JP2009182513A - Ad変換器 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速化、高精度化、低電力化を実現するサブレンジング型AD変換器を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係るサブレンジング型AD変換器1は、アナログの入力信号の電位と、複数段の第1の基準電位とを比較し、入力信号における上位側デジタル信号を出力する1段目AD変換手段4と、入力信号の電位と、基準電位出力線11より供給される複数段の第2の基準電位とを比較し、入力信号における下位側デジタル信号を出力する2段目AD変換手段12と、1段目AD変換手段4による変換結果に応じて、基準電位出力線11から2段目AD変換手段12に供給される複数段の第2の基準電位を切り換える基準電位スイッチ9と、基準電位出力線11を、2段目AD変換手段12が動作していない期間に、入力信号の電位に基づいて予めプリチャージするためのプリチャージ手段10とを具備する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、AD変換器に関し、例えばサブレンジング型AD変換器に関する。
近年、ソフトウェア無線、高速ハードディスクドライブ、デジタルビデオディスクなどの分野において、装置にGHz(ギガヘルツ)サンプリングAD変換器を搭載することが必須になると予測される。
一般的なGHz帯AD変換器はフラッシュ型AD変換器を用いて実現されており、精度は6〜8bitであるが、消費電力は400〜800mWと非常に大きい。
R.C.Taft, et al., "A 1.8-V 1.6-GSample/s 8-b self-calibrating folding ADC with 7.26 ENOB at Nyquist frequency," IEEE J.Solid-State Circuits, vol.39 No.12, pp.2107-2115, Dec.2004.
GHz帯AD変換器を、システムオンチップのIPコアとして使用するためには、低消費電力化が最も大きな課題となる。
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、高速化、高精度化、低電力化を実現するサブレンジング型AD変換器を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様のサブレンジング型AD変換器は、アナログの入力信号の電位と、複数段の第1の基準電位とを比較し、入力信号における上位側デジタル信号を出力する1段目AD変換手段と、入力信号の電位と、基準電位出力線より供給される複数段の第2の基準電位とを比較し、入力信号における下位側デジタル信号を出力する2段目AD変換手段と、1段目AD変換手段による変換結果に応じて、基準電位出力線から2段目AD変換手段に供給される複数段の第2の基準電位を切り換える基準電位スイッチと、基準電位出力線を、2段目AD変換手段が動作していない期間に、入力信号の電位に基づいて予めプリチャージするためのプリチャージ手段とを具備する。
本発明の第2の態様のサブレンジング型AD変換器は、アナログの入力信号の電位と、複数段の第1の基準電位とを比較し、入力信号における上位側デジタル信号を出力する1段目AD変換手段と、入力信号の電位と、基準電位出力線より供給される複数段の第2の基準電位とを、複数の閾値設定機能付きコンパレータによって比較し、入力信号における下位側デジタル信号を出力する2段目AD変換手段と、1段目AD変換手段による変換結果に応じて、基準電位出力線から2段目AD変換手段に含まれている複数の閾値設定機能付きコンパレータに供給される基準電位を切り換える基準電位スイッチと、基準電位出力線を、2段目AD変換手段が動作していない期間に、入力信号の電位に基づいて予めプリチャージするためのプリチャージ手段とを具備する。
本発明により、高速化、高精度化、低電力化を実現するサブレンジング型AD変換器を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の各図において略同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
(第1の実施の形態)
