JP2009191325A - 耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼および金属ボルト - Google Patents

耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼および金属ボルト Download PDF

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Abstract

【課題】MoやCo、V等の高価な合金元素を多量に添加することや設備上の制約に起因する製造コストの増加を抑制して、従来のプロセスを用いても製造可能であり、しかも耐遅れ破壊特性に優れた、耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼および金属ボルトを安価に提供すること。
【解決手段】質量%で、C:0.15%以上、0.50%未満、Si:0.2%以下、Mn:1.0%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Ti:0.1%以下、Mo:0.45%以上、1.0%未満、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成であり、焼き入れ後に、70℃〜250℃で焼き戻し処理が施されてなることを特徴とする、耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼を用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は,主に建築関係や自動車、産業機械用部品用の高強度鋼および金属ボルトに関するものであり、特に、現状高価な合金元素が用いられている耐遅れ破壊特性に優れた鋼およびボルトとして好適に利用できる、耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼および金属ボルトに関する。
近年、自動車や建築分野においても高強度化が一段と進み、あらゆる部材における高強度化が指向されてきている。一例としてボルト分野においては、引っ張り強度1000MPaを超える領域においても1200MPa級、1500MPa級と確実に対象強度が増大している。ところで、このように高強度化が進む場合に最も懸念されるのが、遅れ破壊である。
遅れ破壊は環境から侵入する水素が原因であり、鋼の引張強度が1200MPa以上で生じやすく、特にボルトではこの点を勘案して、JISB1186、JISB1051において、上限強度をF10T、F12Tに規定している。これらの鋼にはSCM等が主に用いられている。
更に高強度で耐遅れ破壊にも優れる材料として、マルエージング鋼がまず知られている。これは高い耐食性によって腐食により鋼表面に生じる水素を減らし、耐遅れ破壊特性を確保している。ただしNi含有量が15〜20質量%と高く、低合金鋼と比較して圧倒的に高価であり強度レベルも2000MPaを超えるような超高強度であるため、一般的に使用される強度1200〜1600MPa程度の高強度部材製造用の素材鋼としては用いられない。
そこで、低合金鋼以上の特性で1200〜1600MPa程度の高強度鋼として、マルエージング鋼よりも少ないNi量で低合金鋼以上の耐遅れ破壊特性を狙った鋼が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
また、上記強度範囲での高強度ボルトを対象とした技術も公表されている。焼き戻しマルテンサイト中に多数の微細析出物分散によって、侵入する水素をトラップして無害化して特性を得ようとするものや、多数のTi炭窒物を分散させるようなものが知られている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。
また、鋼の下部組織である旧γ粒径を微細化して耐遅れ破壊特性向上を図る技術もある。これは遅れ破壊がほとんどの場合旧γ粒界でおこるため、その粒界強度を向上させることを狙いとするものである(例えば、特許文献5、特許文献6参照。)。
特開2000−8137号公報 特開2000−144245号公報 特開2003−321743号公報 特許第3426495号公報 特開2001−73064号公報 特開2007−146284号公報
しかし、特許文献1、特許文献2等に記載されている鋼も、少ないとはいえNiが数質量%含有されるものであり、通常の高強度鋼として大量に使用するには、やはりコスト高となる欠点がある。
また、特許文献3、特許文献4参照に記載の鋼は、多数の析出物が必要となり、それらを生み出すためにはある程度の合金成分が必要となる。それらは前述のNiのように高価ではなくとも、CやTi、Nの増量であり、このために成形性(冷間鍛造性)を損なうという問題が生じる。
