JP2009197660A - 燃料噴射弁のシール構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】インジェクタに装着されるシールリングをインジェクタ先端部近傍に配置可能とし、噴孔およびその周辺部でのデポジットの生成を抑制することが可能な燃料噴射弁のシール構造を提供する。
【解決手段】インジェクタ2の先端部分にポリイミド樹脂により形成された第1シールリング3を配設し、この第1シールリング3の配設位置よりもインジェクタ2の反先端側にPTFEにより形成された第2シールリング4を配設する。第1シールリング3に切り欠き32を形成し、拡径方向への変形を可能にしてインジェクタ2への装着作業を容易にする。また、インジェクタ2がインジェクタ取付孔11に挿入された状態では、第1シールリング3の外周面がインジェクタ取付孔11の内周面に押圧されてシール性が確保される。
【選択図】図2
【解決手段】インジェクタ2の先端部分にポリイミド樹脂により形成された第1シールリング3を配設し、この第1シールリング3の配設位置よりもインジェクタ2の反先端側にPTFEにより形成された第2シールリング4を配設する。第1シールリング3に切り欠き32を形成し、拡径方向への変形を可能にしてインジェクタ2への装着作業を容易にする。また、インジェクタ2がインジェクタ取付孔11に挿入された状態では、第1シールリング3の外周面がインジェクタ取付孔11の内周面に押圧されてシール性が確保される。
【選択図】図2
Description
本発明は、例えば筒内直噴式エンジン等に代表される内燃機関に備えられる燃料噴射弁のシール構造に係る。特に、本発明は、シリンダヘッド等のエンジン構成部材に形成された燃料噴射弁取付孔の内面と燃料噴射弁の外面との間からのガス漏れを防止するための構成の改良に関する。
従来より、例えば筒内直噴式ガソリンエンジンにあっては、シリンダヘッドにインジェクタが直接的に取り付けられており、インジェクタの噴孔が燃焼室に露出するように配設されている。具体的には、シリンダヘッドに、燃焼室に連通するインジェクタ取付孔を形成しておき、このインジェクタ取付孔に対してインジェクタの先端部分を挿入し、噴孔が燃焼室内に露出するようにインジェクタが取り付けられている。
このため、上記インジェクタ取付孔の内面とインジェクタの外面との間の環状隙間から燃焼ガス等が漏れ出すことを防止するためのシール構造が必要となる。
また、エンジンの運転時には、インジェクタの先端部が高温の燃焼室に晒されるため、インジェクタ取付孔の内面とインジェクタの外面との間に高温の燃焼ガスが流れ込んで、インジェクタの先端部が高温となった場合に、噴孔およびその周辺部にデポジットが生成される可能性がある。このようにデポジットが生成されると、噴孔からの燃料噴射が阻害されてしまって適正な燃料噴射量を得ることができなくなる。その結果、燃料噴射量が所定量よりも減少する状況となり、各気筒間での燃料噴射量のバラツキに起因して、アイドリング運転時における回転数の不安定化(所謂ラフアイドルの発生)によって振動が増大したり、排気エミッションが悪化したり、WOT(Wide Open Throttle)性能の悪化によりエンジンに所定のトルクが得られなくなる等といった不具合が生じてしまう。
これらの点を考慮した従来のシール構造の一例として、例えば下記の特許文献1には、インジェクタの先端側に耐熱用PTFE(Poly tetra fluoro ethylene)製リングを設け、インジェクタの奥側(反先端側)にガスシール用PTFE製リングを設けた構成が開示されている。また、下記の特許文献2には、インジェクタの先端側に金属製のリングを設け、インジェクタの奥側にゴム製のOリングを設けた構成が開示されている。
特開2005−155394号公報
特開2000−310332号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示されている構成では、融点が350℃程度のPTFEを耐熱用リングとして採用しているため、例えば800℃の燃焼ガスによる溶損を回避するためには、リングの取付位置として、インジェクタの先端部よりもある程度の寸法を存した奥側(インジェクタ先端側とは反対側)に設定する必要があり、耐熱用PTFE製リングをインジェクタの先端部に近付けるには限界があった。このため、インジェクタ先端部分における高温度となる領域を縮小することができず、デポジットの生成に伴う上記不具合を解消するには不十分な構成であった。
