JP2009188007A - 電磁波シールド材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 電磁波シールド材10は、透明基材11上にプライマー層12を介し所定パターンの導電インキ印刷層13が形成され、プライマー層は導電インキ印刷層部分の厚さTaが開口部14の厚さTbよりも大きく、しかも帯電防止剤を含有させヒゲ発生を防ぐ。なお、好ましくは、プライマー層と導電インキ印刷層の界面が交互に入り組んでいたり、プライマー層と導電インキ印刷層との領域中に、プライマー成分と導電インキ成分とが混合している混合領域が存在する。
【選択図】図1
Description
尚、以降、特に所謂印刷法乃至はこれに類する方法を用いてパターン形成する場合に於いては、特に、導電性組成物を導電インキ、パターン形成法を印刷(法)、及びパターン層を印刷層、導電性組成物から成るパターン層を導電インキ印刷層とも呼称し、両者を適宜用いることにする。
(2)透明基材に、導電性粉末を含む導電インキを凹版オフセット印刷して、メッシュパターンの導電インキ印刷層を形成した後、電解めっきして、導電インキ印刷層上にメッシュパターンの金属めっき層を形成した、導電インキに凹版オフセット印刷法を利用する電磁波シールド材(特許文献2)。
(3)紫外線硬化型樹脂に金属微粒子を分散させた無電解めっき触媒インキを凹版のメッシュ状凹部内に充填し、該凹版上に透明基材が圧着された状態のまま版上に於いて紫外線で硬化させて版を賦形型とする形態で透明基材に凹版印刷して、メッシュパターンの触媒インキ印刷層を形成した後、無電解めっきして、触媒インキ印刷層上にメッシュパターンの金属めっき層を形成した、めっき触媒インキに特殊な凹版印刷法を利用する電磁波シールド材(特許文献3)。
また、上記(2)の凹版オフセット印刷法では、インキの転移が直接的ではなく、凹版からオフセット用のゴムブランケットローラを介して透明基材に間接的に転移させ且つブランケットローラ上からインキが転移する際に印圧で押し広げられ、歪む為に、凹版上のパターンが透明基材上で忠実に再現できない為である。
オフセット方式を採用せず、凹版から直接被印刷物上に印刷する様に変更しても、オフセット固有のパターン歪みは解消可能であるが、転移率の低さ、パターン欠落は依然未解決のままで残る。
それは、凹版面の凹部にインキを充填させる際に、充填インキ上面が窪んだ形状となることは依然として不可避の為である。このことに起因する細線のギザや断線等の転移不足や、被印刷物との密着性低下、等の印刷不良の発生を完全に防ぐことは出来なかった。更に、上記(3)の問題点として、そのような方法を適用する為には、触媒インキ、或いは導電インキのバインダー樹脂を紫外線硬化型樹脂で構成する必要があることである。一方で、触媒インキ、或いは導電インキは金属、或いは黒鉛から成る紫外線遮光性の粒子を大量に含む為、凹版凹部内に於いてインキを十分硬化させることが困難となり、硬化が不完全になると設計通りインキは完全には転移し無い。又転移したインキも強度、耐久性も不良となってしまう。
なお、インキを転移させるとき、インキは前記(3)の様に、版上で硬化させ固化させても良いが(インキに対して版を賦形型とする凹版印刷法)、液状のままで転移させても良く(インキに対して版を賦形型としない通常の凹版印刷法)、どらちでもインキ転移性が向上し、前記印刷不良を改善できる。
ただ、前記の如く、一般に導電インキや触媒インキは紫外線遮蔽性が強い為、通常は凹版凹部内のインキは完全には固化せず、多少なりとも流動性を残したまま、転移する場合が多い。
そして後は、図7で説明したように、この凹み106は、予め液状のプライマー層を片面に形成しておいた透明基材を、そのプラマイー層を挟むように凹版に密着させることで、プライマーが凹み106に充填され埋め尽くす。
それは、導電性組成物を用いた導電インキが、凹版の凹部内部から引き抜かれて凹版から離れ被印刷物上に転移して、導電性組成物の所定のパターンのパターン層が形成されるべき部分以外の部分に、つまり非形成部に、液状の導電性組成物が飛び散った「飛散痕」が生じることである。この飛散痕は、パターン層の細線から大よそヒゲ状に形成されるので、以降は「ヒゲ」と称することにする。
ヒゲは、図9(a)の平面図及び図9(b)の断面図でヒゲ15として概念的に示すように、導電性組成物である導電インキによって形成されたパターン層である導電インキ印刷層13に対して、その非形成部である開口部14の領域に発生する。なお、図9(b)の断面図では、透明基材11上のプライマー層の図示は省略してある。