さらに、特許文献5、特許文献6に記載の鋼の場合には組織を微細化するために特に大きな加工量の圧延が必要となり、現状の設備では製造できるものの大きさが限られるという問題や、高周波焼き入れによる急速加熱が必要になるため、大量に処理するボルトの場合には工業的にコスト高となる等の問題がある。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、MoやCo、V等の高価な合金元素を多量に添加することや設備上の制約に起因する製造コストの増加を抑制して、従来のプロセスを用いても製造可能であり、しかも耐遅れ破壊特性に優れた、耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼および金属ボルトを、安価に提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討をかさねた結果、これを解決する手段を見出した。すなわち、上記の技術やマルエージング鋼のように多量のNiやCoを含有しない成分系の場合であっても、PやSの最大含有量を規定し、C、Si、Mo、B、Tiを適正範囲で添加し、またその後、通常ボルト等の製造ではあまり使用されない70℃〜250℃の低温度域で焼き戻しすることで、強度範囲がおよそ1200〜1800MPaで、高い加工性および耐腐食性を持ち環境から水素が侵入しにくい特性を発現するという知見を得て、本発明を完成させた。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
(1)、質量%で、C:0.15%以上、0.50%未満、Si:0.2%以下、Mn:1.0%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Ti:0.1%以下、Mo:0.45%以上、1.0%未満、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成であり、焼き入れ後に、70℃〜250℃で焼き戻し処理が施されてなることを特徴とする、耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼。
(2)、前記成分組成が、さらに質量%で、Al:1.0%以下、Cr:1.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、V:0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼。
(3)、前記成分組成が、さらに質量%で、W:0.1%以下、Nb:0.1%以下のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼。
(4)、(1)ないし(3)のいずれかに記載の成分組成である鋼を用いてボルトの形状に成形され、該成形された後に焼き入れ焼き戻し処理が施された金属ボルトであって、前記焼き戻しが70℃〜250℃で施されてなることを特徴とする耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい金属ボルト。
本発明によれば、耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が侵入しにくく耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼および金属ボルトを、高価な合金元素を多量に添加することなく、従来のプロセスを用いて安価に製造することができる。
以下に,本発明の詳細を説明する。
まず、本発明における、鋼組成の限定理由について説明する。なお、以下の説明において、成分元素の含有量%は全て質量%を意味するものである。
C:0.15%以上、0.50%未満とする。
Cは必要な強度を確保するために必須の元素であり、0.15%未満では所定の強度確保が難しい。一方で0.50%以上では、後述する本発明の規定温度域で焼き戻した際には、通常使用したい強度域以上の強度となり、また冷間鍛造性が低下する。そこで0.5%を上限とした。なお、より好ましくは0.3%以下であることが望ましい。
Si:0.2%以下とする。
Siは脱酸剤として鋼の溶製時に作用するために、含有させることができる。但し、0.2%を超えると鋼の冷間鍛造性を著しく低下させるので、上限を0.2%とした。
Mn:1.0%以下とする。
Mnは、鋼を溶製時に脱酸剤として作用し、含有させることができる。ただし、1.0%を超えると、熱間圧延時の割れが懸念されるので、上限を1.0%とした。
PおよびS:0.015%以下とする。
P、Sは快削性を求める以外には積極的に添加されることはなく、不可避的に含有される成分である。しかしPは粒界に偏析して粒界強度を低下させ耐遅れ破壊強度を低下させる。またPやSは水素を吸収しやすくする元素である。その量が0.015%を超えると急激に環境から入る水素量が多くなるためそれぞれ上限を0.015%に規定した。なおより好ましくはP、Sとも0.010%以下であることが望ましい。
