JP2009193793A - 除電装置 - Google Patents

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司 藤田
Naoaki Hashimoto
尚明 橋本
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Abstract

【課題】イオンバランスの制御が困難な不活性ガス雰囲気中での除電に好適な除電装置を提供する。
【解決手段】放電電極1には次の手順で電圧が印加される。(1)第1期間は、プラス電圧を放電電極1に印加してプラスイオンを生成する。(2)第4追加期間は、マイナス極性の所定の電圧を印加してプラスイオンの生成の直ちに停止させる。(3)第3追加期間はしきい値(Vth1)よりもプラス電圧を印加して電界を生成し、浮遊しているプラスイオンをワークWに搬送する。(4)第2期間は、マイナス電圧を印加して放電を発生させて電子を生成する。(5)第1追加期間は、プラス電圧を印加して電子の生成を停止させる。(6)第2追加期間はマイナス電圧を印加して電界を生成して、放電電極1の回りの電子がワークWに到達する時間を調整する。
【選択図】図13

Description

本発明は、一般的に除電装置に関し、より詳しくは、放電電極に電圧を印加することにより生成されるプラスイオンや電子によって帯電体つまり被除電物を除電する除電装置に関する。
除電装置は、高電圧が印加される放電電極を備え、この放電電極に高電圧を印加することによりプラスイオン、マイナスイオンを生成し、このイオンを使って被除電物の除電を行う。
除電装置は、被除電物の除電によって消費されるプラスとマイナスのイオン量に対応するイオンバランス制御が実行される。特許文献1は、放電電極とは別にイオン電流測定電極を用意し、このイオン電流測定電極によってイオン電流の電流値及び方向によって必要な極性のイオンが相対的に多くなるように放電電極に印加する高電圧を制御することを開示している。特許文献2は、イオンバランス制御の方法として、接地線に流れる電流を検出して、この電流の電流値及び方向によって必要な極性のイオンが相対的に多くなるように放電電極に印加する高電圧の電圧値又はパルス幅を制御することを開示している。
ところで、特定の雰囲気中における被除電物に関して除電機能が十分に機能しないという問題が存在する。この問題点を特許文献4は詳しく説明している。すなわち、TFT(薄膜トランジスタ)をガラス板や透明樹脂板の表面に形成したEL(エレクトロルミネッセンス)素子基板に対する製造工程は、窒素ガス雰囲気などに素子基板をおいて行われる。しかしながら、この窒素などの不活性ガス雰囲気における除電(ここでの除電とは、電極に高電圧を印加することにより、電極周りのガスをイオン化させることにより除電を行う放電タイプの除電を指す。)は、大気中における除電に比べ、除電機能が十分でないという問題がある。
その理由としては、特許文献5が指摘するように、窒素ガス雰囲気又は希ガス雰囲気つまり不活性ガス雰囲気でコロナ式放電タイプの除電装置を動作させた場合に、高純度の窒素や希ガスが電子と結合しないためにマイナスイオンが生成されないという問題が発生することが知られている。
図1、図2は、大気雰囲気で除電を行った場合と高純度窒素ガス雰囲気(例えば、窒素濃度が99%以上の窒素ガス)で除電を行った場合の放電電流の値をプロットした図である。ここに、図1は放電電極にプラス極性の高電圧を印加した例を開示するものであり、図2は放電電極にマイナス極性の高電圧を印加した例を開示するものである。
プラスの高電圧を放電電極に印加してプラスイオンを生成した場合(図1)と対比すると良く分かるように、図2の窒素ガス雰囲気下でマイナスの高電圧を放電電極に印加すると、一気に放電電流が流れる。(放電電極より電子が雰囲気中に放出される。)すなわち、マイナス極性の高電圧を放電電極に印加すると、放電電極の回りでマイナスイオンが生成されず、電子が放電電極から窒素ガス雰囲気中に放出される。そして、この放出された電子の移動速度はプラスイオンに比べて100〜1000倍であることから大きな放電電流が一気に流れてしまい、その結果、イオンバランスが一気にマイナス方向に変化してしまう。
図3は、従来から一般的に採用されている放電電極への高電圧印加の方法を適用したモデルを示す。同図中、参照符号1は放電電極であり、2は接地電極である。ワークWとして、静電容量が500pFのアルミニウムプレートを用いた。放電電極1とワークWとの離間距離は150mmであった。
