JP2009202224A5 - - Google Patents

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耐疲労鋼における部分溶け込み溶接の評価方法
本発明は、耐疲労鋼を用いた溶接構造物の部分溶け込み溶接の溶接品質を超音波探傷によって評価する技術に関するものである。
溶接構造物では、長期間の供用により溶接部を起点として疲労亀裂の発生する場合がある。溶接構造物としての橋梁においても、交通量の著しい増加や過積載車の影響と考えられる疲労損傷が散見されている。
鋼床版構造においては、デッキプレートとUリブとの接合部等の疲労損傷例が報告されており、特に、溶接ルート部を起点としてデッキプレートの板厚を貫通する疲労亀裂は、亀裂の検知が困難であり、道路の維持管理上、重要な課題となっている。
特に、前記接合部のルート部から発生する疲労亀裂は、デッキプレート上の舗装に妨げられて亀裂の発見が困難であるにもかかわらず、道路陥没など道路交通への影響が懸念される亀裂であるため、重要度は非常に大きい。
なお、特開平7−242992号公報(特許文献1参照)では、耐疲労鋼が開示されている。耐疲労鋼とは、フェライト(軟相)とベイナイト(硬相)を最適に配置した二相鋼で、強度、靱性、溶接性、加工性は従来鋼と同等あるいはそれ以上に維持しつつ、溶接部の疲労亀裂の発生特性と母材部の疲労亀裂進展抵抗性を向上させた鋼材である。
耐疲労鋼の好適な構成例としては、質量%で、C:0.01〜0.3 %、Si: 0.1〜0.5 %、Mn:0.3〜2.0 %およびsol.Al:0.005 〜0.1 %、さらに、Cr:1.5 %以下(無添加でもよい)、Mo:0.6 %以下(無添加でもよい)、Ni:0.5 %以下(無添加でもよい)、Cu:1.0 %以下(無添加でもよい)、Nb:0.1 %以下(無添加でもよい)、Ti:0.1 %以下(無添加でもよい)およびV:0.1 %以下(無添加でもよい)を含み、残部はFeと不可避不純物からなる鋼板であって、その組織は硬質部と軟質部とからなり、この2部分の硬度差がビッカース 硬度で150 以上であることを特徴とする疲労亀裂進展抑制効果を有する鋼板があげられる。
または、質量%で、C:0.01〜0.3 %、Si: 0.1〜0.5 %、Mn:0.3〜2.0 %およびsol.Al:0.005 〜0.1 %、さらに、Cr:1.5 %以下(無添加でもよい)、Mo:0.6 %以下(無添加でもよい)、Ni:0.5 %以下(無添加でもよい)、Cu:1.0 %以下(無添加でもよい)、Nb:0.1 %以下(無添加でもよい)、Ti:0.1 %以下(無添加でもよい)およびV:0.1 %以下(無添加でもよい)を含み、残部はFeと不可避不純物からなる鋼板であって、その組織は硬質部の素地とこの素地に分散した軟質部からなり、硬質部の 素地と軟質部との硬度差がビッカース硬度で150 以上、軟質部の平均粒径が50μm 以下であることを特徴とする疲労亀裂進展抑制効果を有する鋼板があげられる。
または、質量%で、C:0.01〜0.3 %、Si: 0.1〜0.5 %、Mn:0.3〜2.0 %およびsol.Al:0.005 〜0.1 %、さらに、Cr:1.5 %以下(無添加でもよい)、Mo:0.6 %以下(無添加でもよい)、Ni:0.5 %以下(無添加でもよい)、Cu:1.0 %以下(無添加でもよい)、Nb:0.1 %以下(無添加でもよい)、Ti:0.1 %以下(無添加でもよい)およびV:0.1 %以下(無添加でもよい)を含み、残部はFeと不可避不純物からなる鋼板であって、その組織は硬質部と軟質部とからなり、この2部分の硬度差がビッカース 硬度で150 以上、硬質部の平均間隔が50μm 以下であることを特徴とする疲労亀裂進展抑制効果を有する鋼板があげられる。
特開平7−242992号公報
本発明においては、耐疲労鋼を鋼床版構造に適用した場合の疲労強度改善向上量を定量的に評価することを目的とし、その手段として超音波探傷技術を採用したものである。
本発明にかかる耐疲労鋼における部分溶け込み溶接の評価方法においては、
耐疲労鋼を適用した鋼床版構造における溶接部の近傍に、当接面から所定の斜角で超音波探傷ビームを照射し得る集束型斜角探触子を当接させて配置し、
探触子の探傷ビームの入射角線上のエコー高さを計測することによって、
切欠き試験片を用いて予め以下の手順で作成した算定カーブを参照して、
溶接部の溶け込み予想量を算出する。
前記算定カーブの作成手順は以下の通りである。
1)耐疲労鋼による素材に、異なる深さの横穴を設けて階段式横穴試験片を作成する。
