JP4097227B2 - ユビキチン融合遺伝子プロモーター、およびその利用 - Google Patents
ユビキチン融合遺伝子プロモーター、およびその利用 Download PDFInfo
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Description
このため植物の根において適切な遺伝子を発現させることで、線虫抵抗性、耐病性、耐冠水、耐乾燥の植物、あるいは特定の栄養素が欠乏した土壌、過剰な土壌などでも生育可能な植物を作出できる可能性がある。また、カドミウムなどの有害物質を効率的に吸収できる植物を作出することで、土壌浄化に利用することも出来る。あるいは、根菜類の栄養改変や、医薬品や生分解性プラスチックなどの原料の生産など、根において外来遺伝子を発現させることによる応用範囲は広く、有用性は高い。
一般に、植物ではその活性が強いことから、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーターがよく利用されており、実際、除草剤耐性植物やウイルス抵抗性植物の作出に用いられている。
しかしながら、35Sプロモーターは、強力であるが組織特異性がなく、必ずしも最適な形質転換植物の作出に適しているとは限らない。例えば、不必要な部位での発現によって成長異常などをきたしたり、発現強度が高すぎることによってジーンサイレンシング等の好ましくない形質が現れたりすることがある。また、組換え作物の作出に際しては、必要のない形質を持ち込まないことが望まれており、目的遺伝子を必要な組織以外においても発現させてしまうプロモーターでは植物体への適用に際する用途が大きく制限されたものとなる。
このような問題の解決手段として、特定の組織、とりわけ根組織に特異的に目的の遺伝子を制御するプロモーターを用いることが望ましい。植物の主に根で発現するとされている遺伝子はいくつか知られているが(非特許文献1〜13、17〜21参照)、植物の根で特異的に遺伝子発現を制御するプロモーターは従来技術においてはまだ種類が少なく(特許文献1〜3および非特許文献14〜16、22、23参照)、しかもその特異性は低いのが現状である。
また、非特許文献1によると、イネのRCc2遺伝子はノザン解析によって根に特異的発現をすることがわかったが、RCc2遺伝子の上流域をプロモーターとして使用した場合は、外来遺伝子を根の分裂域以外、および葉の維管束で発現させることがわかった。この例のように、ノザン解析などで、根特異的発現をする遺伝子を取得しても、外来遺伝子根特異的に発現させるプロモーター部位を取得するのは当業者であっても容易ではない。
ユビキチン融合遺伝子に関しては、本発明者らが単離した遺伝子のコーディング領域と高い相同性(92〜94%)を示す遺伝子が、オオムギ、トウモロコシ、イネからいくつか報告されているが、発現様式に関してはわかっていないものが多く、調べられたものついても、特に一定の傾向は見られていない(非特許文献25〜29参照)。ユビキチン融合蛋白の機能としては、酵母において、ユビキチンがシャペロンとして働くことで、効率的なリボソームの生合成が行われることが示唆されている(非特許文献24)。
本発明者らはイネの根から、根端で特異的に発現をするユビキチン融合遺伝子(ubiquitin/ribosomal protein S27a)の5’上流域を単離し、この上流域のDNAを解析し、鋭意検討を重ねた結果、ユビキチン融合遺伝子のプロモーター機能を有するDNA配列を特定することに成功し、本発明を完成するに至った。本発明者らによって単離されたプロモーターを利用することによって、実際に外来遺伝子を根端特異的に発現させることが可能である。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔15〕に関する。
〔1〕 下記の(a)、(b)または(c)のDNAを含むプロモーター。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNA
(b)配列番号:1に記載の塩基配列において1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつプロモーター機能を有するDNA
(c)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下にハイブリダイズし、かつプロモーター機能を有するDNA
本発明は、より詳しくは、以下に関する。
〔1b〕上記(a)、(b)または(c)のDNAを含む、プロモーターとして使用するためのDNA、または
〔1c〕上記(a)、(b)または(c)のDNAのプロモーターとしての使用。
〔2〕 〔1〕に記載のプロモーターの下流に、外来遺伝子および植物ターミネーターが機能的に連結した構造を有するDNA。
〔3〕 〔1〕に記載のプロモーターを含むベクター。
〔4〕 〔1〕に記載のプロモーターの下流に外来遺伝子挿入部位および植物ターミネーターを含む、〔3〕記載のベクター。
〔5〕 〔2〕に記載のDNAを含むベクター。
〔6〕 〔1〕に記載のプロモーター、〔2〕に記載のDNA、または〔3〕〜〔5〕のいずれかに記載のベクターを含む、形質転換細胞。
〔7〕 微生物である、〔6〕に記載の形質転換細胞。
〔8〕 植物細胞である、〔6〕に記載の形質転換細胞。
〔9〕 〔8〕に記載の細胞を含む、形質転換植物体。
〔10〕 〔9〕に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
〔11〕 〔9〕または〔10〕に記載の形質転換植物体の繁殖材料。
〔12〕 〔9〕または〔10〕に記載の形質転換植物体の作製方法であって、〔1〕に記載のプロモーター、〔2〕に記載のDNA、または〔3〕〜〔5〕のいずれかに記載のベクターを植物細胞へ導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む方法。
