−オレフィン(n−C14、n−C16)
実施例1、2:n−C16
実施例3〜5:n−C14
(2)不活性ポリサルファイド(Elf Atochem社製 TPS20)
(3)リン酸エステル(大日本インキ化学工業製 TCP)
(4)硫化油脂(大日本インキ化学工業製 GS−110)
(5)大豆白絞油(ニッコー製油製 大豆白絞油)リン酸エステル※2
前記した各試料油につき、被削材としてアルミニウムを用いてMQL(Minimum Quantity Lubrication )切削加工を行った。切削条件は以下の通りである。そして、切削時の切削抵抗(主分力)を測定して加工性を評価した。
加工機:マザックNC旋盤QT-15型
被削材:ADC12 φ25mm
工具:超硬KW−1 80°ひし形
切削速度:70m/min
送り:0.05mm/rev
切込み量:0.5mm
給油量:10ml/h
給油方式:外がけ式
Figure 2009215482
Figure 2009215482
Figure 2009215482
〔評価結果〕
実施例1〜5からわかるように、本発明の各試料油は、所定の脂肪酸エステルと所定のα−オレフィンを含み、しかもα−オレフィンの含有量が所定の範囲内であるので、いずれも加工性に関して非常に優れている。
これに対して、各比較例の試料油は、前述した所定の脂肪酸エステルと所定のα−オレフィンの少なくともいずれかを含まないか、あるいは、α−オレフィンの含有量が所定の範囲内ではないので、いずれも加工性に劣っている。
本発明の金属加工用組成物は、アルミニウム合金等の金属加工に好適に利用できる。

Claims (5)

  1. 脂肪酸エステルと、α−オレフィンとを配合してなる金属加工油組成物であって、
    前記脂肪酸エステルは、エステル結合を分子内に2〜6個有し、
    前記α−オレフィンの炭素数は6〜18であり、
    組成物全量基準で、前記α−オレフィンを0.5〜20質量%配合したことを特徴とする金属加工油組成物。
  2. 請求項1に記載の金属加工油組成物において、
    前記脂肪酸エステルが、脂肪酸と2〜6価の多価アルコールとのエステルである
    ことを特徴とする金属加工油組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載の金属加工油組成物において、
    前記脂肪酸の炭素数が6〜24である
    ことを特徴とする金属加工油組成物。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属加工油組成物において、
    該金属加工油組成物が被加工部位へミスト状で供給される
    ことを特徴とする金属加工油組成物。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の金属加工油組成物がアルミニウム加工用であることを特徴とする金属加工油組成物。
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