JP2009210604A - 光デバイスおよびこれを用いた光送受信器 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学特性の温度安定性に優れた光デバイス及びこれを用いた光送受信器を提供する。
【解決手段】凹部を有する基体と、第1の光入出射面と第2の光入出射面とを有し前記凹部に配置された光学素子と、一端面が前記第1の光入出射面に対向するように前記基体に固定された第1の光導波体と、一端面が前記第2の光入出射面に対向するように前記基体に固定された第2の光導波体とを備え、前記光学素子の前記第1の光入出射面は、前記凹部の底面から離間して設けられた第1の接着剤によって前記凹部の第1の光入出射面に対向する側面に固定され、かつ前記第1の光導波体の一端面に接続され、前記第2の光入出射面と、該第2の光入出射面に対向する前記凹部の側面との間に、前記第1の接着剤よりショアA硬度が小さい第2の接着剤を前記凹部の底面から離間して配置し、かつ該第2の接着剤によって前記第2の光入出射面が前記第2の光導波体の一端面に接続されている光デバイスである。
【選択図】図2
【解決手段】凹部を有する基体と、第1の光入出射面と第2の光入出射面とを有し前記凹部に配置された光学素子と、一端面が前記第1の光入出射面に対向するように前記基体に固定された第1の光導波体と、一端面が前記第2の光入出射面に対向するように前記基体に固定された第2の光導波体とを備え、前記光学素子の前記第1の光入出射面は、前記凹部の底面から離間して設けられた第1の接着剤によって前記凹部の第1の光入出射面に対向する側面に固定され、かつ前記第1の光導波体の一端面に接続され、前記第2の光入出射面と、該第2の光入出射面に対向する前記凹部の側面との間に、前記第1の接着剤よりショアA硬度が小さい第2の接着剤を前記凹部の底面から離間して配置し、かつ該第2の接着剤によって前記第2の光入出射面が前記第2の光導波体の一端面に接続されている光デバイスである。
【選択図】図2
Description
本発明は、光導波体から出射された光の特性を変化させる光学素子を備えた光デバイスおよびこれを用いた光送受信器に関し、とりわけ温度変化に対する光学特性の安定性に優れた光デバイスおよびこれを用いた光送受信器に関する。
通信分野における光通信機器および光通信システムの大容量化に伴い、これら光通信機器および光通信システムの小型化が進められている。この結果、光デバイスの小型化が必須となっており、光デバイス内の限られたスペースで部材を固定するために接着剤が多用されている。
接着剤を用いた光デバイスの例として、光ファイバに反射光が戻ることを防止する光アイソレータモジュールや、光ファイバの信号光を複数の光ファイバに分割して用いる多分岐器デバイス、1本の光ファイバに入力された多数の波長の光を分波する、または複数の光ファイバの光を合波して、1本の光ファイバに入力する光合分波器等がある。
光デバイスの一例として図5に全体が100で表される光合分波器を示す。図6は、図5に示す光合分波器100の側面図である。図5は部材の配置を容易に理解できるよう接着剤の記載を省略してある。
光合分波器100では、3つの光導波体を有し、第1の光導波体109aの一端に入射した2つの波長領域を含む光が、光学素子の一種である光フィルタ104に入射し、一方の波長領域の光は光フィルタ104を透過し第2の光導波体109bに入射する。他方の波長領域の光は、光フィルタ104により反射され第3の光導波体109cに入射する。
このように光を分波、または合波する光フィルタ104は、図6に示すように、基体105に設けられた溝状の凹部115に光導波体109a〜109cとほぼ同等の屈折率を有する接着剤106を用いて固定されている(たとえば、特許文献1参照)。
しかし、従来の光合分波器100では、光フィルタ104は、図6に示すように2つの側面(図6中の左側の面および右側の面)がそれぞれ接着剤106により、基体105の溝状の凹部115の側面に固定されている。さらに、光フィルタ104の底面も凹部115の底面に接着剤106(第1の接着剤)により固定されている。このため、高温時の膨張、低温時の収縮を繰り返すと基体105、接着剤106および光フィルタ104の間の熱膨張差により、応力が発生する。そして、この応力は、接着剤106を剥離し、光フィルタ104を傾ける、または変形することから、光学特性を悪化させるという問題が発生する場合があった。
そこで、図7に示す光合分波器200が提案されている。光合分波器200では、光フィルタ(光学素子)104の一方の光入出射面(図7では、左側の面)を、凹部115の底面より離間して配置した第1の接着剤106を用いて固定している。また、光フィルタ104の他方の光入出射面(図7では、右側の面)と凹部115の側面との間および光フィルタ104の下部と凹部115の底面との間は、第1の接着剤106より弾性率が低く変形能に優れる第2の接着剤108を充填してある。