〔13〕 植物の根において外来遺伝子を発現させる方法であって、〔2〕に記載のDNA、または〔4〕もしくは〔5〕に記載のベクターを該植物の細胞へ導入する工程を含む方法。
〔14〕 被験化合物について、〔1〕に記載のDNAのプロモーター活性を調節するか否かを評価する方法であって、
(a)〔1〕に記載のDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被験化合物を接触させる工程、
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程、
を含み、被験化合物が該レポーター遺伝子の発現レベルを変化させた場合に、被験化合物が〔1〕に記載のDNAのプロモーター活性を調節すると判定される方法。
〔15〕 以下の工程(a)および(b)を含む、〔1〕に記載のDNAのプロモーター活性を調節する化合物のスクリーニング方法。
(a)〔14〕に記載の評価方法により、被験化合物について、〔1〕に記載のDNAのプロモーター活性を調節するか否かを評価する工程
(b)被験化合物から、該DNAのプロモーター活性を調節すると評価された化合物を選択する工程
以下、本発明を詳細に説明する。本発明者らは、イネの様々な部位からそれぞれcDNAライブラリーを作成した。根から作成したcDNAライブラリーから3334個のクローンを単離、根以外の組織から作成したcDNAライブラリーからは8875個のクローンを単離して塩基配列を決定した。
根由来のライブラリーに3回出現し、根以外の組織由来のライブラリーから1回出現したクローンを選択し、GenBank/EMBLデータベースを元にBLASTプログラムを用いて塩基配列のホモロジー検索を行ったところ、このクローンがユビキチン融合遺伝子(ubiquitin/ribosomal protein S27a gene)に由来していることが判明した。ユビキチン融合遺伝子の5’上流域を単離し、上流側から段階的に欠損させた断片とGFP遺伝子を連結させたキメラ遺伝子構築物をイネ、およびシロイヌナズナ植物体に導入することで、ユビキチン融合遺伝子(GenBankアクセッション番号:AP002971)からプロモーター領域を単離することに成功したものである。
本発明はまず、ユビキチン融合遺伝子プロモーター(DNA)を提供する。本発明のプロモーターは、下流の遺伝子を根端特異的に発現させることが可能であり、極めて有用である。本発明者らによって単離されたユビキチン融合遺伝子プロモーターDNAの塩基配列を、配列番号:1に示す。
本発明は、より具体的には、下記の(a)〜(c)のいずれかのDNAを含むプロモーター(プロモーター活性を有するDNA)を提供する。
(a)配列番号:1で示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号:1で示される塩基配列において1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつプロモーター機能を有するDNA
(c)配列番号:1で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下にハイブリダイズし、かつプロモーター機能を有するDNA
本発明の「プロモーター」とは、DNAを鋳型としたmRNAの合成(転写)の開始に必要な特定塩基配列を含むDNAを意味し、自然界に存在するDNAの他、組換えなどの人工的な改変操作により作成されたDNAを含む。また、本発明のプロモーターは、植物細胞において発現誘導型プロモーターであることが好ましい。
本発明者らは、本発明のプロモーターを得るために、イネのユビキチン融合遺伝子の上流に存在するゲノム配列から、配列番号:2に示す1979bpの配列を含む断片をPCRにより取得した。この断片の下流に、植物体において遺伝子発現を容易にモニターすることが可能なレポーター遺伝子として、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を連結したキメラ遺伝子構築物を作成し、アグロバクテリウムを介してイネ、およびシロイヌナズナの植物体へ導入したところ、GFP遺伝子の発現が根端細胞に特異的に観察された。
さらに、この断片を上流側から段階的に欠損させ、それぞれの断片とGFP遺伝子を連結させたキメラ遺伝子構築物をイネ、およびシロイヌナズナ植物体に導入して解析を行ったところ、根における発現の誘導には少なくとも278bpからなる断片(配列表の配列番号:2の1702番目から1979番目までの配列からなる断片/配列番号:1)で十分機能することを突き止めた。すなわち本発明は、配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNA、もしくは該DNAを含むプロモーター活性を有するDNAを提供する。
本発明のプロモーターは、配列番号:1の塩基配列からなるDNAだけでなく、配列番号:1の塩基配列において1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物プロモーターとして作用する能力を有するDNA、または、配列番号:1の塩基配列において、その3’末端に翻訳効率を上げる塩基配列などを付加したものや、プロモーター活性を失うことなく、その5’末端を欠失したものを含む。
上記DNAを調製するために、当業者によりよく知られた方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Southern,EM.,J Mol Biol,1975,98,503.)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki,RK.et al.,Science,1985,230,1350.、Saiki,RK.et al.,Science,1988,239,487.)の他に、例えば、該DNAに対し、site−directed mutagenesis法(Kramer,W.& Fritz,HJ.,Methods Enzymol,1987,154,350.)により変異を導入する方法が挙げられる。
