JP2009191327A - アルミニウム合金基材の強化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】皮膜の密着力が強く剥離のない非溶融プロセスによってアルミニウム合金基材の表面に強化層を形成し、アルミニウム合金基材の強度を向上させる方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金基材の表面に、前記アルミニウム合金基材よりも高強度を有する準結晶分散合金またはアモルファス分散合金からなる粉末を、コールドスプレー法により固相状態のまま不活性ガスと共に超音速流で基材に衝突させて強化皮膜を形成させ前記アルミニウム合金基材を強化する。
【選択図】図13

Description

本発明は、アルミニウム合金基材の表面に強化皮膜を形成して、そのアルミニウム合金基材の強度を向上させるアルミニウム合金基材の強化方法に関する。
金属基材の表面に強化皮膜を形成して、その金属基材の強度を向上させるために、各種の方法が知られている。例えば、アルミニウム合金ではなく、炭素鋼からなる金属基材の表面の耐腐食性および耐摩耗性を向上させるために、加熱された金属基材の表面に炭素を拡散浸入させる浸炭法や窒素を拡散浸入させるタフトライド法が知られている。
また、アルミニウム合金などの金属表面の強化方法として、金属やセラミクスなどを火炎溶射、プラズマ溶射などの溶射法により母材の表面にコーティングする方法や、有機物質であるプラスチックで被覆する強化プラスチックコーティング法などが採用されている。さらに、ショット材と呼ばれる硬質な小球を、投射装置により加速して噴射させ、被加工部品に高速で衝突させて、金属の表層に高い圧縮残留応力を有する加工領域を導入するショットピーニング、アルミニウムの表面を陽極として主に強酸中で水の電気分解により酸化させて酸化アルミニウム皮膜を形成するアルマイト処理などが知られている。
また、特許文献1には、不活性ガス中でアーク加熱により加熱された基材表面に、セラミクスまたは金属からなる微粉材料を高速度で吹き付けて被覆層を形成する方法が記載されている。
特開昭63−121646号公報
しかし、浸炭法やタフトライド法は、主に炭素鋼からなる母材に適用され、アルミニウム合金などには適用することができない。
また、溶射法は、表面に形成する溶射皮膜と母材との接合が投錨効果による機械的結合によるため密着力が弱く、皮膜のはく離が問題となる。例えば、金属基材の表面に、熱膨張係数の非常に小さいセラミクス等からなる皮膜を溶射で設ける遮熱コーティング等では、熱膨張係数差が大きいことによるはく離が常に問題となっている。さらに、高温化溶融状態で皮膜を形成するため、表面に酸化皮膜の形成、内部に酸化物層の巻き込み、凝固収縮に伴う欠陥が残存する問題がある。
また、プラスチックコーティング法は、耐摩耗性は良好となるが、被覆材料が樹脂であることから耐熱性に劣り、被覆材料が高温劣化するという問題がある。
さらに、ショットピーニングは、表面処理方法の一種であり、完全な皮膜の形成には十分ではなく、高温域では、回復・再結晶に伴う結晶粒の粗大化が生じ、表面強化の効果を持続できない。
また、アルマイト処理は、厚肉の皮膜を形成させることが可能であるが、じん性の低い硬質酸化皮膜のため、耐摩耗性の向上に有効であるものの、部材強度の改善に寄与しない。
さらに、特許文献1に記載の方法は、基本的に加熱された基材表面において、微粉材料を溶融するプロセスであり、溶射法と同様に、表面に酸化皮膜の形成、内部に酸化物層の巻き込み、凝固収縮に伴う欠陥が残存する問題がある。また、この方法は、耐食性、耐摩耗性を向上させることを主眼としており、部材の高強度化を図るものではない。
