以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。まず、図1を用いて、油圧回路中の戻り側配管7の端部に繋がるとともに、オイルタンク6内に装着されて作動油(リターンオイル)の濾過を行うオイルフィルタ(リターンフィルタ)1について説明する。
オイルフィルタ1は、図1に示すように、内部にエレメント配設空間S1を有するフィルタケース2と、エレメント配設空間S1内に着脱自在に取り付けられるフィルタエレメント3と、このフィルタエレメント3の上端部でエレメント配設空間S1の開口を覆うようにして着脱自在に取り付けられるエレメントカバー4とから構成される。
フィルタケース2は、オイルタンク6の上面部6aに形成されるタンク開口部の内周部に固設されたタンクフランジ10と、タンクフランジ10の上面側に上下方向の中心軸の軸心を同一にして着脱自在に取り付けられるフランジカバー18と、タンクフランジ10の下面側に上下方向の中心軸の軸心を同一にして固設されたケース本体20と、このケース本体20の下端面を覆うように固設された底板21とから構成されている。これらタンクフランジ10、フランジカバー18、ケース本体20および底板21はアルミ合金等の非鉄金属や鉄等の金属材料によって形成される。
また、フィルタケース2は、内部にフィルタエレメント3を配設可能なエレメント配設空間S1を有しており、ケース本体20の側面のケース流入孔20aから中空パイプ状の戻り側配管7が連通されることにより、この戻り側配管7を通過するリターンオイルをエレメント配設空間S1内に流入させることができる。底板21の中心部にはケース流出孔21aが形成され、このケース流出孔21aから中空パイプ状の出口配管8が上方(エレメント配設空間S1内)に延びるようにして嵌合接合されている。
タンクフランジ10は、中空円筒状に形成され、図2に示すように、上面部にはフランジカバー18を取り付けるための固定用ボルト11aと螺合可能なネジ孔11bが円周方向に等間隔で形成され、中心部にはフィルタエレメント3を挿通可能なエレメント挿入孔12が形成されている。このエレメント挿入孔12を形成するタンクフランジ10の内周部は、小径部12aと、中径部12bと、大径部12cとを有する段付形状に形成されている。中径部12bおよび大径部12cを繋ぐ端面部には、第1フック部材15がフック止めボルト16によって円周方向に等間隔で2個取り付けられている。この第1フック部材15は、図3に示すように、フック止めボルト16を挿通可能な貫通孔15cを有するフック平板部15aと、フック平板部15aから下方に延びたフック突起部15bとから構成されており、中径部12bおよび大径部12cを繋ぐ端面部溝内にフック止めボルト16によりフック平板部15aが取り付けられると、フック突起部15bが中径部12bの内方側に突出した状態で位置することとなる。また、大径部12cにはOリング14が配設されている。
フランジカバー18は、図1に示すように、下面側にエレメントカバー4の一部を収容する円形溝を有した円板状に形成されており、このフランジカバー18の外径はタンクフランジ10の外径と同じ大きさに設定されている。フランジカバー18は、円周方向に等間隔で形成された複数の貫通孔11cを有しており、固定用ボルト11aをこの貫通孔11cに挿通させてタンクフランジ10に形成されたネジ孔11bに螺合させることにより、フランジカバー18がオイルタンク6の開口を閉じるようにして、タンクフランジ10に脱着可能に取り付けられる。また、タンクフランジ10に配設されたOリング14をこのフランジカバー18が押しつぶすように押さえ込んで封止するため、外部からゴミや埃などがフィルタケース2内に侵入するのを防止している。
次に、リターンオイルを濾過するためにフィルタケース2のエレメント配設空間S1内に着脱自在に配設されるフィルタエレメント3について説明する。フィルタエレメント3は、図4(B)に示すように、プロテクタ30と、このプロテクタ30の内部に配設されるインナーチューブ41と、このインナーチューブ41の外周に配設される濾材40と、プロテクタ30の上端面に固着された上エンドプレート45と、プロテクタ30の下端面に固着された下エンドプレート49と、インナーチューブ41の内部に配設されたホルダ55とから構成される。プロテクタ30、インナーチューブ41、上エンドプレート45および下エンドプレート49は、プラスチック等の可燃性の樹脂材料によって焼却可能に形成されている。
