JP2009180132A - 内燃機関の熱回収利用装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料消費を悪化させることなく、混合気温度を高めることができる内燃機関の熱回収利用装置を提供する。
【解決手段】隔壁を介して燃焼室2に隣接する燃料加熱室9を具備し、燃焼室から隔壁を介して伝達される熱を利用して燃料加熱室において加熱された燃料が、燃料噴射弁7から噴射されて直接的に又は吸気ポートを介して燃焼室へ供給される。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関の熱回収利用装置に関する。
火花点火内燃機関及び圧縮自着火内燃機関のいずれにおいても、気筒内の混合気温度を高めて混合気の着火性を高めることが望ましい。そのために、燃焼室壁面を加熱して気筒内の吸気温度を高める電気加熱手段を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−140649
しかしながら、このように電気加熱手段によって吸気を加熱したのでは、そのために必要な電気エネルギの分だけ燃料消費を悪化させてしまう。
従って、本発明の目的は、燃料消費を悪化させることなく、混合気温度を高めることができる内燃機関の熱回収利用装置を提供することである。
本発明による請求項1に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、隔壁を介して燃焼室に隣接する燃料加熱室を具備し、前記燃焼室から前記隔壁を介して伝達される熱を利用して前記燃料加熱室において加熱された燃料が、燃料噴射弁から噴射されて直接的に又は吸気ポートを介して前記燃焼室へ供給されることを特徴とする。
本発明による請求項2に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項1に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、前記燃料加熱室は前記燃焼室を取り囲むように形成されていることを特徴とする。
本発明による請求項3に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項1又は2に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、前記燃料加熱室内で蒸発させた気体燃料が前記燃料噴射弁から噴射され、前記燃料加熱室内の前記気体燃料の圧力は圧力調整弁によって制御されることを特徴とする。
本発明による請求項4に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項3に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、前記燃料加熱室内の前記気体燃料の圧力は、前記圧力調整弁によって、低負荷時に高くされ、高負荷時に低くされることを特徴とする。
本発明による請求項5に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項3又は4に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、前記燃料加熱室は気筒毎に独立して設けられ、膨張行程となっている気筒の前記燃料加熱室内で蒸発させた気体燃料が燃料噴射時期となっている気筒の前記燃料噴射弁から噴射されることを特徴とする。
本発明による請求項6に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項3から5のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、前記燃料加熱室から前記圧力調整弁を介して流出させる前記気体燃料を蓄える蓄圧室が設けられ、前記蓄圧室内の前記気体燃料が前記燃料噴射弁によって噴射され、前記蓄圧室内の前記気体燃料の圧力に基づき、必要燃料量を噴射するための前記燃料噴射弁の開弁期間が設定されることを特徴とする。
本発明による請求項7に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項3から5のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、前記燃料加熱室から前記圧力調整弁を介して流出させる前記気体燃料を蓄える蓄圧室が設けられ、前記蓄圧室内の前記気体燃料が前記燃料噴射弁によって噴射され、前記蓄圧室内の前記気体燃料の圧力が設定圧力より高い時には、前記蓄圧室内の前記気体燃料の一部を燃料タンクへ戻すことにより、前記蓄圧室内の前記気体燃料の圧力を前記設定圧力に維持し、必要燃料量を噴射するための前記燃料噴射弁の開弁期間は前記設定圧力に基づき設定されることを特徴とする。
本発明による請求項8に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項1から7のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、シリンダヘッドとシリンダブロックとは一体に形成され、前記燃料加熱室は、前記燃焼室の上部及び下部に前記隔壁を介して一体的に隣接することを特徴とする。