そこで、本発明の課題は、アルミニウム合金基材の表面に強化皮膜を形成して、そのアルミニウム合金基材の強度を向上させることができるアルミニウム合金基材の強化方法を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、部材の高強度化を図るためには、従来の溶融プロセスによって形成される皮膜に存在する欠陥を抑制する必要があり、また、基材と皮膜の熱膨張の差による密着強度低下およびはく離を抑制する必要があることに着目した。そこで、アルミ合金基材の表面に、微細な準結晶アルミニウムまたはアモルファスを含む高強度アルミニウム合金をコーティングし強化皮膜を形成して基材の高強度化を図るために、コールドスプレー等の非溶融プロセスによって強化皮膜を形成することが有効であることを知見した。また、強化皮膜を形成する高強度アルミニウム合金が、アルミ合金基材との熱膨張差が小さいことで、高温時の強度のみならず耐剥離性も向上することを知見した。
すなわち、前記知見に基づき、請求項1に記載の発明のアルミニウム合金基材の強化方法は、アルミニウム合金基材の表面に強化皮膜を形成するアルミニウム合金基材の強化方法であって、前記強化皮膜が、前記アルミニウム合金基材よりも高強度を有する強化材料を用いて、非溶融プロセスによって形成されることを特徴とする。
本発明において、高強度とは、引張強度、圧縮強度、またはそれらの引張もしくは圧縮の負荷による疲労強度等を含む機械的強度が高いことを言う。
この方法では、アルミニウム合金基材よりも高強度を有する強化材料を用いて非溶融プロセスによって、アルミニウム合金基材の表面に強化皮膜を形成することによって、そのアルミニウム合金基材の強度を向上させることができる。
請求項2に記載の発明は、前記アルミニウム合金基材の強化方法において、前記非溶融プロセスが、コールドスプレーによる前記強化皮膜の形成工程であることを特徴とする。
この方法では、アルミニウム合金基材よりも高強度を有する強化材料を用いてコールドスプレーによって、アルミニウム合金基材の表面に強化皮膜を形成することによって、そのアルミニウム合金基材の強度を向上させることができる。
請求項3に記載の発明は、前記アルミニウム合金基材の強化方法において、前記強化材料が、準結晶分散合金またはアモルファス分散合金であることを特徴とする。
この方法では、準結晶分散合金またはアモルファス分散合金を用いてコールドスプレーによって、アルミニウム合金基材の表面に強化皮膜を形成することによって、そのアルミニウム合金基材の強度を向上させることができる。
本発明の方法によれば、アルミニウム合金基材の表面に非溶融プロセスによってアルミニウム合金基材よりも高強度かつ熱膨張差の小さい材料を用いて強化皮膜を形成して、そのアルミニウム合金基材の強度を向上させることができる。特に、非溶融プロセスであるコールドスプレーによって基材表面に強化皮膜(コーティング)を形成することにより、部材の高強度化が可能となる。さらに、準結晶分散合金またはアモルファス分散合金を用いて強化皮膜を形成することによって、アルミニウム合金基材の強度を向上させることができる。そして、強化が必要な部位に必要な強度を与える強化皮膜を形成することによって、部材の高強度化を低コストで達成することが可能となる。
以下、本発明のアルミニウム合金基材の強化方法(以下、「本発明の方法」という)について詳細に説明する。
本発明の方法は、アルミニウム合金からなる基材の表面に強化皮膜を形成して、そのアルミニウム合金基材を強化する方法である。強化皮膜を形成する部位は、特に制限されず、高強度が要求される必要部位に必要量だけの強化材料を用いて強化皮膜を形成することによって、アルミニウム合金基材からなる部材の高強度化を低コストで達成することが可能となる。
本発明の方法において、基材を構成するアルミニウム合金は、特に制限されず、アルミニウム合金基材からなる部材の形状、使用環境、形態等に応じて適宜選択される。例えば、AC2B、AC4C、AC8C等の汎用の鋳造用アルミニウム合金、ADC1、ADC5、ADC12等の汎用のダイキャスト用アルミニウム合金、あるいは2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系等の汎用の展伸材用アルミニウム合金からなる基材で構成される部材の必要部位に強化皮膜を形成して高強度化を測ることができる。