特開2001−343551号公報
しかしながら、光合分波器200を用いても、例えば気温が−40℃程度の極寒等の低温と30℃以上の高温との間の温度で用いる等、極めて過酷な熱サイクル条件で用いると、光学特性が悪化する場合があるという問題が発生していた。これは、詳細を後述するように、過酷な熱サイクルによる第2の接着剤108の熱膨張・収縮に起因して生ずる応力が、光フィルタ104の位置ずれを生じせしめるためである。
そこで本発明は、温度変化に対する光学特性の安定性に優れた光デバイスおよびこれを用いた光送受信器を提供することを目的とする。
本発明の態様1は、凹部を有する基体と、第1の光入出射面と、第2の光入出射面とを有し前記凹部に配置された光学素子と、一端面が前記第1の光入出射面に対向するように前記基体に固定された第1の光導波体と、一端面が前記第2の光入出射面に対向するように前記基体に固定された第2の光導波体とを備え、前記光学素子の前記第1の光入出射面は、前記凹部の底面から離間して設けられた第1の接着剤によって前記凹部の第1の光入出射面に対向する側面に固定され、かつ前記第1の光導波体の一端面に接続され、前記第2の光入出射面と、該第2の光入出射面に対向する前記凹部の側面との間に、前記第1の接着剤よりショアA硬度が小さい第2の接着剤を前記凹部の底面から離間して配置し、かつ該第2の接着剤によって前記第2の光入出射面が前記第2の光導波体の一端面に接続されていることを特徴とする光デバイスである。
本発明の態様2は、前記光学素子の底面と前記凹部の底面との間に前記第2の接着剤を設け、前記凹部の底面と、第2の接着剤との間が、スペーサーを介して離間していることを特徴とする前記態様1に記載の光デバイスである。
本発明の態様3は、前記スペーサーと前記第2の接着剤との間の接着強度が、前記凹部と前記第2の接着強度より低いことを特徴とする前記態様3に記載の光デバイスである。
本発明の態様4は、前記スペーサーと前記第2の接着剤との間の濡れ性が、前記凹部と前記第2の濡れ性より低いことを特徴とする前記態様2に記載の光デバイスである。
本発明の態様5は、前記スペーサーの前記第1の光入出射面に垂直な方向の長さが、前記凹部の底面の前記第1の光入出射面に垂直な方向の長さより短いことを特徴とする前記態様2〜4のいずれかに記載の光デバイスである。
本発明の態様6は、前記光第1の光導波体および前記第2の光導波体の少なくともどちらか一方が、屈折率分布ファイバと、該屈折率分布ファイバ端部に接続されたコアレスファイバとを含んでいることを特徴とする前記態様1〜5のいずれかに記載の光デバイスである。
本発明の態様7は、第3の光導波体をさらに有し、前記光学素子が、前記第1の光導波体、第2の光導波体または前記第3の光導波体から選択された2つの光導波体から入射する光を、残りの1つの光導波体に出射する、または前記第1乃至第3の光導波体より選択された1つの光導波体から入射する光を、残りの2つの光導波体に出射する光フィルタであることを特徴とする前記態様1〜6のいずれかに記載の光デバイス。
本発明の態様8は、前記態様1〜7のいずれかに記載の光デバイスと、該光デバイスに入射する光を送信する発光手段と、該発光手段から送信された光を、前記デバイスを介して受信する受光手段とを備えたことを特徴とする光送受信器。
本発明によれば、接着剤を用いて部材を固定する光デバイスおよびこの光デバイスを用いた光送受信器において、環境温度の変化に伴う、接着剤と基体との間の応力の発生を低減できる。従って、光学素子の傾き等が防止でき、温度変化に対し、光学特性の安定性に優れた光デバイスおよび光送受信器の提供が可能となる。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
本発明者は、厳しい熱サイクル条件において生ずる場合がある、上述の光合分波器200の光学特性劣化の原因について鋭意調査した。熱サイクルを受けた場合、基体105と第2の接着剤108との熱膨張係数の差が原因で、光学素子104の光入出射面に垂直な方向(または凹部115の側面に垂直な方向、すなわち図7の左右方向)に応力を生じていることを見出した。そして、この応力により光学素子104が傾く等によって移動が生じると光学特性が劣化する。特にこの応力による、光入出射面に垂直な方向の光学素子の変形および移動が光学特性を悪化させることも見出した。