一方、上記特許文献2に開示されている構成では、インジェクタの先端側に設けられるリングが金属製であるため、その熱伝導率が高く、このリングによる遮熱効果が十分に得られるものではなかった。つまり、燃焼ガスの流れ込みは抑制できたとしても、その燃焼ガスの熱は、この金属製リングを経てインジェクタの全体に伝達されてしまう可能性があり、この場合にも、デポジットの生成に伴う上記不具合を解消するには不十分な構成であった。更に、この金属製リングをインジェクタに対して脱落無く嵌め込むためには、リングの内面形状に高い加工精度が必要であり、また、シール性を確保するためにはリングの外面形状にも高い加工精度が必要であった。つまり、リング全体として高い加工精度が要求されるため、量産化を図る上での実用性に欠けるものであった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記インジェクタに装着されるシールリングをインジェクタ先端近傍に配設可能とし、噴孔およびその周辺部でのデポジットの生成を抑制することが可能な燃料噴射弁のシール構造を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、インジェクタ(燃料噴射弁)の先端側と奥側(反先端側)とで、異なる材料のシールリングを適用し、先端側のシールリングは耐熱性を有する樹脂材料製とすることで燃料噴射弁の先端部への配設を可能にしつつ、その嵌め込みを容易にするために切り欠きを設けて拡径を可能にしている。一方、奥側のシールリングとしては、燃焼室から離れた位置に配設されるため熱の影響が少ないので、耐熱性よりも柔軟性を優先した材料を選択し、シール機能を確保している。
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、インジェクタ(燃料噴射弁)の先端側と奥側(反先端側)とで、異なる材料のシールリングを適用し、先端側のシールリングは耐熱性を有する樹脂材料製とすることで燃料噴射弁の先端部への配設を可能にしつつ、その嵌め込みを容易にするために切り欠きを設けて拡径を可能にしている。一方、奥側のシールリングとしては、燃焼室から離れた位置に配設されるため熱の影響が少ないので、耐熱性よりも柔軟性を優先した材料を選択し、シール機能を確保している。
−解決手段−
具体的に、本発明は、内燃機関本体を構成する内燃機関構成部材に形成された燃料噴射弁取付孔の内面と、この燃料噴射弁取付孔に挿入して取り付けられる燃料噴射弁の外面との間の空間を、燃料噴射弁の軸線に沿う方向に亘って配設された複数のシールリングによって閉塞する燃料噴射弁のシール構造を前提とする。この燃料噴射弁のシール構造に対し、上記燃料噴射弁の先端部に、内燃機関の燃焼ガス温度よりも融点が高い、または、融点を有しない樹脂材料で成る第1シールリングを配設する。一方、この第1シールリングの配設位置に対して燃料噴射弁の軸線に沿う方向における先端側とは反対側の位置に、弾性変形した状態で燃料噴射弁取付孔の内面に接触可能な柔軟性を有する材料で成る第2シールリングを配設する。そして、上記第1シールリングに、径方向への弾性変形が可能となるように一部に切り欠きを形成しておき、この第1シールリングが、燃料噴射弁取付孔の内面と燃料噴射弁の外面との間に装着された状態では、燃料噴射弁取付孔の内面に向かって外周側へ拡径する方向への付勢力が生じるよう弾性変形させた構成としている。
具体的に、本発明は、内燃機関本体を構成する内燃機関構成部材に形成された燃料噴射弁取付孔の内面と、この燃料噴射弁取付孔に挿入して取り付けられる燃料噴射弁の外面との間の空間を、燃料噴射弁の軸線に沿う方向に亘って配設された複数のシールリングによって閉塞する燃料噴射弁のシール構造を前提とする。この燃料噴射弁のシール構造に対し、上記燃料噴射弁の先端部に、内燃機関の燃焼ガス温度よりも融点が高い、または、融点を有しない樹脂材料で成る第1シールリングを配設する。一方、この第1シールリングの配設位置に対して燃料噴射弁の軸線に沿う方向における先端側とは反対側の位置に、弾性変形した状態で燃料噴射弁取付孔の内面に接触可能な柔軟性を有する材料で成る第2シールリングを配設する。そして、上記第1シールリングに、径方向への弾性変形が可能となるように一部に切り欠きを形成しておき、この第1シールリングが、燃料噴射弁取付孔の内面と燃料噴射弁の外面との間に装着された状態では、燃料噴射弁取付孔の内面に向かって外周側へ拡径する方向への付勢力が生じるよう弾性変形させた構成としている。
各シールリングの構成材料として具体的に、上記第1シールリングはポリイミド樹脂により形成されており、また、上記第2シールリングはPTFEにより形成されている。
