JP2009202308A - 転動摺動装置部材の研磨方法及び転動摺動装置部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】弾性体からなり、且つ平均粒径が45μm以上、又は粒度が#400以下の砥粒4aを含有する第一の研磨粒子2aを被研磨物1に衝突させる第一の研磨工程と、弾性体からなり、且つ平均粒径が6μm以下、又は粒度が#2000以上の砥粒4bを含有する第二の研磨粒子2bを被研磨物1に衝突させる第二の研磨工程とを行う。
【選択図】図1
Description
転動摺動装置、及び転動摺動装置部材における油溜まりの形成方法としては、例えば、特許文献1〜6に開示されているものがある。
また、特許文献2に開示された油溜まりの形成方法は、二段のバレル加工を行い、第一工程の粗加工で凹凸を形成した後、第二工程の仕上げ工程で凸部を丸めて表面をプラトー化するものである。この技術により、比較的容易で低コストで油溜まり形成することができる。しかしながら、この構成では、ワークを砥粒とともにかごに入れて回転研磨するバレル加工を採用しているため、ワークが回転落下してワーク同士が衝突して打痕がつくため、自重の重い大きなワークには適用できないという問題があった。
また、特許文献4に開示された油溜まりの形成方法は、樹脂製の保持器をエッチングして表面に凹凸を形成するものである。しかしながら、特許文献3と同様に、材料が樹脂に限定されてしまうという問題があった。
このように、弾性体からなり且つ砥粒を含有する第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子を前記被研磨物の表面に対して0°以上90°以下の角度で衝突させるので、投射された第二の研磨粒子2bが転動体1の表面1aを滑走する距離が長くなり、研磨効率が向上する。また、前記被研磨物の回転方向に対する入射角度は、被研磨物の回転方向に対して90°に近づくほど油溜まり内の油が逃げにくいため、油保持機能に優れる研磨目(油溜まり)を作成することができる。
本発明の請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法であって、前記第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子を前記被研磨物に衝突させる方式がエアーブラスト方式であることを特徴とする。ここで、前記第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子を被研磨物に衝突させる手段としては、所定の衝突エネルギーを持って被研磨物に衝突させるものであれば特に限定はないが、遠心力を利用した回転羽方式、水や研削液と共に前記第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子を吐出する液体方式、気体と共に前記第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子を吐出するエアー式ブラスト方式等を適用することが好ましい。これらの中でも、エアー式ブラスト方式によれば、加工時の研磨カス等もエアーの流れに乗せてフィルター等で簡便に回収でき、被研磨物に付着して残る研削液等も無いため、加工全体が効率の良いものとなるため、最も好適である。回転羽方式では、研磨カス等が被研磨面に残りやすく、液体方式では被研磨面に付着した液体の除去作業、使用後の研削液の処理作業等の負担が発生する。エアーは、いわゆる空気に限らず、窒素、アルゴン等の不活性ガス等も使用できる。エアー式ブラスト方式で前記第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子を吐出する場合の吐出圧力は0.1〜1.5Mpa、より好ましくは0.2〜0.6Mpaである。吐出圧力が0.1MPa未満だと、研磨効率が落ち、吐出圧力が1.5Mpaを超えると、投射される研磨粒子が粉砕されやすくなる。
本発明の第1の実施形態を図1〜図4に示す。図1(a)及び図1(b)は、本発明に係る転動摺動装置部材の研磨方法の第1の実施形態における研磨工程を示し、図1(a)は、第一の研磨工程、図1(b)は第二の研磨工程を示す。図1(a)及び図1(b)において、符号1は円筒ころ軸受の転動体(ころ)を示しており、この転動体1の周面部(転動面)1aに対して、図1(a)に示す第一の研磨工程を行い、その後、被研磨物(転動体1)の表面全面がすじ状の凹凸面となったことを契機として、図1(b)に示す第二の研磨工程を行う。図1(a)に示すように、第一の研磨工程は、砥粒4aを含む弾性体(弾性材)からなる第一の粒子2aをショットブラスト用ノズル3から転動体1の周面部1aに投射して研磨する方法である。また、図1(b)に示すように、第二の研磨工程は、砥粒4bを含む弾性体(弾性材)からなる第二の研磨粒子2bをショットブラスト用ノズル3から転動体1の表面(周面部)1aに所定の角度で投射して研磨する方法である。
また、砥粒4aは、粒度が#400以下、又は平均粒径が45μm以上であることが好ましい。砥粒4aの粒度が#400を超えるか、又は平均粒径が45μm未満であると、適切な深さを持った油溜まりが形成されないことがある。
弾性体(弾性材)としては、ゴム、熱可塑性エラストマなどが挙げられる。
また、第一の研磨粒子2a及び第二の研磨粒子2bに対する砥粒4a及び砥粒4bの含有率としては、10〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
