JP2007256530A - 電子放出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電子放出素子に好適な駆動電圧信号を印加することができる駆動電圧印加部を含んだ電子放出装置を提供すること。
【解決手段】 電子放出素子10は、下部電極12と、誘電体からなるエミッタ部13と、微細貫通孔を有する複数の上部電極14と、を備えた電子放出素子10を含む電子放出部EPと、電子放出部に駆動電圧信号を印加する駆動電圧印加部30とを備える。駆動電圧印加部30は、正弦波状に変化する基本電圧信号(例えば、第1基本電圧信号Vb1=AC210(V))に高周波電圧信号Vhfを重畳させた電圧信号を駆動電圧信号Vinとして電子放出部に印加する。高周波電圧信号Vhfによって駆動電圧信号Vinが高い周波数で増大する毎に電子が上部電極14の微細貫通孔を通して外部に放出される。
【選択図】 図15

Description

本発明は、誘電体からなるエミッタ部と下部電極と上部電極とを備えた電子放出素子に電圧を印加することにより、エミッタ部に蓄積した電子を上部電極の微細貫通孔を通して外部に放出させる電子放出装置に関する。
従来から知られる電子放出素子の一つは、エミッタ部と、下部電極と、上部電極と、を備えている。エミッタ部は誘電体からなっている。下部電極は、エミッタ部の下部に形成されている。上部電極は、エミッタ部を挟んで下部電極に対向するようにエミッタ部の上部に形成されている。この上部電極には、微細貫通孔が複数形成されている。上部電極の微細貫通孔の周部であってエミッタ部と対向する下面は、エミッタ部の上面から離間しているように形成されている。この上部電極とエミッタ部とがなす構造は「庇構造」と呼ばれる。
この電子放出素子から電子を放出させるための制御は、図41に示したように実行される。即ち、電子放出装置は、時刻t10から時刻t20まで、下部電極の電位を上部電極の電位よりも高くするための一定電圧Vm1を駆動電圧信号(駆動電圧)Vinとして上下電極間に付与する。これにより、エミッタ部の双極子の向きが反転する(負側分極反転する)から、上部電極からエミッタ部に向けて電子が供給される。この結果、電子が主としてエミッタ部の上部電極近傍に蓄積される。
次いで、電子放出装置は、時刻t20から時刻t30まで、上部電極の電位を下部電極の電位よりも高くするための一定電圧Vp1を駆動電圧信号Vinとして上下電極間に付与する。これにより、エミッタ部の分極が再び反転し(正側分極反転し)、これに伴うクーロンの反発力によりエミッタ部の上部電極近傍に蓄積されていた電子が上部電極の微細貫通孔を通して上方に放出される。従って、上部電極に対向するように蛍光体が配置されている装置においては、その蛍光体に電子が照射され、蛍光体が発光する。
電子放出装置は、このような動作を繰り返す。即ち、電子放出装置は、時刻t30にて下部電極の電位を上部電極の電位よりも高くするための一定電圧Vm1を上下電極間に再び付与する。そして、時刻t40にて上部電極の電位を下部電極の電位よりも高くするための一定電圧Vp1を上下電極間に付与し、再び電子放出(発光)を行う。このように、電子放出装置は、矩形波状のパルスを上下電極間に付与して電子の蓄積及び放出を繰り返し行う(特許文献1を参照。)。
特開2005−142134号公報
しかしながら、電子放出素子は抵抗成分や誘電損失を含む容量性の素子であるので、上記のようにステップ状に変化する駆動電圧信号Vinを上下電極間に印加すると、電源のする仕事のうちの多くは素子のジュール損失や誘電損失によって熱に変換される。また、保護抵抗を電子放出素子に直列に接続した場合においては、上記のようにステップ状に変化する駆動電圧信号Vinを上下電極間に付与しても、下部電極の電位に対する上部電極の電位で定義される上下電極間の実際の電圧(以下、「素子端電圧Vka」と称呼する。)は直ちに変化せず、素子端電圧Vkaは付与されている駆動電圧信号Vinに徐々に近づく。従って、駆動電圧信号Vinが一定電圧Vp1からVm1へ、又はその逆へ切り替えられてから、素子端電圧Vkaが付与されている一定電圧Vp1又はVm1に一致するまでの間、素子及び素子近傍の抵抗成分にて大きなジュール熱が発生する。この結果、電力が無駄に消費されるという問題、或いは、素子等が過熱するという問題が発生する。
加えて、図41に示したように、時刻t30(電子を蓄積するために一定電圧Vm1の印加を開始した時点)の直後や時刻t40(電子を放出するために一定電圧Vp1の印加を開始した時点)の直後等において、予定していないタイミングで電子が放出さる場合、及び/又は、電子が過度に放出される場合があることが見出された。この場合、電子放出素子が前述したディスプレイ用等の発光をさせるための素子として使用されていると、予定していないタイミングで発光し、或いは、異常な大発光が発生する等の問題が生じる。
更に、このような電子放出装置は、所定の期間T内において電子をより多く放出することが望ましい。電子放出量は、例えば、図42において斜線を付した部分の面積S1により表される。
所定の期間T内における電子放出量を増大するためには、図43に示したように、電荷蓄積期間Td及び電子放出期間Thを短くすることにより所定の期間Tにおける電子放出回数を増大することが考えられる。しかしながら、この方法によると、電子放出素子の分極反転回数(双極子が反転する回数)が増大することになるので、電子放出素子の寿命が短くなる可能性がある。また、所定の期間T内に素子及び素子近傍の抵抗成分により発生するジュール熱も増大する。
これに対し、図44に示したように、電子を蓄積する際の電圧を電圧Vm1から電圧Vm2(|Vm2|>|Vm1|)へと変更して一回の電子の蓄積量を増大するとともに、電子を放出する際の電圧を電圧Vp1から電圧Vp2(|Vp2|>|Vp1|)へと変更して一回の電子放出量(図44において斜線を付した部分の面積S2により表される)を増大することが考えられる。しかしながら、この方法によると、図44に示した放出電子電流のピーク値Pk2が図42に示したピーク値Pk1よりも大きくなることから理解されるように、短時間内に(一回の電子放出動作中に)多くの電子が放出される。このため、電子放出素子に局所的に大きな電流が流れて大きな熱が発生し、それにより、素子が劣化する可能性がある。更に、一般に、蛍光体に過大な量の電子を衝突させた場合、電子のエネルギーは熱に変化してしまい、蛍光体の発光量は増大しない(発光量が飽和状態となる。)。従って、この方法によれば過大な量の電子が発生されるので、電子放出装置が蛍光体を備え且つその蛍光体に放出した電子を衝突させる装置である場合、発光のために無駄に電力を消費してしまう恐れがある。
本発明は、上記課題に対処するためになされたものであって、その目的の一つは、電子放出素子に好適な駆動電圧信号を印加することができる駆動電圧印加部を含んだ電子放出装置を提供することにある。
この目的を達成するための本発明による電子放出装置は、電子放出素子を含む電子放出部と、前記電子放出部に駆動電圧信号を印加する駆動電圧印加部と、を備えている。
電子放出素子は、誘電体からなるエミッタ部と、同エミッタ部の下部に形成された下部電極と、同エミッタ部を挟んで同下部電極に対向するように同エミッタ部の上部に形成されるとともに微細貫通孔が複数形成され且つ同微細貫通孔の周部であって同エミッタ部と対向する面が同エミッタ部から所定の距離だけ離間しているように形成されてなる上部電極と、を有し、同上部電極の電位が同下部電極の電位よりも低い場合に同エミッタ部の双極子の負極が同下部電極側に向くように同双極子が反転するのに伴って同エミッタ部に電子を蓄積し、同上部電極の電位が同下部電極の電位よりも高い場合に同エミッタ部の双極子の負極が同上部電極側に向くように同双極子が反転するのに伴って同エミッタ部に蓄積されている電子を前記微細貫通孔を通して外部に放出する素子である。
更に、前記駆動電圧印加部は、
正弦波状に変化する基本電圧信号を発生する基本電圧発生部と、
前記基本電圧信号を前記電子放出部に印加するために前記基本電圧発生部を同電子放出部の前記上部電極側と前記下部電極側とに接続する接続線と、
前記基本電圧信号の振幅より小さい振幅を有し且つ前記基本電圧信号の周波数よりも高い周波数を有しながら周期的に変化する高周波電圧信号を発生するとともに同高周波電圧信号を前記基本電圧信号に重畳させる高周波電圧重畳部と、
を備えている。
これによれば、電子放出部には接続線を介して高周波電圧信号が重畳した基本電圧信号が駆動電圧信号として印加される。駆動電圧信号は基本電圧信号に沿うように正弦波状に徐々に変化するから、素子端電圧(上下電極間の電位差)の絶対値も駆動電圧信号の電圧(駆動電圧)に追従するように徐々に変化する。この結果、電子放出部に印加される駆動電圧と素子端電圧との差が大きくならないので、発生するジュール熱を小さく、且つ、無駄に消費される電力の量を小さくすることができる。
また、大きなジュール熱が発生しないので、電子放出素子の温度が高くならない。従って、エミッタ部の特性が熱により変化してしまうことを回避することができる。更に、電子放出素子に吸着する物質をガス化してしまうことも回避することができるので、ガス化した物質によるプラズマの発生を抑制することができる。その結果、電子が過度に放出されることや、イオンボンバートメントによる電子放出素子の損傷を回避することもできる。
更に、駆動電圧信号は基本電圧信号に高周波電圧信号が重畳された信号である。従って、駆動電圧信号により上部電極の電位が下部電極の電位よりも高くされ且つ下部電極の電位に対する上部電極の電位(下部電極の電位を基準とした場合の上部電極の電位)が次第に増大している期間において、駆動電圧信号は次第に大きさが増大する複数の極大値を有する信号となる。これにより、駆動電圧信号が前回の極大値から今回の極大値へと変化する過程において前回の極大値を上回る大きさとなったとき、それ以前に分極反転(正側分極反転)していないエミッタ部の双極子の一部が正側分極反転させられる。この結果、高周波電圧信号の各周期に合わせて所定量の電子が放出される。
換言すると、一度の電子蓄積動作によりエミッタ部に蓄積された電子が、複数回に分けて放出させられる。従って、一回の連続した電子放出動作において放出される電子の量は小さくなる。この結果、一度の電子蓄積動作によって多くの電子を蓄積させておいても、電子放出素子に局所的に大きな電流が流れる可能性が小さくなるので、発熱による素子の劣化が回避され、且つ、所定の期間Tにおける電子放出量を増大することができる。更に、図43に示したような駆動電圧信号を電子放出素子に印加した場合に比べ、所定期間Tにおける双極子の反転動作の回数(分極反転動作回数)が多くならないので、同素子の劣化を抑制することができる。
ところで、このような「庇構造」を有する電子放出素子は、放出すべき量の電子をエミッタ部に蓄積させるのに必要な電圧の絶対値が、同放出すべき量の電子をエミッタ部から上部電極の微細貫通孔を通して放出させるのに必要な電圧の絶対値よりも小さいという特性(分極−素子端電圧特性、即ち、図7に示したようなQ−V特性)を有する。従って、前記一つの基本電圧信号により電子の蓄積及び放出を行わせると、電子の蓄積に係る電圧の大きさが必要以上に大きくなって電力が無駄に消費されるか、或いは、電子の放出に係る電圧の大きさが必要以上に小さくなって所望量の電子を放出できない。
従って、前記基本電圧発生部は、前記基本電圧信号として第1基本電圧信号と同第1基本電圧信号より振幅の小さい第2基本電圧信号とを発生するように構成され、
前記高周波電圧重畳部は、前記第1基本電圧信号に前記高周波電圧信号を重畳させるように構成されていることが好適である。
この場合、第1基本電圧信号の周波数と第2基本電圧信号の周波数は等しく、且つ、同期していることが望ましい。
前記駆動電圧印加部は、更に、切換制御信号に基づいて、前記エミッタ部に電子を蓄積させる期間の開始から所定の期間において前記第2基本電圧信号を前記電子放出部に印加し、且つ、同エミッタ部に蓄積されている電子を外部に放出する期間の開始から所定の期間において前記高周波電圧信号が重畳された前記第1基本電圧信号を同電子放出部に印加するスイッチング素子を備えていることが好適である。
これによれば、振幅が互いに相違する第1基本電圧信号と第2基本電圧信号とを発生させておき、それらをスイッチング素子の切換によって電子放出部に適宜印加することができるので、駆動電圧信号を印加するための回路が簡素化される。スイッチング素子としては、例えば、サイリスタ、GTO(Gate Turn-Off)サイリスタ、TRIAC(3端子双方向サイリスタ)、MOS−FETを含むパワートランジスタ及びアナログスイッチ等を使用することができる。即ち、上記スイッチング素子として、半導体素子及びメカニカルリレー等を使用することができる。
更に、この場合、
前記基本電圧発生部は、正弦波状に変化する交流電圧信号を発生する単一の交流電源に接続され同交流電源が発生する交流電圧信号を電圧変換することにより前記第1基本電圧信号と前記第2基本電圧信号とを生成する変圧器(所謂「トランス」)を備えることが好適である。
これによれば、交流電源を一つだけ用意することにより、振幅が互いに相違し且つ正弦波状に変化する前記第1基本電圧信号及び前記第2基本電圧信号を簡単に生成することができる。また、商用電源を電子放出素子の電源として使用することも可能となる。
なお、基本電圧発生部は、変圧器に代え、直流電源からの直流信号を交流に変換する交流発生用インバータを備えたものであってもよい。更に、前記単一の交流電源は、直流電源からの直流信号を交流に変換する交流発生用インバータを備えたものであってもよい。
更に、この場合、前記駆動電圧印加部は、前記スイッチング素子への前記切換制御信号を、前記単一の交流電源が発生する交流電圧信号に基づいて発生するように構成されることが好適である。
これによれば、切換制御信号を生成するための電源が不要であり、且つ、切換制御信号を生成するための回路を簡素化することができる。
更に、この場合、前記駆動電圧印加部は、前記切換制御信号を、前記単一の交流電源が発生する交流電圧信号と同期した交流電圧信号を抵抗を含む分圧回路により分圧することによって形成するように構成されることが好適である。