本発明による請求項9に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項1から8のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、隔壁を介して前記燃焼室に隣接する吸気加熱室が設けられ、前記吸気加熱室内へ排気ガスを流入させることにより、前記吸気加熱室から前記隔壁を介して伝達される熱を利用して前記燃焼室内の吸気を加熱することを特徴とする。
本発明による請求項10に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項9に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、前記吸気加熱室は気筒毎に独立して設けられ、排気行程となっている気筒からの排気ガスを吸気行程となっている気筒の前記吸気加熱室へ流入させることを特徴とする。
本発明による請求項11に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項1から10のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、吸気行程の一部において排気弁を開弁させて排気ガスの一部を前記燃焼室内へ流入させることを特徴とする。
本発明による請求項12に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項1から10のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、排気行程の一部において排気弁を閉弁させて排気ガスの一部を前記燃焼室内へ残留させることを特徴とする。
本発明による請求項13に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項1から12のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、前記内燃機関の燃料は、少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含んでいることを特徴とする。
本発明による請求項14に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項1から13のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、前記内燃機関は圧縮自着火エンジンであることを特徴とする。
本発明による請求項15に記載の内燃機関の熱回収利用装置は、請求項13に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、前記内燃機関は圧縮自着火エンジンであり、ガソリンを加熱することなく直接的に又は吸気ポートを介して前記燃焼室内へ供給するためのもう一つの燃料噴射弁を具備し、低負荷時には前記もう一つの燃料噴射弁だけを使用してガソリンだけを前記燃焼室内へ供給して圧縮自着火燃焼を実施し、高負荷時には前記燃料噴射弁と前記もう一つの燃料噴射弁とを使用して少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料とガソリンとを前記燃焼室へ供給して圧縮自着火燃焼を実施することを特徴とする。
本発明による請求項1に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、隔壁を介して燃焼室に隣接する燃料加熱室を具備し、燃焼室から隔壁を介して伝達される熱を利用して燃料加熱室において加熱された燃料が、燃料噴射弁から噴射されて直接的に又は吸気ポートを介して燃焼室へ供給されるようになっており、それにより、これまでの燃焼室の冷却損失は、燃料を加熱することに利用されて回収され、燃焼室内での燃料の気化潜熱を小さくすることができるために、燃料消費を悪化させることなく混合気温度が高められ、混合気の着火性を高めることができる。
本発明による請求項2に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項1に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、燃料加熱室は燃焼室を取り囲むように形成されており、それにより、燃焼室の熱を十分に燃料の加熱に利用することができる。
本発明による請求項3に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項1又は2に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、燃料加熱室内で蒸発させた気体燃料が燃料噴射弁から噴射されるようになっており、それにより、燃焼室内での燃料の気化潜熱は必要なく、混合気温度は十分に高められて混合気の着火性を十分に高めることができ、また、燃料加熱室内の気体燃料の圧力は圧力調整弁によって制御されるようになっているために、機関運転状態に応じて燃焼室から燃料加熱室へ伝達される熱量を調整することができる。
