JP2009201357A - 植物の根で発現するプロモーター - Google Patents

植物の根で発現するプロモーター Download PDF

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Abstract

【課題】植物の根で特異的に発現するプロモーター活性を有する遺伝子及びそれを用いて植物体で特異的に外来遺伝子を発現させる方法を提供する。
【解決手段】サツマイモの塊根において、高頻度に発現している遺伝子IT394の上流域に存在するプロモーター活性を有するDNA。及びその制御下に外来遺伝子が機能的に連結したDNA、並びにそれらを含むベクター、更に該ベクターを含む形質転換細胞及び植物体。
【選択図】なし

Description

本願発明は、植物の根で特異的に発現するプロモーター活性を有する遺伝子に関する。さらに詳しくは、サツマイモの塊根で発現する遺伝子(IT394)のプロモーター領域、もしくはその一部を用いて、植物体で特異的に外来遺伝子を発現させる方法に関する。
遺伝子組換え植物は有用物質(例えばインシュリン、成長ホルモン、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球刺激因子(G-CSF)、インターフェロン、ワクチン、抗体などのタンパク製剤)などの生産の場として期待されている。遺伝子組換え植物を使うことの利点として、動物細胞などを使うよりもはるかに低コストでの生産、人に感染するウィルスやBSEなどの汚染の心配がない、環境に与える負荷が小さい、食べる医薬品として利用が可能などがあげられている。
有用物質を生産させる組換え植物としてはタバコ、ジャガイモ、トウモロコシなどの研究が進んでおり、一部ではすでに実用化している。
サツマイモは、イネの約5倍という高い生産性を有しており、粗放的栽培、不良環境下での栽培、低肥料、低農薬での栽培が可能で、救荒作物とも言われており、物質生産の場として有望であると考えられる。現在までに、サツマイモのデンプンを利用した生分解性プラスチックの原料生産や、色素原料の生産が行われている。しかしながら、組換えサツマイモを上記のような有用物質生産の場として利用した例はほとんど報告されていない。
サツマイモは重要作物だが、生産地域がアジアの発展途上国に偏っており、特に分子遺伝学研究は他の作物に比べて遅れている(例えばGenBankに登録されているESTの数は2006年2月現在で、イネが102万、トウモロコシが、68万、ジャガイモが22万なのに対して、サツマイモはわずか8千にも満たない。)。
なお、サツマイモ由来のプロモーターに関する情報は少なく、さらにサツマイモの塊根で発現することが確かめられているプロモーターに関する報告は限られたものとなっている。
以下に挙げるプロモーターはサツマイモから単離したものだが、サツマイモの形質転換体で発現することを実験的に確かめたものではなく、他の植物種や一過的発現解析を行っているだけである。
・スポラミンのプロモーター
スポラミンはサツマイモの塊根の可溶タンパクの60〜80%を占め、他の組織からはほとんど検出されないことから、プロモーターに関しても多くの研究が行われており、ショ糖や傷害誘導性のプロモーターであることが報告されている。中村研三ら(特許文献1参照)は、スポラミンプロモーターによってジャガイモの塊茎特異的に遺伝子を発現させることができると主張している。そしてサツマイモの塊根でも発現させることを主張しているが、実験は行っていない。
またYu, SM.(特許文献2参照)は、スポラミンプロモーターによってジャガイモの葉、茎、塊茎で組換えタンパクを高発現させることができたと報告している。しかしサツマイモやにんじん、たまねぎなど塊根、塊茎を形成する植物で実験を行ってはいない。
またWang, SJ. ら(非特許文献1参照)は、スポラミンプロモーターが形質転換タバコで傷害応答することを確認している。
・βアミラーゼのプロモーター
βアミラーゼはサツマイモの塊根タンパク質の中ではスポラミンについで存在量の多いタンパク質である。βアミラーゼのプロモーターをGUSにつないでタバコの形質転換体を作成したところ、スポラミンプロモーター同様にショ糖誘導性が認められたとの報告がある(非特許文献2参照)。
・パーオキシダーゼのプロモーター
サツマイモのパーオキシダーゼのプロモーターは、タバコのプロトプラストで強い発現をしたという報告がある。(非特許文献3参照)
・MADS-box 遺伝子のプロモーター
Myung BJ.らは、サツマイモのMADS-box 遺伝子がサツマイモの塊根で高レベルに発現しており、ニンジンとダイコン(small radishes)の塊根を使った一過的発現解析で、MADS-box 遺伝子のプロモーターをつないだGUSが発現していることを確認している。そしてこれらのことからサツマイモのMADS-box 遺伝子のプロモーターは植物の貯蔵根で高レベルの発現をする事が出来ると主張している(特許文献3参照)。しかし、サツマイモでは発現解析を行っておらず、一過的発現解析と組換え体を用いた解析では必ずしも結果は一致するものではない。
サツマイモの組換え体を作成して、その塊根で実際に外来遺伝子が発現していることを確認したという報告は、一般に用いられているウィルス由来のCaMV35Sプロモーターを使ったもの以外には見つかっていない。しかしCaMV35Sプロモーターでは、発現させる遺伝子によっては植物体の成長に悪影響を与える場合があるため、組織特異的なプロモーターを利用することが望ましい。
特許番号第2833789号 US20030177517 WO2006022467 Wang, SJ. ら著、「Wound-response regulation of the sweet potato sporamin gene promoter region」、Plant Mol. Biol.、2002年、Vol.48、p.223-231 Maeo, K.ら著、「Sugar-responsible elements in the promoter of a gene for β-amylase of sweet potato」、Plant Mol. Biol.、2001年、Vol.46、p.627-637 Kim, KY.ら著、「A novel oxidative stress-inducible peroxidase promoter from sweetpotato: molecular cloning and characterization in transgenic tobacco plants and cultured cells」、Plant Mol. Biol.、2003年、Vol.51、p.831-838
本発明は、植物の根で特異的に遺伝子発現を制御するプロモーター、該プロモーターを含有する発現ベクター、該発現ベクターを含む形質転換植物もしくは植物体、およびその製造方法、該プロモーターを用いて所望の遺伝子を植物体において発現させる方法、ならびに該プロモーターを有効成分とする外来遺伝子の発現を誘導する薬剤の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った。即ち、本発明者らは、サツマイモの塊根で発現している遺伝子とそのプロモーターを単離し、そのプロモーターが実際にサツマイモの塊根で外来遺伝子を発現させることを示すに至った。
詳しくは、本発明者らは、まずサツマイモの塊根からcDNAライブラリーを作成し、クラスター解析によって発現頻度の高いcDNA(IT394)を得て、その上流域を取得した。そしてIT394の上流域にGFPを接続してシロイヌナズナに導入したところ、根と胚軸で蛍光が観察された。また、サツマイモに導入したところ、塊根で強い蛍光が観察された。このことから、IT394の上流域はサツマイモの塊根で機能するプロモーターとして利用できることが示された。
なお、IT394 cDNAはメタロチオネインにホモロジーがある。IT394の発現をRT-PCRによって解析したところ、サツマイモの根、葉、カルスで発現していることが確認された。高系14号由来の配列を用いているが、アヤムラサキにもほぼ同じ配列が存在する。
上述のように、本発明者らは、サツマイモの塊根で発現するプロモーターを単離することに成功し、本発明を完成させた。これまでにサツマイモの塊根で機能することが明らかになっているプロモーターはほとんど報告されていない。
本発明は、サツマイモの塊根で特異的に遺伝子発現を制御するプロモーター、該プロモーターを含有する発現ベクター、該発現ベクターを含む形質転換植物もしくは植物体、およびその製造方法、該プロモーターを用いて所望の遺伝子を植物体において発現させる方法、ならびに該プロモーターを有効成分とする外来遺伝子の発現を誘導する薬剤の提供に関し、より具体的には、