前記スイッチング素子は、例えば、サイリスタであり、その場合、切換制御信号はゲート信号(ゲート電圧)である。また、前記スイッチング素子は、MOS−FETであってもよく、その場合、切換制御信号はソースに対するゲートの電圧である。勿論、スイッチング素子は、上述した他のスイッチング素子であってもよい。そして、上記構成によれば、切換制御信号が、前記単一の交流電源が発生する交流電圧と同期した交流電圧を抵抗を含む分圧回路により分圧することによって形成される。従って、極めて単純な回路で切換制御信号を生成することができる。この結果、装置のコストを低減することができる。
更に、前記分圧回路に含まれる少なくとも一つの抵抗が可変抵抗であることが好適である。
これによれば、可変抵抗の抵抗値を変更することにより、第1基本電圧信号と第2基本電圧信号との切換タイミングを簡単な構成で制御することができる。また、切換タイミングを自在に変更できるようになるので、電子放出素子の電子蓄積時における素子の両端電圧(素子端電圧)を変更することができる。この結果、電子放出量を制御することができる。
一方、上記電子放出装置であって、
前記駆動電圧印加部は、更に、前記電子放出部の上部電極側の電位が前記電子放出部の下部電極側の電位よりも所定バイアス電圧だけ高くなるように前記接続線に直列に挿入される直流電源を備えることが好適である。
この場合、
前記基本電圧発生部は、正弦波状に変化する交流電圧信号を発生する単一の交流電源に接続され同交流電源が発生する交流電圧信号を電圧変換することにより二つの端子の間に前記基本電圧信号を発生する変圧器を備えることが好適である。
これらによれば、前記上部電極側の電位が前記下部電極側の電位に対して所定バイアス電圧だけバイアスされる。従って、略正弦波状に変化する駆動電圧信号(正弦波状の基本電圧信号に高周波電圧信号が重畳された信号)により、「上部電極の電位が下部電極の電位よりも高くなっている期間」が「上部電極の電位が下部電極の電位よりも低くなっている期間」よりも長くなる。従って、電子放出を行い得る期間を長くすることができるので、電子放出回数を増大することができる。この結果、電子放出量を一層増大することができる。換言すると、電子放出装置によるエネルギー消費量を低減することができる。
なお、この場合においても、基本電圧発生部は、変圧器に代わる、直流電源からの直流信号を交流に変換する交流発生用インバータを備えたものであってもよい。更に、前記単一の交流電源は、直流電源からの直流信号を交流に変換する交流発生用インバータを備えたものであってもよい。
また、これらによれば、所定バイアス電圧が印加されているので、電子をエミッタ部に蓄積させる際の電圧(上下電極間電圧)の絶対値が、電子をエミッタ部から上部電極の微細貫通孔を通して放出させる際の電圧(上下電極間電圧)の絶対値よりも小さくなる。従って、「庇構造」を有する電子放出素子に適した駆動電圧が付与されるので、無駄に電力を消費することを回避することができる。
一方、上記何れかの電子放出装置において、
前記高周波電圧重畳部は、前記接続線のうちの前記上部電極側に接続された接続線上の信号に前記高周波電圧信号を重畳させる高周波重畳用変圧器を含んでいてもよい。代替として、前記高周波電圧重畳部は、前記接続線のうちの前記下部電極側に接続された接続線上の信号に前記高周波電圧信号を重畳させる高周波重畳用変圧器を含んでいてもよい。
他方、上記何れかの電子放出装置において、
前記高周波電圧重畳部は、前記高周波電圧信号を発生するとともに前記接続線のうちの前記下部電極側に接続された接続線に直列に挿入された高周波重畳用電源を含むことができる。
また、上記何れかの電子放出装置において、
前記高周波電圧重畳部は、前記高周波電圧信号の振幅を次第に増大させるように構成されることが好適である。
一度の電子蓄積動作によって蓄積された電子が放出される毎に、正側分極反転していない双極子の数は減少する。従って、高周波電圧信号の各周期に合わせて放出される電子の量が次第に減少する場合がある。これに対し、上記構成によれば、重畳される高周波電圧信号の極大値が時間経過とともに増大するから、駆動電圧信号のある時点の極大値がその時点の直前の極大値に比べて十分に大きくなる。従って、各電子放出動作において正側分極反転する双極子の数が減少することを抑制することができる。この結果、各電子放出動作時の電子放出量を略一定に維持するか、或いは、各電子放出動作時の電子放出量の減少を抑制することができる。
更に、上記何れかの電子放出装置において、
前記高周波電圧重畳部は、前記下部電極の電位に対する前記上部電極の電位である上下電極間電圧が低下し始める時点で発生する前記高周波電圧信号の振幅が、同上下電極間電圧が上昇を開始してから同時点に至るまでの同高周波電圧信号の振幅より大きくなるように同高周波電圧信号を発生することが好適である。
これによれば、高周波電圧信号の最後の波の極大値(上下電極間電圧(基本電圧信号)が低下し始める時点で発生する波の振幅)が大きい値に設定される。従って、その時点までに正側分極反転していない双極子の総てを正側分極反転せしめることができる。この結果、最後の波により多量の電子が放出される。それゆえ、電子放出装置が蛍光体を備える場合、最後の波の発生後から長時間に渡って蛍光体が強い残光を発生する。従って、蛍光体による平均的な輝度を大きくすることができる。
本発明による他の電子放出装置は、上述した電子放出部と、その電子放出部に駆動電圧信号を印加する駆動電圧印加部と、を備え、
前記駆動電圧印加部は、
正弦波状に変化する基本電圧信号を発生する基本電圧発生部と、
前記基本電圧信号を前記電子放出部に印加するために前記基本電圧発生部を同電子放出部の前記上部電極側と前記下部電極側とに接続する接続線と、
前記接続線に挿入され且つ前記基本電圧信号の周波数よりも高い周波数で同接続線を切断した状態と接続した状態との間で切り換えるスイッチ部と、
を備えた電子放出装置である。
電子放出素子はコンデンサと実質的に同じ構成であるから、上部電極及び下部電極に接続されている接続線の何れかが切断されたとき、その時点で蓄積している電荷を保持する。即ち、その時点の上下電極間の電位差は保持される。従って、上記構成のように、スイッチ部によって、基本電圧発生部を電子放出部の上部電極側と下部電極側とに接続する接続線を、基本電圧信号の周波数よりも高い周波数で切断した状態と接続した状態との間で切り換えれば、電子放出部に階段状の電圧を実質的に印加することができる。この結果、電子放出部に印加される電圧が増大する毎に電子放出素子から電子を放出することができる。
更に、上記何れかの電子放出装置において、
前記電子放出部は、
前記電子放出素子に直列接続された保護抵抗を含むことが望ましい。
保護抵抗によって電子放出素子に過大な電流が流れることを回避することができる。更に、電子放出部が保護抵抗を備えている装置においては、本発明による上記駆動電圧印加部を採用することにより、保護抵抗に起因する無駄な電力消費や発熱をより効果的に回避することができる。
更に、上記何れかの電子放出装置は、前記上部電極の上部側において同上部電極に対向するように配設され、同上部電極の微細貫通孔を通して放出された電子の衝突により発光する蛍光体を更に備えることが望ましい。
上述したように、蛍光体に過大な量の電子を衝突させた場合、電子のエネルギーは熱に変化してしまい、蛍光体の発光量は増大しない。一方、蛍光体は、電子の衝突が終了した後、時間経過とともに光量が低下する残光を発する。従って、蛍光体は、電子のエネルギーが熱に変化することが少ない適当な量の電子が衝突させられることにより多くの光を発生し、その後、衝突する電子の量が減少させられている(衝突する電子が0の場合を含む)期間において主として残光による光を発生し、その残光の発光量が小さくなる適切な時期に再び適当な量の電子が衝突させられることにより多くの光を発生する場合に、高い効率を持って光を発生することになる。
従って、上述した本発明の電子放出装置のように、一回の電子放出量を抑制しながら複数回に亘って且つ短い周期で電子を繰り返し放出させ、その電子を蛍光体に衝突させるようにすれば、より小さい消費電力で大きい発光量を得ることができる。この結果、低消費電力、且つ、明瞭な画像を提供するディスプレイ装置或いは大光量の発光装置を提供することができる。
なお、蛍光体を備える電子放出装置は、
前記蛍光体の近傍に配置されたコレクタ電極と、
前記コレクタ電極が前記放出された電子を同コレクタ電極側に引き寄せる電界を形成するように同コレクタ電極に電圧を付与するコレクタ電圧付与手段と、
を更に備えることが望ましい。
これによれば、コレクタ電極の形成する電界によって、エミッタ部から上部電極の微細貫通孔を通って放出された電子を蛍光体に確実に衝突させることができる。更に、コレクタ電極の形成する電界により、放出された電子にエネルギーを与えて電子を加速することができるので、蛍光体の発光量を高めることができる。
以下、本発明による電子放出装置の各実施形態について図面を参照しながら説明する。この電子放出装置は、電子照射線装置、光源及び電子部品製造装置等の種々の装置に適用することができるが、以下の説明においてはディスプレイに適用されている。
<第1実施形態>
(構造)
図1乃至図3に示したように、本発明の第1実施形態に係る電子放出装置は、電子放出素子10と、保護抵抗20と、駆動電圧印加部30と、集束電極電位付与回路40と、コレクタ電圧付与回路50と、を備えている。
電子放出素子10は、基板11、複数の下部電極(下部電極層)12、エミッタ部13、複数の上部電極(上部電極層)14、絶縁層15及び複数の集束電極(集束電極層)16を備えている。なお、図1は電子放出素子10の部分平面図である図3の1−1線に沿った平面にて電子放出素子10を切断した断面図、図2は図3の2−2線に沿った平面にて電子放出素子10を切断した断面図である。
基板11は、互いに直交するX軸及びY軸により形成される平面(X−Y平面)に平行な上面及び下面を有し、X軸及びY軸のそれぞれに直交するZ軸方向に厚み方向を有する薄板体である。基板11は、酸化ジルコニウムを主成分とした材料(例えば、ガラス又はセラミックス)からなっている。
下部電極12のそれぞれは、導電性物質(ここでは、銀又は白金)からなり、基板11の上面の上に層状に形成されている。各下部電極12の平面視における形状はY軸方向に長手方向を有する帯状である。図1に示したように、互いに隣接する二つの下部電極12は、X軸方向において所定の距離だけ離れた位置に形成されている。図1において、符合12−1、12−2及び12−3が付された下部電極12は、便宜上、第1下部電極、第2下部電極及び第3下部電極とそれぞれ称呼される。
エミッタ部13は、比誘電率が大きい誘電体(例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、チタン酸鉛(PT)及びジルコン酸鉛(PZ)の3成分系材料PMN−PT−PZ)からなり、基板11の上面及び下部電極12の上面の上に形成されている。エミッタ部13は、基板11と同様な薄板体である。エミッタ部13の上面には、図4に拡大して示したように、誘電体の粒界による凹凸13aが形成されている。
上部電極14のそれぞれは、導電性物質(ここでは、白金)からなり、エミッタ部13の上面の上に層状に形成されている。各上部電極14の平面視における形状は、図3に示したように、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ沿った短辺及び長辺を有する長方形である。複数の上部電極14は互いに離間し、マトリクス状に配列されている。上部電極14のそれぞれは、下部電極12のそれぞれに対向し、平面視において下部電極12のそれぞれに重なる位置に配設されている。
更に、上部電極14のそれぞれには、図4及び上部電極14の部分拡大平面図である図5に示したように、複数の微細な貫通孔14aが形成されている。図1及び図3において、符合14−1、14−2及び14−3が付された上部電極14は、便宜上、第1上部電極、第2上部電極及び第3上部電極とそれぞれ称呼される。また、X軸方向に配列された複数の上部電極14同士は図示しない導体からなる層により接続され、同電位に維持されるようになっている。
従って、この電子放出素子は、誘電体からなるエミッタ部13と、同エミッタ部13の下部に形成された下部電極12と、同エミッタ部13を挟んで同下部電極12に対向するように同エミッタ部13の上部に形成されるとともに微細貫通孔14aが複数形成され且つ同微細貫通孔14aの周部であって同エミッタ部13と対向する面が同エミッタ部13から所定の距離だけ離間しているように形成されてなる(庇構造を有する)上部電極14と、を有する電子放出素子であると云うことができる。
下部電極12、エミッタ部13及び白金レジネートペーストからなる上部電極14は焼成処理によって一体化させられている。この一体化のための焼成処理により、上部電極14となる膜が例えば厚み10μmから厚み0.1μmに収縮する。このとき、上部電極14には前述した複数の微細貫通孔14aが形成される。
以上に述べたように、平面視において上部電極14と下部電極12とが重なった部分は一つの電子放出のための素子を形成していることになる。例えば、第1下部電極12−1、第1上部電極14−1及び第1下部電極12−1と第1上部電極14−1とにより挟まれたエミッタ部13は、第1の素子を構成している。また、第2下部電極12−2、第2上部電極14−2及び第2下部電極12−2と第2上部電極14−2とにより挟まれたエミッタ部13は、第2の素子を構成している。更に、第3下部電極12−3、第3上部電極14−3及び第3下部電極12−3と第3上部電極14−3とにより挟まれたエミッタ部13は、第3の素子を構成している。このように、電子放出素子10は、複数の独立した電子放出素子を備えている。
絶縁層15は、エミッタ部13の上面の上に、複数の上部電極14の間を埋めるように形成されている。絶縁層15の厚み(Z軸方向長さ)は、上部電極14の厚み(Z軸方向長さ)より僅かだけ大きくなっている。図1及び図2に示したように、各絶縁層15のX軸及びY軸方向端部は、上部電極14のX軸方向両端部及びY軸方向両端部の上に配置されている。