本発明による請求項4に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項3に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、燃料加熱室内の気体燃料の圧力は、圧力調整弁によって低負荷時に高くされ、それにより、燃焼室から燃料加熱室へ伝達される熱量が小さくなって冷却損失が小さくなり、熱効率を改善することができる。また、高負荷時には、燃料加熱室内の気体燃料の圧力は、圧力調整弁によって低くされ、それにより、燃焼室から燃料加熱室へ伝達される熱量が大きくなって異常燃焼の発生を防止することができる。
本発明による請求項5に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項3又は4に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、燃料加熱室は気筒毎に独立して設けられ、膨張行程となっている気筒の燃料加熱室内で蒸発させた気体燃料が燃料噴射時期となっている気筒の燃料噴射弁から噴射されるようになっており、それにより、燃焼室から回収された熱により蒸発させた燃料は、余り放熱することなく噴射され、燃焼室から回収した熱を混合気温度を高めることに有効に利用することができる。
本発明による請求項6に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項3から5のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、燃料加熱室から圧力調整弁を介して流出させる気体燃料を蓄える蓄圧室が設けられ、蓄圧室内の気体燃料が燃料噴射弁によって噴射され、蓄圧室内の気体燃料の圧力に基づき、必要燃料量を噴射するための燃料噴射弁の開弁期間が設定されるようになっている。それにより、圧力調整弁による燃料加熱室内の気体燃料の圧力制御によって蓄圧室内の気体燃料の圧力は変化するが、燃料噴射弁によって蓄圧室から必要量の気体燃料を確実に噴射することができる。
本発明による請求項7に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項3から5のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、燃料加熱室から圧力調整弁を介して流出させる気体燃料を蓄える蓄圧室が設けられ、蓄圧室内の気体燃料が燃料噴射弁によって噴射され、蓄圧室内の気体燃料の圧力が設定圧力より高い時には、蓄圧室内の気体燃料の一部を燃料タンクへ戻すことにより、蓄圧室内の気体燃料の圧力を設定圧力に維持し、必要燃料量を噴射するための燃料噴射弁の開弁期間は設定圧力に基づき設定されるようになっている。それにより、圧力調整弁による燃料加熱室内の気体燃料の圧力制御によって蓄圧室内の気体燃料の圧力は変化するが、燃料噴射弁によって蓄圧室から必要量の気体燃料を確実に噴射することができる。
本発明による請求項8に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項1から7のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、シリンダヘッドとシリンダブロックとは一体に形成され、燃料加熱室は、燃焼室の上部及び下部に隔壁を介して一体的に隣接するようになっている。それにより、燃焼室の上部に隣接する燃料加熱室がシリンダヘッドに、また、燃焼室の下部に隣接する燃料加熱室がシリンダブロックに、それぞれ別々に設けられる場合に比較して、二つの燃料加熱室を分ける隔壁が必要なく、燃料加熱室を燃焼室から効率的に熱を回収するように配置することができる。
本発明による請求項9に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項1から8のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、隔壁を介して燃焼室に隣接する吸気加熱室が設けられ、吸気加熱室内へ排気ガスを流入させることにより、吸気加熱室から隔壁を介して伝達される熱を利用して燃焼室内の吸気を加熱するようになっている。それにより、さらに混合気温度を高めて混合気の着火性をさらに改善することができる。
本発明による請求項10に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項9に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、吸気加熱室は気筒毎に独立して設けられ、排気行程となっている気筒からの排気ガスを吸気行程となっている気筒の吸気加熱室へ流入させるようになっている。それにより、排気ガスは、余り放熱することなく吸気を加熱し、排気ガスの熱を効率的に吸気加熱に利用することができ、さらに混合気温度を高めて混合気の着火性をさらに改善することができる。
本発明による請求項11に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項1から10のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、吸気行程の一部において排気弁を開弁させて排気ガスの一部を燃焼室内へ流入させるようになっている。それにより、排気ガスの熱により混合気温度はさらに高められ、混合気の着火性をさらに改善することができる。
