JP2009192064A - 伸縮軸及びこれを使用したステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸方向摺動荷重が大きくなる領域での伸縮軸の伸縮を容易に行うことができる伸縮軸伸縮軸及びこれを使用したステアリング装置を提供する。
【解決手段】雄軸21と雌軸22をトルク伝達可能に且つ軸方向に相対移動可能に嵌合した伸縮軸20において、前記雄軸21及び前記雌軸22間に両者を軸方向に付勢する弾性体35を介装した構成を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、雄軸と雌軸をトルク伝達可能で且つ摺動自在に嵌合した伸縮軸及びこれを使用したステアリング装置に関する。
例えば自動車の操舵機構部の伸縮軸には、自動車が走行する際に発生する軸方向の変位を吸収し、ステアリングホイール上にその変位や振動を伝えない性能が要求される。さらに、運転者が自動車を運転するのに最適なポジションを得るためにステアリングホイールの位置を軸方向に移動し、その位置を調整する機能が要求される。これらの何れの場合にも、伸縮軸は、ガタ音を低減すること、ステアリングホイール上のガタ感を低減すること、及び軸方向の摺動動作時における摺動抵抗を低減することが要求される。
このようなことから、従来、共通の軸の方向に従って相互に相手内を滑動する内側シャフトと外側シャフトの2つの回転結合装置であって、内側シャフトの軸方向溝と外側シャフトの軸方向溝との間にボールを配置し、ボールの各列を弾性軸方向らせんばねによって軌道輪を介して軸直角方向に押圧するようにした2つの滑動シャフトのボール結合装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−50293号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、内側シャフト及び外側シャフト間に配置したボールを弾性軸方向らせんばねによって軌道輪を介して軸直角方向に押圧するようにしているので、ボール列が外側シャフト又は内側シャフトに押圧して外側シャフト及び内側シャフト間のガタツキを防止することができるものであるが、ボール列の転動範囲を超えた範囲で内側シャフト及び外側シャフトの軸長の調整を行う場合には、ボールが転動ではなく滑る範囲となり軸方向摺動荷重が大きくなって摺動抵抗が高くなり、軸長の調整を容易に行うことができないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、軸方向摺動荷重が大きくなる領域での伸縮軸の伸縮を容易に行うことができる伸縮軸及びこれを使用したステアリング装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1に係る伸縮軸は、雄軸と雌軸をトルク伝達可能に且つ軸方向に相対移動可能に嵌合した伸縮軸において、前記雄軸及び前記雌軸間に両者を軸方向に付勢する弾性体を介装したことを特徴としている。
また、請求項2に係る伸縮軸は、請求項1に係る発明において、前記弾性体は前記雄軸及び前記雌軸の摺動抵抗が大きくなる摺動範囲においてのみ当該雄軸及び雌軸を軸方向に付勢するように配設されていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る伸縮軸は、請求項1又は2に係る発明において、前記弾性体と前記雄軸及び前記雌軸の何れか一方との間に弾性体の軸方向及び軸直角への移動を規制する移動規制部材が介装されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項4に係る伸縮軸は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記弾性体はコイルばねで構成され、該コイルばねが前記雄軸の前記雌軸に挿通されていない部位に巻装されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項5に係る伸縮軸は、前記弾性体は、コイルばねで構成され、該コイルばねが前記雌軸内に、前記雄軸の先端部を当該雌軸に対して離間する軸方向に付勢するように配設されていることを特徴としている。
また、請求項6に係るステアリング装置は、ステアリングシャフトに連結されたステアリング用中間軸に請求項1乃至5の何れか1項に記載された伸縮軸を使用したことを特徴としている。