集束電極16は、導電性物質(ここでは、銀)からなり、絶縁層15の上に層状に形成されている。図3に示したように、各集束電極16の平面視における形状はY軸方向に長手方向を有する帯状である。各集束電極16は、平面視においてX軸方向にて互いに隣接する上部電極14の間(X軸方向に互いに隣接している素子の各上部電極の間であって、各上部電極の斜め上方、即ち、電子放出方向に僅かに離間した位置)に形成されている。総ての集束電極16は、図示しない導体からなる層により互いに接続され、同電位に維持されるようになっている。
なお、図1及び図3において、符合16−1、16−2及び16−3が付された集束電極16は、便宜上、第1集束電極、第2集束電極及び第3集束電極とそれぞれ称呼される。この称呼方法を利用すると、第2集束電極16−2は第1の素子の第1上部電極14−1と第2の素子の第2上部電極14−2との間であって、第1上部電極14−1及び第2上部電極14−2の斜め上方に形成されていると言える。同様に、第3集束電極16−3は第2の素子の第2上部電極14−2と第3の素子の第3上部電極14−3との間であって、第2上部電極14−2及び第3上部電極14−3の斜め上方に形成されていると言える。
この電子放出装置は、更に、透明板17、コレクタ電極(コレクタ電極層)18及び蛍光体19を備えている。
透明板17は、透明な材質(ここでは、ガラス又はアクリル製)からなっていて、上部電極14の上方(Z軸正方向)に所定の距離だけ離れた位置に形成されている。透明板17は、その上面及び下面がエミッタ部13の上面及び上部電極14の上面と平行(X−Y平面内)となるように配設されている。
コレクタ電極18は、導電性物質(ここでは、透明導電膜,ITO)からなっていて、透明板17の下面全体に層状に形成されている。即ち、コレクタ電極18は、各上部電極14の上部において各上部電極14に対向するように配設されている。
蛍光体19のそれぞれは、電子の衝突により赤、緑及び青色の何れかの光を発するようになっている。各蛍光体19は、平面視において各上部電極14と略同一の形状を備え、各上部電極14と重なる位置に配設されている。図1において、符合19R、19G及び19Bが付された蛍光体19は、赤色、緑色及び青色をそれぞれ発光するようになっている。従って、本例においては、赤色蛍光体19Rは第1上部電極14−1の直上部(Z軸正方向)に位置し、緑色蛍光体19Gは第2上部電極14−2の直上部に位置し、青色蛍光体19Bは第3上部電極14−3の直上部に位置している。
蛍光体19のそれぞれは、電子が衝突すると、その電子により励起状態となり、その励起状態から基底状態へと遷移するときに光を発生するようになっている。赤色蛍光体19Rの代表例は、YS:Tbである。緑色蛍光体19Gの代表例は、ZnS:Cu,Alである。青色蛍光体19Bの代表例は、ZnS:Ag,Clである。
なお、本実施形態の電子放出装置が液晶のバックライトに適用される場合等においては、蛍光体19は白色の光を発する白色蛍光体であってもよい。白色蛍光体としての代表例は、YS:Tbである。或いは、白色蛍光体は、赤色蛍光体(例えば、YS:Eu)、緑色蛍光体(例えば、ZnS:Cu,Al)及び青色蛍光体(例えば、ZnS:Ag,Cl)の蛍光体を混ぜ合わせることにより作製することもできる。
エミッタ部13、上部電極14、絶縁層15、集束電極16及び透明板17(コレクタ電極18)により囲まれた空間は略真空(10〜10−6Paが好ましく、より好ましくは10−3〜10−5Pa)に維持されている。
換言すると、透明板17及びコレクタ電極18は、図示しない電子放出装置の側壁部とともに密閉空間を形成する空間形成部材を構成している。そして、この密閉空間は略真空に維持されている。従って、電子放出装置の素子(少なくとも各素子のエミッタ部13の上部と上部電極14)は、空間形成部材により略真空状態に維持されている密閉空間内に配置されていることになる。
駆動電圧印加部30は、後に詳述する駆動電圧信号Vinを発生するようになっている。駆動電圧印加部30は、保護抵抗20を介して各上部電極14に接続されるとともに各下部電極12に接続されている。なお、各電子放出素子と保護抵抗20とからなる部分を電子放出部EPと称呼する。従って、駆動電圧印加部30は駆動電圧信号Vinを電子放出部EP(電子放出部EPの両端である下部電極側と上部電極側)に印加するようになっている。
集束電極電位付与回路40は、集束電極16に接続されていて、集束電極16に一定の負の電位(電圧)Vsを常に付与するようになっている。
コレクタ電圧付与回路50は、コレクタ電極18に所定の電圧(コレクタ電圧)を付与するための回路であって、抵抗(保護抵抗、コレクタ抵抗)51と、スイッチング素子52と、一定の電圧Vcを発生する定電圧源53と、スイッチ制御回路54とを備えている。抵抗51の一端はコレクタ電極18に接続されている。抵抗51の他端はスイッチング素子52の固定接続点に接続されている。スイッチング素子52は、MOS−FETなどの半導体素子であり、スイッチ制御回路54と接続されている。
スイッチング素子52は、前記固定接続点に加え、二つの切換点を備えている。スイッチング素子52は、スイッチ制御回路54からの指示信号に応じて二つの切換点の何れか一つと固定接続点とを選択的に接続するようになっている。この二つの切換点の一つは接地され、他の一つは定電圧源53の陽極と接続されている。定電圧源53の陰極は接地されている。スイッチ制御回路54は、駆動電圧印加部30と接続されていて、駆動電圧信号に基づいてスイッチング素子52の切換制御を行うようになっている。
(電子放出の原理及び作動)
次に、上記のように構成された電子放出装置の電子放出に関する作動原理について一つの電子放出素子に着目して説明する。以下においては、説明を簡単にするため、駆動電圧印加部30が電子放出素子に印加する駆動電圧信号Vinは第1実施形態の駆動電圧信号Vinと相違する矩形波となっている。
先ず、図6に示したように、下部電極12の電位を基準とした下部電極12と上部電極14の実際の電位差Vka(即ち、素子端電圧Vka)が正の所定電圧Vpに維持され、エミッタ部13の電子が総て放出した直後であって、電子がエミッタ部13に蓄積されていない状態から説明を開始する。このとき、エミッタ部13の双極子の負極はエミッタ部13の上面(Z軸正方向、即ち、上部電極14側)に向いた状態となっている。この状態は、図7に示したグラフ上の点p1の状態である。図7のグラフは、横軸に素子端電圧Vkaをとり、縦軸に上部電極14近傍部分の電荷Qをとったグラフである。このグラフは、電子放出素子10の分極−素子端電圧特性(Q−V特性)を表している。
この状態において、駆動電圧印加部30は、駆動電圧信号Vinを負の所定電圧である第1電圧Vmに向けて減少させる。これにより、素子端電圧Vkaは図7の点p2を経由して点p3に向けて減少する。そして、素子端電圧Vkaが図7に示した負の抗電界電圧Vaの近傍の電圧になると、エミッタ部13の双極子の負極が下部電極12側に向くように双極子が反転し始める。即ち、図8に示したように、分極反転(負側分極反転)が開始する。この分極反転により、エミッタ部13の上面と、上部電極14と、これらの周囲の媒質(この場合、真空)との接触箇所(トリプルジャンクション)及び/又は微細貫通孔14aを形成している上部電極14の先端部分において電界が大きくなり(電界集中が発生し)、図9に示したように、上部電極14からエミッタ部13に向けて電子が供給され始める。この場合、微細貫通孔14aの周部がエミッタ部13(エミッタ部13の上面)から所定距離だけ離間しているので、微細貫通孔14a周部の先端部における電界集中が大きくなり、同先端部からエミッタ部13に向けて供給される電子の量(供給電子量)を多くすることができる。また、トリプルジャンクションにおいて、上部電極14とエミッタ部13の上面とがなす角度が90°より小さくなるから、電界集中がより顕著になって供給電子量が増加する。
この供給された電子は、主としてエミッタ部13の上部であって上部電極14の微細貫通孔14aから露呈している部分の近傍及び微細貫通孔14aを形成している上部電極14の端部近傍(以下、単に「微細貫通孔14a近傍」とも言う。)に蓄積される。その後、所定の時間が経過して負側分極反転が完了すると、素子端電圧Vkaは負の所定電圧(第1電圧)Vmに向けて急激に変化し、負の所定電圧Vmに到達する。この結果、電子の蓄積が完了する(電子の蓄積飽和状態に至る)。この状態が、図7の点p4の状態である。
次に、駆動電圧印加部30は、駆動電圧信号Vinを正の所定電圧である第2電圧Vpに変更する。これにより、素子端電圧Vkaは増大し始める。このとき、素子端電圧Vkaが図7の点p5に対応する正の抗電界電圧Vdより僅かに小さい電圧Vb(点p6)に到達するまでは、図10に示したように、エミッタ部13の帯電状態が維持される。その後、素子端電圧Vkaは正の抗電界電圧Vdの近傍の電圧に到達する。これにより、双極子の負極がエミッタ部13の上面側(上部電極14側)に向き始める。即ち、図11に示したように、分極が再び反転する(正側分極反転が開始する)。この状態が図7の点p5近傍の状態である。
その後、正側分極反転が完了する時点の近傍になると、負極がエミッタ部13の上面側に反転した双極子の数が多くなる。この結果、図12に示したように、双極子と電子との間のクーロンの反発力により微細貫通孔14aの近傍に蓄積されていた電子が微細貫通孔14aを通って上方(Z軸正方向)に放出され始める。
そして、正側分極反転が完了すると、素子端電圧Vkaは急激に増大を開始し、電子が活発に放出される。次いで、電子の放出は完了し、素子端電圧Vkaは第2電圧Vpに到達する。この結果、エミッタ部13の状態は図6に示した当初の状態(図7の点p1の状態)に復帰する。以上が、電子の蓄積(消灯)及び放出(点灯・発光)に係る一連の作動原理である。
ところで、電子が上部電極14の微細貫通孔14aを通して放出されるとき、図13に示したように、電子は次第に広がりながら(コーン状に)Z軸正方向に進行する。この結果、いくつかの装置においては、一つの上部電極14(例えば、第2上部電極14−2)から放出された電子が、その上部電極14の直上に存在する蛍光体(例えば、緑色蛍光体19G)に到達するのみでなく、隣接する蛍光体(赤色蛍光体19R及び青色蛍光体19B)にも到達してしまう場合があった。このような状態が発生すると、色純度が低下して画像の鮮明さが低下する。
これに対し、本実施形態に係る電子放出素子10は負の電位が付与される集束電極16を備えている。この集束電極16は、隣接する上部電極14の間(隣接する素子の各上部電極の間)であって、上部電極14よりも若干だけ上方の位置に配設されている。従って、図14に示したように、上部電極14の微細貫通孔14aから放出された電子は、集束電極16によりもたらされる電界によって広がることなく実質的に直上方向に放出される。
この結果、第1上部電極14−1から放出された電子は赤色蛍光体19Rのみに到達し、第2上部電極14−2から放出された電子は緑色蛍光体19Gのみに到達し、第3上部電極14−3から放出された電子は青色蛍光体19Bのみに到達する。従って、ディスプレイの色純度が低下することなく、より鮮明な画像を得ることができる。
(異常な電子放出について)
ところで、発明者は上述した電子放出素子に矩形波状の駆動電圧信号Vinを印加すると、不要な電子放出(電子放出量が過大になる場合も含む。)が発生することを発見した。
このような不要な電子放出は、主として次に述べる4つの時点にて生じる。
(A)駆動電圧信号Vinを負の所定電圧である第1電圧Vmから正の所定電圧である第2電圧Vpに急激に変更した時点の直後に不要な電子放出が発生する。これは、駆動電圧信号Vinが急変することに伴って、上部電極14と下部電極12との間(即ち、エミッタ部13)に大きな突入電流が流れる(素子電流Ikの大きさが過大になる)ことに起因すると推定される。
(B)駆動電圧信号Vinを正の所定電圧である第2電圧Vpに変更したことに伴って正側分極反転が発生し、その正側分極反転が完了した時点の直後に不要な電子放出が発生する。これは、エミッタ部13の正側分極反転が完了した時点(正の抗電界電圧を超える時点)の直後に素子端電圧Vkaが急激に変化すること(素子端電圧Vkaの時間的変化率(dVka/dt)の大きさが過大になること)等によるものと推定される。
(C)駆動電圧信号Vinを正の所定電圧である第2電圧Vpから負の所定電圧である第1電圧Vmに急激に変更した時点の直後に不要な電子放出が発生する。これは、駆動電圧信号Vinが急変することに伴って、大きな突入電流が流れる(素子電流Ikの大きさが過大になる)ことに起因すると推定される。
(D)駆動電圧信号Vinを負の所定電圧である第1電圧Vmに変更したことに伴って負側分極反転が発生し、その負側分極反転が完了した時点の直後に不要な電子放出が発生する。これは、エミッタ部13の負側分極反転が完了した後に素子端電圧Vkaが急激に変化すること(素子端電圧Vkaの時間的変化率(dVka/dt)の大きさが過大になること)等によるものと推定される。
発明者は、以上の知見に基づき、実験を重ねたところ、電子を放出させる際及び電子を蓄積させる際に駆動電圧信号Vinを矩形波状に変化させるのではなく、駆動電圧信号Vinの大きさが徐々に増大するように同駆動電圧信号Vinを変化させると、異常な電子放出を防止できるという結論を得た。即ち、電子放出を行うために駆動電圧信号Vinを変化させる際、駆動電圧信号Vinの電圧変化率の大きさを小さくするほど素子電流Ikのピーク(最大値)が小さくなり、異常な電子放出を回避することができることが確認された。
(蛍光体19の効率について)
更に、発明者は、蛍光体19の効率について検討した。上述したような蛍光体19に過大な量の電子を衝突させた場合、電子のエネルギーは熱に変化してしまい、蛍光体19の発光量は増大しない。一方、蛍光体19は、電子の衝突が終了した後、時間経過とともに光量が低下する残光を発する。従って、蛍光体19は、電子のエネルギーが熱に変化することが少ない適当な量の電子が衝突させられ、その後、電子の衝突が停止させられるか僅かな量の電子が衝突させられ、残光の発光量が小さくなる適切な時期に再び適当な量の電子が衝突させられる場合に、高い効率を持って光を発生することが解った。
