以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1から図3は、本発明の実施形態によるディスクカートリッジの全体を示している。すなわち、図1はディスクカートリッジを上シェル側から見たときの斜視図、図2はディスクカートリッジの分解斜視図、図3はディスクカートリッジを下シェル側から見たときの斜視図である。
本実施形態のディスクカートリッジ1は、光ディスク3をカートリッジケース2内に回転自在に収納して構成されている。具体的に、ディスクカートリッジ1は、カートリッジケース2の内部に、光ディスク3と、インナーロータ(中シェル)4と、一対のシャッタ部材5a,5bとを備えている。
光ディスク3は、図2に示すように、中心部に、記録再生装置側のディスク回転駆動機構が係合されるセンタ孔3aを有している。光ディスク3としては、オーディオ情報としての音楽信号やビデオ信号としての映像信号及び音楽信号等の各種の情報信号が予め記録された再生専用の光ディスクや、これらの情報信号を1度だけ書き込むことが可能な追記型の光ディスク、これらの情報を繰り返し書き換えることが可能な書換型の光ディスク等のディスク状記録媒体を挙げることができる。ディスク状記録媒体としては、上述した光ディスク3のほか、光磁気ディスクや磁気ディスク等を挙げることができる。
光ディスク3に関しては、情報の記録及び/又は再生にあたって、波長が400nm程度の光ビームを用いるとともに、光ピックアップの対物レンズに、CDやDVDで用いる対物レンズよりも高開口数のものを用いることができる。これにより、CDやDVDよりも高密度に、静止画データ、動画データ、楽曲データ、コンピュータで処理される処理データ等のデータを記録することができる。
本実施形態のディスクカートリッジ1は、図3に示すように、カートリッジケース2の底面に、カートリッジケース2の前面から背面にわたって記録及び/又は再生用の第1の開口部23が形成されている。この第1の開口部23は、ディスクカートリッジ1が記録再生装置の装着部に装着された際、光ディスク3の信号記録面の一部を露出させ、カートリッジケース2の前面側からと背面側からの両方から光ピックアップが進入し、2つの光ピックアップを用いて光ディスク3の記録や再生を行うことを可能とする。これにより、情報信号の記録や読出しの高速化を実現することが可能となる。
カートリッジケース2は、上シェル6と、この上シェル6に突き合わされる2分割された下シェル7(7a,7b)とにより構成されている。図4は、上シェル6の内面構造を示す底面図、図5は、下シェル7の内面構造を示す平面図である。
カートリッジケース2の上面を構成する上シェル6は、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリカーボネート等の熱可塑性を有する樹脂材料を射出成形することにより形成されている。この上シェル6は、図4に示すように、全体が略矩形状の主面のうち、記録再生装置への挿入端側となる前面が略円弧形状に形成されている。また、この上シェル6には、カートリッジケース2の側面をなす外周壁8が主面の外周縁部に沿って形成されている。
また、外周壁8の内周側には、光ディスク3を回転可能に収納するディスク収納部を構成する略円環状の内周壁11が形成されている。内周壁11は、インナーロータ4と協働して、光ディスク3を収納するディスク収納部の側壁を構成する。
内周壁11の外周側には、この内周壁11を囲むようにして更に立上り壁10が形成されている。内周壁11と立上り壁10との間には、略円環状のガイド溝13が形成されている。このガイド溝13には、インナーロータ4が回動可能に係合される。
また、上シェル6には、その各コーナー部近傍に、下シェル7を結合するための複数の位置決めピン14が形成されている。これら位置決めピン14の中心部には、ネジ止め用のネジ孔が形成されている。
一方、下シェル7は、図2、図3及び図5に示すように、2分割されたシェル半体7a,7bを有し、各シェル半体7a,7bは、上シェル6と結合されることで、カートリッジケース2の底面を構成する。なお、以下の説明では、シェル半体7a,7bをまとめて下シェル7ともいう。
