本実施形態におけるコンバインは、基本的構造として、穀稈を刈り取る刈取部と、同刈取部により刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部と、同脱穀部により脱穀した穀粒を選別する選別部とを装備している。そして、特徴的構造として、前記刈取部の各駆動部を電動モータで駆動している。
すなわち、各駆動部としての掻き込みリール、刈刃、プラットホームオーガ、フィーダハウスコンベアの各駆動部に電動モータをそれぞれ連結し、各駆動部を個別に駆動することにある。
以下に、本実施形態におけるコンバインを、図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、本実施形態における脱穀選別装置を備えたコンバインAとしての汎用コンバインを示しており、同コンバインAは、機体1の下部に左右一対のクローラ式の走行部3を配設すると共に、機体1の前端縁部に刈取部2を、搬送部としてのフィーダハウス4を介して昇降自在に取り付け、同フィーダハウス4の直後方位置に脱穀部5を配設し、同脱穀部5の直下方位置に選別部6を配設する一方、同揺動体32の後方上部であって、脱穀部5の直後方位置に排藁処理部40を配設している。
また、コンバインAは、機体1の前部であって、フィーダハウス4の右側方位置に運転部7を配設し、同運転部7の直後方位置であって、脱穀部5の右側方位置に穀粒貯留部8を配設し、更には、同穀粒貯留部8の直後方位置に原動機部9を配設している。
次に、コンバインAの各部の構造について図1および図2を参照して説明する。
走行部3は、図1に示すように、機体1の下部に走行フレーム25を取付け、同走行フレーム25の前端部に駆動輪45を連動連結する一方、走行フレーム25の後端部に遊動輪46を回転自在に軸支し、これら駆動輪45と遊動輪46との間に履帯26を巻回している。図中、43は転動輪である。
刈取部2は、図1および図2に示すように、フィーダハウス4を、機体1の前端部に上下回動自在に取り付けており、前後方向に伸延させて形成した搬送ケース60内部に搬送コンベアであるフィーダハウスコンベア(以下「FHコンベア」ということがある)14を配設している。同FHコンベア14は、搬送ケース60内の前部に従動側軸23を左右方向に伸延させて横架する一方、搬送ケース60内の後部に駆動側軸22を左右方向に伸延させて横架している。また、前記従動側軸23と前記駆動側軸22との間にフィーダチェーン24を巻回している。
フィーダハウス4の先端部にはプラットホーム21を連設し、同プラットホーム21内には、左右方向に軸線を向けた横送りオーガであるプラットホームオーガ(以下「PFオーガ」ということがある)13を回動可能に横架して設けている。また、前記プラットホーム21の前側上部に、掻き込みリール11を備えている。さらに、前記プラットホーム21の下面側には、左右長手状に伸延したバリカン状の刈刃12を設けている。27はディバイダーである。
このようにして、圃場に植立した穀稈を掻き込みリール11により掻き込むと共に、刈刃12により穀稈の根元部分を刈り取り、その後、PFオーガ13により刈り取った穀稈を同PFオーガ13の略中央部に寄せ集めて、後方のフィーダハウス4のFHコンベア14へ受け渡すようにしている。そして、PFオーガ13により寄せ集められた穀稈を、FHコンベア14を通して後方の脱穀部5に搬送するようにしている。なお、刈取部2およびフィーダハウス4については詳細に後述する。
脱穀部5は、図1に示すように、搬送部4の直後方位置に扱室44を形成し、同扱室44の内部に円筒状の扱胴28を、回動軸線を機体1の長さ方向に向けた状態で配設している。また、扱胴28の本体の周壁には螺旋状の羽根体29を取付けている。そして、扱胴28の直下方位置にコンケーブ47(受網体)を扱胴28の下半部周面に沿わせて周方向に連続的に張設している。