プロテクタ30は、図1に示すように、ケース本体20の内周面に対して所定の流入空間S2(エレメント配設空間S1の一部を構成する空間)が形成されるように、ケース本体20の内径よりも小さい外径で円筒状に形成されており、側壁部の上方側には、外側から内側へ向かって打ち抜き貫通させたプロテクタ流通孔31が上下一対として円周方向に等間隔で複数形成されている。また、プロテクタ30は、上述したように、樹脂により形成されているため外周面にロゴマーク等を浮き出し表示することができる。
濾材40は、プロテクタ30の内周面に対して所定の外周空間S3が形成されるように、プロテクタ30の内径よりも小さい外径で円筒状に形成され、且つ、内周面がインナーチューブ41の外周面に当接接触するように装着されている。なお、この濾材40は、板状の濾紙を所定の幅でプリーツ状(菊花状)に形成したり、濾紙、グラスファイバー、不織布等によって所定の厚さを有して形成されている。また、外周空間S3は、複数のプロテクタ流通孔31によって流入空間S2と連通されている。
インナーチューブ41は、濾材40の内周面に沿ってパンチングメタル等から円筒状に形成されており、内部にはホルダ55を配設可能な内部空間S4を有している。また、このインナーチューブ41は、その側面に濾材40によって濾過されたオイルを内部空間S4へ流通可能な多数のチューブ流通孔42を有している。このインナーチューブ41と濾材40とは、プロテクタ30の円筒軸方向両端にそれぞれ配設された上および下エンドプレート45,49で挟持されている。
上エンドプレート45は略中空円板状に形成されており、図4(A)に示すように、中央の内径部にはゴム等の弾性材料によって形成されたガスケット47が配設されている。このガスケット47の中央部には、後述するバルブリテーナ73の第4外側部75が嵌合可能なエレメント上部中心孔47aが形成されており、このエレメント上部中心孔47aに第4外側部75が挿入されると、ガスケット47の弾性力により第4外側部75は一定の保持力を受けて嵌合保持される。また、上エンドプレート45の下面部には、プロテクタ30、濾材40およびインナーチューブ41のそれぞれの上端部を嵌合可能な円筒状の溝を有しており、上面部からは上方に突起し、さらに円周方向に屈曲して延びた第2フック係止部46が形成されている。
下エンドプレート49には、インナーチューブ41の内部空間S4において上方に隆起した円筒状の配管支持部49aが形成されており、この配管支持部49aの上内側部には、ゴム等の弾性材料によって形成されたガスケット50が配設されている。このガスケット50の内側部には、出口配管8を挿脱可能なエレメント下部中心孔50aが形成されており、このエレメント下部中心孔50aに出口配管8が挿入されると、ガスケット50の弾性力により出口配管8に対して上下方向に摺動自在に、且つ、一定の保持力を有して出口配管8は嵌合保持される。また、このガスケット50は、後述する下部揺動ホルダ60のキャップ部60bの外周部とも嵌合可能となっている。
ホルダ55は、図1に示すように、インナーチューブ41の内部空間S4内に配設されており、上部固定ホルダ56と、コイルスプリング58と、下部揺動ホルダ60とから構成される。上部固定ホルダ56は、外周面がインナーチューブ41の内周面に溶接等により接合されて設けられている。この上部固定ホルダ56の中心部には、オイルの流通を可能にするため上部ホルダ通油孔56aが形成されており、この上部ホルダ通油孔56aを形成する下方へ突出して延びた下方外側部にはコイルスプリング58の内径が当接支持されている。また、この上部固定ホルダ56をインナーチューブ41の内周部に設けることにより、インナーチューブ41の強度を増すことができる。
コイルスプリング58は、下部揺動ホルダ60と上部固定ホルダ56との間で挟持されるようにして、一端が下部揺動ホルダ60に支持され、他端が上部固定ホルダ56に支持される。
下部揺動ホルダ60は、図4(B)の鎖線で示すように、コイルスプリング58の付勢力によりインナーチューブ41の内部空間S4内で上下に揺動自在であり、且つ、上方から出口配管8にフィン62を介して着脱自在となっている。この下部揺動ホルダ60は、図5(B)に示すように、インナーチューブ41の内径よりも若干小さな外径で円筒状に形成されたホルダ外筒部60aと、円筒受皿状のキャップ部60bと、周方向等間隔にホルダ外筒部60aの内周面とキャップ部60bの外周上端部とを繋ぐ板状のリブ60cと、キャップ部60bの下面に配設されたフィン62とから形成される。ホルダ外筒部60aは、インナーチューブ41内で下部揺動ホルダ60が上下に揺動したときに、このインナーチューブ41の内周に引っ掛からないように上下端の角部がR面取りされている。キャップ部60bの外周部はガスケット50のエレメント下部中心孔50aに挿入されて嵌合可能なように形成されている。リブ60cの上面中央には、平面視において円弧状の板体が上方に突出して設けられコイルスプリング58の内径を当接支持している。また、ホルダ外筒部60aの内周面とキャップ部60bとの外周面との間には、図5(A)に示すように、平面視において略扇状の下部ホルダ通油孔60dが周方向等間隔にそれぞれリブ60cに隔てられ形成されている。