これら特定事項により、燃焼室内の燃焼ガスが燃料噴射弁取付孔の内面と燃料噴射弁の外面との間の空間に流れ込む状況において、この燃焼ガスの流れ込みは、第1シールリングによって効果的に抑制される。また、この第1シールリングは高い耐熱性を有しているため、燃料噴射弁の先端部に配設したとしても溶損することはない。このため、燃焼室内の熱を受けて温度上昇する燃料噴射弁の先端部の領域を小さくすることができ、燃料噴射弁の噴孔およびその周辺部でのデポジットの発生は抑制され、このデポジット抑制効果は第1シールリングによって継続的に維持される。また、耐熱性を有する樹脂材料は一般的に硬度が高く、この種の材料でシールリングを形成した場合、燃料噴射弁への装着が困難になると考えられるが、本解決手段では、第1シールリングに切り欠きを形成して、径方向への弾性変形を可能としているため、その装着作業は容易である。更に、燃料噴射弁取付孔の内面と燃料噴射弁の外面との間に第1シールリングが装着された状態では、外周側へ拡径する方向への付勢力が第1シールリングに生じており、この第1シールリングの外面を燃料噴射弁取付孔の内面に押し付けることが可能であり、この第1シールリングによるシール性が良好に確保されている。
一方、第2シールリングは、柔軟性を有しており、燃料噴射弁取付孔の内面および燃料噴射弁の外面にそれぞれ密着してシール性が大きく確保されている。例えば燃焼室内の燃焼ガスが上記第1シールリングを通過したとしても、第2シールリングによって高いシール性が確保されているために、この燃焼ガスが外部に漏れ出すことはない。
以上のような異種材料で成る複数のシールリングの組み合わせにより、上記デポジットの発生による不具合(振動の増大、排気エミッションの悪化、WOT性能の悪化等)を解消することができ、各シールリングの装着作業性も良好に確保することができる。特に、第1シールリングは、切り欠きが形成されていることにより径方向への弾性変形が可能であるため、高い加工精度を有していなくても、そのシール性を十分に確保することができる。
各シールリングの配設形態として具体的には以下の2タイプが挙げられる。先ず、上記燃料噴射弁の外面に、第1シールリングの軸線方向の長さ寸法に略一致した長さ寸法を有する第1リング溝、および、第1リング溝の形成位置に対して燃料噴射弁の軸線に沿う方向に所定距離を存した位置であって第2シールリングの軸線方向の長さ寸法に略一致した長さ寸法を有する第2リング溝をそれぞれ形成する。そして、上記第1リング溝に第1シールリングを、上記第2リング溝に第2シールリングをそれぞれ嵌め込んだ構成としている。
また、上記燃料噴射弁の外面に、第1シールリングの軸線方向の長さ寸法と第2シールリングの軸線方向の長さ寸法との和に略一致した長さ寸法を有するリング溝を形成する。そして、このリング溝に、第1シールリングおよび第2シールリングをそれぞれ軸心方向で隣接させた状態で嵌め込んだ構成としている。
前者の構成では、第2シールリングを燃焼室から十分に離れた位置に配設することが可能であり、この第2シールリングとして適用可能な構成材料の選択の幅を拡大できる。
一方、後者の構成では、各シールリングを同時にリング溝に嵌め込むことが可能であるので、その嵌め込み作業工数の削減を図ることができる。
本発明では、燃料噴射弁の先端側のシールリングを、高い耐熱性を有する樹脂材料製とし、奥側のシールリングを、柔軟性を有する材料とし、更に、先端側のシールリングには切り欠きを設けて径方向への弾性変形を可能にしている。これにより、シールリングを燃料噴射弁の先端部に配設することが可能になり、燃料噴射弁の噴孔およびその周辺部でのデポジットの発生を抑制し、このデポジット抑制効果を継続的に維持することが可能になる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明を自動車に搭載された筒内直噴式多気筒(例えば4気筒)ガソリンエンジンに適用した場合について説明する。
本実施形態は、インジェクタとシリンダヘッドとの間のシール構造に特徴がある。以下の説明では、先ず、インジェクタの概略構成およびインジェクタの取付構造について説明した後に上記シール構造について説明する。
−インジェクタの概略構成−
図1は、シリンダヘッド(内燃機関構成部材)1にインジェクタ2が取り付けられた状態を示す断面図である。この図に示すように、インジェクタ2は、シリンダヘッド1に形成されたインジェクタ取付孔(燃料噴射弁取付孔)11に挿入されて取り付けられている。この図1に示すように、インジェクタ2は、ホルダ22と弁本体23とを備えた構成となっている。尚、本実施形態におけるシリンダヘッド1はアルミニウム合金製である。