2)各横穴からの反射エコー高さを測定し、各横穴の深さと、前記反射エコー高さとの関係をプロットして距離振幅特性曲線を得る。
3)特定の深さの横穴からの反射エコー高さを基準感度と設定し、この基準感度に対する前記距離振幅特性曲線の相対的な反射エコー高さを相対エコー高さとする。
4)耐疲労鋼による切欠き試験片を異なる切欠き量ごとに複数作成し、各切欠き量と、その切欠き試験片における相対エコー高さとの関係をプロットして得られたカーブを算定カーブとして作成する。
本発明にかかる耐疲労鋼における部分溶け込み溶接の評価方法によれば、
溶接部の近傍に配置した探触子の探傷ビームの入射角線上のエコー高さを計測し、
切欠き試験片を用いて予め作成した算定カーブを参照することによって、
高い信頼性で溶接部の溶け込み予想量を算出して、部分溶け込み溶接を評価することが可能となった。
また、前記算定カーブを作成するときには、
評価対象材料と同質の素材で作成した階段式横穴試験片を用いて、距離振幅特性曲線を得て、基準感度に対する相対エコー高さを得て、
切欠き試験片を異なる切欠き量ごとに複数作成し、各切欠き量と、その切欠き試験片における相対エコー高さとの関係をプロットして得られたカーブを算定カーブとして作成するので、
高い信頼性で溶接部の溶け込み予想量を算出して、部分溶け込み溶接を評価することが可能となった。
以下に、本発明にかかる耐疲労鋼における部分溶け込み溶接の評価方法を、その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。
本発明にかかる評価方法では、まず初めに以下の手順で、評価するための算定カーブを作成する。
1)評価対象材料と同質の耐疲労鋼の素材に、異なる深さ(3mm〜12mm)の横穴を設けて階段式横穴試験片を作成する。図1参照。
図1において、
評価対象材料と同質の耐疲労鋼で作成した厚さ19mm、幅25mmの板状の試験片用の素材1に、表面からの深さ3mmの位置で幅方向に貫通したφ2.0mmの横孔2を設けた。同様に深さ4.5mm、6.0mm、7.5mm、9.0mm、10.5mm、12mmの横穴2を20mm間隔で設けて、試験片3とした。
そして、前記試験片3の表面に集束型二振動子斜角探触子を設置して、超音波振動を与えたときの反射振動(エコー高さ)の強度変化を実験して、図2に示したような、距離振幅特性曲線を得た。中間の反射振動の強度の特性をM線とし、このM線より6dB強い強度の特性をH線、6dB弱い強度の特性をL線とした。
なお、前記集束型二振動子斜角探触子の探傷角度としては、70°探触子のものと、75°探触子のものを使用した。
(1)図2において、横軸にはビーム路程(mm)を示し、縦軸にはエコー高さ(%)を示している。
(2)基準値としては、RB-41-NO.1φ3mmの横穴(深さ5mm)からの反射エコーを基準感度とし、この基準感度を、前記距離振幅特性曲線のH線に合わせた。
(3)図4に示したようなUリブ溶接の部分溶け込みを模した切欠き試験片4を、耐疲労鋼で作成した。
図4に示した切欠き試験片4は、80mm×80mmの板状であり、1辺に沿って、幅20mmで切欠き量Srの切欠き部41が形成されている。この切欠き部41と非切欠き部42との境界部分の傾斜角は12.5°とした。
図3に示した溶接時の模式図において、
厚さ12mmの耐疲労鋼を鋼床板5とし、そこに図4に示した切欠き試験片相当の形状のUリブ6を溶接する場合を示している。
溶接後の模式図を示した図3の(b)において、
切欠き試験片相当形状のUリブ6は、溶接部Aにおいて、Uリブ溶接時の溶接収縮により、Uリブコバ面と鋼床板のデッキ面とが密着した状態とした。
図3の(b)に示したように、Uリブ6の表面に前記集束型二振動子斜角探触子7を設置して、超音波のビーム方向が溶接部Aに向くようにして、切欠き量Srを種々変えて、切欠き量Srと相対エコー高さHdsとの関係をプロットすることによって、後述する図5、6を得た。
(4)Uリブ溶接試験体6の超音波探傷およびマクロ試験片の溶け込み残し量Wrを測定して、溶け込み残し量Wrと相対エコー高さHdwの関係と、前記、切欠き量Srと相対エコー高さHdsの関係を重ねあわせることによって、後述する図7、8を得た。
<超音波探傷結果>
(1)切欠き試験片の測定結果
70°探触子および75°探触子の2種類の探触子を用いて、切欠き試験片を超音波探傷し、図5、6のような、切欠き量Srと相対エコー高さHdsの関係を示すカーブ(以下、単に「算定カーブ」という。)を得た。図5は板厚6mm、図6は板厚8mmの場合の算定カーブを示している。算定カーブaは70°探触子を用いた場合、算定カーブbは75°探触子を用いた場合、カーブcは理論値を当てはめたものである。
