JP2009182143A - 熱電素子およびその製造方法、ならびに熱電モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】量産性に優れ、かつ、設計の自由度が高い熱電素子を提供する。
【解決手段】熱電素子2は、基材3と、キャリアの互いに異なる2種の熱電膜が絶縁膜を介して基材の一主面上に繰り返し積層され、かつ、該積層された2種の熱電膜の両端が交互に接合されている積層膜4とを備える。積層体の表面が絶縁膜により覆われ、熱電膜のうちの最下層である熱電膜の端部が、積層体の表面を覆う絶縁膜から露出し、熱電膜のうちの最上層である熱電膜の端部が、積層体の表面を覆う絶縁膜から露出している。
【選択図】図2

Description

この発明は、熱電素子およびその製造方法、ならびに熱電モジュールに関する。詳しくは、熱電材料を積層した熱電素子に関する。
近年、熱電素子は、廃熱エネルギーを有効利用できるために注目されている。高効率でかつ安価な熱電素子を実現すべく、現在、世界的に活発に研究開発が行われている。熱電素子は、直流電流を流すと、その一端が発熱し他端が冷却(吸熱)する冷却素子(ペルチェ素子)と、その一端の温度を高温に保持し他方の温度を低温に保持すると、両端に起電力が発生する発電素子(ゼーベック素子)とに分類される。冷却素子は、清音冷蔵庫、CPU(Central Processing Unit)クーラーなどとして商品化されている。また、発電素子は、宇宙探索を目的とした人工衛星の電源や砂漠の無線中継基地の電源などの特殊用途に用いられている。
性能指数が高く広く使われている熱電材料としては、BiTe系、SiGe系、ZnSb系の材料が挙げられる。特に、BiTe系の熱電材料は、室温付近で高い性能指数を示すため、冷却素子として利用されている。また、SiGe系の熱電材料は、高い信頼性を有するため、宇宙探査機用の発電素子として用いられている。
ところで、熱電素子は、高出力を得るために、多数の素子を板状または円盤状に組み合わせた熱電モジュールとして用いられる。例えば、特許文献1には、n型熱電材料とp型熱電材料を電極によって電気的に直列に接続された熱電モジュールが記載されている。
上記熱電モジュールを構成する熱電素子は、一方向凝固法、ホットプレス法および塑性加工法などにより製造される。一方向凝固法は、熱電材料を所定量秤量した後溶解し、その融液を、温度勾配を与えつつ徐冷して凝固させるものである。ホットプレス法は、熱電材料を所定量秤量した後溶解し凝固させたインゴットを粉砕するもの、または、熱電材料融液を急冷して薄片状または粉体状にしたものを金型に充填して加圧しながら焼結するものである。塑性加工法は、上述のホットプレス法と同様の方法で作製したインゴット粉砕粉、熱電材料融液の急冷薄片または熱電材料融液の急冷粉末を、熱間で押出し、鍛造法またはECAP(Equal-Channel Angular Pressing)法などにより塑性加工するものである。
上述のいずれの製造方法においても、熱電材料を固化したものをウエハー状にスライスし、そのウエハー表面にめっき処理を施し、更に直方体チップ形状に切断して熱電素子を作製し、この熱電素子を電極パターンを有する2枚のセラミクス基板の間に配列させて半田付けすることによって熱電モジュールを形成する。
しかしながら、高密度で微小な素子の製造では、直方体チップ形状に切断して熱電素子を作製し、この熱電素子を組み立てる作業は困難である。そこで、熱電材料を薄い板状に加工した後、熱電材料を積層し、機械加工する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。この方法では、熱電材料を積層後に機械加工するので、熱電材料を切断した後に組み立てたり並べたりする必要がない。
特開2000−299504号公報(段落[0004]、図8参照)
特開平10−209511号公報(段落[0018]〜段落[0039]、図1〜図11参照)
しかし、上記特許文献2に記載された熱電素子は、熱電材料を薄い板状に加工した後、熱電材料を積層し、機械加工することにより作製されるので、量産性および設計の自由度が低いという問題がある。
したがって、この発明の目的は、量産性に優れ、かつ、設計の自由度が高い熱電素子およびその製造方法、ならびに熱電モジュールを提供することにある。
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
基材と、
キャリアの互いに異なる2種の熱電膜が絶縁膜を介して基材の一主面上に繰り返し積層され、かつ、該積層された2種の熱電膜の両端が交互に接合されている積層膜と
を備えることを特徴とする熱電素子である。
第1の発明では、キャリアの互いに異なる2種の熱電膜が絶縁膜を介して基材上に積層され、かつ、該積層された2種の熱電膜の両端が交互に接合されているので、2種の熱電膜を電気的に直列に接続することができる。したがって、熱電素子の両端に温度差があると、各熱電膜のキャリアが同一方向に移動し、そのキャリアが2種の熱電膜で異なるので、積層膜の面内方向に大きな出力電圧を得ることができる。また、電気的に直列に接合された熱電膜に直流電流を流すと、各熱電膜のキャリアが同一方向に移動するので、積層膜の両端に温度差を発生させることができる。
また、キャリアの互いに異なる2種の熱電膜が絶縁膜を介して基材の一主面上に繰り返し積層されているので、基材の形状を適宜選択することにより、熱電素子の形状を所望の形状にすることができる。また、キャリアの互いに異なる2種の熱電膜の両端を、電極を用いずに直接接合しているので、熱電素子の構成を簡略化することができるとともに、電極を介して熱電材料を接合する場合に比して接合部における接触抵抗を低減することができる。
第1の熱電膜の一端をマスクにより覆いながら第1の絶縁膜を成膜する第1の工程と、
第1の絶縁膜上に、第1の熱電膜とはキャリアが異なる第2の熱電膜を成膜する第2の工程と、
第2の熱電膜の他端をマスクにより覆いながら第2の絶縁膜を成膜する第3の工程と
第2の絶縁膜上に第1の熱電膜を成膜する第4の工程と
を備えることを特徴とする熱電素子の製造方法である。
第2の発明では、キャリアの互いに異なる第1の熱電膜および第2の熱電膜を第1の絶縁膜または第2の絶縁膜を介して積層することにより熱電素子を作製するので、機械加工や熱電材料の組立などの工程が不要である。したがって、熱電素子の製造工程を簡略化できる。
以上説明したように、この発明によれば、熱電素子の構成を簡略化することができる。また、基材の形状を適宜選択することにより、熱電素子の形状を所望の形状にすることができる。したがって、量産性に優れ、かつ、設計の自由度が高い熱電素子を実現できる。
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
(1)第1の実施形態
(熱電素子の構成)
図1に、この発明の第1の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す。図2は、図1に示した熱電素子のII−II線に沿った概略断面図である。図1に示すように、熱電素子2は、基材3と、この基材3の一主面上に積層された積層膜4とを備える。図2に示すように、この積層膜4においては、n型熱電膜n1、絶縁膜n2、p型熱電膜p1、絶縁膜p2が基材3上に繰り返し積層されるとともに、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の両端が交互に接合されている。具体的には例えば、基材3の一端において、p型熱電膜p1の一端と、このp型熱電膜p1上に絶縁膜p2を介して成膜されたn型熱電膜n1の一端とが接合され、基材3の他端において、n型熱電膜n1の他端と、このn型熱電膜n1上に絶縁膜n2を介して成膜されたp型熱電膜p1の他端とが接合されている。なお、図2に示した概略断面図は、熱電素子2の膜構成を定性的に説明するためのイメージを図示したものであり、実際の積層膜端部の形状は、図2に示したものとは異なるものになっている。
また、積層膜4の表面は、熱電膜と大気との接触による特性劣化を抑制する観点から、
主として絶縁膜n2により覆われていることが好ましい。この絶縁膜n2により覆われた積層膜4の一端から、熱電膜のうちの最下層であるn型熱電膜n1の一端が露出し、それとは反対の他端から、熱電膜のうちの最上層であるn型熱電膜n1の他端が露出している。これらのn型熱電膜n1の露出部2aおよび露出部2bに対して、例えば電極が接合される。また、必要に応じて、基材3と、熱電膜のうちの最下層であるn型熱電膜n1との間に、SiNなどを主成分とする保護膜をさらに成膜するようにしてもよい。
基材3上における積層膜4の成膜領域は、熱電素子2に求められる特性や形状に応じて適宜選択することができ、発電電力の観点からすると、基材3の一主面全体とすることが好ましい。n型熱電膜n1、p型熱電膜p1の一端は、絶縁膜n2の一端より内側で、かつ、絶縁膜p2の一端より外側に配設することが好ましく、n型熱電膜n1、p型熱電膜p1の他端は、絶縁膜n2の他端より外側で、かつ、絶縁膜p2の他端より内側に配設することが好ましい。これにより、基材3の一端において、p型熱電膜p1の一端と、このp型熱電膜p1上に絶縁膜p2を介して成膜されたn型熱電膜n1の一端とを接合し、基材3の他端において、n型熱電膜n1の他端と、このn型熱電膜n1上に絶縁膜n2を介して成膜されたp型熱電膜p1の他端とを接合することができる。したがって、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の両端を交互に接合し、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1を電気的に直列に接合することができる。
熱電膜のうちの最下層であるn型熱電膜n1の一端は、このn型熱電膜n1上に積層される各薄膜の一端より外側に配設することが好ましい。最下層であるn型熱電膜n1の一端を積層膜4から露出させ、この露出部2aに対して電極などを接合することができるからである。積層膜4の膜厚遷移領域長は5μm以上1mm以下であることが好ましい。膜厚遷移領域長が5μm未満であると、積層回数を増やした場合に絶縁膜による被膜が不十分で電圧降下が顕著となり積層回数に制限ができて性能指数が低下する傾向があり、1mmを超えると、想定される素子サイズ内に占有する遷移領域の比率が大きくなり、素子の性能指数が低下する傾向があるからである。
以下、熱電素子2を構成する基材3、n型熱電膜n1、p型熱電膜p1、絶縁膜n2、絶縁膜p2について順次説明する。
(基材)