このようにして、搬送部4によって搬送された穀稈は、扱胴28とコンケーブ47との間に形成される脱穀空間内において、同扱胴28の作用によって扱胴28の機体1の前方から後方へ移送されながら脱穀処理され、穀粒、穀稈切れ、藁くずなどは自重により各コンケーブ47を通過して下方の選別部6へ落下する一方、比較的大きな排藁などは後方の排藁処理部40へ移送されるようにしている。
選別部6は、図1に示すように、扱胴28の直下方位置に揺動体32を、揺動機構33を介して上下方向に揺動可能に配設している。35は、左右方向に伸延して一番穀粒を受ける一番穀粒受樋、37は、左右方向に伸延して二番穀粒を受ける二番穀粒受樋、41は唐箕である。42は、プレクーリングファンである。
揺動体32には、前記扱胴28の直下方に位置させたフィードパン48と、穀粒漏下量を調節自在とした前側チャフシーブ30と、同前側チャフシーブ30の下方に設けるグレンシーブ49と、前記前側チャフシーブ30の後方に配置して穀粒漏下量を調節自在とした後側チャフシーブ31とが配設されている。
そして、一番穀粒受樋35内には左右方向に伸延する一番コンベア36を配置し、同一番コンベア36の左側端部に上下方向に伸延する揚穀コンベア(図示せず)の下端部を連設する一方、同揚穀コンベアの上端部を前記した穀粒貯留部8に連設して、一番穀粒受樋35内の一番穀粒を一番コンベア36→揚穀コンベア→穀粒貯留部8へ搬送するようにしている。
また、二番穀粒受樋37内には左右方向に伸延する二番コンベア38を配置し、同二番コンベア38の左側端部に前後方向に伸延する還元コンベア(図示せず)の後端部を連設する一方、同還元コンベアの前端部を前記した扱室44に連設して、二番穀粒受樋37内の二番穀粒を選別部6に還元して、再度選別するようにしている。
このようにして、扱胴28により脱穀された脱穀物をフィードパン48に受け、同フィードパン48より前側チャフシーブ30に穀粒と藁くずとを供給して、同前側チャフシーブ30により粗選別し、同前側チャフシーブ30より漏下した穀粒と藁くずをグレンシーブ49に粗選別された穀粒と藁くずを供給して、同グレンシーブ49により精選別し、同グレンシーブ49より漏下した精選別された穀粒を一番穀粒として一番穀粒受樋35に受けるようにしている。
そして、前側チャフシーブ30より後側チャフシーブ31に移送された穀粒と藁くずとを、同後側チャフシーブ31により粗選別し、同後側チャフシーブ31より漏下した穀粒を二番穀粒として二番穀粒受樋37に受けるようにしている。
また、一番穀粒受樋35の前方位置に前記唐箕41を配設して、揺動体32の下方に唐箕41から送風可能とすることができる。具体的には、同唐箕41より前側チャフシーブ30の下方から上方へ向けて選別風を送風可能とする。
排藁処理部40は、図1および図6に示すように、脱穀部5の扱胴28の直後方位置に後部搬送ビータ(図示せず)を配設し、同後部搬送ビータの後方位置に排藁カッター66を配設している。そして、脱穀部5で脱穀処理された後の排藁を後部搬送ビータの搬送作用によって排藁カッター66へ搬送し、同排藁カッター66により排藁を細断した後に、機体1の外部へ排出するようにしている。
運転部7は、機体1の前端右側(平面視)上部に略矩形箱型状のキャビン50を配設し、同キャビン50内の平面視中央後部に座席81を配設し、同座席81の前方位置にフロントコラム76を配設し、同フロントコラム76の上端部にステアリングホイール77を設け、また、フロントコラム76の左側方位置に変速コラム79を配設して、同変速コラム79に操作部80を設けている。
穀粒貯留部8は、前記した脱穀部5に設けた扱胴28の右側方方位置にグレンタンク58を配設し、同グレンタンク58に前記した選別部6に設けた一番穀粒受樋35を、揚穀コンベア(図示せず)を介して連通連結すると共に、グレンタンク58内の右側下部に横搬出用スクリュウコンベア(図示せず)を前後方向に軸線を向けて横架し、同横搬出用スクリュウコンベア56の後端部に下端部を連通連結した縦搬出用スクリュウコンベア(図示せず)を原動機部9の右側方位置にて上下方向に軸線を向けて配置し、同縦搬送用スクリュウコンベアの上端部に後端部を連通連結した排出オーガ10を前方へ向けて伸延させ、かつ、後端部を中心に旋回及び上下回動自在としている。13は、排出オーガ10の排出口である。
