JP2009197147A - 微細層構造を有するptfe多孔体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高気孔でありながら機械的強度の優れたPTFE多孔体を提供すること。
【解決手段】PTFE粉末と造孔剤とを混合してPTFE混合体とする工程と、該PTFE混合体をシート状に成形する工程と、該シート状に成形したPTFE混合体を積層し、積層した層と略垂直方向に加圧する工程と、上記PTFE混合体中の造孔剤を除去することによって気孔を設ける工程と、からなるPTFE多孔体の製造方法。上記積層したPTFE混合体を、積層した層と略垂直方向に加圧した後、更にこの加圧したPTFE混合体を積層するように、積層と加圧の工程を複数サイクル繰り返すPTFE多孔体の製造方法。2層以上の微細層構造を有し、該微細層同士が層と垂直方向に連通しているとともに、気孔が上記微細層と同平面方向に展開しているPTFE多孔体。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す。)多孔体、及びその製造方法に係るものであり、微細層構造を有し、特に、高気孔でありながら高い機械的強度を持つことを特徴とするPTFE多孔体及びその製造方法に関する。
PTFE多孔体は、耐熱性、耐薬品性に優れ、且つ比誘電率、エネルギー損失角などの電気特性に優れるため、電線被覆材、同軸ケーブルの誘電体、フィルタ、ガスケット、断熱材、分離膜、人工血管、カテーテル、培養器など多くの用途に使用されている。その製造方法としては、PTFE粉末と、造孔剤とを混合し、押出成型や圧縮成型した後、造孔剤を除去しPTFE多孔体を製造する工法が知られている。
例えば、特許文献1には、空隙ホルダー(造孔剤)を含むPTFEを押出成型した後、空隙ホルダーを除去する工法が開示されている。好ましい空隙ホルダーとして、炭酸水素アンモニウムが挙げられている。また、特許文献2には、分解性の造孔剤粉末とPTFEの混合物を押出成型または圧縮成型した後、熱処理して造孔剤を分解除去することによって気孔率80%を超える多孔体が得られることが開示されている。造孔剤としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等が挙げられている。また、当該出願人より本願発明と関連のある技術として、特許文献3が出願されている。
特表2004−500261号公報 特開平11−124458号公報 国際特許出願PCT/JP2007/68106
特許文献1で開示しているような押出成型の場合には、押出時の圧力により、PTFEが繊維化するため素材の強度は得られるが、押出方向と交差する方向に凹凸のある成型体を得るのが難しいなど、成型体の形状に制限が加わることとなる。また、実際には、適切な造孔剤と押出条件を選択しないと、造孔剤による管壁抵抗の増加を起因として押出時に亀裂が生じてしまい、目的とする成型体が得られない。この点について改良したものが上記特許文献3である。また、特許文献2で開示している圧縮成型では、薄膜、厚膜、凹凸のある形状など様々な形状の成型が可能であるが、PTFEの繊維化が不十分で成型品が脆いという問題点があった。
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高気孔でありながら機械的強度の優れたPTFE多孔体を提供することにある。
上記目的を達成するべく、本発明の請求項1によるPTFE多孔体の製造方法は、PTFE粉末と造孔剤とを混合してPTFE混合体とする工程と、該PTFE混合体をシート状に成形する工程と、該シート状に成形したPTFE混合体を積層し、積層した層と略垂直方向に加圧する工程と、上記PTFE混合体中の造孔剤を除去することによって気孔を設ける工程と、からなるものである。
また、請求項2によるPTFE多孔体の製造方法は、上記積層したPTFE混合体を、積層した層と略垂直方向に加圧した後、更にこの加圧したPTFE混合体を積層するように、積層と加圧の工程を複数サイクル繰り返すことを特徴とするものである。
また、請求項3によるPTFE多孔体の製造方法は、上記PTFE粉末がファインパウダーであることを特徴とするものである。
また、請求項4によるPTFE多孔体の製造方法は、加熱により上記造孔剤を除去することを特徴とするものである。
また、請求項5によるPTFE多孔体の製造方法は、溶媒抽出により上記造孔剤を除去することを除去することを特徴するものである。