本発明による請求項12に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項1から10のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、排気行程の一部において排気弁を閉弁させて排気ガスの一部を燃焼室内に残留させるようになっている。それにより、排気ガスの熱により混合気温度はさらに高められ、混合気の着火性をさらに改善することができる。
本発明による請求項13に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項1から12のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、内燃機関の燃料は、少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含んでいる。それにより、このような気化潜熱の大きな燃料をそのまま燃焼室内へ供給すると、混合気温度が非常に低くなってしまうが、燃料加熱室での燃料加熱によって気化潜熱を小さくすることにより、混合気温度を高めて着火性を確実に改善することができる。
本発明による請求項14に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項1から13のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、内燃機関は圧縮自着火エンジンであるために、混合気の着火性を高めることは特に必要である。
本発明による請求項15に記載の内燃機関の熱回収利用装置によれば、請求項13に記載の内燃機関の熱回収利用装置において、内燃機関は圧縮自着火エンジンであり、ガソリンを加熱することなく直接的に又は吸気ポートを介して燃焼室内へ供給するためのもう一つの燃料噴射弁を具備し、低負荷時にはもう一つの燃料噴射弁だけを使用してガソリンだけを燃焼室内へ供給して圧縮自着火燃焼を実施するようになっている。それにより、低負荷時には、膨張行程において燃料加熱室内の少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料は加熱されるが、この加熱燃料は燃焼室内へ供給されることはなく、燃料としてはもう一つの燃料噴射弁によって加熱されていないガソリンが使用され、吸気行程において燃料加熱室から燃焼室へ伝達される熱によって吸気が加熱され、混合気温度を高めた圧縮自着火燃焼が実現される。
また、高負荷時には、燃料噴射弁ともう一つの燃料噴射弁とを使用して少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料とガソリンとを燃焼室へ供給して圧縮自着火燃焼を実施するようになっている。それにより、高負荷時には膨張行程において加熱された燃料加熱室内の少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料が燃料噴射弁によって燃焼室内へ供給され、このような燃料が加熱されずに燃焼室内へ供給される場合に比較して気化潜熱が小さくなるために、混合気温度を高めることができるが、もう一つの燃料噴射弁によってガソリンも燃焼室内へ供給され、メタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料の気化潜熱によってガソリンのみの混合気よりは混合気温度は低くなる。こうして、ガソリンのみの混合気に比較すると、混合気の着火性は僅かに悪化し、自着火時期が遅れると共に燃焼が緩慢となるが、それにより燃焼騒音を低減させることができる。
図1は本発明による熱回収利用装置が取り付けられた内燃機関の概略図である。同図において、1は点火プラグであり、2は燃焼室である。3は一対の吸気弁4を介して燃焼室2へ通じる一対の吸気ポートであり、5は一対の排気弁6を介して燃焼室2へ通じる一対の排気ポートである。7は燃焼室2内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁であり、8はピストンである。
本内燃機関は、ウォータジャケット及びラジエータを有する水冷式ではなく、熱回収利用装置として、隔壁を介して燃焼室2に隣接する燃料加熱室9が設けられている。燃料加熱室9は、燃焼室2を周方向に取り囲むように、また、燃焼室2の上壁を覆うように形成されている。特に、本内燃機関は、シリンダヘッドとシリンダブロックとが一体に形成されており、それにより、燃料加熱室9を、隔壁を介して燃焼室2の上部及び下部に一体的に隣接させることができる。こうして、燃焼室2の上部に隣接する燃料加熱室をシリンダヘッドに、また、燃焼室2の下部に隣接する燃料加熱室をシリンダブロックに、それぞれ別に設ける場合に比較して、二つの燃料加熱室を分ける隔壁が必要なく、一体の燃料加熱室9は、燃焼室2から効率的に熱を回収することができる。
燃料加熱室9の上部には、燃料排出管10と、燃料供給管11とが接続されている。燃料排出管10は圧力調整弁12を介して蓄圧室13に連通している。一方、燃料供給管11は、燃料加熱室9への燃料流れのみを許容する逆止弁14を介して燃料タンク16に連通している。15は、燃料タンク16内の燃料を燃料加熱室9へ圧送するために燃料供給管11に配置された燃料ポンプである。燃料ポンプ15は、液体燃料を、例えば500kPaに昇圧して燃料加熱室9へ圧送する。