フィン62は、図5(B)および(C)に示すように、下部揺動ホルダ60のキャップ部60bの下面側から周方向等間隔に下方に突出するように複数設けられている。この複数のフィン62の下方部には、出口配管8に着脱自在となるよう出口配管8の先端内径部と嵌合可能なフィン嵌合部62aがそれぞれ形成されている。また、フィン嵌合部62aの下方側はテーパ形状に形成されているため、出口配管8内に容易に挿入することができるようになっている。この複数のフィン62は周方向等間隔にそれぞれ隔てられ設けられているため、フィン62間にフィン通油口62bを有し、出口配管8に嵌合された状態であっても、内部空間S4内のオイルはフィン通油口62bを通って出口配管8内に流通することができる。
エレメントカバー4は、フィルタエレメント3の上エンドプレート45に着脱自在に取り付けられる。このエレメントカバー4は、図6(B)および図7に示すように、略円板状に形成されたハンドルフランジ70と、このハンドルフランジ70の中央上端にハンドル止めボルト77aによって取り付けられたハンドル77と、ハンドルフランジ70の下方部に設けられたバルブリテーナ73と、バルブリテーナ73の外側に突出するように形成された第2フック部76と、リリーフバルブ80とから構成される。
ハンドルフランジ70には、バルブリテーナ73と連結することによりリリーフオイルを流通させるためのリリーフ油路70aが流入空間S2から内部空間S4に向かって形成される。このハンドルフランジ70の外側部は、図6(A)および(B)に示すように、第1外側部71と第2外側部72とからなり、第1外側部71は、タンクフランジ10の中径部12bの内径よりも小さな外径からなり、周方向等間隔に円弧状の切欠部71aが6個形成されている。この切欠部71aに第1フック部材15のフック平板部15aが挿通するようにしてハンドルフランジ70をタンクフランジ10の内周部12に挿入して、ハンドルフランジ70がフック突起部15bに突き当たるまで水平方向に旋回させることにより、図1に示すように、ハンドルフランジ70の第1外側部71と第1フック部材15とが係合されるようになっている。
第2外側部72は、タンクフランジ10の小径部12aよりも若干小さな外径からなり、この第2外側部72にはOリング溝72aが形成されている。このOリング溝72aにOリング79が装着されることにより、流入空間S2内にあるオイルが、ハンドルフランジ70の外側部とタンクフランジ10の内周部との嵌合部から流出することはない。
バルブリテーナ73は、図7に示すように、第3外側部74と、第4外側部75と、上方部に雄ネジが形成された固定ネジ部78とからなり、ハンドルフランジ70のネジ孔部70bに固定ネジ部78を螺合させることによりハンドルフランジ70の下方部に取り付けられる。第3外側部74には、外側に延びた第2フック部76が一対設けられている。また、第4外側部75の下端には、図6(B)に示すように、リリーフバルブ80のバルブ80aの上面が当接されることによりリリーフ油路70aの一端が塞がれている。
一対の第2フック部76は、ハンドルフランジ70の第3外側部74から外側に延びたプレート部76aと、このプレート部76aの外側端から上方に屈曲した引掛部76bとからなり、上エンドプレート45の上端部に形成された一対の第2フック係止部46にそれぞれ引掛けるようにして係合可能なよう形成されている。
リリーフバルブ80は、円板状のバルブ80aと、ハンドルフランジ70の上部中央から下方へ向かって挿通された支持ボルト80bと、バルブ80aを上方に押し上げる所定の付勢力を有するバルブ用スプリング80cと、このバルブ用スプリング80cの下端部を受けるよう配設されたスプリング受け80dと、支持ボルト80bと螺合可能な受けナット80eとから構成される。バルブ80aは、バルブ用スプリング80cの付勢力によって常時バルブリテーナ73の第4外側部75の下端面に当接され、リリーフ油路70aとインナーチューブ41内の内部空間S4とが連通しないよう閉弁している。また、バルブ80aがバルブ用スプリング80cの付勢力に抗して開弁される(下方に押し下げられる)と、リリーフ油路70aとインナーチューブ41の内部空間S4とが連通することとなる。