〔1〕 下記の(a)〜(c)のいずれかに記載のプロモーター活性を有するDNA、
(a)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNA
(b)配列番号:8に記載の塩基配列において1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるDNA
(c)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
〔2〕 植物の根においてプロモーター活性を有することを特徴とする、〔1〕に記載のDNA、
〔3〕 前記根がサツマイモの塊根である、〔2〕に記載のDNA、
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAの制御下に、外来遺伝子が機能的に連結した構造を有するDNA、
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のDNAを含むベクター、
〔6〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のDNA、または〔5〕に記載のベクターを含む、形質転換細胞、
〔7〕 微生物である、〔6〕に記載の形質転換細胞、
〔8〕 植物細胞である、〔6〕に記載の形質転換細胞、
〔9〕 〔8〕に記載の細胞を含む、形質転換植物体、
〔10〕 〔9〕に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体、
〔11〕 〔9〕または〔10〕に記載の形質転換植物体の繁殖材料、
〔12〕 〔4〕に記載のDNA、または〔5〕に記載のベクターを植物細胞へ導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の作製方法、
〔13〕 植物体において外来遺伝子を発現させる方法であって、〔4〕に記載のDNA、または〔5〕に記載のベクターを該植物の細胞へ導入する工程を含む方法、
〔14〕 外来タンパク質が含まれる植物体の製造方法であって、〔4〕に記載のDNA、または〔5〕に記載のベクターを植物の細胞へ導入する工程を含む方法、
〔15〕 植物体において外来遺伝子を発現させることを特徴とする、外来タンパク質生産植物体の製造方法であって、〔4〕に記載のDNA、または〔5〕に記載のベクターを植物の細胞へ導入する工程を含む方法、
〔16〕 〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の形質転換細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から、〔5〕に記載のベクターにより発現された外来遺伝子によってコードされるタンパク質を回収することを特徴とする、外来タンパク質の製造方法、
〔17〕 以下の工程(a)および(b)を含む、外来タンパク質の製造方法、
(a)〔14〕または〔15〕に記載の方法によって、外来タンパク質が含まれる植物体を製造する工程
(b)前記植物体から外来タンパク質を回収する工程
〔18〕 前記植物体がイモ類または根菜類である、〔13〕〜〔15〕、〔17〕のいずれかに記載の方法、
〔19〕 前記植物体が塊根または塊茎を有する植物体である、〔13〕〜〔15〕、〔17〕のいずれかに記載の方法、
〔20〕 前記塊根が、サツマイモの塊根である、〔19〕に記載の方法、
〔21〕 〔14〕または〔15〕に記載の方法によって取得される植物体、
〔22〕 人為的に作製された植物体であって、〔4〕に記載のDNAを有し、外来遺伝子によってコードされるタンパク質が発現されることを特徴とする植物体、
〔23〕 植物体がサツマイモである、〔21〕または〔22〕に記載の植物体、
〔24〕 以下の工程(a)〜(c)を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAのプロモーター活性を調節する化合物のスクリーニング方法、
(a)〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAの制御下に、レポーター遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被検化合物を接触させる工程
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)該レポーター遺伝子の発現レベルを変化させる化合物を選択する工程
〔25〕 植物体において外来遺伝子を発現させるためのプロモーターとして利用されるDNA薬剤であって、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のDNA、または〔5〕に記載のベクターを有効成分とする、遺伝子発現誘導剤、を提供するものである。
本発明者らによって、サツマイモの塊根等の植物の根で発現するプロモーターを単離することに成功した。当該プロモーターを利用することによって、サツマイモの塊根を含む植物体において効率的に医薬品原料、工業用原料などの有用物質を生産させることが可能になる。特に、植物の根において適切な遺伝子を発現させることで、線虫抵抗性、耐病性、耐冠水性、耐乾燥性を有する植物、あるいは特定の栄養素が欠乏した土壌、過剰な土壌などでも生育可能な植物を作出できる可能性がある。また、有害物質を効率的に吸収できる植物を作出することで、ファイトレメディエーション、土壌浄化に利用することもできる。あるいは当該植物体の栄養改変や、医薬品や生分解プラスチックなどの原料生産など、植物体において外来遺伝子を発現させることによる応用範囲は広く、有用性は高い。
また、植物体の成分を改変することで、食味の良い植物体、身体に良い成分を含有する植物体の作出も可能になる。例えばサツマイモでは塊根の成分を改変することで、おいしいサツマイモ、身体に良いサツマイモの作出が可能になる。
以下本発明を詳細に説明する。本発明者らによって、サツマイモ等の植物の根において、プロモーター活性を有するDNAが同定された。本発明の上記DNAの好ましい態様としては、サツマイモの塊根で発現頻度の高いcDNA(IT394)の上流域のDNAを挙げることができる。このようなIT394の上流域730 bpの塩基配列を配列番号:8に示す。
本発明は、植物の根において発現するプロモーター活性を有するDNAを提供する。本発明のDNAの好ましい態様としては、下記の(a)〜(c)のいずれかに記載のプロモーター活性を有するDNAである。
(a)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNA
(b)配列番号:8に記載の塩基配列において1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるDNA
(c)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
本発明の「プロモーター活性を有するDNA(本明細書中では、プロモーターDNAという場合もある)」とは、DNAを鋳型としたmRNAの合成(転写)の開始に必要な特定の塩基配列を含むDNAを意味し、自然界に存在するDNAだけでなく、組換えなどの人工的な改変操作により作成されたDNAも含まれる。
プロモーター活性は、当業者においては公知の方法を用いることにより、適宜評価することが可能である。公知の方法としては、後述するように、レポーター遺伝子を用いて該遺伝子の発現を指標とすることにより測定する方法などを例示することができる。
本発明のプロモーター活性を有するDNAは、配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAだけでなく、配列番号:8に記載の塩基配列において1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物におけるプロモーターとして作用する能力を有するDNA、または、配列番号:8に記載の塩基配列において、その3'末端に翻訳効率を上げる塩基配列などを付加したものや、プロモーター活性を失うことなく、その5'末端を欠失したものも含まれる。
上記DNAを調製するために、当業者によりよく知られた方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Southern, EM., J Mol Biol, 1975, 98, 503.)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki, RK. et al., Science, 1985, 230, 1350.、Saiki, RK. et al., Science, 1988, 239, 487.)の他に、例えば、該DNAに対し、site-directed mutagenesis法(Kramer, W. & Fritz, HJ., Methods Enzymol, 1987, 154, 350.)により変異を導入する方法が挙げられる。