図1は、シリンダヘッド(内燃機関構成部材)1にインジェクタ2が取り付けられた状態を示す断面図である。この図に示すように、インジェクタ2は、シリンダヘッド1に形成されたインジェクタ取付孔(燃料噴射弁取付孔)11に挿入されて取り付けられている。この図1に示すように、インジェクタ2は、ホルダ22と弁本体23とを備えた構成となっている。尚、本実施形態におけるシリンダヘッド1はアルミニウム合金製である。
上記ホルダ22は、略円筒形状に形成されており、その内部に弁本体23が挿入されて保持されている。また、このホルダ22は、その一部(先端部分)がシリンダヘッド1に形成された上記インジェクタ取付孔11に挿入されている。このインジェクタ取付孔11は、燃焼室12に連通している。このインジェクタ取付孔11の形状としては、後述するインジェクタ2の装着部24aが挿入される大径部11aと、この大径部11aよりも小径であって且つ燃焼室12側に形成され、インジェクタ2の先端側部分(後述するシールリング3,4が装着される部分)の外径寸法よりも僅かに大径に形成された小径部11bとを備えている。なお、図中の符号22aは、図示しない電源供給装置と弁本体23の磁気回路23dとを電気的に接続するコネクタ部である。
上記ホルダ22の先端部分およびその近傍には2本のシールリング3,4が装着されている。これらシールリング3,4は、ホルダ22の外周面とインジェクタ取付孔11の小径部11bの内周面との間に介在されることで、燃焼室12内のガスが上記ホルダ22とインジェクタ取付孔11との間の空間からシリンダヘッド1の外部に漏洩することを防止している。これらシールリング3,4の具体構成については後述する。
上記弁本体23は、噴孔23bが形成されたバルブボディ23aと、ニードル23cと、磁気回路23dと、弾性部材であるスプリング23eとを備えている。なお、図中の符号23fは、燃料供給系に備えられた図示しないデリバリパイプに接続するためのジョイントである。
バルブボディ23aは、弁本体23の最も燃焼室12側に配置されており、燃焼室12側の先端部に噴孔23bが形成されている。また、このバルブボディ23aは、ホルダ22の内部に挿入されて固定されている。
ニードル23cは、円筒形状であり、バルブボディ23aおよび磁気回路23dにより、その軸方向に摺動自在に支持されている。このニードル23cの燃焼室12側の先端部は円錐形状である。このニードル23cは、その先端部がバルブボディ23aの裏面に当接することで噴孔23bから燃焼室12への燃料の噴射を停止し、先端部がバルブボディ23aの裏面から離脱することで噴孔23bから燃焼室12への燃料の噴射を行うようになっている。
磁気回路23dは、ステータコア23gと、ムービングコア23hと、ヨーク23iと、コイル23jと、スリーブ23kとを備えて構成されている。ステータコア23gおよびムービングコア23hはスリーブ23kの内部に配置されている。このステータコア23gは、ジョイント23fとムービングコア23hの間に配置されており、その内部に上記スプリング23eが配置されている。
ムービングコア23hは、スリーブ23k内を軸方向に摺動自在に支持されている。このムービングコア23hの燃焼室12側の端部には、上記ニードル23cが連結されている。また、このムービングコア23hの燃焼室12側とは反対側の端部には、スプリング23eの一方の端部が当接している。ここで、このスプリング23eでは、軸方向のうち燃焼室12側に向かう付勢力が発生している。従って、磁気回路23dが作動していない場合は、ニードル23cの先端部は、常にバルブボディ23aの裏面に当接し、噴孔23bから燃焼室12への燃料の噴射を停止している状態となる。
コイル23jは、スリーブ23kの外周を覆うように配置されており、コネクタ部22aを介して、図示しない電源供給装置から電力が供給される。また、ヨーク23iは、このコイル23jの外周を覆うように配置されている。
この磁気回路23dは、コネクタ部22aを介して図示しない電源供給装置からコイル23jが通電されると、磁気回路23dに磁場が形成され、ムービングコア23hが軸方向のうち燃焼室12側とは反対側の方向への力が作用し、この磁気回路23dが作動する。この磁気回路23dの作動により、ムービングコア23hに作用する力がスプリング23eの付勢力に対抗すると、ムービングコア23hに連結されたニードル23cは、軸方向のうち燃焼室12側と反対側の方向に移動する。これにより、ニードル23cの先端部は、当接していたバルブボディ23aの裏面から離脱し、噴孔23bから燃料室12への燃料の噴射が行われる。なお、インジェクタ2から燃焼室12に供給する燃料の燃料供給量、すなわちインジェクタ2からの燃料噴射量は、エンジンの運転状態に応じて図示しないエンジンECUによりが決定される。そして、このエンジンECUは、この決定された燃料噴射量に基づいて、磁気回路23dのコイル23jへの通電時間などを制御する。