このように構成されたオイルフィルタ1によって、リターンオイルの濾過を行う場合について説明する。先ず、フィルタエレメント3にエレメントカバー4を装着する手順について説明する。このエレメントカバー4のフィルタエレメント3への装着は、フィルタエレメント3の上方部において行われる。エレメントカバー4のハンドル77を掌で掴んで、図8に示すように、エレメントカバー4の下方に突出して設けられたリリーフバルブ80を、上エンドプレート45のエレメント上部中心孔47aによって開口されたフィルタエレメント3内へ上方から挿入していき、一対に設けられた第2フック部76を上エンドプレート45の一対の第2フック係止部46にそれぞれ引掛けるようにして係合させる。このようにフィルタエレメント3にエレメントカバー4を連結することによって、ハンドル77を掌で掴んでフィルタエレメント3の持ち運びが容易となり、このフィルタエレメント3をフィルタケース2まで持っていくことができる。
次に、フィルタエレメント3のフィルタケース2への装着は、図9に示すように、タンクフランジ10のエレメント挿入孔12から行われるため、先ず、固定用ボルト11aを外して、フランジカバー18がタンクフランジ10から取り外された状態にしておく。このフランジカバー18を取り外すと、タンクフランジ10のエレメント挿入孔12の開口が開放されることとなる。作業者は、ハンドル77を掴んでタンクフランジ10のエレメント挿入孔12からフィルタエレメント3をまっすぐにケース本体20のエレメント配設空間S1に挿入する。フィルタエレメント3を下方に挿入していき、このフィルタエレメント3のフィン62が底板21の中心部から上方に突出された出口配管8まで到達したら、フィン嵌合部62aと出口配管8とを嵌合させる。
さらに、フィルタエレメント3を下方に挿入していくと、図10に示すように、下部揺動ホルダ60のキャップ部60bとガスケット50との嵌合が外れるようガスケット50も下方に揺動されるとともに、下部揺動ホルダ60がコイルスプリング58の付勢力に抗して上部固定ホルダ56に対して近づくように揺動される。このとき、コイルスプリング58は下部揺動ホルダ60がまっすぐ上方に揺動するようガイドするため、下部揺動ホルダ60とインナーチューブ41とが擦れて磨耗するのを防止することができる。また、下部揺動ホルダ60のホルダ外筒部60aは円筒状に形成されているため、下部揺動ホルダ60がインナーチューブ41内で上下に回動されるのが規制される。
また、フィルタエレメント3の自重よりコイルスプリング58の付勢力が大きくなると、作業者はこの付勢力に抗して下方に押し込むようにフィルタエレメント3を挿入する必要がある。よって作業者がハンドル77を掴んで下方に押し込むような力を作用させると、第2フック部76が上エンドプレート45の第2フック係止部46との当接を離れて、第4外側部75がガスケット47のエレメント上部中心孔47aに挿入されていき、第3外側部74の下端面がガスケット47の上端面に当接されることにより、下方に押し込む力はこの当接部に作用されフィルタエレメント3を安定して挿入できる。一方、下エンドプレート49のガスケット50は、下部揺動ホルダ60との連結が外れてこのガスケット50の弾性力により一定の嵌合力をもって出口配管8の外周部に対して下方に摺動される。
ハンドルフランジ70がタンクフランジ10のエレメント挿入孔12へ到達する位置まできたら、第1フック部材15が第1外側部71の切欠部71aを通過するように位置合わせをして、ハンドルフランジ70をエレメント挿入孔12内に挿入していき、バルブリテーナ73がガスケット47内に嵌合されるようにする。このとき、フィルタエレメント3およびエレメントカバー4は、コイルスプリング58の付勢力を受けて上方に揺動するよう付勢されるが、ハンドルフランジ70が第1フック部材15と係合するよう平面視で時計周りに回動させることによって、第1外側部71が第1フック部材15のフック突起部15bに突き当てられるとともに、コイルスプリング58から上方に付勢された第1外側部71の上面部が第1フック部材15の下面部に当接保持されることとなる。これにより、フィルタエレメント3およびエレメントカバー4が上方に揺動するのが規制されるため、作業者がハンドル77から手を離しても、フィルタエレメント3およびエレメントカバー4はこの状態で保持される。
フィルタエレメント3が装着された後は固定用ボルト11aによりフランジカバー18をタンクフランジ10に取り付けることとなるが、フィルタエレメント3およびフィルカバー4が上方に付勢されて飛び出すのを、上述のように、第1フック部材15と第1外側部71との係合が規制するため、作業者は容易にフランジカバー18を取り付けることができる。フランジカバー18を取り付けると、図11に示すように、このフランジカバー18の中央下面部が、コイルスプリング58により上方に付勢されたエレメントカバー4を、ハンドルフランジ70の上端面から下方に押し込むこととなる。これにより、第1外側部71の上面部と第1フック部材15の下面部との当接が外れて、コイルスプリング58の付勢力をフランジカバー18が受けることとなるため、第1フック部材15で受けているときよりさらに安定性を増すことができる。このようにコイルスプリング58が常にフィルタエレメント3およびエレメントカバー4を上方に付勢してこれをフランジカバー18が受けるため、フィルタエレメント3をフィルタケース2内でしっかり保持させることによりフィルタエレメント3の挙動を抑制して、セットスプリングとしての役割も果たすことができる。