本実施の形態においては、2段目AD変換器が動作していない期間に、この2段目AD変換器に対する基準電位出力線を予めプリチャージしておくことにより、基準電位スイッチのセトリング時間の短縮化を図るサブレンジング型AD変換器について説明する。
図1は、本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器の構成の一例を示す回路図である。
サブレンジング型AD変換器1は、アナログ−デジタル変換を2回に分けて行う。サブレンジング型AD変換器1は、入力信号用入力端子2、トラックアンドホールド回路(T/H)3、1段目AD変換器4、基準電位用入力端子5a,5b、抵抗ラダー6、スイッチ7、上位ビット出力端子81〜8m、基準電位スイッチ9、プリチャージ用トラックホールド回路10、基準電位出力線11、2段目AD変換器12、下位ビット出力端子131〜13nを具備する。サブレンジング型AD変換器1及びその構成要素は、クロック信号に応じて動作する。
なお、1段目AD変換器の精度をmビット(mは、2以上の自然数)とし、2段目AD変換器の精度をnビット(nは、2以上の自然数)とすると、1段目AD変換器4は、2m−1個のコンパレータ(比較器)14とエンコーダ15とを具備し、2段目AD変換器は、2n−1個のコンパレータ(比較器)16とエンコーダ17とを具備する。
上記図1においては、m=4、n=4であり、全体で8ビットのアナログ−デジタル変換を4ビットずつ2回に分けて行うサブレンジング型AD変換器1の場合を例として記載している。
トラックアンドホールド回路3,10は、入力信号に追従しAD変換中ホールドするトラックアンドホールド動作を行う。
基準電位用入力端子5a,5bにより入力される基準電位は、抵抗ラダー6によって段階的な基準電位(2m−1段階の基準電位)とされる。
1段目AD変換器4に備えられている2m−1個の各コンパレータ14は、入力信号用入力端子2からトラックアンドホールド回路3を介して、入力信号の電位を入力する。
また、1段目AD変換器4に備えられている2m−1個の各コンパレータ14は、基準電位端子5a,5bから、抵抗ラダー6及び2m−1個のスイッチ7を介して、段階的な基準電位のうち自己に応じた基準電位を入力する。
そして、各コンパレータ14は、入力した入力信号の電位と自己に応じた基準電位とを比較し、比較結果をエンコーダ15に出力する。
エンコーダ15は、各コンパレータ14の比較結果に基づいて、入力信号における上位側デジタル信号を上位ビット出力端子81〜8mから出力する。さらに、エンコーダ15は、2m−1個の変換結果を、基準電位スイッチ9に備えられている2m−1組のアナログセレクタ18に出力する。
基準電位スイッチ9は、1段目AD変換器4からの2m−1個の変換結果を受けて、入力信号が含まれるサブレンジ内の段階的な基準電位(2n−1段階の基準電位)を選択し、この選択された段階的な基準電位を、それぞれ2n−1本の基準電位出力線11を経由して、2段目AD変換器12に備えられている2n−1個のコンパレータ16に出力する。
基準電位スイッチ9は、2n−1:1のアナログセレクタを、2m−1組具備する。上記の図1では、15:1のアナログセレクタ18が15組備えられている。アナログセレクタ18の構成の一例を図2に示す。
n−1本の基準電位出力線11は、それぞれが、入力信号用入力端子2と、2n−1個のトラックアンドホールド回路10を介して、接続されている。
また、2n−1本の基準電位出力線11は、基準電位スイッチ9によって選択されたサブレンジ内の2n−1段階の基準電位を、それぞれ2段目AD変換器12の2n−1個の各コンパレータ16に出力する。すなわち、本実施の形態においては、2段目AD変換器12の基準電位は、抵抗ラダー6と、基準電位スイッチ9と、入力電位を保持するトラックアンドホールド回路10とを用いて発生される。
2段目AD変換器に備えられている2n−1個の各コンパレータ16は、入力信号用入力端子2からトラックアンドホールド回路10を介して、入力信号の電位を入力する。
また、2段目AD変換器12に備えられている2n−1個の各コンパレータ16は、それぞれ2n−1本の基準電位出力線11から、段階的な基準電位のうち自己に応じた基準電位を入力する。
そして、各コンパレータ16は、入力した入力信号の電位と、入力した基準電位とを比較し、比較結果をエンコーダ17に出力する。
エンコーダ17は、各コンパレータ16の比較結果に基づいて、入力信号における下位側デジタル信号を下位ビット出力端子131〜13nから出力する。