本発明において欠失、置換等の変異が導入される塩基の数は、変異を導入されたDNAがプロモーター活性を有する限り、特に制限されないが、通常、20塩基対以内、好ましくは10塩基対以内、より好ましくは5塩基対以内、最も好ましくは3塩基対以内である。
さらに、本発明の植物プロモーターは、配列番号:1の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物プロモーターとして作用する能力を有するDNAを含む。ここで、ストリンジェントな条件とは、特に制限されるものではないが、例えば42℃、2×SSC(300mM NaCl、30mMクエン酸)、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC、0.1%SDSの条件であり、さらに好ましくは、65℃、0.1×SSCおよび0.1%SDSの条件である。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
さらに本発明は、本発明のプロモーターの下流に、外来遺伝子およびターミネーターが機能的に連結した構造を有するDNAを提供する。本発明において外来遺伝子とは、特に制限されず、所望の遺伝子を用いることができる。
また、本発明のターミネーターとは、通常、植物由来ターミネーター(植物ターミネーター)を言い、本発明の植物組識特異的な発現を制御するプロモーター領域に隣接して配置されるDNA配列であり、例えば、カリフラワーモザイクウイルス由来のターミネーター、あるいはノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネーター等を例示することができるが、ターミネーターとしての機能を有するものであれば、これらに特に制限されない。
本発明において「機能的に連結」とは、プロモーターの下流の外来遺伝子がプロモーターからの転写を受けるように該プロモーターと結合している状態、あるいは、ターミネーターによって外来遺伝子の発現が終結するように外来遺伝子がターミネーターと結合した状態を指す。プロモーター、外来遺伝子およびターミネーターを「機能的に連結」させることは、当業者においては一般的な遺伝子工学技術を用いて、簡便に行い得ることである。
また、本発明のプロモーターの一例としては、上記(a)〜(c)のいずれかに記載のDNAからなるプロモーター活性を有するDNAを挙げることができる。プロモーター活性は、当業者においては公知の方法(例えば、後述のレポーター遺伝子を用いて該遺伝子の発現を指標に測定する方法)によって適宜、評価することができる。
さらに本発明は、上記本発明のプロモーターを含むベクター、本発明のプロモーターの下流に遺伝子挿入部位およびターミネーターを含むベクター、並びに、本発明の上記DNAを含むベクターを提供する。
本発明のベクターは、通常、本発明のプロモーターを植物細胞内で複製可能なベクターに挿入したものである。この複製可能なベクターとしては、公知の種々のベクターを用いることができる。例えば、pUC誘導体などの大腸菌で増幅可能なベクター、pPZP2H−lacなどの大腸菌とアグロバクテリウムの双方で増幅可能なシャトルベクターなどが挙げられる。また、植物ウイルス、例えば、カリフラワーモザイクウイルスを利用することもできる。当業者においては、植物細胞内で複製可能なベクターを、各々の宿主細胞に応じて適宜選択することができる。なお、本発明のプロモーターをベクターに挿入する方法は、通常の遺伝子をベクターに挿入する常法に従う。
また本発明は、本発明のプロモーター、本発明のDNA、または本発明のベクターを含む形質転換細胞を提供する。
本発明の細胞は、特に制限されるものではないが、好ましくは微生物細胞あるいは植物細胞である。
本発明の形質転換植物細胞は、本発明のDNAもしくはベクターを宿主細胞に導入し、形質転換させた植物細胞である。宿主細胞としては、例えば葉、根、茎、花および種子中の胚盤等の植物細胞、カルス、懸濁培養細胞等が挙げられる。細胞の由来する植物種としては、特に制限されるものではないが、例えば、シロイヌナズナ、タバコ、ペチュニア、コムギ、イネ、トウモロコシ、ダイズ、ナタネ、ダイコン、テンサイ、カボチャ、キュウリ、トマト、ワタなどが挙げられる。尚、本発明における好ましい例として、イネあるいはシロイヌナズナを挙げることができる。
また本発明は、本発明のプロモーター、本発明のDNAまたはベクターを植物細胞へ導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換体の作製方法に関する。
本発明のDNAもしくはベクターを宿主植物細胞中に導入するために、さまざまな手法を用いることができる。これらの手法には、形質転換因子としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)または、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を用いたT−DNAによる植物細胞の形質転換、プロトプラストへの直接導入(インジェクション法、エレクトロポレーション法など)、パーティクルガン法などや、その他の公知の方法が含まれる。
プロトプラストへの直接導入では、通常、特別に必要とされるベクターはない。例えば、pUC誘導体のような単純なプラスミドを用いることができる。目的の遺伝子を植物細胞に導入する方法によっては、他のDNA配列が必要になることもある。例えばTiまたはRiプラスミドを植物細胞の形質転換に用いる場合には、TiおよびRiプラスミドのT−DNA領域の少なくとも右端の配列、大抵は両側の端の配列を、導入されるべき遺伝子の隣接領域となるように接続しなければならない。