このようにして、選別部6によって選別された一番穀粒を、揚穀コンベアを介してグレンタンク58内に搬送して、同グレンタンク58内に貯留可能とする一方、同グレンタンク58内に貯留している一番穀粒は、横搬出用スクリュウコンベア→縦搬出用スクリュウコンベア→排出オーガ10を通して排出口(図示せず)より機体1の外部に排出可能としている。
原動機部9は、機体1の左前部にエンジンEを配設し、同エンジンEをミッション(図示せず)等の各動力機構部に伝動機構(図示せず)を介して連動連結している。そして、エンジンEを駆動させることによって、各動力機構部が連動して作動するようにしている。
上記のような構成において、本発明の要旨は、図3および図4に示すように、刈取部2の各駆動部は、電動モータ101〜104で駆動するようにしたことにある。以下、刈取部2の各駆動部である掻き込みリール11、刈刃12、PFオーガ13、FHコンベア14の各構造について詳細に説明する。
まず、掻き込みリール11の構造について説明する。
掻き込みリール11は、図3に示すように、プラットホーム21の上方に配置されている。すなわち、プラットホーム21の上方には、前後方向に伸延する左右一対のリール支持アーム19の基端部が取り付けられ、その先端部間にはリール支軸15が機体1の左右幅方向に横架されている。そのリール支軸15の左右端部には、それぞれ放射方向に伸延する6本のリール形成アーム16が設けられている。
また、前記各リール形成アーム16の先端部同士を、連結片17で連結している。さらに、左右に対向するリール形成アーム16の先端部間には、左右幅方向に伸延するタインバー20を架設している。そして、各タインバー20には、複数個の掻き込みタイン18が所定間隔を有して離間して吊設されている。
前記掻き込みリール11は、穀稈の倒伏状態や生育状態に応じて、リール昇降用油圧シリンダ及びリール前後調整用油圧シリンダにより、上下位置調節及び前後位置調節自在に構成されている。
そして、掻き込みリール11の位置調節は、前記調節用アクチュエータであるリール昇降用油圧シリンダ及びリール前後調整用油圧シリンダを介して、前記運転部7のキャビン内に設けられた操縦部34において操作可能となっている。
このような構成において、本実施形態における掻き込みリール11は、図3および図4に示すように、前記掻き込みリール11のリール支軸15にリール用電動モータ101の駆動軸を連動連結し、そのリール用電動モータ101の駆動軸の回転により駆動するようにしている。
リール用電動モータ101は、掻き込みリール11のリール支軸15を所定回転数で回転するものであれば、その大きさ、トルク容量、最大回転数などは限定されない。電動モータ101〜104用の電力は、後述する発電機72またはバッテリ73から、ハーネスを通して供給される。また、リール用電動モータ101への駆動指令は、運転部7に設けた操作スイッチ(図示せず)、無線リモコン(図示せず)を適宜操作することにより、機体1の所定箇所に配設された刈取部コントローラ100を介して作動させることができるようにしている。また、プラットホーム21には、緊急駆動・停止用のスイッチであるリール緊急操作用SW123を配設して、緊急操作用SW123ないしは上記操作スイッチ、無線リモコンにより掻き込みリール11の回転作動を緊急停止させることができるようにしている。
次に、刈刃12の構造について説明する。
刈刃12は、図3に示すように、PFオーガ13の前方であって、掻き込みリール11の下方に配置されている。刈刃12は、左右方向に伸延する固定刃51と、同固定刃51上にて左右方向に往復摺動する往復摺動刃52とを具備している。このようにして、前記固定刃51と往復摺動刃52とが協働して植立している穀稈を切断するようにしている。