図4は、放電電極1の先端つまり針先の電圧の変化を示し、図5は、電源回路3から高電圧の供給を受ける放電電極1の電位の変化を示すと共に除電によるワークWの電位の変化を示す。なお、図4ならびに図5に示す針先の電圧ならびに放電電極の電位の変化は、上述した高純度窒素ガス雰囲気(例えば、窒素濃度が99%以上の窒素ガス)中でのものである。
図5は、上述した高純度窒素ガス雰囲気において、図5のワークの電位の平均値がほぼゼロの電位となるように、放電電極に対する電源回路3からプラスとマイナスの高電圧の印加時間(デューティ比)とその電圧を設定した場合の、放電電極における電位の時系列的な変化と、放電電極から与えられる電荷によるワークの電位の時系列的な変化を示している。詳細には、ワークの電位の平均値がほぼゼロの電位とするために、放電電極に印加するプラス側の電圧は、5.7kVで670msecであり、マイナス側の電圧は、2.3kVで、20msecとしている。図5のワーク電位を参照すると、放電電極1にプラスの電圧が印加されることにより、ワークの電位がマイナス側からプラス側にシフトする時間に比べて、放電電極1にマイナスの電圧が印加されることにより、ワークの電位がプラス側からマイナス側にシフトする時間が瞬時であることが分かるであろう。また、イオン制御によるワークWの電位の最小値(−130V)、最大値(+115V)が極めて大きいことが分かるであろう。このことから、従来一般的に採用されている放電電極への高電圧印加の方法を採用したときにはイオン制御が実質的に不可能になってしまう、という問題がある。
なお、特許文献5では、電子と結合する所定の少量のガスを放電電極の近傍に注入してマイナスイオンを生成することを提案しており、電子と結合するガスとして、空気、酸素、二酸化炭素などを例示している。
特開2005−228655号公報 特開2007−149419号公報 特開平11−297455号公報 特開2004−47179号公報 特表2002−533887号公報
しかしながら、特許文献5のように、少量とは言え空気などのガスを放電電極の近傍に注入することは、注入した酸素などによって不活性ガス雰囲気を害することであり、高純度の窒素や希ガスの雰囲気下で管理する必要のある被除電物に対して適用することができない。
本発明の目的は、イオンバランスの制御が困難な不活性ガス雰囲気中での除電に好適な除電装置を提供することにある。
上記の技術的課題は、本発明によれば、
放電電極と、
該放電電極に高電圧を印加する電源回路と、
前記電源回路から前記放電電極にプラスならびにマイナスの高電圧を供給する電源制御手段とを有し、
前記電源制御手段が、前記電源回路からマイナス極性の高電圧を前記放電電極に印加することにより、前記放電電極から電子を放出する期間が終了した直後の第1の所定の追加期間に、前記放電電極に対して放電電極周りの雰囲気をプラスにイオン化することができる電圧値より低い電圧値のプラス電圧を前記放電電極に印加することを特徴とする除電装置を提供することにより達成される。
図6は、高純度窒素ガスのような不活性ガス雰囲気でワークWの除電を行うことを前提とした本発明の除電装置の放電電極に印加する電圧制御の一例の電源制御信号を示す図であり、この電源制御信号に基づいて電源回路(図3)が制御される。
図6から分かるように、プラス高電圧を放電電極1(図3)に印加する第1放電期間、これに続いてマイナス高電圧を放電電極1に印加する第2放電期間に加えて、この第2放電期間の直後に所定の電圧を放電電極1に印加する第1追加期間が設定されている。ここに、プラス高電圧(+5.7kV)を印加する第1放電期間は100msecであり、マイナス高電圧(−2.3kV)を印加する第2放電期間は20msecであり、第1追加期間は1msecである。ここで設定されているプラス高電圧の電圧+5.7kVとその電圧を印加する第1放電期間と、マイナス高電圧−2.3kVとその電圧を印加する第2放電期間は、特定の除電器を用い、特定のワークWとの距離などを前提とした上で、ワークWの電位の平均値がほぼゼロとなるように実験に基づいて設定されたものである。更に、マイナス高電圧−2.3kV(ピーク電圧値)という値は、放電電極1から電子が放出される電圧値で且つ、放電電極1から電子の放出が開始される電圧値または、開始電圧値より若干高い電圧(絶対値として)に設定することが好ましい。