本発明の方法において、アルミニウム合金基材の表面に形成する強化皮膜は、アルミニウム合金基材より高強度な強化材料で形成される。用いる強化材料は、基材が使用される温度域において、所望の強度を有する材料を用いる。例えば、280℃程度の温度域で使用され、引張強度として200MPa程度の強度が要求される部材を、本発明の方法によって強化される基材で構成する場合には、強化材料として高温強度に優れた準結晶分散合金等を用いることができる。また、使用時に加熱および冷却を伴う環境で使用される部材を構成する基材の場合には、加熱および冷却に伴う熱膨張差に起因するはく離を抑制するために、基材と強化皮膜を形成する強化材料の熱膨張係数が近いことが望ましい。例えば、アルミニウム合金からなる基材に対して、熱膨張係数がアルミニウム合金の1/2以下であるセラミクス、Ti合金、鋼等は不適であり、熱膨張係数が同等である高強度なアルミニウム合金が適している。具体的には、アルミニウム合金からなる基材に対して熱膨張係数の差が±15%以内である強化材料を用いることが好ましい。
さらに、本発明において、250℃〜300℃程度の高温域で使用され、引張強度、圧縮強度、疲労強度等の機械的強度が求められる基材に形成する強化皮膜では、強化材料として、準結晶分散合金またはアモルファス分散合金を用いることが好ましい。これらの準結晶分散合金またはアモルファス分散合金は、非常に微細な準結晶相またはアモルファス相が、マトリクスを構成する合金結晶または過飽和固溶体相中に強化粒子として分散された合金組織を有するものである。例えば、アルミニウム合金からなる準結晶分散粒子またはアモルファス相が、アルミニウム結晶、またはアルミニウムからなる過飽和固溶体相中に強化粒子として分散された合金組織を有するものである。これらの準結晶分散粒子またはアモルファス相は、溶湯からの急冷凝固時に過冷却液体となった溶液から晶出させることができる。このため、準結晶分散合金またはアモルファス分散合金の合金組織は、非常に微細で、かつ高体積率で準結晶分散粒子またはアモルファス相が分散しているため、強化皮膜の強度向上に対する寄与が大きい。また、これらの準結晶分散粒子またはアモルファス相を有する合金組織は、アルミニウム合金としての高温領域(300℃前後)でも安定して存在するため、高温領域でもその特性を維持することができる。この準結晶アルミニウム分散合金の具体例として、特開2006−274311号公報に記載のアルミニウム基合金が挙げられる。
前記準結晶アルミニウム分散合金の具体例として、アルミニウムを主成分とする溶湯が過冷却されてなるアルミニウム基合金であって、溶湯は、準結晶を形成するQ元素と、準結晶の形成を補助するP元素と、溶湯の過冷却状態を安定化させると共に前記準結晶の晶出を遅らせるS元素とを含み、アルミニウム結晶相またはアルミニウム過飽和固溶体相中に、準結晶分散粒子が分散しているアルミニウム基合金が挙げられる。ここで、溶湯は、一般式:Albalabc(Q元素:Mn、Cr、V、Li、Pd、Ruから選択される一種もしくは二種以上の元素、P元素:Fe、Mo、Nb、Cu、Au、Mgから選択される一種もしくは二種以上の元素、S元素:Ti、Co、Zr、Si、Ni、Ge、W、Ca、Sr、Baから選択される一種もしくは二種以上の元素、a、b、cは、原子%で、1≦a≦7、1≦b≦6、0.5≦c≦5、balは、元素Q1、元素Q2、および元素P1以外の残部(bal:Balance)としてアルミニウムを含むことを示す)で示されるものである。
また、アモルファス分散合金の具体例として、アルミニウムを主成分とする合金溶湯が過冷却されてなるアルミニウム基合金であって、前記合金溶湯は、準結晶相を形成可能な元素Q1と、前記準結晶の形成を補助する元素Q2と、前記合金溶湯の過冷却状態を安定化させると共に結晶相の晶出を遅らせる元素P1とを含み、微細な非晶質相と、アルミニウム結晶相もしくはアルミニウムの過飽和固溶体相との混合組織、または非晶質相のみの単相からなるアルミニウム基合金が挙げられる。このアモルファス分散合金は、下記一般式:AlbalQ1aQ2bP1c
(ただし、前記一般式中、Q1は、Mn、Cr、V、およびLiから選択される一種または二種以上の元素であり、Q2は、Fe、Mo、Nb、およびCuから選択される一種または二種以上の元素であり、P1は、Ti、Co、Zr、Si、Ni、Ge、Ca、Sr、Ba、およびWから選択される一種または二種以上の元素であり、a、b、およびcのそれぞれは、原子%を表し、1≦a≦7、1≦b≦7、1≦c≦10、およびc≧0.75(a+b)の関係を満足する正数であり、balは、元素Q1、元素Q2、および元素P1以外の残部(bal:Balance)としてアルミニウムを含むことを示す)