基材3の材料は、特に限定されるものではなく、コスト、耐久性および熱伝導率などを考慮して適切なものを選択することができる。具体的には、基材3の材料としては、例えば、樹脂材料などの有機材料、ガラス、石英、Siウェーハなどの無機材料などを用いることができるが、特に、樹脂材料が好ましい。樹脂材料は、低廉であり、軽量かつ耐久性にも優れるという利点を有している。また、適度の硬度を有しているためハンドリング性に優れ、射出成型により容易に成形できるといった製造工程上の利点も有している。さらに、ポリカーボネートなどの樹脂材料はSiウェーハなどの無機材料に比して熱伝導率が低いので、熱電素子2両端の温度差を大きくできるという利点も有している。樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などを用いることができる。
基材3の全体形状としては、例えば、基板状、シート状、フィルム状、ブロック状などを挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではなく、求められる熱電素子2の形状に応じて任意に選択することができる。また、基材3の一主面は、例えば四角形状を有するが、この形状に限定されるものではなく、熱源や冷却点の面積および形状、ならびにその間の間隔などに応じて様々な形状を用いることができる。薄膜材料を基材3上に積層することにより熱電素子2を形成するので、このように様々な形状の基材3を用いることができる。
(n型熱電膜)
n型熱電膜n1は、例えば、アモルファス材料、または結晶材料を主成分として含み、好ましくはアモルファス材料を主成分として含んでいる。アモルファス材料を主成分とすることで、n型熱電膜n1を成膜後にアニール処理により結晶化する工程を省略することができるからである。具体的には、n型熱電膜n1の材料としては、例えば、In23−Ga23−ZnOなどのアモルファス酸化物系材料を主成分とする材料を用いることができるが、特にこの材料に限定されるものではなく、従来公知の熱電材料からn型熱電膜n1に求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
(p型熱電膜)
p型熱電膜p1は、例えば、アモルファス材料、または結晶材料を主成分として含み、好ましくはアモルファス材料を主成分として含んでいる。アモルファス材料を主成分とすることで、p型熱電膜p1を成膜後にアニール処理により結晶化する工程を省略することができるからである。具体的には、p型熱電膜p1の材料としては、例えば、Ge−B、Si−Bなどのアモルファス非酸化物系材料を主成分とする材料を用いることができるが、特にこの材料に限定されるものではなく、従来公知の熱電材料からp型熱電膜p1に求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
(絶縁膜)
絶縁膜n2、絶縁膜p2の材料としては、例えば、SiN、SiO2、MgO、Cr23、ZrO2、HfO2、Y23、ZnS、およびこれらの混合物などを用いることができるが、特にこれら材料に限定されるものではなく、従来公知の絶縁材料から絶縁膜n2、絶縁膜p2に求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
上述の構成を有する熱電素子2では、その両端に温度差があると、各層のキャリアが同一方向に移動し、そのキャリアが、交互に積層されたn型熱電膜n1、p型熱電膜p1とで異なるため、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の積層数に応じた出力電圧を得ることができる。具体的には、n型熱電膜n1、p型熱電膜p1をそれぞれn層積層した場合、熱電膜のうちの最下層であるn型熱電膜n1の露出部2aと、熱電膜のうちの最上層であるn型熱電膜n1の露出部2bとの間において、単純には単層膜の場合と比べて2n倍の出力電圧が得られる。例えば、熱電素子2の一端が高温であり他端が低温である場合、n型熱電膜n1の露出部2aの側がn型熱電膜n1の露出部2bよりも高電圧側になる。
(熱電素子の製造方法)
次に、上述の構成を有する熱電素子2の製造方法の一例について説明する。
まず、図3、図4を参照して、熱電素子2の製造に用いられるスパッタ装置の一例について説明する。図3は、熱電素子2の製造に用いられるスパッタ装置の一構成例を示す。図3に示すように、このスパッタリング装置は、いわゆるマルチチャンバー型枚葉式スパッタリング装置であり、メインチャンバー21と、このメインチャンバー21の周囲に設けられた複数のプロセスチャンバー220〜228および基材ローダ23とを備える。なお、スパッタリング装置はマルチチャンバー型枚葉式スパッタリング装置に限定されるものではなく、インライン型スパッタリング装置などを用いてもよい。
メインチャンバー21は、そのチャンバー21内に搬送部24を備える。この搬送部24は、メインチャンバー21の中心に配設された回転機構部25と、この回転機構部25の中心Oから放射状に延びる複数の搬送アーム26とを備える。搬送アーム26の数は、例えば、プロセスチャンバー220〜228および基材ローダ23の合計の数と同数とされる。
回転機構部25は、その中心Oを軸として回転可能に構成されている。搬送アーム26は、その一端に基材3を保持するための基材ホルダ27を備え、この基材ホルダ27が備えられた側とは反対側の端部が、基材ホルダ27をプロセスチャンバー220〜228に向けて突出可能に回転機構部25に保持されている。基材ローダ23は、図示を省略した扉(バルブ)を備え、この扉を介して、メインチャンバー21に対する基材3の搬入および搬出が行われる。
プロセスチャンバー220、221、225は、基材3上にn型熱電膜n1を成膜するための成膜室であり、プロセスチャンバー223、227は、基材3上にp型熱電膜p1を成膜するための成膜室である。また、プロセスチャンバー222、226は、基材3上に絶縁膜n2を成膜するための成膜室であり、プロセスチャンバー224、228は、基材3上に絶縁膜p2を成膜するための成膜室である。プロセスチャンバー221〜228内には、薄膜を所定の位置に成膜するためのマスクが設けられている。これに対して、プロセスチャンバー220内には、上記マスクが設けられておらず、プロセスチャンバー220では薄膜が基材3の一主面全体に成膜される。
図4は、プロセスチャンバー221〜228の一構成例を示す。図4に示すように、プロセスチャンバー221〜228内部には、ターゲット22aおよびマスク22bが配設されている。プロセスチャンバー221〜228とメインチャンバー21との間には、図示を省略した扉(バルブ)が設けられている。この扉は基材3の搬送および搬出に際して適宜開閉される。また、プロセスチャンバー221〜228内には、プロセスガスを導入するためのガス導入管(図示省略)がスパッタリング装置の外部から導入されている。また、基材3上に熱電膜を成膜するためのプロセスチャンバー220、221、223、225、227内には、必要に応じてレーザフラッシュランプなどを備え、成膜した熱電膜に対してアニール処理を施すようにしてもよい。
また、基材3をプロセスチャンバー221〜228内の所定位置に搬送すると、プロセスチャンバー221〜228内に設置されたマスク22bに対して、基材3が押し付けられる構成になっている。膜厚遷移領域長が短くならないように、露出部3bの幅、積層数などを適宜調整し、マスク22bと基材3の間に僅かの隙間を設けることが好ましい。これにより、基材表面に傷が付きにくいという利点が得られるからである。マスク位置はプロセスチャンバー221〜228毎に固定されており、その位置は基材3上に積層される各積層膜の成膜エリアに応じて設定されている。
n型熱電膜n1、絶縁膜n2、p型熱電膜p1、絶縁膜n2を形成するときには、例えば、図2に示す各成膜領域に開口を有するマスク22bを用いる。このように、各膜の成膜時にはマスク22bが用いられるので、成膜される範囲が制限される。具体的には、n型熱電膜n1とp型熱電膜p1とが端部で接するように、マスク22bの位置が各チャンバー221〜229内で調整される。
例えば、マスク22bはプロセスチャンバー221〜229内において以下のように設けられる。n型熱電膜n1、p型熱電膜p1を成膜するプロセスチャンバー221、223、225、227では、マスク22bに対して基材3が押し付けられた状態において、このマスク22bが基材3の両端を覆い、その先端は図2に示す位置P21、P22に位置する。絶縁膜n2を成膜するプロセスチャンバー222、226では、マスク22bに対して基材3が押し付けられた状態において、このマスク22bが基材3の両端を覆い、その先端は図2に示す位置P11、P12に位置する。絶縁膜p2を成膜するプロセスチャンバー224、228では、マスク22bに対して基材3が押し付けられた状態において、このマスク22bが基材3の両端を覆い、その先端は図2に示す位置P31、P32に位置する。なお、n型熱電膜n1、p型熱電膜p1を成膜するときにおけるマスク22bの位置は同一位置である必要はなく、p型熱電膜p1およびn型熱電膜n1の両端が交互に接合されるようになっていれば、異なっていてもよい。
次に、上述の構成を有するスパッタリング装置を用いた熱電素子2の製造方法の一例について説明する。
まず、例えば射出成形法により、基材3を成形する。次に、基材ホルダ27に基材3を保持し、基材ローダ23を介して基材3をメインチャンバー21内に搬入する。
次に、基材3を、例えばn型熱電材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー220に搬入する。そして、プロセスチャンバー220内が所定の圧力になるまで真空引きする。その後、例えばArをプロセスチャンバー220内に導入しながらスパッタリングを行うことにより、例えばn型熱電材料を主成分とするn型熱電膜n1を基材3の一主面全体に形成する。
次に、基材3を、メインチャンバー21を介して、絶縁材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー222に搬入する。そして、プロセスチャンバー222内が所定の圧力になるまで真空引きする。その後、例えばArをプロセスチャンバー222内に導入しながらスパッタリングを行うことにより、例えば絶縁材料を主成分とする絶縁膜n2をn型熱電膜n1上に形成する。このプロセスチャンバー222ではマスク22bが基材3の両端を覆い、その先端は例えば図2に示す位置P11、P12に位置するので、n型熱電膜n1の両端が絶縁膜n2から露出する。