アグロバクテリウム属菌を形質転換に用いる場合には、導入すべき遺伝子を、特別のプラスミド、すなわち中間ベクターまたはバイナリーベクターの中にクローニングする必要がある。中間ベクターはアグロバクテリウム属菌の中では複製されない。中間ベクターは、ヘルパープラスミドあるいはエレクトロポレーションによってアグロバクテリウム属菌の中に移行される。中間ベクターは、T−DNAの配列と相同な領域をもつため、相同的組換えによって、アグロバクテリウム属菌のTiまたはRiプラスミド中に取り込まれる。宿主として使われるアグロバクテリウム属菌には、vir領域が含まれている必要がある。通常TiまたはRiプラスミドにvir領域が含まれており、その働きにより、T−DNAを植物細胞に移行させることができる。
一方、バイナリーベクターはアグロバクテリウム属菌の中で複製、維持され得るので、ヘルパープラスミドあるいはエレクトロポレーション法あるいは凍結溶解法によってアグロバクテリウム属菌中に取り込まれると、宿主のvir領域の働きによって、バイナリーベクター上のT−DNAを植物細胞に移行させることができる。
なお、このようにして得られた中間ベクターまたはバイナリーベクター、およびこれを含む大腸菌やアグロバクテリウム属菌等の微生物も本発明の対象である。
また、本発明のDNAもしくはベクターの導入によって形質転換された植物細胞を効率的に選択するために、上記ベクターは、適当な選抜マーカー遺伝子を含む、もしくは選抜マーカー遺伝子を含むプラスミドベクターとともに植物細胞へ導入することが好ましい。この目的に使用される選抜マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質ハイグロマイシン耐性であるハイグロマイシンホスホトランスフェフーゼ遺伝子、カナマイシンまたはゲンタマイシン耐性であるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、および除草剤ホスフィノスリシン耐性であるアセチルトランスフェラーゼ遺伝子等を挙げることができる。
上記ベクターを導入した植物細胞は、導入した選抜マーカーに応じた選抜用薬剤を含む選抜用培地に置床し培養する。これにより、形質転換された植物細胞を得ることができる。
本発明の形質転換植物体とは、本発明の形質転換植物細胞から再生された形質転換植物体である。形質転換された植物細胞から個体を再生する方法は植物細胞の種類により異なるが、例えばイネではFujimuraら(Fujimuraら(1995),PlantTissue Culture Lett.,vol.2:p74−)の方法、トウモロコシでは、Shillitoら(Shillitoら(1989),Bio/Technology,vol.7:p581−)の方法、ジャガイモでは、Visserら(Visserら(1989),Theor.Appl.Genet.,vol.78:p589−)の方法、シロイヌナズナではAkamaらの方法(Akamaら(1992),Plant Cell Rep.,vol.12:p7−)が挙げられる。これらの方法により作出された形質転換植物体またはその繁殖材料(例えば種子、果実、塊茎、切穂、塊根、株、カルス、プロトプラストなど)から得た形質転換植物体も本発明の対象である。一旦、染色体内に本発明のプロモーター(DNA)が導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。
本発明の植物体を作製する方法の好ましい態様においては、本発明のDNAまたはベクターを宿主細胞に導入して形質転換植物細胞を得て、該形質転換植物細胞から形質転換植物体を再生し、得られた形質転換植物体から植物種子を得て、該植物種子から植物体を生産する工程を含む。
形質転換植物体から植物種子を得る工程とは、例えば、形質転換植物体を発根培地から採取し、水を含んだ土を入れたポットに移植し、一定温度下で生育させて、花を形成させ、最終的に種子を形成させる工程をいう。また、種子から植物体を生産する工程とは、例えば、形質転換植物体上で形成された種子が成熟したところで、単離して、水を含んだ土に播種し、一定温度、照度下で生育させることにより、植物体を生産する工程をいう。
本発明の植物プロモーターは、例えば、以下のようにして作製し、利用することができる。なお、実験手法に関しては、特に記載のない限り、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、農村文化社(1989年))や、「Molecular Cloning(Sambrookら(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press)」などの実験書に従う。
本発明のDNAには、天然あるいは単離・精製されたゲノムDNA、および化学合成DNAが含まれる。ゲノムDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能である。
本発明のDNAは、目的とする植物、例えば、イネの組織よりゲノムDNAを抽出し精製し、得られたDNAを鋳型としてPCRによって単離することができる。
本発明における、配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNA、およびこれとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ根特異的発現を示すプロモーターを単離するためには、例えば、配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNA上の配列であって、本発明のプロモーターを増幅するためのプライマー対を用いることができる。このプライマー対を用いて、植物のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行い、その後、得られた増幅DNA断片をプローブとして用いて、同じ植物のゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。そのようなプライマー対の例として、正方向プライマー(ubiFx;5’−gctctagagttactctcacctgaaggc−3’(配列番号:4))と、逆方向プライマー(ubiRb;5’−cgggatccttcgccggcggccgcag−3’(配列番号:3))との組合せが挙げられる。