また、フランジカバー18を取り付ける際には、上述のように、第1外側部71が第1フック部材15に当接されて、コイルスプリング58の付勢を第1フック部材15が受けることとなるので、フランジカバー18を取り付けるときには、このフランジカバー18の位置合わせや固定用ボルト11aの締結を簡単に行うことができる。このようにして、フィルタエレメント3はエレメント配設空間S1内に装着されてしっかりと保持される。
さらに、フィルタエレメント着脱用のハンドル77が配設されたエレメントカバー4には、リリーフ油路70aおよびリリーフバルブ80が備えられおり、このエレメントカバー4を取り付けた状態のままでオイルフィルタ1を使用することができる。
次に、上記のようにフィルタエレメント3が装着されたオイルフィルタ1によって濾過されるリターンオイルの流れについて図1を参照して説明する。なお、図1において、オイルの流れは矢印Fによって表されている。リターンオイルは、オイルタンク6の外部から戻り側配管7を通ってフィルタケース2内の流入空間S2に流入される。このとき、オイルタンク6内は、このオイルタンク6に備えられたエアブリーザ(図示しない)により大気圧より高圧に加圧調整されており、フィルタケース2内のオイルレベルはL0からL1まで上昇されている。流入空間S2に流入してきたリターンオイルはプロテクタ30の外側壁に当たることにより流れの向きを変えられて、流入空間S2内で上方へ向かって流れていき、プロテクタ30の上側に形成されたプロテクタ流通孔31を通って、濾材40の外部空間S3内に流入する。これによりプロテクタ30の外側壁がバッフルの役割をしてリターンオイルの流れを整流化することができるとともに、このプロテクタ30が配設されていることにより、戻り側配管7からリターンオイルが直接濾材40に当たって、濾材40を損傷させることがない。また、戻り側配管7から流入したオイルの圧力により、外側から押し込む方向の力が作用して、プロテクタ30の内周が内側に圧縮されても、プロテクタ30と濾剤40との間には一定のクリアランスをもった外部空間S3があるため、プロテクタ30が濾材40に当接されてオイルの油路ともなる外部空間S3を遮断することもない。
なお、リリーフバルブ80は通常は閉弁状態となっているため、流入空間S2から上エンドプレート45の上方へ飛散等してリリーフ油路70aに流れるオイルがあっても、このオイルがインナーチューブ41の内部空間S4内に流入することはないため、濾過されていないオイルがオイルタンク6内に流入する虞はない。また、フィルタエレメント3の下方部においては、下エンドプレート49のガスケット50が、このガスケット50の弾性力により一定の嵌合力をもって出口配管8の外周部と嵌合されているため、この嵌合部から流入空間S2内のオイルが流入することもない。
外周空間S3内に流入したオイルは、濾材40の外側から内側に向かって流れるが、このときにオイル内に混入したゴミ等の不純物がこの濾材40によって濾過される。濾材40により濾過されたオイルは、インナーチューブ41のチューブ流通孔42を通って内部空間S4に流入する。なお、濾材40は、内周がインナーチューブ41の外周に当接しているため、外周側からオイルが流入しても内側側に押されて変形することがない。ここで、内部空間S4の上部側に流入したオイルは、上部固定ホルダ56の上部ホルダ通油孔56aから下部揺動ホルダ60の下部ホルダ通油孔60dへ流入し、その後、フィン通油口62bを通過して出口配管8に流入することによりオイルタンク6(オイルフィルタ1外)へ流出される。また、内部空間S4の中央側に流入したオイルは、下部揺動ホルダ60の下部ホルダ通油孔60dからフィン通油口62bを通過して、出口配管8に流入することによりオイルタンク6へ流出される。さらに、内部空間S4の下部側に流入したオイルは、フィン通油口62bから出口配管8に流入して、オイルタンク6へ流出される。このとき、下部揺動ホルダ60は出口配管8と嵌合してさらにコイルスプリング58により下方に付勢されているため、内部空間S4に流入するオイルによって左右または上下に振られることはない。