次に、基材3を、メインチャンバー21を介して、p型熱電材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー223に搬入する。そして、プロセスチャンバー222内が所定の圧力になるまで真空引きする。その後、例えばArをプロセスチャンバー222内に導入しながらスパッタリングを行うことにより、例えばp型熱電材料を主成分とするp型熱電膜p1を絶縁膜n2上に形成する。このプロセスチャンバー223ではマスク22bが基材3の両端を覆い、その先端は例えば図2に示す位置P21、P22に位置するので、絶縁膜n2の一端がp型熱電膜p1から露出し、絶縁膜n2の他端がp型熱電膜p1により覆われる。これにより、n型熱電膜n1の他端とp型熱電膜n1の他端とが接合される。
次に、基材3を、メインチャンバー21を介して、絶縁材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー224に搬入する。そして、プロセスチャンバー224内が所定の圧力になるまで真空引きする。その後、例えばArをプロセスチャンバー224内に導入しながらスパッタリングを行うことにより、例えば絶縁材料を主成分とする絶縁膜p2をp型熱電膜p1上に形成する。このプロセスチャンバー224ではマスク22bが基材3の両端を覆い、その先端は例えば図2に示す位置P31、P32に位置するので、p型熱電膜p1の一端が絶縁膜p2から露出し、p型熱電膜p1の他端が絶縁膜p2により覆われる。
次に、基材3を、メインチャンバー21を介して、n型熱電材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー225に搬入する。そして、プロセスチャンバー225内が所定の圧力になるまで真空引きする。その後、例えばArをプロセスチャンバー225内に導入しながらスパッタリングを行うことにより、例えばn型熱電材料を主成分とするn型熱電膜n1上に形成する。このプロセスチャンバー225ではマスク22bが基材3の両端を覆い、その先端は例えば図2に示す位置P21、P22に位置するので、絶縁膜p2の一端がn型熱電膜n1により覆われ、絶縁膜p2の他端がn型熱電膜から露出する。これにより、p型熱電膜n1の一端とn型熱電膜n1の一端とが接合される。
次に、上述の工程と同様にして、基材3を、メインチャンバー21を介して、プロセスチャンバー226〜228に順次搬送して、絶縁膜n2、p型熱電膜p1、絶縁膜p2を基材3上にさらに積層する。
次に、n型熱電膜n1、絶縁膜n2、p型熱電膜p1、絶縁膜p2を基材3上のさらに積層する場合には、基材ローダ23およびプロセスチャンバー220を通過し、プロセスチャンバー221内に搬送する。その後、上述と同様の成膜工程を繰り返す。そして、積層数が所望の積層数になった時点で、基材3を基材ローダ23を介して搬出する。
以上により、目的とする熱電素子2が得られる。
この第1の実施形態によれば、n型熱電膜n1、絶縁膜n2、p型熱電膜p1、絶縁膜p2を基材3上に順次積層するととともに、n型熱電膜n1とp型熱電膜p1との両端を交互に接合するので、キャリアが互いに異なるn型熱電膜n1とp型熱電膜p1とを電気的に直列に接合することができる。したがって、熱電素子2の両端に温度差があると、n型熱電膜n1とp型熱電膜p1とのキャリアが同一方向に移動し、そのキャリアがn型熱電膜n1とp型熱電膜p1とで異なるので、露出部2a、2b間において大きな出力電圧を得ることができる。また、電気的に直列に接合されたn型熱電膜n1およびp型熱電膜p1に直流電圧を流すと、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1のキャリアが同一方向に移動するので、積層体4の一端を加熱し、他方を冷却することができる。よって、高出力な発電素子、または高効率の冷却素子として熱電素子2を用いることができる。
また、この第1の実施形態による熱電素子の作製に用いるスパッタリング装置では、プロセスチャンバー221〜228内にマスク22bを設けているので、各層毎にマスク位置をずらす必要がある熱電素子2の作製において、優れた生産性を実現することができる。これに対して、従来のスパッタリング装置では、マスクが基材表面の適切な位置に配置されるように、マスクを基材ホルダに固定しているので、各層毎にマスク位置をずらす必要がある熱電素子2の作製においては、量産性が低下してしまう。すなわち、この第1の実施形態による熱電素子2の作製に用いるスパッタリング装置では、従来のスパッタリング装置に比して、熱電素子2の生産性を向上させることができる。
また、基材3の一主面上にn型熱電膜n1、絶縁膜n2、p型熱電膜p1、絶縁膜p2を基材3上に順次積層することにより熱電素子2を作製することができるので、機械加工や熱電材料の組立などの処理が不要である。よって、熱電素子を効率よく安価に作製することができる。
また、n型熱電薄膜n1とp型熱電薄膜p1の接合部近傍では、薄膜を堆積した際に段差ができるが、その段差で熱電膜の性能が劣化しないように、マスク端面の膜厚分布を適切に形成した場合、熱電素子2の特性の劣化なく積層数を多く取ることができる。
(2)第2の実施形態
図5に、この発明の第2の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す。図6は、図5に示した熱電素子のVI−VI線に沿った概略断面図である。図5に示すように、熱電素子2は、基材3と、この基材3の一主面上に積層された積層膜4とを備える。図6に示すように、この熱電素子2は、n型熱電膜n1、およびp型熱電膜p1の積層順序が第1の実施形態とは反対になっている。すなわち、この熱電素子2においては、p型熱電膜p1、絶縁膜p2、n型熱電膜n1、絶縁膜n2が基材3上に繰り返し積層されるとともに、p型熱電膜p1およびn型熱電膜n1の両端が交互に接合されている。具体的には例えば、基材3の一端において、n型熱電膜n1の一端と、このn型熱電膜n1上に絶縁膜n2を介して成膜されたp型熱電膜p1の一端とが接合され、基材3の他端において、p型熱電膜p1の他端と、このp型熱電膜p1上に絶縁膜p2を介して成膜されたn型熱電膜n1の他端とが接合される。
また、積層膜4の表面は、熱電膜と大気との接触による特性劣化を抑制する観点から、主として最上層の絶縁膜p2により覆われていることが好ましい。この絶縁膜p2により覆われた積層膜4の一端から、熱電膜のうちの最下層であるp型熱電膜p1の一端が露出し、それとは反対の他端から、熱電膜のうちの最上層であるp型熱電膜p1の他端が露出している。これらのp型熱電膜p1の露出部2aおよび露出部2bに対して、例えば電極が接合される。
n型熱電膜n1、p型熱電膜p1の一端は、絶縁膜p2の一端より内側で、かつ、絶縁膜n2より外側に配設することが好ましく、n型熱電膜n1、p型熱電膜p1の他端は、絶縁膜p2の他端より外側で、かつ、絶縁膜n2の他端より内側に配設することが好ましい。これにより、基材3の一端において、n型熱電膜n1の一端と、このn型熱電膜n1上に絶縁膜n2を介して成膜されたp型熱電膜p1の一端とを接合し、基材3の他端において、p型熱電膜p1の他端と、このp型熱電膜n1上に絶縁膜p2を介して成膜されたn型熱電膜n1の他端とを接合することができる。したがって、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の両端を交互に接合し、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1を電気的に直列に接合することができる。
熱電膜のうちの最下層であるp型熱電膜p1の一端は、このp型熱電膜p1上に積層される各薄膜の一端より外側に配設することが好ましい。最下層であるp型熱電膜p1の一端を積層膜4から露出させ、この露出部2aに対して電極などを接合することができるからである。
この第2の実施形態においては、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
この第2の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。ただし、露出部2a、2bにおける電圧の極性は第1の実施形態とは反対になる。
(3)第3の実施形態
図7に、この発明の第3の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す。図8は、図7に示した熱電素子のVIII−VIII線に沿った概略断面図である。図7に示すように、熱電素子2は、基材3と、この基材3の一主面上に積層された積層膜4とを備える。この積層膜4の一端には、熱電膜が露出する露出部2a、2bが設けられている。図8に示すように、積層膜4の表面は、熱電膜と大気との接触による特性劣化を抑制する観点から、主として絶縁膜p2により覆われていることが好ましい。この絶縁膜p2により覆われた積層膜4の一端から、熱電膜のうちの最下層であるn型熱電膜n1の一端と、熱電膜のうちの最上層であるp型熱電膜p1の一端とが露出している。これらのn型熱電膜n1の露出部2aおよびp型熱電膜p1の露出部2bに対して、例えば電極が接合される。
この第3の実施形態においては、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
この第3の実施形態によれば、熱電素子2の一端部に露出部2aおよび露出部2bを設けているので、熱電素子2を発電素子として用いる場合には、露出部2aおよび露出部2bを高温側または低温側に配置することができる。電極からの熱伝導を考慮したり、どちらかの温度には電極を配置したくない場合などに有効である。また、熱電素子2を冷却素子として用いる場合には、露出部2aおよび露出部2bが設けられた側とは反対の端部を冷却することができるため、電極による熱の損出を無くすことができる。
(4)第4の実施形態
図9に、この発明の第4の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す。図10は、図9に示した熱電素子のX−X線に沿った概略断面図である。図9に示すように、熱電素子2は、基材3と、この基材3の一主面上に積層された積層膜4とを備える。この積層膜4の一端には、熱電膜が露出する露出部2a、2bが設けられている。図10に示すように、積層膜4の表面は、熱電膜と大気との接触による特性劣化を抑制する観点から、主として絶縁膜n2により覆われていることが好ましい。この絶縁膜n2により覆われた積層膜4の一端から、熱電膜のうちの最下層であるp型熱電膜p1の一端と、熱電膜のうちの最上層であるn型熱電膜n1の一端とが露出している。これらのn型熱電膜n1の露出部2aおよびp型熱電膜p1の露出部2bに対して、例えば電極が接合される。
この第4の実施形態においては、上記以外のことは、第2の実施形態と同様である。