そこで、発明者は、電子放出素子10からの一回の電子放出量を抑制しながら複数回に亘って且つ短い周期で電子を繰り返し放出させ、その電子を蛍光体19に衝突させるようにすれば、より小さい消費電力で大きい発光量を得ることができるという知見を得た。
(駆動電圧印加部30の構成及び作動)
第1実施形態に係る駆動電圧印加部30は、上述の知見に基づいて構成されたものであり、図15に概念図に示したように、基本電圧発生部30A、高周波電圧重畳部30B及びスイッチング回路(スイッチング素子)30Cを備えている。
基本電圧発生部30Aは、正弦波状の電圧信号を出力する単一の交流電源(正弦波電圧信号発生交流電源)CVと、変圧器31と、を備えている。交流電源CVは、ここでは商用電源CV(AC100V)である。但し、交流電源CVは、定電圧直流電源及びその定電圧直流電源からの電圧を交流の電圧信号に変換する交流発生用インバータに置換することもできる。基本電圧発生部30Aは、商用電源CV(AC100V)を変圧器31により変圧(電圧変換)することにより、互いに同期し且つそれぞれが正弦波状に変化する第1基本電圧信号Vb1及び第2基本電圧信号Vb2を基本電圧信号として生成するようになっている。但し、第1基本電圧信号Vb1の振幅は第2基本電圧信号Vb2の振幅より大きい。
高周波電圧重畳部30Bは、高周波電圧信号Vhfを発生するとともに、その高周波電圧信号Vhfを第1基本電圧信号Vb1に重畳させるようになっている。高周波電圧信号Vhfは、基本電圧信号(即ち、第1基本電圧信号Vb1及び第2基本電圧信号Vb2、又は、少なくとも第1基本電圧信号Vb1)の振幅より小さい振幅を有し且つ基本電圧信号の周波数よりも高い周波数を有しながら周期的に変化する信号である。この例において、高周波電圧信号Vhfは正弦波の交流電圧信号である。
スイッチング回路30Cは、高周波電圧信号Vhfが重畳した第1基本電圧信号Vb1と、正弦波状に変化する第2基本電圧信号Vb2と、の信号の何れかを選択し、選択した信号を電子放出素子10及び保護抵抗20を含む電子放出部EPに接続線LU,LDを介して印加するようになっている。なお、接続線LUは電子放出素子10の上部電極側(保護抵抗20)に接続され、接続線LDは電子放出素子10の下部電極側(下部電極12)に接続されている。
より具体的に説明すると、駆動電圧印加部30は、図16に示したように、変圧器(単一の変圧器)31、スイッチング素子の一つであるダイオード(第1整流素子)32、第1抵抗33、スイッチング素子の一つであるサイリスタ(第2整流素子)34、第2抵抗35、第3抵抗(固定又は可変抵抗)36、第4抵抗37、高周波重畳用変圧器38及び高周波信号発生回路39を備えている。高周波重畳用変圧器38及び高周波信号発生回路39は、高周波電圧重畳部30Bを構成している。ダイオード32、第1抵抗33、サイリスタ34、第2抵抗35、第3抵抗36及び第4抵抗37はスイッチング回路30Cを構成している。
変圧器31は、一次巻線31aと二次巻線31bとを備えている。一次巻線31aの両端の端子は、それぞれ端子T1及び端子T2と称呼される。二次巻線31bには、二次巻線31b上に所定の間隔を有しながら配設された複数の端子T3〜T8が順に設けられている。端子T3は二次巻線31bの下端の端子である。端子T8は二次巻線31bの上端の端子である。
変圧器31は、一次巻線31aの両端の端子T1,T2に印加される交流電圧信号を電磁誘導効果により所定の変圧比(ここでは、2.1倍)で変圧した電圧信号を二次巻線31bの両端の端子T8〜T3間に発生するようになっている。一次巻線31aの両端の端子T1,T2は、交流電源である商用電源(例えば、日本国内では、AC100(V),60Hz又は50Hzの電源)に接続されている。端子T1及び端子T2は、商用電源のAC100V(−)及びAC100V(+)にそれぞれ接続されている。
従って、二次巻線31bの端子T8には、端子T3を基準電圧0(V)として正弦波状に変化する210(V)(振幅=約297V)の交流電圧信号が発生せしめられる。なお、端子T8に生成されるこの210(V)の交流電圧を、単に「AC210(V)」と称呼する。他の端子に現れる電圧にも、同様の称呼方法を適用する。AC210(V)が、本実施形態における第1基本電圧信号Vb1に相当する信号である。
同様に、二次巻線31bの端子T4,T5,T6及びT7には、端子T3を基準電圧として30,40,50及び200Vの交流電圧信号がそれぞれ発生する。端子T6に生成されるこの50(V)の交流電圧信号(AC50(V))が、本実施形態における第2基本電圧信号Vb2に相当する信号である。なお、説明の便宜上、端子T8の位置は二次巻線31bの第1の位置と称呼され、端子T6の位置は二次巻線31bの第2の位置と称呼され、端子T5の位置は二次巻線31bの第3の位置とも称呼される。端子T3の位置は、二次巻線31bの基準位置とも称呼される。
端子T8は、接続線L1aにより高周波重畳用変圧器38の二次巻線38bの端子M2に接続されている。二次巻線38bの端子M1は接続線L1bによりダイオード32のアノードAと接続されている。ダイオード32のカソードKは、接続線L1bに直列に挿入された第1抵抗33を介して点P1に接続されている。点P1は接続線LC1により保護抵抗20の一端に接続されている。保護抵抗20の他端は電子放出素子10の上部電極14と接続されている。上述したように、電子放出素子10と保護抵抗20とは電子放出部EPを構成している。従って、点P1は、電子放出部EPの上部電極14側に接続線LC1によって接続されていると言うことができる。
端子T6は、接続線L2によりサイリスタ34のカソードKと接続されている。サイリスタ34のアノードAは、接続線L2に直列に挿入された第2抵抗35を介して点P1に接続されている。
端子T5は、第4抵抗37を介してサイリスタ34のゲートGと接続されている。サイリスタ34のカソードKと端子T6の間の点P2は、第4抵抗37とサイリスタ34のゲートGとの間の点P3に、第3抵抗36を介して接続されている。従って、点P3の電位は、端子T6の電位と端子T5の電位を、第3抵抗36及び第4抵抗37からなる分圧回路BCにより分圧した電位となる。
これにより、サイリスタ34のゲートGには、端子T6(二次巻線31bの第2の位置)に現れる交流電圧と端子T5(二次巻線31bの第3の位置)に現れる交流電圧との差の電圧に比例した電圧が印加される。サイリスタ34は、ゲートGの電位がカソードKの電位に対して所定閾値電圧(例えば、0.6(V))以上大きくなるとゲートを開き(以下、「サイリスタゲートがオンする」とも云う。)、この状態においてアノードAとカソードKとの間が順方向にバイアスされたときに導通する(順方向電流を通過せしめる)。
端子T3は、基準接続線である接続線L3と、接続線L3に点P4にて接続された接続線LC2と、により電子放出素子10の下部電極12(電子放出部EPの下部電極12側)に接続されている。点P4は接地されている。
次に、上記のように構成された駆動電圧印加部30の作動について図17乃至図21を参照しながら説明する。なお、以下において、駆動電圧信号Vinは、基準接続線L3(端子T3の電位)を基準の電位としたときの点P1の電位(駆動電圧信号Vin=点P1の電位−点P4の電位)と定義する。
先ず、理解を容易にするために、駆動電圧印加部30から高周波電圧重畳部30Bを省略した回路の作動について説明する。図17は、係る回路の信号波形を示したタイムチャートである。図17において、実線の曲線CL1は駆動電圧信号Vin(この場合、素子端電圧Vkaは駆動電圧信号Vinと略一致する)、破線の曲線CL2は端子T8に現れる第1基本電圧信号Vb1に相当する交流電圧AC210(V)、一点鎖線の曲線CL3は端子T6に現れる第2基本電圧信号Vb2に相当する交流電圧AC50(V)をそれぞれ示している。
いま、時刻t1においてエミッタ部13の上部近傍に電子が蓄積されている状態にあると仮定する。また、時刻t1において、端子T8及び端子T6に現れているAC210(V)及びAC50(V)は、ともに0(V)であると仮定する。従って、AC210(V)及びAC50(V)は、時刻t1以降において0(V)から正弦波状に徐々に増大する。
このとき、素子端電圧Vkaは、0(V)近傍の負の電圧となっている。従って、時刻t1直後において、端子T8の電位は電子放出素子10の上部電極14の電位よりも高いから、ダイオード32は順方向にバイアスされる。これにより、ダイオード32は順方向電流I1の通過を許容する。この結果、点P1には端子T8の電位(端子T8に現れている交流電圧であるAC210(V)の電圧)が付与される。即ち、電子放出部EPの上部電極14側にAC210(V)が付与される(電子放出部EPにAC210(V)が印加される。)。
これにより、端子T8から接続線L1a、L1b及びLC1を介して電子放出部EPへ向い、更に、電子放出部EPから接続線LC2及びL3を介して端子T3に向う電流が流れる。この結果、素子端電圧VkaはAC210(V)に追従するように徐々に増大して行く。なお、実際には、時刻t1から所定の時間が経過するまで、保護抵抗20及び電子放出素子10に流れる電流に応じて素子端電圧VkaはAC210(V)よりも極めて僅かだけ小さい値をとる。
次に、時刻t2になると、AC210(V)は正側のピーク(振幅と同じ大きさの最大値)となる。従って、時刻t2以降においては、点P1の電位(電子放出部EPの上部電極14側の電位)が端子T8の電位より高くなるので、ダイオード32は逆方向にバイアスされる。このため、ダイオード32は非導通(遮断)状態となる。この結果、駆動電圧信号Vinは、AC210(V)とともに変化せず、その時点の値に実質的に維持されるか、あるいは、漏れ電流により徐々に低下する。
また、端子T5を基準としたときの端子T6の電位(以下、「端子T6−T5間の電圧V65」と称呼する。)は、図18の曲線CL4により示したように変化する。また、電圧V65を第3抵抗R3と第4抵抗R4とにより分圧することにより得られる点P2と点P3間の電圧(点P3を基準にした点P2の電位)は、図18の曲線CL5により示したように変化する。これらの電圧は、AC210(V)及びAC50(V)と同期している。点P2と点P3との間の電位差は、サイリスタ34のカソードKとゲートGとの間の電圧である。
また、サイリスタ34は、アノードAとカソードKとの間が順方向にバイアスされている状態にて、ゲートGの電位がカソードKの電位に対して閾値電圧(例えば、0.6(V))以上大きくなるとゲートを開き、導通する。即ち、サイリスタ34は、点P2と点P3間の電圧が所定の絶対値(閾値電圧の絶対値)よりも大きい絶対値を有する負の電圧になったとき、順方向電流を通過させ得るようになる。
従って、商用電源CVが発生する電圧を変圧することにより生成された電圧(AC210(V)及びAC50(V)等)が正の電圧から負の電圧へと変化する時刻t3を過ぎて時刻t4になり、点P2と点P3間の電圧が負の閾値電圧に到達すると、サイリスタゲートをオンさせる信号(以下、「サイリスタゲート・オン信号」と称呼する。)が発生する。
時刻t4にてサイリスタゲート・オン信号が発生したとき、AC50(V)が現れる端子T6の電位は負の電位となっている。一方、電子放出部EPの上部電極14側の電位は正の電位である。従って、サイリスタ34は、順方向にバイアスされているので、順方向電流I2の通過を許容する。これにより、電子放出部EPの上部電極14側である点P1には、端子T6の電位(端子T6に現れている交流電圧であるAC50(V)の電圧)が付与される。換言すると、時刻t4以降において電子放出部EPにAC50(V)が印加されるから、駆動電圧信号VinはAC50(V)に沿って正弦波状に変化することになる。
従って、電子放出部EPから端子T6に向けて接続線LC1及び接続線L2を介して電流が流れる。更に、端子T3から電子放出部EPに向う電流が流れる。この結果、素子端電圧Vkaは時刻t4の直後に急激に0(V)付近にまで低下し、AC50(V)によって負の抗電界電圧Va近傍の電圧となる。これにより、前述した負側分極反転が発生する。そして、負側分極反転が完了すると、電子放出部EPの上部電極14側の電位は、AC50(V)とともに変化するようになる。なお、負側分極反転が完了したときにエミッタ部13への電子の蓄積が実質的に完了する。
時刻t5になると、AC50(V)は負側のピークとなり、時刻t5以降において増大し始める。この結果、端子T6の電位は、点P1の電位(電子放出部EPの上部電極14側の電位)より高くなる。従って、サイリスタ34は逆方向にバイアスされるから、時刻t5以降において電流はサイリスタ34を通過しない。この結果、駆動電圧信号Vinは、AC50(V)とともに変化せず、時刻t5時点の値に実質的に維持される。
時刻t6になると、図18に示したように、点P2と点P3間の電圧が所定の絶対値(閾値電圧の絶対値)よりも小さい絶対値を有する負の電圧になる。従って、時刻t6においてサイリスタゲート・オフ信号が発生する。そして、時刻t7になると、ダイオード32が再び順方向にバイアスされ出し、次いで、時刻t1以降と同様な作動が再開する。以上が、駆動電圧印加部30から高周波電圧重畳部30Bを省略した回路の作動の概略である。
なお、サイリスタ34は、順方向にバイアスされているときにサイリスタゲート・オン信号が入力されると順方向電流の通過を開始させる。この状態においては、サイリスタゲート・オフ信号が入力されても、サイリスタは順方向電流を通過させ続ける(遮断されない)。そして、サイリスタは、逆方向バイアスが加わるか、又は、サイリスタを通過する電流が保持電流以下となったとき遮断され、再び、サイリスタゲート・オン信号が入力されるまでは、一切の電流を遮断するようになる。
駆動電圧印加部30は、実際には、高周波電圧重畳部30Bを備えていて、第1基本電圧信号Vb1(=AC210(V))に、高周波信号発生回路39が発生する高周波電圧信号Vhfを変圧器38によって重畳させている。この重畳される高周波電圧信号Vhfは、図19に示したとおりである。従って、高周波電圧信号Vhfが重畳された第1基本電圧信号Vb1(以下、「高周波重畳第1基本電圧信号」と称呼する。)は、図20の破線の曲線CL2のように変化する。また、サイリスタゲート・オフ信号が発生している期間において、電子放出素子10の上部電極14の電位が高周波重畳第1基本電圧信号より高くなったとき、ダイオード32も逆バイアスとなって非導通状態となる。その結果、上部電極14の電位はその時点の値に維持される。つまり、高周波重畳第1基本電圧信号の極大値が維持される。従って、実際の駆動電圧信号Vinは、図20の実線の曲線CL1のように変化する。