−インジェクタ2の取付構造−
次に、インジェクタ2の取付構造について説明する。
次に、インジェクタ2の取付構造について説明する。
上述した如く、インジェクタ2は、シリンダヘッド1に形成されたインジェクタ取付孔11に挿入されて取り付けられている。また、これらインジェクタ2とインジェクタ取付孔11との間には、ステンレス製で偏平円筒形状のシール材5(インシュレータとも呼ばれる)が介在されている。
上記インジェクタ取付孔11における燃焼室12側とは反対側に位置する開放端部には、偏平円柱形状の凹陥部13が形成されている。そして、この凹陥部13にシール材5が嵌り込むように取り付けられている。尚、この凹陥部13の深さ寸法(インジェクタ取付孔11の軸心に沿う方向の寸法)はシール材5の高さ寸法(同じくインジェクタ取付孔11の軸心に沿う方向の寸法)よりも小さく設定されている。このため、上記凹陥部13にシール材5が嵌り込んだ状態では、シール材5の上端部分(外側端部分)がシリンダヘッド1の端面から僅かに突出した状態となっている。
そして、上記シール材5の中央部にはインジェクタ装着孔51が形成されている。
一方、上記インジェクタ2のホルダ22には、上記シール材5に当接することで、このシール材5を介してシリンダヘッド1に取り付けられるための取付部24が備えられている。
この取付部24は、上記インジェクタ取付孔11の大径部11aの内径寸法およびシール材5の中央部に形成された上記インジェクタ装着孔51の内径寸法に略合致する外径寸法を有する装着部24aと、この装着部24aに連続して外周側に延びるフランジ部24bとを備えている。上記フランジ部24bの外径寸法は、上記シール材5の外径寸法に略一致している。
そして、インジェクタ2に形成されている取付部24の装着部24aが上記インジェクタ装着孔51からインジェクタ取付孔11の大径部11aに亘って挿入されることで、インジェクタ2が装着される。つまり、上記取付部24の装着部24aをインジェクタ装着孔51およびインジェクタ取付孔11の大径部11aの内周面にインロー構造によって嵌め込んだ構成となっている。そして、その挿入位置は、上記フランジ部24bがシール材5の端面に当接する位置となっている。
−インジェクタ2のシール構造−
次に、インジェクタ2とシリンダヘッド1との間のシール構造について説明する。図2は、シリンダヘッド1にインジェクタ2が取り付けられた状態におけるインジェクタ2の先端部分を示す断面図である。この図2に示すように、ホルダ22の外周面とインジェクタ取付孔11の小径部11bの内周面との間にはシールリング3,4が介在されており、これらシールリング3,4によって、燃焼室12内のガスがホルダ22とインジェクタ取付孔11との間からシリンダヘッド1の外部に漏洩することを防止できるようになっている。
次に、インジェクタ2とシリンダヘッド1との間のシール構造について説明する。図2は、シリンダヘッド1にインジェクタ2が取り付けられた状態におけるインジェクタ2の先端部分を示す断面図である。この図2に示すように、ホルダ22の外周面とインジェクタ取付孔11の小径部11bの内周面との間にはシールリング3,4が介在されており、これらシールリング3,4によって、燃焼室12内のガスがホルダ22とインジェクタ取付孔11との間からシリンダヘッド1の外部に漏洩することを防止できるようになっている。
以下の説明では、インジェクタ2の先端側に配設されたシールリングを第1シールリング3と呼び、インジェクタ2の奥側(反先端側)に配設されたシールリングを第2シールリング4と呼ぶこととする。
上記インジェクタ2のホルダ22には、上記第1シールリング3を装着するための第1リング溝31、および、上記第2シールリング4を装着するための第2リング溝41がそれぞれ形成されている。
上記第1リング溝31は、ホルダ22の先端部(燃焼室12側の端部)の近傍における全周囲に亘って形成されている。一方、上記第2リング溝41は、第1リング溝31の形成位置に対してインジェクタ2の軸線に沿う方向に所定距離を存した奥側(反先端側)位置における全周囲に亘って形成されている。また、この第2リング溝41には、反先端側に向かって外径寸法が次第に拡大していくテーパ面42が連続して形成されている。
上記第1シールリング3は、上記第1リング溝31に装着されるものであって、ポリイミド樹脂により形成されている。このため、この第1シールリング3は、融点を有しないものとなっており、燃焼室12内の燃焼ガスによって溶損することがない。
