JP2009113189A - 転動摺動装置部材の研磨方法及び転動摺動装置部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被研磨物に研磨粒子2を投射して被研磨物の表面を仕上げ研磨する際に、研磨粒子を被研磨物に90°以下の角度で被研磨物に投射する。研磨粒子2として、ゴム、熱可塑性エラストマなどの弾性材からなり、かつ♯2000以上の砥粒4を含有する研磨粒子2を用いて被研磨物の表面を仕上げ研磨する。
【選択図】図1
Description
しかし、ラップ加工においては、砥石から脱落した砥粒が円筒ころの表面(被研磨面)に突き刺さって残存することが避けられない。ラップ加工もしくは超仕上加工においては、被研磨物の被研磨面に砥石を押し付けて加工しているため、砥石から脱落した砥粒が被研磨面に押し付けられ、突き刺さってしまうことになる。被研磨面に突き刺さって残存する砥粒は、その後の洗浄工程などでは容易に除去できず、最終的な製品になるまで残存することになる。砥粒が突き刺さったままの状態で使用条件が高荷重条件あるいは高速で転動または摺動するような条件では、突き刺さった砥粒に起因して、表面損傷や表面摩耗が発生することになる。
ボールねじのねじ軸やナットのねじ溝は形状が複雑なため、これまで各種の仕上げ研削方法が考案されてきた(例えば、特許文献2〜4参照)。しかし、いずれも砥石を連続的に押し付けて加工する方法であり、ラップ加工と同様に、砥粒の突き刺さりによる砥粒の残留がねじ溝のフランクに発生するという事態が避けられない。
また、光沢面を得るための研磨方法として、従来からバレル研磨が適用されてきた(例えば、特許文献8参照)。しかし、この研磨方法は、バレル容器の中にメディアと被研磨物と研削液を入れ、バレル容器に機械的回転または振動を与えて被研磨物を研磨する方法であり、被研磨物同士が衝突しても打痕などが発生しない小型の被研磨物には適用できても、被研磨物の大きさが大きい場合には打痕などが発生するため、大形の被研磨物には適用できないか、あるいは1個毎の処理となり、加工コストが高くなってしまうという難点があった。
単位面積あたりの異物の量が、面積率で0.1%以下であれば、異物により転動・摺動面が損傷を受ける確率が格段に低くなる。そのため、転動・摺動面が長期に渡り性能を維持できる。ここで、面積率は、被研磨表面を電子顕微鏡等で拡大観察し、単位面積当たりに含まれる着色点(通常は黒くなっている)の面積を画像処理ソフト等を用いて計測することで求められる。
本発明の請求項14に係る発明は、請求項1〜13のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法であって、前記研磨粒子を前記被研磨物に衝突させる方式がエアーブラスト方式であることを特徴とする。ここで、研磨粒子を被研磨物に衝突させる手段としては、所定の衝突エネルギーを持って被研磨物に衝突させるものであれば特に限定はないが、遠心力を利用した回転羽方式、水や研削液と共に研磨粒子を吐出する液体方式、気体と共に研磨粒子を吐出するエアー式ブラスト方式等が好ましく適用可能である。この中でも、エアー式ブラスト方式によれば、加工時の研磨カス等もエアーの流れに乗せてフィルター等で簡便に回収でき、被研磨物に付着して残る研削液等も無いため、加工全体が効率の良いものとなるため、最も好適である。回転羽方式では、研磨カス等が被研磨面に残りやすく、液体方式では被研磨面に付着した液体の除去作業、使用後の研削液の処理作業等の負担が発生する。エアーは、いわゆる空気に限らず、窒素、アルゴン等の不活性ガス等も使用できる。エアー式ブラスト方式で研磨粒子を吐出する場合の吐出圧力は0.1〜1.5Mpa、より好ましくは0.2〜0.6Mpaである。
本発明の第1の実施形態を図1〜図4に示す。図1において、符号1は円筒ころ軸受の転動体(ころ)を示しており、この転動体1の周面部(転動面)1aには、図示しない都石で周面部1aを研削加工した後、図1に示す方法、すなわち平均粒子径が0.02〜3mm程度の研磨粒子2をショットブラスト用ノズル3から転動体1の周面部1aに投射して研磨する方法で仕上げ研磨が施されている。
本発明者らは、表1に示す仕様の円筒ころ軸受の転動体にラップ加工のみを施した場合とラップ加工後にショットブラスト加工を表2に示す条件で施した場合の転動体表面の表面粗さを測定した。その結果を図5に示す。
したがって、転動体などの転がり軸受部品に研磨粒子を投射して転がり軸受部品の表面を仕上げ研磨する際に、弾性材からなり且つ砥粒を含有する研磨粒子を用いることにより、転がり軸受部品の表面を光沢度30以上の仕上げ研磨とすることができる。
なお、表5において、No.1〜16は自動調心ころ軸受の転動体にラップ加工を施した後、ショットブラスト加工を表2に示す条件で施した場合を示し、No.17,18は自動調心軸受の転動体にラップ加工のみを施した場合を示している。また、No.1〜18の寿命比の各値は試験開始から軸受軌道輪の軌道面にはくりが生じるまでの回転時間を寿命とし、各サンプルにつき5回の寿命試験を行なって、ワイブル関数に基づくL10寿命を計算し、最も寿命の短かったNo.17のL10を1とした時の値である。さらに、No.1〜18の表面粗さの各値は各軸受から転動体を5つ抜き出して測定した値であり、No.1〜18の砥粒刺さり面積率の各値は転動体の表面を電子顕微鏡等で拡大観察し、単位面積当りに含まれる着色点(通常は黒くなっている)の面積を画像処理ソフト等を用いて計測した値である。