これらの算定カーブa,bによれば、切欠き量が板厚の約1/3までは、切欠き量Srと相対エコー高さHdsの関係が傾斜しており、約1/3を超えると、切欠き量Srに関わらず相対エコー高さHdsがほぼ一定値となっている。このような傾向は、超音波ビームに直交する平面きずに関する理論式(JSNDI教本「超音波探傷試験II P82〜P84、(社)非破壊検査協会監修」)に基づいたカーブcとほぼ一致した。
(2)Uリブ溶接試験体の測定結果
次に、75°探触子を用いて、Uリブ溶接試験体を超音波探傷し、相対エコー高さHdwを測定した。溶接部断面マクロ試験片で観察・計測した、実際の溶け込み残し量Wrと溶接部の相対エコー高さHdwを測定し、実際の溶け込み残し量Wrと溶接部の相対エコー高さHdwの関係をプロットし、前記、切欠き量Srと相対エコー高さHdsの関係(算定カーブd,e)を重ねあわせて、図7、8を得た。図7はUリブの板厚6mm、図7はUリブの板厚8mmの場合である。縦線fは75%溶け込み量を示す線である。
前記カーブdによれば、Uリブの板厚6mmの場合の溶接部の相対エコー高さHdwが、−4.0〜+6.0dBの範囲で、実際の溶け込み残し量Wrは、前記算定カーブより溶け込み量が深い側、即ち、安全側となっている。相対エコー高さHdwが、+6.0dBを超える場合は、算定カーブより相対エコー高さHdsが一定値となり、実際の溶け込み残し量Wrの推定が難しくなる。
前記カーブeによれば、Uリブの板厚8mmの場合も同じ傾向が認められる。
以上の結果から、前記算定カーブを用いることによって、Uリブ溶接試験体における溶け込み残し量Wrを、相対エコー高さHdwの値に基づいて想定することが、充分高い信頼性で可能であることが明らかになった。
以上のように、前記算定カーブを用いることによって、Uリブ溶接試験体における溶け込み残し量Wrを、相対エコー高さHdwの値に基づいて想定することが可能であることが明らかになったので、以下においては、実際の評価対象である耐疲労鋼の鋼床版構造における部分溶け込み溶接の評価方法を説明する。
1)実際の評価対象の鋼床版構造においてUリブの溶接を行う。
2)前記溶接部のUリブに、前記集束型斜角探触子を当接させて、相対エコー高さを計測する。
3)得られた相対エコー高さに基づいて、前記算定カーブを参照して、溶接部の溶け込み予想量を算出する。
4)算出された溶け込み予想量が、所定の判断基準(板厚の75%以上)を満たした場合に、当該溶接部を合格と評価する。
以上のように、前記算定カーブを用いることで、超音波探傷技術を用いることで、Uリブ板厚6mmの75%以上の溶け込み量を確認し、評価することができた。
なお、本発明の評価方法に用いる集束型斜角探触子としては、70度から75度の集束型ニ振動子斜角探触子が適している。
本発明にかかる耐疲労鋼における部分溶け込み溶接の評価方法に用いる階段式横穴試験片を示す図である。 図1の試験片を用いて得られた距離振幅特性曲線である。 溶接時の模式図である。 切欠き試験片の形状を示す図である。 切欠き試験片(板厚6mm)による算定カーブである。 切欠き試験片(板厚8mm)による算定カーブである。 Uリブ溶接試験体(板厚6mm)の測定結果である。 Uリブ溶接試験体(板厚8mm)の測定結果である。

Claims (1)

  1. 耐疲労鋼を適用した鋼床版構造における溶接部の近傍に、当接面から70度から75度の斜角で超音波探傷ビームを照射し得る集束型斜角探触子を当接させて配置し、
    探触子の探傷ビームの入射角線上のエコー高さを計測することによって、
    切欠き試験片を用いて予め以下の手順で作成した算定カーブを参照して、
    溶接部の溶け込み予想量を算出することを特徴とする耐疲労鋼における部分溶け込み溶接の評価方法。
    但し、算定カーブの作成手順は以下の通りである。
    手順1)耐疲労鋼による素材に、異なる深さの横穴を設けて階段式横穴試験片を作成 する。
    手順2)各横穴からの反射エコー高さを測定し、各横穴の深さと、前記反射エコー高 さとの関係をプロットして距離振幅特性曲線を得る。
    手順3)特定の深さの横穴からの反射エコー高さを基準感度と設定し、この基準感度 に対する前記距離振幅特性曲線の相対的な反射エコー高さを相対エコー高さとする。
    手順4)耐疲労鋼による切欠き試験片を異なる切欠き量ごとに複数作成し、各切欠き 量と、その切欠き試験片における相対エコー高さとの関係をプロットして得られたカ ーブを算定カーブとして作成する。
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