このような構成において、本実施形態における刈刃12は、図4に示すように、プラットホーム21の右側壁に刈刃用の駆動ケース(図示せず)を設け、この駆動ケース内に刈刃用電動モータ102を配設し、刈刃用電動モータ102の回転動力をリンク機構55を介して刈刃12に伝達している。このようにして、刈刃12の往復摺動刃52を左右方向に往復動させて穀稈の株元を切断するようにしている。リンク機構55は、刈刃用電動モータ102の駆動軸の回転を、前記往復摺動刃52の往復動に変換するものである。
なお、オプションとして、セカンドモアの副刈刃(図示せず)を前記刈刃12の後方に配設することができる。そして、前記刈刃12と同様に、刈刃用電動モータ102の回転動力を、リンク機構などを介して、副刈刃に伝達することができる。
次に、プラットホーム21の構造について説明する。
プラットホーム21は、左右一対のオーガ支持壁70を具備して、掻き込みリール11とFHコンベア14との間に配置されている。そして、図2に示すように、左右一対のオーガ支持壁間にPFオーガ13が機体1の左右幅方向に横架されている。そのPFオーガ13は、左右方向に伸延する円筒状の本体71の外周部に螺旋状の羽根体54が取り付けられている。また、本体の外周部には掻き込みフィンガ53が放射方向に出没可能に設けられている。
このような構成において、図3に示すように、前記PFオーガ13をPFオーガ用電動モータ103で駆動するようにしたことである。すなわち、PFオーガ13を軸支するプラットホーム21にPFオーガ用電動モータ103を配設し、そのPFオーガ用電動モータ103の駆動軸とPFオーガ支軸とを連結し、PFオーガ用電動モータ103でPFオーガ13を回転駆動させるようにしたことである。
次に、FHコンベア14の構造について説明する。
FHコンベア14は、図3および図4に示すように、前記プラットホーム21の後方に配置されている。FHコンベア14は、前後方向に伸延する筒状に形成されたハウス本体60内に設けており、同ハウス本体60前端をプラットホーム21の後部に連通連設している。
FHコンベア14は、ハウス本体60内の前部に左右方向に伸延する従動側軸23を横架する一方、ハウス本体60内の後部に左右方向に伸延する駆動側軸22を横架して、前記両軸23,22間にスプロケットを介してフィーダチェーン24を巻回して構成している。そして、ハウス本体60の下内面と搬送コンベア57の下部との間に穀稈を搬送する搬送経路を形成している。このようにして、前記搬送経路を通して刈取した穀稈が刈取部2から脱穀部5に搬送されるようになっている。
このような構成において、本実施形態におけるFHコンベア14は、図3に示すように、駆動側軸22にFHコンベア用電動モータ104の駆動軸を連動連結して、FHコンベア用電動モータ104によりFHコンベア14を駆動するようにしている。
次に、各駆動部での電動モータおよびその周辺機器の構成について図5を参照して説明する。図5に示すように、各駆動部での電動モータ101〜104には、その駆動源であるバッテリ73および発電機72(オルタネータ)から電力が供給される。また、バッテリ73には発電機72が接続され、その発電機72にはエンジンEが接続されている。よって、通常走行時には、エンジンEの軸部の回転により発電機72の軸部が回転し、発電機72で電力が生成され、その電力が各電動モータ101〜104に供給される。
また、エンジンEの停止時には、バッテリ73から電力が供給される。通常走行時、バッテリ73には、発電機72より電力が充電されている。このようにして、通常走行時には安定した電力が発電機72からリール用電動モータ101に供給され、エンジンEの停止時にはバッテリ73からリール用電動モータ101に電力が供給される。