この第4の実施形態によれば、上述の第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。ただし、露出部2a、2bにおける電圧の極性は第3の実施形態とは反対になる。
(5)第5の実施形態
(熱電素子の構成)
図11に、この発明の第5の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す。図12は、図11に示した熱電素子のXII−XII線に沿った概略断面図である。この熱電素子2においては、例えば、すべてのn型熱電膜n1、p型熱電膜p1が基材3上の同一領域に積層されている。また、この熱電素子2においては、基材3と、熱電膜のうちの最下層であるn型熱電膜n1との間に導電膜3aがさらに備えられ、この導電膜3aの一端が積層膜4の一端から導出されている。導電膜3aの材料としては、例えば、Al、Ag、Cu、Au、Fe、Ti、Crなどの金属材料またはこれらを主材料とする合金、もしくはZnO、In23、SnO2などの酸化物導電膜またはこれらの混合物を主材料と材料を用いることができるが、これらの材料に限定されるものではなく、導電性を有するものであれば用いることができる。
図12では、基材3とn型熱電膜n1との間に導電膜3aを設けた場合が示されているが、導電膜3aとn型熱電膜n1とが電気的に接続されていればよく、例えば、n型熱電膜n1と絶縁膜n2との間に導電膜3aを設けるようにしてもよい。
この第5の実施形態においては、上記以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
(熱電素子の製造方法)
次に、上述の構成を有する熱電素子2の製造方法の一例について説明する。
まず、図13を参照して、熱電素子2の製造に用いられるスパッタリング装置の一例について説明する。図13は、熱電素子2の製造に用いられるスパッタリング装置の一構成例を示す。図13に示すように、このスパッタリング装置は、熱電膜を基材3の一主面全体に成膜するためのプロセスチャンバー220が省略されている以外のことは、第1の実施形態におけるものと同様である。
このスパッタリング装置においては、プロセスチャンバー数は、4の倍数の数とすることが好ましい。これは、上述したように、熱電素子2は、n型熱電膜n1、絶縁膜n2、p型熱電膜p1、絶縁膜p2の4層の積層膜を繰り返しの構成単位とし、また、上記4層の積層膜を成膜するときのマスク位置はそれぞれ固定されていてもよいためである。また、スパッタリング装置の構成を簡略化し、設備投資(初期投資)を低減する観点からすると、プロセスチャンバー数をできる限り少なくすることが好ましく、具体的には、積層膜の構成単位である4層を成膜するのに必要な4チャンバーとすることが好ましい。一方、内部に同時に投入できる基材3の数を増やしたり、マスクや内部の防着板の交換・清掃の周期を長く取ったりすることにより、生産性を向上させる観点からすると、プロセスチャンバー数を多くすることが好ましい。
次に、上述の構成を有するスパッタリング装置を用いた熱電素子2の製造方法の一例について説明する。
まず、例えば射出成形法により、基材3を成形する。次に、例えばスパッタリング法により基材3上に導電膜3aを成膜する。この際、導電膜3aは、例えば、少なくとも基材3の一端部に成膜される。次に、基材ホルダ27に基材3を保持し、基材ローダ23を介して基材3をメインチャンバー21内に搬入する。
次に、基材3を、例えばn型熱電材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー221に搬入する。そして、プロセスチャンバー221内が所定の圧力になるまで真空引きする。その後、例えばArをプロセスチャンバー221内に導入しながらスパッタリングを行うことにより、例えばn型熱電材料を主成分とするn型熱電膜n1を導電膜3a上に成膜する。このプロセスチャンバー221ではマスク22bが基材3の両端を覆い、その先端は例えば図12に示す位置P21、P22に位置するので、導電膜3aの一端がn型熱電膜n1から露出し、導電膜3aの他端がn型熱電膜n1により覆われ、導電膜3aとn型熱電膜n1とが接合される。
この第5の実施形態においては、これ以降の工程は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
この第5の実施形態によれば、基材3と、熱電膜のうちの最下層であるn型熱電膜n1との間に導電膜3aを設け、この導電膜3aの一端を積層膜4の一端から導出しているので、すべての熱電膜を同一のマスク位置にて成膜すること可能となる。したがって、熱電素子2の量産性を向上することができる。
また、上述の第1の実施形態のように、マスク22bが備えられていないプロセスチャンバー220を設ける必要がなくなるで、上述の第1の実施形態に比してプロセスチャンバー数を減らすことができる。したがって、スパッタリング装置の構成を第1の実施形態に比して簡略化することができる。
(6)第6の実施形態
(熱電モジュールの構成)
図14は、この発明の第6の実施形態による熱電モジュールの一構成例を示す。図14に示すように、この熱電モジュール1は、積層された複数の熱電素子2と、その両側面に設けられた電極膜5、5とを備える。熱電モジュール1を太陽光発電モジュールとして用いる場合には、電極膜5、5が設けられた側面うちの一方から光が照射される。また、熱電モジュール1を熱電発電モジュールとして用いる場合には、電極膜5、5が設けられた側面うちの一方が高温熱源に配設され、他方が低温熱源に配設される。
基材3の積層数は、熱電モジュール1が所望の大きさとなるように、適宜調整することが好ましい。例えば、熱電モジュール1を屋根などに設置される太陽光発電モジュールとして用いる場合には、その設置面積に応じて多数の熱電素子2を積層して1つの熱電モジュール1の大きさを大きくすることが好ましい。また、熱電モジュール1を携帯機器の電源として用いる場合には、その携帯機器のサイズに応じて熱電素子の積層数を適宜調整して、熱電モジュール1のサイズを携帯機器より小さくすることが好ましい。
図15は、この発明の第6の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す。図16は、図15に示した熱電素子のXVI−XVI線に沿った概略断面図である。熱電素子2は、基材3と、この基材3の一主面に設けられた積層膜4とを備える。熱電素子2の両端には、傾斜面が設けられており、この両端の傾斜面上にそれぞれ露出部2a、2bが設けられている。この露出部2a、2bそれぞれに対して、熱電モジュール1の両側面に設けられた電極膜5、5が接合される。
以下、熱電モジュール1を構成する基材3、積層膜4、電極膜5について順次説明する。
(基材)
図17は、基材3の一形状例を示す。図17に示すように、基材3の両端には、両主面3aから傾斜する傾斜面3b、3bが設けられている。この傾斜面3b、3bは、熱電素子2をモジュール化したときに、例えば光を集光する集光面として機能するものである。この基材3の両端に設けられた傾斜面3b、3bは、熱電モジュール1の両側面において連なるように配設されており、この連なった傾斜面3b、3bにより熱電モジュール1の両側面に溝5a、5aが形成される。この溝5a、5aの断面形状はV字状であることが好ましい。このようにV字状にすることで、太陽光などの光の吸収効率を向上することができる。すなわち、溝5aを形成する一方の傾斜面3bにより反射された太陽光の成分が、他方の傾斜面3bに到達し、その一部の成分が吸収され残りの成分が反射される。このような反射がすべての光が傾斜面3b、3bにより吸収されるまで繰り返される。なお、この発明において、V字状とは、完全なV字状のみならず、溝5aの先端部および/または傾斜面3bに多少の曲率があるものも意味する。
図18は、図17に示した基材3の端部を拡大して示したものである。図18に示すように、この基材3の主面3aに対する傾斜面3b、3bの傾斜角θ1、θ2は、好ましくは20度以上70度以下、より好ましくは30度以上70度以下である。傾斜角θ1、θ2が20度未満であると電極膜5が傾斜面3bに対してほとんど形成されず、積層膜4と電極膜5とが接合しなくなり、積層膜4と電極膜5と間の導電性が低下する傾向があり、傾斜角θ1、θ2が70度を超えると積層膜4が傾斜面3bに対してほとんど形成されず、積層膜4と電極膜5とが接合しなくなり、積層膜4と電極膜5と間の導電性が低下する傾向がある。
(積層膜)
熱電膜のうちの最下層であるn型熱電膜n1の一端が積層膜4から露出し、この露出部2aが基材3の一端の傾斜面3b上に設けられている。熱電膜のうちの最上層であるn型熱電膜n1の他端が積層膜4から露出し、この露出部2bが基材3の他方の傾斜面3b上に設けられている。
(電極膜)
電極膜5、5の材料は、熱電モジュール1の用途に応じて選択することが好ましい。熱電モジュール1を太陽光熱発電モジュールとして用いる場合には、電極膜5、5間の温度差を大きくする観点から、電極膜5、5のうちの一方の材料としては、カーボンなどの光吸収係数の高い材料を主成分とするものが好ましい。この場合、他方の材料は、特に限定されるものではなく、従来公知の電極材料から電極膜5に求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
熱電モジュール1を冷却モジュールとして用いる場合には、電極膜5、5の材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Cu、Tiなどの金属単体、またはこれらを主成分とする合金を用いることができるが、電極膜5、5として所望の機能が得られるものであればよく、特に上記材料に限定されるものではない。
この第6の実施形態においては、上記以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
上述の構成を有する熱電モジュール1は、一方の電極膜5に光を照射すると、一方の電極膜5の温度が他方の電極膜5の温度に比して高くなる。これにより、積層膜4を構成するn型熱電膜n1およびp型熱電膜p1のキャリアが高温側から低温側に移動し、両電極膜5、5の間に電位差が生じる。したがって、熱電モジュール1を高出力な熱電発電モジュールとして用いることができる。
これに対して、両電極膜5、5間に電流を流すと、積層膜4を構成するn型熱電膜n1およびp型熱電膜p1のキャリアが一端から他端に移動する。これにより、熱電モジュールの電極膜5、5がのうち一方を加熱し、他方を冷却することができる。したがって、熱電モジュール1を高効率な熱電冷却モジュールとして用いることができる。
(熱電モジュールの製造方法)
