JP2009197262A - 耐全面腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

耐全面腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】 化学プラント用フランジや配管、継手、バルブ、医療機器部品等に用いられる耐全面腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.20〜1.00%、Mn:2.00〜5.00%未満、P:0.050%以下、S:0.030%以下、Ni:0.05〜0.50%未満、Cr:16.0〜19.0%、Mo:0.05〜0.50%未満、Cu:2.5〜4.0%、O:0.01%以下、N:0.15〜0.30%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式および腐食指数を満足する耐全面腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼。Ni+27C+23N+0.2Mn+0.5Cu−Cr−1.2Mo−0.5Si+10≧2 … (1)、2380−75Cr−110(Ni+Cu)−60Mn−50Si−3000(C+N)≦−150 … (2)
【選択図】 図1

Description

本発明は、耐全面腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼に関し、特に化学プラント用フランジや配管、継手、バルブ、医療機器部品等に用いられる耐全面腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼に関するものである。
従来、化学プラント用のフランジや配管、継手等にはSUS304が使用されている。しかし、近年のNi高騰により省Ni型の高Mnオーステナイト鋼が提案されている。例えば特開平2−104633号公報(引用文献1)に開示されているように、Mn:7〜40%を含有する高強度非磁性高マンガン鋼や特開2006−22369号公報(引用文献2)に開示されているような、Mn:3〜15%、Ni:1〜6%を含有する張出し性と耐発錆性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼等が提案されている。
一方、特開平11−92885号公報(引用文献3)に開示されている、Mn:5〜9%、Ni:0.1〜2%なるニッケル含有率が極めて低いオーステナイト系ステンレス鋼のようなSUS304を代替する鋼がそれぞれ提案されているが、一方でMnが高く、化学プラント向けで要求される用途には適しないという問題がある。また、特開2004−143576号公報(引用文献4)に開示されているような、Mn:7.5〜10.5%、Ni:1.0〜5.0%なる低ニッケルオーステナイト系ステンレス鋼は耐錆性、高強度要求に対応したもので、耐全面腐食性に対するものではない。
特開平2−104633号公報 特開2006−22369号公報 特開平11−92885号公報 特開2004−143576号公報
上述のような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、高価なNiを含まず、安価でかつ耐全面腐食性(特に硫酸環境下)に優れるオーステナイト系ステンレス鋼を提供するものである。
上述の観点から、まず、高価なNiを含まず、Ni+27C+23N+0.2Mn+0.5Cu−Cr−1.2Mo−0.5Si+10≧2なる条件によりδフェライトの発生を抑制し、かつ、2380−75Cr−110(Ni+Cu)−60Mn−50Si−3000(C+N)≦−150なる条件を満たすことにより組織をオーステナイト化し、さらに、耐食指数を規制することにより耐全面腐食性を向上させることにある。
その発明の要旨とするところは、 (1)質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.20〜1.00%、Mn:2.00〜5.00%未満、P:0.050%以下、S:0.030%以下、Ni:0.05〜0.50%未満、Cr:16.0〜19.0%、Mo:0.05〜0.50%未満、Cu:2.5〜4.0%、O:0.01%以下、N:0.15〜0.30%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式および腐食指数を満足することを特徴とする耐全面腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼。
Ni+27C+23N+0.2Mn+0.5Cu−Cr−1.2Mo−0.5Si+10≧2 … (1)