この応力は、第2の接着剤108が基体105の凹部115の底面と接着しているために、第2の接着剤108の弾性率が低いにもかかわらず生ずるものである。そこで、本願発明者は、凹部115の底面と第2の接着剤108とを離間させることにより、この応力を大幅に低減できる本願発明に至った。以下に、凹部115の底面と第2の接着剤108とを離間させる具体的な実施形態について説明する。
・実施形態1
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる光デバイスの例である、全体が10で表される光合分波器の上面図であり、図2は、図1に示す光合分波器10の側面図である。なお図1では理解を容易にするために蓋体7a、7bの記載を省略した。
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる光デバイスの例である、全体が10で表される光合分波器の上面図であり、図2は、図1に示す光合分波器10の側面図である。なお図1では理解を容易にするために蓋体7a、7bの記載を省略した。
光合分波器10は、基体5の上にX字状に形成された2本のV溝12の一方に一直線上に第1の光導波体9aと第2の光導波体9bが配置されている。他方のV溝12には第3の光導波体9cが配置されている。そして、3つの光導波体9a〜9cは、蓋体7a、7bにより上から押さえられ基体5に固定されている。
第1〜第3の光導波体9a、9b、9cは、それぞれ屈折率分布ファイバ2a、2b、2cの一端に、それぞれのシングルモードファイバ3a、3b、3cが接続され、他端にそれぞれのコアレスファイバ1a、1b、1cが接続されてなる。
基体5の中央部付近で、第1の光導波体9aと第2の光導波体9bとの間に凹部15が設けられている。なお、本実施形態では、凹部15は、基体5と蓋体7aおよび7bとにより一体的に形成されているが、蓋体7a、7bを有さず基体5のみで凹部15を形成してもよい。そして光導波体9a〜9cそれぞれの一端面の、図2における左右方向の位置は、概ね凹部15の側面に一致するよう位置合わせされている。
凹部15には、光学素子の1種である光フィルタ4が配置されている。光フィルタは、透光性部材4aと、透光性部材4aの一方の主面、図1では右側の側面に形成されたフィルタ膜4bとにより構成されている。光フィルタ4は、左右の両方の側面が光入出射面として機能する。
光フィルタ4は、図2に示すように、一方の光入出射面(図2では左側の面)に透光性を有する第1の接着剤6を塗布し、凹部15の一方の側面(図2では左側側面)に固定している。第1の接着剤6は凹部15の底面には塗布されておらず、すなわち凹部15の底面より離間している。また、第1の光導波体9aおよび第3の光導波体9cと、光フィルタ4の左側の光入出射面(第1の光入出射面)との間は、第1の接着剤6により満たされており、接続されている。
光フィルタ4の他方の入出射面(図2では右側の面)と凹部15の他方の側面(図2では右側側面)の間は、透光性を有する第2の接着剤8が充填されている。第2の接着剤8も凹部15の底面には塗布されておらず、すなわち凹部15の底面より離間している。そして、第2の光導波体9bと、光フィルタ4の右側の光入出射面(第2の光入出射面)との間は、第2の接着剤8により満たされており、接続されている。
第2の接着剤8は、第1の接着剤6に比べてショアA硬度が低く、高い変形能を有する。ショアA硬度の高い第1の接着剤6は、光フィルタ4を基体5にしっかりと固定する。一方、第2の接着剤8は、光導波体9bと、光フィルタ4との光学的接続を確保しつつ、第1の接着剤6および光フィルタ4が熱膨張および収縮するのに対応し、容易に変形することで、光フィルタ4に生じる応力を緩和できる。
また、光フィルタ4と凹部15の底面との間には、第1の接着剤6および第2の接着剤8のいずれも介在しないため、この部分で接着剤に起因する応力を生じることがない。従って、光フィルタ4の傾きおよび変形を抑制でき、温度変化に対し、例えば結合効率が高い等の光学特性の安定性を向上できる。
第1の接着剤6は、硬化後の弾性率が高く、かつ透光性を有する接着剤であり、硬化後の弾性率は10MPa以上であることが好ましい。このような好ましい接着剤は例えば、アクリル系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤である。
第2の接着剤8は第1の接着剤6よりも十分に弾性率が小さい方が好ましく、例えば好ましい弾性率は10kPa以下である。このような接着剤の例は動作環境の温度においてゲル状で塑性変形可能な接着剤であり、具体的には、−40℃〜85℃の温度範囲においてゲル状であるシリコーンゲル、アクリル系UV硬化樹脂が例示される。