以上の結果、時刻t1から素子端電圧Vkaの絶対値が駆動電圧信号Vinに追従するように徐々に且つ階段状に増大する。これにより、駆動電圧信号Vinと素子端電圧Vkaとの差が大きくならないので、ジュール熱の発生が小さく、無駄に消費される電力の量を小さくすることができる。
更に、図20に示した時刻t10(時刻t1と時刻t2の間の時刻)にて素子端電圧Vkaが正の抗電界電圧Vdの近傍の電圧に到達すると、エミッタ部13の双極子の一部が正側分極反転を開始する。その結果、エミッタ部13の微細貫通孔14a近傍に蓄積されている電子の一部が微細貫通孔14aを通って放出される。しかしながら、駆動電圧信号Vinは極大値をとった後に直ちに極小値へと減少する。このため、素子端電圧Vkaは極大値に維持されるから、エミッタ部13の双極子の正側分極反転が停止し、電子の放出が一旦停止するか、或いは、電子放出量が極めて小さくなる。
その後、僅かな時間が経過して駆動電圧信号Vinが自身の直前の極大値より大きくなると、素子端電圧Vkaも駆動電圧信号Vinとともに増大するので、正側分極反転を完了していない双極子の一部が正側分極反転を開始する。この結果、エミッタ部13の微細貫通孔14a近傍に残存していた電子の一部が微細貫通孔14aを通って放出される。即ち、2回目の電子放出が行われる。
このような電子放出(電子放出量増大)及び放出停止(電子放出量減少)は、図20の破線の円A部内の駆動電圧信号Vinとそれに伴う電子放出量のグラフである図21に示したように、駆動電圧信号Vin(この場合、素子端電圧Vka)が略階段状に増大する毎に繰り返される。換言すると、高周波電圧信号Vhfの各周期に合わせてそれ以前に分極反転(正側分極反転)していない双極子の一部が正側分極反転させられるので、高周波電圧信号Vhfの各周期に合わせて所定量の電子が放出される。そして、駆動電圧信号Vinが最大値となると電子放出は停止する。
このように、本実施形態に係る電子放出装置によれば、一度の電子蓄積動作によってエミッタ部13に蓄積された電子を複数回に分けて放出することができる。従って、一度の電子蓄積動作により多くの電子を蓄積させておいても、電子放出素子に局所的に大きな電流が流れる可能性が小さくなるので、発熱による素子の劣化が回避され、且つ、所定の期間における電子放出量を増大することができる。更に、図43に示した方法のように所定期間Tにおける双極子の反転動作の回数(分極反転動作回数)が増加することなく電子放出量を増大することができるので、素子の分極反転に起因する劣化を抑制することができる。
加えて、時刻t4以降の電子蓄積時において、駆動電圧信号Vinが正弦波状に徐々に減少するから、素子端電圧Vkaも駆動電圧信号Vinに追従するように徐々に変化する。この結果、駆動電圧信号Vinと素子端電圧Vkaとの差が大きくならないので、ジュール熱の発生が小さく、無駄に消費される電力の量を小さくすることができる。更に、上述した異常な発光が発生し難い。
更に、電子の放出時及び蓄積時において、大きなジュール熱が発生しないので、電子放出素子10の温度が高くならない。従って、エミッタ部13の特性が熱により変化してしまうことを回避することができる。更に、電子放出素子10に吸着する物質をガス化してしまうことも回避することができるので、ガス化した物質によるプラズマの発生を抑制することができる。その結果、電子が過度に放出されることや、イオンボンバートメントによる電子放出素子10の損傷を回避することもできる。
加えて、電子を放出させるための高周波重畳第1基本電圧信号が印加され始めた後、その高周波重畳第1基本電圧信号の絶対値は徐々に大きくなる。これにより、エミッタ部13に流れる突入電流の大きさを小さくすることができるとともに、第1基本電圧信号印加によるエミッタ部の正側分極反転完了後における素子端電圧の変化率を小さくすることができる。この結果、突入電流に起因する電子の不要な放出による不要な発光、及び、正側分極反転完了直後の素子電圧の急激な変化に起因する電子の不要な放出による不要な発光が回避され得る。
更に、電子を蓄積させるために第2基本電圧信号Vb2を印加した後であって、エミッタ部13の負側分極反転完了後においても、第2基本電圧信号AC50(V)の絶対値は徐々に増大する。従って、エミッタ部の負側分極反転が完了した後に素子端電圧が急激に変化すること等によるものと推定される不要なタイミングにおける電子放出及びそれに伴う不要な発光を防止することもできる。
また、第1基本電圧信号AC210(V)の振幅(高周波重畳第1基本電圧信号の振幅)は第2基本電圧信号AC50(V)の振幅より大きい。これにより、図7に示したような電子放出素子10のQ−V特性に応じた駆動電圧を付与することができる。従って、第1及び第2基本電圧信号の振幅を等しくしたときのように第1及び第2基本電圧信号の何れかの電圧が必要以上に大きくなって電力が無駄に消費されること、或いは、何れかの電圧が必要以上に小さくなって所望量の電子を放出できないこと、といった不具合を回避することができる。
また、駆動電圧印加部30は、高周波重畳第1基本信号及び第2基本電圧信号の電子放出部EPへの印加状態を切り換えるスイッチング回路30C(スイッチング素子であるサイリスタ34)を備えている。これにより、駆動電圧印加部30の構成が簡素化される。
更に、駆動電圧印加部30は、正弦波状に変化する交流電圧を発生する単一の交流電源(商用電源)CVを使用し、その交流電源が発生する交流電圧を電圧変換することにより第1基本電圧信号Vb1となる電圧AC210(V)及び第2基本電圧信号Vb2となる電圧AC50(V)を生成する変圧器31を備えている。
従って、交流電源を一つだけ用意することにより、振幅が互いに相違し且つ正弦波状に変化する前記第1基本電圧信号Vb1及び前記第2基本電圧信号Vb2を簡単に生成することができる。また、商用電源を電子放出素子の電源として使用することも可能となる。
また、本実施形態においては、スイッチング素子であるサイリスタ34の状態を制御する切換制御信号(サイリスタ34のゲートGとカソードKとの間に付与する電圧)が、単一の交流電源(商用電源)CVが発生する交流電圧AC100(V)に基づいて発生させられている。従って、切換制御信号を生成するための電源が不要である。
更に、駆動電圧印加部30は、前記切換制御信号を、前記単一の交流電源CVが発生する交流電圧と同期した交流電圧(変圧器31により変圧した交流電圧)を抵抗36及び抵抗37を含む分圧回路BCにより分圧することによって形成している。従って、極めて単純な回路で切換制御信号を生成することができる。この結果、駆動電圧印加部30のコストを低減することができる。
更に、駆動電圧印加部30は、単一の変圧器31の二次巻線31bの第2の位置(端子T6)に現れる電圧AC50(V)と二次巻線31bの第3の位置(端子T5)に現れる電圧AC39(V)との差の電圧信号を、前記単一の交流電源が発生する交流電圧信号と同期した交流電圧信号として得ている。このため、余分な電源や変圧器等が不要となるので、より安価な電子放出装置を提供することができる。
なお、分圧回路BCが含む抵抗36及び37の少なくとも一つは、外部からの信号或いは操作により抵抗値を変化するこができる可変抵抗であることが望ましい。これによれば、可変抵抗の抵抗値を変更することにより、高周波重畳第1基本電圧信号と第2基本電圧信号との切換タイミングを簡単な構成で制御することができる。また、切換タイミングを自在に変更できるので、第2基本電圧信号AC50(V)を電子放出部EPに印加している時間を変更できる。その結果、電子放出素子10の電子蓄積時における素子の両端電圧(素子端電圧)を変更することができるから、電子のエミッタ部13の上部への蓄積量を変更でき、もって、電子放出量を制御することができる。また、かかる分圧回路はインダクタやキャパシタを用いて構成されてもよい。上記のように抵抗のみを用いた分圧回路BCは、安定した電圧を生成できる点で好ましい。
なお、以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る駆動電圧印加部30は、エミッタ部13に電子を蓄積させる期間の開始から所定の期間(図17の時点t4から時点t5よりの前の時点までの期間)において第2基本電圧信号Vb2を電子放出部EPに印加し、且つ、エミッタ部13に蓄積されている電子を外部に放出する期間の開始から所定の期間(図17の時点t1から時点t2までの期間)において高周波電圧信号Vhfが重畳された第1基本電圧信号Vb1を電子放出部EPに印加している。
(コレクタ電極の制御)
コレクタ電圧付与回路50は、電子放出が予定される期間においてコレクタ電極18に電圧Vcを付与するようにスイッチ制御回路54を制御し、その他の期間においてコレクタ電極18を接地するようにスイッチ制御回路54を制御する。電子放出が予定される期間の代表例はダイオード32が順方向にバイアスされている期間である。なお、コレクタ電圧付与回路50は、その他の期間においてコレクタ電極18に電圧Vcより小さい電圧を印加するか、コレクタ電極18をフローティング状態へと移行するように構成されていてもよい。このように、コレクタ電極18を接地することによりコレクタ電極18に第2コレクタ電圧V2(V2<Vc)を付与するか、又は、コレクタ電極18をフローティング状態とすることを、「コレクタ電極をオフする。」とも言う。
コレクタ電極18をオフすると、コレクタ電極18は放出された電子を引き寄せる電界を形成しないか或いはそのような電界の強度を小さくする。この結果、不要な電子放出(不要な発光)が回避される。
また、コレクタ電極18に電圧Vcが付与されると、電子放出素子10から放出された電子は、コレクタ電極18により形成される電界によって加速されながら(高いエネルギーが与えられ)上部電極14の上方に進行する。従って、蛍光体19に高いエネルギーをもった電子が照射されるので、大きな輝度が得られる。換言すると、コレクタ電圧Vcが付与されたコレクタ電極18は、放出された電子を引寄せるので、結果として、コレクタ電極18の近傍に必要とされる量の電子が到達する。
なお、蛍光体19の励起実験に基づけば、蛍光体19の過度の発熱を回避して高効率にて蛍光体19を発光させるためには、高周波電圧信号Vhfの周波数は5kHz以上であることが望ましい。また、基本電圧信号(第1基本電圧信号Vb1及び第2基本電圧信号Vb2)の周波数は1kHz以下であることが望ましい。基本電圧信号の周波数が電子放出素子10における消費電力に比例するため、基本電圧信号の周波数はより好ましくは500Hz以下である。更に、一回の電子蓄積動作により蓄積された電子を放出する回数(一回の電子放出期間における電子放出の回数)は10個以上であることが好ましい。これらの事項は、以下に述べる他の実施形態においても適用される。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る電子放出装置について図22を参照しながら説明する。この電子放出装置は、第1実施形態に係る駆動電圧印加部30を駆動電圧印加部60に置換したものである。
駆動電圧印加部60は、基本電圧発生部60A、高周波電圧重畳部60B及び一定の直流電圧(ここではVdc=DC115(V))を発生する直流電源60Cを備えている。
基本電圧発生部60Aは、正弦波状の電圧信号を出力する単一の交流電源(正弦波電圧信号発生交流電源)CVと、変圧器61と、を備えている。交流電源CVは、ここでは商用電源CV(AC100V)である。
変圧器61は、一次巻線61aと二次巻線61bとを備えている。一次巻線61aの両端の端子は、それぞれ端子T1及び端子T2と称呼される。二次巻線61bの両端の端子は、それぞれ端子T3及び端子T4と称呼される。変圧器61は、商用電源CVのAC100Vを所定の変圧比(ここでは、1.31倍)で変圧することにより、端子T4と端子T3の間に基本周波数で基本振幅を有する基本電圧信号Vb(AC131(V))を生成するようになっている。従って、基本電圧信号Vbは、その電圧値が正弦波状に変化する信号である。
高周波電圧重畳部60Bは、高周波信号発生回路62及び高周波重畳用変圧器63を備えている。
高周波信号発生回路62は、高周波電圧信号Vhfを発生するようになっている。高周波電圧信号Vhfは、基本電圧信号Vbの振幅(基本振幅)より小さい振幅を有し且つ基本電圧信号Vbの周波数(基本周波数)よりも高い周波数を有しながら周期的に変化する信号である。この例において、高周波電圧信号Vhfは正弦波の交流電圧信号である。
高周波重畳用変圧器63は、一次巻線63aと二次巻線63bとを備えている。高周波重畳用変圧器63は、一次巻線63aの両端の端子M3,M4に印加される高周波信号発生回路62からの高周波電圧信号Vhfを、電磁誘導効果により所定の変圧比(ここでは、1.0倍)で変圧し、その変圧後の高周波電圧信号Vhfを二次巻線63bの両端の端子M1,M2間に発生するようになっている。
変圧器61の端子T4は高周波重畳用変圧器63の端子M2に第1接続線L1により接続されている。高周波重畳用変圧器63の端子M1は電子放出部EPの上部電極側(保護抵抗20、点P1)に第2接続線L2により接続されている。電子放出部EPの下部電極12側は直流電源60Cの陰極に第3接続線L3及び第4接続線L4により接続されている。第3接続線L3と第4接続線L4との接続点PGは接地されている。直流電源60Cの陽極は変圧器61の端子T3に第5接続線L5により接続されている。
正弦波状に変化する基本電圧信号Vbを発生する基本電圧発生部60Aは、第1接続線L1乃至第5接続線L5からなる接続線(及び変圧器63の二次巻線63b)により電子放出部EPの上部電極側と下部電極側とに接続されていると言うことができる。更に、直流電源60Cは、電子放出部EP(又は電子放出素子10)の上部電極14側の電位(点P1の電位)が下部電極12側の電位(点PGの電位)よりも所定バイアス電圧Vdc(DC115(V))だけ高くなるように、第1接続線L1乃至第5接続線L5からなる接続線に直列に挿入されていると言うことができる。