具体的には、放電電極1から電子が放出される開始電圧値から、その値にその値の20%程度の値を加えた値の範囲内であることが好ましい。その理由は、ピーク電圧値が大幅に電子の放出を開始する電圧値を超えたものであると、既にピーク値にいたるまでに電子が大量に雰囲気中に放出されているため、ピーク値に達した直後に、上述した第1追加期間におけるプラスの高電圧を放電電極1に印加しても、マイナスの電圧のピーク値の直後に急峻にプラス側へ電圧を立ち上げることによる効果が低減するためである。また、放電電極1の経年変化による放電効率の低下に対しては、放電電極1からのマイナスの電子の発生量を、図示しない、グランドとマイナス側の電圧を生成する高電圧電源との間に抵抗とこの抵抗に流れる電流の向きと大きさを検出する電流計を設けることにより、電子の生成量を検出し、マイナスの印加電圧を制御したり、プラスとマイナスの電圧のデューティ比を制御することにより、放電電極1から電子の放出量がほぼ一定となるように維持するようにすることが好ましい。このデューティ比の制御としては、例えば図7に示すピーク値−2.3kVについても、マイナス側の電圧の目標電圧値は、−3kVに向けて制御するようにし、それをデューティ比制御で−2.3kVにてピーク値となるように制御している。このため、仮に放電電極1の経年的な劣化が進んだ場合(電子の放出量が低下した場合)は、マイナスの目標電圧値−3kVに向けて、マイナスの比率を増加する方向のデューティ比制御を行うことにより、放電電極1の劣化に対する対策を簡単に行うことができる。
勿論、第1、第2放電期間の時間は電源制御に基づいて変動してもよいが、第1追加期間の1msecは固定である。つまり、この図6の制御例は、従来の制御に対して、マイナス高電圧を印加する第2放電期間の直後に所定の電圧(この例では+6.5kV)を印加する第1追加期間を付加したものである。なお、放電電極に印加する電源制御において第1放電期間及び第2放電期間に放電電極1に印加する高電圧の電圧値を変化させるようにしてもよい。
上述したように、第1追加期間は、マイナス高電圧を放電電極1に印加する第2放電期間の直後に設定され、この第1追加期間では、放電電極1に印加する電圧は所定値(図6の例では+6.5kV)であり、また、この第1追加期間の時間的長さは一定(図6の例では1msec)である。
図7は、放電電極1の先端つまり針先の電位の変化を示し、図8は、前述した図5に対応した図であって、放電電極1の電位の変化及びワークWの電位の変化を示す。
第1追加期間に放電電極1に印加した所定電圧は、プラス極性であって且つ6.5kVと高電圧であるが、放電電極1に入力する期間が1msecと短時間であるため、放電電極1の針先の電位は+6.5kVまで上昇していない。しかし、図7から分かるように、第1追加期間で所定の電圧を放電電極1に印加することで、放電電極1の針先が第1放電期間として設定している+5.7kVまで立ち上がる時間が7msec(図7)と大幅に短縮している(従来例では図4から分かるように15msecを要している)。この結果、ワークWの電位の変化を示す図8から分かるように、ワーク電位の最小値が「−20V」と従来の「−130V」から大幅に小さくなっている。
上記の現象を詳細に説明すると、上述したように、放電電極1から電子の放出を開始する電圧またはその開始電圧より若干高い値(絶対値として)に設定されたピーク値に達した直後に、放電電極1に対してプラス側の電圧を第1追加期間中、印加するのでピーク値直後に放出される電子の量を抑制できると共に、放電電極1近傍に存在する余剰電子をプラスに帯電した放電電極1にて吸収することが可能となる。このため、マイナスの電圧を放電電極1に印加することによってワークWが帯電する電圧を上述した「−130V」から「−20V」に低減でき、除電行為によるワークの電位のバラツキを大幅に抑制することができる。言うまでも無く、プラス側が同様に「+20V」にワークの電位を抑制できるのは、マイナス側を「−20V」に抑えることができるため、ワークの電位平均値をほぼゼロとしてプラスの電圧を制御するための制御値(プラス側の電圧値やデューティ比など)を設定しているためである。この結果、第1放電期間のプラス高電圧を印加する期間を従来の670msecから100msecに短縮してワークWの電位の平均値をゼロボルトにすることが可能になっていることが分かるであろう。