また、請求項6によるPTFE多孔体の製造方法は、上記溶媒がアセトン、メチルエチルケトン、エタノール、ジエチルエーテル、水のうち少なくとも1種からなることを特徴とするものである。
また、請求項7によるPTFE多孔体の製造方法は、上記造孔剤がフマル酸、アジピン酸、コハク酸、リンゴ酸、マロン酸のうち少なくとも1種からなることを特徴とするものである。
また、請求項8によるPTFE多孔体は、2層以上の微細層構造を有し、該微細層同士が層と垂直方向に連通しているとともに、気孔が上記微細層と同平面方向に展開していることを特徴とするものである。
また、請求項9によるPTFE多孔体は、非延伸であることを特徴とするものである。
本発明によれば、PTFE粉末に造孔剤を加え、積層と圧縮を加えることにより、PTFEの繊維化が促進し、かつ、層同士が連通した微細層状構造を形成するため、高気孔でありながら機械的強度の優れたPTFE多孔体を提供することができる。
本発明において使用するPTFE粉末としては、例えば、乳化重合によって得られたファインパウダーや懸濁重合によって得られたモールディングパウダーが挙げられる。これらの内でも繊維化しやすいファインパウダーの方が、繊維化により得られる成型体の強度が向上するため好ましい。PTFE混合体中のPTFE粉末の含有割合が40%を下回る場合、PTFE同士の結合が弱く、成型中及び焼成後に素材が裂けやすくなる傾向がある。この場合は、粒径が100μm以下のPTFE粉末を用いることにより、PTFEの結合点を増やし、より裂け難くすることができる。
本発明において、PTFE粉末と混合される造孔剤は、容易にPTFE混合体から除去できるものであれば特に限定はない。造孔剤を除去する方法としては、設備の簡便さから加熱により造孔剤を気化や熱分解させることが好ましいが、減圧により造孔剤を気化させてもよい。また、溶媒や蒸気等により造孔剤を抽出させてもよい。
造孔剤の種類としては、例えば、フマル酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸、安息香酸、ショウノウ、メントール、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アニリン、ナフタレンなどが挙げられる。これらの中でも、フマル酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸が好ましい。これらのようなジカルボン酸の粉末であれば、その原因については明確になっていないが、肌理が細かく、且つ、寸法精度が良好なPTFE多孔体を得ることができる。更に、管壁抵抗が大きくなることもないため、押出成形により成形することも可能である。また、PTFE多孔体の製造時に臭気が発生することがない。これらのジカルボン酸の中でも、フマル酸は、特に焼成時の収縮を抑える効果が大きいため好ましい。また、ジカルボン酸の中でも、空気中での加熱により気化する性質を有するもの(例えば、フマル酸、アジピン酸、コハク酸)であれば、加熱によって造孔剤を気化させて除去することが容易であるため、好ましい。造孔剤を気化させて除去する方法は、例えば、熱分解させて除去する方法に比べて、PTFE中に残渣を残しにくく、残渣による電気諸特性への悪影響を防止することができる。このような空気中での加熱により気化する性質を有するジカルボン酸粉末として、例えば、沸点(または昇華点)が300℃以下のもの(例えば、フマル酸、コハク酸)であれば、特別な装置を必要とせず、通常用いられる加熱炉などにより容易に造孔剤を除去することができるため、好ましい。また、ジカルボン酸粉末の沸点が300℃以下のものであれば、PTFEの焼成温度(例えば、370〜400℃)より低い温度で除去されるため、ジカルボン酸成分が焼成中に引火することを防ぐことができる。
また、造孔剤の平均粒径は100μm以下であることが好ましい。このような粒径であれば、気孔がより小さいものとなり、より肌理の細かいPTFE多孔体を得ることができる。また、粒径のより小さな造孔剤を用いることにより、成型時のクラック、裂けを防止し成型性をより良くする効果も生じる。