次に、図19を参照して、上述の構成を有する熱電モジュール1の製造方法の一例について説明する。
まず、例えば射出成形法により、図19Aに示すように、両端に傾斜面3b、3bを有する基材3を成形する。次に、例えばスパッタリング法により、図19Bに示すように、基材3の一主面3aからこの一主面3aの両端の傾斜面3b、3bにわたって積層膜4を積層する。具体的には、上述の第1の実施形態と同様にして、図3に示したスパッタリング装置を用いて、基材3の一主面3a上に積層膜4を積層する。これにより、熱電素子2が得られる。
次に、上述のようにして作製した熱電素子2を例えば以下のようにして接着剤により貼り合わせる。まず、図19Cに示すように、スピンコータのターンテーブル11に熱電素子2を載置した後、この熱電素子2の積層膜4上に接着剤を滴下し、ターンテーブル11を回転し接着剤を振り切る。これにより、接着剤が積層膜4上にほぼ均一に塗工される。接着剤としては、例えば、感圧性粘着剤(Pressure Sensitive Adhesive:PSA)、紫外線硬化樹脂などを用いることができ、これらの接着剤から積層膜4の光透過性を考慮して選択することが好ましい。具体的には、熱電材料としてGeBのような光透過性の低い材料を用いる場合、感圧性接着剤を用いることが好ましい。また、熱電材料としてアモルファス酸化物のような光透過性の高い材料を用いる場合、紫外線硬化樹脂および感圧性粘着剤のいずれの材料を用いることができる。なお、熱電素子2の接着方法は、上述の例に限定されるものでなく、PSAテープなどの接着テープにより熱電素子2を貼り合わせるようにしてもよい。
次に、図19Dに示すように、接着剤6が塗工された熱電素子2上に、傾斜面3bの方向が同一の方向に揃うように適宜位置合わせをしながら、熱電素子2を載置する。この際、図20に示すように、基材3の傾斜面3b、3b間に形成された溝部に接着剤6がはみ出すようにすることが好ましい。このようにすることで、傾斜面3b、3b間に隙間が形成されることを防ぐことができる。すなわち、次工程で電極膜5を傾斜面3b上に形成したときに、上記隙間により電極膜5が断線することを防げる。次に、必要に応じて紫外線を接着剤に対して照射して、接着剤を硬化する。上記貼り合わせの工程を繰り返すことにより、図19Eに示すように、複数の熱電素子2を積層する。これにより、両側面に傾斜面3bが連なった積層体が得られる。次に、例えばスパッタリング法により、傾斜面3bが連なった積層体の両側面上に電極膜5を成膜する。
以上により、目的とする熱電モジュール1が得られる。
この第6の実施形態によれば、複数の熱電素子2を積層して積層体を作製し、この積層体の両側面に電極膜5、5を成膜するだけで、熱電モジュール1を作製することができるので、熱電素子2を容易にモジュール化することができる。すなわち、量産性に優れた熱電モジュール1を実現できる。また、基材3の形状を適宜選択するだけで、熱電モジュール1全体の形状や大きさを容易に所望のものとすることができる。すなわち、従来の熱電モジュールに比して熱電モジュール1の形状設計の自由度が高く、例えば小型化なども容易である。
また、この熱電モジュール1では、熱電素子2を電極膜5、5により電気的に並列に接続しているので、何らかの理由で一部の熱電素子2が機能しなくなっても、外部機器などに対して電力を供給することができる。また、積層膜4を有する熱電素子2を並列に接続してモジュール化しているので、高出力な熱電発電モジュール、または高効率の冷却モジュールとして熱電モジュール1を用いることができる。
また、熱電モジュール1の側面には溝5aが設けられているので、太陽光などの光を繰り返し反射させながら電極膜5により吸収することができる。したがって、電極膜5における光の吸収効率を向上することができ、これにより電極膜5、5間の温度差を大きくすることができる。すなわち、熱電モジュール1を高出力の熱電発電モジュールとして用いることができる。
(7)第7の実施形態
この第7の実施形態による熱電モジュール1は、第6の実施形態において、基材3の両主面3aに積層膜4を積層したものである。
図21は、この発明の第7の実施形態による熱電素子の一構成例を示す。図21に示すように、この熱電素子2は、基材3と、この基材3の両主面に積層された積層膜4、4を備える。熱電素子2の一端において、キャリアが同一であるn型熱電膜n1、n1の一端がそれぞれ積層膜4、4から露出している。この露出部2a、2aに対して、熱電素子2の一方の側面に設けられた電極膜5が電気的に接合される。一方、熱電素子2の他端において、キャリアが同一であるp型熱電膜p1、p1の他端がそれぞれ積層膜4、4から露出している。この露出部2a、2bに対して、熱電素子2の他方の側面に設けられた電極膜5、5が電気的に接合される。積層膜4、4は、上述の第1の実施形態と同様である。
この第7の実施形態において、上記以外のことは第6の実施形態と同様である。
この第7の実施形態によれば、基材3の両面に積層膜4を積層しているので、第6の実施形態よりも高出力を得ることができる。
(8)第8の実施形態
上述したように、第6および第7の実施形態では、各基材3上の積層膜4は電極膜5、5により並列に接続されているため、何らかの理由で一部の熱電素子2が機能しなくなった場合にも、外部機器などに対して電力を供給できるという利点を有する。その一方で、得られる電圧値は、基材3上の積層膜4のゼーベック係数で決まる値が得られるに留まる。そこで、この第8の実施形態では、上述の熱電モジュール1を複数結合して用いた例を示す。
図22は、この発明の第8の実施形態による熱電システムの一構成例を示す。図22に示すように、この熱電システム30においては、複数の熱電モジュール11〜13が、その側面に設けられた電極膜5、5を介して接合されている。熱電モジュール11〜13間は、例えば導電性接着剤などの導電性ペーストや半田などにより接着される。
熱電システム30の側面に設けられた電極膜5、5の材料は、熱電システム30の用途に応じて選定することが好ましい。熱電システム30を太陽光熱発電モジュールとして用いる場合には、その側面に設けられた電極膜5、5間の温度差を大きくする観点から、これらの電極膜5、5のうちの一方の材料としては、カーボンなどの光吸収係数の高い材料を主成分とするものが好ましい。この場合、他方の材料は、特に限定されるものではなく、従来公知の電極材料から電極膜5に求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
熱電モジュール1を冷却モジュールとして用いる場合には、電極膜5、5の材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Cu、Tiなどの金属単体、またはこれらを主成分とする合金を用いることができるが、電極5、5として所望の機能が得られるものであればよく、特に上記材料に限定されるものではない。
この第8の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
この第8の実施形態によれば、複数の熱電モジュール1が並列に接合されているので、第1の実施形態よりも大きな出力電圧を得ることができる。また、熱電システム30においては複数の熱電素子2が電気的に直列および並列に接続されているので、熱電システム30を構成する熱電素子2のいくつかに不具合があった場合にも、外部機器などに電力を供給できる。
(9)第9の実施形態
(熱電モジュールの構成)
図23は、この発明の第9の実施形態による熱電モジュールの一構成例を示す。図23に示すように、熱電モジュール1は、積層された複数の熱電素子2と、その一方の側面に設けられた絶縁膜8と、この絶縁膜8上に設けられた光吸収膜9とを備える。また、積層された熱電素子2の両端には電極11、11が接合されている。
図24は、この発明の第9の実施形態による熱電素子の一構成例を示す。図24に示すように、熱電素子2は、基材3と、基材3の一主面に設けられた積層膜4aと、基材3の他主面に設けられた積層膜4bと、基材3の一端の傾斜面3b、3bに設けられた電極膜7とを備える。積層膜4aは、第1の実施形態における積層膜4と同様であり、積層膜4bは、第2の実施形態における積層膜4と同様である。
熱電素子2の一端において、キャリアが互いに異なるn型熱電膜n1、p型熱電膜p1の一端がそれぞれ積層膜4、4から露出している。この露出部2a、2aに対して、熱電素子2の一端に設けられた電極膜7が電気的に接合される。一方、熱電素子2の他端において、キャリアが互いに異なるn型熱電膜n1、p型熱電膜p1の他端がそれぞれ積層膜4、4から露出している。この露出部2b、2bがそれぞれ、隣り合う熱電素子2の露出部2b、2bと導電性ペーストなどを介して電気的に接続される。
図7では、傾斜面3b、3bにおいて、電極膜7上にn型熱電膜n1およびp型熱電膜p1を成膜する構成が示されているが、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1上に電極膜7を成膜する構成としてもよい。
絶縁膜8の材料としては、熱伝導率が高いものが好ましく、例えば、Si34、SiO2、Al23、BNなどの材料を用いることができるが、絶縁膜8として所望の機能が得られるものであればよく、特に上記材料に限定されるものではない。光吸収膜9の材料としては、吸収した光を熱に効率良く変換できる材料が好ましく、例えば、カーボンを用いることができるが、光吸収膜9として所望の機能が得られるものであればよく、特に上記材料に限定されるものではない。
電極膜7としては、例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Cu、Tiなどの金属単体、またはこれらを主成分とする合金を用いることができるが、電極膜7として所望の機能が得られるものであればよく、特に上記材料に限定されるものではない。
上述の構成を有する熱電モジュール1では、光吸収膜9の側から熱電モジュール1に対して光を照射すると、照射光が光吸収膜9により吸収されて熱に変換される。これにより、熱電モジュール1の両側面の間に温度差が生じるので、電極11、11間に起電力が発生する。すなわち、熱電モジュール1は高出力な熱電発電モジュールとして機能する。
また、電極11、11の間に電流を流すと、熱電モジュール1の両側面に温度差が誘起され、熱電モジュール1の光吸収膜9が設けられた側が冷却される。すなわち、熱電モジュール1は高効率な熱電冷却モジュールとして機能する。
この第9の実施形態において、上記以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
(熱電モジュールの製造方法)
