JP2009204184A - 多管円筒式の熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱交換器の胴内に蒸気又はドレンを導入する熱交換器において、該蒸気及びドレンが流入・接触する該熱交換器胴板及び内部品が、クロム含有量が0.15〜0.30重量%である規格材料のボイラ及び圧力容器用炭素鋼鋼板で形成されており、該ボイラ及び圧力容器用炭素鋼鋼板による前記胴板の形成範囲は、少なくとも前記熱交換器胴内への蒸気入口管台部及びドレン入口管台部の管台中心より管台径の4倍以上の胴長を含む範囲、及び該熱交換器の器内へ導入された前記蒸気が流れる通路を形成する隔壁を含む範囲とする。
【選択図】図2
Description
また、前記湿分分離加熱器では被加熱流体である高圧タービン排気が湿り蒸気であるため、蒸気が流入、衝突する炭素鋼使用部位にエロージョン・コロージョン減肉が発生しやすいという問題がある。
また、湿り蒸気を胴内に導入するその他の熱交換器でも同様の問題が起こりうる。
しかしながら、ステンレス鋼は熱伸び量が大きく、部材に温度分布が生じる場合には熱応力が問題となる。また、高温域での強度低下が大きいため、圧力容器では強度確保のための板厚増加が必要となるが、機器重量の増加、及びこれに伴い機器据付部の基礎荷重が増加することで機器据付建屋の強度設計への影響もあり、コスト的な面からも現実的ではなく、給水加熱器や脱気器、湿分分離加熱器の胴板の材料としてステンレス鋼を用いることは難しい。
さらに、発電所で長年に渡り使用された熱交換器では経年的なエロージョンを受けることは避けられず、経年監視を行って経年的にエロージョン減肉を起こしている部分には溶接補修を行うか、又はステンレス製のプロテクタ板を溶接取付けするのが一般的であるが、仮に熱交換器の胴板(耐圧容器部分)で低合金鋼(Cr−Mo鋼)を使用した部分にエロージョン減肉が発生していても、前記のような制約から溶接補修後の熱処理が行えない場合には溶接補修そのものが出来ないという問題点があり、給水加熱器や脱気器、湿分分離加熱器の胴板、及び器内部品の材料として低合金鋼(Cr−Mo鋼)を用いることについては、技術的課題が多いのが現状である。
なお、耐エロージョン・コロージョン性の向上対策として、前記のとおり炭素鋼板の表面にステンレス製のプロテクト板を貼り付けたり、又は、ステンレス鋼と炭素鋼を貼りあわせたグラッド鋼板を使用することが行われており、このような技術は例えば特許文献1に開示されているが、根本的な問題の解決にはなっていない。
熱交換器の胴内に蒸気又はドレンを導入する熱交換器において、該蒸気及びドレンが流入・接触する該熱交換器胴板及び内部品が、クロム含有量が0.15〜0.30重量%である規格材料のボイラ及び圧力容器用炭素鋼鋼板で形成されており、該ボイラ及び圧力容器用炭素鋼鋼板による前記胴板の形成範囲は、少なくとも前記熱交換器胴内への蒸気入口管台部及びドレン入口管台部の管台中心より管台径の4倍以上の胴長を含む範囲、及び該熱交換器の器内へ導入された前記蒸気が流れる通路を形成する隔壁を含む範囲としたことを特徴とする。
図5は、日本機械学会:JSME S CA1−2005 発電用設備規格 配管減肉管理に関する規格(2005年版)(増訂版)から引用したクロム含有量(重量%)と減肉による重量減少量(g/m2)の関係を示したグラフであり、縦軸は炭素鋼の重量減少量、横軸はクロム含有量を示し、溶存酸素濃度5ppb未満、中性の流体を試験時間2000時間流通させたときのデータである。図5から明らかであるように、クロム含有量が増加すると腐食による減肉量(重量減少量)が減少しており、例えばクロム含有量が0%と0.3%ではほぼ5倍の減肉量の違いがある。また、クロム含有量が0.15%では約0.7g/m2の重量減少量であるので、クロム含有量が0%で2.5g/m2の重量減少量であるとすると、0.7/2.5=0.28、即ちクロム含有量0.15%の炭素鋼は、クロム含有量0%の炭素鋼の28%の減肉量に抑えることができる。
従ってクロム含有量の下限を0.15%と規定し、一定以上のクロム含有量のSBを使用することで酸化による腐食減肉量を小さくすることができる。