下シェル7は、上述した上シェル6と同様に、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリカーボネート等の熱可塑性を有する樹脂材料を射出成形することにより形成されている。各シェル半体7a,7bは、上シェル6の前面側の略円弧形状に対応して前面側が略円弧形状に形成されている。各シェル半体7a,7bは、カートリッジケース2の側面をなす外周壁21が主面の外周縁に沿って形成されている。
更に、下シェル7の各コーナー部には、略円弧形状のコーナー壁24が形成されている。コーナー壁24は、シェル半体7a,7bが上シェル6に突き合わされたとき、上シェル6の内周壁11の外側に位置するように構成されており、これにより、ディスク収納部への異物の進入を効果的に防止する。
下シェル7には、上述した上シェル6の位置決めピン14に嵌合される略円筒状の位置決め凹部22が突出形成されている。この位置決め凹部22の底面部には、ネジが挿通される貫通孔が形成されている。上シェル6と下シェル7のシェル半体7a,7bとは、上シェル6側の外周壁8と下シェル7を構成するシェル半体7a,7bの外周壁21を突き合わせ、上シェル6側の位置決めピン14と下シェル7側の位置決め凹部22とを嵌合し、この位置決めピン14のネジ孔に位置決め凹部22の貫通孔を通してネジを螺合することによって結合される。これにより、カートリッジケース2が構成される。
カートリッジケース2の底面には、下シェル7を構成するシェル半体7a,7bとの間に、記録再生装置の第1及び第2の光ピックアップ並びに記録再生装置のディスク回転駆動機構を構成するディスクテーブルが進入する記録及び/又は再生用の第1の開口部23が形成される。この第1の開口部23は、カートリッジケース2の前面側から記録再生装置側の第1の光ピックアップが進入する開口部23aと、カートリッジケース2の背面側から記録再生装置側の第2の光ピックアップが進入する開口部23bと、開口部23aと開口部23bとの間のカートリッジケース2の底面の略中央部がディスク回転駆動用の開口部23cとからなる。すなわち、開口部23a,23bは、記録再生装置の第1及び第2の光ピックアップをカートリッジケース2の内部に進入させるのに十分な大きさで形成されており、回転駆動用の開口部23cは、記録再生装置のディスク回転駆動機構を構成するディスクテーブルをカートリッジケース2の内部へと進入させるのに十分な大きさで形成されている。
また、カートリッジケース2には、図2に示すように、下シェル7を構成する一方のシェル半体7aの前面側コーナー部に、ロック部材26が組み付けられる。このロック部材26は、後述するインナーロータ4及び一対のシャッタ部材5a,5bがカートリッジケース2の第1の開口部23を閉塞する閉塞位置にあるときに、インナーロータ4の回転をロックする。具体的に、ロック部材26は、下シェル7の一方のシェル半体7aの前面側コーナー部に形成された支軸25に回動可能に係合される軸孔27と、この軸孔27からカートリッジケース2の一方の側面部に向かって延長された操作片28と、軸孔27からインナーロータ4側に延長されたロック片29とを有している。
操作片28の先端部には、図2及び図5に示すように、カートリッジケース2の一方の側面部に形成されたロック用開口部28bから外部に臨む操作突部28aが設けられている。また、ロック片29の先端部には、インナーロータ4のリング部41と摺接するロック突部29aが設けられている。
以上のようなロック部材26が取り付けられる支軸25には、更に、ねじりコイルバネ等の付勢部材30が取り付けられる。付勢部材30の一方のアームは外周壁21に係止され、他方のアームはロック部材26に係止される。これによって、ロック突部29aは、インナーロータ4側に回動付勢され、インナーロータ4の第2の係合凹部45(図6)に係合される。そして、このロック部材26は、操作片28の操作突部28aが押圧されることによって、付勢部材30の付勢力に抗してロック片29がインナーロータ4のリング部41から離間する方向に移動され、ロック突部29aは、第2の係合凹部45との係合状態が解除される。