本発明によれば、雄軸と雌軸をトルク伝達可能に且つ軸方向に相対移動可能に嵌合した伸縮軸で、雄軸及び雌軸間に両者を軸方向に付勢する弾性体を介装したので、この弾性体によって摺動抵抗の高い領域での摺動抵抗に抗する弾性力を発生させて、摺動抵抗を軽減することができるという効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の伸縮軸を有するステアリング装置を備えた車両を示す模式的斜視図、図2は本発明の第1の実施形態を示す伸縮軸の収縮状態の側面図、図3は伸縮軸の伸長状態の側面図、図4は伸縮軸の要部を断面とした拡大側面図、図5は図4のA−A線上の断面図、図6は伸縮軸に適用し得る板バネの斜視図である。
図1において、1はステアリング装置であって、このステアリング装置1は車体側に固定されたステアリングコラム2を有し、このステアリングコラム2には、車両後端にステアリングホイール3を装着したステアリングシャフト4が回転自在に支持されている。ステアリングシャフト4の車両前端には、ユニバーサルジョイント5を介して、伸縮可能な中間シャフト6が連結されている。
この中間シャフト6の下端には、ユニバーサルジョイント7を介してラック・ピニオン式のステアリングギヤ機構8が連結され、このステアリングギヤ機構8にはタイロッド9等を介して転舵輪10が連結され、ステアリングホイール3を操舵することにより転舵輪10を転舵することができる。
ここで、中間シャフト6に本発明の実施の形態に係る伸縮軸を用いている。中間シャフト6は、雄軸と雌軸とを嵌合したものであるが、このような中間シャフト6には自動車が走行する際に発生する軸方向の変位を吸収し、ステアリングホイール3上にその変位や振動を伝えない性能が要求される。
この中間シャフト6に適用される伸縮軸には嵌合部のガタ音を低減することと、ステアリングホイール3上のガタ感及び振動を低減することと、軸方向摺動時における摺動抵抗を低減することとが要求される。
中間シャフト6に適用される伸縮軸20は、図2に示すように、トルク伝達可能に且つ軸方向に相対移動可能に嵌合した雄軸21と雌軸22とから構成されている。
雄軸21は、ステアリングホイール3側のカルダン軸継手40(ユニバーサルジョイント5)のヨーク41に連結され、雌軸22は、ステアリングギヤ機構8側のカルダン軸継手42(ユニバーサルジョイント7)のヨーク43に連結されている。ここで、雄軸21及びヨーク41と雌軸22及びヨーク43とは、例えば溶接によって一体に連結されている。
そして、雄軸21のヨーク41に連結された端部と雌軸22のカルダン軸継手40側端部との間における雄軸21即ち雄軸21の雌軸22に挿通されていない部位の回りに弾性体としての円筒状のコイルばね35が介装されている。ここで、コイルばね35は一端が雄軸21の端部即ちヨーク41の端部に溶接等の固着手段で固定され、他端が雌軸22のカルダン軸継手40側端部に同様に溶接等の固着手段で固定されている。
また、コイルばね35は、後述するように雌軸22に対する雄軸21の摺動位置がステアリング装置1に組込んで通常使用する際の通常摺動範囲の中央位置にある状態で自由長となるように設定されている。
また、雄軸21の外周面及び雌軸22の内周面間には、図4及び図5に示すように、円周方向に120度間隔で等配分して設けられた予圧部23と、この予圧部23間の円周方向中央部に同様に周方向に120度間隔で等配分して設けられたトルク伝達部24とが設けられている。
予圧部23は、雄軸21の外周面に、周方向に120度間隔で等配分した断面を略逆台形状とした第1の軸方向溝として3つの転動体用軸方向溝25a〜25cが延在して形成されている。これに対応して雌軸22の内周面にも、周方向に120度間隔で等配分した断面をゴシックアーク形状とした前記転動体用軸方向溝25a〜25cと対をなす転動体軸方向溝26a〜26cが軸方向に延在して形成されている。ここで、雄軸21の転動体用軸方向溝25a〜25cは、外周面から径方向内方に行くに従って順次幅狭となる逆ハの字状のテーパー側面部25dと、これらテーパー側面部25dの内周側を連接する底面部25eとで逆台形状に形成されている。
そして、雄軸21の転動体用軸方向溝25a〜25c内に、板バネ27a〜27cが介装され、これら板バネ27a〜27cと雌軸22の転動体用軸方向溝26a〜26c間に複数のボールを直列に連接させたボール列28a〜28cが介挿されている。これら板バネ27a〜27c及びボール列28a〜28cは、図4に示すように雄軸21の雌軸22内の先端部に嵌合されたスチールなどの金属製のストッパ29と雄軸21の軸方向溝25a〜25cの後端部に形成された外方に突出する段部30とによって保持されている。