(3)或いは、上記(1)にて、前記プライマー層と前記導電性組成物から成るパターン層との2層を含めた合同領域中に、前記プライマー層に含まれるプライマー成分と、前記導電性組成物から成るパターン層に含まれる導電性組成物成分とが混合している混合領域が存在する、電磁波シールド材。
(2)またプライマー層と導電性組成物から成るパターン層との界面が交互に入り組んだ構造の存在や、プライマー層と導電性組成物から成るパターン層との合同領域中での、プライマー成分と導電性組成物成分との混合領域の存在によって、導電性組成物の転移率や導電性組成物の密着性が更に向上し、前記転移不足や密着不良というパターン形成(印刷)不良をより確実に防げ、印刷法で高精細な導電性組成物から成るパターン層をより確実に実現できる。
参照する図面は、
図1は本発明による電磁波シールド材にて、その一形態にて特徴的断面形状を概念的に示す断面図(a)と、ヒゲ発生が防止された状態を概念的に示す平面図(b)、
図2は導電性組成物から成るパターン層の形態例(形態A:界面が交互に入り組んでいる)を概念的に示す断面図、
図3は導電性組成物から成るパターン層の形態例(形態B−1:混合領域が界面近傍に存在)を概念的に示す断面図、
図4は導電性組成物から成るパターン層の形態例(形態B−2:混合領域が導電インキ印刷層中に存在)を概念的に示す断面図、
図5は本発明による電磁波シールド材の別の形態例(金属箔膜層追加)を示す断面図、
図6は導電性組成物から成るパターン層の断面形状の一態様を概念的に示す断面図、
図7は本発明の電磁波シールド材を製造する際に利用可能なパターン形成法である新規な印刷法をその一態様で説明する概念図、
図8は本発明の電磁波シールド材を製造する際に利用可能なパターン形成法である新規な印刷法の前半部分を説明する別の概念図、
図9はヒゲを概念的に示す平面図(a)と断面図(b)である。
本発明による電磁波シールド材は、基本的に断面形状がその一形態を模式的に拡大断面図で例示する図1(a)の電磁波シールド材10のように、透明基材11上に(固化している)プライマー層12が積層され、該プライマー層12上に、導電性組成物から成るパターン層として、導電性で所定のパターンで印刷形成された導電インキ印刷層13を有し、導電インキ印刷層13部分(直下)のプライマー層12の厚さTaは、開口部14でのプライマー層12の厚さTbよりも厚く、且つ、導電インキ印刷層13が印刷されていない部分であり光透過性を担う開口部14に於けるプライマー層12が帯電防止剤を含有する。その結果、図1(b)の拡大平面図で示す電磁波シールド材10のように、導電インキ印刷層13の非形成部である開口部14にはヒゲが存在しないか、在っても帯電防止剤未含有の場合に比べて少ない。
図9で概念的に示したように、ヒゲ15はパターン層(導電インキ印刷層)13に接続しているものの他に、パターン層から分離しているものも含む。また、パターン層から伸びるヒゲの平面形状は、直線、曲線、折線、これらが複合化された形状(折線化した曲線、分岐した形状など)であり、形状、大きさ、太さ及び長さ等は通常均一ではない。
そして、本発明による電磁波シールド材は、ヒゲ発生が抑制されており、図1(b)で概念的に示す平面図のようにヒゲがないか、在ってもプライマー層が帯電防止剤を含有していない場合に比べて少なくなっている。ヒゲは導電インキが凹版凹部内から引き抜かれる離版時に飛散することによって生じるが、プライマー層中に帯電防止剤を含有させることで、ヒゲ発生が抑制されることから、前述の如く、前記飛散の原因は、透明基材が版から離れる際の剥離帯電が原因であると考えれる。
透明基材11は、少なくとも可視領域で透明な基材が使用可能であり、可視領域での光透過性、耐熱性、機械的強度、或いは更に電離放射線透過性等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚さを適宜選択すればよく、ガラス、セラミックス等の透明無機物の板、或いは樹脂板など剛直物でも良いが、生産性に優れるロールツーロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。このような要求性能を満たす材料は、通常、電気絶縁体となる。
尚、ロールツーロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、而かる後、巻取に巻き取って保管する加工形態をいう。