弾性率はひずみと力の割合を示すもので、例えば断面積Sの非測定物を力Fで引っ張った時、元の長さLからΔLだけ伸びたとすると(F/S)/(ΔL/L)で表される。
各接着剤のショアA硬度は、たとえばデュロメータを用いて測定できる。デュロメータは、所定のピンを試料に押し当て、その反発力により試料の硬さを示し、数値が大きいほど硬い材料となる。第1の接着剤6は、好ましくはショアA硬度が90以上であり、第2の接着剤はショアA硬度が20以下である。
なお、光合分波器10では、光フィルタ4が凹部15の両方の側面と固定されるため、振動等の影響を受けにくくなり、光学特性がより安定する。さらに第2の光導波体9bと、光フィルタ4の第2の光入出射面との間は、第2の接着剤8により接続されるため、この間での光の損失が低減される。特に、第2の接着剤8の屈折率がコアレスファイバ1bと同程度であれば、光の損失をより低減できる。また、光合分波器10では、フィルタ膜4b側にショアA硬度が小さい第2の接着剤8を配しているため、フィルタ膜4bに生じる応力を小さくすることができる。
上述のように、凹部15の側面部に光フィルタ4等の光学素子を、凹部15の底面から離間した第1の接着剤6および第2の接着剤8を介し固定する本実施形態は、例えば光アイソレータモジュールや、多分岐器デバイス等各種の光デバイスに適用可能であり、同様に温度変化に対する光学特性の安定性を向上できる。
次に、光合分波器10の動作について示す。光合分波器10は、合波および分波の機能があり、まず合波機能について説明する。
第1の光導波体9aに波長領域λ1、λ2を含む光が図1左側より入射し、より平行度を高め第1の光導波体9a右側より出射し、透光性を有する第1の接着剤6内を通り、光フィルタ4に入る。光フィルタ4に入った光は、透光性部材4aを通り、フィルタ膜4bに達する。この際、第1の接着剤6の屈折率をコアレスファイバ1aと同程度とすることで、界面での不要な反射を抑制でき光学的損失を低減できる。
光フィルタ4に達した光のうち波長領域λ1の光は、フィルタ膜4bを透過し、第2の接着剤8内を通り、第2の光導波体9bに入射する。一方、波長領域λ2の光は、フィルタ膜4bにより反射され透光性部材4aと第1の接着剤6とを介し第3の光導波体9cに達する。これにより入射光の分波が実施できる。反射された波長領域λ2の光についても第1の接着剤6の屈折率をコアレスファイバ1cと同程度とすることで光学的損失を低減できる。
合波の場合は、第2の光導波体9bに波長領域λ1の光を入射し、第3の光導波体9cに波長領域λ2の光を入射する。第2の光導波体9bより出射した波長領域λ1の光は、第2の接着剤8、フィルタ膜4b、透光性部材4a、第1の接着剤6の順に透過し、第1の光導波体9aに入射する。
一方、第3の光導波体9cより出射した波長領域λ2の光は、透光性部材4aを透過し、フィルタ膜4bに達し、フィルタ膜4bで反射されると、透光性部材4aを透過し、第1の光導波体9aに入射する。そして、λ1の波長領域とλ2の波長領域とを有する光が合波され、第1の光導波体9aより出射する。
・実施形態2
図3は、本発明の第2の実施形態にかかる光合分波器20の側面図である。
本発明の第2の実施形態では、光フィルタ4の下側(凹部15の底面と対抗する面)にも第2の接着剤8が塗布(配置)されている。そして、凹部15の底部と第2の接着剤8との間は、スペーサー13を介して離間している。
図3は、本発明の第2の実施形態にかかる光合分波器20の側面図である。
本発明の第2の実施形態では、光フィルタ4の下側(凹部15の底面と対抗する面)にも第2の接着剤8が塗布(配置)されている。そして、凹部15の底部と第2の接着剤8との間は、スペーサー13を介して離間している。
スペーサー13は例えばプラスチック、金属、セラミックスを含む任意の材料でよいが、好ましくは、第2の接着剤8と接着しないか、または第2の接着剤8との接着強度が低い(例えば、第2の接着剤8と凹部15の側面との接着強度より低い)。
これにより、熱サイクルによるスペーサー13の熱膨張または熱収縮の際に、第2の接着剤8がスペーサー13に拘束されない、または弱く拘束されるのみである。すなわち、熱サイクル時に第2の接着剤8で発生する応力を低減することが可能となる。
このような、第2の接着剤8と接着しないか、または第2の接着剤8との接着強度が低いスペーサー13として、例えば、表面がポリエステルで形成された低粘着テープ(例えば日東電工株式会社製プリント基板用マスキングN−300)、または表面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やウレタンが施された低粘着テープがある。