また、図3に示すように、カートリッジケース2の一方の側面部には、ディスクカートリッジ1の記録再生装置への誤挿入を防止するためのガイド溝31が前面側から背面側にわたって形成されている。このガイド溝31の底面部には、前面側から順に、上述したロック部材26の操作突部28aを外部に臨ませるロック用開口部28bと、インナーロータ4の外周部の一部を外部に臨ませるロータ用開口部28cとが形成されている。
下シェル7の内面には、図2に示すように、後述するシャッタ部材5a,5bに長孔状に設けられたガイド孔53と係合するガイドピン32が略円柱状に突出形成されている。このガイドピン32は、インナーロータ4の回動に従ってガイド孔53に沿って移動して、シャッタ部材5a,5bを軸孔50a,50bを支点に回動させる。
下シェル7が構成するカートリッジケース2の下面には、図3に示すように、記録再生装置に装着した際の位置決めを行う複数の位置決め孔33a,33bが設けられている。一方の位置決め孔33aは、一方の位置決め孔33aは真円でロケーションホールとして機能し、他方の位置決め孔33bは楕円でアライメントホールとして機能する。また、カートリッジケース2の前面側の一方のコーナー部側には、前面及び底面を開口した凹部34が設けられている。記録フォーマットを異にしながら外形形状を略同じくするディスクカートリッジとの識別部となる。勿論、凹部34は、記録再生装置への挿入時にガイドピンを係合させることによって挿入ガイド溝や位置決め溝として機能させることもできる。
次に、インナーロータ4の構成について説明する。図6はインナーロータ4の底面側から見た斜視図である。また、図7はディスクカートリッジ1の要部の断面図である。
インナーロータ4は、ポリオキシメチレン(POM)等の熱可塑性を有する樹脂材料を射出成形することにより形成されている。このインナーロータ4の主面部4aには、光ディスク3が信号記録面3aを対向させるようにして載置される。この主面部4aは、図7に示すようにカートリッジ本体2内に配設されたとき、上シェル6の内壁面11及びインナーロータ4の主面部4aとでディスク収納部15(図7)を構成する。
インナーロータ4は、図6に示すように略円形状に形成されており、その外周縁部には、上述した上シェル6のガイド溝13に係合される略円環状のリング部(周壁部)41が形成されている。このインナーロータ4は、上シェル6のガイド溝13にリング部41が係合されることによって、カートリッジケース2の内部において回動可能に支持される。
インナーロータ4には、図6に示すように、下シェル7に設けられた第1の開口部23と略同じ大きさの第2の開口部42が形成されている。第2の開口部42が設けられた領域のリング部41は、連結部41aとして構成されている。連結部41aは、インナーロータ4の主面部4a側に位置する第1の端面と、主面部4aとは反対側に位置する第2の端面を有している。連結部41aは、その第2の端面側がガイド溝13に係合される。
図22(A)は、ガイド溝13に係合した連結部41aの断面図である。図22(B)は比較例として示す従来構造の連結部141aの同様な断面図である。従来の連結部141aは、図において上面(第1の端面)と下面(第2の端面)がそれぞれ同一幅で形成されており、内外周の側面141sは上シェル6の主面に対して垂直に形成されている。
これに対して、本実施形態の連結部41aは、図において上面(第1の端面)の方が下面(第2の端面)よりも幅広に形成されている。具体的に、連結部41aの外周側の側面41s1がテーパ状に形成され、内周側の側面41s2は垂直に形成されている。下面の形成幅(第2の形成幅)は従来の連結部141aの下面の形成幅と同一に形成されていることで、連結部41aの断面積は、従来の連結部141aの断面積よりも大きくなっている。その結果、本実施形態の連結部41aは、従来構造の連結部141aと比較して、機械的強度が大きく、したがって落下衝撃に対する耐久性が従来よりも向上している。
また、連結部41aの断面積が大きくなったことで、連結部41aの成形性も高められる。その結果、インナーロータ4を所望の形状精度で成形することが可能となる。