樹脂フィルムの樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムは耐熱性、機械的強度、光透過性、電離放射線透過性、コスト等の点で好ましい透明基材である。
透明基材の厚さは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。
このように、透明基材には通常、なるべく耐熱温度が高いものが好ましいが、電磁波シールド材の製造に必要な処理温度や用いる冷却方法、及びコストなどから適宜適したものを選択すれば良い。
また、透明基材は、その表面に、コロナ放電処理、本発明固有のプライマー層12とは異なる材料・形成法による易接着プライマー処理(例えば下地層形成も含む)などの公知の易接着処理を行ったものでも良い。また、下地層には、密着性改善以外に、耐久性改善、印刷品質改善、耐熱性改善等の各種機能を持たせても良い。
プライマー層12は帯電防止剤を必須成分として含有する層であるが、元々の主目的が導電インキ印刷層を印刷形成時に、版から被印刷物へのインキ転移性を向上させ、転移後のインキと被印刷物とのインキ密着性を向上させる為の層である。また、基本的機能として、透明基材及び導電インキ印刷層の双方に密着性が良く、また開口部での光透過性確保の為に透明な層でもある。また、プライマー層は単層でも多層でも良い。
更に、このプライマー層12は、前記の通り、プライマー層のうち前記導電インキ印刷層部分の厚さTaが前記導電インキ印刷層の非形成部である開口部14の厚さTbよりも大きい。
本発明では、図1〜図5のように、プライマー層のうち導電インキ印刷層部分の厚さTaが導電インキ印刷層の非形成部である開口部14の厚さTbよりも大きいという形状的な特徴を有する。該形状的特徴は、図7を参照して説明した、新規な印刷法で形成することにより出来るものである。すなわち、印刷時に固化させる液状のプライマー層を介して印刷することになる新規な凹版印刷法では、図7を参照して説明した通り、凹部内に充填されたインキ34の上面に版面凸部と面一(同一水準面)にならない窪み35が生じている場合でも、被印刷物と凹版間に介在させ凹版に接触させるプライマー層32Aは液状とするので窪みに流れ込んで空隙を埋めて、インキの窪み部分での被印刷物31とインキとの空隙による不完全な接触を改善して、より完璧な接触状態を実現し、インキ転移不足、インキ密着不足などによる印刷不良が解消し、またインキ転移率も向上する。
なお、帯電防止剤としては、プライマー層と混合されるため、透明で無色なものが好ましく、最終的な電磁波シールド材としての不本意な着色を防げる。
また、帯電防止剤の含有量は少な過ぎるとヒゲ抑制効果が十分に得られず、多すぎてもムダになるので、例えばプライマー層中の樹脂分に対して0.1〜10質量%程度の含有量とするが、ヒゲ発生状況に応じて適宜な含有量に設定すれば良い。
プライマー層形成、或いはまた導電インキ印刷層形成の各形成方法自体は、電磁波シールド材としての本発明に於いては特に制限はないが、本発明の電磁波シールド材では、プライマー層のうち導電インキ印刷層部分の厚さが導電インキ印刷層の非形成部である開口部の厚さよりも大きいという形状的な特徴を実現できる方法や材料であれば良い。
例えば、プライマー層は、溶剤や上記したような材料をプライマー成分として適宜用いたプライマーを、透明基材に公知の塗工法で形成することができる。塗工法は、グラビアコート、コンマコート、ダイコート、ロールコートなどである。
また、電離放射線硬化性樹脂の場合は、未硬化で常温固体であれば上記熱可塑性樹脂と同様とすることができ、未硬化で(常温又は加熱)液状であれば、液状のプライマーをそのまま塗布するか、溶剤希釈したプライマー液を塗布乾燥して、そのままの液状のプライマー層として形成する(版に接触後固化させる)。なお、溶融塗工であっても、塗液には版上での固化に支障を来たさない範囲で溶剤を添加しても良い。
そして、液状のプライマー層を凹版と接触状態で固化させるには、プライマーの樹脂材料などに応じて、架橋反応などの化学反応、冷却、或いはこれらの併用を利用できる。
なかでも電離放射線照射は化学反応を瞬時に完結できるので高速な固化が要求される円筒状の凹版上での固化に適し、生産性にも優れ、また対応する電離放射線線硬化性樹脂もプライマーを施す段階から液状で取り扱える等の点で、優れた固化方法である。