本発明において欠失、置換等の変異が導入される塩基の数は、変異を導入されたDNAがプロモーター活性を有する限り、特に制限されないが、通常では20塩基対以内、好ましくは10塩基対以内、より好ましくは5塩基対以内、最も好ましくは3塩基対以内である。
さらに、本発明のプロモーター活性を有するDNAは、配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを含む。ここで、ストリンジェントな条件とは、特に制限されるものではないが、例えば42℃、2×SSC(300 mM NaCl、30 mMクエン酸)、0.1% SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC 、0.1% SDSの条件であり、さらに好ましくは、65℃、0.1×SSCおよび0.1% SDSの条件である。これらの条件では、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれらの要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
また、配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAに対応する他の植物の内在性のDNAは、一般的に、配列番号:8に記載のDNAと高い相同性を有する。高い相同性とは、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上(例えば、95%以上、さらには96%、97%、98%または99%以上)の相同性を意味する。この相同性は、mBLASTアルゴリズム(Altschul et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-7)によって決定することができる。
本発明のプロモーター活性を有するDNAは、植物の根においてプロモーター活性を有することを特徴とするDNAである。
本発明のDNAがプロモーター活性を示す「植物」とは、特に制限されないが、好ましくはヒルガオ科サツマイモ属の植物であり、好ましくはサツマイモである。
サツマイモには種々の品種が知られているが、本発明のプロモーター活性を有するDNAは、いずれの品種に内在するDNAであっても構わない。例えばサツマイモの品種としては、高系(コウケイ)14号、アヤムラサキ、鳴門金時、土佐紅、ことぶき、ムラサキマサリ、パープルスイートロード、コガネセンガン、ベニアズマ、ベニアカ、ベニサツマ、ベニハヤト、ベニオトメ、ベニマサリ、ベニワセ、ベニコマチ、サツマヒカリ、サツマアカ、サニーレッド、ジェイレッド、ジョイホワイト、アヤコマチ、ハマコマチ、山川紫、種子島ゴールド、種子島ろまん、安納いも、安納紅、安納こがね、アリアケイモ、タマユタカ、シロユタカ、ミナミユタカ、シロサツマ、コナホマレ、タマオトメ、ダイチノユメ、オキコガネ、アケムラサキ、サツマスターチ、農林1号、クイックスイート等が挙げられるが、これら以外の品種であっても構わない。
なお本発明の「植物の根」の好ましい態様としては、サツマイモの塊根を挙げることができる。
さらに本発明は、本発明のプロモーター活性を有するDNAの制御下に、外来遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNAを提供する。本発明において外来遺伝子とは、特に制限されず、所望の遺伝子を用いることができる。
本発明における「外来遺伝子」としては、例えば、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球刺激因子(G-CSF)、インスリン、インターフェロン、成長ホルモン、抗体、あるいはワクチンなどの遺伝子を挙げることができる。これらの遺伝子を植物体で生産させることにより、安価で大量に、安全な医薬品原料の生産が可能になる。
さらに、上記外来遺伝子として、アントシアニン活性化因子、フィターゼ、スポラミンなどの、植物体の栄養価や機能性に関与する遺伝子も例示することができる。
サツマイモのアントシアニンには抗酸化、抗変異原性、肝機能障害軽減効果、血圧降下作用などが報告されている。アントシアニン活性化因子を発現させることにより、これらの機能性を植物体に付与することができる。
またフィターゼを発現させることで、植物体中に存在するリン酸の吸収効率を上げることができる。
またスポラミンは発現を抑制することで、トリプシンインヒビター活性が抑制され飼料としての栄養価が改善される。
本発明における「抑制」には、標的となる遺伝子(例えば、スポラミン遺伝子等)の発現が完全に抑制されている場合、および、該遺伝子の発現量が有意に低下している場合等が含まれる。
さらに、上記外来遺伝子として、ストレス耐性遺伝子、栄養素のトランスポーター遺伝子、または重金属のキレーター遺伝子も例示することができる。これらの遺伝子を植物で発現させることで、植物が不良土壌環境(乾燥、冠水、貧栄養、アルカリ性、酸性、重金属存在等の条件下)でも生育することができるようになる。
さらに、上記外来遺伝子として、線虫等の病害虫やウィルスへの抵抗性遺伝子も例示することができる。線虫類への抵抗性遺伝子を発現させることで、植物体を害虫から保護することができ、農薬の使用量を控えることができる。
また、本発明の上記DNAは、外来遺伝子に加えてさらにターミネーターが連結した構造であってもよい。該ターミネーターは、通常、植物由来ターミネーター(植物ターミネーターという場合もある)を指し、本発明のプロモーターの近傍に配置されるDNA配列であり、例えば、カリフラワーモザイクウイルス由来のターミネーター、あるいはノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネーター等を例示することができるが、ターミネーターとしての機能を有するものであれば、これらに特に制限されない。
本発明において「機能的に連結」とは、本発明のプロモーター活性を有するDNAの制御下にある外来遺伝子が、本発明のプロモーター活性を有するDNAからの転写を受けるように、該プロモーター活性を有するDNAと結合している状態を指す。プロモーター活性を有するDNAおよび外来遺伝子を「機能的に連結」させることは、当業者においては一般的な遺伝子工学技術を用いて、簡便に行い得ることである。
本発明のDNAには、天然あるいは単離・精製されたゲノムDNA、および化学合成DNAが含まれる。ゲノムDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能である。
本発明のDNAは、目的とする植物、例えば、サツマイモの組織よりゲノムDNAを抽出し精製し、得られたDNAを鋳型としてPCRによって単離することができる。
本発明における、配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNA、およびこれとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプロモーター活性を有するDNAを単離するためには、例えば、配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNA上の配列であって、本発明のプロモーター活性を有するDNAを増幅するためのプライマーセットを用いることができる。このプライマーセットを用いて、植物のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行い、その後、得られた増幅DNA断片をプローブとして用いて、同じ植物のゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。
PCRは、市販のキットおよび装置の製造者の指針に基づいて行うか、当業者に周知の手法で行い得る。遺伝子ライブラリーの作製法、および遺伝子のクローニング法なども当業者に周知である。例えば、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、農村文化社(1989年))や、「Molecular Cloning(Sambrookら(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press)」などの実験書を参照することができる。得られた遺伝子の塩基配列は、当該分野で公知のヌクレオチド配列解析法または市販されている自動シーケンサーを利用して決定し得る。PCR技術やハイブリダイゼーション技術によって単離し得る、配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAもまた、本発明のDNAに含まれる。