このような構成によって、燃料加熱室9は燃料タンク16からの液体燃料によって満たされる。燃料加熱室9内の液体燃料は、膨張行程において燃焼室2から隔壁を介して伝達される熱によって加熱される。こうして、燃焼室2は良好に冷却されると共に、燃料加熱室9において加熱された燃料を燃料噴射弁7によって吸気行程又は圧縮行程において燃焼室2内へ供給すれば、燃料の気化潜熱が小さくなり、燃焼室2内に形成される混合気の温度を高めて混合気の着火性を改善することができる。このように混合気の着火性を高めることは、火花点火内燃機関だけでなく、圧縮自着火内燃機関においても有効である。
特に、本実施形態において、燃料排出管10は、圧力調整弁12を介して蓄圧室13に連通され、燃料加熱室9において加熱により蒸発させた気体燃料によって蓄圧室13が満たされ、蓄圧室13内の気体燃料を燃料噴射弁7により噴射するようになっている。それにより、噴射燃料の燃焼室内での気化潜熱は必要なく、さらに混合気温度を高めて混合気の着火性をさらに改善することができる。本実施形態において、燃料噴射弁7は気筒内へ直接的に燃料を噴射するものとしたが、吸気ポート3に燃料噴射弁を配置して、加熱された液体燃料又は加熱により蒸発させた気体燃料を、吸気同期噴射として吸気行程に又は吸気非同期噴射として吸気行程前に噴射するようにしても良い。
図1において、燃料加熱室9内には燃焼室上下方向に延在する熱伝達部材17が設けられている。熱伝達部材17は、銀、アルミニウム、又は、銅等の金属メッシュや金属綿とすることができる。膨張行程において、燃料加熱室9の燃焼室上部からの単位面積当たりの受熱量は、燃焼室下部からの単位面積当たりの受熱量より多くなる。それにより、熱伝達部材17が設けられていると、燃焼室上部からの燃料加熱室9の上部における受熱量の一部を燃料加熱室9の下部へ熱伝達し、燃料加熱室9内の燃料全体が一様に加熱されるようになるために、燃焼室2から多量の熱を回収することができる。
本実施形態において、圧力調整弁12により燃料加熱室9内の気体燃料の圧力を制御することができる。例えば、機関低負荷時には、燃料加熱室9内の気体燃料の圧力は高圧の第一設定圧力(例えば、10MPa)に制御され、それにより、燃料加熱室9内の液体燃料は、受熱して蒸発し難くなり、燃焼室2からの受熱量が少なくなる。こうして、機関低負荷時において冷却損失を小さくし、熱効率を改善することができる。また、機関高負荷時には、燃料加熱室9内の気体燃料の圧力は低圧の第二設定圧力(例えば、5MPa)に制御され、それにより、燃料加熱室9内の液体燃料は、受熱して蒸発し易くなり、燃焼室2からの受熱量が多くなる。こうして、機関高負荷には、燃焼室2を十分に冷却して異常燃焼を防止することができる。もちろん、このように二段階ではなく、機関負荷が高いほど燃料加熱室9内の気体燃料の圧力を徐々に高圧側に設定するようにしても良い。
ところで、図1に示す実施形態において、燃料加熱室9は気筒毎に独立して設けられ、各燃料加熱室9において蒸発させた気体燃料は、それぞれの蓄圧室13を介して各燃料加熱室9に対応する気筒の燃料噴射弁7によって噴射されるようになっている。しかしながら、これは本発明を限定するものではなく、例えば、各燃料加熱室9を互いに連通し、共通の蓄圧室を介して各燃料噴射弁7により燃料を噴射するようにしても良い。また、燃料加熱室9を気筒毎に独立して設けて、膨張行程となっている気筒の燃料加熱室9内で蒸発させた気体燃料が燃料噴射時期(例えば、吸気行程)となっている気筒の燃料噴射弁から噴射されるようにしても良い。それにより、各燃焼室2から回収された熱により蒸発した気体燃料は、時間的に余り放熱することなく噴射され、各燃焼室2から回収した熱を混合気温度を高めることに有効に利用することができる。
燃料噴射弁7は、各気筒独立又は各気筒共通の蓄圧室13内の気体燃料を噴射するものであるために、蓄圧室13には圧力センサが配置されて蓄圧室13内の気体燃料の圧力が検出され、検出された圧力に基づき、気体燃料圧力が低いほど長くなるように、必要燃料量を噴射するための燃料噴射弁7の開弁期間が設定されるようになっている。それにより、圧力調整弁10による燃料加熱室9内の気体燃料の圧力制御及びこれまでの燃料噴射量制御によって蓄圧室13内の気体燃料の圧力は変化するが、蓄圧室13内の気体燃料の圧力がいずれであっても、燃料噴射弁7によって蓄圧室13から必要量の気体燃料を噴射することができる。好ましくは、蓄圧室13内の気体燃料の温度も検出し、気体燃料温度が低いほど長くなるように、燃料噴射弁7の開弁期間は温度補正される。
また、蓄圧室13内の気体燃料の圧力が設定圧力より高い時には、戻し管(図示せず)を介して蓄圧室13内の気体燃料の一部を燃料タンク16へ戻すことにより、蓄圧室13内の気体燃料の圧力を設定圧力に維持するようにすれば、必要燃料量を噴射するための燃料噴射弁7の開弁期間は、必要燃料量に対する設定圧力に基づく開弁期間として予め設定しておくことができる。この場合にも、気体燃料温度に基づき開弁期間を補正することが好ましい。
図1において、燃料加熱室9の外側は、セラミック等から形成された断熱層20によって覆われており、それにより、燃焼室2から燃料加熱室9へ伝達された熱を有効に燃料の加熱に使用することができる。
図2は本発明によるもう一つの熱回収利用装置が取り付けられた内燃機関の概略図である。図1の熱回収利用装置との違いについてのみ以下に説明する。本熱回収利用装置において、燃料加熱室9’は、燃焼室2の上部だけに隣接しており、燃焼室2の下部には、燃焼室2を周方向に取り囲むように、吸気加熱室18が隣接して形成されている。