次に、上述の構成を有する熱電モジュール1の製造方法の一例について説明する。
まず、例えば射出成形法により基材3を成形する。次に、例えばスパッタリング法により基材3の一端の傾斜面3b、3bに電極膜7を成膜する。次に、例えばスパッタリング法により、基材3の一主面3aからこの一主面3aの両端の傾斜面3b、3bにわたって積層膜4aを積層する。具体的には、上述の第1の実施形態と同様にして、基材3上に積層膜4aを積層する。次に、例えばスパッタリング法により、基材3の他主面3aからこの他主面3aの両端の傾斜面3b、3bにわたって積層膜4bを積層する。具体的には、上述の第2の実施形態と同様にして、基材3上に積層膜4bを積層する。これにより、熱電素子2が得られる。
次に、積層膜4aおよび積層膜4bのうちの一方において、電極膜7を成膜したのとは反対側の端部またはその近傍に導電性ペーストを塗布する。導電性ペーストは、基材3を貼り合わせた際に端面から少しはみ出る程度に塗布することが好ましい。次に、積層膜4aおよび積層膜4bのうち一方の面上に接着剤を滴下し、上記工程と同様にして作製された熱電素子2を、積層膜4aと積層膜4bとが対向するとともに、傾斜面3bの方向が同一の方向に揃うように適宜位置合わせをしながら、重ね合わせる。接着剤は端面からはみ出ない程度に少なめにすることが好ましい。接着剤としては、例えば、感圧性粘着剤、紫外線硬化樹脂などを用いることができることができる。
上述の工程を繰り返して、複数の熱電素子2を積層する。次に、積層された熱電素子2の側面のうち、電極膜7が形成された傾斜面3a、3aが複数連なった側面上に、例えばスパッタリング法により絶縁膜8、光吸収膜9を順次成膜する。最後に、積層した熱電素子2の一端に位置する積層膜4aの露出部2bに電極11を接合し、他端に位置する積層膜4bの露出部2bに電極11を接合する。
以上により、目的とする熱電モジュール1が得られる。
この第9の実施形態によれば、複数の熱電素子2を積層するとともに、これらの熱電素子2の両主面3aに設けられた積層膜4a、積層膜4bを電気的に直列に接続しているので、第6の実施形態よりも大きな出力電圧を得ることができる。
(10)第10の実施形態
図25は、この発明の第10の実施形態による熱電モジュールの一構成例を示す。図25に示すように、熱電モジュール1は、全体として扇状の形状を有する。また、熱電モジュール1の側面に設けられた電極膜5は全体として円柱面状を有し、熱電モジュール1の一方の側面に設けられた電極膜5は、他方の側面に設けられた電極膜5より面積が広くなっている。この熱電モジュール1を太陽光熱発電モジュールに用いる場合には、面積の広い電極膜5の側から太陽光が照射されるようにすることが好ましい。
図26は、この発明の第10の実施形態による熱電素子の基材の一形状例を示す。図26に示すように、基材3の厚dさが一方から他方に向かって徐々に薄くなっている。このような形状にすることで、熱電モジュール1の形状を全体として扇状の形状にすることができる。
この第11の実施形態において、上記以外のことは、第6の実施形態と同様である。
この第11の実施形態によれば、熱電モジュール1の電極膜5が全体として円柱面状を有しているので、種々の方向から入射する光を効率良く電力に変換することができる。したがって、この熱電モジュール1は、時間に依存して光の照射方向が変化する太陽光などを光源とする場合に有効である。
(11)第11の実施形態
図27は、この発明の第11の実施形態による熱電システムの一構成例を示す。図27に示すように、熱電システム30は、複数の熱電モジュール1を隣接して並べ、これらの並べられた熱電モジュール1の電極膜5により、全体として3次元状の曲面、例えば球面を形成するようにしたものである。熱電システム30の一方の曲面は、他方の曲面より面積が広くなっている。この熱電システム30を太陽光熱発電に用いる場合には、面積の広い電極膜5の側から太陽光が照射されるようにすることが好ましい。
図28は、図27に示した熱電システムのXXIII−XXIII線に沿った概略断面図である。図29は、この発明の第9の実施形態による熱電素子の基材の一形状例を示す。図28に示すように、熱電モジュール1は、例えば、全体として扇状の形状を有する。図29に示すように、基材3の厚さdおよび幅lが一方から他方に向かって徐々に狭くなっている。このような形状にすることで、電極膜5により形成される主面を全体として曲面状とすることができる。
この第11の実施形態において、上記以外のことは、第10の実施形態と同様である。
この第11の実施形態によれば、熱電システム30の主面が全体として球面などの曲面状を有しているので、種々の方向から入射する光を第10の実施形態に比して効率良く電力に変換することができる。
(12)第12の実施形態
上述の第5の実施形態では、熱電膜および絶縁膜の両端の位置のみをマスクにより設定する例について説明したが、上記両端以外の周縁において、熱電膜および絶縁膜のマスクの先端位置を同一とすると、スパッタチャンバー間のマスク位置ずれにより、熱電膜がショートして所望の電圧値が得られなくなる場合がある。そこで、第12の実施形態では、上記両端以外の周縁において、絶縁膜のマスクの先端位置を熱電膜のマスクの先端位置より外側に配置することで、熱電膜の周縁部のショートを抑制する例について説明する。
(熱電素子の構成)
図30は、この発明の第12の実施形態による熱電素子の一構成例を示す。図31は、図30に示した熱電素子のXXXI−XXXI線に沿った概略断面図である。この積層膜4においては、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の両端が交互に接合されるのに対して、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の両端以外の周縁はそれぞれ、絶縁膜n2および絶縁膜p2により覆われ断絶されている。具体的には、p型熱電膜p1の一端は、図12に示すように、絶縁膜p2により覆われずn型熱電膜n1の一端と接合されているのに対して、p型熱電膜p1の一端以外の周縁は、図12および図31に示すように、絶縁膜p2により覆われてn型熱電膜n1の周縁と断絶されている。また、n型熱電膜n1の他端は、図12に示すように、絶縁膜n2により覆われずp型熱電膜p1の他端と接合されているのに対して、n型熱電膜n1の他端以外の周縁は、図12および図31に示すように、絶縁膜n2により覆われてp型熱電膜p1の周縁と断絶されている。
(熱電素子の製造方法)
まず、熱電素子の製造に用いられるスパッタ装置のプロセスチャンバー221〜228内におけるマスク22bの配置位置の一例について説明する。
絶縁膜n2または絶縁膜p2のマスク22bの先端位置が、n型熱電膜n1またはp型熱電膜p1のマスク22bの先端位置より外側となる場合には、絶縁膜n2、または絶縁膜p2のマスク22bの先端位置は、n型熱電膜n1またはp型熱電膜p1のマスク22bの先端位置よりも膜厚遷移領域長以上、n型熱電膜n1またはp型熱電膜p1の成膜領域長の半分以下外側に位置していることが好ましい。ここで、n型熱電膜n1またはp型熱電膜p1の成膜領域長の半分とは、具体的には、(位置P52−位置P51)/2により得られる値のことを示す。
例えば、基材21の両端以外の周縁において、絶縁膜n2および絶縁膜p2のマスク22bの先端位置P41、P42はそれぞれ、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1のマスク22bの先端位置P51、P52よりも膜厚遷移領域長以上、n型熱電膜n1またはp型熱電膜p1の成膜領域長の半分以下外側に位置していることが好ましい。マスク先端位置の差が膜厚遷移領域長以上であると、絶縁膜n2および絶縁膜p2によりn型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の両端以外の周縁を覆うことができる。すなわち、両端以外においてn型熱電膜n1とp型熱電膜p1とのショートを抑制し、出力電圧値を安定させることができる。また、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の周縁が大気と接触することを防ぎ、熱電素子2の耐久性を向上することもできる。マスク先端位置の差がn型熱電膜n1またはp型熱電膜p1の成膜領域長の半分以下であると、基板3上におけるn型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の成膜領域を十分に確保し、熱電素子2の性能指数の低下を抑制することができる。
次に、上述の構成を有する熱電素子2の製造方法の一例について説明する。
まず、基材3を、例えばn型熱電材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー221に搬入し、マスク22bに対して基材22を押し付ける。これにより、マスク22bにより基材3の周縁のすべてが覆われる。次に、ターゲット22aをスパッタリングすることにより、基材3上にn型熱電膜n1を成膜する。これにより、図12および図31に示すように、基材3の周縁すべてがn型熱電膜n1から露出する。
次に、基材3を、例えば絶縁材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー222に搬入し、マスク22bに対して基材22を押し付ける。これにより、n型熱電膜n1の一端がマスク22bにより覆われるのに対して、それ以外の周縁がマスク22bにより覆われず露出する。次に、ターゲット22aをスパッタリングすることにより、n型熱電膜n1上に絶縁膜n2を成膜する。これにより、図12および図31に示すように、n型熱電膜n1の一端が絶縁膜n2から露出するのに対して、それ以外の周縁が絶縁膜n2により覆われる。
次に、基材3を、例えばp型熱電材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー223に搬入し、マスク22bに対して基材22を押し付ける。これにより、絶縁膜n2の一端がマスク22bにより覆われず露出するのに対して、それ以外の周縁がマスク22bにより覆われる。次に、ターゲット22aをスパッタリングすることにより、絶縁膜n2上にp型熱電膜p1を成膜する。これにより、図12および図31に示すように、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の一端同士が接合されるのに対して、n型熱電膜n1およびp型熱電膜p1の一端以外の周縁が絶縁膜n2により断絶される。