上記のようなスクリーニングによって単離および同定されたプロモーターDNA(すなわち、配列番号:8に示されるプロモーター活性を有するDNA、またはそのホモログ)が、植物の根に特異的な遺伝子発現誘導性を示すことは、以下のようにして解析が可能である。
上記の配列を、例えば、βグルクロニダーゼ(GUS)などのレポーター遺伝子の上流に連結する。レポーター遺伝子としては、GUS遺伝子の他にクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子や、ルシフェラーゼ(LUC)遺伝子、GFP遺伝子、sGFP(S65T)遺伝子なども利用が可能である。
上記のようにして作成されたキメラ遺伝子構築物は、例えば、アグロバクテリウムを介してサツマイモなどの植物に導入してその機能を解析することが可能である。pHM161をベクターとして用いた場合は、キメラ遺伝子を含む組換えプラスミドを、例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのEHA101株に凍結解凍法を用いて導入し、得られた形質転換菌を、例えば、減圧浸潤法によりシロイヌナズナなどの植物体に感染させる。感染処理した植物より得られた種子を、ハイグロマイシンなど用いたベクターに適した薬剤を含む培地に播種し、得られた薬剤耐性個体を用いてGFPについて解析する。実体顕微鏡やデジタルカメラにGFP用フィルターを装着して観察することにより、GFPが根で特異的に検出されることが期待される。
本発明のプロモーター活性を有するDNAで制御可能な遺伝子(外来遺伝子)としては、上述した遺伝子に限定されない。植物体(例えば植物の根など)において特異的に発現させたい所望の遺伝子を利用することが可能である。
また、本発明のプロモーター活性を有するDNAに他の発現制御配列を連結して本発明のプロモーター活性を有するDNAの機能を改変することが可能である。このような発現制御配列としては、エンハンサー配列やリプレッサー配列、インスレーター配列などが挙げられる。例えば薬剤に応答して抑制が解除されるリプレッサー配列を本発明のプロモーターDNAと連結したキメラプロモーターを作成し、その下流に目的の遺伝子を連結した構築物を植物に導入すると、得られた形質転換体では、薬剤が存在しない条件下では目的遺伝子の発現が抑制されているが、薬剤を投与することによって抑制が解除され、目的遺伝子が植物体(例えば植物の根など)で発現するようになることが期待される。
また本発明は、本発明のプロモーター活性を有するDNAを含むベクター、本発明のDNAの制御下に外来遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNAを含むベクター、および、本発明のプロモーターの下流に遺伝子挿入部位を有する構造のDNAを含むベクター、並びに、上記ベクターにさらにターミネーターを担持するベクターを提供する。
本発明のベクターは、通常、本発明のプロモーター活性を有するDNAを各種細胞内で複製可能なベクターに挿入したものである。この複製可能なベクターとしては、公知の種々のベクターを用いることができる。例えば、pUC誘導体などの大腸菌で増幅可能なベクター、pPZP2H-lacなどの大腸菌とアグロバクテリウムの双方で増幅可能なシャトルベクターなどが挙げられる。また、植物ウイルス、例えば、カリフラワーモザイクウイルスを利用することもできる。当業者においては、植物細胞内で複製可能なベクターを、各々の宿主細胞に応じて適宜選択することができる。なお、本発明のプロモーター活性を有するDNAをベクターに挿入する方法は、通常の遺伝子をベクターに挿入する常法に従う。
本発明のプロモーター活性を有するDNAまたはそれを含む発現ベクターは、以下のようにして利用することが可能である。本発明のプロモーター活性を有するDNAの下流に目的の遺伝子を連結したキメラ遺伝子を挿入した発現ベクターを構築する。このベクターをサツマイモなどの植物体に導入する。得られた形質転換植物においては、本発明のプロモーター活性を有するDNAの働きにより、根において目的遺伝子が特異的に発現し、目的とする形質が導入されることが期待される。この場合、35Sプロモーター等のように不要な組織においても発現することがないため、他の好ましくない形質が現れないことが期待される。
また本発明は、本発明のプロモーターDNA、または該DNAを有するベクターを含む、形質転換細胞を提供する。本発明の細胞は特に制限されるものではないが、好ましくは微生物細胞あるいは植物細胞である。
本発明の形質転換植物細胞は、本発明のDNAもしくはベクターを宿主細胞に導入し、形質転換させた植物細胞である。宿主細胞としては、例えば葉、根、茎、花および種子中の胚盤等の植物細胞、カルス、懸濁培養細胞等が挙げられる。細胞の由来する植物種としては、特に制限されるものではないが、例えば、ヒルガオ科の植物を挙げることができる。ヒルガオ科の植物としては、例えば、サツマイモ、アサガオ、ヒルガオ、ユウガオ、アメリカイモ等が挙げられる。尚、本発明における最も好ましい例として、サツマイモを挙げることができる。
また本発明は、本発明のDNAまたはベクターを植物細胞へ導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の作製方法を提供する。本発明のDNAもしくはベクターを宿主植物細胞中に導入するために、さまざまな手法を用いることができる。これらの手法には、形質転換因子としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)または、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を用いたT-DNAによる植物細胞の形質転換方法、プロトプラストに電気パルス処理してプラスミドを植物細胞へ導入するエレクトロポレーション法や、小細胞、細胞、リソソームなどとプロトプラストとの融合法、マイクロインジェクション法、ポリエチレングリコール法、あるいは、パーティクルガン法などや、その他の公知の方法が含まれる。
また、本発明のDNAまたはベクターを導入する植物細胞は、外植片の細胞であってもよく、これらの植物細胞から培養細胞を調製し、得られた培養細胞に導入してもよい。例えば葉、根、茎、花および種子中の胚盤等の植物細胞、プロトプラスト、カルス、懸濁培養細胞等が挙げられる。
プロトプラストへ直接導入する場合、通常、特別に必要なベクターはない。例えば、pUC誘導体のような単純なプラスミドなどを用いることができる。目的の遺伝子を植物細胞に導入する方法によっては、他のDNA配列が必要になることもある。例えばTiまたはRiプラスミドを植物細胞の形質転換に用いる場合には、TiおよびRiプラスミドのT-DNA領域の少なくとも右端の配列、大抵は両側の端の配列を、導入されるべき遺伝子の隣接領域となるように接続しなければならない。
アグロバクテリウム属菌を形質転換に用いる場合には、導入すべき遺伝子を、特別のプラスミド、すなわち中間ベクターまたはバイナリーベクターの中にクローニングする必要がある。中間ベクターはアグロバクテリウム属菌の中では複製されない。中間ベクターは、ヘルパープラスミドあるいはエレクトロポレーションによってアグロバクテリウム属菌の中に移行される。中間ベクターは、T-DNAの配列と相同な領域をもつため、相同的組換えによって、アグロバクテリウム属菌のTiまたはRiプラスミド中に取り込まれる。宿主として使われるアグロバクテリウム属菌には、vir領域が含まれている必要がある。通常TiまたはRiプラスミドにvir領域が含まれており、その働きにより、T-DNAを植物細胞に移行させることができる。
一方、バイナリーベクターはアグロバクテリウム属菌の中で複製、維持され得るので、ヘルパープラスミドあるいはエレクトロポレーション法あるいは凍結溶解法によってアグロバクテリウム属菌中に取り込まれると、宿主のvir領域の働きによって、バイナリーベクター上のT-DNAを植物細胞に移行させることができる。
なお、このようにして得られた中間ベクターまたはバイナリーベクター、およびこれを含む大腸菌やアグロバクテリウム属菌等の微生物についても、本発明の対象となる。
また、本発明のDNAもしくはベクターを導入して形質転換された植物細胞を効率的に選択するために、上記ベクターは、適当な選抜マーカー遺伝子を含む、もしくは選抜マーカー遺伝子を含むプラスミドベクターとともに植物細胞へ導入することが好ましい。この目的に使用される選抜マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質ハイグロマイシン耐性であるハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、カナマイシンまたはゲンタマイシン耐性であるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、および除草剤ホスフィノスリシン耐性であるアセチルトランスフェラーゼ遺伝子等を挙げることができる。