また、この第1シールリング3の形状としては、図3に斜視図を示すように、軸線方向の長さ寸法(図3における寸法t1)が上記第1リング溝31におけるインジェクタ2の軸線方向に沿う長さ寸法に一致している。また、この第1シールリング3には、その外周囲の一部分に切り欠き32が形成されている。この切り欠き32は、第1シールリング3の軸線に沿う方向に対して所定角度(例えば45°)を存した斜め方向に延びるように形成されている。このため、この第1シールリング3は、径方向への弾性変形が可能となっている。また、この第1シールリング3に外力が作用していない状態での外径寸法は、上記インジェクタ取付孔11の小径部11bの内径寸法よりも僅かに大きく設定されている。従って、図2に示すように第1シールリング3がインジェクタ取付孔11の小径部11bの内面とインジェクタ2の外面との間に装着された状態では、インジェクタ取付孔11の小径部11bの内面に向かって外周側へ拡径する方向への付勢力が生じるよう弾性変形されている。つまり、この状態では、第1シールリング3の外周面がインジェクタ取付孔11の小径部11bの内面に押圧されてシール性が確保されるようになっている。
一方、第2シールリング4は、上記第2リング溝41に装着されるものであって、PTFE(Poly tetra fluoro ethylene)により形成されている。つまり、柔軟性を有する樹脂材料で形成されている。
この第2シールリング4の外径寸法としては、上記インジェクタ取付孔11の内径寸法よりも僅かに大きく設定されている。従って、図2に示すように第2シールリング4がインジェクタ取付孔11の内面とインジェクタ2の外面との間に装着された状態では、この第2シールリング4の外面がインジェクタ取付孔11の内面に密着して高いシール性が得られるようになっている。
以上説明したように、本実施形態では、燃焼室12内の燃焼ガスがインジェクタ取付孔11の内面とインジェクタ2の外面との間の空間に流れ込む状況において、この燃焼ガスの流れ込みは、第1シールリング3によって効果的に抑制されることになる。また、この第1シールリング3はポリイミド樹脂製であって高い耐熱性を有しているため、インジェクタ2の先端部に配設したとしても(所謂、前出ししても)燃焼ガスの熱によって溶損することはない。このため、燃焼室12内の熱を受けて温度上昇するインジェクタ2の先端部の領域を小さくすることができる。従って、インジェクタ2の噴孔23bおよびその周辺部でのデポジットの発生は抑制され、このデポジット抑制効果は、溶損することのない第1シールリング3によって継続的に維持される。また、一般的に、耐熱性を有する樹脂材料は硬度が高く、この種の材料でシールリングを形成した場合、インジェクタ2への装着が困難になると考えられるが、本実施形態における第1シールリング3にあっては、上記切り欠き32を形成して、径方向への弾性変形が可能となっているため、その装着作業は容易である。また、インジェクタ取付孔11の内面とインジェクタ2の外面との間に第1シールリング3が装着された状態では、外周側へ拡径する方向への付勢力が第1シールリング3に生じているので、この第1シールリング3の外周面をインジェクタ取付孔11の小径部11bの内周面に押し付けることが可能であり、シール性が良好に確保されている。
一方、第2シールリング4は、PTFE製であって柔軟性を有しており、インジェクタ取付孔11の小径部11bの内周面およびインジェクタ2の外周面にそれぞれ密着してシール性が大きく確保されている。また、上述した如く、第2リング溝41に連続してテーパ面42が形成されているため、インジェクタ2をインジェクタ取付孔11に挿入する際には、第2シールリング4がテーパ面42側に向けて押し込まれることになり、インジェクタ取付孔11の小径部11bの内周面との密着性が更に高められることになる。このため、燃焼室12内の燃焼ガスが上記第1シールリング3を通過したとしても第2シールリング4によって高いシール性が確保されているために、この燃焼ガスが外部に漏れ出すことはない。
このように、本実施形態の構成によれば、上記各シールリング3,4の装着作業性を良好に確保しながらも、上記デポジットの発生を抑制することができ、振動の増大、排気エミッションの悪化、WOT性能の悪化等の不具合を解消することができる。
(変形例)
次に、変形例について説明する。上述した実施形態では、第1シールリング3の配設位置と第2シールリング4の配設位置との間に、インジェクタ2の軸心に沿う方向に所定間隔を存するものであった。本変形例では、それに代えて、第1シールリング3および第2シールリング4がそれぞれ軸心方向で隣接した状態でインジェクタ2に嵌め込まれる構成としたものである。以下に具体的に説明する。