本実施の形態において、2n−1個のプリチャージ用トラックアンドホールド回路10の一方は、入力信号用入力2と接続されており、他方はそれぞれ2n−1本の基準電位出力線11と接続されている。
2段目AD変換器12はクロック信号によって制御されており、2n−1個のプリチャージ用トラックアンドホールド回路10もクロック信号によって制御される。
n−1本の基準電位出力線11は、2n−1個のプリチャージ用トラックアンドホールド回路10によって同じ電位にプリチャージされるが、その後、2m−1個のアナログセレクタ18により、2n−1個の異なる電位に駆動される。すなわち、本実施の形態においては、2n−1個の基準電位出力線11は、プリチャージ後に異なる電位とされるため、それぞれの基準電位出力線11に対してプリチャージ用トラックアンドホールド回路10が備えられている。
上記のような構成を持つ本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1の作用効果を、従来のサブレンジング型AD変換器と比較しつつ、以下で具体的に説明する。
図3は、従来のサブレンジング型AD変換器の一例を示す回路図であり、上記図1に例示する本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1と同様に、m=4、n=4であり、8ビットのサブレンジング型AD変換器を例として記載している。
本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1は、2n−1個のプリチャージ用トラックアンドホールド回路10を具備しており、2段目AD変換器12が動作していない期間に、入力信号の電位に基づいて、プリチャージ用トラックアンドホールド回路10により、基準電位出力線を次のサイクルの基準電位の近くまで予めプリチャージする点で、このような構成を持たない従来のサブレンジング型AD変換器19と異なっている。
図4は、従来のサブレンジング型AD変換器19における基準電位とセトリング時間との関係の一例を示すグラフである。
以下の説明において「LSB」とはLeast Significant Bitの略であり、AD変換器のものさしの1目盛りの大きさを表す。例えば、入力範囲が0〜1Vの8ビットのAD変換器では1LSBは、1V÷28=3.9mVとなる。
1段目AD変換器4の精度をmビット、2段目AD変換器12の精度をnビットとすると、1段目AD変換器4の目盛りは、s×2n,s=0〜2m−1となる。この場合の基準電位スイッチ9の最大振幅は、2(m+n)−2nLSBとなる。
上記図3の従来のサブレンジング型AD変換器19の例において、1段目AD変換器4の目盛りは、0,16,32,48,64,…,224,240(s×24,s=0〜15)となる。あるサイクルのサンプリング値が目盛り0であり、次のサイクルでサンプリング値が240となった場合、すなわち、入力信号が非常に早く変化した場合、基準電位スイッチ9の出力は240LSD変化しなければならない。この240LSDが基準電位スイッチ9の最大振幅となる。
基準電位が定常状態の許容範囲以内(ここでは一例として0.25LSB)に達するまでのセトリング時間は、アナログセレクタ18のスイッチのオン抵抗routとスイッチの負荷容量CLに基づいて、式(1)により決まる。
Figure 2009182513
基準電位が定常状態に十分近づくまで、2段目AD変換器12を動作させることはできない。例えば、上記のように基準電位が定常状態の0.25LSB以内となるまでセトリングしたところで、2段目AD変換器12を起動した場合、変換誤差が0.25LSB発生する。0.25LSB以内よりもさらに定常状態に近づくまで待ってから2段目AD変換器12を起動することにより、誤差は小さくなるが、変換時間は長くなる。したがって、ここでは、許容する誤差を、一例として0.25LSB程度として説明している。しかしながら、この許容範囲のレベルについては、適宜決定可能である。
上記の式(1)の結果より、従来のサブレンジング型AD変換器19では、基準電位のセトリング時間はスイッチの時定数の約7倍もの時間が必要であり、高速化を妨げる要因となる。
これに対して、本実施の形態においては、基準電位がサンプリングされた入力電位が含まれるサブレンジ内のものであることに着目し、入力信号の電位により、基準電位出力線11をプリチャージする。