PCRは、市販のキットおよび装置の製造者の指針に基づいて行うか、当業者に周知の手法で行い得る。遺伝子ライブラリーの作製法、および遺伝子のクローニング法なども当業者に周知である。例えば、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、農村文化社(1989年))や、「Molecular Cloning(Sambrookら(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press)」などの実験書を参照のこと。得られた遺伝子の塩基配列は、当該分野で公知のヌクレオチド配列解析法または市販されている自動シーケンサーを利用して決定し得る。PCR技術やハイブリダイゼーション技術によって単離し得る、配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAもまた、本発明のDNAに含まれる。
上記のようなスクリーニングによって単離および同定されたプロモーター(すなわち、配列番号:1に示されるプロモーター、およびホモログ)が根特異的遺伝子発現誘導性を示すことは、以下のようにして解析することが可能である。
上記の配列を、例えば、GFPなどのレポーター遺伝子の上流に連結し、pPZP2H−lacなどのベクターに組み込む。レポーター遺伝子としては、GFP遺伝子の他にクロラムフェニコール アセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子や、ルシフェラーゼ(LUC)遺伝子、ベータ グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子なども利用が可能である。
上記のようにして作成されたキメラ遺伝子構築物は、例えば、アグロバクテリウムを介してシロイヌナズナなどの植物に導入してその機能を解析することが可能である。pPZP2H−lacをベクターとして用いた場合は、キメラ遺伝子を含む組換えプラスミドを、例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのEHA101株に凍結溶解法を用いて導入し、得られた形質転換菌を、例えば、減圧浸潤法(島本功ら監修、「モデル植物の実験プロトコール」(植物細胞工学別冊、植物細胞工学シリーズ4)秀潤社1996年4月発行)によりシロイヌナズナなどの植物体に感染させる。感染処理した植物より得られた種子を、ハイグロマイシンなど用いたベクターに適した薬剤を含む培地に播種し、得られた薬剤耐性個体を用いてGFP遺伝子の発現について解析する。蛍光顕微鏡で観察することにより、GFPの蛍光が根で特異的に検出されることが期待される。
本発明のプロモーターまたはそれを含む発現ベクターは、以下のようにして利用することが可能である。本発明のプロモーターの下流に目的の遺伝子、例えば、養分のトランスポーター遺伝子を連結したキメラ遺伝子を、例えば、pPZP2H−lacに挿入し発現ベクターを構築する。このベクターをアグロバクテリウムを介してイネなどの植物体に導入する。得られた形質転換植物においては、本発明のプロモーターの働きにより根において養分のトランスポーター遺伝子が特異的に発現し、養分を効率的に取り込むことができるようになることが期待される。この場合、35Sプロモーターのように不要な組織においても発現することがないため、他の好ましくない形質が現れないことが期待される。
本発明のプロモーターで制御可能な遺伝子(外来遺伝子)としては、上記のトランスポーター遺伝子に限定されない。根において特異的に発現させることに意義のあるあらゆる遺伝子に応用が可能である。
また、本発明のプロモーターに他の発現制御配列を連結して本発明のプロモーターの機能を改変することが可能である。このような発現制御配列としては、エンハンサー配列やリプレッサー配列、インスレーター配列などが挙げられる。例えば薬剤に応答して抑制が解除されるリプレッサー配列を本発明のプロモーターと連結したキメラプロモーターを作成し、その下流に目的の遺伝子を連結した構築物を植物に導入すると、得られた形質転換体では、薬剤が存在しない条件下では目的遺伝子の発現が抑制されているが、薬剤を投与することによって抑制が解除され、目的遺伝子が根で発現するようになることが期待される。
なお、本発明における植物細胞の形質転換方法としては、上記のアグロバクテリウムを介した方法の他に、プロトプラストに電気パルス処理してプラスミドを植物細胞へ導入するエレクトロポレーション法や、小細胞、細胞、リソソームなどとプロトプラストとの融合法、マイクロインジェクション法、ポリエチレングリコール法、あるいは、パーティクルガン法などの方法が挙げられる。
また、植物ウイルスをベクターとして利用することによって、目的遺伝子を植物体に導入することができる。利用可能な植物ウイルスとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスが挙げられる。すなわち、まず、ウイルスゲノムを大腸菌由来のベクターなどに挿入して組換え体を調製した後、ウイルスのゲノム中に、これらの目的遺伝子を挿入する。このようにして修飾されたウイルスゲノムを制限酵素によって該組換え体から切り出し、植物体に接種することによって、これらの目的遺伝子を植物体に導入することができる(Hohnら(1982)、Molecular Biology of Plant Tumors(Academic Press、New York)pp549、米国特許第4,407,956号)。