導電性組成物から成るパターン層としての導電インキ印刷層13は、導電性組成物としての導電インキを所定のパターンに印刷して形成した層であり、好適にはその印刷に前記新規な凹版印刷法を利用する。所定のパターンとは、例えばメッシュ形状、ストライプ形状などの電磁波シールド性能と光透過性とを両立させた公知のパターンである。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的であり、この他、格子形状で言えば例えば長方形格子、菱形格子、六角格子、三角格子などがある。パターンの線幅は例えば5〜50μm、本発明の効果がより際立つ点ではより細い5〜30μmであり、線間ピッチ(線と線の繰り返し周期)は例えば100〜500μmである。
なお、ディスプレイ用途では、画像表示に影響しない四辺周辺部は接地用導通の為に開口部を設けないベタパターンか、在っても占有面積比率が小さい接地領域を開口部を有する画像表示領域の周囲に設けることがある。
導電インキには、例えば、市販の銀ペーストや銅ペーストのように導電性粉末を含むペーストが使用可能であり、また、低温焼成が可能な、いわゆるナノサイズの導電性粉末を含む導電インキを用いることもできる。
導電性粉末としては、金、銀、銅、白金、錫、ニッケル、アルミニウム等の低抵抗率の金属の粉末、或いは、前記以外の高抵抗率の金属粉末、樹脂粉末、非金属無機粉末等の表面を金や銀等の前記低抵抗率の金属でめっきする等して金属被覆した粉末、或いは、グラファイトやカーボンブラックの粉末、或いは化学反応により導電性を発現する様な材料等の、最終的に導電インキ印刷層に導電性が得られる粉末が使用され、これら粉末には公知のものを適宜採用することができる。
なお、導電性粉末の形状は球状、回転楕円体状、鱗片状、円盤状、多面体状、截頭多面体状、繊維(針)状等である。また、これら材料や形状が異なる粉末を複数種併用しても良い。導電性粉末の大きさは、インキ化(ペースト化)できる程度には小さいほうがよく、通常は100μm以下の粒径が好ましい。例えば、鱗片状銀粉末の場合は平均粒子径0.1〜10μmのものを使用でき、カーボンブラック粉末の場合は平均粒子径0.01〜1μmのものを使用できる。なお、平均粒子径は、粒度分布径又は透過型電子顕微鏡(TEM)観察から得られる、測定値である。
また、導電性粉末の導電インキ中の割合は適宜選択され、例えば、導電インキ固形分100質量部に対し40〜99質量部である。
樹脂バインダーに用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂を使用でき、該硬化性樹脂としては電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、その他の硬化性樹脂などを使用できる。これら樹脂は、導電インキとして公知の樹脂を適宜使用することができる。なお、熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル−メラミン系樹脂、エポキシ−メラミン系樹脂、その他のメラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、熱硬化型アクリル系樹脂、熱硬化型ウレタン系樹脂等が使用でき、電離放射線硬化性樹脂としては、前述プライマー層や後述透明樹脂層で記載の樹脂などを使用でき、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等を使用できる。
前記添加剤は、例えば、充填剤、増粘剤、界面活性剤、酸化防止剤、着色剤等である。着色剤は、例えばインキを黒色に着色する顔料や染料などである。黒色の着色剤は、導電性粉末自体が黒色でない場合に、インキを黒色に着色してディスプレイ適用時のコントラストを向上させたり、導電インキ印刷層に追加的に金属薄膜層を設ける場合に、その金属光沢を透明基材側に於いて隠したりする目的で使用する。なお、黒色顔料としては、カーボンブラック、Fe3O4、CuO−Cr2O3、CuO−Fe3O4−Mn2O3、CoO−Fe2O3−Cr2O3等であり、平均粒子径は例えば0.1μm以下が着色力の点で好ましい。カーボンブラックとしてはチャンネルブラック等の色材用カーボンブラックの他、アセチレンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用でき、平均粒子径は20nm以下が好ましい。また、黒色染料にはアニリンブラック等を使用できる。又、黒色の顔料又は染料としては、混合して黒色になる有彩色のもの2種類以上(有彩色は例えば、黄色、赤色、青色の3原色等)の混合系でも良い。尚、ここで言う黒色とは明度が0に近似する完全な無彩色である必要は無い。実質上、外来光の反射を抑制し画像の色再現に悪影響が無い範疇の低明度且つ低彩度の色であれば良く、例えば、紺色、褐色、深緑色、臙脂(えんじ)色、濃紫色等もここで言う黒色の範疇に含められる。