上記図1に示す本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1では、2n−1本の基準電位出力線11に、2n−1個のプリチャージ用トラックアンドホールド回路10を接続し、2段目AD変換器12がリセットしているサンプリング期間中に、2n−1本の基準電位出力線10を入力電位でプリチャージする。
これにより、本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1においては、基準電位スイッチ9の駆動振幅は最大でも16LSBとなり、セトリング時間を3.5rout・CLに短縮することができる。本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1においては、従来のサブレンジング型AD変換器19よりも、基準電位のセトリング時間を約1/2に短縮できる。
ここで、本実施の形態の例において、基準電位スイッチ9の駆動振幅が最大でもわずか16LSBとなることについて、説明する。
図5は、従来のサブレンジング型AD変換器19における基準電位の変化の一例を示す図である。
また、図6は、本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1における基準電位の変化の一例を示す図である。
従来のサブレンジング型AD変換器19においては、上記図5に示すように、入力の変化が大きいとき、すなわち、サンプリング点t0と次のサンプリング点t1での入力電位Vin(t0)とVin(t1)の電位変化が240LSBを超える場合、基準電位も一番上の目盛りから一番下の目盛りへ切り換わらなければならないため、240LSB変化する必要がある。
一方、本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1においては、プリチャージ用トラックアンドホールド回路10によってサンプリング期間中に基準電位を入力電位に追従させる。
これにより、本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1においては、上記図6に示すように、予め定常状態に近い位置から基準電位の変化が開始される。この場合、基準電位の変化量は、最大で16LSBとなる。なお、この16LSBという値は、1段目AD変換器4の精度を4ビット、2段目AD変換器4の精度を4ビットとした場合の値である。1段目AD変換器4の精度をmビット、2段目AD変換器12の精度をnビットとした場合には、基準電位の最大の変化量は、2nLSBとなる。
図7は、本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1の基準電位の変化の一例と、従来のサブレンジング型AD変換器19の基準電位の変化の一例とを示すグラフである。
この図7において、Vinはアナログ入力信号である。
Vrefは、基準電位(基準電位スイッチ9の出力)である。通常は、2n−1本あるが、この図7では記載を簡略化するため、そのうちの1つのみを描いている。
td_1stは、1段目AD変換器4が起動されてから基準電位スイッチ9への制御信号を出力するまでの遅滞時間である。
tsは、基準電位が定常状態の許容範囲に達するまでのセトリング時間である。
Sはサンプリング期間、Hはホールド期間である。
図7において、従来のサブレンジング型AD変換器については、前のサイクルで設定された基準電位から、次のサイクルで設定される基準電位へと、基準電位が切り換わってゆく。
本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1については、前のサイクルで設定された基準電位から、一旦サンプリング期間中に入力電位にプリチャージされ、その後、次のサイクルで設定される基準電位へと、基準電位が切り換わってゆく。本実施の形態においては、次のサイクルの基準電位は、必ず、AD変換される入力電位の近くとなるので、セトリング時間を短縮化することが可能である。
以上説明したように、本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1においては、低電力というサブレンジング型AD変換器の特徴を持ちつつ、変換速度を大幅に向上させることができ、サブレンジング型AD変換器の高速動作が可能となり、低電力かつ高速なAD変換器を実現できる。
(第2の実施の形態)