そして、リール用電動モータ101は、CPUを備えた刈取部コントローラ100からの制御により駆動可能としている。刈取部コントローラ100は、機体1の所定箇所に配置されている。この刈取部コントローラ100は、運転部7に配設された操作部80で操作された操作指令を受けて、リール用電動モータ101によりリール用電動モータドライバー141を介して、掻き込みリール11を駆動したり、車速を制御したりする。
掻き込みリール11の駆動と同様に、刈刃12、PFオーガ13、FHコンベア14の各制御は刈取部コントローラ100により、各モータドライバー141〜144を介して行う。また、刈刃用電動モータ102、PFオーガ用電動モータ103、FHコンベア用電動モータ104への電力は、前記リール用電動モータ101と同様に、発電機72およびバッテリ73から供給される。
次に、コンバインAの動力伝達について図6を参照して説明する。
エンジンEから動力は、脱穀クラッチ61を介して、脱穀部5のロータなどの駆動用として伝達される。また、エンジンEからの動力は、選別部6に配置されている唐箕41、揺動体32、プレクーリングファン42、一番コンベア36、二番コンベア38、2番縦コンベア67の駆動用として伝達される。さらに、エンジンEからの動力は、排出オーガクラッチ69を介して、穀粒貯留部8に配置されている下部コンベア63、縦コンベア64、排出コンベア65に伝達される。さらに、走行部のHST62などにも伝達される。
従来では、エンジンEからの動力は、複数個の伝動ベルトおよびプーリを介して、刈取部2の各駆動部に伝達されるようになっていた。これに対して、本実施形態におけるコンバインAは、刈取部2の各駆動部に電動モータをそれぞれ設けて、各電動モータで各駆動部を個別に駆動するようにした。すなわち、図6に示すように、掻き込みリール11のリール支軸15に電動モータの駆動軸を連結して、電動モータの動力を掻き込みリール11に伝達している。これにより、従来使用していた伝動ベルトや伝動プーリなどの部品を削除することができるとともに、刈取部2の駆動機構を簡単化することができる。
前記掻き込みリール11と同様に、刈刃12、PFオーガ13、FHコンベア14についても、電動モータの各駆動力が各駆動部の駆動軸に伝達されるようになっている。
次に、各駆動部の駆動制御について詳細に説明する。まず、コンバインAの刈取部2のメイン処理について図7を参照して説明する。
メイン処理は、図7に示すように、最初に、エンジンEを始動して(S101工程)、刈取部2の各駆動部の起動処理を行う(S102工程)。起動処理は詳細に後述する。次いで、機体1が走行状態になることにより、刈取部2の各駆動部での刈取処理を行う(S103工程〜S106工程)。刈取処理が終わって、エンジンEを停止させると(S107工程)、刈取部2の停止処理を行う(S108工程)。以下、メイン処理の具体的なフローを詳細に説明する。
起動処理は、以下の順で行うことができる。図8に示すように、まず、FHコンベア用電動モータ104を起動させてFHコンベア14を駆動する(S201工程)。次いで、PFオーガ用電動モータ103を起動し、PFオーガ13を駆動する(S202工程)。その後、刈刃用電動モータ102を起動し、刈刃12を駆動する(S203工程)。最後に、リール用電動モータ101を起動し、掻き込みリール11を駆動する(S204工程)。このように、FHコンベア14→PFオーガ13→刈刃12→掻き込みリール11の順に駆動するので、各駆動部で途中に作物が絡まったりすることが少なくなる。
停止処理は、以下の順で行うことができる。図9に示すように、まず、リール用電動モータ101を停止させて、掻き込みリール11の駆動を停止する(S301工程)。次いで、刈刃用電動モータ102を停止させて、刈刃12の駆動を停止する(S302工程)。その後、PFオーガ用電動モータ103を停止させて、PFオーガ13の駆動を停止する(S303工程)。最後に、FHコンベア用電動モータ104の駆動を停止し、FHコンベア14の駆動を停止する(S304工程)。このように、掻き込みリール11→刈刃12→PFオーガ13→FHコンベア14の順に駆動を停止するので、各駆動部で刈り取った作物が留まることが少なくなる。