また、スペーサー13と第2の接着剤8との接着強度を簡易に評価できる指標として、濡れ性評価がある。これは、濡れ性を評価する材料に、水滴を垂らし、材料基材と水滴の表面が為す角(接触角)が大きいほど濡れ性が悪いというように濡れ性を評価するもので、濡れ性の悪い材料ほど接着強度が低い。第2の接着剤8に対する濡れ性が、基体5よりも悪い材料として例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ウレタンがあり、これらを表面に有するスペーサー13を用いてもよい。
また、実施形態2では、第2の接着剤8との接着強度がある程度高い材料であってもスペーサー13として用いることが可能である。通常スペーサー13と凹部15の底面との間は接着されない。従って、第2の接着剤8とスペーサーの間が接着されていて、熱サイクルに伴い、第2の接着剤8に応力が生じ始めてもスペーサー13が、凹部15の底面上を移動することで、応力を緩和することができる。
このスペーサー13の移動による応力の緩和、とりわけ光学特性への影響の大きい、光入出射面に垂直な方向(図3の左右方向)の応力の緩和効果をより大きくするように、光入出射面に垂直な方向でのスペーサー13の長さは、光入出射面に垂直な方向での凹部15の長さより短い方が好ましい。
さらに、光入出射面に垂直な方向でのスペーサー13の長さが短すぎると、凹部15の側面とスペーサー13との間に隙間を生じ、この部分に第2の接着剤8が入り込んで、凹部15の底面と接着する恐れが生じることから、より好ましくは入出射面に垂直な方向でのスペーサー13の長さは、光入出射面に垂直な方向での凹部15の長さの90%〜95%の長さが良い。例えば凹部15の長さが1mmの場合、スぺーサー13は0.9mm〜0.95mmが望ましい。
なお、実施形態2にかかる光合分波器20では、第2の接着剤8が光フィルタ4の下部に配置されており、これにより光フィルタの振動を容易に吸収できることから、耐振動性が向上できる。
以下に、上述した本発明の実施形態1、2にかかる、光合分波器10、20を構成する部材の詳細を示す。
シングルモードファイバ3a、3b、3cは、屈折率の高いコア部と該コア部の外周を被覆するクラッド部からなり、コア部とクラッド部との屈折率差による反射を利用することによってコア部内で光を伝送するものであり、たとえば円柱状の石英等から構成され、クラッド部の外径が125μm、コア部の径が10μm程度である。
屈折率分布ファイバ2a、2b、2cは、軸対称の屈折率分布を備えていることからレンズ効果を有し、シングルモードファイバ3a、3b、3cから出射する、もしくはシングルモードファイバ3a、3b、3cに入射する光を集光あるいはコリメートする機能を有する。
屈折率分布ファイバ2a、2b、2cは、たとえば円柱状の石英等から構成され、クラッド部の外径が125μm、コア部の径が50μm程度であり、コア部に上述した屈折率分布を有する。また、屈折率分布ファイバ2a、2b、2cとシングルモードファイバ3a、3b、3cは、たとえば熱による融着によって接合される。
コアレスファイバ2a、2b、2cは、略均一な屈折率分布を備えるファイバであり、その材質はたとえば石英ガラスからなり、屈折率は1.45程度、透過損失は0.35×10−6dB/mm以下であり、このように透過損失が比較的低いものが好ましい。このコアレスファイバ1a、1b、1cは、外径がシングルモードファイバ3a、3b、3cおよび屈折率分布ファイバ2a、2b、2cと等しく略125μmであり、屈折率分布ファイバ2a、2b、2cと、たとえば熱による融着によって接合される。
光の透過損失を少なくするように、屈折率分布ファイバ2a、2b、2cを全て同じ材質、かつ同じ長さとすることが望ましい。屈折率分布ファイバ2a、2b、2cがそれぞれシングルモードファイバ3a、3b、3cからのビーム光を集光またはコリメートする際に、同じ光学系をそれぞれのビームウエストに対して対称に配置すれば損失が少なくなるからである。
光学素子である光フィルタ4は、たとえば、透光性部材4aと、透光性部材4aの一方の主面に形成されたフィルタ膜(フィルタ部)4bとよりなる。フィルタ膜4bは異なる複数の波長領域の光を含んでなる光を波長領域ごとに選択的に分離(分波)する機能を有する。具体的に、たとえばフィルタ膜4bは、波長λ1の光を透過し、波長λ2の光を反射する機能を担う。