図2〜図4は、導電インキ印刷層の各種形態例、より詳細には、導電インキ印刷層とプライマー層との関係についての各種形態例について、概念的に示す断面図である。図2は導電インキ印刷層とプライマー層との界面が交互に入り組んでいる形態Aを示す。図3及び図4は、プライマー層と導電インキ印刷層との2層を含めた合同領域中に、前記プライマー層に含まれるプライマー成分と、導電インキ印刷層に含まれる導電インキ成分とが混合している混合領域が存在する形態Bを示し、このうち図3は形態B−1を示し、図4は形態B−2を示す。
なお、導電インキ印刷層の形態としては、形態A、形態B−1、形態B−2の各形態のいずれか2以上の複数の形態を有していても良い。
これらの形態によって、印刷の離版時からプライマー層と導電インキ印刷層との層間密着性がより向上するので、インキ転移率やインキ密着性が更に向上し、前記印刷不良をより確実に防げ、印刷法で高精細な導電インキ印刷層をより確実に実現できる。
なお、概念図である、図1〜図5の導電インキ印刷層13の断面外形形状は略台形形状で描いてあるが、これに限定されるものではなく、釣鐘形状など任意である。
例えば、図6に例示の電磁波シールド材の導電インキ印刷層13の様に、釣鐘形状でも、プライマー層12の突出部分の山の裾を外形に残す様に、突出部分の山の中腹部分に形成され、プライマー層12の裾部分と導電インキ印刷層13との両方を含めても滑らかな釣鐘形状で、この釣鐘形状の中間部分に界面17が存在する態様である。
形態Aは、図2に示すように、プライマー層12と導電インキ印刷層13との界面17が、プライマー層12側と導電インキ印刷層13側とに交互に入り組んだ形態である。
界面17は、プライマー層12と、導電インキ印刷層13を構成する樹脂又はフィラーとの界面でもよい。なお該「フィラー」とは任意の粉末であり、前記した導電性粉末でも良いし非導電性粉末でも良い。導電性粉末のときの界面の入り組みの程度は、導電性粉末の形状や大きさに依存する。なお、例えば、導電インキが導電性粉末などのフィラーを含まず、導電性を導電性樹脂や導電性化合物を含有させて実現する場合には、プライマー層12を版に押し付ける際の圧力等によって、界面17が入り組んだ形態にすることができる。
形態Bの例として、図3に示す形態B−1と、図4に示す形態B−2を示す。形態Bは、プライマー層と導電インキ印刷層との2層を含めた合同領域中に、プライマー層に含まれるプライマー成分と、導電インキ印刷層に含まれる導電インキ成分とが、混合している混合領域が存在する形態である。「合同領域」として表現したのは、混合領域はプライマー層と導電インキ印刷層とのいずれか片方又は両方に存在するからである。
形態B−1は、図3に示すように、プライマー層12と導電インキ印刷層13との界面17の近傍にのみ局在化して、プライマー層12に含まれるプライマー成分と、導電インキ印刷層13の導電インキ成分とが混合する、混合領域18が存在する形態である。尚、互いに他の相手側領域内に進入した成分を、直径の大きな点で概念的に表記した。
図3では界面17を明確に描いてあるが、実際の混合領域18では、そうした界面17は明確には現れておらず、明瞭でない曖昧な界面となる(図3を参照)。また、図3では破線で上下の輪郭を描き、輪郭内のハッチングは判りやすい様にプライマー層よりも大き目の点で描いてある混合領域18は、界面17を上下に挟むように界面17の上側(導電インキ印刷層13側)と界面17の下側(プライマー層12側)の両方に存在する。この場合は、プライマー層12中のプライマー成分(例えば溶剤など)と導電インキ印刷層13中の任意の成分(例えばモノマー成分など)とが両層内に相互に侵入して、固化した場合である。
なお、混合領域18の厚さ(図3の上下方向の厚さ)は特に限定されない。
形態B−2は、図4に示すように、導電インキ印刷層13中にプライマー層12に含まれるプライマー成分が存在している形態である。尚、導電インキ印刷層中に進入したプライマー成分を直径の大きな点で概念的に表記した。
図4ではプライマー成分が、界面17の近くで多く、該界面から遠い部分である導電インキ印刷層13の頂部に向かって、少なくなって行く場合の態様を概念的に示している(内部のハッチングは判りやすい様にプライマー層よりも大き目の点で描き且つ頂部になる程少なくなる様に描いてある)。しかし、この態様に限定されるものではなく、プライマー成分が導電インキ印刷層13内にとにかく存在していればよい。プライマー成分は、導電インキ印刷層13の頂部から検出される程度に導電インキ印刷層13内に侵入していてもよいし、界面17近傍でのみ検出される程度であってもよい。