図9は、本発明の除電装置の電源制御の他の例の電源制御信号を示す図であり、この電源制御信号に基づいて電源回路(図3)が制御される。図9と前述した図6とを対比すると分かるように、図6の例と同様に、プラス高電圧を放電電極1(図3)に印加する第1放電期間、これに続いてマイナス高電圧を放電電極1に印加する第2放電期間に加えて、この第2放電期間の直後に所定の電圧を放電電極1に印加する第1追加期間が設定されている。ここに、プラス高電圧(+5.7kV)を印加する第1放電期間は、図6(100msec)と異なり150msecであるが、マイナス高電圧(−2.3kV)を印加する第2放電期間は20msec、第1追加期間は1msecであり、図6の例と同じである。この他の例(図9)では、更に、第1追加期間の直後に第2追加期間が設定され、この第2追加期間では−1.2kVの電圧が放電電極1に印加され、その時間は30msecである。
この他の例(図9)においても、上述したように、第1追加期間は、マイナス高電圧を放電電極1に印加する第2放電期間の直後に設定され、この第1追加期間では、放電電極1に印加する電圧は所定値(+6.5kV)であり、同様に、第1追加期間の直後に設定される第2追加期間に放電電極1に印加する電圧も所定値(−1.2kV)であり、また、これら第1追加期間(1msec)及び第2追加期間(30msec)の時間的長さは一定である。
図10は、放電電極1の先端つまり針先の電位の変化を示し、図11は、前述した図9に対応した図であって、放電電極1の電位の変化及びワークWの電位の変化を示す。
第1追加期間に放電電極1に印加した所定電圧は、プラス極性であって且つ6.5kVと高電圧であるが、放電電極1に入力する期間が1msecと短時間であるため、放電電極1の針先の電位は+6.5kVまで上昇せずにゼロボルト近傍にある。そして、次の第2追加期間に放電電極1に印加した所定電圧は、放電電極1で電子を生成する電圧(−2.3kV)よりも絶対値が小さいマイナス極性の電圧に設定されている(−1.2kV)。
このように、マイナス極性の高電圧を印加する第2放電期間に直後に短時間の第1追加期間でプラス極性の高電圧(+6.5kV)を放電電極1に印加することで、放電電極1の回りの電子が放電電極1に引き寄せられ又は余剰の電子が吸収され、そして、この第1追加期間の次に、比較的低いマイナス電圧(1.2kV)を放電電極1に印加する第2追加期間を挿入することで、放電電極1周りの電子を、電子と同極性のマイナスに帯電された放電電極1により反発させることができ、電子をワークWに向けて移動させることが可能となり、その結果除電速度を向上させることができる。
ちなみに、図6から図8に基づいて説明した実験結果の除電時間は、ワークがプラスに帯電している場合、0.4secで、ワークがマイナスに帯電している場合、2.4secであった。これに対して、図9から図11に基づいて説明した実験結果の除電時間は、同一の条件下において、ワークがプラスに帯電している場合、0.1secで、ワークがマイナスに帯電している場合、2.4secであった。つまり、放電電極1にマイナスの電圧をかけてプラスに帯電しているワークWを除電する時間が、第1の実験に比べ、第2追加期間を追加した第2の実験のものが効率的になっていることがわかる。
このようにマイナス極性の高電圧を印加する第2放電期間の直後に第1追加期間を挿入し、更に、この第1追加期間の次に第2追加期間を挿入することで、図11から理解できるようにワークWの電位がマイナス方向に一気に大きく変化するのを抑制することができる。そして、この結果、第1放電期間のプラス高電圧を印加する期間を従来の670msecから150msecに短縮してワークWの電位の平均値をゼロボルトにすることが可能になっていることが分かるであろう。勿論、ワークWの電位の最大値を「+30V」に抑え且つ最小値を「−40V」に抑えることができることも確認できた。この範囲であれば、第1放電期間(プラス高電圧印加)と第2放電期間(マイナス高電圧印加)に対して従来一般的な電源制御によってワークWを適正に除電することが可能である。