ここで、板バネ27a〜27cの夫々は、図5及び図6に示すように、ボール列28a〜28cのボールに2点で接触するボール側接触部27dと、このボール側接触部27dに対して略周方向に所定間隔をおいて離間していると共に雄軸21の軸方向溝25a〜25cのテーパー側面部25dに接触する溝面側接触部27eと、ボール側接触部27dと溝面側接触部27eとを相互に離間する方向に弾性的に付勢する付勢部27fと、軸方向溝25a〜25cの底面部25eに接触する底面部27gとを有している。ここで、付勢部27fは、略U字形状で略円弧状に折れ曲がりした折曲形状を有し、この折曲形状の付勢部27fによって、ボール側接触部27dと溝面側接触部27eとを相互に離間するように弾性的に付勢することができる。
トルク伝達部24は、雄軸21の転動体用軸方向溝25a〜25c間の円周方向中央部に夫々形成された軸方向に延在する断面円弧状のトルク伝達用軸方向溝31a〜31cと、雌軸22の転動体用軸方向溝26a〜26c間の円周方向中央部に形成夫々形成されたトルク伝達用軸方向溝31a〜31cと対をなすトルク伝達用軸方向溝32a〜32cとを有する。
そして、雄軸21の軸方向溝31a〜31cと雌軸22の軸方向溝32a〜32cとの間に、ニードルローラ33a〜33cが雌軸22に対して摺動自在に嵌合されている。これらニードルローラ33a〜33cも雄軸21の先端部に嵌合されたストッパ29と雄軸21の軸方向溝31a〜31cの後端部に形成された外方に突出する段部30とによって保持されている。
そして、雄軸21及び雌軸22は、図4に示すように、雌ボール列28a〜28cが雄軸21のストッパ29及び段部30間の中央位置にある状態を基準位置LBとし、この基準位置LBを中心として、図4においてボール列28a〜28cの左端のボールにストッパ29が当接するまでの移動量Leとボール列28a〜28cの右端のボールに段部30が当接するまでの移動量Lcをとった伸長位置LE及び収縮位置LCとの間が低摺動抵抗の最大摺動範囲Lmaxとして設定され、この最大摺動範囲Lmaxの例えば半分程度の範囲が通常摺動範囲Luとして設定されている。雄軸21及び雌軸22が基準位置LBに位置する状態で、前述したコイルばね35が自由長となり、雄軸21及び雌軸22に弾性力が作用しない状態となる。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
上記構成を有する伸縮軸20では、雄軸21及び雌軸22間に捩じりトルクが付与されていない状態では、板バネ27a〜27cによってボール列28a〜28cをガタ付きのない程度に予圧しているため、雄軸21と雌軸22との間のガタ付きを確実に防止することができると共に、雄軸21と雌軸22とは、ガタ付きのない安定した摺動荷重で軸方向に摺動することができる。このとき、図5に示すように雄軸21の軸方向溝31a〜31c及び雌軸22の軸方向溝32a〜32cとニードルローラ33a〜33cとの間に隙間があり、雄軸21と雌軸22とはトルクが入力されていないときに周方向に微少相対回転可能とされている。そして、ニードルローラ33a〜33cは雄軸21にストッパ29及び段部30によって軸方向に固定されているので、ニードルローラ33a〜33cが雄軸21の軸方向溝31a〜31c又は雌軸22の軸方向溝32a〜32cの内周面或いは両者の内周面の一部に摺接しながら摺動する。
このため、例えば伸縮軸組立工場で、雄軸21を雌軸22内に両者間に予圧部23及びトルク伝達部24を形成するように挿通して組立を完了した伸縮軸20を例えばステアリング装置組立工場に輸送する場合には、伸縮軸20の全長が短い方が輸送コストを下げるために有利であるので、例えば伸縮軸20を最大摺動範囲Lmaxの収縮位置LCを超えて収縮させ、コイルばね35を図2に示すように圧縮状態として、輸送用収容具に所定数の伸縮軸20を収納する。
この伸縮軸20を収容した輸送用収容具をステアリング装置組立工場に輸送し、このステアリング装置組立工場で、輸送用収容具から伸縮軸20を取り出すと、最初は雄軸21のストッパ29とボール列28a〜28cの左端側のボールとの間に移動量Le+Lcが存在するので、コイルばね35の弾性によって復帰し、雄軸21の移動量が移動量Le+Lcに達すると、ストッパ29がボール列28a〜28cの左端側のボールに当接する。この状態となると、ストッパ29がボール列28a〜28cを転動させるのではなく、滑らせながら移動させることになり、摺動抵抗となる軸方向摺動荷重(摩擦力)が大きくなる。しかしながら、コイルばね35で発生する荷重を軸方向摺動荷重より大きくしておくことにより、コイルばね35の発生荷重によって、雄軸21がコイルばね35が自由長となる基準位置LBの近傍まで伸長する。