で示される合金溶湯を、冷却速度1×105〜1×107K/secで冷却して得られたアルミニウム基合金であって、微細な非晶質相と、アルミニウム結晶相またはアルミニウムの過飽和固溶体相中との混合組織、または非晶質相のみの単相からなるアルミニウム基合金である。
本発明の方法において、アルミニウム合金基材の表面に形成する強化皮膜は、非溶融プロセスによって形成される。溶射等の溶融・凝固に伴って酸化皮膜の巻き込み、合金組織中の気孔の生成、合金組成のばらつき等の欠陥を生じる溶融プロセスは、不適である。この非溶融プロセスは、良好な内部組織を有する強化皮膜を形成するとともに、強化皮膜と基材の間の強固な接合状態を得ることができる点で、有効である。
この非溶融プロセスの具体例としては、熱間押し出し、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、また、比較的ガス温度の低いコーティングプロセスであるHVOF(高速フレーム溶射)、コールドスプレー等が挙げられる。これらの中でも、所望の量の強化材料の粉末を、基材を選ばず、任意の基材の表面に堆積させて強化皮膜を形成することができる点で、コールドスプレーが好ましい。このコールドスプレーは、強化皮膜を構成する材料からなる粉末を、溶融またはガス化させることなく、不活性ガスと共に超音速流で固相状態のまま基材に衝突させて塑性変形にて皮膜を形成する方法である。例えば、特開2004−76157号公報に記載されている方法が挙げられる。
図1は、コールドスプレー法を説明する概念図である。
図1に示すとおり、コールドスプレー法においては、コールドスプレーガン1のチャンバ3内に、粉末導入口4から強化皮膜を形成する粉末材料を供給する。そして、加熱ガス導入口5から常温〜900℃程度の不活性ガスを、0.5〜5.0MPa程度の高圧で導入する。チャンバ3内からノズル2の絞り部に向けて圧縮された不活性ガスは、ノズル先端に向けて膨張・加速しながら粉末粒子Pを不活性ガスとともに、超高速で、ノズル2の噴出口6の前に載置された基材Wの表面に吹き付ける。これによって、基材Wの表面に皮膜Mが成膜され、強化皮膜を形成することができる。
このコールドスプレー法による強化皮膜の形成においては、強化材料の粉末を、非溶融状態でかつ酸素を遮断した状態で基材の表面に衝突させて、粉末粒子の塑性変形によって、基材表面に強化材料からなる強化皮膜が形成される。そして、形成される強化皮膜の表面や内部に溶融プロセスである溶射皮膜に見られる(酸化皮膜の巻き込み、合金組織中の気孔の生成、合金組成のばらつき等の)欠陥はほとんど存在しない。さらに、基材と強化皮膜の密着形態は、溶射層のように投錨効果によるものではなく、粉末と基材の間の塑性変形に伴う金属結合を主としており、高い密着強度が期待できる。
本発明の方法において、アルミニウム合金基材の表面に強化皮膜を形成することによって、以下の(1)力学的効果および(2)応力分担効果によって、基材の高強度化が達成できる、と考えられる。
(1)力学的効果
図2(a)に示すように、半無限板21の直線縁に垂直な長さaの表面亀裂22と、同じ板の内部にある長さaの内部亀裂(中央亀裂)23について、破壊応力σfを、破壊靱性Kcを用いて比較すると、表面亀裂の応力拡大係数は、以下の式で表される。
ここで、M=1.12を表面の補正係数という。
次に、内部亀裂が直線縁から十分離れているものとすれば、同じ長さの亀裂が試験片の表面と内部に存在する場合の破壊応力は、それぞれ下記式の分母と分子となり、これらの比を取ると、下記のとおり1.59となる。
これは、内部亀裂の破壊応力は、表面亀裂に対し1.59倍高くなることを意味する。つまり、表面に存在する亀裂や欠陥を除去することは、破壊強度の大幅な増大をもたらす、と考えられる。言い換えれば、破壊強度の高い強化皮膜で基材表面を被覆すれば、基材全体を高強度化することが可能になる、と考えられる。
(2)応力分担効果