吸気加熱室18には、機関排気系の触媒装置の上流側から排気ガスを導いて流入させる流入管18aと、機関排気系の触媒装置の上流側へ排気ガスを戻す流出管18bとが接続されている。こうして、必要に応じて、排気ガスの一部が吸気加熱室18を通過するようにすれば、吸気加熱室18から隔壁を介して伝達される熱を利用して燃焼室2内の吸気を加熱することができる。それにより、さらに混合気温度を高めて混合気の着火性をさらに改善することができる。排気ガスが吸気加熱室18を確実に通過するようにするために、排気ガスを機関排気系から吸気加熱室18へ圧送するポンプを設けても良い。
ところで、図2に示す実施形態において、吸気加熱室18は気筒毎に独立して設けられ、各吸気加熱室18の流入管18aには開閉弁(図示せず)が設けられて、これら開閉弁を必要に応じて開閉させることにより、吸気行程となっている気筒の吸気加熱室18だけへ排気ガスを流入させている。この排気ガスは、各気筒の排気合流部の下流側から導いてもよいが、排気行程となっている気筒の排気ガスが吸気行程となっている気筒の吸気加熱室18へ流入するように、排気合流部の上流側の各枝管と各吸気加熱室18の流入管18aとを選択的に連通させるようにしても良い。それにより、排気ガスの熱を効果的に吸気加熱に利用することができ、さらに混合気温度を高めて混合気の着火性をさらに改善することができる。
図1及び2に示す実施形態において、吸気行程の一部において排気弁を開弁するようにすれば、排気ガスの一部が燃焼室2内へ逆流するために、排気ガスの熱によって混合気温度をさらに高めることができ、混合気の着火性をさらに改善することができる。また。排気行程の一部(例えば、排気行程末期)において排気弁を閉弁するようにすれば、排気ガスの一部が燃焼室2内に残留するために、同様に、混合気温度を高めることができる。少なくとも排気弁が電磁又は油圧式等のアクチュエータによって駆動されるものであれば、このような吸気行程中の排気弁の開弁及び排気行程中の排気弁の閉弁は可能である。
このような吸気加熱及び前述の吸気加熱室18による吸気加熱は、機関低負荷時に有効であり、機関高負荷時には吸気加熱を中止してノッキング等の異常燃焼を防止することが好ましい。また、機関負荷が高いほど吸気加熱の程度を徐々に小さくするようにしても良い。
図1及び2に示す実施形態において、燃料加熱室9又は9’に供給される燃料は、ガソリンとしても良いが、メタノール、アンモニア、又は、ブタンとしても、又は、メタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料としても良い。メタノール、アンモニア、又は、ブタンは気化潜熱が大きく、このような燃料が液体燃料として燃焼室内へ供給されると、混合気温度が非常に低くなり、混合気の着火性が非常に悪化してしまう。このように気化潜熱の大きな燃料が使用される場合において、燃料加熱室9又は9’において燃料を加熱して混合気の着火性を改善することは特に好ましい。
また、図1及び2に示す実施形態の内燃機関は、火花点火内燃機関としたが、圧縮自着火内燃機関の場合には、混合気温度を高めて混合気の着火性を高めることは特に必要であり、ノッキング発生を抑制するために圧縮比をそれほど高めることができない時には、燃料加熱室9又は9’において燃料を加熱するだけでなく、図2に示す吸気加熱室18を設けて吸気を加熱したり、吸気行程中に排気弁を開弁させて排気ガスを燃焼室2へ逆流させたりして、又は、排気行程中に排気弁を閉弁させて排気ガスを燃焼室2内に残留させたりして、混合気温度を高めることが好ましい。
また、圧縮自着火内燃機関の場合には、図1及び2に示すように、吸気ポート3に加熱されないガソリンを噴射するもう一つの燃料噴射弁19を設けるようにしても良い。このような構成によって、機関低負荷時には、膨張行程において燃料加熱室9又は9’内の少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料は加熱されるが、この加熱燃料は燃焼室2内へ供給されることなく、燃料としてはもう一つの燃料噴射弁19によって加熱されていないガソリンが吸気ポート3を介して燃焼室内へ供給される。この時に、吸気は、少なくとも燃料加熱室9又は9’において前回の膨張行程で加熱された燃料から燃焼室2へ伝達される熱によって加熱され、混合気温度が高められて良好な圧縮自着火燃焼を実現することができる。
一方、機関高負荷時には、燃料噴射弁7と、もう一つの燃料噴射弁19とを使用して、燃料加熱室9又は9’において加熱された少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料と、加熱されていないガソリンとが燃焼室2へ供給される。それにより、この時には、少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料が加熱されて燃焼室内へ供給され、このような燃料が加熱されずに燃焼室内へ供給される場合に比較して、気化潜熱が小さくなるために、混合気温度を高めることができるが、もう一つの燃料噴射弁19によってガソリンも燃焼室内へ供給され、少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料は、加熱されても、ガソリンに比較すれば気化潜熱が大きく、ガソリンのみの混合気よりは混合気温度が低くなる。こうして、ガソリンのみの混合気と比較すると、混合気の着火性は僅かに悪化し、自着火時期が遅れると共に燃焼が緩慢となるために、燃焼騒音を低減させることができる。もう一つの燃料噴射弁19は、気筒内へ直接的にガソリンを噴射するものとしても良い。