前記微量Cr炭素鋼で形成される範囲は、発電設備で使用されている機器の実績により蒸気の衝突によるエロージョン・コロージョン減肉が大きい範囲、つまり、少なくとも前記熱交換器胴内への蒸気入口管台部及びドレン入口管台部の管台中心より管台径の4倍以上の胴長を含む範囲、及び該熱交換器の器内へ導入された前記蒸気が流れる通路を形成する隔壁を含む範囲以上とする必要があるが、範囲の上限は特に限定されるものではなく胴全体を微量Cr炭素鋼で形成してもよい。
そのため、クロム含有量が0.15〜0.30重量%であるJIS規格材料のSB材(微量Cr炭素鋼)で、少なくとも前記熱交換器胴内への蒸気入口管台部及びドレン入口管台部の管台中心より管台径の4倍以上の胴長を含む範囲、及び該熱交換器の器内へ導入された前記蒸気が流れる通路を形成する隔壁を含む範囲を形成することで、ドレンを導入することに起因するエロージョン・コロージョン減肉を減少させることができる。
なお、図1は火力発電設備の概略構成図、図2は加圧水(PWR)型原子力発電設備の概略構成図である。
図1及び図2に従って、火力及び原子力発電設備の概要について説明する。
図1において、ボイラ10aで発生した蒸気は、主蒸気として高圧タービン1Aに送られ、該高圧タービン1Aを駆動する。高圧タービン1Aを駆動させた後の排気蒸気はボイラ10aで再加熱されて、中圧タービン1Bに送られ、該中圧タービン1Bを駆動し、さらに、該中圧タービン1Bを駆動した蒸気は低圧タービン1Cへ送られ該低圧タービン1Cを駆動する。そして、高圧タービン1A、中圧タービン1B及び低圧タービン1Cの駆動力により、これらの高圧、中圧、低圧タービン1A、1B、1Cに直結した図示しない発電機を駆動して発電を行う。
低圧タービン1Cを駆動した後の排気蒸気は、前記低圧タービン1Cの排気蒸気出口に設けられた復水器3に送られ、該復水器3で冷却され凝縮して水(復水)となる。そして、前記復水器3で凝縮した水は復水ポンプ4によって図示しない復水処理装置に送られ、ここで鉄、銅等の不純物が除去される。その後、前記不純物が除去された水は、複数(本実施例においては3つ)の低圧給水加熱器6a〜6cで加熱、脱気器7で脱気及び加熱され、給水ポンプ8により加圧された水(給水)となり高圧給水加熱器9aへ送られる。前記加圧水は複数(本実施例においては2つ)の高圧給水加熱器9a〜9bで加熱されてボイラ10aへ供給され、加熱されて再びタービン駆動蒸気として使用される。
蒸気発生器10bで発生した蒸気は主蒸気として高圧タービン1Aへ送られ、該高圧タービン1Aを駆動する。高圧タービン1Aを駆動させた後の排気蒸気は湿分分離加熱器2内で排気蒸気内の湿分(水滴)を除去し主蒸気からの注記蒸気及び高圧タービン1Aからの注記蒸気により再加熱されて、低圧タービン1Cに送られる。
以降において、低圧給水加熱器6a〜6d及び高圧給水加熱器9a〜9bは何れもほぼ同じ構造であるので、給水加熱器のうちの1つとして低圧給水加熱器6bについて説明し、次いで湿分分離加熱器2、脱気器7について説明していく。
図3を用いて低圧給水加熱器6bについて説明する。
低圧給水加熱器6bの前段の低圧給水加熱器6aで加熱された復水は、復水入口管台63から低圧給水加熱器6bの水室66内に入り、伝熱管68内へ送られる。復水は伝熱管68内を通過するときに抽気蒸気入口管台61より低圧給水加熱器6bの胴内100へ供給される抽気蒸気により加熱される。また、後段の給水加熱器より低圧給水加熱器6bの胴内100へ供給されたドレンは低圧給水加熱器6bの胴内で一部が減圧により瞬間的に蒸発(フラッシュ)し、伝熱管68内の復水を加熱する。これらの抽気蒸気及びドレンがフラッシュした蒸気は伝熱管68内の復水を加熱する(抽気蒸気及びフラッシュ蒸気は復水により冷却される)ことにより凝縮し、低圧給水加熱器6bのドレンとなって、ドレン出口管台69より排出され、前段の給水加熱器の胴内へ供給される。伝熱管68内で加熱された復水は水室67を経て復水出口管台64より排出され、後段の給水加熱器、脱気器、ボイラ、蒸気発生器等へ送られる。
なお、領域Aは前記抽気蒸気入口管台61の中心より前記抽気蒸気入口管台径Dの4倍の胴長4Dとし、領域Bは前記ドレン入口管台62の中心より前記ドレン入口管台径dの4倍の胴長4dとする。
また、領域Bにおいてはドレン入口62から導入されたドレン及び該ドレンが瞬間蒸発して発生した蒸気によるエロージョン・コロージョン減肉を、領域BをCr含有量を規定しない炭素鋼で製作した場合と比較して削減することが可能となる。