このように、雄軸21が基準位置LBの近傍まで伸長した状態では、ストッパ29がボール列28a〜28cの左端側のボールに当接している状態であり、前述した図4の最大摺動範囲Lmaxとなっていない。このため、図3に示すように、雄軸21をコイルばね35の発生荷重に抗してボール列28a〜28cの中央のボールが基準位置LBに達するまで伸長させ、この状態で、雄軸21を離すとコイルばね35の復元力によって雄軸21が基準位置LBまで復帰する。このとき、ボール列28a〜28cの右端側のボールが段部30に当接することはないので、雄軸21の軸方向摺動荷重は小さく、コイルばね35で発生する復元力によって基準位置LBに容易に復帰する。
このように、ボール列28a〜28cが正規の位置に復帰して最大摺動範囲Lmaxが確保された伸縮軸20を例えば雄軸21のカルダン軸継手40をステアリングシャフト4に装着し、雌軸22のカルダン軸継手42をステアリングギヤ機構8のピニオン軸に装着することにより、ステアリング装置1を組み立てることができる。このようにステアリング装置1を組み立てが完了した時点では、伸縮軸20の雄軸21及び雌軸22の通常摺動範囲Luは、基準位置LBを中心としてボール列28a〜28cの各ボールが転動可能な最大摺動範囲Lmaxの半分程度に設定されているので、雄軸21及び雌軸22が通常摺動範囲Lu内で伸縮する際に、ボール列28a〜28cが転動することにより軸方向摺動荷重を小さい状態に維持することができる。
このようにして組み立てられたステアリング装置1は、前述したステアリングホイール3に運転者から操舵トルクが付与されていない操舵トルク非伝達時や所定値以下のトルク伝達時には、前述したように、板バネ27a〜27cによってボール列28a〜28cをガタ付きのない程度に予圧しているため、雄軸21と雌軸22との間のガタ付きを確実に防止することができると共に、雄軸21と雌軸22とは、ガタ付きのない安定した摺動荷重で軸方向に摺動することができる。このとき、図5に示すように雄軸21の軸方向溝31a〜31c及び雌軸22の軸方向溝32a〜32cとニードルローラ33a〜33cとの間に隙間があり、雄軸21と雌軸22とはトルクが入力されていないときに周方向に微少相対回転可能とされている。そして、ニードルローラ33a〜33cは雄軸21にストッパ29及び段部30によって軸方向に固定されているので、ニードルローラ33a〜33cが雄軸21の軸方向溝31a〜31c又は雌軸22の軸方向溝32a〜32cの内周面或いは両者の内周面の一部に摺接しながら摺動する。
一方、ステアリングホイール3に運転者から所定値以上の操舵トルクが付与された操舵トルク伝達時には、図5に示すように、雄軸21と雌軸22の間に介装されているニードルローラ33a〜33cがトルク伝達の役割を果たす。例えば、雄軸21からトルクが入力された場合、初期の段階では、板バネ27a〜27cによってボール列28a〜28cに予圧が与えられているので、ガタ付きを防止する。
さらにトルクが増大して行くと、トルク伝達部24のニードルローラ33a〜33cが雄軸21の軸方向溝31a〜31cと雌軸22の軸方向溝32a〜32cの側面に強く接触し、ニードルローラ33a〜33cの方がボール列28a〜28cより反力を強く受け、トルク伝達部24が主にトルクを伝達する。そのため、雄軸21と雌軸22との回転方向ガタを確実に防止すると共に、高剛性の状態でトルクを伝達することができる。このとき、ニードルローラ33a〜33cと軸方向溝31a〜31c及び32a〜32cとは主に軸方向に連続に接触して荷重を受けるので、点接触で荷重を受けるボール列28a〜28cよりも接触圧を低く抑えることができる利点がある。したがって、全列をボール転がり構造とする場合に比べて、下記の利点がある。
・摺動部での減衰能効果が、ボール転がり構造に比べて大きく、振動吸収性能が高い。
・同じトルクを伝達するならば、ニードルローラ33a〜33cの方が接触圧を低く抑えることができるため、トルク伝達部24の軸方向の長さを短くできスペースを有効に使うことができる。
・同じトルクを伝達するならば、ニードルローラ33a〜33cの方が接触圧を低く抑えることができるので、熱処理等によって雌軸22の軸方向溝32a〜32cを硬化させるための熱処理が不要である。
・部品点数を少なくすることができる。
・組立性をよくすることができる。
・組立コストを抑えることができる。
・トルクの伝達を主にトルク伝達部で担っているため、ボール列28a〜28cのボール数を少なくすることができ、コラプスストロークを大きくとることができる。