また本発明は、植物の根において外来遺伝子を発現させる方法を提供する。本方法の好ましい態様においては、本発明のプロモーターの下流に外来遺伝子および植物ターミネーターが機能的に連結した構造を有するDNAを、植物へ導入する工程を含む方法である。本方法においては、該DNAを、植物細胞へ導入し、該細胞を植物へ再生させることによっても行うことができる。該DNAの植物もしくは植物細胞への導入は、上述の方法によって実施することができる。
さらに本発明は、被験化合物について、本発明のプロモーター活性を有するDNA(例えば、配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNA)のプロモーター活性を調節するか否かを評価する方法を提供する。この評価方法は、本発明のプロモーターの活性を有するDNAのプロモーター活性を調節する化合物のスクリーニング方法に利用することができる。
本発明の評価方法に用いられる被検化合物としては、特に制限はなく、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチド等の単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞抽出物、真核単細胞抽出物もしくは動物細胞抽出物等を挙げることができる。
この方法においては、まず、本発明のプロモーター活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被験化合物を接触させる。
本発明において、「機能的に結合した」とは、本発明のプロモーター活性を有するDNAに転写因子が結合することにより、レポーター遺伝子の発現が誘導されるように、本発明のプロモーター活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが結合していることをいう。本方法における「本発明のプロモーター活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞」として、例えば、上記DNAを含むベクターを導入した細胞を挙げることができる。該ベクターは、当業者に周知の方法により作製することができる。ベクターの細胞への導入は、一般的な方法、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法、リポフェタミン法、マイクロインジェクション法等によって実施することができる。
また、「本発明のプロモーター活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞」には、染色体に該DNAが挿入された細胞も含まれる。染色体へのDNAの挿入は、当業者に一般的に用いられる方法、例えば、相同組み換えを利用した遺伝子導入法により行うことができる。
本方法における「本発明のプロモーター活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞抽出液」とは、例えば、市販の試験管内転写翻訳キットに含まれる細胞抽出液に、本発明のプロモーター活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを添加したものを挙げることができる。
本方法における「接触」は、本発明のプロモーター活性を有するDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞の培養液に被験化合物を添加する、または該DNAを含む上記の市販された細胞抽出液に被験化合物を添加することにより行うことができる。被験化合物がタンパク質の場合には、例えば、該タンパク質をコードするDNAを含むベクターを、該細胞へ導入する、または該ベクターを該細胞抽出液に添加することで行うことも可能である。
本方法においては、次いで、該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する。レポーター遺伝子の発現レベルは、当業者においては、該レポーター遺伝子の種類を考慮して、測定することができる。
本方法においては、被験化合物の非存在下において測定した場合と比較して、被験化合物がレポーター遺伝子の発現レベルを変化させた場合に、被験化合物が本発明のDNAのプロモーター活性を調節したと判定される。
さらに、本発明においては、上記評価方法を利用して、複数の被験化合物について、本発明のDNAのプロモーター活性を調節するか否かを評価し、プロモーター活性を調節する化合物を選択することにより、効率的にプロモーター活性を調節する化合物をスクリーニングすることができる。該スクリーニング方法によって取得される化合物は、遺伝子の根特異的な発現を制御することが可能であり、非常に有用である。
図2は、本実施例に記載のDNA断片を上流(5’側)から削ったDNA断片のシリーズを作製しそれぞれをベクターに連結した図である。
図3は、シロイヌナズナにおける本発明のプロモーターによる遺伝子の発現結果を検証する写真である。蛍光顕微鏡によるシロイヌナズナの根の蛍光像を示す。根端が強く蛍光を発している。
図4は、イネにおける本発明のプロモーターによる遺伝子の発現結果を検証する写真である。蛍光顕微鏡によるイネの根の蛍光像を示す。根端が強く蛍光を発している。
〔実施例1〕 根特異的発現をする遺伝子の探索
(a)cDNAライブラリーの作成