図12は、パルスAC方式の除電装置10に対して本発明を適用した実施例であり、除電装置10は、高純度の窒素ガス雰囲気でワークW(図3)の除電のために用いられる。パルスAC方式の除電装置10は、一本の放電電極1に対して電源3からプラス又はマイナスの電圧が供給される。また、放電電極1は、電源3を介してグランドに接続されている。そして電源3は電源制御手段4によって制御される。なお、放電電極1の近傍には、放電電極1から電子を放出し易くしたり、放電電極1の周りの雰囲気をプラスイオンにイオン化しやすくするために、対向電極6を設置している。
電源制御手段4は、放電電流を検出する電流計5の検出信号を受けて電源制御が実行される。図13は、電源3から放電電極1に入力される電圧の波形図である。図13を参照して、第1放電期間において電源3からプラス極性の高電圧が放電電極1に供給されて、放電電極1周りの雰囲気をプラスイオンにイオン化し、これによりプラスイオンが生成される。つまり、第1放電期間は、放電電極1周りの雰囲気をプラスイオンにイオン化し、プラスイオンを生成する期間である。
引き続き図13を参照して、第1放電期間の直後の第4追加期間では、マイナス極性の所定の電圧が所定時間印加される。この第4追加期間で放電電極1に印加するマイナス電圧の電圧値は所定値であり且つ印加する時間も所定時間である。この第4追加期間を第1放電期間の直後に挿入することで、プラスイオンの生成を直ちに停止することができる。したがって、第4追加期間では第1放電期間のプラス高電圧の印加を停止することに意義がある。このため、この第4追加期間において印加する電圧は、放電電極1でプラスイオンを生成する、生成しない、というしきい値としてのプラス電圧の電圧値(+極性のしきい値Vth1)よりも低い電圧を設定すればよく、プラスの電圧であってもよい。また、この第4追加期間において図13に示すようにマイナス電圧を放電電極1に印加することで、第1放電期間で余剰に生成したプラスイオンを吸収することができるという利点がある。なお、本発明の観点から言えば、この第4追加期間は必ずしも必須ではない。
第4追加期間の直後に第3追加期間が挿入されている。この第3追加期間では、プラス電圧が放電電極1に印加される。この第3追加期間で印加するプラス電圧は上述したプラスしきい値Vth1よりも低い電圧値に設定される。
このようにプラスしきい値Vth1よりも低いプラス電圧を放電電極1に印加する第3追加期間を挿入してワークWとの間に電界を生成することで、この電界によって、窒素ガス雰囲気に浮遊しているプラスイオンをワークWまで搬送することができる。
第3追加期間の直後に第2放電期間が実行され、この第2放電期間でマイナス極性の高電圧が放電電極1に印加されて、放電電極1から電子が放出されることにより、雰囲気中に電子が生成される。この第2放電期間で放電電極1に印加するマイナス電圧は、放電電極1とワークWとの間で放電を開始するか否かのマイナス極性のしきい値(−Vth2)よりも絶対値が大きい。
第2放電期間の直後に第1追加期間が設定されている。この第1追加期間では、短時間にプラス極性の電圧が放電電極1に印加される。この第1追加期間を第2放電期間の直後に挿入することで、放電電極1の極性を一気に消失させて電子の生成を直ちに停止させると共に逆極性(プラス極性)に反転させることで放電電極1の回りの電子を放電電極1に引き寄せ、好ましくは過剰に生成した電子を放電電極1で吸収することができる。
第1追加期間の直後に第2追加期間が設定されている。この第2追加期間では、マイナス電圧が放電電極1に印加される。この第2追加期間で印加するマイナス電圧は上述したマイナスしきい値(−Vth2)よりも絶対値が小さい。
このようにマイナスしきい値(−Vth)よりも絶対値が小さいマイナス電圧を放電電極1に印加する第2追加期間を挿入してワークWとの間に電界を生成することで、この電界によって、電子をワークWまで搬送する到達時間を調整することができる。
上述した図13に例示の電源制御を時系列で列挙すると以下の通りである。
(第1ステップ)第1放電期間
プラスしきい値Vth1よりも高いプラス電圧を放電電極1に印加して、ワークWとの間に放電を発生させてプラスイオンを生成する。
(第2ステップ)第4追加期間
マイナス極性の所定の電圧を放電電極1に印加して、プラスイオンの生成の直ちに停止させる。好ましくは、余剰のプラスイオンを吸収する。
(第3ステップ)第3追加期間
しきい値(Vth1)よりも低い電圧値のプラス電圧を放電電極1に印加して電界を生成し、この電界によって、浮遊しているプラスイオンをワークWに搬送する。
(第4ステップ)第2放電期間