なお、上記第1の実施形態においては、弾性体として円筒状のコイルばね35を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図7及び図8に示すように、円錐状のコイルばね50を適用することもできる。この場合には、図8に示す密着状態で、隣接するコイルのうち外径が大きいコイル部の内側に外径の小さいコイル部が入り込むことになり、圧縮状態でのコイル長さを短くすることができる。さらには、図示しないが鼓状のコイルばねや樽状のコイルばねを適用することもできる。
次に、本発明の第2の実施形態を図9〜図11について説明する。
この第2の実施形態では、伸縮軸20を収縮させた状態で輸送する場合に、収縮状態を維持することができると共に、この収縮状態から伸長させるときの伸長力を軽減するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、伸縮軸20の通常摺動範囲を確保した状態で、図9に示すように、コイルばね35のヨーク41側の矢先端部は雄軸21に連結したヨーク41の端面に溶接等の固着手段によって連結するが、雌軸22側の矢先端部は雌軸22の端部とは切り離した非連結状態とし、通常摺動範囲で伸縮軸20を最大に収縮させたときに、コイルばね35の雌軸22側の矢先端部が雌軸22の端面に接触しないように自由長が設定されている。
また、コイルばね35の収縮時に発生する発生荷重は、図10及び図11に示すように、伸縮軸20に収縮力を作用させて最大限に収縮させた状態から収縮力を解除して、ストッパ29がボール列28a〜28cの左端側のボールに当接してボール列28a〜28cの各ボールが転動ではなく滑りながら移動する状態となったときの軸方向摺動荷重より小さい荷重に設定されている。
この第2の実施形態によると、伸縮軸20の組立てが完了して、雄軸21と雌軸22とが最大摺動範囲Lmaxにおける基準位置LBにある状態では、図9に示すように、コイルばね35の雌軸22側の矢先端部と雌軸22の端部との間に前述した第1の実施形態における雄軸21の移動量Lcより短いが通常摺動範囲Luの収縮量よりは長い距離Lxが存在するので、前述した第1の実施形態のようにステアリング装置1に伸縮軸20を組付けた状態で、通常摺動範囲Lu内で雄軸21及び雌軸22が相対的に伸縮する場合には、コイルばね35の雌軸22側の矢先部が雌軸22の端面と接触することはなく、雄軸21と雌軸22とがコイルばね35による外力が加えられることなく伸縮することができる。
ところで、前述した第1の実施形態と同様に、組立てが完了した伸縮軸20を最大収縮状態として輸送用収容具に収容してステアリング装置組立て工場に輸送する場合には、コイルばね35を最大収縮位置近傍まで収縮させて輸送用収容具に収容することが伸縮軸20の輸送量を多くして輸送コストを低減する意味で好ましい。
このため、伸縮軸20に収縮力を加えて最大収縮位置までコイルばね35の発生荷重に抗して収縮させると、前述した第1の実施形態と同様に、雄軸21の移動量が移動量Lcを超えたところで、雄軸21の段部30がボール列28a〜28cの右端側のボールに当接することになり、ボール列28a〜28cの各ボールが転動状態から滑り状態に変化することにより、軸方向従動荷重(摩擦力)が増加する。そして、コイルばね35の圧縮量が最大圧縮量に達した状態で、伸縮軸20の長さが最小長さとなる。この状態では、少なくともボール列28a〜28cの右端側のボールとストッパ29との間の距離が移動量Le+Lcとなっている。
この状態で、伸縮軸20に対する収縮力を解除すると、雄軸21のストッパ29がボール列28a〜28cの右端側のボールに当接するまでは、軸方向摺動荷重が小さいのでコイルばね35の発生荷重によって雄軸21が伸長するが、ストッパ29がボール列28a〜28cの右端側のボールに当接する状態となると、ボールが滑ることにより、軸方向摺動荷重が増加し、この軸方向摺動荷重がコイルばね35で発生する発生荷重に達すると、その時点で雄軸21の伸長が停止される。このため、伸縮軸20が、図10に示すように、最大収縮状態よりは長くなるが収縮状態で保持される。
この収縮状態で、伸縮軸20を輸送用収容具に収容する。
その後、輸送用収容具をステアリング装置組立工場に輸送して、ステアリング装置組立工場で、輸送用収容具に収容されている伸縮軸20を取り出すと、上述したように、伸縮軸20はボール列28a〜28cの各ボールが滑ることによる軸方向摺動荷重とコイルばね35で発生する発生荷重とが釣り合った状態で保持されているので、輸送用収容具から伸縮軸20を取り出した状態で、伸縮軸20が不必要に伸長することはなく、輸送用収容具からの取り出し作業を容易に行うことができる。