Mo:0.45%以上、1.0%未満とする。
Moは本発明において、特に重要な元素である。Moは延性を大きく損なうことなく強度を向上させる。また耐腐食性の維持のためにも必要な元素である。そして本発明に最も大きく寄与するのが、外部環境からの水素の入りにくさに関する効果である。本発明者らは、Mo量を変えたΦ8×60mmタブレット状の試験片を酸に所定の時間浸漬した後にガスクロマトグラフィーによる昇温水素分析を行なうことにより、鋼材の水素量分析を実施した。この試験の結果として拡散性水素量という指標が得られるが、この値が大きいほどその鋼材は水素が侵入しやすいことになる。結果を図1に示す。図1によれば、Moが0.4%以下になると顕著に水素量が増加することが分かる。この知見を基に本発明ではMoを0.45%以上に規定した。なお、1.0%以上添加しても強度のそれ以上の向上にならず、コスト高となってしまう。また過剰に添加すると冷間鍛造性も低下する傾向にあるので、上限を1.0%未満とした。
B:0.0005%以上、0.01%以下とする。
Bは、粒界部に濃化して粒界強度向上に寄与する最も重要な元素である。遅れ破壊は主にオーステナイト粒界で発生するものであり、この粒界を強化することは耐遅れ破壊特性の向上に大きく寄与する。そのためには0.0005%以上の含有が必要である。しかし0.01%を超えて含有してもその効果は飽和するので、上記範囲に限定した。
Ti:0.1%以下とする。
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNとなってBの効果が消失することを防止する。この効果を得るためには0.005%以上含有することが好ましいが、0.1%を超えて含有されるとTiNが大量に形成されて、強度や疲労強度の低下を招くため、Tiは0.1%以下とすることが好ましい。
以上が、本発明における基本成分であるが、本発明ではさらに以下に示すAl、Cr、Cu、Ni、Vの中から選んだ1種又は2種以上の成分を含むことが可能である。
Al:1.0%以下とする。
Alは脱酸に有効な元素である。また焼き入れ時のオーステナイト粒成長を抑制することによって、強度の維持に有効な元素である。しかしながら含有量が1.0%を超えて含有させてもその効果は飽和し、コスト上昇を招く不利が生じるだけでなく、冷間鍛造性も低下する。よってAlを添加する場合は、1.0%以下とする。
Cr:1.5%以下とする。
Crは焼き入れ性の向上に有効である。しかし過度に含有すると、炭化物安定効果によって残留炭化物の生成を助長し、強度の低下をまねく。またCrはPやSの粒界偏析をある程度助長すると言われている。従ってCr含有はできる限り低減することが望ましいが、1.5%までは許容できる。なお、焼き入れ性を向上させる作用を発現させるためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Cu:1.0%以下とする。
Cuは焼き入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶して強度を向上させる。しかし1.0%を超えて含有すると熱延時に割れが発生する。そこでCuを添加する場合は、1.0%以下とする。なお、焼き入れ性や強度を向上させる作用を発現させるためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Ni:2.0%以下とする。
Niは焼き入れ性を向上させるのに有効であり、また炭化物の生成を抑制するため、膜状炭化物の粒界への生成を抑制し粒界強度を上げることで強度、遅れ破壊特性の向上に寄与する。ただしNiは非常に高価な元素であり、2%を超えて添加すると鋼材コストが著しく上昇する。そこでNiを添加する場合は、2.0%以下とする。なお、焼き入れ性や強度、遅れ破壊特性を向上させる作用を発現させるためには、0.5%以上含有させることが好ましい。
V:0.5%以下とする。
Vは、鋼中でCと結合し強化元素としての作用が期待される。また焼き戻し軟化抵抗性を向上させる効果もあり、強度向上に寄与する。しかし0.5%を超えて含有してもその効果は飽和するため、Vを添加する場合は、0.5%以下とする。なお、強度を向上させる作用を発現させるためには、0.1%以上含有させることが好ましい。
さらに本発明では、以下に示すW、Nbのうちから選んだ1種または2種を含有することができる。
W:0.1%以下とする。
Wは安定した炭化物を形成し、強化元素として有効である。一方で、0.1%を超えて添加すると冷間鍛造性を低下させるので、Wを添加する場合は0.1%以下とする。
Nb:0.1%以下とする。