上記ベクターを導入した植物細胞は、導入した選抜マーカーに応じた選抜用薬剤を含む選抜用培地に置床し培養する。これにより、形質転換された植物細胞を得ることができる。
本発明の形質転換植物体とは、本発明の形質転換植物細胞から再生された(再分化された)形質転換植物体である。再分化の方法は、当業者であれば植物細胞の種類に応じて公知の技術を用いて適宜実施することができる。例えばジャガイモでは、Visserら(Visserら(1989), Theor. Appl. Genet., vol.78:p589-)の方法、シロイヌナズナではAkamaらの方法(Akamaら(1992), Plant Cell Rep., vol.12:p7-)、イネではFujimuraら(Fujimuraら(1995), PlantTissue Culture Lett., vol.2:p74-)の方法、トウモロコシではShillitoら(Shillitoら(1989), Bio/Technology, vol.7:p581-)の再分化方法が挙げられる。
これらの方法により作出された形質転換植物体の子孫またはクローンである形質転換植物体も本発明の対象である。さらに上記のような形質転換植物体または該形質転換植物体から得られる(からなる)繁殖材料(例えば種子、果実、塊茎、切穂、塊根、株、カルス、プロトプラストなど)を元にして得た形質転換植物体も本発明の対象になる。
一旦、染色体内に本発明のプロモーター(DNA)が導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。
本発明の植物体を作製する方法の好ましい態様においては、本発明のDNAまたはベクターを植物細胞(宿主細胞)に導入して形質転換植物細胞を得て、該形質転換植物細胞から形質転換植物体を再生する工程を含む。さらには、このようにして得られた形質転換植物体から植物種子を得て、該植物種子から植物体を生産する工程を含んでいてもよい。
植物体の再生は植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である(Toki. et al., Plant Physiol, 1995, 100, 1503-1507.)。例えば、形質転換植物体を作出する手法については、ポリエチレングリコールによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体を再生させる方法(Datta, S K. et al., In Gene Transfer To Plants (Potrykus I and Spangenberg Eds.), 1995, 66-74.)、電気パルスによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体を再生させる方法(Toki. et al., Plant Physiol, 1992, 100, 1503-1507.)、パーティクルガン法により細胞へ遺伝子を直接導入し、植物体を再生させる方法(Christou, et al., Bio/technology, 1991, 9, 957-962.)およびアグロバクテリウムを介して遺伝子を導入し、植物体を再生させる方法(Hiei. et al., Plant J, 1994, 6, 271-282.)等、いくつかの技術が既に確立し、本願発明の技術分野において広く用いられている。本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。形質転換細胞から再生させた植物体は、次いで順化用培地で培養する。その後、順化した再生植物体を、通常の栽培条件で栽培すると、植物体が得られ、成熟して結実して種子を得ることができる。
形質転換植物体から植物種子を得る工程とは、例えば、形質転換植物体を発根培地から採取し、水を含んだ土を入れたポットに移植し、一定温度下で生育させて、花を形成させ、最終的に種子を形成させる工程をいう。また、種子から植物体を生産する工程とは、例えば、形質転換植物体上で形成された種子が成熟したところで、単離して、水を含んだ土に播種し、一定温度、照度下で生育させることにより、植物体を生産する工程をいう。
なお、このように再生され、かつ栽培した形質転換植物体中に導入された外来DNAまたは核酸の存在は、公知のPCR法やサザンハイブリダイゼーション法によって、または植物体中の核酸の塩基配列を解析することによって確認することができる。この場合、形質転換植物体からのDNAまたは核酸の抽出は、公知のJ.Sambrookらの方法(Molecular Cloning, 第2版, Cold SpringHarbor laboratory Press, 1989)に準じて実施することができる。
また本発明は、植物体において外来遺伝子を発現させる方法を提供する。本発明の好ましい態様においては、本発明のプロモーター活性を有するDNAの制御下に外来遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNA、または本発明のプロモーター活性を有するDNAを含むベクターを該植物の細胞へ導入する工程を含む方法である。本方法においては、該DNAを、植物細胞へ導入し、該細胞を植物へ再生させることによっても行うことができる。該DNAの植物もしくは植物細胞への導入は、上述の方法によって実施することができる。
外来遺伝子として、遺伝子の発現を抑制する機能を有する核酸(例えば、以下に示すようなアンチセンスRNAまたはsiRNA等)を用いることによって、内在性遺伝子の発現を抑制することも本発明の方法に含まれる。本発明における「抑制」には、内在性遺伝子の発現が完全に抑制されている場合、および、植物体における上記内在性遺伝子の発現量が他の植物体における遺伝子の発現量と比較して有意に低下している場合等が含まれる。
特定の内在性遺伝子の発現を阻害する方法としては、アンチセンス技術を利用する方法が当業者によく知られている。アンチセンス核酸が標的遺伝子の発現を阻害する作用としては、以下のような複数の要因が存在する。即ち、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造が作られた部位とのハイブリッド形成による転写阻害、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエクソンとの接合点におけるハイブリッド形成によるスプライシング阻害、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング阻害、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行阻害、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング阻害、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始阻害、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳阻害、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻害、および核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現阻害などである。このようにアンチセンス核酸は、転写、スプライシングまたは翻訳など様々な過程を阻害することで、標的遺伝子の発現を阻害する(平島および井上, 新生化学実験講座2 核酸IV遺伝子の複製と発現, 日本生化学会編, 東京化学同人, 1993, 319-347.)。
アンチセンス核酸は、上記のいずれの作用により内在性遺伝子の発現を阻害してもよい。一つの態様としては、内在性遺伝子のmRNAの5'端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的と考えられる。また、コード領域もしくは3'側の非翻訳領域に相補的な配列も使用することができる。このように、内在性遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含む核酸もアンチセンス核酸に含まれる。このようなアンチセンス核酸は、本発明のプロモーター活性を有するDNAの下流に連結され、好ましくは3'側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。このようにして調製された核酸は、公知の方法を用いることで、所望の植物へ形質転換できる。アンチセンス核酸の配列は、形質転換される植物が持つ内在性の遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に抑制できる限り、完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは、標的遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相補性を有する。アンチセンス核酸を用いて標的遺伝子の発現を効果的に抑制するには、アンチセンス核酸の長さは少なくとも15塩基以上25塩基未満であることが好ましいが、必ずしもこの長さに限定されない。