次に、上記のように構成された駆動電圧印加部60の作動について図23乃至図25を参照しながら説明する。なお、以下において、駆動電圧信号Vinは、点PGの電位(接地電位、直流電源60Cの陰極電位、即ち、電子放出素子10の下部電極12の電位)を基準の電位としたときの点P1の電位(端子M1の電位、即ち、電子放出部EPの上部電極側の電位)と定義する。
先ず、理解を容易にするために、駆動電圧印加部60から高周波電圧重畳部60Bを省略した回路の作動について説明する。図23は、係る回路の信号波形を示したタイムチャートである。図23において、曲線CL1は駆動電圧信号Vin、直線CL2は直流電源60Cの直流信号(バイアス電圧)Vdcである。なお、この場合、素子端電圧Vkaは駆動電圧信号Vinに良く追従し、従って、駆動電圧信号Vinに略一致する。
前述したように、直流電源60Cによって、電子放出部EPの上部電極14側の電位(点P1の電位)は下部電極12側の電位(点PGの電位)よりも所定バイアス電圧Vdc(DC115(V))だけ高められている。その結果、駆動電圧信号Vinは、基本電圧信号Vbの振動中心が0VではなくVdcにシフトされた信号となる。これにより、駆動電圧信号Vinは、基本電圧信号Vbの半周期(時刻t1〜時刻t3)よりも長い時間(時刻t0〜時刻t4)、正の電圧となる。従って、駆動電圧信号Vinは、基本電圧信号Vbの半周期(時刻t1〜時刻t3)よりも短い時間(時刻t4〜時刻t5)、負の電圧となる。この結果、電子放出可能期間Thaは電荷蓄積可能期間Tdよりも長くなる。なお、ここでの電子放出可能期間Thaは、電子放出部EPの上部電極14側の電位が下部電極12側の電位より高くなっている期間であり、電荷蓄積可能期間Tdは上部電極14側の電位が下部電極12側の電位より低くなっている期間である。
駆動電圧印加部60は、実際には、高周波電圧重畳部60Bを備えていて、基本電圧信号Vb(=AC131(V))に、高周波電圧信号Vhfを高周波重畳用変圧器63によって重畳させている。この重畳される高周波電圧信号Vhfは、図24に示したとおりである。従って、高周波電圧信号Vhfが重畳された基本電圧信号Vb(以下、「高周波重畳基本電圧信号」とも称呼する。)、即ち、駆動電圧信号Vinは、図25の曲線CL1のように変化する。
これにより、駆動電圧信号Vinに追従して変化する素子端電圧Vkaが、図25に示した時刻ts(時刻t0と時刻t2の間の時刻)にて正の抗電界電圧Vdの近傍の電圧に到達すると、エミッタ部13の双極子の一部が正側分極反転を開始する。その結果、エミッタ部13の微細貫通孔14a近傍に蓄積されている電子の一部が微細貫通孔14aを通って放出される。しかしながら、駆動電圧信号Vinは極大値をとった後に直ちに極小値へ減少するから、エミッタ部13の双極子の正側分極反転が停止する。その結果、電子の放出が一旦停止する。或いは、正側分極反転する双極子の数が減少する。その結果、電子放出量が極めて小さくなる。
その後、僅かな時間が経過して駆動電圧信号Vinが自身の直前の極大値より大きくなると、素子端電圧Vkaが駆動電圧信号Vinとともに増大するので、正側分極反転を完了していない双極子の一部が正側分極反転を開始する。この結果、エミッタ部13の微細貫通孔14a近傍に残存していた電子の一部が微細貫通孔14aを通って放出される。即ち、2回目の電子放出が行われる。
このような電子放出(又は電子放出量増大)及び放出停止(又は電子放出量減少)は、駆動電圧信号Vinが自身の直前の極大値より大きくなる毎に繰り返される。換言すると、高周波電圧信号Vhfの各周期に合わせてそれ以前に正側分極反転を完了していない双極子の一部が正側分極反転させられるので、高周波電圧信号Vhfの各周期に合わせて所定量の電子が放出される。その後、駆動電圧信号Vinが自身の直前の極大値より大きくならなくなると(極大値が減少を開始すると)電子放出は停止する。換言すると、時刻t2の近傍の時刻teにて駆動電圧信号Vinが最大値に到達した時点以降、電子放出は停止する。このように、時刻ts〜時刻teの実際の電子放出期間Tactにおいて、高周波電圧信号Vhfの各周期に合わせて所定量の電子が放出される。
この実施形態によれば、電子放出可能期間Thaは電荷蓄積可能期間Tdよりも長い。従って、一回の電子蓄積動作により蓄積された電子を放出する回数を増大することができる。この結果、一回の連続した電子放出に係る電子放出量を小さくすることができるので、電子放出素子10及び蛍光体19の発熱量を低減するとともに、蛍光体19による発光を高効率にて行うことが可能となる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る電子放出装置について図26を参照しながら説明する。この電子放出装置は、第2実施形態に係る駆動電圧印加部60を駆動電圧印加部70に置換したものである。
駆動電圧印加部70は、第2実施形態の基本電圧発生部60A、高周波電圧重畳部60B及び直流電源60Cとそれぞれ置換された基本電圧発生部70A、高周波電圧重畳部70B及び直流電源70Cを備える点のみにおいて第2実施形態の駆動電圧印加部60と相違している。各部間の接続関係は、第2実施形態の各部間の接続関係と同一である。
基本電圧発生部70Aは、正弦波状の電圧信号を出力する単一の交流電源(正弦波電圧信号発生交流電源)CVと、変圧器71と、を備えている。交流電源CVは、ここでは商用電源CV(AC100V)である。変圧器71は、一次巻線71aと二次巻線71bとを備えている。変圧器71は、商用電源CVのAC100Vを所定の変圧比(ここでは、1.06倍)で変圧することにより、二次巻線71bの両端の端子T4と端子T3との間に基本周波数で基本振幅を有する基本電圧信号Vb(AC106(V))を発生するようになっている。従って、基本電圧信号Vbは、図27の曲線CL1のように変化する。
高周波電圧重畳部70Bは、高周波信号発生回路72及び高周波重畳用変圧器73を備えている。
高周波信号発生回路72は、図27に示したように、基本電圧信号Vbが略−70(V)となる時刻t0から最大値近傍の略150(V)に至る時刻t1までの間、高周波電圧信号Vhfを発生するようになっている。この高周波電圧信号Vhfは、基本電圧信号Vbの基本周波数より大きい周波数を有する。更に、この高周波電圧信号Vhfの振幅は、基本電圧信号Vbの基本振幅より小さい範囲において時間経過とともに略直線的に増大する。即ち、基本電圧信号Vbの極大値は時間経過とともに徐々に増加する。加えて、この高周波電圧信号Vhfは、時刻t1付近にて発生する最後の波の振幅の正の値(即ち、一連の振動を停止する直前の波の振幅の正の値)が、その波の直前の波の振幅に比べて非常に大きくなるように設定されている信号である。換言すると、高周波電圧信号Vhfの極大値は、最後の波の極大値を除いて所定時間毎に一定の値αだけ増大し、最後の波はその直前の波に対して一定値αよりも大きい値βだけ増大する。
高周波重畳用変圧器73は、一次巻線73aと二次巻線73bとを備えている。高周波重畳用変圧器73は、一次巻線73aの両端の端子M3,M4に印加される高周波信号発生回路72からの高周波電圧信号Vhfを、電磁誘導効果により所定の変圧比(ここでは、1.0倍)で変圧し、その変圧後の高周波電圧信号Vhfを二次巻線73bの両端の端子M1,M2間に発生するようになっている。
直流電源70Cは、一定の直流電圧Vdc(ここではDC80(V))を発生するようになっている。
以上の構成により、駆動電圧信号Vinは、図28の曲線CL1により示したように、振幅中心がバイアス電圧Vdcにシフトされた基本電圧信号Vbに高周波電圧信号Vhfが重畳した信号となる。
この結果、電子放出可能期間Thaは電荷蓄積可能期間Tdよりも長くなる。従って、一回の電子蓄積動作により蓄積された電子を放出する回数を増大することができる。この結果、一回の電子放出量を小さくすることができるので、電子放出素子10及び蛍光体19の発熱量を低減するとともに、蛍光体19による発光を高効率にて行うことが可能となる。
ところで、一度の電子蓄積動作によって蓄積された電子が放出される毎に、正側分極反転していない双極子の数は減少する。従って、第2実施形態においては、高周波電圧信号Vhfの各周期に合わせて放出される電子の量が次第に減少する場合がある。これに対し、本実施形態においては、重畳される高周波電圧信号Vhfの極大値が時間経過とともに増大するから、駆動電圧信号Vinのある時点の極大値がその時点の直前の極大値に比べて十分に大きくなる。従って、各電子放出動作において正側分極反転する双極子の量が減少することを抑制することができる。この結果、各電子放出動作時の電子放出量を略一定に維持するか、或いは、各電子放出動作時の電子放出量の減少を抑制することができる。それゆえ、蛍光体19の発光量を略一定に維持することができる。
更に、高周波電圧信号Vhfの最後の波の極大値は、極めて大きく設定されている。従って、その時点までに正側分極反転していない双極子の総てを正側分極反転せしめることができる。この結果、最後の波により多量の電子が放出される。それゆえ、図28の破線の円A内に示したように、最後の波の発生後から長時間に渡って蛍光体19が強い残光を発生する。従って、基本電圧信号Vbの一周期あたりの発光量(輝度)を大きくすることができる。
なお、この実施形態においても、正弦波状に変化する基本電圧信号Vbを発生する基本電圧発生部70Aは、第1接続線L1乃至第5接続線L5からなる接続線(及び変圧器73の二次巻線73b)により電子放出部EPの上部電極側と下部電極側とに接続されていると言うことができる。更に、直流電源70Cは、電子放出部EPの上部電極14側の電位(点P1の電位)が下部電極12側の電位(点PGの電位)よりも所定バイアス電圧Vdc(DC80(V))だけ高くなるように、第1接続線L1乃至第5接続線L5からなる接続線に直列に挿入されていると言うことができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る電子放出装置について図29を参照しながら説明する。この電子放出装置は、第1実施形態に係る駆動電圧印加部30を駆動電圧印加部80に置換したものである。
駆動電圧印加部80は、駆動電圧印加部30の高周波電圧重畳部30Bを高周波電圧重畳部80Bに置換した点において駆動電圧印加部30と相違している。即ち、駆動電圧印加部80は、基本電圧発生部30A、高周波電圧重畳部80B及びスイッチング回路30Cを備えている。高周波電圧重畳部80Bは、電子放出部EPの下部電極12側に接続されている。以下、主として、駆動電圧印加部80と駆動電圧印加部30との相違点を説明する。
高周波電圧重畳部80Bは、高周波信号発生回路81及び高周波重畳用変圧器82を備えている。
高周波信号発生回路81は、高周波信号発生回路39と同一であり、図19に示した高周波電圧信号Vhfを発生するようになっている。
高周波重畳用変圧器82は、一次巻線82aと二次巻線82bとを備えている。高周波重畳用変圧器82は、一次巻線82aの両端の端子M3,M4に印加される高周波信号発生回路81からの高周波電圧信号Vhfを、電磁誘導効果により所定の変圧比(ここでは、1.0倍)で変圧し、その変圧後の高周波電圧信号Vhfを二次巻線82bの両端の端子M1,M2間に発生するようになっている。
変圧器31の端子T8は接続線L1によりダイオード32のアノードAと接続されている。ダイオード32のカソードKは、接続線L1に直列に挿入された第1抵抗33を介して点P1に接続されている。点P1は接続線LC1により保護抵抗20の一端に接続され、保護抵抗20の他端は電子放出素子10の上部電極14と接続されている。
更に、下部電極12は接続線LD1により高周波重畳用変圧器82の端子M2に接続されている。高周波重畳用変圧器82の端子M1は接続線LD2により点P4に接続されている。点P4は接続線L3により変圧器31の端子T3に接続されている。点P4は接地されている。その他の接続関係は、第1実施形態と同様である。
このように、駆動電圧印加部80は、基本電圧発生部30Aを電子放出部EPの上部電極側(点P1)と下部電極側(点P4)とに接続する接続線(L1,L2,LC1,LD1,LD2,L3)のうちの下部電極側に接続された接続線(LD1及びLD2)上の信号に高周波電圧信号Vhfを重畳させる高周波重畳用変圧器82を含んでいる。この、駆動電圧印加部80は、第1実施形態の駆動電圧印加部30と実質的に同様に作動する。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る電子放出装置について図30を参照しながら説明する。この電子放出装置は、第2実施形態に係る駆動電圧印加部60を駆動電圧印加部100に置換したものである。
駆動電圧印加部100は、駆動電圧印加部60の高周波電圧重畳部60Bを高周波電圧重畳部100Bに置換した点において駆動電圧印加部60と相違している。即ち、駆動電圧印加部100は、基本電圧発生部60A、高周波電圧重畳部100B及び直流電源60Cを備えている。高周波電圧重畳部100Bは、電子放出部EPの下部電極12側に接続されている。
高周波電圧重畳部100Bは、高周波信号発生回路101及び高周波重畳用変圧器102を備えている。
高周波信号発生回路101は、高周波信号発生回路62と同一であり、高周波信号発生回路62が発生する高周波電圧信号Vhfと同一の信号を発生するようになっている。
高周波重畳用変圧器102は、一次巻線102aと二次巻線102bとを備えている。高周波重畳用変圧器102は、一次巻線102aの両端の端子M3,M4に印加される高周波信号発生回路101からの高周波電圧信号Vhfを、電磁誘導効果により所定の変圧比(ここでは、1.0倍)で変圧し、その変圧後の高周波電圧信号Vhfを二次巻線102bの両端の端子M1,M2間に発生するようになっている。
二次巻線102bの端子M2は接続線LD1により接続点PDを介して下部電極12と接続されている。二次巻線102bの端子M1は接続線LD2により接続点PGに接続されている。接続点PGは接地されている。接続点PGは接続線L4により直流電源60Cの陰極に接続されている。直流電源60Cの陽極は接続線L5により変圧器61の端子T3に接続されている。変圧器61の端子T4は接続線L1により接続点P1を介して保護抵抗20に接続されている。