さらに、連結部41aの下面の形成幅を従来の連結部141aのそれと同等に形成されているため、ガイド溝13の底部の溝幅に変更を加えることなく、上シェル6を形成することができる。これにより、内周壁11及び立上り壁10の形成間隔を広げる必要がなくなるため、上シェル6の強度の低下を防ぐことが可能となる。この場合、ガイド溝13の断面形状は、連結部41aの断面形状に対応させることができ、図22(A)の例では、外周側の立上り壁10の内周面がテーパ状に形成される。これにより、連結部41aをガイド溝13内に安定に保持することができる。
図23は、連結部41a及びガイド溝13のそれぞれの形状の変形例を示す断面図である。図23(A)は、連結部41aの内外周の両側面41s1及び41s2をそれぞれ逆テーパ状(アンダーカット状)に形成した例を示しており、図23(B)は、連結部41aの外周側の側面41s1を曲面状に形成した例を示している。これらの場合にも、連結部41aの上面側を下面側よりも大きな幅で形成することができる。また、連結部41aの断面形状に合わせて、ガイド溝13の側壁面をテーパ状及び曲面状に形成される。
なお、連結部41aの高さ寸法は、ガイド溝13の深さ寸法よりも低く形成されている。これは、第1の開口部23へ進入する光学ピックアップの進路の妨げとならないようにするためである。また、連結部41aの断面形状は、
図8は、インナーロータ4が下シェル7の開口部23を閉塞する方向に回動した状態を示す平面図であり、図9は、インナーロータ4が下シェル7の開口部23を開放する方向に回動した状態を示す平面図である。
リング部41の外周面には、インナーロータ4を回動させるためのギヤ部43が形成されている。このギヤ部43は、図8に示すように、インナーロータ4が下シェル7の第1の開口部23の閉塞位置にあるときに、上述したロータ用開口部28cの前面側から外部に臨む位置と、図9に示すインナーロータ4が下シェル7の第1の開口部23を開放した開放位置にあるときに、上述したロータ用開口部28cの背面側から外部に臨む位置との間の領域に亘って形成されている。
このギヤ部43の一方の側には、図6に示すように、記録再生装置側のシャッタ開放機構を構成するシャッタ開放部材の第1の係合突起が係合される第1の係合凹部44が形成され、ギヤ部43の他方の側には、シャッタ開放部材の第2の係合突起が係合される第2の係合凹部45が形成されている。これら係合凹部44,45は、ギヤ部43と共にロータ用開口部28cより外部に臨む。第1の係合凹部44は、ディスクカートリッジ1を記録再生装置に装填したとき、最初にシャッタ開放部材の第1の係合突起が係合される。第2の係合凹部45は、後述するシャッタ部材5a,5bが閉塞位置にあるとき、ロック部材26のロック突部29aが係合され、シャッタ部材5a,5bが第1及び第2の開口部23,42の開放位置に移動したとき、シャッタ開放部材の第2の係合突起が係合される。
また、リング部41の外周面には、インナーロータ4の回動量を規制するための一対の回動規制突部46a,46bが互いに所定の間隔を有して突出形成されている。一方、下シェル7a,7bには、回動規制突部46a,46bと当接される一対の規制部47a,47bが形成されている。
図9に示すように、インナーロータ4が第1の開口部23を開放する方向に回動し、一方の回動規制突部46aが一方の規制部47aと当接することで、インナーロータ4の更なる回動を規制する。この方向のインナーロータ4の回動が規制されたとき、図9に示すように、インナーロータ4は、第1の開口部23の開放位置にあり、インナーロータ4の第2の開口部42は第1の開口部23と略一致した状態となる。
一方、図8に示すように、インナーロータ4が第1の開口部23を閉塞する方向に回動し、他の回動規制突部46bが他の規制部47bと当接することで、インナーロータ4の更なる回動を規制する。この方向のインナーロータ4の回動が規制されたとき、インナーロータ4は、第1の開口部23の閉塞位置にあり、第2の開口部42が第1の開口部23に対して最も傾いた状態となる。
また、インナーロータ4には、図6に示すように、主面部4aのリング部41が突出する側とは反対側の面に、一対のシャッタ部材5a,5bをそれぞれ回動可能に支持する一対の支軸49a,49bが突出形成されている。この一対の支軸49a,49bは、インナーロータ4の中心部に対して点対称な位置、すなわち互いに180°の位相差を有して配置されている。