次に、変形例について説明する。上述した実施形態では、第1シールリング3の配設位置と第2シールリング4の配設位置との間に、インジェクタ2の軸心に沿う方向に所定間隔を存するものであった。本変形例では、それに代えて、第1シールリング3および第2シールリング4がそれぞれ軸心方向で隣接した状態でインジェクタ2に嵌め込まれる構成としたものである。以下に具体的に説明する。
図4は、本変形例において、シリンダヘッド1にインジェクタ2が取り付けられた状態におけるインジェクタ2の先端部分を示す断面図である。また、図5は、第1シールリング3および第2シールリング4を重ね合わせた状態を示す斜視図である。
これらの図に示すように、インジェクタ2の外面には、第1シールリング3の軸線方向の長さ寸法(図5における寸法t1)と第2シールリング4の軸線方向の長さ寸法(図5における寸法t2)との和に略一致した長さ寸法を有するリング溝33が形成されており、このリング溝33に、第1シールリング3および第2シールリング4がそれぞれ軸心方向で隣接した状態で嵌め込まれている。このリング溝33の形成位置としては、各シールリング3,4が装着された状態で、第1シールリング3の装着位置がインジェクタ2の先端部分(上述した実施形態における第1シールリング3の装着位置と同等の位置)となるように設定されている。
各シールリング3,4の嵌め込み作業としては、図5に示すように第1シールリング3と第2シールリング4とを重ね合わせておき、これらを一体的にインジェクタ2の先端側からリング溝33に向けて押し込むようにする。この際、PTFE製の第2シールリング4は柔軟性を有しているため拡径方向に弾性変形しながらリング溝33の奥側(反先端側)に嵌り込む。一方、ポリイミド製の第1シールリング3は、切り欠き32の開口幅が大きくなるように弾性変形しながらリング溝33の先端側に嵌り込む。
その他の構成は上記実施形態のものと同一である。図4および図5では、上記実施形態のものと同一の部材については同一の符号を付し、ここでの説明を省略する。
この変形例においても、上述した実施形態の場合と同様の効果を奏することができ、上記各シールリング3,4の装着作業性を良好に確保しながらも、上記デポジットの発生による不具合(振動の増大、排気エミッションの悪化、WOT性能の悪化等)を解消することができる。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態および変形例は、自動車に搭載された筒内直噴式の4気筒ガソリンエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、その他の形式のガソリンエンジンやディーゼルエンジン(例えばコモンレールを備えたもの)にも適用可能である。また、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(V型、水平対向型等)についても特に限定されるものではない。
以上説明した実施形態および変形例は、自動車に搭載された筒内直噴式の4気筒ガソリンエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、その他の形式のガソリンエンジンやディーゼルエンジン(例えばコモンレールを備えたもの)にも適用可能である。また、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(V型、水平対向型等)についても特に限定されるものではない。
また、上記実施形態および変形例では、インジェクタ2として、ソレノイド式インジェクタを採用していた。本発明はこれに限らず、ピエゾ式インジェクタに対しても適用が可能である。
また、第1シールリング3の構成材料としては、ポリイミド樹脂に限らず、燃焼室12内の燃焼ガス温度よりも融点が高い、または、融点を有しない樹脂材料(例えばフェノール樹脂)であれば適用が可能である。また、第2シールリング4の構成材料としても、PTFEに限らず、その他の柔軟性を有する材料(例えばゴム材料)であってもよい。
更に、上記実施形態および変形例では、2個のシールリング3,4によってシール構造を構成していたが、本発明はこれに限らず、3個以上のシールリングによってシール構造を構成するようにしてもよい。この場合にも、インジェクタ2の最先端側に装着されるシールリングとしては上記第1シールリング3とし、最後端に装着されるシールリングとしては上記第2シールリング4とすることが好ましい。例えば、4個のシールリングによってシール構造を構成する場合に、インジェクタ2の先端側に位置する2個のシールリングを上記第1シールリング3と同等のものとし、後端側に位置する2個のシールリングを上記第2シールリング4と同等のものとすることなどが挙げられる。