図2(b)に示すように、実用部材では、部材表面に応力勾配、ひずみ勾配等による応力集中が生じており、表層部は内部より高い応力状態にある。この表層部の高い応力勾配を高強度の強化皮膜でカバーできれば、部材としての許容応力を向上させることが可能になる、と考えられる。
そこで、本発明の方法においては、前記の(1)力学的効果、および(2)応力分担効果の2つの効果を考慮して、アルミニウム合金基材の表面に、基材を構成するアルミニウム合金よりも高強度を有する材料からなる強化皮膜を形成することによって、基材の強度向上が可能となる、と考えられる。
そして、本発明の方法においては、非溶融プロセスによって、準結晶分散合金またはアモルファス分散合金からなる強化材料の粉末を、高強度を維持する合金組織のまま、基材表面に堆積させて強化皮膜を形成することによって、欠陥の少ない高品質な皮膜とすることができる。これによって、準結晶分散合金またはアモルファス分散合金からなる強化材料の高強度を活かして、アルミニウム合金基材からなる部材の高強度化を図ることが可能となる。
以下、本発明の実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
準結晶アルミニウム合金粉末の作製
表1に示す成分組成(原子比)の母合金1〜3を高周波溶解炉で溶製した後、各母合金1〜3を、窒素雰囲気中で、高圧水アトマイズ法(水噴霧圧:5MPa、温度:1200℃)によって急冷して凝固させ、準結晶アルミニウム合金粉末1〜3を作製した。得られた準結晶アルミニウム合金粉末1〜3の平均粒径は約15μmであった。
図3に、得られた準結晶アルミニウム合金粉末1〜3について測定したX線回折スペクトルを示す。図3から、得られた準結晶アルミニウム合金粉末1〜3は、fcc(面心立方格子)構造の微細なアルミニウム結晶相と、微細な正20面体準結晶相とを含む混相組織を有することが分かった。図3において、(111)、(200)、(220)、(311)で示すピークはfcc構造のAl結晶に由来するピークであり、(211111)、(221001)で示すピークは正20面体準結晶相に由来するものである。この図3に示す各ピークの解析より、得られた準結晶アルミニウム合金粉末1〜3が含む準結晶アルミニウム合金相はAl/Cr/Fe=80/13.5/6.5(原子比)の組成であることが分かった。
図4に、準結晶アルミニウム合金粉末3について、昇温速度:40K/分で行った示差走査熱分析の結果を示す。図4に示すように、440℃で立ち上がる発熱ピークが確認できる。この発熱ピークは、準結晶相の分解による発熱反応に由来するものである。したがって、得られた準結晶アルミニウム合金粉末の準結晶相の分解温度は440℃であることが分かる。この準結晶相の分解温度:440℃は、アルミニウム合金の使用温度としては非常に高い温度であり、優れた高温機械的特性が期待される。
押し出し成形材の作製
図5に示すとおり、準結晶アルミニウム合金粉末1〜3を、成形機21を用いて4000気圧×5分の成形条件で直径26mm×長さ80mmの円筒状に冷間成形した後、アルミニウム合金製のカプセル(寸法:直径35mm×長さ100mm)22に封入(缶詰)して押し出し用ビレット23を作製した。次に、押出し用ビレット23を加熱して、押出し用ビレット23内のガスを排出させた(脱ガス)。その後、押し出し用ビレット23を電気炉24で400℃に加熱した後、押出機25によって押し出し比11で押し出して固化させ、棒状の押し出し成形材26を得た。この押し出し成形材26を切断して長さ50mmの切断体27を得た。
この押し出し成形材の切断体から試験片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)で、合金組織を観察した。図6(a)、(b)および(c)に、準結晶アルミニウム合金粉末1〜3のそれぞれから得られた押し出し成形材の合金組織を撮影したTEM写真を示す。
また、図7は、準結晶アルミニウム合金粉末3から得られた押し出し成形材の試験片について図6(a)に示す四角形の部分を拡大して撮影した合金組織の拡大写真(倍率:10万倍)である。この図7から、試験片は、アルミニウム合金マトリクス中にアルミニウム合金からなる準結晶(図7中、Al準結晶)が分散した組織を有することが分かる。