このように、駆動電圧印加部100は、基本電圧発生部60Aを電子放出部EPの上部電極側(点P1)と下部電極側(点PD)とに接続する接続線(L1,LD1,LD2,L4,L5)のうちの下部電極側に接続された接続線(LD1及びLD2)上の信号に高周波電圧信号Vhfを重畳させる高周波重畳用変圧器102を含んでいる。この駆動電圧印加部100は、第2実施形態の駆動電圧印加部60と実質的に同様に作動する。
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態に係る電子放出装置について図31及び図32を参照しながら説明する。この電子放出装置は、第5実施形態に係る駆動電圧印加部100を駆動電圧印加部110に置換したものである。
駆動電圧印加部110は、駆動電圧印加部100の高周波電圧重畳部100Bを高周波電圧重畳部110Bに置換した点において駆動電圧印加部100と相違している。即ち、駆動電圧印加部110は、基本電圧発生部60A、高周波電圧重畳部110B及び直流電源60Cを備えている。以下、主として、高周波電圧重畳部100Bと高周波電圧重畳部110Bとの相違点を説明する。
高周波電圧重畳部110Bの一端は下部電極12に接続点PDを介して接続線LD1により接続されている。高周波電圧重畳部110Bの他端は接続線LD2により接続点PGに接続されている。即ち、高周波電圧重畳部110Bは、下部電極12と点PG(接地点)との間に直列に挿入されている。
高周波電圧重畳部110Bは、図32に示したように、P型MOS−FET111、N型MOS−FET112、制御回路113及びダイオード114を備えている。
MOS−FET111のゲートX1は制御回路113に接続されている。MOS−FET111のドレインX2は接続点Q1を介してMOS−FET112のドレインY2に接続されている。接続点Q1は接続線LE1により接続点Q2に接続され、接続点Q2は接続線LD1により接続点PDを介して電子放出素子10の下部電極12に接続されている。MOS−FET111のソースX3は直流50(V)を出力する図示しない定電圧源(所定の電圧を発生する直流定電圧源)に接続されている。
MOS−FET112のゲートY1は制御回路113に接続されている。MOS−FET112のソースY3は接続線LD2により接続点PGに接続されている。接続点PGは接地されるとともに、接続線L4により直流電源60Cの陰極に接続されている。制御回路113は、後述する所定のタイミングにてゲートX1及びゲートY1に制御信号を出力するようになっている。ダイオード114のアノードAは接続点PG及びMOS−FET112のソースY3に接続されている。ダイオード114のカソードKは接続点Q2に接続されている。
次に、上記のように構成された駆動電圧印加部110の作動について説明する。なお、以下において、駆動電圧信号Vinは、下部電極12の電位(接続点PDの電位)を基準の電位としたときの点P1の電位(駆動電圧信号Vin=点P1の電位−点PDの電位)と定義する。
図32に示した制御回路113は、形成するべき高周波電圧信号Vhfの周期の半分の時間、MOS−FET111を導通状態とするとともにMOS−FET112を非導通状態とするように、ゲートX1及びゲートY1に信号を送る。これにより、点Q2には所定の直流電圧であるDC50(V)が現れる。その後、制御回路113は、高周波電圧信号Vhfの周期の残りの半分の間、MOS−FET111を非導通状態とするとともにMOS−FET112を導通状態とするように、ゲートX1及びゲートY1に信号を送る。これにより、点Q2の電位は接地電位となる。以上によって、高周波電圧信号Vhfの一つのパルスが形成される。
更に、制御回路113は、変圧器61によって形成される基本電圧信号Vbにバイアス電圧Vdc(DC115(V))を加えた電圧信号が0(V)となる時刻t0から最大値に至る時刻t2までの間、上記のパルスを連続的に繰り返し発生する。この結果、図33に示した高周波電圧信号Vhfが形成される。この高周波電圧信号Vhfは、基本電圧信号Vbの基本周波数より大きい周波数を有する矩形波である。高周波電圧信号Vhfの振幅は、基本電圧信号Vbの振幅より小さい。
この高周波電圧信号Vhfは、電子放出素子10の下部電極12に印加される(下部電極12と接地点PGとの間に直列に加えられる。)。従って、駆動電圧印加部110によって電子放出部EPに印加される駆動電圧信号Vinは、図34において曲線CL1により示したように変化する。この結果、図34に示したように、時刻t0から時刻t2までの間、駆動電圧信号Vin及び素子端電圧Vkaは振動しながら増大する。従って、時刻t0より後の時刻tsから時刻t2直前の時刻teまでの期間において、高周波電圧信号Vhfの各周期に合わせて所定量の電子が放出される。
このように、本実施形態は、変圧器によって高周波電圧信号Vhfを基本電圧信号Vbに重畳させるのではなく、電子放出部EPと基本電圧発生部60Aとを接続する閉回路中に高周波電圧信号Vhfを発生する電源110Bを直列に挿入したものである。
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態に係る電子放出装置について図35を参照しながら説明する。この電子放出装置は、第6実施形態に係る駆動電圧印加部110を駆動電圧印加部120に置換したものである。
駆動電圧印加部120は、駆動電圧印加部110の高周波電圧重畳部100Bをスイッチ部120Bに置換した点において駆動電圧印加部110と相違している。即ち、駆動電圧印加部120は、基本電圧発生部60A、スイッチ部120B及び直流電源60Cを備えている。
スイッチ部120Bは、N型MOS−FET121、制御回路122及びダイオード123を備えている。
MOS−FET121のゲートZ1は制御回路122に接続されている。ドレインZ2は、接続線LD1により接続点PDを介して下部電極12と接続されている。ソースZ3は接続線LD2により接続点PGに接続されている。接続点PGは接地されている。接続点PGは接続線L4により直流電源60Cの陰極に接続されている。制御回路122は後述する所定のタイミングにてゲートZ1に制御信号を送るようになっている。ダイオード123のアノードAは接続線L4に接続されている。ダイオード123のカソードKはドレインZ2(接続点PD,即ち下部電極12)に接続されている。その他の接続関係は、第6実施形態と同様である。
このように、駆動電圧印加部120は、基本電圧発生部60Aを電子放出部EPの上部電極側(点P1)と下部電極側(点PD)とに接続する接続線(L1,LD1,LD2,L4,L5)のうちの下部電極側に接続された接続線(LD1及びLD2)に挿入され且つ同接続線を切断した状態(非導通状態)と接続した状態(導通状態)との間で切り換えるスイッチ部120B(121及び122)を備えている。
次に、この実施形態の作動について説明する。制御回路122は、変圧器61によって形成される基本電圧信号Vbにバイアス電圧Vdc(DC115(V))を加えた電圧信号が0(V)となる時刻t0から最大値に至る時刻t2までの間において、複数の所定のタイミングにて瞬間的にMOS−FET121を導通状態にし、直ちに、非導通状態にする。即ち、スイッチ部120Bは、図36に示した矢印のタイミングにてMOS−FET121を僅かな時間だけ導通状態に変更する。このとき、スイッチ部120Bは、時間経過とともに次第に長くなる時間毎にMOS−FET121を導通状態に一時的に変更する。即ち、連続する二つのMOS−FET121オンタイミングの期間(隣合う矢印間の時間間隔)が次第に増大する。但し、二つのMOS−FET121オンタイミングの期間は、基本電圧信号Vbの周期に対して十分に短い。
MOS−FET121が導通状態となっている期間、電子放出部EPには基本電圧信号Vbにバイアス電圧Vdcを加えた駆動電圧信号Vinが印加される。素子端電圧Vkaは、MOS−FET121が導通状態となった直後に駆動電圧信号Vinに一致するように増大する。従って、素子端電圧Vkaは、図36に示したように、基本電圧信号Vbの周波数よりも高い周波数で階段状に増大する。これにより、素子端電圧Vkaが増大する毎に正側分極反転が発生し、電子が放出される。
このように、本実施形態に係る駆動電圧印加部120は、
正弦波状に変化する基本電圧信号Vbを発生する基本電圧発生部60Aと、
基本電圧信号Vbを電子放出部EPに印加するために基本電圧発生部60Aを電子放出部EPの上部電極側(点P1)と下部電極側(点PD)とに接続する接続線(L1,LD1,LD2,L4,L5)と、
それらの接続線に挿入され且つ基本電圧信号Vbの周波数よりも高い周波数でそれらの接続線の少なくとも一つ(LD1及びLD2からなる接続線)を切断した状態と接続した状態との間で切り換えるスイッチ部120Bと、
を備えている。
<第8実施形態>
次に、本発明の第8実施形態に係る電子放出装置について図37及び図38を参照しながら説明する。この電子放出装置は、図29に示した第4実施形態に係る駆動電圧印加部80を駆動電圧印加部90に置換したものである。
駆動電圧印加部90は、駆動電圧印加部80の高周波電圧重畳部80Bをスイッチ部90Bに置換した点において駆動電圧印加部80と相違している。即ち、駆動電圧印加部90は、基本電圧発生部30A、スイッチ部90B及びスイッチング回路30Cを備えている。
スイッチ部90Bの一端は下部電極12に接続線LD1により接続されている。スイッチ部90Bの他端は接続線LD2により点P4に接続されている。即ち、スイッチ部90Bは、下部電極12と点P4(接地点、端子T3との接続点)との間に直列に挿入されている。
スイッチ部90Bは、図38に示したように、N型MOS−FET91、制御回路92及びダイオード93を備えている。
MOS−FET91のゲートY1は制御回路92に接続されている。ドレインY2は、接続線LE1により接続点Q1に接続されている。接続点Q1は接続線LD1により接続点PDを介して下部電極12と接続されている。ソースY3は接続線LE2及び接続線LD2により接続点P4に接続されている。接続点P4は接地されている。接続点P4は接続線L3により端子T3に接続されている。制御回路92は後述する所定のタイミングにてゲートY1に制御信号を送るようになっている。ダイオード93のアノードAは接続線LE2に接続されている。ダイオード93のカソードKはドレインY2(接続点Q1)に接続されている。その他の接続関係は、第4実施形態と同様である。
このように、駆動電圧印加部90は、基本電圧発生部30Aを電子放出部EPの上部電極側(点P1)と下部電極側(点PD)とに接続する接続線(L1,LC1,LD1,LD2,L3)のうちの下部電極側に接続された接続線(LD1及びLD2)に挿入され且つ同接続線を切断した状態(非導通状態)と接続した状態(導通状態)との間で切り換えるスイッチ部90B(MOS−FET91及び制御回路92)を備えている。
次に、この実施形態の作動について説明する。以下において、駆動電圧信号Vinは、下部電極12の電位を基準の電位としたときの点P1の電位(駆動電圧信号Vin=点P1の電位−下部電極12(点PD)の電位)と定義する。制御回路92は、変圧器31によって形成される第1基本電圧信号Vb1(AC210(V))が0(V)となる時刻t1から最大値に至る時刻t2までの間において、所定周期にてMOS−FET91を導通状態にし、その後非導通状態にする。MOS−FET91が導通状態に変更される周波数は、高周波電圧信号Vhfの周波数と考えることができる。
MOS−FET91が導通状態となっている期間、ダイオード32が順方向にバイアスされていると、電子放出部EPには基本電圧信号Vb1が印加される。MOS−FET91が非導通状態となっている期間、素子端電圧VkaはMOS−FET91が非導通状態となった時点の電圧を維持する。従って、係る構成を備えた駆動電圧印加部90によって電子放出部EPに印加される駆動電圧信号Vinは、図39において実線CL1により示したように変化する。
即ち、第1実施形態と同様、時刻t1から時刻t2の間、駆動電圧信号Vin及び素子端電圧Vkaが略階段状に増大する。この結果、図39に示した時刻tsから時刻teまでの期間において、高周波電圧信号Vhfの各周期に合わせて所定量の電子が放出される。
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る電子放出装置は、電子放出期間の開始及び電子蓄積期間の開始において、絶対値が徐々に増大する駆動電圧信号を電子放出部に印加する。従って、消費電力を低減し、電子放出素子の発熱を抑制し、更には、不要な電子放出を回避することができる。
更に、上記第1〜第6実施形態に係る電子放出装置は、正弦波状に変化する基本電圧信号Vb(場合により、第1基本電圧信号Vb1)に、高周波電圧信号Vhfを重畳させている。また、上記第7実施形態及び第8実施形態に係る電子放出装置は、正弦波状に変化する基本電圧信号Vb又はVb1を断続的に電子放出部EPに印加するように、基本電圧信号Vbの発生源(60A、30A)と電子放出部EPとの閉回路を開閉する。これらの結果、一度の電子蓄積動作によってエミッタ部13に蓄積された電子を、複数回に分けて少量ずつ放出することができる。従って、蛍光体19の残光が利用され、蛍光体19から効率よく光を発生することができる。
更に、上記各電子放出装置は、不要な電子の放出が発生する可能性があるときにコレクタ電極をオフし、電子放出が必要な場合にコレクタ電極をオンとする。従って、この電子放出装置は、不要な電子放出を回避しながら、正規に放出された電子に十分なエネルギーを付与することができ、良好な画像を提供し得るディスプレイとなっている。また、仮に上部電極14とコレクタ電極18間がプラズマ状態となったとしても、コレクタ電極18を間欠的にオフとするので、プラズマ状態を消滅させることができる。この結果、プラズマ状態が継続してしまうことによる大発光の連続的発生を回避することができる。