本実施の形態においては、上記第1の実施の形態の変形例であり、2段目AD変換器に備えられる各コンパレータが、閾値設定機能付きコンパレータである場合について説明する。
図8は、本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器の構成の一例を示す回路図である。
本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器20において、2段目AD変換器21には、複数の閾値設定機能付きコンパレータCP1〜CP15が備えられている。
本実施の形態において、プリチャージ用トラックアンドホールド回路10及び基準電位出力線22は、それぞれひとつずつでよい。また、1段目AD変換器4から基準電位スイッチ23に出力される変換結果もひとつでよい。
上記第1の実施の形態における2段目AD変換器12に備えられているような、通常のコンパレータ16は、入力電位の入力端子と基準電位の入力端子という2つの入力端子を備えており、入力電位が基準電位を超えた場合に出力端子から「1」を出力する。
これに対して、本実施の形態における2段目AD変換器21に備えられている閾値設定機能付きコンパレータCP1〜CP15は、通常のコンパレータに任意のオフセットを設定可能に構成されたコンパレータである。
上記図8の構成において、2段目AD変換器の15個の閾値設定機能付きコンパレータCP1〜CP15における基準電位の入力端子は、全て共通の基準電位出力線22に接続されており、さらにこの基準電位出力線22をプリチャージするためのプリチャージ用トラックアンドホールド回路10も一つでよい。
本実施の形態においては、基準電位スイッチ23も、15:1のアナログセレクタ18を1つ備えていればよい。
本実施の形態においては、15:1のアナログセレクタ18の数を削減できるため、1段目AD変換器4のエンコーダ15のファンアウトも減らすことができ、低電力化、高速化することができる。
図9は、本実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器20の2段目AD変換器21に備えられている複数の閾値設定機能付きコンパレータCP1〜CP15の設定状態の例を示す図である。
例えば、閾値設定機能付きコンパレータCP1の閾値は、Vin−Vref=−8LSBで出力が切り換わるように設定する。また、閾値設定機能付きコンパレータCP2の閾値は、Vin−Vref=−7LSBで出力が切り換わるように設定する。他の閾値設定機能付きコンパレータCP3〜CP14の閾値についても、同様に設定を行い、閾値設定機能付きコンパレータCP15の閾値について、Vin−Vref=+7LSBで出力が切り換わるように設定する。
これにより、基準電位が1つであっても(15個の閾値設定機能付きコンパレータCP1〜CP15で共通であっても)、2段目AD変換器21によりAD変換を行うことができる。
なお、この例において、基準電位Vrefは2段目AD変換器21の8LSB目の電位に設定される。
図10に、閾値設定機能付きコンパレータの第1の例を示す。
先の説明では、コンパレータは、単相入力の場合の例を示したが、一般には雑音耐性の観点から差動構成がとられることが多い。本実施の形態では、差動構成のコンパレータの例について説明する。
コンパレータはプリアンプPA1とアナログラッチALとを具備する。
プリアンプPA1の入力部は、6個のスイッチSW1p〜SW3p,SW1n〜SW3nと2個の容量Cip,Cinで構成されるスイッチトキャパシタ回路になっており、クロック信号に同期してスイッチを切り換えることで、入力電位と基準電位の差電圧を出力する。
この差電圧をトランジスタM1,M2、抵抗R1,R2、電流源Issからなる差動増幅器で増幅し、アナログラッチALでさらに正帰還増幅することで、入力電位と基準電位のいずれか高いのかを判別する。この図10の回路において、閾値設定はプリアンプPA1の出力にオフセット電流dIを加えることで行う。図10の回路の閾値VTHは近似的に、式(2)のように表すことができる。
Figure 2009182513
この式(2)において、IssはプリアンプPA1のバイアス電流、Kは式(3)で表される。
Figure 2009182513
この式(3)において、μはキャリアの移動度、Coxはゲート酸化膜容量、Wはゲート幅、Lはゲート長である。