光フィルタ4は、たとえば以下のような手順で作製される。フィルタ膜4bは、たとえば二酸化ケイ素と二酸化チタン等の屈折率の異なる2種類以上の誘電体を交互に積層して構成される多層膜により構成される。この誘電体多層膜は、誘電体膜間の繰り返しの反射干渉により波長選択性を示し、各膜の膜厚は、反射させる光の波長の1/4波長分の倍数の厚みに設定される。このように、誘電体膜の膜厚を1/4波長分の倍数の厚みとすることにより、各誘電体膜界面における多重反射において、ある特定の波長の光の位相が一致し、干渉して強めあうことで波長選択性を有した膜とすることができる。そして、このようなフィルタ膜4bの成膜方法としては、たとえば透光性部材4aの主面に蒸着、スパッタリング等の方法によって容易に作製することができる。
透光性部材4aは、フィルタ膜4bを支持するための基体となる部材である。透光性部材4aは、光合分波器10、20で使用される波長領域の光の透過率が98%以上の透過特性を有している。透光性部材4aに用いられる材料は、上述した透過率を満たすとともに、屈折率がコアレスファイバ1a〜1cの屈折率よりも大きい材料であれば、特に限定されるものではない。このため、透光性部材4aの材料には、コアレスファイバ1a〜1cが石英(屈折率:1.45)で形成されている場合、たとえば、屈折率が1.5〜1.8程度の光学ガラス(硼珪酸ガラスや白板ガラス)を選択することができる。また、透光性部材4aの大きさは、入射または出射する光の有効径以上あればよく、たとえば0.7mm角、厚みは0.8mmである。
基体5の材質は、特に限定されるものではないが、たとえば石英ガラス、低熱膨張ガラス、シリコン、または低熱膨張樹脂(たとえばエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂)で形成される。基体5が石英ガラスで構成されている場合、平板の石英ガラスに切削加工により容易にV溝12と凹部15を形成できる。基体5に形成されるV溝12は、図1に示すX字状以外に例えば平行に配置するなど各種の配置を取りうる。
コアレスファイバ1aおよび1cと光フィルタ4とを接合する接着剤6は、コアレスファイバ1a〜1cと略同等の屈折率を有することが好ましく、たとえばコアレスファイバ1a〜1cが石英ガラスで構成されている場合、たとえば透光性のあるエポキシ樹脂、アクリル系樹脂、またはシリコン系樹脂等が選択できる。
なお、エポキシ樹脂、シリコン樹脂およびアクリル系樹脂は、添加物の添加によって紫外線硬化または熱硬化する特性を有することから、紫外線硬化もしくは熱硬化またはその両方特性を有するものであってもよい。
接着剤6より低い弾性率を有する第2の接着剤8は、コアレスファイバ1a〜1cと略同等の屈折率を有することが好ましい。例えばコアレスファイバ1a〜1cが石英ガラスで形成されている場合、例えば第2の接着剤8は透光性のあるエポキシ樹脂、アクリル系樹脂、またはシリコン系樹脂等より選択できる。なお、エポキシ樹脂、シリコン樹脂およびアクリル系樹脂は、添加物によって紫外線硬化または熱硬化する特性を有してもよく、さらに紫外線硬化および熱硬化の特性の両方を有するものでもよい。
蓋体は、図2等に示すように、第1の光導波体9aおよび第3の光導波体9cを覆う蓋体7aと、第2の光導波体9bを覆う蓋体7bがある。第1乃至第3の光導波体9a〜9cは、この蓋体7aおよび7bと基体5とにより挟持され固定される。なお、第1乃至第3の光導波体9a〜9cの固定には、たとえばエポキシ系の接着剤を用いることができる。蓋体7は、たとえば石英ガラス、低熱膨張ガラス、シリコン、または低熱膨張樹脂(たとえばエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂)で構成され、例えば、蓋体7a、7bを石英ガラスで構成する場合には、平板の石英ガラスに切削加工を施すことで所定の形状にすることが可能である。
次に、本発明の実施形態1、2に係る光合分波器10、20の製造方法について例示する。
<基体の作製>
基体5は、たとえば石英ガラスからなる平板状部材の一方の面に、ダイシング等の切削加工を施し、2本のV溝12を互いに中央部で交差するように形成することにより得ることができる。
<基体の作製>
基体5は、たとえば石英ガラスからなる平板状部材の一方の面に、ダイシング等の切削加工を施し、2本のV溝12を互いに中央部で交差するように形成することにより得ることができる。
<光導波体の作製>
光導波体9aと光導波体9bは、一直線上に一体的に作製し、基体5に載置し、ダイシング等の切削加工によって基体5に凹部15を形成する際に光導波体9aと9cとに分離する。
光導波体9aと光導波体9bは、一直線上に一体的に作製し、基体5に載置し、ダイシング等の切削加工によって基体5に凹部15を形成する際に光導波体9aと9cとに分離する。
具体的には、シングルモードファイバ3a、屈折率分布ファイバ2a、コアレスファイバ1a、コアレスファイバ1b、屈折率分布ファイバ2b、シングルモードファイバ3bを、一直線になるように放電等の手段で融着接合し、1本の光ファイバ体(光導波体9a、9b)を作製する。