次に、掻き込みリール11のリール駆動処理について図10を参照して説明する。
リール駆動処理は、図10に示すように、本実施形態におけるコンバインAを圃場内で走行させると、掻き込みリール11はリール用電動モータ101の駆動軸の回転により駆動し、作物を掻き込むことになる。
直立稈であれば、大きな負荷はかからず、電動モータの駆動トルクも少ないが、倒伏稈の場合は、掻き込むだけでなく稈を引き起こす必要があるため、直立稈より電動モータの駆動トルクは高くなる。また、倒伏稈を引き起こすためには、リールタインは地面スレスレの軌道となり、土に突っ込んだり、石を掻き込んだりする場合もある。そのような駆動トルクの変動を、電動モータの電流値に置き換えることで負荷検出を可能としている。
すなわち、掻き込みリール11で作物を掻き込みすると、リールが作物を引き起こすときに負荷が生じ、この負荷を掻き込みリール11を駆動するリール用電動モータ101に流れる電流を検出する(S401工程)。電流は、負荷検出手段としてのリール用電流検出器155で検出する。
掻き込みリール11で掻き込む作物の量が多い場合、掻き込みリール11を回転させる駆動軸の負荷が増大し、駆動トルクを必要とするので、リール用電動モータ101に流れる電流が増大することになる。これに対して、掻き込みリール11で掻き込む作物の量が少ない場合、リール用電動モータ101に流れる電流が少ない状態となる。そして、検出した電流値に応じて、車速を制御するようにする、いわゆる車速同調とするのか、車速一定とするのかを選択する(S402工程)。車速同調する場合、運転部7の操作部80に配設されたリール用車速制御SW131をオンにすることで車速同調モードとなる。リール用車速制御SW131をオンしない場合には車速一定となる。
車速同調では、刈取部コントローラ100は、作物の負荷が大きい状態であって、リール用電動モータ101に流れる電流が大きい場合には、車速制御コントローラ159で車速を低下させる制御を行う。これに対して、作物の負荷が小さい状態であって、リール用電動モータ101に流れる電流が少ない場合には、車速制御コントローラ159で車速を増大させる制御を行う(S403工程)。
車速制御は、例えば、エンジンEの回転数の制御、ブレーキ機構の制動制御などにより行う。このようにして、作物に応じて、掻き込みリール11の回転を制御しながら、走行速度の制御が可能となる。
そして、前記掻き込みリール11で掻き込むことなく、作業者がプラットホーム21内に作物を投げ入れて供給する場合、または緊急の場合には、運転部7、無線リモコン、またはプラットホーム21に配設された緊急停止用SW123を作動させる(S404工程)。これにより、掻き込みリール11のみ駆動を停止することができる(S405工程)。従来では、掻き込みリール11を単独で停止することはできず、掻き込みリール11を駆動させたまま前記投げ入れ作業を行っていた。本実施形態では、掻き込みリール11を単独で停止させた状態で、投げ込み作業を行うことができるので、かかる作業時の危険性を削減することができる。
また、前記車速同調に対して、車速一定の場合は、作物の負荷に拘わらず車速を一定に保持する。車速同調でない場合、手動優先で掻き込みリール11を駆動するか否かを選択する(S406工程)。すなわち、作業者が、運転部7の座席81において操作部80で操作しながら、手動で掻き込みリール11の回転制御を行うか否かの選択をする。
手動操作を選択するときは、作業者が操作部80においてマニュアル作業のリール用手動操作SW121を入力することにより行う。そのリール用手動操作SW121を入力した後、操作部80に配設された掻き込みリール用手動速度設定器122で、作業者の求める掻き込みリール11の回転速度を手動で変更することができる(S407工程)。その際、掻き込みリール11に連結されたリール用電動モータ101が手動操作とタイムラグの限りなく少ない回転変速を実現する。