本発明による熱回収利用装置が取り付けられた内燃機関の概略図である。 本発明によるもう一つの熱回収利用装置が取り付けられた内燃機関の概略図である。
符号の説明
2 燃焼室
7 燃料噴射弁
9,9’ 燃料加熱室
12 圧力調整弁
13 蓄圧室

Claims (15)

  1. 隔壁を介して燃焼室に隣接する燃料加熱室を具備し、前記燃焼室から前記隔壁を介して伝達される熱を利用して前記燃料加熱室において加熱された燃料が、燃料噴射弁から噴射されて直接的に又は吸気ポートを介して前記燃焼室へ供給されることを特徴とする内燃機関の熱回収利用装置。
  2. 前記燃料加熱室は前記燃焼室を取り囲むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  3. 前記燃料加熱室内で蒸発させた気体燃料が前記燃料噴射弁から噴射され、前記燃料加熱室内の前記気体燃料の圧力は圧力調整弁によって制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  4. 前記燃料加熱室内の前記気体燃料の圧力は、前記圧力調整弁によって、低負荷時に高くされ、高負荷時に低くされることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  5. 前記燃料加熱室は気筒毎に独立して設けられ、膨張行程となっている気筒の前記燃料加熱室内で蒸発させた気体燃料が燃料噴射時期となっている気筒の前記燃料噴射弁から噴射されることを特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  6. 前記燃料加熱室から前記圧力調整弁を介して流出させる前記気体燃料を蓄える蓄圧室が設けられ、前記蓄圧室内の前記気体燃料が前記燃料噴射弁によって噴射され、前記蓄圧室内の前記気体燃料の圧力に基づき、必要燃料量を噴射するための前記燃料噴射弁の開弁期間が設定されることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  7. 前記燃料加熱室から前記圧力調整弁を介して流出させる前記気体燃料を蓄える蓄圧室が設けられ、前記蓄圧室内の前記気体燃料が前記燃料噴射弁によって噴射され、前記蓄圧室内の前記気体燃料の圧力が設定圧力より高い時には、前記蓄圧室内の前記気体燃料の一部を燃料タンクへ戻すことにより、前記蓄圧室内の前記気体燃料の圧力を前記設定圧力に維持し、必要燃料量を噴射するための前記燃料噴射弁の開弁期間は前記設定圧力に基づき設定されることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  8. シリンダヘッドとシリンダブロックとは一体に形成され、前記燃料加熱室は、前記燃焼室の上部及び下部に前記隔壁を介して一体的に隣接することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  9. 隔壁を介して前記燃焼室に隣接する吸気加熱室が設けられ、前記吸気加熱室内へ排気ガスを流入させることにより、前記吸気加熱室から前記隔壁を介して伝達される熱を利用して前記燃焼室内の吸気を加熱することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  10. 前記吸気加熱室は気筒毎に独立して設けられ、排気行程となっている気筒からの排気ガスを吸気行程となっている気筒の前記吸気加熱室へ流入させることを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  11. 吸気行程の一部において排気弁を開弁させて排気ガスの一部を前記燃焼室内へ流入させることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  12. 排気行程の一部において排気弁を閉弁させて排気ガスの一部を前記燃焼室内へ残留させることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  13. 前記内燃機関の燃料は、少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含んでいることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  14. 前記内燃機関は圧縮自着火エンジンであることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
  15. 前記内燃機関は圧縮自着火エンジンであり、ガソリンを加熱することなく直接的に又は吸気ポートを介して前記燃焼室内へ供給するためのもう一つの燃料噴射弁を具備し、低負荷時には前記もう一つの燃料噴射弁だけを使用してガソリンだけを前記燃焼室内へ供給して圧縮自着火燃焼を実施し、高負荷時には前記燃料噴射弁と前記もう一つの燃料噴射弁とを使用して少なくともメタノール、アンモニア、又は、ブタンを含む燃料とガソリンとを前記燃焼室へ供給して圧縮自着火燃焼を実施することを特徴とする請求項13に記載の内燃機関の熱回収利用装置。
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