上記PTFE粉末や造孔剤粉末は、粒径の大きな状態の粉体を粉砕して細粒化することにより製造できる。粉砕は、回転刃方式の混合機や粉砕機を用いて気相中で容易に行うことができる。粉砕方法は、気相中での粉砕に限定されるものではなく、溶液中での粉砕が可能な場合もある。例えば、フマル酸は水への溶解度が小さいので水中での回転刃による粉砕も可能である。しかし、溶液中での粉砕の場合、水との分離工程が生じるので、気相中での粉砕が好ましい。また、粉砕装置や粉砕に用いる設備のサイズ(処理量能力)は、特に限定されず、回転刃方式の他に、ボールミル、ジェットミル(気流粉砕)などを用いることができる。特にPTFE粉末は、細粒化の際に繊維化してしまうと、その後の、積層と圧縮の工程における繊維化の余地がなくなり、最終的な成形品の強度が充分なものにならなくなる恐れがある。そのため、PTFE粉末の細粒化は、繊維化が起こりにくいジェットミルにより行うことが好ましい。なお、平均粒径とは、動的光散乱式粒径分布測定装置により測定したものである。
本発明において、造孔剤には、更に、有機溶剤を含むことが好ましい。この有機溶剤としては、例えば、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイル、灯油、軽油等の炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類などの溶剤が挙げられ、これらの中でも、PTFEとの浸透性からナフサ、灯油、軽油等の石油系溶剤を使うことが好ましい。有機溶剤を適量含むことにより、PTFE混合体の成型や加圧の際に割れが生じてしまうことを防止することができる。
特に、PTFE粉末に良好に保持させるために、動粘度2mm/s(40℃)以上の石油系溶剤を使うことが好ましい。このような有機溶剤であれば、粉体の粒子間に一旦保持されれば、低粘度の有機溶剤をそのまま造孔剤として使用したときよりも、所定形状に成形する際の圧力が加わった際に有機溶剤のみが滲み出て、PTFE粉末と有機溶剤とが分離するようなことは起こり難く、管壁抵抗を下げる潤滑効果を保持することになる。そのため、PTFE粉末と造孔剤との配合量の適応範囲が広く、また潤滑効果が高く成形性(成形体の外観)が良好となる。更に、PTFE粉末やジカルボン酸粉末による継粉の形成を効果的に防止することができ、気孔の大きさをより微細なものとすることができる。但し、PTFEを焼成させる場合、通常370〜400℃程度の温度で焼成させるが、焼成前に完全に溶剤が蒸発していることが好ましいため、有機溶剤の沸点は300℃以下であることが好ましい。
PTFE混合体は、上記のような造孔剤とPTFE粉末とを、例えば、タンブラーなどで攪拌、混合して得ることができる。この際、造孔剤の混合量を変えることにより、気孔率を容易に制御することができる。なお、造孔剤として複数の成分を混合して使用する場合、予め造孔剤を構成する各成分を混合しておけば、造孔剤が均質となるため、より肌理の細かいPTFE多孔体を作製することができ好ましいが、造孔剤を構成する各成分をPTFE粉末に別に加えた後、攪拌などによりこれらを一括して混合しても良い。
特に、55%を超える高気孔率の多孔体をペースト押出により作製する場合には、素材の機械的強度(裂けやすさ)の面から、造孔剤、及びPTFE粉末として、特に平均粒径100μm以下の微粉末を用いることが好ましい。PTFE粉末の細粒化は必ずしもPTFE粉末単独で行う必要はなく、PTFE粉末及び造孔剤の混合と、PTFE粉末の細粒化とを、1つの工程で同時に行うことができる。この混合と細粒化とを兼ねた処理は、回転刃式の粉砕機、混合機などを用いて気相中で容易に行うことができる。
このようにして得られたPTFE混合体を、まずは、シート状に成型する。その厚さについては、設備等を勘案して適宜に設定すればよい。成型方法としては、シート状の形状にペースト押出成型してもよいし、塊状のものをプレス、ロール等で圧延してもよい。
このシート状に成型したPTFE混合体を複数層重ねて積層した状態とする。層数は2層以上であれば任意である。そして、この積層したPTFE多孔体について、層と略垂直方向に加圧する。この積層と加圧の工程を1サイクルとしたとき、積層した層数や得ようとする成型体の特性に応じ、該サイクルを複数サイクル繰り返してもよい。即ち、この加圧したポリテトラフルオロエチレン混合体を更に積層し、その後、加圧を加えるというように、積層と加圧を繰り返すことも効果的である。これは、加圧によりPTFEが繊維化しPTFE自体の強度が向上すること、加圧により層と垂直方向についてもPTFE同士の連通が強化されること、積層を繰り返すことで気孔が分化して連続性がなくなり気孔径が小さくなることが期待できるためである。層数は多いほど気孔の連続性がなくなるため機械的強度は強くなる傾向にある。また1層の圧縮幅(圧縮前後の厚さの比率)が大きいほど繊維化が促進するため機械的強度が強くなる傾向にある。但し、積層と圧縮のサイクルを増加させすぎると、造孔剤のみの層が形成されてしまい、層同士の剥離が生じてしまう恐れがある。圧縮工法としてはプレス機による圧縮の他、ロールによる圧縮等も考えられる。なお、プレス機やロールの温度は200℃程度まで上げることもできるし、常温でも構わない。また、最後の加圧の際に所定形状の型を用いれば、所望とする形状に成型することもできる。