また、集束電極を採用することにより、電子が上部電極から実質的に直上方向に放出されるから、上部電極とコレクタ電極との距離を大きくすることができる。この結果、上部電極とコレクタ電極との間の絶縁破壊を低減或いは回避することができる。更に、上部電極とコレクタ電極との間の絶縁破壊の可能性が低減するから、コレクタ電極18をオンしている期間中においてコレクタ電極18に付与するコレクタ電圧Vcを大きくすることができる。この結果、蛍光体に到達する電子に大きなエネルギーを付与することができるので、ディスプレイの輝度を向上することができる。
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、図40に示したように、電子放出部EPに印加される基本電圧信号Vb(又は、第1基本電圧信号Vb1)が通流する線路上にコイル130を直列に挿入してもよい。これによれば、基本電圧信号をより直線的に増加させることができる。従って、正弦波状の基本電圧信号に高周波電圧信号Vhfを重畳させた場合、駆動電圧信号Vinの極大値の前回値と今回値との差を略一定にすることができる。この結果、高周波電圧信号Vhfの各周期に応じたタイミングで放出される電子の量を略一定に維持することができる。
本発明の第1実施形態に係る電子放出装置の部分断面図である。 図1に示した電子放出装置を異なる平面にて切断した部分断面図である。 図1に示した電子放出装置の部分平面図である。 図1に示した電子放出装置の拡大部分断面図である。 図1に示した上部電極の拡大部分平面図である。 図1に示した電子放出素子の一つの状態を示した図である。 図1に示した電子放出素子の分極−素子端電圧特性(Q−V特性)を示したグラフである。 図1に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。 図1に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。 図1に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。 図1に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。 図1に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。 集束電極を備えない電子放出素子により放出された電子の様子を示した図である。 図1に示した電子放出装置により放出された電子の様子を示した図である。 図1に示した電子放出装置の駆動電圧印加部を概念的に示したブロック図である。 図1に示した電子放出装置の回路図である。 図1に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 図1に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 図1に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 図1に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 図20の一部の波形を拡大して示した図である。 本発明の第2実施形態に係る電子放出装置の回路図である。 図22に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 図22に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 図22に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 本発明の第3実施形態に係る電子放出装置の回路図である。 図26に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 図26に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 本発明の第4実施形態に係る電子放出装置の回路図である。 本発明の第5実施形態に係る電子放出装置の回路図である。 本発明の第6実施形態に係る電子放出装置の回路図である。 図31に示した高周波電圧重畳部の詳細回路図である。 図31に示した高周波電圧重畳部の作動を説明するためのタイムチャートである。 図31に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 本発明の第7実施形態に係る電子放出装置の回路図である。 図35に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 本発明の第8実施形態に係る電子放出装置の回路図である。 図37に示したスイッチ部の詳細回路図である。 図37に示した電子放出装置の駆動電圧印加部の作動を説明するためのタイムチャートである。 本発明の実施形態の変形例に係る電子放出装置の回路図である。 従来の電子放出装置における駆動電圧信号を示したタイムチャートである。 本発明が適用されていない電子放出装置における駆動電圧信号及び放出電子電流を示したタイムチャートである。 本発明が適用されていない電子放出装置における駆動電圧信号及び放出電子電流を示したタイムチャートである。 本発明が適用されていない電子放出装置における駆動電圧信号及び放出電子電流を示したタイムチャートである。
符号の説明
10…電子放出素子、11…基板、12…下部電極、13…エミッタ部、14…上部電極、14a…微細貫通孔、15…絶縁層、16…集束電極、18…コレクタ電極、19…蛍光体、20…保護抵抗、30…駆動電圧印加部、30A…基本電圧発生部、30B…高周波電圧重畳部、30C…スイッチング回路、31…変圧器、32…ダイオード、34…サイリスタ、38…高周波重畳用変圧器、39…高周波信号発生回路、40…集束電極電位付与回路、50…コレクタ電圧付与回路、EP…電子放出部、L1,L2,L3,L4,L5,L1a,L1b,LC1,LC2,LD,LU,LD1,LD2,LE1…接続線。

Claims (16)

  1. 誘電体からなるエミッタ部と、同エミッタ部の下部に形成された下部電極と、同エミッタ部を挟んで同下部電極に対向するように同エミッタ部の上部に形成されるとともに微細貫通孔が複数形成され且つ同微細貫通孔の周部であって同エミッタ部と対向する面が同エミッタ部から所定の距離だけ離間しているように形成されてなる上部電極と、を有し、同上部電極の電位が同下部電極の電位よりも低い場合に同エミッタ部の双極子の負極が同下部電極側に向くように同双極子が反転するのに伴って同エミッタ部に電子を蓄積し、同上部電極の電位が同下部電極の電位よりも高い場合に同エミッタ部の双極子の負極が同上部電極側に向くように同双極子が反転するのに伴って同エミッタ部に蓄積されている電子を前記微細貫通孔を通して外部に放出する電子放出素子を含む電子放出部と、
    前記電子放出部に駆動電圧信号を印加する駆動電圧印加部と、
    を備えた電子放出装置において、
    前記駆動電圧印加部は、
    正弦波状に変化する基本電圧信号を発生する基本電圧発生部と、
    前記基本電圧信号を前記電子放出部に印加するために前記基本電圧発生部を同電子放出部の前記上部電極側と前記下部電極側とに接続する接続線と、
    前記基本電圧信号の振幅より小さい振幅を有し且つ前記基本電圧信号の周波数よりも高い周波数を有しながら周期的に変化する高周波電圧信号を発生するとともに同高周波電圧信号を前記基本電圧信号に重畳させる高周波電圧重畳部と、
    を備えた電子放出装置。
  2. 請求項1に記載の電子放出装置において、
    前記基本電圧発生部は、前記基本電圧信号として第1基本電圧信号と同第1基本電圧信号より振幅の小さい第2基本電圧信号とを発生するように構成され、
    前記高周波電圧重畳部は、前記第1基本電圧信号に前記高周波電圧信号を重畳させるように構成され、
    前記駆動電圧印加部は、更に、切換制御信号に基づいて、前記エミッタ部に電子を蓄積させる期間の開始から所定の期間において前記第2基本電圧信号を前記電子放出部に印加し、且つ、同エミッタ部に蓄積されている電子を外部に放出する期間の開始から所定の期間において前記高周波電圧信号が重畳された前記第1基本電圧信号を同電子放出部に印加するスイッチング素子を備えた電子放出装置。
  3. 請求項2に記載の電子放出装置において、
    前記基本電圧発生部は、正弦波状に変化する交流電圧信号を発生する単一の交流電源に接続され同交流電源が発生する交流電圧信号を電圧変換することにより前記第1基本電圧信号と前記第2基本電圧信号とを生成する変圧器を備えた電子放出装置。
  4. 請求項3に記載の電子放出装置において、
    前記駆動電圧印加部は、前記スイッチング素子への前記切換制御信号を、前記単一の交流電源が発生する交流電圧信号に基づいて発生するように構成された電子放出装置。
  5. 請求項4に記載の電子放出装置において、
    前記駆動電圧印加部は、前記切換制御信号を、前記単一の交流電源が発生する交流電圧信号と同期した交流電圧信号を抵抗を含む分圧回路により分圧することによって形成するように構成された電子放出装置。
  6. 請求項5に記載の電子放出装置において、
    前記分圧回路に含まれる少なくとも一つの抵抗は可変抵抗である電子放出装置。
  7. 請求項1に記載の電子放出装置であって、
    前記駆動電圧印加部は、更に、前記電子放出部の上部電極側の電位が前記電子放出部の下部電極側の電位よりも所定バイアス電圧だけ高くなるように前記接続線に直列に挿入される直流電源を備えた電子放出装置。
  8. 請求項7に記載の電子放出装置において、
    前記基本電圧発生部は、正弦波状に変化する交流電圧信号を発生する単一の交流電源に接続され同交流電源が発生する交流電圧信号を電圧変換することにより二つの端子の間に前記基本電圧信号を発生する変圧器を備えた電子放出装置。
  9. 請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の電子放出装置において、
    前記高周波電圧重畳部は、前記接続線のうちの前記上部電極側に接続された接続線上の信号に前記高周波電圧信号を重畳させる高周波重畳用変圧器を含む電子放出装置。
  10. 請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の電子放出装置において、
    前記高周波電圧重畳部は、前記接続線のうちの前記下部電極側に接続された接続線上の信号に前記高周波電圧信号を重畳させる高周波重畳用変圧器を含む電子放出装置。
  11. 請求項7又は請求項8に記載の電子放出装置において、
    前記高周波電圧重畳部は、前記高周波電圧信号を発生するとともに前記接続線のうちの前記下部電極側に接続された接続線に直列に挿入された高周波重畳用電源を含む電子放出装置。
  12. 請求項1乃至請求項11の何れか一項に記載の電子放出装置において、
    前記高周波電圧重畳部は、前記高周波電圧信号の振幅を次第に増大させるように構成された電子放出装置。
  13. 請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載の電子放出装置において、
    前記高周波電圧重畳部は、前記下部電極の電位に対する前記上部電極の電位である上下電極間電圧が低下し始める時点で発生する前記高周波電圧信号の振幅が、同上下電極間電圧が上昇を開始してから同時点に至るまでの同高周波電圧信号の振幅より大きくなるように同高周波電圧信号を発生する電子放出装置。
  14. 誘電体からなるエミッタ部と、同エミッタ部の下部に形成された下部電極と、同エミッタ部を挟んで同下部電極に対向するように同エミッタ部の上部に形成されるとともに微細貫通孔が複数形成され且つ同微細貫通孔の周部であって同エミッタ部と対向する面が同エミッタ部から所定の距離だけ離間しているように形成されてなる上部電極と、を有し、同上部電極の電位が同下部電極の電位よりも低い場合に同エミッタ部の双極子の負極が同下部電極側に向くように同双極子が反転するのに伴って同エミッタ部に電子を蓄積し、同上部電極の電位が同下部電極の電位よりも高い場合に同エミッタ部の双極子の負極が同上部電極側に向くように同双極子が反転するのに伴って同エミッタ部に蓄積されている電子を前記微細貫通孔を通して外部に放出する電子放出素子を含む電子放出部と、
    前記電子放出部に駆動電圧信号を印加する駆動電圧印加部と、
    を備えた電子放出装置において、
    前記駆動電圧印加部は、
    正弦波状に変化する基本電圧信号を発生する基本電圧発生部と、
    前記基本電圧信号を前記電子放出部に印加するために前記基本電圧発生部を同電子放出部の前記上部電極側と前記下部電極側とに接続する接続線と、
    前記接続線に挿入され且つ前記基本電圧信号の周波数よりも高い周波数で同接続線を切断した状態と接続した状態との間で切り換えるスイッチ部と、
    を備えた電子放出装置。
  15. 請求項1乃至請求項14の何れか一項に記載の電子放出装置において、
    前記電子放出部は、
    前記電子放出素子に直列接続された保護抵抗を含む電子放出装置。
  16. 請求項1乃至請求項15の何れか一項に記載の電子放出装置であって、
    前記上部電極の上部側において同上部電極に対向するように配設され、電子の衝突により発光する蛍光体を更に備えた電子放出装置。
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JP2010503188A (ja) * 2007-10-26 2010-01-28 クムホ エレクトリック インコーポレイテッド 電界放出装置
JP2010175983A (ja) * 2009-01-30 2010-08-12 Noritake Itron Corp 蛍光表示管の駆動方法および蛍光表示管
JP2010181517A (ja) * 2009-02-04 2010-08-19 Noritake Itron Corp 蛍光表示管の駆動方法および蛍光表示管

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