そして、濾材40に目詰まりが生じると流入空間S2内のオイルの圧力が高くなり、流通空間S2と内部空間S4との間の圧力差が所定圧以上となる。このため、リリーフ油路70aに流入するオイルがバルブ80aに対してバルブスプリング80cの付勢力以上の力で作用し、バルブ80aはバルブスプリング80cの付勢力に抗して下方に押し下げられて開弁する。これにより、リリーフ油路70aと内部空間S4とが連通されることとなり、オイルは濾材40を通過しないでバルブ80aの開弁部から内部空間S4内に流入されて、オイルフィルタ1の損傷を防止するようにしている。
上記のように構成されたオイルフィルタ1は、長時間の使用により濾材40の目詰まりが生じるため、定期的(所定時間毎)にフィルタエレメント3を交換する必要があるが、フィルタエレメント3の取り外しは、取り付けと逆の手順で行われる。フィルタエレメント3の交換を行う前には必ずオイルタンク6に備えられたエアブリーザによりオイルタンク6内の圧力を大気圧まで低下させる。オイルタンク6内が大気圧となると、オイルタンク6内の油面が下降するとともに、フィルタケース2内のオイルもオイルレベルL0まで下降することとなる。
まず、タンクフランジ10からフランジカバー18を取り外した後、エレメントカバー4のハンドル77を掌で掴んで持ち上げることにより、フィルタエレメント3は上方に引き上げられる。フィルタエレメント3が上方に引き上げられると、出口配管8と嵌合状態にあるガスケット50は、このガスケット50の弾性力により一定の嵌合力をもって出口配管8に対して上方に摺動していくことになる。このとき、ガスケット50と出口配管8との嵌合力よりも、下部揺動ホルダ60のフィン62と出口配管8との嵌合力の方が強く連結されるよう構成され、且つ、コイルスプリング58が上方からフィン62を出口配管8に押え付けるよう付勢するため、フィルタエレメント3を上方に引き上げてもフィン62が出口配管8から抜け出ることはない。さらにガスケット50が上方に摺動されて出口配管8から抜け出た後は、図9に示すように、このガスケット50はフィン62の外周部を通過して、下部揺動ホルダ60のキャップ部60bに嵌合されるため、ガスケット50のエレメント下部中心孔50aはキャップ部60bによって塞がれることとなる。そして、この状態からフィルタエレメント3を上方に引き上げると、ガスケット50の上面部は下部揺動ホルダ60のリブ60c下面に当接されて、作業者がフィルタエレメント3を上方へ引き上げる力は、出口配管8からフィン62を引き抜くことに作用されるとともに、この力を受けてガスケット50がキャップ部60bに確実に嵌合されることとなる。このようにして、フィン62を出口配管8から引き抜くことによって、フィルタエレメント3をケース本体20に対して分離させ、フィルタエレメント3をフィルタケース2から排出することができる。
フィルタケース2から排出されたフィルタエレメント3は、図8に示すように、下エンドプレート49の中央を開口するエレメント下部中心孔50aがキャップ部60bによってしっかりと塞がれているため、フィルタエレメント3内に残留したオイルがエレメント下部中心孔50aから漏れ出ることがない。そして、フィルタエレメント3をフィルタケース2から排出して運搬する際は、フィルタエレメント3の上部がエレメントカバー4によって覆われているとともに、プロテクタ30のプロテクタ流通孔31が上方部に設けられているため、フィルタエレメント3内の残留オイルが跳ねて作業者にかかったり、周囲を汚してしまったりすることがない。さらに、濾材40およびインナーチューブ41表面を伝って流れ落ちるオイルは、フィルタエレメント3内で外部空間S3および内部空間S4に落ちて封じ込められるため、作業場等の床面に油垂れするのを防止できる。また、エレメントカバー4のハンドル77がオイルに接触しないよう取り付けられているため、フィルタエレメント3の排出時に作業者の手がオイルに触れることがなく、作業者の手から二次的にオイルが周囲に飛散することが防止される。
また、フィルタエレメント3が排出されたケース本体20内には、濾過されていないオイルが残留しているが、出口配管8の先端部はオイル油面よりも上方位置となるように構成されているため、この濾過前のオイルが出口配管8に流入してオイルタンク6内に流出する虞はない。
さらに、濾材40に捕捉されたゴミ等の不純物は、フィルタエレメント3の排出作業時やエンジン停止時において濾材40から離脱して下方へ落下してしまうことがあるが、プロテクタ30と濾材40との間には所定のクリアランスをもって外部空間S3が形成されているため、この不純物は全て外部空間S3内に封じ込められて、この不純物がケース本体20内に堆積するのを防止できる。従って、ケース本体20内のメンテナンスの負担を軽減することができる。