なお、領域A及び領域B以外の胴内においては、蒸気の衝突頻度が小さく、蒸気によるエロージョン・コロージョン減肉が比較的発生しにくいためCr含有量を規定しない炭素鋼でも実績的に問題はないが、給水加熱器を製作する際に1つの統一した材料で製作する方が製作管理上は容易であり、胴板全体を微量Cr炭素鋼で製作してもよい。
図4(A)〜(D)を用いて湿分分離加熱器2について説明する。
湿分分離加熱器2は、円筒状の胴本体胴板20内に、湿分セパレータ211、第1段加熱器管群212、及び第2段加熱器管群213を内包している。胴本体中央部の下部には蒸高圧タービンからの排気蒸気(以下サイクル蒸気と称する)入口管台21が設けられており、前記サイクル蒸気入口管台21の胴内側には半円筒状の受衝板221が設置されている。また、胴本体中央部には仕切板222及び天井板223が設置され、前記サイクル蒸気が前記管群212及び213をバイパスしない構造としている。
なお、前記図3の斜線で示した部位以外の部分おいては、湿分セパレータ211にて湿分が除去された蒸気で、サイクル蒸気の衝突による影響はほとんどなくCr含有量を規定しない炭素鋼で製作しても問題はないが、湿分分離加熱器を製作する際に1つの統一した材料で製作する方が製作管理上は容易であり、胴板、及び内部品全体を微量Cr炭素鋼で製作してもよい。
図5を用いて脱気器7について説明する。
前記低圧給水加熱器6c又は6dで加熱された復水は、脱気器71A、71B上部の復水入口管台72より流入し、スプレー弁73にて脱気器71A、71B内に分配供給される。一方、前記中圧タービン1B又は高圧タービン1Aよりの抽気蒸気が脱気器71A、71B胴中央部の下部に設けられた蒸気入口管台74より前記脱気器71A、71B内に供給され、蒸気噴射穴の空けられた蒸気噴射管75内に流入し、前記蒸気噴射管75の蒸気噴射穴より脱気器71胴内に噴射される。前記脱気器71の胴内では、前記復水が加熱源となる抽気蒸気と接触することにより、脱気・加熱される。加熱された復水と加熱後凝縮した抽気蒸気ドレンは脱気器タンク76へ供給・貯水される。
なお、領域H以外の胴本体胴板においては、蒸気の衝突によるエロージョン・コロージョン減肉がほとんど発生しないためCr含有量を規定しない炭素鋼で製作しても問題はないが、脱気器を製作する際に1つの統一した材料で製作する方が製作管理上は容易であり、胴本体胴板全体を微量Cr炭素鋼で製作してもよい。
1B 中圧タービン
1C 低圧タービン
2 湿分分離加熱器
3 復水器
4 復水ポンプ
6a、6b、6c、6d 低圧給水加熱器
7 脱気器
8 給水ポンプ
9a、9b 高圧給水加熱器
20 胴本体胴板(湿分分離加熱器)
21 サイクル蒸気入口管台
61 抽気蒸気入口管台
62 ドレン入口管台
63 復水入口管台
68 伝熱管
72 復水入口管台
74 蒸気入口管台
100 胴(高圧給水加熱器)
Claims (4)
- 熱交換器の胴内に蒸気及びドレンを導入する熱交換器において、
前記蒸気及びドレンが流入・接触する前記熱交換器の胴板及び内部品が、クロム含有量が0.15〜0.30重量%である規格材料のボイラ及び圧力容器用炭素鋼鋼板で形成されていることを特徴とする熱交換器。 - 前記ボイラ及び圧力容器用炭素鋼鋼板による胴板の形成範囲を、少なくとも前記熱交換器胴内への前記蒸気入口管台部及び前記ドレン入口管台部の管台中心より前記管台径の4倍以上の胴長を含む範囲、及び前記熱交換器の器内へ導入された前記蒸気が流れる通路を形成する隔壁を含む範囲としたことを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
- 前記ボイラ及び圧力容器用炭素鋼鋼板による胴板及び内部品の形成範囲を、少なくとも前記熱交換器の器内へ導入された前記蒸気が流通又は衝突する部位を包囲する範囲としたことを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
- 前記熱交換器は、火力発電設備及び原子力発電設備で用いられる給水加熱器、脱気器、及び湿分分離加熱器であって、前記給水加熱器の蒸気入口管台部及びドレン入口管台部、前記脱気器や湿分分離加熱器の蒸気入口管台部及び胴内蒸気通路隔壁部を前記ボイラ及び圧力容器用炭素鋼鋼板で形成したことを特徴とする請求項1〜3何れかに記載の熱交換器。
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