さらに、図8は、準結晶アルミニウム合金粉末3から得られた押し出し成形材の試験片について測定された制限視野電子線回折(SAD)像である。
これらのTEM写真(図6(a),(b),(c)、図7)および制限視野電子線回折像(図8)の解析結果から、合金組織中に析出している微細粒子は、制限視野電子線回折(SAD)パターンが典型的な2回対称パターンを示していることから、正20面体準結晶相であることが確認できた。また、マトリクスはアルミ過飽和固溶体相であった。
以上の解析結果から、押し出し成形材の組織は、微細な準結晶がアルミニウム合金マトリクス中に分散している構造をもつことが明らかとなった。
次に、上記の押出し成形材より採取した試験片に対して引張試験を実施した。引張試験結果を表2に示す。
また、比較材として、アルミニウム鋳物合金であるAC2B−T6材の試験結果を表3に示す。
これらの表2および表3に示すデータをグラフ化したものを図9に示す。準結晶分散アルミ合金からなる押し出し成形材の強度は、常温から高温に至るまで汎用アルミ合金(AC2B−T6材)を大きく上回っていることが分かる。
さらに、上記の押出し成形材より採取した試験片について、熱膨張率および熱膨張係数を測定した結果を表4に示す。
表4に示すデータをグラフ化したものを図10に示す。準結晶アルミニウム合金粉末1〜3から得られた押し出し成形材の熱膨張係数は、汎用アルミニウム合金であるAC2B−T6材より高強度な鋼、Ti合金、セラミクス等と比較して、汎用アルミニウム合金(図10中、Alと表記)の値に近いことが分かる。また、図10に示すとおり、準結晶アルミニウム合金粉末1〜3から得られた押し出し成形材と、汎用アルミニウム合金であるAC2B−T6材との熱膨張係数の差は、15%以内となっている。したがって、準結晶アルミニウム合金粉末1〜3で形成される皮膜は、コーティング層として熱負荷に対するはく離の観点で他の合金(例えば、鋼、チタン合金、セラミックス等)より優れていることが分かる。
コールドスプレー
前記の準結晶分散アルミニウム合金粉末3を用いて、図1に示すコールドスプレー装置を用いて、表5に示すコールドスプレー条件で、AC2B−T6からなる基材の表面に強化皮膜を形成した。
図11(a)に、基材表面に形成された準結晶アルミニウム合金粉末3からなる強化皮膜の断面の光学顕微鏡写真を示す。皮膜内部、および皮膜−基材界面に欠陥は確認できず、緻密な皮膜であることが分かる。
また、図11(b)、強化皮膜の内部を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した結果を示す。その結果、形成された強化皮膜は、図6(a)で示した押し出し成形材と同等の組織を有することが分かる。すなわち、アルミニウム合金マトリクス中に準結晶アルミニウム合金粒子が微細分散しており、コーティング後も構造を保持していることが分かる。
さらに、図12に、強化皮膜のX線回折による構造解析結果を示す。この解析結果からも、形成された強化皮膜は、準結晶アルミニウム合金粉末3と同様に、すなわち、アルミニウム合金マトリクス中に準結晶アルミニウム合金粒子が微細分散した構造を有することが分かる。
さらに、強化皮膜のビッカース硬度を測定した。図13に、強化皮膜の硬度の測定結果を示す。この結果から、強化皮膜の硬度は、押し出し成形材より高くなっており、これは準結晶アルミニウム合金粉末の堆積時の塑性変形によりマトリクスが加工硬化していることに起因する、と考えられる。そのため、強化皮膜は、押し出し成形材より高強度である、と推測される。
高温疲労強度評価
前記の強化皮膜を有する基材について、高温疲労強度試験を実施した。
まず、図14に示すように、両端に側端部32,33(長さ50mm、軸方向の中心外径12mm)の間に、軸方向の中心外径が7.5mmになるように絞られた絞り部31(長さ:35mm)を有する、AC2B−T6からなる丸棒状の試験片について、絞り部31の外周面と、側端部32,33の一部外周面に、前記のコールドスプレー条件で準結晶アルミニウム合金粉末3からなる強化皮膜(厚さ:250μm)36を形成して、高温疲労試験用の試験体37を作製した。