Nbは焼き入れ性向上効果のほかに、析出強化元素として強度や靭性の向上に寄与する。この効果を発現させるためには0.005%以上含有させることが好ましい。しかし0.1%を超えて含有しても、その効果は飽和するので、Nbを添加する場合は0.1%以下とする。
以上説明した元素以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。主な不可避的不純物としては、N、Oが挙げられる。これら元素は、N:0.01%以下、O:0.01%以下であれば許容できる。
次に、本発明の高強度ボルトの製造方法を説明する。本発明の高強度ボルトは、上記の成分組成を有する鋼を用い、所定の形状とした素材を、焼き入れ焼き戻しを行なって製造する。
上述の成分を含む鋼は、転炉による溶製で製造されたものでも、真空溶製により製造されたものでも使用できる。鋼塊または連鋳スラブは加熱されて熱間圧延され、酸洗してスケール除去された後に冷間圧延で所定の厚さに整えられる。マルテンサイト組織とするためには焼き入れ、焼き戻しが行われ、例えばボルトの製造が行われる。ボルトを製造する場合は、所定のボルト形状に成形した素材を、焼き入れ焼き戻しを行なって製造することが好ましい。このようにすることで、ボルト形状への成形時には、良好な加工性を維持しつつ、その後の焼き入れ焼き戻し処理で高強度、耐腐食性、および耐遅れ破壊特性を良好とすることができる。
焼き入れ:通常の焼き入れ処理とする。
焼き入れ処理においては、炉加熱焼き入れでも高周波焼き入れでも、通常使用されている方法を用いて焼き入れを行えば、十分効果が発揮できる。例えば、最高温度800℃〜1100℃に加熱し、到達後50〜80℃の油中に焼き入れる方法を用いることができる。
焼き戻し温度:70℃〜250℃とする。
この製造条件が本発明では最も鍵となる部分である。すなわち通常のボルト用鋼等では一般的に使用されない温度域である。しかし本発明の場合には、この温度域とすることで、不必要な炭化物が析出しない。焼き戻し温度を250℃超えとすると、炭化物が析出する。炭化物が析出すると、低pH(ほぼpH2以下)中では、炭化物とマトリックス間に局部電池が生成して、鋼自体の腐食による減量が大きくなる。そこで不必要に炭化物を析出させないために焼き戻し温度を70℃〜250℃とした。さらにこの温度範囲では含有しているBが拡散したり不必要な析出をしたりすることなく、粒界に濃化して粒界の強化に好適に寄与する。そして焼き戻し温度が高くないことで、一定以上の強度レベルおよび耐遅れ破壊特性を維持する。
このように、粒界を強化する組成範囲、水素が入りにくくなる組成範囲、適正な焼き戻し温度の3条件がうまく重畳し、耐腐食性かつ高加工性に優れ環境から水素が入りにくいという特性の発現が可能となるのである。
かくして得られた鋼材は、安価に製造できるにもかかわらず、強度および耐遅れ破壊特性、耐腐食性、鍛造性を有し、高強度を必要とする自動車用高強度ボルトや建築用ボルトへの使用、PC棒鋼等に用いることができる。
表1に示す記号1〜16の鋼を真空溶製にて製造した。これらの鋼を1100℃に加熱して熱間鍛造し直径60mm(Φ60mm)の丸棒とした。その後850℃で1時間ノルマ処理をおこない素材とし、これに以下の熱処理を行い、引張試験、および耐腐食性、環境から入る水素量、冷間鍛造性の評価を行なった。
Figure 2009191325
素材丸棒の1/4dの位置より、引張試験片(JIS5号)の形状を切り出した。この試験片をソルトバス炉で900℃で30分加熱後に油温60℃の中に焼き入れをおこない、その後180℃で30分間の焼き戻しを施して引張試験に供した。引張強度1200MPa以上のものを、高強度として評価した。
耐腐食性および環境から入る水素量の評価は以下の手順で実施した。図2に示すような直径8mm、長さ60mm、表面♯1000仕上げの丸棒形状の円柱状試験片1を丸棒素材の1/4d位置より切り出した。焼き入れ、焼き戻し条件は引張試験片と同じである。この試験片を、15%塩酸溶液(液温度は25℃一定)に溶液を攪拌しながら60分間浸漬した。その後水洗乾燥をおこなった。腐食性評価は浸漬前質量(x)と浸漬後に水洗乾燥した後の質量(y)を測定して、(x)−(y)を腐食減量として求め、0.05g以下を耐腐食性が高いとして評価した。
環境から入る水素量については、上記試験片をガスクロマトグラフィーにて昇温速度200℃/時間で室温から600℃まで加熱をおこない、経時的に分析をおこなった。図3に水素濃度の測定結果の一例を示す。温度300℃以下で観察されるピーク(図3中に矢印で示す。)は拡散性水素と言われ遅れ破壊に影響する水素である。このピーク値の水素量を求めて環境から入った水素量とし、0.1ppm以下を環境から入る水素量が少ないとして評価した。