さらに、内在性遺伝子の発現の阻害は、標的となる遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二本鎖RNAを用いたRNA干渉(RNA interferance;RNAi)によっても行うことができる。RNAi効果による阻害作用を有する核酸は、一般的にsiRNAとも言われる。RNAiは、標的遺伝子のmRNAと相同な配列からなるセンスRNAとこれと相補的な配列からなるアンチセンスRNAとからなる二本鎖RNAを細胞等に導入することにより、標的遺伝子mRNAの破壊を誘導し、標的遺伝子の発現を抑制し得る現象である。このようにRNAiは、標的遺伝子の発現を抑制し得ることから、従来の煩雑で効率の低い相同組換えによる遺伝子破壊方法に代わる簡易な遺伝子ノックアウト方法として、または、遺伝子治療への応用可能な方法として注目を集めている。RNAiに用いるRNAは、標的となる遺伝子もしくは該遺伝子の部分領域と必ずしも完全に同一である必要はないが、完全な相同性を有することが好ましい。
RNAi効果による阻害作用を有する核酸の一態様として、例えば標的遺伝子に対してRNAi効果を有する二本鎖RNA(RNAi)を挙げることができる。上記RNA分子には、一方の端が閉じた構造の分子、例えば、ヘアピン構造を有するsiRNA(shRNA)も含まれる。即ち、分子内において二本鎖RNA構造を形成し得る一本鎖RNA分子も含まれる。
上記「RNAi効果を有する二本鎖RNA」は、当業者ならば該二本鎖RNAの標的となる遺伝子の塩基配列を基に、適宜作製することができる。即ち、任意の塩基配列をもとに該配列の転写産物であるmRNAの任意の連続するRNA領域を選択し、この領域に対応する二本鎖RNAを作製することは、当業者ならば通常の試行の範囲内において適宜行い得る。また、該配列の転写産物であるmRNA配列から、より強いRNAi効果を有するsiRNA配列を選択することも、当業者ならば公知の方法によって適宜実施することが可能である。また、一方の鎖(一方の塩基配列)が判明していれば、当業者ならば容易に他方の鎖(相補鎖)の塩基配列を知ることができる。上述のようなsiRNAは、当業者であれば市販の核酸合成機を用いて適宜作製することが可能である。また、所望のRNAの合成については、一般の合成受託サービスを利用することができる。
本発明における「核酸」とはRNAまたはDNAを意味する。また、所謂PNA (peptide nucleic acid)等の化学合成核酸アナログも、本発明の核酸に含まれる。PNAは、核酸の基本骨格構造である五単糖・リン酸骨格を、グリシンを単位とするポリアミド骨格に置換したもので、核酸によく似た3次元構造を有する。また所謂LNA(Locked Nucleic Acid)も本発明の核酸に含まれる。
また本発明は、外来タンパク質が含まれる植物体の製造方法を提供する。本発明の好ましい態様においては、本発明のプロモーター活性を有するDNAの制御下に外来遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNA、または本発明のプロモーター活性を有するDNAを含むベクターを植物の細胞へ導入する工程を含む方法である。
また本発明は、植物体において外来遺伝子を発現させることを特徴とする外来タンパク質生産植物体の製造方法を提供する。本発明の好ましい態様においては、本発明のプロモーター活性を有するDNAの制御下に外来遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNA、または本発明のプロモーター活性を有するDNAを含むベクターを植物細胞へ導入する工程を含む方法である。
また本発明は、外来タンパク質の製造方法を提供する。本発明の好ましい態様においては、本発明の形質転換細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から、本発明のプロモーター活性を有するDNAを含むベクターにより発現された外来遺伝子によってコードされるタンパク質を回収することを特徴とする製造方法である。
上記本発明の外来タンパク質の製造方法の好ましい態様としては、例えば以下の工程(a)および(b)を含む製造方法である。
(a)上記の本発明の外来タンパク質が含まれる植物体の製造方法または外来タンパク質生産植物体の製造方法によって、外来タンパク質が含まれる植物体を製造する工程
(b)前記植物体から外来タンパク質を回収する工程
本発明の方法の対象となる植物体としては、特に制限されないが、例えば、イモ類植物または根菜類植物が挙げられる。
「イモ類」としては、サツマイモ、ジャガイモ、キャッサバ、タロイモ、ヤムイモ、サトイモ、ナガイモ、ヤマノイモ、コンニャクイモ、キクイモ等を挙げることができるがこれらは一例に過ぎず制限されない。
根菜類としては、ダイコン、ハツカダイコン、サトウダイコン(テンサイ)、ニンジン、カブ、タマネギ、エシャロット、ゴボウ、レンコン、クワイ、ショウガ、チョロギ、ニンニク、ラッキョウ、ワサビ、ユリネ等を挙げることができるがこれらは一例に過ぎず制限されない。
本発明における植物体としては、例えば種子、果実、葉、茎、塊茎、根、塊根などを有する植物体を挙げることができる。本発明においては、好ましくは塊根または塊茎を有する植物体であり、より好ましくは塊根を有する植物体であり、最も好ましくは塊根を有するサツマイモである。
本発明のプロモーター活性を有するDNAはサツマイモの塊根での遺伝子発現を制御するものであるが、上記したような植物体、好ましくはサツマイモの塊根と同様の構造・発生様式を示す植物体でも、本発明のプロモーター活性を有するDNAがプロモーターとしての機能を有するものと考えられる。
また本発明は、上記本発明の方法によって取得される植物体を提供する。また、人為的に作製された植物体であって、本発明のプロモーター活性を有するDNAを有し、外来遺伝子によってコードされるタンパク質が発現されることを特徴とする植物体を提供する。
このような植物体としては、特に制限はないが、好ましくはサツマイモである。
さらに本発明は、下記の工程(a)〜(c)を含む、本発明のプロモーター活性を有するDNAのプロモーター活性を調節する化合物のスクリーニング方法を提供する。
(a)本発明のDNAの制御下に、レポーター遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被検化合物を接触させる工程
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)該レポーター遺伝子の発現レベルを変化させる化合物を選択する工程
本発明のスクリーニング方法に用いられる被検化合物としては、特に制限はなく、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチド等の単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞抽出物、真核単細胞抽出物もしくは動物細胞抽出物等を挙げることができる。
本スクリーニング方法においては、まず、本発明のプロモーターDNAの制御下に、レポーター遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被検化合物を接触させる。
本発明において、「機能的に結合した」とは、本発明のプロモーター活性を有するDNAに転写因子が結合することにより、レポーター遺伝子の発現が誘導されるように、本発明のプロモーター活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが結合していることをいう。本スクリーニング方法における「本発明のプロモーター活性を有するDNAの制御下に、レポーター遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞」として、例えば、上記DNAを含むベクターを導入した細胞を挙げることができる。該ベクターは、当業者に周知の方法により作製することができる。ベクターの細胞への導入は、一般的な方法、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法、リポフェクタミン法、マイクロインジェクション法等によって実施することができる。