形態B−2に於いて、プライマー成分が導電インキ印刷層13内に存在している領域が界面17近傍にのみ局在化している場合が、形態B−1に於いて、混合領域18が界面17の上側にのみ存在する形態に相当する。
プライマー層のうち導電インキ印刷層部分の厚さが導電インキ印刷層の非形成部である開口部の厚さよりも大きいという形状的な特徴は、図7を参照して説明した、新規な凹版印刷法で実現できることは、既に説明したとおりである。そして、プライマー層や導電インキ印刷層の材料、これらの固化・硬化条件、印刷条件などの調整で、形態A、形態B−1、形態B−2などの形態を実現できる。
この圧着操作、そしてその後の、プライマー層や導電インキの固化を含めて、印刷工程を完了させる過程で、例えば、導電インキ34中に含まれる導電性粉末が、プライマー層32Aと導電インキ34との界面が入り組んだ形態や、プライマー層32Aに含まれるプライマー成分が導電インキ34中に侵入し、界面17近傍などに混合領域18が存在する形態が得られる。
なお、既に説明したとおり、導電インキ印刷層の形成は新規な印刷法(新規な凹版印刷法)によって形成するのが好適である。すなわち、凹版の凹部のみにドクターブレードなど利用して導電インキを充填し、これに液状とするプライマー層を片面に形成済みの透明基材を、該プライマー層が凹版に接する向きで加圧ローラで圧着するなどして該プライマー層を接触させて、接触している状態でプライマー層を液状から固体状に固化させた後、透明基材を凹版から離して離版させることで、透明基材上の固化したプライマー層上にインキを転移させることで、印刷すれば良い。
ところで、導電インキは離版時に液状でも固化していても、どちらの場合でも、プライマー層のうち導電インキ印刷層部分の厚さTaが導電インキ印刷層の非形成部である開口部14の厚さTbよりも大きいという形状的な特徴は、生じる。液状の場合は、乾燥操作、加熱操作、冷却操作、化学反応操作などを適宜行い、固化させて導電インキ印刷層を完成させる。また、導電インキは、版上で半硬化固化させ離版後に完全硬化させても良い。
導電インキを離版時に固化させておく場合は、導電インキの固化方法はプライマー層で採用する固化方法と同じ方法でも良く、異なる方法でも良い。電離放射線照射など同じ方法を採用すれば、装置・工程的に簡素化でき、また類似の化学反応を採用すれば密着性の点でも有利である。
ただ、離版時に生じる導電インキの飛散は、導電インキが離版時に既に固化している場合よりは、導電インキが離版時に未だ固化していない場合の方が、凹版凹部内から引き抜かれた導電インキが液状で流動状態を示すために、遥かに発生しやすい。また、導電インキが離版時に既に固化している場合でも、固化が半固化の場合はヒゲが出る可能性があり、固化が完全に固化している場合はヒゲの問題はないが、剥離帯電による異物の呼び込みやすさの問題は依然残る。
透明樹脂層16は、少なくとも、開口部14に於けるプライマー層12の表面を被覆する層であり、その結果、プライマー層を傷付きや汚れから保護する保護層としての機能を有し、更に導電インキ印刷層上も被覆する透明樹脂層は、更に導電インキ印刷層も傷付きや汚れから保護する保護層としての機能も有する。これら保護層が最終的表面の場合は表面保護層である。
透明樹脂層は、開口部の光透過性を実現できるものであれば、材料・形成法などは特に制限は無い。代表的なのは塗工形成した樹脂層であるが、層形成は塗工法の他に印刷法でも良く、転写法、ラミネート法など、これらは公知の膜形成法を適宜採用すれば良い。
透明樹脂層に用いる樹脂としては、隣接する層との密着性、塗工適性、透明性、屈折率、など要求物性を勘案して適宜選択すれば良い。例えば、該樹脂には、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂を用いることができ、硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、その他の硬化性樹脂などを使用できる。例えば、熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などである。また、熱硬化性樹脂としては、熱硬化型アクリル系樹脂、熱硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、熱硬化型ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂などである。また、アクリル系、シリコーン系などのゴム系樹脂も熱可塑性、熱硬化性、電離放射線硬化性の各種樹脂形態で使用できる。なお、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマー層の樹脂の例示として前記したものと同様のものの中から適宜選択することができる。