このようなインナーロータ4に取り付けられる第2の開口部42を開閉する一対のシャッタ部材5a,5bは、図10から図12に示すように、互いに対称な形状をなし、インナーロータ4の一対の支軸49a,49bに、180°の位相差を有して回動可能に取り付けられている。なお、一対のシャッタ部材5a,5bにおける同等な部分については、同一の符号を付して詳細は省略する。
以下、図10から図12を参照して、シャッタ部材5a,5bの詳細について説明する。図10は、一対のシャッタ部材5a,5bの斜視図、図11は、インナーロータ4の開口部42をシャッタ部材5a,5bが開放している状態を示す斜視図、図12は、インナーロータ4の開口部42をシャッタ部材5a,5bが閉塞している状態を示す斜視図である。
シャッタ部材5a,5bは、本発明に係る「シャッタ」を構成する。シャッタ部材5a,5bは、上述したインナーロータ4と同様に、ポリオキシメチレン(POM)等の熱可塑性を有する樹脂材料を射出成形することにより形成されている。このシャッタ部材5a,5bは、略半円平板状に形成されており、基端部には、インナーロータ4の支軸49a,49bに回動可能に係合される軸孔50a,50bが形成されている。
また、一対のシャッタ部材5a,5bの突き合わせ面となる弦線部分には、中央部から基端部に向かって第1の係合片51と、中心部から先端部に向かって第2の係合片52とが形成されている。このうち、第1の係合片51は、下シェル7側が傾斜面とされており、第2の係合片52は、上シェル6側が傾斜面とされている。一対のシャッタ部材5a,5bは、図11及び図12に示すように、インナーロータ4の支軸49a,49bを中心として、互いに近接する方向に回動されることによって、一方のシャッタ部材5aの第1の係合片51と他方のシャッタ部材5bの第2の係合片52とが係合されると共に、他方のシャッタ部材5bの第1の係合片51と一方のシャッタ部材5aの第2の係合片52とが係合される。
また、シャッタ部材5a,5bには、下シェル7の内面に突出形成された一対のガイドピン32とそれぞれ係合されるガイド孔53が形成されている。このガイド孔53は、シャッタ部材5a,5bが第2の開口部42の閉塞位置と開放位置との間で回動されるように、弦線部分の中途部から軸孔50a,50bに向かって所定の長さで形成されている。
図13及び図14は、インナーロータ4の回動とシャッタ部材5a,5bの開閉動作との関係を示している。ここで、図13はシャッタ部材5a,5bの閉塞位置、図14はシャッタ部材5a,5bの開放位置をそれぞれ示している。
ディスクカートリッジ1の非使用時、インナーロータ4及びシャッタ部材5a,5bは図13に示す位置にある。すなわち、インナーロータ4は、ロック部材26のロック片29が第2の係合凹部45に係合することで回動が規制されており、シャッタ部材5a,5bはそれぞれ閉塞位置に位置して下シェルの第1の開口部23を閉塞している。
一方、このディスクカートリッジ1が記録再生装置へ装填されると、記録再生装置側のシャッタ開放部材がロック部材26の操作片28を押圧してロック片29と第2の係合凹部45との係合を解いた後、インナーロータ4の第1の係合凹部44と係合する。そして、記録再生装置に対するディスクカートリッジ1の前進動作に伴って上記シャッタ開放部材とインナーロータ4のギヤ部43が係合し、インナーロータ4を図13において時計方向に回動させる。インナーロータ4が回動すると、支軸49a,49bに支持されているシャッタ部材5a,5bもカートリッジケースに対して移動する。
このとき、下シェル7(シェル半体7a,7b)のガイドピン32とシャッタ部材5a,5bのガイド孔53との係合作用によって、シャッタ部材5a,5bが支軸49a,49bの周りに回動する。シャッタ部材5a,5bの回動量は、インナーロータ4の回動量と対応しており、第1の開口部23と第2の開口部42とが略一致する位置までインナーロータ4が回動した時点で、シャッタ部材5a,5bは第1の開口部23を完全に開放する位置まで回動されることになる。