その後、前記S404工程およびS405工程と同様に、緊急停止か否かの判定を行い(S408工程)、緊急停止処理(S409工程)を行う。
次に、刈刃12の駆動処理について、図11を参照して説明する。
具体的には、図11に示すように、コンバインAを圃場内で走行させて、前記掻き込みリール11の駆動とともに、刈刃12の駆動処理を行う。刈刃12が作物を刈り取ることにより、刈刃12には所定の負荷がかかる。この負荷を、例えば、電動モータに流れる電流を負荷検出手段としての刈刃用電流検出器156により検出する(S501工程)。
コンバインAでは、植え付き時の条方向に沿って刈り取りをする、いわゆる、「条刈」と、植え付き時の条方向に対して略直交する方向に刈り取りをする、いわゆる、「横刈」とが行えるようにしている。そして、条刈の場合に比べて負荷が大きく変動した場合、刈取部コントローラ100が横刈時であると判定する(S502工程)。
条刈の場合は、車速を大きく変更することなく、刈刃12により刈り取り作業が行えるようにする(S503工程)。その後、刈り取る負荷の量に応じて、車速同調にするのか、一定速度で刈取するのかを刈刃用車速制御SW132により選択する(S504工程)。
車速同調の場合は、刈刃用電動モータ102に流れる電流に応じて、車速を制御するようにする(S505工程)。作物の負荷が大きい状態であって、刈刃用電動モータ102に流れる電流が大きいときは、車速制御コントローラ159で車速を低下させる。これに対して、作物の負荷が小さい状態であって、刈刃用電動モータ102に流れる電流が少ないときは、車速制御コントローラ159で車速を増大させる。
そして、刈刃12で作物を刈り取り時、刈刃12が破損する場合が生じてしまった場合には(S506工程)、運転部7、無線リモコン、プラットホーム21に配設された刈刃用緊急停止SW124を押して、刈刃12の駆動を緊急停止させる(S507工程)。
これに対し、横刈時には、車速制御コントローラ159により前記条刈時よりも車速を落としてコンバインAを走行させる(S508工程)。このようにして、横刈時において、刈刃12が破損するのを防止することができる。そして、横刈時にも、刈り取る負荷の量に応じて、車速同調にするのか、一定速度で刈取するのかを刈刃選択する(S509工程)。車速同調の場合は、作物の負荷に応じて車速を制御する(S510工程)。この後、刈刃12が破損しているか否かの判定を行う(S511工程)。そして、刈刃12が破損している場合には、運転部7、無線リモコン、プラットホーム21に配設された刈刃用緊急停止SW124により、刈刃緊急停止処理を行う(S512工程)。
次に、PFオーガ13の駆動方法について図12を参照して説明する。
図12に示すように、コンバインAを圃場内で走行させながら、プラットホーム21内に配置されたPFオーガ13の駆動処理を行う。PFオーガ13の回転速度は作物に応じて変更可能である。PFオーガ13が作物を取り込むことにより、PFオーガ13には所定の負荷がかかる。この負荷を、例えば、PFオーガ用電流検出器157を用いてPFオーガ用電動モータ103に流れる電流を検出する(S601工程)。
次いで、取り込む作物の量に応じて、PFオーガ13にかかる負荷の量も異なっていることとなる。そして、負荷に応じて車速を同調させる制御を行うのか、負荷に関係なく車速を制御するのかをPFオーガ用車速制御SW133により選択する(S602工程)。
負荷に応じて、車速同調とする場合には、作物の負荷が大きい状態であって、PF用モータに流れる電流が大きいときは、車速制御コントローラ159で車速を低下させる。これに対して、作物の負荷が小さい状態であって、PF用モータに流れる電流が少ないときは、車速制御コントローラ159で車速を増大させる(S603工程)。