次に、基材3を、例えば絶縁材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー224に搬入し、マスク22bに対して基材22を押し付ける。これにより、p型熱電膜p1の他端がマスク22bにより覆われるのに対して、それ以外の周縁がマスク22bにより覆われず露出する。次に、ターゲット22aをスパッタリングすることにより、p型熱電膜p1上に絶縁膜p2を成膜する。これにより、図12および図31に示すように、p型熱電膜p1の他端が絶縁膜p2から露出するのに対して、それ以外の周縁が絶縁膜p2により覆われる。
次に、基材3を、例えばn型熱電材料を主成分とするターゲット22aが配設されたプロセスチャンバー225に搬入し、マスク22bに対して基材22を押し付ける。これにより、絶縁膜n2の他端がマスク22bにより覆われず露出するのに対して、それ以外の周縁がマスク22bにより覆われる。次に、ターゲット22aをスパッタリングすることにより、絶縁膜p2上にn型熱電膜n1を成膜する。これにより、図12および図31に示すように、p型熱電膜p1およびn型熱電膜n1の他端同士が接合されるのに対して、p型熱電膜p1およびn型熱電膜n1の他端以外の周縁が絶縁膜p2により断絶される。
次に、プロセスチャンバー226〜228に基材3を順次搬送し、上述のプロセスチャンバー222〜224におけるのと同様にして、絶縁膜n2、p型熱電膜p1、絶縁膜p2を基材3上に順次積層する。次に、必要に応じて、上述と同様の成膜工程を繰り返し、積層数が所望の積層数となった時点で、基材3を基材ローダ23を介して搬出する。
以上により、目的とする熱電素子2が得られる。
この第12の実施形態において、上記以外のことは、第5の実施形態と同様である。
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、上述の実施形態と対応する部分には同一の符号を付す。
(実施例1)
まず、縦5mm×横20mm、厚さ0.5mmの合成石英基板3を準備した。次に、スパッタ装置(Canon-Anelva社製、商品名:C-3103)を用いて、p型熱電膜p1、絶縁膜p2、n型熱電膜n1、絶縁膜n2、p型熱電膜p1、絶縁膜p2を基板3の一主面に順次積層するとともに、n型熱電膜およびp型熱電膜の両端を交互に接合することにより、積層膜4を形成した。また、積層した熱電膜のうちの最下層であるp型熱電膜p1の一端を、積層膜4の表面を覆う絶縁膜p2から露出させるとともに、積層した熱電膜のうちの最上層であるp型熱電膜p1の他端を、積層膜4の表面を覆う絶縁膜p2から露出させることにより、積層膜4の両端に露出部2a、2bを形成した。
以上により、目的とする熱電素子2を得た。
以下に、上記各層の成膜工程の詳細について示す。
(p型熱電膜の成膜工程)
GeBターゲットが備えられたプロセスチャンバー内に基板3を搬送し、プロセスチャンバー内を真空引きした後、プロセスチャンバー内にArガスを導入しながら、GeBターゲットをスパッタリングして、GeB膜p1を基板3上に成膜した。
この成膜工程における成膜条件を以下に示す。
スパッタリング法:直流(DC)マグネトロンスパッタリング法
ターゲット:GeBターゲット(組成:Ge8020)
到達真空度:2×10-5Pa
Arガス流量:150sccm
スパッタガス圧:0.6Pa
スパッタ電力:2.5kW
スパッタターゲット:φ6インチ
膜厚:370nm
マスク:長方形状の開口を有する、厚さ100μmのマスク
但し、基板3上に最初に成膜されるp型熱電膜p1を成膜するプロセスチャンバー内には、マスクを設けず、基板3の一主面の全体にp型熱電膜p1を成膜した。
(n型熱電膜の成膜工程)
IGZOターゲットが備えられたプロセスチャンバー内に基板3を搬送し、プロセスチャンバー内を真空引きした後、プロセスチャンバー内にArガスおよびO2ガスを導入しながら、IGZOターゲットをスパッタリングして、GeB膜n1を基板3上に成膜した。
この成膜工程における成膜条件を以下に示す。
スパッタリング法:直流(DC)マグネトロンスパッタリング法
ターゲット:IGZOターゲット(組成:(InGaO350(ZnO)50)
到達真空度: 2×10-5Pa
Arガス流量:120sccm
Ar+O2(O2分圧10%)ガス流量:30sccm
スパッタガス圧:0.6Pa
スパッタ電力:1.5kW
スパッタターゲット:φ6インチ
膜厚:290nm
マスク:長方形状の開口を有する、厚さ100μmのマスク
(絶縁膜の成膜工程)
SiNターゲットが備えられたプロセスチャンバー内に基板3を搬送し、プロセスチャンバー内を真空引きした後、プロセスチャンバー内にArガスおよびN2ガスを導入しながら、SiNターゲットをスパッタリングして、SiN膜n2またはSiN膜p2を基板3上に成膜した。なお、SiN膜n2またはSiN膜p2は、Si34に近い非化学量論的組成の材料を主成分とする、屈折率2.0の透明膜とした。
この成膜工程における成膜条件を以下に示す。
スパッタリング法:高周波(RF)マグネトロンスパッタリング法
ターゲット:SiN
到達真空度:2×10-5Pa
Arガス流量:30sccm
2ガス流量:20sccm
スパッタガス圧:0.23Pa
スパッタ電力:1.5kW
スパッタターゲット:φ6インチ
膜厚:75nm
マスク:長方形状の開口を有する、厚さ100μmのマスク
(比較例1)
p型熱電膜p1のみを基板3上に成膜する以外のことは実施例1と同様にして熱電素子2を得た。
(比較例2)
n型熱電膜n1のみを基板3上に成膜する以外のことは実施例1と同様にして熱電素子2を得た。
(熱電素子の評価)
上述のようにして得られた熱電素子2のゼーベック係数を測定することにより、熱電素子2を評価した。一般的には、熱電素子2の特性を評価する際には、抵抗値(パワーファクタ)や熱伝導率(性能指数ZT)を含めて、その性能の優劣を評価することが多いが、この発明は、積層構造により出力電圧を上げ、これによって特性を向上させるものであるため、ここではゼーベック係数のみの比較を行う。
図32に、ゼーベック係数の測定に用いた測定装置の構成を示す。プローブ32a、32bはばねにより熱電素子2に対して押しつけられるようになっている。セラミックブロックの35の両端には、ヒータ33およびクーラー34が設けられ、これらによりセラミックブラック35の上部、下部に温度差が与えられ、上部が最高で45℃、下部が室温程度で安定するように設計されている。なお、パワーファクタや性能指数ZTを評価し、特性の良い材料を選択して用いることで、より熱電素子2の特性を向上できることはいうまでもない。
上述の構成を有する測定装置を用いて以下のようにしてゼーベック係数を求めた。
まず、セラミックブロック35に熱伝導グリスを塗り、試料としての熱電素子2を貼り付けた。次に、プローブ32a、32bを熱電素子2の露出部2a、2bに対して押し付けた。また、そのプローブ32a、32bの近傍に別途温度測定用のシース型熱電対(坂口電熱T35型)を配置した。次に、ヒータ33およびクーラー34によりセラミックブロック35の上部、下部に温度差を与え、上部の温度を最高で45℃、下部の温度を室温程度で安定させた。この温度が安定した時点で電極31a、31b間の電圧をマルチメータで測定するとともに、上記シース型熱電対によりプローブ位置での温度を測定し、ゼーベック係数を求めた。具体的には、マルチメータとしてKeithley社製の2700(多チャンネルDMM)および7700オプション(20ch.差動カード)を用いて、電圧値と2点の温度とを同時に測定し、ゼーベック係数を正確に計算し求めた。
上記測定の結果から、熱電材料としてGeB、IGZOを用いた場合、温度上昇の際にもゼーベック係数はすぐに安定した一定値を示し、高温部の温度が45℃までの範囲ではゼーベック係数が温度によらずほぼ一定であり、また、温度下降の際にもヒステリシスを示さないことがわかった。
また、GeB単層の場合、ゼーベック係数は−120μV/K、IGZO単層の場合、ゼーベック係数は+80μV/Kであった。これに対して、GeB/SiN/IGZO/SiN/GeBの構成では、ゼーベック係数は−350μV/Kという高い値が得られた。この値は、GeB層、IGZO層、GeB層それぞれのゼーベック係数の足し合わせたものにほぼ等しくなっている。やや高めの値となったのは、p型熱電膜p1とn型熱電膜n1の接触面がやや広く、また、保護膜(絶縁膜)の範囲が単層の場合よりも広いために膜の劣化が少なかったためであると考えられる。
この実施例では、熱電材料を合計3層しか積層しなかったが、熱電材料の積層数をさらに増やすことで、さらに高い出力電圧を得ることができる。また、電流が各層を乱れずに流れることから、出力電圧としても理想的な高い値を得ることができる。
(積層膜端部の評価)
上述のようにして得られた実施例1の熱電素子2の積層膜端部の形状を、段差形状測定機(Tencor社製、商品名:P15)を用いて測定した。その結果を図33に示す。
図33から、基板3の成膜面に対して、厚さ100μmのマスクをコンタクトさせて、スパッタリング法により成膜する場合、100μmの段差のスクリーニング効果により、膜厚変化領域が生じ、その幅はおよそ100μmであることがわかる。基板3上に積層される各層の膜厚は50〜400nmであり、また、スパッタリング法により成膜される膜厚は100μmを超えることはほとんどないので、上述したようなマスクを用いて成膜した場合の積層膜端部の形状は、図2に概略的に示したものとは異なったものとなる。
図33に示すように、積層膜端部の膜厚が変化している領域のうちから、膜厚遷移領域長を次のように定義する。すなわち、平均膜厚の10%の厚さとなる位置から、平均膜厚の90%の厚さとなる位置までの面内方向の距離を膜厚遷移領域長とする。図33に示す実施例1の積層膜端部の場合、正確な膜厚遷移領域は108μmである。ここで、平均膜厚は、図33から求められる、基板表面と積層膜表面までの間の段差距離とした。この段差距離は測定に使用した段差形状測定機のソフトウェアにより算出される。
上述したようなマスクを用い、積層膜4の膜厚が100μmとなるように成膜すると、膜厚遷移領域長が100μmの場合、膜厚遷移領域における積層膜の最表面の傾斜角度は45度である。したがって、最表面の膜も、傾斜部分の膜厚が薄くならずに理想的に絶縁膜n2、p2などが積層され、絶縁膜n2、p2が保護膜として機能する。熱電膜の膜厚が300nm、絶縁膜の膜厚が40nmの場合、300層近く積層される。p型、n型熱電材料としてGeB、IGZOを用いると、30mV/Kの電圧が得られる。わずか33Kの温度差でも1Vの電圧が得られ、電気製品を駆動するのに十分な特性が得られる。ゼーベック係数の大きな材料を用いればさらに大きな出力が得られる。