なお、記録再生装置からディスクカートリッジ1を取り出す際は、上記と逆の動作が行われる。すなわち、インナーロータ4が図14において反時計方向に回動されるとともに、シャッタ部材5a,5bをカートリッジケースに対して相対移動させることによって、図13に示すように第1の開口部23がシャッタ部材5a,5bによって閉塞される。また、インナーロータ4の第2の係合凹部45にロック部材26のロック片29が係合することによって、インナーロータ4の回動が規制される。
一方、シャッタ部材5a,5bには、図10に示すように、第1の係合片51の上面に突部54がそれぞれ形成されている。これら突部54は、シャッタ部材5aとシャッタ部材5bが第1及び第2の係合片51,52を介して係合した際に、ディスク収納部15に収納されている光ディスク3の中央内周部(非信号記録領域)に対向する位置にそれぞれ形成されている。これにより、シャッタ部材5a,5bでカートリッジケース2の第1の開口部23が閉塞された状態にあるディスクカートリッジ1の非使用時において、シャッタ部材5a,5bに作用した外力でシャッタ部材5a,5bが変形したとしても、突部54が光ディスク3の内周部と当接することによって、光ディスク3の信号記録面とシャッタ部材5a,5bの接触を防止することが可能となる。
なお、第1の開口部23が開放された状態にあるディスクカートリッジ1の使用時においては、シャッタ部材5a,5bの突部54は、インナーロータ4の第2の開口部42の周縁に形成された切欠き部48a,48bの内部に収容される。これにより、シャッタ部材5a,5bは、適正に開放位置へ移動することが可能とされる。
以上のような構成のディスクカートリッジ1には、上述した構成の他に、図2に示すように、上シェル6の内面略中央部にクランピングプレート61が配設される。このクランピングプレート61は、記録再生装置のディスク回転駆動部を構成するディスクテーブルとともに光ディスク3を挟持し、取付リング61aによって上シェル6に取り付けられている。具体的に、クランピングプレート61は、取付リング61aと上シェル6の内面略中央部とで挟み込むようにし、取付リング61aを上シェル6の内面略中央部に溶着等によって取り付けられる。そして、光ディスク3は、センタ孔3bにディスクテーブルが係合し、更にディスクテーブルとクランピングプレート61とで挟持されることによりディスク収納部2a内で回転可能な状態となる。
なお、上シェル6に対する下シェル7のシェル半体7a,7bの固定方法としては、上述したネジ等の手段に限らず、接着剤、超音波溶着等を用いて上シェル6と下シェル7のシェル半体7a,7bとを接合一体化させることも可能である。
また、本実施形態のディスクカートリッジ1は、図2及び図3に示すように、カートリッジケース2の背面側の一方のコーナー部に、光ディスク3に記録した情報信号の誤消去を防止するための誤消去防止機構70を備えている。誤消去防止機構70は、記録可位置と記録不可位置との間を移動自在なタブ部材73と、タブ部材73を収納するタブ収納部72(図4)と、記録可能状態か記録不可能状態かを検出するための検出孔74(図3)と、タブ部材73を操作するための操作孔75(図4)等を含んでいる。
次に、本実施形態のディスクカートリッジ1に適用されている耐衝撃性向上機構について説明する。
(緩衝機構)
本実施形態のディスクカートリッジ1は、インナーロータ4とシャッタ部材5a,5bの結合部に作用する衝撃を弾性的に緩和する緩衝機構を備えている。図15(A)は、インナーロータ4の支軸49aの形成部位を示す平面図であり、図15(B)は、図15(A)における(B)−(B)線方向断面図である。また、図16(A)は、シャッタ部材5aの軸孔50aの形成部位を示す平面図であり、図16(B)は、図16(A)における(B)−(B)線方向断面図である。なお以下の説明では、一方の支軸49a及び軸孔50aの構成について説明するが、他方の支軸49b及び軸孔50bも同様に構成されているものとする。
支軸49aは、インナーロータ4に対してシャッタ部材5aを回動自在に支持する回動軸として構成されている。支軸49aは、インナーロータ4の主面部4aに弾性支持部56を介して一体的に形成されている。図15(A)に示すように、弾性支持部56は、主面部4aに形成されたスリット(溝)55によって、主面部4aと区画されている。図示する形状の弾性支持部56は、アーム状の外形状を有しており、主面部4aに対して弾性変形自在である。支軸49aは、弾性支持部56の先端部に形成されている。