そして、輸送用収容具から取り出した伸縮軸20をステアリング装置1のステアリングシャフト4及びステアリングギヤ機構8のピニオン軸間に組付ける場合には、前述した第1の実施形態と同様に、雄軸21及び雌軸22を、基準位置LBを超える位置まで相対的に伸長させてから収縮させて、ボール列28a〜28cの中央のボールが基準位置LBとなるように収縮させて、図9の標準長さの状態とする。
このように伸縮軸20を伸長させる際に、図11に示すように、コイルばね35で発生する発生荷重が伸縮軸20を伸長させる際に発生する反力Frとは反対方向に作用して反力Frを弱めるように作用するので、伸縮軸20の伸長を軽い伸長力で行うことができ、伸縮軸20の伸長作業を容易に行うことができる。
因みに、コイルばね35を装着しない従来例の場合には、伸縮軸20を収縮状態から伸長させる際に、図12に示すように、雄軸21のストッパ29がボール列28a〜28cの右端側のボールに当接して、各ボールを滑らせながら移動させる状態となると、伸長力に対する反力となる軸方向摺動荷重が大きくなり、この軸方向摺動荷重より大きな伸長力が必要となり、伸縮軸20をステアリングシャフト4及びステアリングギヤ機構8のピニオン軸間に装着する組付作業が困難となるという問題がある。
これに対して、第2の実施形態では、上述したように、伸縮軸20を収縮状態から伸長させる際に、コイルバネ35によって伸長力に対する反力となる軸方向摺動荷重に抗するばね荷重を発生させるので、伸縮軸20の伸長を容易に行うことができ、ステアリング装置1への組付け作業を容易に行うことができる。
なお、上記第2の実施形態においては、コイルばね35の右端側の矢先部をヨーク41の端面に固定した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、コイルばね35の左端を雌軸22の右端面に溶接等の固着手段によって固定するようにしても、上記と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記第2の実施形態においては、コイルばね35の固定側とは反対側が自由端とされている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ステアリング装置1への組付け完了後に、図13及び図14に示すように、コイルばね35の自由端側に可撓性を有するブッシュ60を固定し、このブッシュ60を雄軸21の外周面に摺動自在に係合させることによりコイルばね35と雄軸21との間のガタツキを防止することが好ましい。この場合、ブッシュ60は、図14(a)及び(b)に示すように、雄軸21の外周面に摺動自在に係合し、雄軸21の外径とコイルばね35の内径との差の厚みを有する円筒体を例えば下半部における半分より下側を所定角度(例えば120°)分切除すると共に、上半部における中央部を所定角度(例えば180°)分切除することにより、左右両端部に雄軸21の外周面に半周を超えて係合する係合部61a,61bが形成され、これら係合部61a,61b間に開口部62が形成された構成とされている。そして、係合部61a及び61bを雄軸21に係合させた状態で、例えば係合部61aの外周面をコイルばね35の左端側矢先部の内周面に接着、溶着等の固着手段で固定されている。この場合、ブッシュ60を上記構成とすることにより、軽量化を図りながらコイルばね35と雄軸21との間のガタツキを確実に防止することができる。
さらに、上記第1及び第2の実施形態においては、雄軸21の回りコイルばね35を配設した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図15に示すように、雌軸22の内部にコイルばね70を配設するようにしてもよい。この場合、コイルばね70は前述した第1の実施形態と同様に両端を雌軸22側のヨーク43の右端及び雄軸21の左端に固定してもよく、また前述した第2の実施形態と同様にコイルばね70の左端又は右端をヨーク43又は雄軸21の左端に固定するようにしてもよい。
さらにまた、上記第1及び第2の実施形態においては、雄軸21及び雌軸22との間に形成したトルク伝達部24をニードルローラ33a〜33cを介在させて構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ニードルローラ33a〜33cを省略して、セレーション又はスプライン結合部とするようにしてもよい。