この試験体37を、表6に示すとおり、250℃の高温下、試験体37の中心軸の方向に沿って引張応力と圧縮応力を低速度で繰り返して加える高温低ひずみ速度における疲労試験を実施した。
この試験は、通常の高サイクル疲労試験と異なり、ひずみ速度が非常に遅く、かつ付加ひずみも基材の塑性域に入る程の高い状態で実施するものである。したがって、通常の高サイクル疲労試験より厳しい条件での評価が可能となる。
また、比較例として、AC2B−T6基材単体からなる試験片(皮膜なし)、および準結晶アルニムウム合金粉末3を、プラズマ溶射によって、同膜厚(250μm)に溶射した試験片の試験結果を併記する。
さらに、図15に、疲労試験結果をグラフにして示す。
強化皮膜を形成していないAC2B−T6基材単体からなる試験片(図15中、「アルミ鋳物合金基材単体」と表記)についての試験結果と比較して、準結晶アルミニウム合金粉末3からなる強化皮膜を有する試験体37(図15中、「コールドスプレーコーティング材」と表記)は、高温疲労強度試験において約3倍の長寿命化を達成していることが分かる。
これに対して、比較例として示したプラズマ溶射によって皮膜を形成した試験片(図15中、「プラズマ溶射コーティング材」と表記)は、前記したように溶融・凝固に伴う欠陥を内包しており、また、合金構造も溶融に伴い準結晶分散構造を維持できなくなっているため、疲労強度が低下している、と推測される。
以上の結果から、コールドスプレーコーティングにより高強度アルミ準結晶分散粉末を汎用アルミ合金からなる基材の表面に被覆して強化皮膜を形成することによって、汎用アルミ合金からなる基材を高強度化することが可能となることが分かった。
コールドスプレーによる強化皮膜の形成方法を説明する概念図である。 (a)および(b)は、本発明の方法によるアルミニウム合金基材の高強度化を説明する概念図である。 製造した準結晶アルミニウム合金粉末について測定したX線回折スペクトルを示す図である。 準結晶アルミニウム合金粉末について示差走査熱分析の結果を示す図である。 押し出し成形材の作製方法を説明する工程図である。 (a)、(b)および(c)は、準結晶アルミニウム合金粉末1〜3のそれぞれから得られた押し出し成形材の合金組織の透過型電子顕微鏡写真である。 図6(a)に示す四角形の部分を拡大して撮影した合金組織の拡大写真である。 準結晶アルミニウム合金粉末からなる押し出し成形材の試験片の制限視野電子線回折(SAD)像である。 引張試験の結果を示すグラフである。 熱膨張率および熱膨張係数を測定した結果を示すグラフである。 (a)は、基材表面に形成された強化皮膜の断面の光学顕微鏡写真、(b)は、強化皮膜の内部を示す透過型電子顕微鏡写真である。 強化皮膜のX線回折による構造解析結果を示す図である。 強化皮膜の硬度の測定結果を示す図である。 高温疲労試験用の試験体を示す図である。 疲労試験結果を示すグラフである。
符号の説明
1 コールドスプレーガン
2 ノズル
3 チャンバ
4 粉末導入口
5 加熱ガス導入口
M 皮膜
W 基材
P 粒子
21 成形機
22 カプセル
23 押し出し用ビレット
24 電気炉
25 押出機
26 押し出し成形材
27 切断体
31 絞り部
32,33 側端部
36 強化皮膜
37 試験体

Claims (3)

  1. アルミニウム合金基材の表面に強化皮膜を形成するアルミニウム合金基材の強化方法であって、前記強化皮膜が、前記アルミニウム合金基材よりも高強度を有する強化材料を用いて、非溶融プロセスによって形成されることを特徴とするアルミニウム合金基材の強化方法。
  2. 前記非溶融プロセスが、コールドスプレーによる前記強化皮膜の形成工程であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金基材の強化方法。
  3. 前記強化材料が、準結晶分散合金またはアモルファス分散合金であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウム合金基材の強化方法。
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