このように積層したPTFE多孔体について、造孔剤を除去することにより、微細層構造を有するPTFE多孔体とすることができる。造孔剤を除去する方法は、上記したように、加熱により造孔剤を気化や熱分解させること、減圧により造孔剤を気化させること、溶媒や蒸気等により造孔剤を抽出することなどが挙げられる。気化の形態としては、昇華するもの、液化を経て蒸発するものがあるが、液化する場合、層間に液膜を形成することがあることから、加熱速度が速すぎると内部の気化した造孔剤が抜けずにPTFE混合体自体を膨らめることがある。そのため、気化させて除去する場合には、造孔剤としては、液化せず昇華するフマル酸などを使用することが好ましい。溶媒などで抽出する場合の溶媒としては、造孔剤を溶解するものであれば限定されないが、水はPTFEに浸入し難く造孔剤を抽出し難いので、PTFEに浸透しやすいエタノール等のアルコール、ジエチルエーテル等のエーテル、アセトンやメチルエチルケトン等のケトンなどといった有機系の溶媒が好ましい。但し、溶媒による抽出の場合には、抽出工程に時間を要するので加熱によるフマル酸の昇華が最も好ましい。
上記のようにして得られたPTFE多孔体は、2層以上の微細層構造を有し、該微細層同士が層と垂直方向に連通しているとともに、気孔が上記微細層と同平面方向に展開しているものとなる。これは、積層により微細層構造が形成されるとともに、加圧によりこの層同士が連通するためである。気孔も加圧により層と同平面方向に展開する。このような構造であれば、高気孔率となっても充分な機械的強度を得ることができる。層と同平面方向については元々の層構造により、層と垂直方向については加圧による層同士の連通により機械的強度を得ることができる。更に、加圧によりPTFEが繊維化することになるため、この点でも機械的強度は向上することになる。
なお、本発明のPTFE多孔体は、200℃程度の加熱処理などにより造孔剤を除去し、その後に焼成を行わず、未焼成PTFE多孔体として使用しても良い。また、造孔剤を除去した後、更に370℃以上の焼成を行い、完全焼成PTFE多孔体として使用しても良い。また、焼成温度を調節することで未焼成と完全焼成が混在した半焼成PTFE多孔体としても良い。焼成の状態については、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解曲線によって確認することができる。「未焼成状態」の場合は340℃付近に1箇所だけピークが観察され、「完全焼成状態」の場合は320℃付近に1箇所だけピークが観察され、「半焼成状態」の場合は340℃付近にピークが観察されると同時にその手前の320℃付近にも別のピークが観察される。これらの他に、国際特許公開WO04/086416に記載されたような、「微焼成状態」という状態があり、上記した「未焼成状態」と「半焼成状態」との中間の状態を示している。そして、これを区分けする目安になるのが、320℃付近におけるピークの有無である。つまり、この320℃付近におけるピークが明確に観察されるまで焼成が進行すると「半焼成状態」となってしまい、「微焼成状態」とは、そのようなピークが観察されるに至る手前の焼成状態を意味するものである。
ここで、「微焼成状態」に関して更に詳細に説明する。図5〜図8は、何れも、PTFE樹脂を主成分とした誘電体の示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解曲線を示す図であり、横軸に温度をとり縦軸に熱流量をとってその変化を示したものである。このうち、図6は「未焼成状態」を示す図であり、340℃付近に1箇所だけピークP1が観察される。次に、図8は「半焼成状態」を示す図であり、340℃付近にピークP1が観察されると同時にその手前の320℃付近にも別のピークP2が観察される。次に、図7は「完全焼成状態」を示す図であり、この場合には、320℃付近に1箇所だけピークP2が観察される。これに対して、図5は、「微焼成状態」を示す図であり、図6に示す「未焼成状態」と図8に示す「半焼成状態」の中間の状態を示している。そして、これを区分けする目安になるのが、図8に示す320℃付近における別のピークP2の有無である。つまり、この別のピークP2が観察されるまで焼成が進行すると「半焼成状態」となってしまい、本願発明で規定する「微焼成状態」とは、そのような別のピークP2が観察されるに至る手前の焼成状態を意味するものである。上記別のピークP2の有無によって「半焼成状態」か「微焼成状態」かの判別をすることについては、本件特許出願人が繰り返しの実験により発見したものである。