また、「本発明のプロモーター活性を有するDNAの制御下に、レポーター遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞」には、染色体に該DNAが挿入された細胞も含まれる。染色体へのDNAの挿入は、当業者に一般的に用いられる方法、例えば、相同組み換えを利用した遺伝子導入法により行うことができる。
本方法における「本発明のプロモーター活性を有するDNAの制御下に、レポーター遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞抽出液」とは、例えば、市販の試験管内転写翻訳キットに含まれる細胞抽出液に、本発明のプロモーター活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを添加したものを挙げることができる。
本スクリーニング方法における「接触」は、本発明のプロモーター活性を有するDNAの制御下に、レポーター遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞の培養液に被検化合物を添加する、または該DNAを含む上記の市販された細胞抽出液に被検化合物を添加することにより行うことができる。被検化合物がタンパク質の場合には、例えば、該タンパク質をコードするDNAを含むベクターを、該細胞へ導入する、または該ベクターを該細胞抽出液に添加することによって実施することも可能である。
本スクリーニング方法においては、次いで、該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する。レポーター遺伝子の発現レベルは、当業者においては、該レポーター遺伝子の種類を考慮して、測定することができる。
本スクリーニング方法においては、被検化合物の非存在下において測定した場合(対照)と比較して、被検化合物がレポーター遺伝子の発現レベルを変化させた場合に、被検化合物が本発明のDNAのプロモーター活性を調節する化合物であると判定される。
さらに、本発明においては、上記スクリーニング方法を利用して、複数の被検化合物について、本発明のDNAのプロモーター活性を調節するか否かを評価し、プロモーター活性を調節する化合物を選択することにより、効率的にプロモーター活性を調節する化合物をスクリーニングすることができる。該スクリーニング方法によって取得される化合物は、遺伝子の植物体に特異的な発現を制御することが可能であり、非常に有用である。
また、本発明のDNAもしくはベクターを、所望の植物体へ導入することにより、植物体において外来遺伝子の発現を誘導させることが可能である。
本発明における「遺伝子発現誘導剤」は、所望の外来遺伝子を植物体において発現させることを用途とする、本発明のDNAもしくはベクターを有効成分とする物質、または組成物(混合物)を指す。
本発明の薬剤においては、有効成分であるDNAまたはベクター以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、保存剤等が必要に応じて混合されていてもよい。
本発明の上記スクリーニング方法によって取得される化合物は、植物体のプロモーター活性を調節する化合物として有用である。該化合物を植物に添加することによって、栽培現場において植物体の形質や機能の調節が可能になると考えられる。
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。なお、ゲノムDNAの調製、mRNAの調整、DNAの切断、連結、大腸菌の形質転換、遺伝子の塩基配列決定等一般の遺伝子組換えに必要な方法は、特に記載のない限り、各操作に使用する市販の試薬、機器装置等に添付されている説明書や、実験書(例えば「Molecular Cloning(Sambrookら(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press)」)に基本的に従った。
〔実施例1〕 サツマイモの塊根で発現する遺伝子の単離
サツマイモの2つの品種(高系14号とアヤムラサキ)の塊根からcDNAライブラリーを作成した。
サツマイモの塊根からのフェノールを使ったRNAの抽出はThe NSF potato genome project("RNA isolation using phenol" protocol in the URL of http://www.tigr.org/tdb/potato/microarray_SOPs.shtml)の方法に基本的に従って行った。
cDNAの合成はStratageneのcDNA Synthesis Kitを用いて行い、cDNAのサイズ分画をAmersham BioscienceのSize Sep400 Spun Columnsを用いて行った。これを制限酵素XhoIとEcoRIで切断したベクターpBluescriptII-SK+(Stratagene)に、ToyoboのLigation Highを用いて組み込み、cDNAライブラリーを完成した。
cDNAライブラリーからクローンをランダムに単離し、高系14号由来の2804クローン、およびアヤムラサキ由来の3783クローンの塩基配列を決定した。
塩基配列の決定には、PCR product Pre-Sequencing Kit (USB)とDYEnamic ET Dye Terminator Cycle Seuencing Kit for MegaBACE (amaersham pharmacia biotech)で反応を行い、MegaBACE1000を用いて行った。
これらのクローンのクラスター解析を行い、比較的高頻度に出現するクローンIT394を選択した。IT394は高系14号由来のライブラリーから4回、アヤムラサキ由来のライブラリーから7回出現した。アクチンと相同性のあるIT948の場合は、高系14号由来のライブラリーから3回、アヤムラサキ由来のライブラリーから6回出現した。
配列番号:1にIT394のcDNA配列を示す。IT394の相同性検索を行ったところ、メタロチオネインと相同性があった。
〔実施例2〕 サツマイモの塊根で発現する遺伝子IT394の上流域の取得
IT394のプロモーター領域を取得するために、ClontechのBD GenomeWalker KitsによってIT394のゲノムDNAの上流域の単離を行った。この際に用いる鋳型には高系14号とアヤムラサキのゲノムDNAを用い、遺伝子特異的プライマーとしてIT394のcDNA配列(配列番号:1)に基づいて2種類のプライマー(394-R3;配列番号:2、394-R4;配列番号:3)を合成した。増幅した約0.9 kbのDNA断片はinvitrogenのTOPO TA Cloning kitによってTAクローニングを行い、単離したクローンの塩基配列を決定した。
これにより、IT394のcDNA配列(配列番号:1)より上流の約0.8 kbの塩基配列を取得することに成功した。高系14号のゲノムDNAを鋳型として得られた配列を配列番号:4、アヤムラサキのゲノムDNA鋳型として得られた配列を配列番号:5に示す。
〔実施例3〕 IT394の上流域のプロモーター活性検定用ベクターの作成
IT394のcDNA配列(配列番号:1)からは、長いORFが検出されないが、IT394のcDNA配列にホモロジーのあるメタロチオネイン遺伝子(例えばRCMIT;アクセッション番号:L02306;IT394とRCMITのORF領域には43%のホモロジーがある)の翻訳開始点が、配列番号:1の54番目と一致するため、ここを翻訳開始点と予測し、ここより上流の配列をIT394のプロモーター領域の候補として単離した。
高系14号のゲノムDNAを鋳型として得られたIT394のcDNAより上流の配列(配列番号:4)に基づいて一対のプライマー(394-F07s;配列番号:6、394-Rb;配列番号:7)を合成した。
394-F07sは、正方向プライマーであり、5’末端側に制限酵素SacII部位(ccgcgg)を有し、ゲノム配列上のSacI部位(gaGctc)に変異(gaCctc)を導入する。394-Rbは、逆方向プライマーであり、5’末端側に制限酵素BamHI部位(ggatcc)を有する。このプライマー対を用い、高系14号のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行い、約730 bpの増幅DNA断片を得た。増幅されたDNA断片を、invitrogenのTOPO TA Cloning kitによってTAクローニングを行い(pSP53)、単離したクローンの塩基配列を決定した(配列番号:8)。