第一の研磨工程、及び第二の研磨工程において、転動体1の表面1aに対して第一の研磨粒子2a、及び第二の研磨粒子2bを投射する角度は、転動体1の回転方向に直交する方向に対して、0°以上90°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、20°以下が更に好ましい。上記範囲において、角度が小さいほど、投射される第一の研磨粒子2a及び第二の研磨粒子2bが転動体1の表面1aを滑走する距離が長くなり、研磨効率が向上する。
このように、第一の研磨工程において、平均粒径の大きい砥粒4aを含む第一の研磨粒子2aを転動体1の表面に対して所定角度で投射することにより、油溜まりを転動体1の表面に深く形成することができる。また、第二の研磨工程において、第二の研磨粒子2bを用いることによって、第一の研磨工程において形成された油溜まりを維持したまま、表面を平滑化し、接触対象への損傷を低減した表面性状を形成することができる。
本発明者らは、表1に示す仕様の円筒ころ軸受の転動体に、表2に示す条件で第一の研磨工程を行ったときの表面粗さと、その後、表3に示す条件で第二の研磨工程を行ったときの表面粗さを測定した。転動体の表面の表面粗さとしては、JIS B0601で定義される算術平均粗さ(Ra)及びスキューネス(Rsk)を採用した。
図2(a)に示すように、第一の研磨工程後における転動体の表面粗さは、Raが0.08〜0.16μmであり、Rskが−0.7〜0.7μmであった。一方、図3(b)に示すように、第一の研磨工程及び第二の研磨工程後における転動体の表面粗さは、Raが0.10〜0.20μmであり、Rskが−1.0〜−3.0μmであった。
このように、転動体の表面に対して、第一の研磨工程及び第二の研磨工程を行うことによって、溝部の態様で形成された油溜まりを維持しながらも、接触対象に損傷を与えない表面粗さを有する転動摺動装置部材を提供することができる。
まず、円筒状の試験体S1を作製した。この試験体S1は、内径40mm、外径80mm、軸方向の長さ16mm、表面の粗さ(Ra)0.1μmであった。この試験体S1の表面に対して、第一の研磨工程及び第二の研磨工程を行い、前述のころ試作時と同様の条件で処理することにより油溜まり形状を作製した。なお、処理後の表面粗さは、いずれもRa:0.1〜0.20μm、Rsk:−1.0〜−5.0μmの範囲内であることを確認している。
このようにして得られた試験体S1の上に、試験体S2を両者の軸を合わせて固定して、図4に示す2円筒試験装置を組み立てた。ここで、試験体S1を駆動側に取付け、試験体S2を従動側に取付けた。
このようにして評価した結果を図5に示す。図5に示すように、実施例1〜4は、表面に油溜まりが形成されているので、比較例2よりも耐焼付き性が向上していることがわかる。
なお、第2の実施形態ではボールねじのねじ軸外周面に形成された軸側ねじ溝の仕上げ研磨に本発明を適用した場合を例示したが、ボールねじのナット内周面に形成されたナット側ねじ溝やボールに仕上げ研磨を施す場合にも本発明を適用できることは勿論である。
2a 第一の研磨粒子
2b 第二の研磨粒子
3 ショットブラスト用ノズル
4a 砥粒
4b 砥粒
Claims (8)
- 弾性体からなり、且つ平均粒径が45μm以上、又は粒度が#400以下の砥粒を含有する第一の研磨粒子を被研磨物に衝突させる第一の研磨工程と、
弾性体からなり、且つ平均粒径が6μm以下、又は粒度が#2000以上の砥粒を含有する第二の研磨粒子を被研磨物に衝突させる第二の研磨工程とを行うことを特徴とする転動摺動装置部材の研磨方法。 - 前記第一の研磨工程及び第二の研磨工程において、前記被研磨物に対する前記第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子の入射角度が、前記被研磨物の表面に対して0°以上90°以下をなし、前記被研磨物の回転方向に対して70°〜120°をなすことを特徴とする請求項1記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子に含まれる前記砥粒の割合が10〜90質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子の平均粒径が0.02〜3mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記弾性体がゴムまたは熱可塑性エラストマであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子に含まれる前記砥粒がアルミナ(Al2O3)またはダイヤモンドまたは炭化けい素(SiC)からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記第一の研磨粒子及び第二の研磨粒子を前記被研磨物に衝突させる方式がエアーブラスト方式であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の方法で前記第一の研磨工程及び第二の研磨工程を行うことにより、前記第二の研磨工程後の被研磨物表面の表面粗さ(Ra)が0.10〜0.20μm、スキューネス(Rsk)が−1.0〜−5.0μmであり、研磨目方向が被研磨物の回転方向に対して70°〜120°であることを特徴とする転動摺動装置部材。
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