そして、フィルタケース2からフィルタエレメント3を排出させた後は、エレメントカバー4の第2フック部76と上エンドプレート45の第2フック係止部46との係合を解除させることにより、エレメントカバー4をフィルタエレメント3から簡単に取り外すことができる。また、フィルタエレメント3から取り外したこのエレメントカバー4は、新品(未使用)のフィルタエレメント3に取り付けることにより反復して使用可能となっている。
このように構成されたオイルフィルタ1によれば、フィルタエレメント3の交換を容易に行うことができるためメンテナンスの作業性が向上するとともに、フィルタエレメント3を交換するためにフィルタケース2から抜き出すときにでも、濾材40により捕捉した不純物や濾過されていないオイルが出口配管8に流出させることがなく、オイルタンク6内のオイルを常にクリーンに保つことができる。また、フィルタケース3を抜き出した後においても、フィルタエレメント3内に残留するオイルが漏れ出たり、飛散したりして周囲を汚す虞がない。
上記の実施例においては、下部揺動ホルダ60のフィン62は下方に延びた細長い板状に形成されたものとしているが、これに限られるものではなく、オイルの圧力損失を考慮して内部空間S4に流入したオイルの流れを渦状にして出口配管8へ誘導するため、図12に示すように、羽根状に形成されたフィン162とする構成としてもよい。また、このフィン162の下方部に出口配管8の内径寸法よりも若干小さな外径寸法を有するフィン嵌合部162aを形成することにより、出口配管8と嵌合可能とすることができる。
また、下部揺動ホルダ60にフィン62を設けることなく、図13に示すように、出口配管8の先端から上方に突き出すように配管突起部163を設けるとともに、下部揺動ホルダ60の下端部にこの配管突起部163に嵌合可能な取付孔を有する突起受け部164を設ける構成としてもよい。この場合には、配管突起部163と突起受け164とが嵌合することによりフィン62を設けたときよりも、出口配管8へのオイルの油路を大きく確保することができる。また、フィルタエレメント3をフィルタケース2から排出させようと上方に引き上げたときは、上記の実施例と同様に、キャップ部60bがガスケット50と嵌合し、このキャップ部60bがエレメント下部中心孔50aをしっかりと塞ぐため、フィルタエレメント3内に残留したオイルがエレメント下部中心孔50aから漏れ出すことはない。
さらに、上記の実施例においては、下部揺動ホルダ60はコイルスプリング58に支持されて、上部固定ホルダ56に対して上下に揺動するような構成としているが、これに限られるものではなく、コイルスプリング58を設けることなく下部揺動ホルダ60をフリー状態にして設ける構成としてもよい。フィルタエレメント3をフィルタケース2に挿入するときには、出口配管8が下部揺動ホルダ60を上部固定ホルダ56に当接するよう突き上げた状態で、フィン62と出口配管8とを嵌合させることができる。また、フィルタエレメント3をフィルタケース2から抜き出すときには、フィルタエレメント3を上方に持ち上げることによりガスケット50の上面部が下部揺動ホルダ60を上方に押し上げ、フィン62と出口配管8との嵌合が外れることとなる。そして、この状態においてキャップ部60bがガスケット50のエレメント下部中心孔50aに嵌合することにより、ガスケット50のエレメント下部中心孔50aはキャップ部60bによって塞がれるため、フィルタエレメント3内に残留したオイルがこのエレメント下部中心孔50aから漏れ出ることがない。なお、コイルスプリング58を設けないときには、セットスプリングをフィルタエレメント3の外部に設けて、このセットスプリングがフィルタエレメント3をフィルタケース2内でしっかり保持されるよう付勢する構成とすることが好ましい。
さらに、上記の実施例においては、フランジカバー18を設けてタンクフランジ10の上部を覆う構成としているが、エレメントカバー4がタンクフランジ10の開口を塞いでいるため、フィルタケース2内のオイルが外部に流出するのを防止するとともに、フィルタケース2内にゴミ等が侵入するのを防止しているため、エレメントカバー4のみでもタンクフランジ10の開口を塞ぐことができる。しかし、フランジカバー18を設けることにより、エレメントカバー4が露出することがないため、フィルタケース2内へ外部からゴミが侵入したり雨天時の作業により雨水が浸入したりすることを確実に防止することができ、さらに、ハンドル77が汚れることも防止して作業者の手や衣服等を汚すこともないため、このフランジカバー18を設けることが好ましい。また、エレメントカバー4とフランジカバー18とを一体に形成することで、部品点数を集約させて、メンテナンスの作業性を向上させることとしてもよい。