導電インキ印刷層上にも透明樹脂層を形成する場合、該透明樹脂層は、他の層(例えば光学フィルタフィルムなど)と接着させるための、粘着層、接着層などとしても良い。粘着層の場合は、アクリル樹脂系など公知の粘着剤を用いれば良い。
導電インキ印刷層13からなるパターンの表面に、更に金属薄膜が形成されていても良く、導電インキ印刷層の導電率をより一層向上出来、電磁波シールド性が更に向上する。
図5に例示の電磁波シールド材10は、導電インキ印刷層13の面に金属薄膜層19を例えば金属めっき層として設けた例である。金属薄膜層は通常、導電インキ印刷層のみでは表面抵抗が依然高く電磁波シールド性能が不足する場合に設ける。また、導電インキ印刷層はめっき出来る表面抵抗を確保できる範囲で導電インキを減らして形成することもできる。
また、金属薄膜層の形成は、導電インキ印刷層面の露出が確保されている間の、透明樹脂層形成前に通常は行う。
また、金属薄膜層表面には更に、それを黒化処理して黒化層を設けたり、金属化合物による防錆層を設けたものとしても良い。これらは、公知の処理で設けることができる。
上述した、透明基材、プライマー層、導電インキ印刷層、透明樹脂層、金属薄膜層等の各層以外に、必要に応じて更に、その他の層を追加できる。例えば、光学フィルタ機能(層)、反射防止機能(防眩、反射防止、防眩及び反射防止)等を付与する光学機能層、表面を保護する表面保護層、汚染防止機能層、帯電防止機能層、ディスプレイ前面板等の他の基板に貼り付ける為の粘着層などである。前記光学フィルタ機能としては、近赤外線を吸収する近赤外線吸収機能、紫外線を吸収する紫外線吸収機能、PDPディスプレイのネオン光を吸収するネオン光吸収機能、表示画像を好みの色調に補正する色補正機能などである。
図7で説明した新規な凹版印刷法を利用して、電磁波シールド材を製造した。
凹版として、中空円筒状の鉄芯表面に銅めっき層を被覆してなる金属製円筒状のシリンダーに対して、ダイヤモンドバイトを使用してメッシュパターンの凹部を切削加工し、更に表面をクロムめっきして、線幅20μm、線間ピッチ(線と線の繰り返し周期)300μm、版深20μmで正方格子状のメッシュパターンの凹部としたものを作製した。また、ディスプレイ長辺横方向となる凹版円周方向に対してメッシュパターンは傾けてバイアス角度45°とした。
先ず、透明基材11として、片面易接着処理済みの幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻き(連続帯状)の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。この透明基材をロールから繰り出し、その易接着処理面に、未硬化で常温液状無溶剤の紫外線硬化型の電離放射線硬化性樹脂(光硬化性樹脂組成物)からなるプライマーを、グラビアリバース法で塗布し厚さが5μmで均一な液状のプライマー層12を形成した。
なお、上記電離放射線硬化性樹脂は、エポキシアクリレートプレポリマー35質量部、ウレタンアクリレートプレポリマー12質量部、アクリレートモノマー(単官能モノマー44質量部、及び3官能モノマー9質量部)53質量部及び光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア(登録商標)184」1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)3質量部の合計103質量部(樹脂分100質量部)に対して、更に帯電防止剤として変性シリコーンのリチウム塩2質量部(溶剤メチルエチルケトンの溶液で前記物質を有効成分として60質量%含み、有効成分配合量としては1.2質量部。透明で色は無色。表1参照)を配合し紫外線硬化型樹脂組成物として調整したものである。
次に、液状のプライマー層12が片面に形成された透明基材11の該プライマー層12上に、引き続き、巻き取ることなくインラインで、前記凹版印刷法によって導電インキ印刷層の形成とプライマー層の紫外線硬化による固化を行った。すなわち、先ず、導電インキは回転する凹版の版面にピックアップロールで供給後、凹部以外の版面凸部上の余分な導電インキはドクターブレードで掻き取って、凹部内のみに導電インキを充填した。