上記の式(2)から分かるように、dIを調整することで閾値VTHを任意の値に設定することが可能である。
図11に、閾値設定機能付きコンパレータの第2の例を示す。
この図11の例では、スイッチトキャパシタ回路のリセット帰還に差動増幅回路の入力を同電位にせず、異なる電位Vcp,Vcnにバイアスすることで閾値設定を行う。ここで、Vcp=Vcom+dV、Vcn=Vcom−dVに設定すると、入力電位と基準電位の差電圧ΔVinに2dVが加わったものが増幅されるため、差動増幅回路の入力寄生容量Cpを考慮すると、閾値電圧VTHは式(4)のように表すことができる。したがって、dVを調整することで閾値VTHを任意の値に設定することが可能である。
Figure 2009182513
図12に、閾値設定機能付きコンパレータの第3の例を示す。
この図12の例では、上記図11の例に、プリアンプPA3のオフセットキャンセル機能を付加している。
一般的に、プリアンプの出力に容量Cop,Conを付加し、リセット期間にプリアンプPA3のオフセット情報を容量Cop,Conに蓄えることでオフセットをキャンセルする。この方法は、周知の技術であるが、上記図11の例に単純にこの方法を適用すると、閾値情報dVもオフセットとしてキャンセルされてしまう。これを防止するため、図12の例では、スイッチSW4p,SW4nを挿入し、閾値情報を設定するノードとプリアンプPA3の入力ノードを分離している。これにより、閾値設定機能付きコンパレータにオフセットキャンセル機能を付加することが可能となる。
上記の式(4)から分かるように、dVを調整することにより閾値を任意の値に設定できるが、dVの値を固定値とした場合、製造ばらつきにより、Cp/Cipがばらついた場合、閾値がばらつくことになる。
閾値のばらつきは、AD変換器の変換精度を劣化させるため、Cp/Cipがばらついても閾値がばらつかないようにdVを自動補正することが必要となる。
図13に、閾値の自動補正回路の例を示す。
自動補正回路は、2段目AD変換器で使用する閾値設定機能付きコンパレータと全く同じ回路構成、素子配置を有するダミーコンパレータDCP、チャージポンプ回路CHP、容量Ccp、電圧電流変換回路VIC、抵抗Rc1〜Rciからなる抵抗ラダー回路で構成される。
ダミーコンパレータDCPの入力Vip,Vrefp,Vin,Vrefnは、式(5)及び式(6)を満たすように、すなわち、入力信号の大きさがちょうどi(LSB)になるように設定する。
Figure 2009182513
Figure 2009182513
この図13の回路において、もし、Vcp−Vcnが小さければ、ダミーコンパレータDCPの出力は1となり、チャージポンプの出力は上昇し、電圧電流変換回路VICの出力電流Ioutは増加する。これにより、Vcp−Vcnは増加する。
また逆に、Vcp−Vcnが大きければ、ダミーコンパレータDCPの出力は0となり、Vcp−Vcnは減少する。
このように図13の回路は、負帰還動作をするため、Vcp−VcnはダミーコンパレータDCPの出力が1と0の境界点になるような値へ収束する。すなわち、Vcp−VcnはダミーコンパレータDCPの閾値がi(LSB)になるように自動調整される。
Vcp−Vcnの電圧は、抵抗Rc1〜Rciからなる抵抗ラダー回路で分圧され、Vcp0〜Vcpiの電位を出力する。これらの電位を適宜選んで、2段目AD変換器を構成する閾値背定機能付きコンパレータのVcp,Vcn端子へ印加することで、1LSBずつ閾値の異なるコンパレータを実現することができる。
以上説明したように、本実施の形態においては、Cp/Cipがばらついても負帰還動作によりVcp−Vcnの値が自動調整されるため、閾値設定機能付きコンパレータの閾値ばらつきを抑制できる。
上記各実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器1,20は、デジタルビデオディスク、高速ハードディスクドライブのリードチャネル部、無線通信システムのベースバンド処理部、ソフトウェア無線システムのフロントエンド部などに適用される。