また、図15(B)に示すように、支軸49aの側周部には第1の係合部57が形成されている。この第1の係合部57は、インナーロータ4の第2の開口部42側が開放された溝状に形成されている。
一方、この支軸4aに嵌合するシャッタ部材5aの軸孔50aには、図16に示すように第2の係合部58が形成されている。第2の係合部58は、軸孔50aの内周部に形成されており、具体的には、軸孔50aの底部から軸孔50aの内方に向かって突出した突状に形成されている。第2の係合部58は、図17に示すように、支軸49aに形成された第1の係合部57と互いに係合可能に構成されている。
図17(A)、(B)は、第1の係合部57に対する第2の係合部58の組み付け例を示す要部の断面図である。図18は、図17(A)の過程におけるインナーロータ4とシャッタ部材5aの要部の斜視図である。第2の係合部58は、弾性支持部56を主面部4aに対して所定以上弾性変形させ、かつシャッタ部材5aをインナーロータ4の主面部4aに対して傾斜させた状態で、支軸49aの底部に潜り込ませるようにして第1の係合部57と係合される。
係合後、弾性支持部56はその復元力で主面部4aとほぼ同一の面内に復帰し、第1、第2の係合部57,58の係合箇所は主面部4aに周囲が囲まれる。その結果、カートリッジケース2への収納後は、カートリッジケース2の内部において、インナーロータ4とシャッタ部材5aの位置関係が図18に示したような状態になることはないため、インナーロータ4からシャッタ部材5aの分離が確実に阻止される。
以上のようにして、インナーロータ4に対するシャッタ部材5aの組み付けが完了する。他方のシャッタ部材5bの組み付け方法も上述と同様であるので、その説明は省略する。
ディスクカートリッジ1の緩衝機構は以上のようにして構成される。上記緩衝機構を設けることによって、支軸49a,49bがインナーロータ4の主面部4aに対して弾性的に支持されているので、落下衝撃が作用した際、インナーロータ4とシャッタ部材5a,5bの間の結合部に加わる応力を緩和して、インナーロータ4からのシャッタ部材5a,5bの離脱を防ぐことが可能となる。これにより、落下衝撃に対するシャッタ開閉機構の耐久性が高まり、ディスクカートリッジ1の信頼性を向上させることができる。
また、弾性支持部56は、インナーロータ4の主面部4aと一体的に形成されており、かつ、その主面部4aに形成されたスリット55によって主面部4aと区画されている。この構成により、主面部4aに対して弾性支持部56を容易に形成することが可能となる。また、スリット55の形成の仕方によって弾性支持部56に所望の弾性力を付与することが可能となる。
また、支軸49a,49bは、弾性支持部56の先端に一体的に形成されているので、インナーロータ4に対するシャッタ部材5a,5bの弾性変形能が向上し、支軸49a,49bに作用する衝撃を効率よく吸収することが可能となる。
さらに、上記構成において、第2の係合部58は、弾性支持部56を所定以上弾性変形させ、かつシャッタ部材5a,5bをインナーロータ4の主面部4aに対して傾斜させた状態で、第1の係合部57から離脱される。弾性支持部56の上記所定以上の弾性変形量として、カートリッジケース2の内部における弾性支持部56の最大変形量を超える大きさとすることにより、カートリッジケース2にインナーロータ4及びシャッタ部材5a,5bを組み込んだ後は、第1の係合部57と第2の係合部58の間の係合関係を常に維持することが可能となる。
(係合機構)
次に、本実施形態のディスクカートリッジ1は、カートリッジケース2とシャッタ部材5a,5bとの間に設けられ、シャッタ部材5a,5bが閉塞位置に位置するときにカートリッジケース2とシャッタ部材5a,5bとの間の係合状態を維持する係合機構を具備する。
図19は、シャッタ部材5aの要部の斜視図である。シャッタ部材5aの回動中心となる軸孔50aの近傍には、インナーロータ4側とは反対側へ突出する係合突起59が形成されている。また、他方のシャッタ部材5bの回動中心の近傍にも同様な係合突起59が設けられている(図14)。係合突起59は、シャッタ部材5aの回動の軌跡に沿って円弧状に形成されており、下シェル7の第1の開口部23を閉塞する閉塞位置において下シェル7(シェル半体7a,7b)に形成された係合溝60に係合する。