一方、シングルモードファイバ3c、屈折率分布ファイバ2c、コアレスファイバ1cを、一直線になるように放電等の手段で融着接合し、第3の光導波体9cを作製する。
<光合分波器の組立>
まず、基体5のV溝12に、光導波体9a〜9cを固定するための紫外線硬化型樹脂からなる接着剤を塗布する。次に、基体5のV溝12の交点に上述の一体的に作製した1本の光ファイバ体(光導波体9a、9b)のコアレスファイバ部(コアレスファイバ1a、1b)の中心が位置するように、光ファイバ体(光導波体9a、9b)を一方のV溝12内に配置する。
まず、基体5のV溝12に、光導波体9a〜9cを固定するための紫外線硬化型樹脂からなる接着剤を塗布する。次に、基体5のV溝12の交点に上述の一体的に作製した1本の光ファイバ体(光導波体9a、9b)のコアレスファイバ部(コアレスファイバ1a、1b)の中心が位置するように、光ファイバ体(光導波体9a、9b)を一方のV溝12内に配置する。
次に第3の光導波体9cを他方のV溝12内に配置する。第3の光導波体9cは、コアレスファイバ1cが光ファイバ体(光導波体9a、9b)のコアレスファイバ部(コアレスファイバ1a、1b)に近接するように配置する。その後、光導波体9a〜9cを覆うように蓋体7a、7bを載置し、上方から光導波体9a〜9cを押さえて接着剤に紫外線を照射することによって固定する。
V溝12が交わる点を中心として、ダイシング等の加工により凹部15を形成する。この際に、光ファイバ体(光導波体9a、9b)は光導波体9aと9bに分離される。なお、凹部15の幅(図1〜3の左右方向)は、光フィルタ4の幅より若干大きくなるようにする。また、凹部15の内部で、コアレスファイバ1a、1c端面直下に更に深い第2凹部15aをダイシングにより形成してもよい。
光フィルタ4の固定方法に図2に基づき説明する。第1の接着剤6を光フィルタ4の第1の光入出射面に側面にはみ出ないように塗布する。そして光フィルタ4を凹部15の内部に挿入し、凹部15の側面の所定の位置に押圧する。第1の接着剤6を硬化させる前、光フィルタ4の光学調整を行う。
具体的には、光導波体9aより波長領域λ1の光を出射し、光導波体9bより出射する光の強度が最大となる角度に光フィルタ4を保持する。光フィルタ4の第1の入出射面の各辺(陵)について均等に接着剤6のメニスカスが形成するように調整し、さらにメニスカスが凹部15の底面に達していないのを確認する。そして、この光導波体9bより出射する光の強度が最大となる角度に光フィルタ4を固定するように、第1の接着剤6に紫外線を照射し、接着剤6を硬化させる。
次に弾性率が第1の接着剤6より低い第2の接着剤8を、光フィルタ4とコアレスファイバ1bとの間の隙間に充填し、紫外線を照射、又は熱硬化等によって必要に応じ硬化させる。
実施形態1にかかる光合分波器10では、第2の接着剤8は、光フィルタ4の下部、すなわち凹部15の底部と光フィルタ4の間には充填しない。
なお、硬化前の第2の接着剤8の粘性が低いことから、第2の接着剤が凹部15の壁面に沿って流動し、凹部15の底部に到達する場合がある。そこで、第2の接着剤8が凹部15の底部と接触するのを避け、確実に離間させるように、第2の接着剤8を充填する前に凹部15の底部を保護材で覆い、第2の接着剤8の硬化後、この保護材を除去してもよい。
実施形態2にかかる光合分波器20では、第2の接着剤8を充填する前に凹部15の底部にスペーサー13を配置する。そして、第2の接着剤8を光フィルタ4の下部、すなわちスペーサー13と光フィルタ4の間にも充填する。
以上の工程によって、光合分波器10、20が作製される。
以上の工程によって、光合分波器10、20が作製される。
以下に、光送受信器の実施形態について説明する。
図4は、上述の光合分波器10を用いた光送受信器50の構成図である。光送受信器50は、光合分波器10以外にも、上述の実施形態にかかる光合分波器20を含む、本発明にかかる各種の光デバイスを用いることが可能である。
図4は、上述の光合分波器10を用いた光送受信器50の構成図である。光送受信器50は、光合分波器10以外にも、上述の実施形態にかかる光合分波器20を含む、本発明にかかる各種の光デバイスを用いることが可能である。
光送受信器50の動作について説明する。
外部から入力される2つの送信信号24a、24bは発光手段21a、21bによって互いに波長の異なる光信号に変換された後、第1光合分波器(図4の左側の光合分波器10)の合波機能により1つに合波される。
外部から入力される2つの送信信号24a、24bは発光手段21a、21bによって互いに波長の異なる光信号に変換された後、第1光合分波器(図4の左側の光合分波器10)の合波機能により1つに合波される。