1 シリンダヘッド(内燃機関構成部材)
11 インジェクタ取付孔(燃料噴射弁取付孔)
2 インジェクタ(燃料噴射弁)
3 第1シールリング
31 第1リング溝
32 切り欠き
33 リング溝
4 第2シールリング
41 第2リング溝
11 インジェクタ取付孔(燃料噴射弁取付孔)
2 インジェクタ(燃料噴射弁)
3 第1シールリング
31 第1リング溝
32 切り欠き
33 リング溝
4 第2シールリング
41 第2リング溝
Claims (5)
- 内燃機関本体を構成する内燃機関構成部材に形成された燃料噴射弁取付孔の内面と、この燃料噴射弁取付孔に挿入して取り付けられる燃料噴射弁の外面との間の空間を、燃料噴射弁の軸線に沿う方向に亘って配設された複数のシールリングによって閉塞する燃料噴射弁のシール構造において、
上記燃料噴射弁の先端部には、内燃機関の燃焼ガス温度よりも融点が高い、または、融点を有しない樹脂材料で成る第1シールリングが配設されている一方、この第1シールリングの配設位置に対して燃料噴射弁の軸線に沿う方向における先端側とは反対側の位置には、弾性変形した状態で燃料噴射弁取付孔の内面に接触可能な柔軟性を有する材料で成る第2シールリングが配設されており、
上記第1シールリングは、径方向への弾性変形が可能となるように一部に切り欠きが形成されていて、燃料噴射弁取付孔の内面と燃料噴射弁の外面との間に装着された状態では、燃料噴射弁取付孔の内面に向かって外周側へ拡径する方向への付勢力が生じるよう弾性変形されていることを特徴とする燃料噴射弁のシール構造。 - 上記請求項1記載の燃料噴射弁のシール構造において、
上記第1シールリングはポリイミド樹脂により形成されていることを特徴とする燃料噴射弁のシール構造。 - 上記請求項1または2記載の燃料噴射弁のシール構造において、
上記第2シールリングはPTFEにより形成されていることを特徴とする燃料噴射弁のシール構造。 - 上記請求項1、2または3記載の燃料噴射弁のシール構造において、
上記燃料噴射弁の外面には、第1シールリングの軸線方向の長さ寸法に略一致した長さ寸法を有する第1リング溝、および、第1リング溝の形成位置に対して燃料噴射弁の軸線に沿う方向に所定距離を存した位置であって第2シールリングの軸線方向の長さ寸法に略一致した長さ寸法を有する第2リング溝がそれぞれ形成されており、上記第1リング溝に第1シールリングが、上記第2リング溝に第2シールリングがそれぞれ嵌め込まれていることを特徴とする燃料噴射弁のシール構造。 - 上記請求項1、2または3記載の燃料噴射弁のシール構造において、
上記燃料噴射弁の外面には、第1シールリングの軸線方向の長さ寸法と第2シールリングの軸線方向の長さ寸法との和に略一致した長さ寸法を有するリング溝が形成されており、このリング溝に、第1シールリングおよび第2シールリングがそれぞれ軸心方向で隣接した状態で嵌め込まれていることを特徴とする燃料噴射弁のシール構造。
Priority Applications (1)
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JP2008039332A JP2009197660A (ja) | 2008-02-20 | 2008-02-20 | 燃料噴射弁のシール構造 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015094235A (ja) * | 2013-11-08 | 2015-05-18 | 三菱重工業株式会社 | 内燃機関の燃料噴射弁温度抑制機構およびこれを備えた内燃機関 |
CN104863747A (zh) * | 2015-03-27 | 2015-08-26 | 中国北方发动机研究所(天津) | 一种内燃机喷油器密封垫 |
JP2018036079A (ja) * | 2016-08-30 | 2018-03-08 | 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 | 原子炉再循環ポンプ用プラグ |
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2008
- 2008-02-20 JP JP2008039332A patent/JP2009197660A/ja active Pending
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