係合溝60は、図5に示すように、開口部23の縁部に円弧状に形成され、閉塞位置に回動したシャッタ部材5a,5bの係合突起59を収容する。図20は、シェル半体7aに形成された係合溝60の斜視図である。図21は、係合突起59と係合溝60の係合状態を示す断面図である。係合溝60の内周側の縁部にはリブ60aが形成されており、係合溝60の底部からのリブ60aの高さは係合突起59の高さと同等に設定されている。また、下シェル7の第1の開口部23と係合溝60との間にはテーパ部60bが形成されている。これにより、シャッタ部材5a,5bが閉塞位置へ回動したときに係合突起59が係合溝60内へ進入し易くなる。
ディスクカートリッジ1の係合機構は以上のようにして構成される。本実施形態では、上記係合機構を設けることによって、シャッタ部材5a,5bが第1の開口部23を閉塞する閉塞位置にあるときにカートリッジケース2とシャッタ部材5a,5bとの間の係合状態が維持される。
これにより、落下衝撃が作用した際、カートリッジケース2に対するシャッタ部材5a,5bの相対移動が規制されるので、シャッタ部材5a,5bを軸支する支軸49a,49bに加わる応力の低減を図ることができ、インナーロータ4からのシャッタ部材5a,5bの離脱を防ぐことが可能となる。そして、落下衝撃に対するシャッタ開閉機構の耐久性が高まり、ディスクカートリッジ1の信頼性を向上させることができる。また、係合突起59を支軸49a,49bの近傍に形成したことにより、支軸49a,49bの近傍位置にて落下衝撃を食い止めることが可能となり、支軸49a,49bを落下衝撃から効果的に保護することが可能である。
係合溝50は、下シェル7の第1の開口部23の縁部に局所的に形成されているため、シャッタ部材5a,5bが閉塞位置から開放位置への移動の過程でカートリッジケース2とシャッタ部材5a,5bとの間の係合状態が解除される構成となっている。これにより、カートリッジケース2とシャッタ部材5a,5bの間の係合解除に特別な機構が不要となり、シャッタ部材5a,5bの通常の回動動作によってカートリッジケース2に対する係合とカートリッジケース2からの係合解除を実行することが可能となる。
さらに、上述した緩衝機構の作用と組み合わせることによって、落下衝撃から支軸49a,49bを効果的に保護することが可能となり、シャッタ開閉機構の信頼性をより高めることができる。また、支軸49a,49bと軸孔50a,50bとの係合構造によって、インナーロータ4からのシャッタ部材5a,5bの分離を確実に阻止することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば以上の実施形態では、カートリッジケース2の前面と背面との間にわたって第1の開口部23が形成されているディスクカートリッジ1を例に挙げて説明したが、これに代えて、カートリッジケース2の中心部とその背面との間にわたって第1の開口部が形成されているディスクカートリッジにも、本発明は適用可能である。
また、インナーロータ4に対してシャッタ部材5a,5bを回動自在に支持する回動軸を弾性的に支持する緩衝機構として、インナーロータ4の主面部4aに回動軸(支軸49a,49b)及び弾性支持部56を構成した例について説明したが、これに代えて、シャッタ部材5a,5bの主面部側に上記回動軸及び弾性支持部を構成してもよく、この場合にも同様な効果を得ることができる。
また、緩衝機構として、弾性支持部56の代わりに、例えば、インナーロータの主面部と回動軸の間にゴム等の弾性板を配置してもよい。
一方、シャッタ部材5a,5bの閉塞位置でシャッタ部材5a,5bをカートリッジケース2に係合させる係合機構として、シャッタ部5a,5b側に係合突起59、下シェル7側に係合溝60をそれぞれ設けた例を説明したが、これに代えて、下シェル側に係合突起、シャッタ部材側に係合溝をそれぞれ設けてもよい。
また、上記係合機構は、支軸49a,49bの近傍に形成される例に限られず、これ以外の部位、又は、支軸49a,49bの近傍だけでなく更に他の部位においても下シェルとカートリッジケースとの係合部を設けてもよい。