本発明が適用される玉軸受の一例を図8に示す。同図において、符号21は玉軸受の内輪、22は内輪21の外周に配置された外輪を示し、内輪21の外周面には、軌道溝23が内輪21の全周にわたって形成されている。この軌道溝23は外輪22の内周面に形成された軌道溝24と対向しており、軌道溝23と軌道溝24との間には、転動体としての複数の玉25が転動自在に設けられている。なお、図中26は玉25を保持する保持器を示している。
ここで、内輪21の軌道溝23に投射される研磨粒子としては、ゴム、熱可塑性エラストマなどの弾性体(弾性材)からなり、且つ♯2000以上の砥粒を含有した研磨粒子2が用いられ、研磨粒子2に含まれる砥粒の材質としては、アルミナやダイヤモンドが挙げられる。また、研磨粒子に含まれる砥粒の割合としては、0.5〜90質量%、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは0.5〜8質量%、最も好ましくは0.5〜5質量%であることが望ましい。
2 研磨粒子
3 ショットブラスト用ノズル
4 砥粒
7 研削目
8 転動体表面に突き刺さって残留している砥石の砥粒
11 ボールねじのねじ軸
12 ボールねじのナット
13 軸側ねじ溝
14 ナット側ねじ溝
15 ボール
16 ボール循環チューブ
21 玉軸受の内輪
22 玉軸受の外輪
23,24 軌道溝
25 玉
Claims (18)
- 弾性体からなり且つ砥粒を含有する研磨粒子を被研磨物に衝突させて仕上げ研磨を行うことにより、前記被研磨物の表面を光沢度20以上の仕上げ面とすることを特徴とする転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子を前記被研磨物に衝突させて仕上げ研磨を行うときに、当該仕上げ研磨の前工程の研削方向に対して前記研磨粒子を0°以上90°以下の角度で被研磨物表面に衝突させることを特徴とする請求項1記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子を前記被研磨物に衝突させて仕上げ研磨を行うときに、当該仕上げ研磨の前工程の研削方向に対して前記研磨粒子を0°以上90°以下の角度で被研磨物表面に衝突させ、かつ前記仕上げ研磨の前工程の研削面のなす平面に対する垂直方向に対しての前記研磨粒子の入射角度が0°を超え90°未満であることを特徴とする請求項1記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子を前記被研磨物に衝突させて仕上げ研磨を行うときに、前記研磨粒子に含まれる砥粒として前記仕上げ研磨の前工程で使用した砥石の砥粒よりも粒径の小さい砥粒を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子による仕上げ研磨の前工程に切削加工が含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子による仕上げ研磨の前工程に塑性加工が含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子による仕上げ研磨の前工程に成型加工が含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子により仕上げ研磨が施された後の被研磨物表面に固着している残留異物の量が単位面積あたりの面積率で0.1%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子に含まれる砥粒の割合が0.5〜90質量%で、前記砥粒に対する前記弾性体の割合が10〜99.5質量%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子の大きさが0.02〜3mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記弾性体がゴムまたは熱可塑性エラストマであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子に含まれる前記砥粒が♯2000以上の砥粒であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子に含まれる前記砥粒がアルミナ(Al2O3)またはダイヤモンドまたは炭化けい素(SiC)からなることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子を前記被研磨物に衝突させる方式がエアーブラスト方式であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 前記研磨粒子を前記被研磨物に衝突させて仕上げ研磨を施した後の被研磨物表面の光沢度が30以上であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項記載の転動摺動装置部材の研磨方法。
- 請求項1記載の方法で前記研磨粒子を前記被研磨物に衝突させて仕上げ研磨を行うことにより、当該仕上げ研磨の前工程で被研磨物表面に残留した砥粒が除去されていることを特徴とする転動摺動装置部材。
- 請求項1記載の方法で前記研磨粒子を前記被研磨物に衝突させて仕上げ研磨を行うことにより、当該仕上げ研磨後の被研磨物表面の表面粗さが0.1μm以下であることを特徴とする転動摺動装置部材。
- 請求項1記載の方法で前記研磨粒子を前記被研磨物に衝突させて仕上げ研磨を行うことにより、当該仕上げ研磨後の被研磨物表面の表面粗さが0.03μm以下であることを特徴とする転動摺動装置部材。
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