また、上述の実施例においては、ハンドルフランジ70(第1外側部71)が第1フック部材15と係合する構成としているが、これに限られるものではなく、図14に示すように、タンクフランジ10′にネジ止めされるリング部材91およびプレート部材92とを設けて、ハンドルフランジ70がこれらリング部材91およびプレート部材92に係合する構成としてもよい。リング部材91は、図15(A)および(B)に示すように、タンクフランジ10′の小径部12aとほぼ同一径となる内径部91aを有し、この内径部91aには上端面から凹んだ平面視において略扇状の第1係合溝91bが周方向等間隔に形成されている。この第1係合溝91bの内周壁は、第1外側部71よりも大径に形成される。プレート部材92は、図16に示すように、タンクフランジ10′の小径部12aとほぼ同一径となる内径部92aを有し、この内径部92aにはリング部材91の第1係合溝91bに対応位置して第2係合溝92bが周方向等間隔に形成される。そして、リング部材91の第1係合溝91bと、プレート部材92の第2係合溝92bとが重合するよう対応位置させて(両係合溝の中心線X1,X2が一致するように位置させて)タンクフランジ10′にネジ止めされる。
この場合には、ハンドルフランジ70の第1外側部71を、プレート部材92の第2係合溝92b内を挿通させ、さらにリング部材91の第1係合溝91b内まで到達させたのち、平面視で時計周りに回動させることによって係合させることができる。このとき、第2係合溝92bの周方向の幅の大きさW2は、第1係合溝91bの周方向の幅の大きさW1よりも小さく設定されているため、コイルスプリング58により上方に付勢された第1外側部71の上面部はプレート部材92の下面部に突き当たり当接保持されることとなる。したがって、第1フック部材15よりも強度の高いリング部材91およびプレート部材92を用いることによって、フィルタエレメント3およびエレメントカバー4をより安定した状態で保持することができる。
また、図14に示すように、エレメント挿入孔12において、タンクフランジ10′とリング部材91との間にゴム等の弾性部材からなる薄厚リング状のワイパー17を配設する構成としてもよい。ワイパー17は、図17に示すように、プロテクタ30の外径よりも小さい内径部17aを有し、この内径部17aから半径方向の略中央まで延在する切込部17bが周方向等間隔に形成されている。このためフィルタケース2からフィルタエレメント3を抜き出すときには、プロテクタ30がワイパー17の内径部17aを(上方に)押し広げるように接しながら通過していくため、ワイパー17がプロテクタ30の外周に付着したオイルをこそぎ落とすこととなる。このためフィルタエレメント3を排出するときに、プロテクタ30に付着したオイルが周囲に油垂れするのをより抑制することができる。
さらに、上記実施例においては、フィルタエレメント3とエレメントカバー4との連結を、第2フック係止部46と第2フック部76との係合により行う構成としているが、これに限られるものではなく、フィルタエレメント3とエレメントカバー4とをネジ締結により着脱可能に連結する構成としてもよい。また、フィルタエレメント3とエレメントカバー4とを分離させず一体化して構成することにより部品点数を集約させて、メンテナンスの作業性を向上させることとしてもよい。
また、本実施例においては、上部固定ホルダ56はインナーチューブ41に溶接等により接合されて設けられているが、これに限られるものではなく、例えば、これらを樹脂一体成形により構成してもよい。さらに、樹脂成型により、インナーチューブ41の内周部に上下方向に延びた突起状のレールを設けるとともに、下部揺動ホルダ60のホルダ外筒部60aにこのレールを挿入可能なガイド溝を設ける構成としてもよい。このときには下部揺動ホルダ60がインナーチューブ41のレールに沿ってガイドされ上下に揺動することができる。
さらに、本実施例においては、ハンドル77はハンドルフランジ70の中央上端にハンドル止めボルト77aにより取り付けられ直立した状態のものであるが、これに限られるものではなく、例えば、直立位置(引き上げ位置)と倒伏位置との間で揺動自在に構成してもよい。フィルタケース2からフィルタエレメント3を取外すときは、このハンドルを直立位置にして、ハンドルを掌で掴んで持ち上げることにより、フィルタエレメントを上方に引き上げることができる。また、フィルタエレメント3をフィルタケース2内に取り付けるときには、ハンドルを掌で掴んでフィルタエレメント3をフィルタケース2内に挿入していき装着された後は、ハンドルを倒伏位置に倒すように揺動させて収容することができるため、ハンドルを持ち易くする目的でハンドルの寸法を大きく設計しても、ハンドルの収容スペースが大きくなることがない。