焼成により、PTFEは半溶融状態となるため、程度の大小はあるがPTFE多孔体中の気孔は減少し気孔率が低下することになる。この気孔率が低下する度合いは焼成の進行に従い大きくなる。そのため、焼成前の気孔率は、焼成後の気孔率よりも更に大きくしておく必要があるが、これには造孔剤を過剰気味に添加する必要がある。
本発明によるPTFE多孔体に延伸加工を加えても構わないが、上記の通り、非延伸の状態でもPTFEの繊維化がなされ、高気孔率と高い機械的強度を有するものを得られるため、特段、延伸加工を行う必要性はない。むしろ、延伸を行うことで、得られる成型体の形状が制限されるというデメリットが発生してしまう。
また、上記説明において、PTFEの積層と加圧の工程の後に造孔剤の除去を行う例を示したが、造孔剤の除去は、このようなタイミングで行わなくても構わない。例えば、PTFE粉末と造孔剤とを混合してPTFE混合体とし、このPTFE混合体について造孔剤を除去して気孔を設け、その後、シート状に成形しても良い。また、PTFE混合体をシート状に成形し、このPTFE混合体について造孔剤を除去して気孔を設け、その後、積層と加圧の工程を行っても良い。
以下、本発明の実施例と、比較例を説明する。
(実施例1)
PTFEファインパウダーにフマル酸粉末を混合し、更にナフサを加えて、それぞれの成分がPTFEファインパウダー40%、フマル酸粉末40%、ナフサ20%(重量比)のPTFE混合体を得た。次にそのPTFE混合体200gをプレス機にかけ厚さ4mmのシート状に形成した。このシートを更に4枚積層して加圧し、厚さ4mmに圧縮成型した。この積層と加圧のサイクルを3回繰り返して厚さ4mmの形状に成型した。最後にこの成型したPTFE混合体を400℃、10分間の熱処理を施して焼成し、気孔率約55%のPTFE多孔体を得た。このようにして得たシート形状のPTFE多孔体から、引張強度を測定するため、長さ50mm、幅5mm、厚さ約2.5mmの形状に試験サンプルを切り出して、200mm/minの引張り速度にて引張試験を実施した。併せて、JIS K 6253−2006 加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に従い、タイプAデュロメータにて硬度測定を実施した。
(実施例2)
積層と加圧のサイクルを6回とした他は、実施例1と同様にして気孔率約55%のPTFE多孔体を得た。このPTFE多孔体について、実施例1と同様に、引張試験と硬度測定を実施した。
(実施例3)
積層と加圧のサイクルを9回とした他は、実施例1と同様にして気孔率約55%のPTFE多孔体を得た。このPTFE多孔体について、実施例1と同様に、引張試験と硬度測定を実施した。
(比較例1)
PTFEファインパウダーにフマル酸粉末を混合し、更にナフサを加えて、それぞれの成分がPTFEファインパウダー40%、フマル酸粉末60%、ナフサ7%(重量比)のPTFE混合体を得た。次にそのPTFE混合体200gをプレス機にかけ厚さ4mmのシート状に形成した。最後にこの成型したPTFE混合体を400℃、10分間の熱処理を施して焼成し、気孔率約55%のPTFE多孔体を得た。このPTFE多孔体について、実施例1と同様に、引張試験と硬度測定を実施した。
以下の表1に実施例1〜3及び比較例1の引張試験と硬度測定の結果を示す。
比較例1では7.15MPaの引張強度であるのに対し、実施例1では43.1MPa、実施例2では96.7MPa、実施例3では105.8MPaの高い引張強度を示した。また、硬度については、比較例1はA45であるのに対し、実施例1ではA81、実施例2ではA84、実施例3ではA85と素材が硬くなっている。これら引張試験と硬度測定の結果より、実施例1〜3は、比較例1に比べ、機械的強度に優れた強靭な素材になっていることが確認できる。