2380−75Cr−110(Ni+Cu)−60Mn−50Si−3000(C+N)≦−150 … (2)
腐食指数:−Cr+3.6Ni+4.7Mo+11.5Cu+1.4N−2.1Mn≧15
(2)前記(1)に記載のS:0.010%以下、N:0.15〜0.25%であることを特徴とする耐全面腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼にある。
以上述べたように、本発明による式1よりδフェライトの発生を抑制し、式2よりオーステナイト組織とし、かつ腐食指数を15以上とすることで耐全面腐食性を向上させ、特に耐硫酸環境で優れた安価なオーステナイト系ステンレス鋼を提供することにある。
以下、本発明についての成分組成の限定理由について説明する。
C:0.05〜0.15%
Cは、オーステナイト相を安定化させる元素である。しかし、0.05%未満ではその効果が十分でなく、また、その含有量が高すぎると耐食性を劣化させることから、その上限を0.15%とした。
Si:0.20〜1.00%
Siは、脱酸元素として有効な元素であり、0.20%以上含有させることが望ましい。しかし、δフェライトの発生を抑制するためには、1.00%以下とする必要があることから、その範囲を0.20〜1.00%とした。
Mn:2.00〜5.00%未満
Mnは、オーステナイト相を安定化させる元素である。しかし、2.00%未満ではその効果が十分でなく、また、5.00%以上となると耐食性を劣化させることから、その範囲を2.00〜5.00%未満とした。
P:0.050%以下
Pは、熱間加工性には有害な元素であり、特に0.050%を超えると悪影響が顕著となるので、その上限を0.050%以下とした。
S:0.030%以下
Sは、耐食性に有害な元素であり、特に0.030%を超えると悪影響が顕著となるので、その上限を0.030%以下とした。好ましくは0.010%以下とする。
Ni:0.05〜0.50%未満
Niは、高価な金属であるため、原料のコストを抑えるため、なるべくその使用量を抑制する必要があるが、マルテンサイト変態を抑制し、オーステナイト相を安定化させるための重要な元素である。そのため、本発明では、Niの含有量を0.50%未満にすることによって、原料のコストを大幅に低減すると共に、ステンレス鋼としての耐食性を保持することができる。但し、0.05%未満とするには、最近のスクラップのNi含有量では対応が困難なため、その下限を0.05%とした。
Cr:16.0〜19.0%
Crは、強力なフェライト生成元素であると同時に保護性の酸化皮膜を生成し耐食性を付与する基本元素である。しかし、16.0%未満では耐錆性が不十分である。また、過剰となるとδフェライト相が生成し、熱間加工性が悪化することから、δフェライト相を抑制するために、その上限を19.0%とした。
Mo:0.05〜0.50%未満
Moは、Crの酸化保護皮膜を強固にし耐食性を著しく改善する効果がある。しかし、0.50%を超えるとδフェライト相が生成し、熱間加工性が悪化することから、δフェライト相を抑制するために、0.50%未満とした。但し、Niと同様に0.05%未満とするには、近年のスクラップのMo含有量では対応が困難なため、その下限を0.05%とした。
Cu:2.5〜4.0%
Cuは、オーステナイト相を安定化と耐食性を改善する元素である。しかし、2.5%未満ではその効果が十分でなく、4.0%を超えると熱間加工性が悪化することから、その上限を4.0%とした。
O:0.01%以下
Oは、その含有量を低くするほどよいが、0.01%を超えると熱間加工性が劣化することから、その上限を0.01%とした。
N:0.15〜0.30%
Nは、オーステナイト相の安定化と耐食性を改善する元素である。しかし、0.15%未満ではその効果が十分でなく、0.30%を超えると熱間加工性が悪化することから、その上限を0.30%とした。好ましくは、0.15〜0.25%とする。
Ni+27C+23N+0.2Mn+0.5Cu−Cr−1.2Mo−0.5Si+10≧2 … (1)
上記(1)式の値が、2未満ではδフェライト相が生成し、熱間加工性が悪化することから、δフェライト相を抑制するために、その下限を2とした。
2380−75Cr−110(Ni+Cu)−60Mn−50Si−3000(C+N)≦−150 … (2)
上記(2)式の値は、組織をオーステナイト化させるためで、そのためには、−150以下とする必要がある。
腐食指数:−Cr+3.6Ni+4.7Mo+11.5Cu+1.4N−2.1Mn≧15
腐食指数は、耐全面腐食性を向上させる指数であり、その指数が15未満では効果が十分でないことから、その効果を得るためには下限を15とした。好ましくは15〜20とする。この関係を図1に示す。図1は、本発明に係る腐食指数と腐食度との関係を示す図である。この図に示すように、横軸に腐食指数を縦軸に腐食度をとると腐食指数が15未満では腐食度が高く、逆に15以上であると腐食度が一段と低下することが分かる。これからも腐食指数を15とするものである。