次に、合波された光は、伝送ファイバ22内を受信手段側に向かって伝送される。伝送ファイバ22によって伝送された波長多重信号光(合波光)は、第2光合分波器(図4の右側の光合分波器10)の分波機能によって分離され、分離された光が受光手段23a、23bにより元の信号24a、24bに変換される。
従って、光送受信器50では、1本の伝送ファイバ24と2つの光合分波器10を用いることによって大容量の情報を簡単な構成で伝送できる利点がある。
1a,1b,1c コアレスファイバ、2a,2b,2c 屈折率分布ファイバ、3a,3b,3c シングルモードファイバ、4 光フィルタ、4a 透光性部材、4b フィルタ膜、5基体、6 第1の接着剤、 7a,7b 蓋体、8 第2の接着剤(低弾性率接着剤)、9a 第1の光導波体、9b 第2の光導波体、9c 第3の光導波体、10,20, 光合分波器、12 V溝、13 スペーサー、15 凹部、21,21a,21b 発光手段、22 伝送ファイバ、23a,23b 受光手段、24a,24b 信号、50 送受信器
Claims (8)
- 凹部を有する基体と、
第1の光入出射面と、第2の光入出射面とを有し前記凹部に配置された光学素子と、
一端面が前記第1の光入出射面に対向するように前記基体に固定された第1の光導波体と、
一端面が前記第2の光入出射面に対向するように前記基体に固定された第2の光導波体と、
を備え、
前記光学素子の前記第1の光入出射面は、前記凹部の底面から離間して設けられた第1の接着剤によって前記凹部の第1の光入出射面に対向する側面に固定され、かつ前記第1の光導波体の一端面に接続され、
前記第2の光入出射面と、該第2の光入出射面に対向する前記凹部の側面との間に、前記第1の接着剤よりショアA硬度が小さい第2の接着剤が前記凹部の底面から離間して配置され、かつ該第2の接着剤によって前記第2の光入出射面が前記第2の光導波体の一端面に接続されていることを特徴とする光デバイス。 - 前記光学素子の底面と前記凹部の底面との間に前記第2の接着剤を設け、前記凹部の底面と、第2の接着剤との間が、スペーサーを介して離間していることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
- 前記スペーサーと前記第2の接着剤との間の接着強度が、前記凹部と前記第2の接着強度より低いことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
- 前記スペーサーと前記第2の接着剤との間の濡れ性が、前記凹部と前記第2の濡れ性より低いことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
- 前記スペーサーの前記第1の光入出射面に垂直な方向の長さが、前記凹部の底面の前記第1の光入出射面に垂直な方向の長さより短いことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の光デバイス。
- 前記光第1の光導波体および前記第2の光導波体の少なくともどちらか一方が、屈折率分布ファイバと、該屈折率分布ファイバ端部に接続されたコアレスファイバとを含んでいることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光デバイス。
- 第3の光導波体をさらに有し、前記光学素子が、前記第1の光導波体、第2の光導波体または前記第3の光導波体から選択された2つの光導波体から入射する光を、残りの1つの光導波体に出射する、または前記第1乃至第3の光導波体より選択された1つの光導波体から入射する光を、残りの2つの光導波体に出射する光フィルタであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光デバイス。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の光デバイスと、該光デバイスに入射する光を送信する発光手段と、該発光手段から送信された光を、前記デバイスを介して受信する受光手段と、を備えたことを特徴とする光送受信器。
Priority Applications (1)
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JP2008050396A JP2009210604A (ja) | 2008-02-29 | 2008-02-29 | 光デバイスおよびこれを用いた光送受信器 |
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