イネの様々な部位からそれぞれcDNAライブラリーを作成した。ライブラリーの作成は(Okubo et al.Large scale cDNA sequencing for analysis of quantitative and qualitative aspects of gene expression.nature genetics 2:173−179(1992))に基本的に従って行った。根から作成したcDNAライブラリーから3334個のクローンを単離、根以外の組織から作成したcDNAライブラリーからは8875個のクローンを単離して塩基配列を決定した。塩基配列の決定には、PCR product Pre−Sequencing Kit(USB)とDYEnamic ET Dye Terminator Cycle Seuencing Kit for MegaBACE(amaersham pharmacia biotech)で反応を行い、MegaBACE1000を用いて行った。
それらのクローンを塩基配列によるクラスタリングにより、グループ分けをし、根由来のライブラリーに3回出現し、根以外の組織由来のライブラリーには1回だけ出現したグループを選択した。
このグループの塩基配列をGenBank/EMBLデータベースを元にBLASTプログラムを用いてホモロジー検索を行ったところ、このグループがユビキチン融合遺伝子(ubiquitin/ribosomal protein S27a gene)に由来していることが判明した。
〔実施例2〕 ユビキチン融合遺伝子のプロモーター領域の単離
公知のイネPACライブラリーの配列(アクセッション番号:AP002971)に基づいて一対のプライマー(ubiRb;5’−cgggatccttcgccggcggccgcag−3’(配列番号:3)およびubiFx;5’−gctctagagttactctcacctgaaggc−3’(配列番号:4))を合成した。ubiFxは、正方向プライマーであり、5’末端側に制限酵素XbaI部位(tctaga)を有する。ubiRbは、逆方向プライマーであり、5’末端側に制限酵素BamHI部位(ggatcc)を有する。このプライマー対を用いると、ユビキチン融合遺伝子の翻訳開始点より上流1979bpが増幅される。
常法に従って、イネ(品種;日本晴)のゲノムDNAを調製した。上記のプライマー対を用い、このDNAを鋳型としてPCRを行い、増幅DNA断片を得た。増幅されたDNAを、制限酵素による切断と、あるいは常法に従って塩基配列決定により目的の部位が増幅されたことを確認した。
〔実施例3〕 ユビキチン融合遺伝子のプロモーター領域活性検定用ベクターの作成
まず、ベクターpBluescript SK(Stratagene)に、植物体内で強い蛍光を発する緑色蛍光タンパク質の変異型sGFP(S65T)(丹羽康夫:植物細胞工学シリーズ4、モデル植物の実験プロトコール、pp117−121、秀潤社、1996)とNosターミネーターを組み込んだプラスミドであるpblue−sGFP(S65T)−NOS SK(丹羽康夫博士 静岡県立大学大学院より分与)に、PCRによって得られたDNA断片を組み込んだプラスミドを作成した(図1)。さらにこのプラスミドをXbaIとKpnIで切断し、バイナリーベクターであるpPZP2H−lac(矢野昌裕博士 農業生物資源研究所より分与)(Fuse et al.(2001)Plant Biotechnology 18(3):219−222)のマルチクローニングサイトにプロモーター領域−GFP−Nosターミネーターのひとつながりの配列を挿入することで、プロモーター領域の活性を検定するための植物形質転換用バイナリーベクターを完成させた(図1)。
〔実施例4〕 植物への遺伝子導入
作成したベクターは凍結解凍法によりアグロバクテリウム・ツメファシエンス菌EHA101に導入した。凍結解凍法とは凍結したEHA101のコンピテントセルにプラスミド溶液を加え、37℃で5分間保温する方法のことをいう。目的のベクターが導入された菌株を用いてシロイヌナズナ(品種:Columbia)とイネ(品種:日本晴)に遺伝子を導入した。
シロイヌナズナへの導入は、「減圧浸潤法による形質転換(荒木崇)」(植物細胞工学シリーズ4、モデル植物の実験プロトコール、pp109−113、秀潤社、1996)に記載の方法に基本的に従って行った。ただし、記載されている減圧の過程は省いて行った。
イネへの導入は、イネのカルス化と植物体の再生に関して、「イネのカルス形成と植物体再生(西村哲、島本功)」(植物細胞工学シリーズ15、新版モデル植物の実験プロトコール、pp78−81、秀潤社、2001)を参考に、アグロバクテリウムによる形質転換は、「アグロバクテリウムによる方法(横井修二、鳥山欽哉)」(植物細胞工学シリーズ15、新版モデル植物の実験プロトコール、pp78−81、秀潤社、2001)を参考にして行った。
〔実施例5〕 植物体で発現したGFPの観察
GFPの発現はシャーレにいれた寒天培地上で育てた植物体を、直接蛍光顕微鏡で観察することができる。蛍光顕微鏡はIX−FLA(オリンパス)で、U−MNIBAフィルターを用いて観察を行った。シロイヌナズナにおける蛍光像を図3に、イネにおける蛍光像を図4に示した。
〔実施例6〕 プロモーター領域の絞込み
プロモーターの活性領域を絞り込むために、図2に示したようにプロモーター領域を上流側から段階的に欠損させたシリーズを作成した。翻訳開始点より上流1979塩基の断片を作成した場合と同様に、逆方向プライマーは5’末端側に制限酵素BamHI部位(ggatcc)を有するubiRbを用い、正方向プライマーは5’末端側に制限酵素XbaI部位(tctaga)を有するプライマー(ubiF15x;5’−GCTCTAgaagttagcagtggttcatcc−3’(配列番号:5)、ubiF10x;5’−GCTCTagatgagctcttgagtgaaaga−3’(配列番号:6)、ubiF05x;5’−GCTCTagatttgggtcgctccgtac−3’(配列番号:7)、ubiF028x;5’−GCTCTagaaagcgaattgcgaggagaa−3’(配列番号:8)、ubiF023x;5’−GCTCTagaagcccataaggcggcc−3’(配列番号:10)、ubiF013x;5’−GCTCTagagtcgcctctctcatttcg−3’(配列番号:9))をそれぞれ用いて、翻訳開始点より上流1512、1032、487、278、227、133塩基の断片を作成した。