引き続き、プライマー層12が形成された連続帯状の前記透明基材11を、そのプライマー層12が凹版の版面に対向した状態で、且つその走行速度を回転する凹版円筒面の周速度と一致させて、導電インキが凹部内のみに充填された後の版面部分に供給して、ニップローラで版面に加圧することで、版面凹部内に充填された導電インキ上面の窪み部分に液状のプライマー層を周囲から流入させて窪みによる隙間を無くした(この結果、窪みのある凹部は他の部分に対してプライマー層の厚さが厚くなる)。
乾燥固化後の導電インキ印刷層の厚さ(開口部のプライマー層表面と導電インキ印刷層頂上部との段差)は、溶剤乾燥による体積収縮などで19μmとなった。
以上の結果、厚さ100μmの透明基材11の片面全面に(少なくとも開口部での厚さが)厚さ5μm(硬化後の厚さ)の固化したプライマー層12が形成され、更にプライマー層12上に、メッシュ形状の所定のパターンで厚さ19μmで線幅20μmの導電インキ印刷層13が形成された印刷フィルムとして電磁波シールド材が得られた。
また、導電インキ印刷層の表面部分を二次イオン質量分析(SIMS分析)したところ、導電インキには含まれないがプライマー層には含まれるプライマー成分が観測され、プライマー成分の一部が導電インキ印刷層中に侵入し存在していることが確認された。
実施例1に於いて、プライマー層に含有させる帯電防止剤を、実施例1の変性シリコーンのリチウム塩とは異なるアニオン系界面活性剤2質量部(無溶剤で全量が有効成分。透明だが色は黄褐色の有色)とした以外は実施例1と同様にして、電磁波シールド材を得た。
実施例1に於いて、プライマー層に含有させる帯電防止剤を、第4級アンモニウム塩のカチオン系界面活性性剤2質量部(溶剤イソプロピルアルコールの溶液で前記物質を有効成分として90質量%含み、有効成分配合量としては1.8質量部。透明で色は無色)とした以外は実施例1と同様にして、電磁波シールド材を得た。
実施例1に於いて、プライマー層に帯電防止剤を含有させなかった以外は実施例1と同様にして、電磁波シールド材を得た。
全ての実施例では、導電インキ印刷層は細線の断線による印刷不良は無く、電磁波シールド性能も満足でき、しかも、ヒゲ発生は比較例1に対して抑制されていた。
ヒゲ発生状況については、実施例と比較例中での、プライマー層に対する帯電防止剤の内容と共に表1にまとめて示す。ヒゲの発生状況は光学顕微鏡で拡大し目視観察して、ヒゲが、存在しないか殆ど存在しないものを優秀(◎)、僅かに在るものを良好(○)、存在するものをやや良好(△)、かなり存在するものを不良(×)と、相対評価した。
結果は、表1に示すとおり、ヒゲ発生の抑制状況は、一番良かった実施例1から、実施例1(良好)>実施例3(やや良好)>実施例2(やや良好だが実施例3より若干劣る)>比較例1(不良)の順で悪くなった。また、帯電防止剤の色は、実施例2は黄褐色のためにプライマー層の着色による電磁波シールド材の着色が起こり得るが、実施例1及び3は無色である為、その懸念は無かった。
11 透明基材
12 プライマー層
13 導電インキ印刷層(パターン層)
14 開口部
15 ヒゲ
16 透明樹脂層
17 界面
18 界面近傍での混合領域
19 金属箔膜層
31 被印刷物(透明基材)
32 プライマー層
32A 液状状態のプライマー層
33 凹版
34 インキ(導電インキ)
35 窪み
101 凹版
102 ドクターブレード
103 導電性組成物(導電インキ)
104 凹部
105 凹みを残して凹部に充填された導電性組成物
106 凹み(窪み)
Claims (3)
- 透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性組成物から成るパターン層とを有し、前記プライマー層のうち前記パターン層部分の厚さが前記パターン層の非形成部である開口部の厚さよりも大きい電磁波シールド材であって、
前記プライマー層が帯電防止剤を含有する、電磁波シールド材。 - 前記プライマー層と前記導電性組成物から成るパターン層との界面が交互に入り組んでいる、請求項1記載の電磁波シールド材。
- 前記プライマー層と前記導電性組成物から成るパターン層との2層を含めた合同領域中に、前記プライマー層に含まれるプライマー成分と、前記導電性組成物から成るパターン層に含まれる導電性組成物成分とが混合している混合領域が存在する、請求項1記載の電磁波シールド材。
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