冷間鍛造性の評価については、図4(a)に示すような直径15mm、高さ22.5mmのタブレットの試験片2を棒材の1/4d位置より、圧延方向に一致するように切り出した。鍛造試験は種々の圧下率で試験片10個(n=10)について圧縮を行い、図4(b)に示す圧縮割れ3の有無にて判断した。図4に示す矢印は、圧縮方向である。各圧縮率での割れ発生率と圧縮率の関係をグラフにプロットし、試験片の50%(5個)が割れる圧縮率をもって、冷間鍛造性とした。この値が大きいほど鍛造性が良いことになり、冷間鍛造性80%以上を良好な冷間鍛造性を有するものとして評価した。
引張強度、腐食性(腐食減量)、環境から入る水素量、冷間鍛造性の結果を表1中に併せて示す。表1より、化学成分と製造方法とが本発明の範囲内である鋼は強度が1200MPa以上の高強度で、耐食性に優れ、環境から入る水素量も少なく、冷間鍛造性ともに優れていることがわかる。
本実施例においては、基本成分に加えて添加する他の成分の効果を調べた。表2に示す成分を含有する記号17〜30の鋼を真空溶製にて製造した。以下の実験手法は実施例1と同様に行い、引張試験、および耐腐食性、環境から入る水素量、冷間鍛造性の評価を行なった。
Figure 2009191325
結果を表2中に併せて示す。Cr、Al、Wが過度に含有されると冷間鍛造性の低下を招き、またCu、Ni、V、Nbについてはその効果が飽和することがわかる。
本実施例においては、表1に示す記号2と同じ成分を有する鋼を用いて、焼き戻し温度の影響を調べた。実施例1と同様にして焼き入れまでおこない、焼き戻し温度を変えた記号2、31〜34について引張試験、および耐腐食性、環境から入る水素量、冷間鍛造性の評価を行なった。実験結果を表3に示す。
Figure 2009191325
焼き戻し温度が250℃を超えると、引張強度、耐腐食性が低下し、環境から入る水素量が増加し、焼き戻し温度が70℃未満であると、冷間鍛造性が低下することがわかる。
本実施例においては、実際にボルトを製造した際の耐遅れ破壊特性について評価した。表1に示す記号2(化学成分および製造方法が本発明の範囲内)、10(Moが本発明の範囲外)の鋼について、実施例1と同じ要領で鍛造丸棒を製造し、1/4d位置より所定の大きさに切断して、冷間鍛造および転造にてM22のボルトに成形加工し、実施例1と同様にソルトバスでの焼き入れおよび180℃での焼き戻しを施した。各供試材よりボルトは30本作成し、鋼板(SS400)に最大荷重まで締め付け、3.5質量%の食塩水を1h吹き付けと2h乾燥とを繰り返す、繰り返し試験を5ヶ月間実施した。その後に30本中の破断したボルト数で評価をおこなった。結果を表4に示す。
Figure 2009191325
本発明のボルトである記号2の鋼を用いたボルトはほとんど破断しない良好な特性を示しているが、記号10の鋼を用いたボルトは、90%が破断した。
Mo量による水素透過量への効果を示すグラフ。 環境から入る水素量を測定する円柱状試験片の説明図。 ガスクロマトグラフィーによる水素濃度分析結果の一例を示すグラフ。 冷間鍛造性の評価試験の説明図。(a)試験開始前の試験片形状、(b)圧縮割れの発生した状態
符号の説明
1 円柱状試験片
2 タブレットの試験片
3 圧縮割れ

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.15%以上、0.50%未満、Si:0.2%以下、Mn:1.0%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Ti:0.1%以下、Mo:0.45%以上、1.0%未満、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成であり、焼き入れ後に、70℃〜250℃で焼き戻し処理が施されてなることを特徴とする、耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼。
  2. 前記成分組成が、さらに質量%で、Al:1.0%以下、Cr:1.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、V:0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼。
  3. 前記成分組成が、さらに質量%で、W:0.1%以下、Nb:0.1%以下のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい高強度鋼。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の成分組成である鋼を用いてボルトの形状に成形され、該成形された後に焼き入れ焼き戻し処理が施された金属ボルトであって、前記焼き戻しが70℃〜250℃で施されてなることを特徴とする耐腐食性および冷間鍛造性に優れ環境から水素が入りにくい金属ボルト。
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