なおさらに、上記第1及び第2の実施形態においては、雄軸21及び雌軸22との間に、予圧部23とトルク伝達部24とを形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図16に示すように、雄軸21にセレーション軸部81を形成し、雌軸22にセレーション溝部82を形成して、雄軸21及び雌軸22をセレーション結合する場合にも本発明を適用することができ、またセレーション結合に代えてスプライン結合するようにしてもよい。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、予圧部23のボール列28a〜28c及びトルク伝達部24のニードルローラ33a〜33cを夫々3組ずつ設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ボール列及びニードルローラは任意の組数設けることができる他、トルク伝達部24を省略して予圧部23のみで構成することもできる。
さらに、上記第1及び第2の実施形態においては、予圧部23の転動体としてボール列28a〜28cを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、雄軸21及び雌軸22の軸方向に転動する複数のコロを配置したコロ列を適用することもできる。
本発明の伸縮軸を有するステアリング装置を備えた車両を示す模式的斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係るカルダン軸継手付き伸縮軸の収縮状態の側面図である。 図2と同様のカルダン軸継手付き伸縮軸の伸長状態の側面図である。 図2の要部を断面とした拡大側面図である。 図4のA−A線上の拡大断面図である。 伸縮軸に適用し得る板バネを示す斜視図である。 第1の実施形態における変形例を示す伸長状態の側面図である。 第1の実施形態における変形例を示す収縮状態の側面図である。 本発明の第2の実施形態に係るカルダン軸継手付き伸縮軸の側面図である。 本発明の第2の実施形態に係るカルダン軸継手付き伸縮軸の収縮状態におけるバネ発生荷重と軸方向摺動荷重とが釣り合っている状態の側面図である。 本発明の第2の実施形態に係るカルダン軸継手付き伸縮軸の収縮状態で伸長力を作用させた状態の側面図である。 従来のカルダン軸継手付き伸縮軸を示す側面図である。 第2の実施形態の変形例を示す側面図である。 第2の実施形態の変形例に適用し得るブッシュを示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。 本発明の他の実施形態を示す要部を断面とした側面図である。 本発明のさらに他の実施形態を示す要部を断面とした側面図である。
符号の説明
1…ステアリング装置、2…ステアリングコラム、3…ステアリングホイール、4…ステアリングシャフト、5,6…ユニバーサルジョイント、7…中間シャフト、21…雄軸、22…雌軸、23…予圧部、24…トルク伝達部、25a〜15c…軸方向溝、26a〜26c…軸方向溝、27a〜27c…板バネ、28a〜28c…ボール列、31a〜31c…軸方向溝、32a〜32c…軸方向溝、33a〜33c…ニードルローラ、35…コイルばね、40…カルダン軸継手、41…ヨーク、42…カルダン軸継手、43…ヨーク、50…円錐状コイルばね、60…ブッシュ、70…コイルばね、81…セレーション軸部、82…セレーション溝部

Claims (6)

  1. 雄軸と雌軸をトルク伝達可能に且つ軸方向に相対移動可能に嵌合した伸縮軸において、
    前記雄軸及び前記雌軸間に両者を軸方向に付勢する弾性体を介装したことを特徴とする伸縮軸。
  2. 前記弾性体は前記雄軸及び前記雌軸の摺動抵抗が大きくなる摺動範囲においてのみ当該雄軸及び雌軸を軸方向に付勢するように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮軸。
  3. 前記弾性体と前記雄軸及び前記雌軸の何れか一方との間に弾性体の軸方向及び軸直角への移動を規制する移動規制部材が介装されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮軸。
  4. 前記弾性体はコイルばねで構成され、該コイルばねが前記雄軸の前記雌軸に挿通されていない部位に巻装されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の伸縮軸。
  5. 前記弾性体は、コイルばねで構成され、該コイルばねが前記雌軸内に、前記雄軸の先端部を当該雌軸に対して離間する軸方向に付勢するように配設されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の伸縮軸。
  6. ステアリングシャフトに連結されたステアリング用中間軸に請求項1乃至5の何れか1項に記載された伸縮軸を使用したことを特徴とするステアリング装置。
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