マイナスしきい値(−Vth2)よりも絶対値が大きいマイナス電圧を放電電極1に印加して、ワークWとの間に放電を発生させて放電電極1の回りに電子を生成する。
(第5ステップ)第1追加期間
プラス極性の電圧を放電電極1に印加して放電電極1の極性を一気に消失させて放電電極1の電子の生成を停止させる。好ましくは、放電電極1の極性をプラスに反転させて電子を引き寄せて、過剰の電子を放電電極1で吸収する。
(第6ステップ)第2追加期間
マイナスしきい値(−Vth2)よりも絶対値が小さなマイナス電圧を放電電極1に印加して電界を生成し、この電界によって、放電電極1の回りの電子がワークWに到達する時間を調整する。
プラスイオンに関連した第1〜第3ステップと、電子に関連した第4〜第6ステップの間に、放電電極1に対して電圧の印加を中止する休止期間を設けてもよい。
以上、パルスAC方式の除電器10を例に説明したが、パルスDC方式の除電器20(図14)に対して同様に適用することができる。この場合に、図15に例示するように、放電によりプラスイオンを生成する第1期間の直後に、しきい値Vth1よりも低いプラス電圧を印加する第3追加期間を設定し、また、放電により電子を生成する第2期間の直後にマイナスしきい値(−Vth2)よりも絶対値が小さいマイナス電圧を放電電極1に印加する第2追加期間を設定するようにしてもよい。
雰囲気が大気の場合と高純度窒素ガスの場合とを対比してマイナス放電のときの印加電圧と放電電流の関係を示す図である。 雰囲気が大気の場合と高純度窒素ガスの場合とを対比してプラス放電のときの印加電圧と放電電流の関係を示す図である。 従来から一般的に採用されている除電装置のモデルを示す図である。 図4の除電モデルにおいて、放電電極の先端の電圧の変化を示す図である。 図4の除電モデルにおいて、放電電極の電位の変化及びこれに伴うワークの電位の変化を示す図である。 本発明の基本概念を説明するために図4の除電モデルにおいて電源から放電電極に入力される電圧の制御例を示す図である。 図6の制御例における放電電極の先端の電圧の変化を示す図である。 図6の制御例における放電電極の電位の変化及びこれに伴うワークの電位の変化を示す図である。 本発明に従う他の制御例を示す図である。 図9の制御例における放電電極の先端の電圧の変化を示す図である。 図9の制御例における放電電極の電位の変化及びこれに伴うワークの電位の変化を示す図である。 実施例のパルスAC方式の除電装置の概略構成図である。 図12の実施例において電源から放電電極に入力される電圧の制御例を説明するための図である。 変形例としてパルスDC方式の除電装置の概略構成図である。
符号の説明
1 放電電極
3 電源回路
4 高電圧制御手段

Claims (4)

  1. 放電電極と、
    該放電電極に高電圧を印加する電源回路と、
    前記電源回路から前記放電電極にプラスならびにマイナスの高電圧を供給する電源制御手段とを有し、
    前記電源制御手段が、前記電源回路からマイナス極性の高電圧を前記放電電極に印加することにより、前記放電電極から電子を放出する期間が終了した直後の第1の所定の追加期間に、前記放電電極に対して放電電極周りの雰囲気をプラスにイオン化することができる電圧値より低い電圧値のプラス電圧を前記放電電極に印加することを特徴とする除電装置。
  2. 前記電源制御手段が、前記第1の追加期間が終了した直後の第2の所定の追加期間に、前記放電電極から電子を放出することができる電圧値よりも低い電圧値のマイナス電圧を前記放電電極に印加する、請求項1に記載の除電装置。
  3. 前記電源制御手段が、プラス極性の高電圧を前記放電電極に印加して、前記放電電極周りの雰囲気をプラスイオンにイオン化する期間が終了した後の第3の所定の追加期間に、前記前記放電電極周りの雰囲気をプラスイオンにイオン化する電圧値より低い電圧値のプラス電圧を前記放電電極に印加する、請求項1又は2に記載の除電装置。
  4. 前記電源制御手段が、プラス極性の高電圧を前記放電電極に印加して、前記放電電極周りの雰囲気をプラスイオンにイオン化する期間と前記第3の追加期間との間に、第4の追加期間が挿入され、該第4の追加期間に、前記放電電極に前記放電電極から電子を放出することができる電圧値よりも低い電圧値のマイナス電圧を印加する、請求項3に記載の除電装置。
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