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
表1に示す成分組成の鋼を真空誘導溶解炉にて溶製して100kgの鋼塊とし、1250℃に加熱し、径20mmに鍛伸後、固溶化熱処理(1050℃で20分、水冷)を施し、各種試料を作製した。その各種試料のδフェライト量、耐食性および被削性試験を実施した。その結果を表2に示す。その試験方法を以下に示す。
[δフェライト量]
δフェライト量は、鍛伸後、固溶化熱処理(1050℃で20分、水冷)を行った後、切断面の中周部(D/4部)をフェライトスコープにて測定し、5点平均値を用いた。
[耐食性]
耐食性試験としては、径12mmで長さ21mmの棒状試験片を作製し、表面を#600にて湿式研磨後、試験片を供した。その試験条件は、25℃の5%硫酸液に24時間浸漬し、いったん水洗した後再び24時間浸漬し、この時の腐食により減った重量を試験片の初期の表面積と浸漬時間(48時間)で割った値で評価した。
[被削性]
被削性試験は、径20mmで長さ40mmの試験片を長手方向に平行に、ドリル穿孔条件:推力414N、周速18.7m/min、切削油なしの条件でドリル穿孔し、深さ10mm穿孔するに要する時間で評価した。すなわち、穿孔に要する時間が短いほど被削性が優れていることを示す。
Figure 2009197262
表1に示すように、No.1〜5は本発明例であり、No.6〜13は比較例である。
比較例No.6は腐食指数が低いために、耐食性がやや劣る。このNo.6のSUS304をベースとしてそれぞれのドリル穿孔指数より被削性を評価した。比較例No.7はMn成分の含有量が多く、腐食指数が低いために、耐食性がやや劣る。また、比較例No.8はMn成分の含有量が多く、かつ腐食指数が低いために、耐食性が悪い。比較例No.9はN成分の含有量が少なく、式1の値が低く、かつ式2の値が高いために、δフェライト量が多く、耐食性および被削性が悪い。
比較例No.10はS成分の含有量が高いために、耐食性が劣る。比較例No.11はC成分の含有量が高いために、耐食性が劣る。比較例No.12はCr成分の含有量が高く、式1の値が低いために、δフェライト量が多く、耐食性が劣る。比較例No.13はCu成分の含有量が低く、かつ腐食指数が低いために、耐食性が劣る。これに対し、本発明例であるNo.1〜5は、いずれも本発明の条件を満たしていることから、δフェライトの発生を抑制し、耐食性および被削性に優れていることが分かる。
以上のように、高価なNiを含有することなく、式1にて鋼成分を規制することによりδフェライトの発生を抑制し、かつ式2を規制することにより組織をオーステナイト化し、しかも耐食指数を規制することで耐全面腐食性を向上させる極めて優れたオーステナイト系ステンレス鋼を提供することができる。
本発明に係る腐食指数と腐食度との関係を示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.05〜0.15%、
    Si:0.20〜1.00%、
    Mn:2.00〜5.00%未満、
    P:0.050%以下、
    S:0.030%以下、
    Ni:0.05〜0.50%未満、
    Cr:16.0〜19.0%、
    Mo:0.05〜0.50%未満、
    Cu:2.5〜4.0%、
    O:0.01%以下、
    N:0.15〜0.30%、
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式および腐食指数を満足することを特徴とする耐全面腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼。
    Ni+27C+23N+0.2Mn+0.5Cu−Cr−1.2Mo−0.5Si+10≧2 … (1)
    2380−75Cr−110(Ni+Cu)−60Mn−50Si−3000(C+N)≦−150 … (2)
    腐食指数:−Cr+3.6Ni+4.7Mo+11.5Cu+1.4N−2.1Mn≧15
  2. 請求項1に記載のS:0.010%以下、N:0.15〜0.25%であることを特徴とする耐全面腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011247642A (ja) * 2010-05-24 2011-12-08 Kobe Steel Ltd 鋼材の腐食状態推定方法

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