リソグラフィー技術などは用いずに、マスクを用いて、積層膜端部の膜厚遷移領域を十分広く取ることにより、積層膜4の積層数を増やしても端面に膜が理想的に皮膜される。マスクを薄くし基板3に密着させることにより5μmの膜厚遷移領域長とした場合、絶縁膜n2、p2が十分に皮膜されず、電圧の降下が観測される。これは、n型熱電膜n1とp型熱電膜p1との接合部同士が、端面で接触するためである。10層程度までの積層であれば、膜厚遷移領域の最表面の傾斜が大きくならないので絶縁は十分となるが、逆に、積層数が少ないために十分な出力が得られない。したがって、膜厚遷移領域長は5μm以上であることが好ましい。
以上、この発明の第1〜第12の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の第1〜第12の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の第1〜第12の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
また、上述の第1〜第12の実施形態の各構成は、この発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、上述の第1〜第12の実施形態において、n型熱電膜n1、p型熱電膜p1が結晶化が必要な材料を主成分としている場合、n型熱電膜n1の成膜工程と絶縁膜n2の成膜工程との間に、n型熱電膜n1をアニール処理する工程をさらに設け、p型熱電膜p1の成膜工程と絶縁膜p2の成膜工程との間に、p型熱電膜p1をアニール処理する工程をさらに設けるようにしてもよい。このようなアニール処理を施す場合、基材3の材料としては高温耐久性を有するガラス、石英、Siウェーハなどを用いることが好ましい。アニール処理をレーザーフラッシュなどにより行うようにすれば、基材3の材料として樹脂材料を用いることも可能である。
また、上述の第1〜第12の実施形態においては、スパッタリング法により積層膜4を成膜する場合を例として説明したが、積層膜4の成膜方法はこれに限定されるものではなく、従来の公知の薄膜の成膜方法を用いることができる。従来公知の薄膜の成膜方法としては、例えば、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着法):化学反応を利用して気相から薄膜を析出させる技術)のほか、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法(Physical Vapor Deposition(物理蒸着法):真空中で物理的に気化させた材料を基板上に凝集させ、薄膜を形成する技術)を用いることができ、特にスパッタリングが好ましい。
この発明の第1の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す斜視図である。 図1に示した熱電素子のII−II線に沿った概略断面図である。 この発明の第1の実施形態による熱電素子の製造に用いられるスパッタ装置の一構成例を示す概略図である。 図3に示したスパッタ装置のプロセスチャンバーの一構成例を示す概略図である。 この発明の第2の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す斜視図である。 図5に示した熱電素子のVI−VI線に沿った概略断面図である。 この発明の第3の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す斜視図である。 図7に示した熱電素子のVIII−VIII線に沿った概略断面図である。 この発明の第4の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す斜視図である。 図9に示した熱電素子のX−X線に沿った概略断面図である。 この発明の第5の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す斜視図である。 図11に示した熱電素子のXII−XII線に沿った概略断面図である。 この発明の第5の実施形態による熱電素子の製造に用いられるスパッタ装置の一構成例を示す概略図である。 この発明の第6の実施形態による熱電モジュールの一構成例を示す概略断面図である。 この発明の第6の実施形態による熱電素子の一構成例を示す斜視図である。 図15に示した熱電素子のXVI−XVI線に沿った概略断面図である。 この発明の第6の実施形態による熱電素子の基材の一形状例を示す概略側面図、概略斜視図である。 図17に示した基材の端部を拡大して示した概略断面図である。 この発明の第6の実施形態による熱電モジュールの製造方法の一例について説明するための工程図である。 この発明の第6の実施形態による熱電素子の基材の傾斜面間に形成された溝部を拡大して示す概略断面図である。 この発明の第7の実施形態による熱電素子の一構成例を示す概略断面図である。 この発明の第8の実施形態による熱電システムの一構成例を示す概略断面図である。 この発明の第9の実施形態による熱電モジュールの一構成例を示す概略断面図である。 この発明の第9の実施形態による熱電素子の一構成例を示す概略断面図である。 この発明の第10の実施形態による熱電モジュールの一構成例を示す概略断面図である。 この発明の第10の実施形態による熱電素子の基材の一形状例を示す斜視図である。 この発明の第11の実施形態による熱電システムの一構成例を示す斜視図である。 図27に示した熱電システムのXXIII−XXIII線に沿った概略断面図である。 この発明の第11の実施形態による熱電素子の基材の一形状例を示す斜視図である。 この発明の第12の実施形態による熱電素子の外観の一例を示す斜視図である。 図30に示した熱電素子のXXXI−XXXI線に沿った概略断面図である。 実施例1、比較例1、2の熱電素子のゼーベック係数の測定に用いた測定装置の構成を示す概略図である。 実施例1の熱電素子の積層膜端部の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1 熱電モジュール
2 熱電素子
2a、2b 露出部
3 基材
3a 導電膜
4 積層膜
5 電極膜
5a 溝
6 接着剤
7 電極膜
8 絶縁膜
9 光吸収膜
10 導電ペースト
11 電極
21 メインチャンバー
220〜228 プロセスチャンバー
22a ターゲット
22b マスク
23 基材ローダ
24 搬送部
25 回転機構
26 搬送アーム
27 基材ホルダ
30 熱電システム

Claims (14)

  1. 基材と、
    キャリアの互いに異なる2種の熱電膜が絶縁膜を介して上記基材の一主面上に繰り返し積層され、かつ、該積層された2種の熱電膜の両端が交互に接合されている積層膜と
    を備えることを特徴とする熱電素子。
  2. 上記積層膜の表面が絶縁膜により覆われ、
    上記熱電膜のうちの最下層である熱電膜の端部が、上記積層膜の表面を覆う絶縁膜から露出し、
    上記熱電膜のうちの最上層である熱電膜の端部が、上記積層膜の表面を覆う絶縁膜から露出していることを特徴とする請求項1記載の熱電素子。
  3. 上記熱電膜のうちの最下層である熱電膜の端部、および上記熱電膜のうちの最上層である熱電膜の端部が、上記積層膜の異なる側から露出していることを特徴とする請求項2記載の熱電素子。
  4. 上記熱電膜のうちの最下層である熱電膜の端部、および上記熱電膜のうちの最上層である熱電膜の端部が、上記積層膜の同一の側から露出していることを特徴とする請求項2記載の熱電素子。
  5. 上記2種の熱電膜がn型熱電膜およびp型熱電膜であり、
    上記n型熱電膜、上記絶縁膜、および上記p型絶縁膜が、上記n型熱電膜、上記絶縁膜、上記p型絶縁膜の順序で、または、上記p型熱電膜、上記絶縁膜、上記n型絶縁膜の順序で上記基材上に積層されていることを特徴とする請求項1記載の熱電素子。
  6. 上記p型熱電膜の一端は、上記n型熱電膜の一端と接合されているのに対して、上記p型熱電膜の一端以外の周縁は、該p型熱電膜と隣接する絶縁膜により覆われて上記n型熱電膜の周縁と断絶され、
    上記n型熱電膜の他端は、上記p型熱電膜の他端と接合されているのに対して、上記n型熱電膜の他端以外の周縁は、該n型熱電膜と隣接する絶縁膜により覆われて上記p型熱電膜の周縁と断絶されていることを特徴とする請求項5記載の熱電素子。
  7. 上記積層膜の膜厚遷移領域長が5μm以上1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の熱電素子。
  8. 上記基材の他主面に積層膜をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の熱電素子。
  9. 上記熱電膜のうち最下層である熱電膜と接合された導電膜をさらに備え、
    上記導電膜の一端が、上記積層膜から露出していることを特徴とする請求項1記載の熱電素子。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱電素子を複数備える熱電モジュール。
  11. 第1の熱電膜の一端をマスクにより覆いながら第1の絶縁膜を成膜する第1の工程と、
    上記第1の絶縁膜上に、上記第1の熱電膜とはキャリアが異なる第2の熱電膜を成膜する第2の工程と、
    上記第2の熱電膜の他端をマスクにより覆いながら第2の絶縁膜を成膜する第3の工程と
    上記第2の絶縁膜上に第1の熱電膜を成膜する第4の工程と
    を備えることを特徴とする熱電素子の製造方法。
  12. 上記第1〜第4の工程において、スパッタリング法により上記薄膜を成膜することを特徴とする請求項11記載の熱電素子の製造方法。
  13. 上記第1の工程では、上記第1の熱電膜の一端をマスクにより覆うとともに、上記第1の熱電膜の一端以外の周縁を露出させながら、上記第1の絶縁膜を成膜し、
    上記第3の工程では、上記第2の熱電膜の他端をマスクにより覆うとともに、上記第2の熱電膜の他端以外の周縁を露出させながら、上記第2の絶縁膜を成膜する
    ことを特徴とする請求項11記載の熱電膜の製造方法。
  14. 上記第1の絶縁膜または上記第2の絶縁膜のマスク先端が上記第1の熱電膜または上記第2の熱電膜のマスク先端より外側となる場合には、上記第1の絶縁膜または上記第2の絶縁膜のマスク先端は、上記第1の熱電膜または上記第2の熱電膜のマスク先端よりも膜厚遷移領域長以上、上記第1の熱電膜または上記第2の熱電膜の成膜領域長の半分以下外側に位置することを特徴とする請求項13記載の熱電膜の製造方法。
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