また、実施例1〜3及び比較例1について、シート形状の厚さ方向にカットし、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。実施例1のSEM写真を図1に、実施例2のSEM写真を図2に、実施例3のSEM写真を図3に、比較例1のSEM写真を図4にそれぞれ示す。これらSEM写真によれば、実施例1〜3は、微細層構造を有し、該微細層同士が層と垂直方向に連通しているとともに、気孔が上記微細層と同平面方向に展開していることが確認できる。これに対し、比較例1は微細層構造をとっておらず、PTFE組織の繋がりも実施例1〜3と比較して脆弱であることが確認できる。
本発明によれば、PTFE粉末に造孔剤を加え、積層と圧縮を加えることにより、PTFEの繊維化が促進し、かつ、層同士が連通した微細層状構造を形成するため、高気孔でありながら機械的強度の優れたPTFE多孔体を提供することができる。このPTFE多孔体は、高気孔率と高い機械的強度を生かして様々な用途が考えられる。例えば、パッキン、ガスケット等のシール材、フィルタ、分離用隔膜、高周波回路基板、断熱材、防音材、電線被覆材、誘電体、人工血管、カテーテル、培養器などが挙げられる。
実施例1によるPTFE多孔体断面の100倍に拡大したSEM写真である(16層)。 実施例2によるPTFE多孔体断面の100倍に拡大したSEM写真である(128層)。 実施例3によるPTFE多孔体断面の100倍に拡大したSEM写真である(1024層)。 比較例1によるPTFE多孔体断面の100倍に拡大したSEM写真である(単層)。 「微焼成状態」にあるPTFEの示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解曲線を示す図である。 「未焼成状態」にあるPTFEの示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解曲線を示す図である。 「完全焼成状態」にあるPTFEの示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解曲線を示す図である。 「半焼成状態」にあるPTFEの示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解曲線を示す図である。

Claims (9)

  1. ポリテトラフルオロエチレン粉末と造孔剤とを混合してポリテトラフルオロエチレン混合体とする工程と、該ポリテトラフルオロエチレン混合体をシート状に成形する工程と、該シート状に成形したポリテトラフルオロエチレン混合体を積層し、積層した層と略垂直方向に加圧する工程と、上記ポリテトラフルオロエチレン混合体中の造孔剤を除去することによって気孔を設ける工程と、からなるポリテトラフルオロエチレン多孔体の製造方法
  2. 上記積層したポリテトラフルオロエチレン混合体を、積層した層と略垂直方向に加圧した後、更にこの加圧したポリテトラフルオロエチレン混合体を積層するように、積層と加圧の工程を複数サイクル繰り返すことを特徴とする請求項1記載のポリテトラフルオロエチレン多孔体の製造方法。
  3. 上記ポリテトラフルオロエチレン粉末がファインパウダーであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のポリテトラフルオロエチレン多孔体の製造方法。
  4. 加熱により上記造孔剤を除去することを特徴とする請求項1〜請求項3記載のポリテトラフルオロエチレン多孔体の製造方法。
  5. 溶媒抽出により上記造孔剤を除去することを除去することを特徴する請求項1〜請求項3記載のポリテトラフルオロエチレン多孔体の製造方法。
  6. 上記溶媒がアセトン、メチルエチルケトン、エタノール、ジエチルエーテル、水のうち少なくとも1種からなることを特徴とする5記載のポリテトラフルオロエチレン多孔体及びその製造方法。
  7. 上記造孔剤がフマル酸、アジピン酸、コハク酸、リンゴ酸、マロン酸のうち少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜請求項6記載のポリテトラフルオロエチレン多孔体の製造方法。
  8. 2層以上の微細層構造を有し、該微細層同士が層と垂直方向に連通しているとともに、気孔が上記微細層と同平面方向に展開していることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔体。
  9. 非延伸であることを特徴とする請求項8記載のポリテトラフルオロエチレン多孔体。
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