これらのDNA断片とGFP遺伝子を連結させたキメラ遺伝子構築物(図2の▲2▼、▲3▼、▲4▼、▲5▼、▲6▼、▲7▼)をシロイヌナズナの植物体に導入した。
その結果、▲2▼、▲3▼、▲4▼、▲5▼を導入したシロイヌナズナでは▲1▼と同様に根端が特異的に光っているのが観察されたのに対し、▲6▼、▲7▼を導入したシロイヌナズナでは光っている部位は観察されなかった。また、▲2▼、▲3▼、▲4▼、▲5▼、▲6▼を導入したイネでは▲1▼と同様に根端が特異的に光っているのが観察されたのに対し、▲7▼を導入したイネでは光っている部位は観察されなかった。このことから、遺伝子をイネ、及びシロイヌナズナの根端において特異的に発現させるには278bpからなる断片(配列表の配列番号:2の1702番目から1979番目までの配列からなる断片/配列番号:1)で十分機能し、その断片に含まれる146bpからなる配列(配列表の配列番号:2の1702番目から1847番目までの配列からなる断片)の一部、または全部がイネ、及びシロイヌナズナの根端で特異的な発現をするプロモーターのシス領域として必須であることを突き止めた。
形質転換植物体において、本発明のプロモーターを機能させることにより、根端組織で特異的に目的遺伝子を発現させることができる。目的遺伝子としては、あらゆる遺伝子の選択が可能である。
根端は根の中で唯一細胞分裂をしている部位であり、この部位において適切な遺伝子の発現を制御することで、根全体の形態を変化させたり、根の総量を増減させたりすることができる可能性がある。またストレスを受けやすい部位でもあるので、適切な遺伝子の発現を制御することで耐冠水、耐乾燥などのストレス耐性植物の作出などが期待できる。
また、単子葉植物であるイネから単離したプロモーターだが、双子葉植物であるシロイヌナズナでも活性が確認されたことから、幅広い植物種において利用可能である可能性が高い。
更に、該プロモーターの制御下にある目的遺伝子の発現量を調節する方法によって、目的遺伝子の産物であるタンパク質やその働きによって細胞内で生じる物質を効率的に生産させることができ、この生産には、形質転換細胞あるいはその細胞からなる毛状根など組織の培養物、あるいは形質転換植物体の栽培収穫物が利用可能となる。
加えて、本発明のプロモーターに他の発現制御配列、例えば、薬剤に応答して抑制が解除されるリプレッサー配列などを連結することにより、薬剤に応答し、かつ特定の様式で遺伝子発現を誘導するプロモーターの構築が可能になる。
Claims (15)
- 下記の(a)または(b)のDNAからなるプロモーター。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNA
(b)配列番号:1に記載の塩基配列において1から10塩基対以内の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の根端特異的なプロモーター機能を有するDNA - 請求項1に記載のプロモーターの下流に、外来遺伝子および植物ターミネーターが機能的に連結した構造を有するDNA。
- 請求項1に記載のプロモーターを含むベクター。
- 請求項1に記載のプロモーターの下流に外来遺伝子挿入部位および植物ターミネーターを含む、請求項3記載のベクター。
- 請求項2に記載のDNAを含むベクター。
- 請求項1に記載のプロモーター、請求項2に記載のDNA、または請求項3〜5のいずれかに記載のベクターを含む、形質転換細胞。
- 微生物である、請求項6に記載の形質転換細胞。
- 植物細胞である、請求項6に記載の形質転換細胞。
- 請求項8に記載の細胞を含む、形質転換植物体。
- 請求項9に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
- 請求項9または10に記載の形質転換植物体の繁殖材料であって、種子、果実、塊茎、切穂、塊根、株、カルス、およびプロトプラストからなる群より選択される繁殖材料。
- 請求項9または10に記載の形質転換植物体の作製方法であって、請求項1に記載のプロモーター、請求項2に記載のDNA、または請求項3〜5のいずれかに記載のベクターを植物細胞へ導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む方法。
- 植物の根端において外来遺伝子を発現させる方法であって、請求項2に記載のDNA、または請求項4もしくは5に記載のベクターを該植物の細胞へ導入する工程を含む方法。
- 被験化合物について、請求項1に記載のDNAのプロモーター活性を調節するか否かを評価する方法であって、
(a)請求項1に記載のDNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有するDNAを含む細胞または細胞抽出液と、被験化合物を接触させる工程、
(b)該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程、
を含み、被験化合物が該レポーター遺伝子の発現レベルを変化させた場合に、被験化合物が請求項1に記載のDNAのプロモーター活性を調節すると判定される方法。 - 以下の工程(a)および(b)を含む、請求項1に記載のDNAのプロモーター活性を調節する化合物のスクリーニング方法。
(a)請求項14に記載の評価方法により、被験化合物について、請求項1に記載のDNAのプロモーター活性を調節するか否かを評価する工程
(b)被験化合物から、該DNAのプロモーター活性を調節すると評価された化合物を選択する工程
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