本発明の第1の実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器の構成の一例を示す回路図。 アナログセレクタの構成の一例を示す回路図。 従来のサブレンジング型AD変換器の一例を示す回路図。 従来のサブレンジング型AD変換器における基準電位とセトリング時間との関係の一例を示すグラフ。 従来のサブレンジング型AD変換器における基準電位の変化の一例を示す図。 第1の実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器における基準電位の変化の一例を示す図。 第1の実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器の基準電位の変化の一例と、従来のサブレンジング型AD変換器の基準電位の変化の一例とを示すグラフ。 本発明の第2の実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器の構成の一例を示す回路図。 第2の実施の形態に係るサブレンジング型AD変換器の2段目AD変換器に備えられている複数の閾値設定機能付きコンパレータの設定状態の一例を示す図。 閾値設定機能付きコンパレータの第1の例を示す回路図。 閾値設定機能付きコンパレータの第2の例を示す回路図。 閾値設定機能付きコンパレータの第3の例を示す回路図。 閾値の自動補正回路の一例を示す回路図。
符号の説明
1…サブレンジング型AD変換器、2…入力信号用入力端子、3…トラックアンドホールド回路、4…1段目AD変換器、5a,5b…基準電位用入力端子、6…抵抗ラダー、7…スイッチ、81〜8m…上位ビット出力端子、9,23…基準電位スイッチ、10…プリチャージ用トラックアンドホールド回路、11,22…基準電位出力線、12,21…2段目AD変換器、131〜13n…下位ビット出力端子、14,16…コンパレータ、15,17…エンコーダ、18…アナログセレクタ、CP1〜CP15…閾値設定機能付きコンパレータ

Claims (5)

  1. アナログの入力信号の電位と、複数段の第1の基準電位とを比較し、前記入力信号における上位側デジタル信号を出力する1段目AD変換手段と、
    前記入力信号の電位と、基準電位出力線より供給される複数段の第2の基準電位とを比較し、前記入力信号における下位側デジタル信号を出力する2段目AD変換手段と、
    前記1段目AD変換手段による変換結果に応じて、前記基準電位出力線から前記2段目AD変換手段に供給される複数段の第2の基準電位を切り換える基準電位スイッチと、
    前記基準電位出力線を、前記2段目AD変換手段が動作していない期間に、前記入力信号の電位に基づいて予めプリチャージするためのプリチャージ手段と
    を具備するAD変換器。
  2. 前記基準電位スイッチは、前記1段目AD変換手段の精度をmビットとし、前記2段目AD変換手段の精度をnビットとした場合に、2m−1:1のアナログセレクタを、2n−1組具備し、
    前記基準電位出力線は、2n−1本備えられており、
    前記プリチャージ手段は、前記入力信号の電位を、それぞれ前記2n−1本の基準電子出力線に対して供給する2n−1個のプリチャージ用トラックアンドホールド回路を具備する
    ことを特徴とする請求項1記載のAD変換器。
  3. 前記2n−1個のプリチャージ用トラックアンドホールド回路は、クロック信号に基づいて、サンプリングモードとホールドモードとが切り換わり、
    前記2段目AD変換手段もクロック信号に基づいて動作する
    ことを特徴とする請求項2記載のAD変換器。
  4. アナログの入力信号の電位と、複数段の第1の基準電位とを比較し、前記入力信号における上位側デジタル信号を出力する1段目AD変換手段と、
    前記入力信号の電位と、基準電位出力線より供給される複数段の第2の基準電位とを、複数の閾値設定機能付きコンパレータによって比較し、前記入力信号における下位側デジタル信号を出力する2段目AD変換手段と、
    前記1段目AD変換手段による変換結果に応じて、前記基準電位出力線から前記2段目AD変換手段に含まれている前記複数の閾値設定機能付きコンパレータに供給される基準電位を切り換える基準電位スイッチと、
    前記基準電位出力線を、前記2段目AD変換手段が動作していない期間に、前記入力信号の電位に基づいて予めプリチャージするためのプリチャージ手段と
    を具備するAD変換器。
  5. 前記プリチャージ手段は、前記入力信号の電位を、前記基準電子出力線に供給するプリチャージ用トラックアンドホールド回路を具備する
    ことを特徴とする請求項4記載のAD変換器。
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