次に、ベクターpBluescript SK (Stratagene)に、植物体内で強い蛍光を発する緑色蛍光タンパク質の変異型sGFP(S65T)(丹羽康夫:植物細胞工学シリーズ4、モデル植物の実験プロトコール、pp117-121、秀潤社、1996)とNosターミネーターを組み込んだプラスミドであるpblue-sGFP(S65T)-NOS SKと、プラスミドpSP53をそれぞれBamHIとSacIIで切断し、ToyoboのLigation Highを用いてライゲーションを行うことで、プラスミドpHM160を作成した。
さらにこのプラスミドをSacIとKpnIで切断し、バイナリーベクターであるpPZP2H-lacのマルチクローニングサイトにIT394の上流域-GFP-Nosターミネーターのひとつながりの配列を挿入することで、IT394の上流域の植物体におけるプロモーター活性をGFP遺伝子をレポーターとして検証することができるベクターpHM161を完成させた(図1)。
〔実施例4〕 形質転換植物の作成とGFPの検出
作成したベクターpHM161は凍結解凍法によりアグロバクテリウム・ツメファシエンス菌EHA101に導入した。凍結解凍法とは凍結したEHA101のコンピテントセルにプラスミド溶液を加え、37℃で5分間保温する方法のことをいう。
ベクターpHM161が導入された菌株を用いてシロイヌナズナ(品種:Columbia)とサツマイモ(品種:高系14号)に遺伝子を導入した。
シロイヌナズナへの導入は、「減圧浸潤法による形質転換(荒木崇)」(植物細胞工学シリーズ4、モデル植物の実験プロトコール、pp109-113、秀潤社、1996)に記載の方法に基本的に従って行った。ただし、記載されている減圧の過程は省いて行った。
サツマイモへの導入は、Otani et al. Plant Biotechnology, 15:11-16, 1998に記載の方法に基本的に従って行った。
〔実施例5〕 形質転換植物におけるGFPの検出
青色LEDスポットライト(MeCan Imaging, MC-L12B)にGFP用Exフィルター(朝日分光)を装着して励起光として植物に照射し、発せられる蛍光を実体顕微鏡(OLYMPUS, SZX12)、またはデジタルカメラ(OLYMPUS, E-10)にGFP用Baフィルター(朝日分光)を装着して観察を行った。
シロイヌナズナでは根と胚軸で強い蛍光が観察され(図2)、サツマイモでは塊根で強い蛍光が観察された(図3)ことから、配列番号:8に示したIT394の上流域730 bpの塩基配列はサツマイモの塊根で発現するプロモーターとして機能することが示された。また、シロイヌナズナでも発現したことから、他の植物種における根のプロモーターとしても利用が可能であると考えられる。
図1は、IT394の上流域のプロモーター活性検定用ベクターの作成手順を示す図である。IT394の上流域(配列番号:8)の植物体におけるプロモーター活性をGFP遺伝子をレポーターとして検証することができるベクターpHM161の構築手順を示す。 図2は、IT394プロモーターでGFPを発現した組換えシロイヌナズナの植物体を示す写真である。播種後6日目のシロイヌナズナを用いた。上の写真は可視光による撮影、下の写真はGFPの蛍光像である。根と胚軸が強い蛍光を発している。 図3は、IT394プロモーターでGFPを発現した組換え組換えサツマイモの塊根を示す写真である。右が非形質転換体の高系14号、左がpHM161の形質転換サツマイモである。A:サツマイモの塊根の外観(可視光)。B:サツマイモの塊根の断面(可視光)。C:サツマイモの塊根の断面(蛍光像)。pHM161の形質転換サツマイモの塊根ではGFPの強い蛍光が観察された。

Claims (25)

  1. 下記の(a)〜(c)のいずれかに記載のプロモーター活性を有するDNA。
    (a)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNA
    (b)配列番号:8に記載の塩基配列において1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるDNA
    (c)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
  2. 植物の根においてプロモーター活性を有することを特徴とする、請求項1に記載のDNA。
  3. 前記根がサツマイモの塊根である、請求項2に記載のDNA。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のDNAの制御下に、外来遺伝子が機能的に連結した構造を有するDNA。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のDNA、または請求項5に記載のベクターを含む、形質転換細胞。
  7. 微生物である、請求項6に記載の形質転換細胞。
  8. 植物細胞である、請求項6に記載の形質転換細胞。
  9. 請求項8に記載の細胞を含む、形質転換植物体。
  10. 請求項9に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
  11. 請求項9または10に記載の形質転換植物体の繁殖材料。
  12. 請求項4に記載のDNA、または請求項5に記載のベクターを植物細胞へ導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の作製方法。
  13. 植物体において外来遺伝子を発現させる方法であって、請求項4に記載のDNA、または請求項5に記載のベクターを該植物の細胞へ導入する工程を含む方法。
  14. 外来タンパク質が含まれる植物体の製造方法であって、請求項4に記載のDNA、または請求項5に記載のベクターを植物の細胞へ導入する工程を含む方法。
  15. 植物体において外来遺伝子を発現させることを特徴とする、外来タンパク質生産植物体の製造方法であって、請求項4に記載のDNA、または請求項5に記載のベクターを植物の細胞へ導入する工程を含む方法。
  16. 請求項6〜8のいずれかに記載の形質転換細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から、請求項5に記載のベクターにより発現された外来遺伝子によってコードされるタンパク質を回収することを特徴とする、外来タンパク質の製造方法。
  17. 以下の工程(a)および(b)を含む、外来タンパク質の製造方法。
    (a)請求項14または15に記載の方法によって、外来タンパク質が含まれる植物体を製造する工程
    (b)前記植物体から外来タンパク質を回収する工程
  18. 前記植物体がイモ類または根菜類である、請求項13〜15、17のいずれかに記載の方法。
  19. 前記植物体が塊根または塊茎を有する植物体である、請求項13〜15、17のいずれかに記載の方法。
  20. 前記塊根が、サツマイモの塊根である、請求項19に記載の方法。
  21. 請求項14または15に記載の方法によって取得される植物体。
  22. 人為的に作製された植物体であって、請求項4に記載のDNAを有し、外来遺伝子によってコードされるタンパク質が発現されることを特徴とする植物体。
  23. 植物体がサツマイモである、請求項21または22に記載の植物体。
  24. 以下の工程(a)〜(c)を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のDNAのプロモーター活性を調節する化合物のスクリーニング方法。
    (a)請求項1〜3のいずれかに記載のDNAの制御下に、レポーター遺伝子が機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被検化合物を接触させる工程
    (b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程
    (c)該レポーター遺伝子の発現レベルを変化させる化合物を選択する工程
  25. 植物体において外来遺伝子を発現させるためのプロモーターとして利用されるDNA薬剤であって、請求項1〜4のいずれかに記載のDNA、または請求項5に記載のベクターを有効成分とする、遺伝子発現誘導剤。
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KR100604186B1 (ko) * 2004-08-25 2006-07-25 고려대학교 산학협력단 고구마 유래 식물 저장뿌리용 고효율 발현 프로모터염기서열, 이를 포함하는 식물체 고효율 일시적 발현벡터및 상기 발현벡터를 이용하여 식물의 저장뿌리에일시적으로 발현시키는 방법

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