そして、PFオーガ13で作物の取り込み時に、取り込む作物の量が多く、PFオーガ13に穀稈が巻き付いたときは(S604工程)、警告処理を行う(S605工程)。PFオーガ13の回転を、運転部7、無線リモコン、プラットホーム21に配設されたPFオーガ用緊急停止SW125により停止する(S606工程)。
この後、PFオーガ13を逆回転処理するか否かの選択を行い(S607工程)、逆回転する場合には、例えば、機体1の側方に設けられた逆転スイッチ(図示せず)の入力により、PFオーガ13を逆回転処理する(S608工程)。これにより、PFオーガ13に巻き付いた穀稈を取り除くことができる。
また、逆回転処理する場合、前記PFオーガ13を一定短時間、例えば、1〜2秒間逆転作動させることにより、巻き付いた穀稈を元の状態に戻すとともに、PFオーガ13を長時間逆回転したとき生じる穀粒の損失を可及的に抑えることができる。
次に、FHコンベア14の駆動方法について図13を参照して説明する。
図13に示すように、コンバインAを圃場内で走行させて、FHコンベア14内の搬送コンベア57の駆動処理を行う。FHコンベア14が作物を脱穀部5に搬送することにより、FHコンベア14には所定の負荷がかかる。この負荷を、例えば、フィーダハウス用電流検出器158を用いてFHコンベア用電動モータ104に流れる電流を検出する(S701工程)。
FHコンベア14は、搬送する穀稈の量に応じて、その負荷の量も異なることとなる。そして、作業者はFHコンベア14内の作物の負荷に応じて車速を同調させる制御を行うのか、負荷に関係なく車速を一定するのかをFH用車速制御SW134により選択する(S702工程)。
負荷に応じて車速同調とする場合、作物の負荷が大きい状態であって、FHコンベア用電動モータ104に流れる電流が大きいときは、車速制御コントローラ159により機体1の車速を低下させる。これに対して、作物の負荷が小さい状態であって、FHコンベア用電動モータ104に流れる電流が少ないときは、車速制御コントローラ159で車速を増大させる(S703工程)。このようにして、車速を制御して、FHコンベア14から後工程となる脱穀部5に搬送する穀稈の量を一定にすることができる。
また、搬送する穀稈の量が増えると、その後工程である脱穀部5の扱胴28に負荷が増大することになる。そこで、搬送する穀稈の負荷を検出して、扱胴28への負荷を予測して、扱胴28の回転速度を制御するようにしている(S704工程)。すなわち、作物の負荷が大きい状態であって、FHコンベア用電動モータ104に流れる電流が大きいときは、扱胴28の回転速度を低下させる。これに対して、作物の負荷が小さい状態であって、FHコンベア用電動モータ104に流れる電流が少ないときは、扱胴28の回転速度を増大させる(S705工程)。このようにして、脱穀部5において穀稈量が増大によるロータの過負荷も軽減することができるとともに、選別部6において選別流量を一定にすることができる。
また、FHコンベア14内において藁くずが滞留したり、駆動側軸ないしは従動側軸に藁くずが絡まったりすると、FHコンベア用電動モータ104に過大な負荷がかかることになる。すなわち、FHコンベア用電動モータ104に過大な電流が流れることとなる。その過大な電流が流れたことを検知し(S706工程)、警告を作業者に通知する(S707工程)。そして、FHコンベア14のフィーダチェーン24を、運転部7、無線リモコン、プラットホーム21に配設されたFH用緊急停止SW126により停止させる(S708工程)。その後、フィーダチェーン24を逆回転するか否かの選択を行い(S709工程)、逆回転した場合には、逆回転処理を行って絡まった作物を排出するようにする(S710工程)。
次に、メンテナンスモードについて説明する。
従来、刈取部2は、エンジンEからの動力を、伝動ベルトおよびプーリにより伝達していた。よって、各駆動部のうち、例えば、掻き込みリール11のみを単独で駆動することはできなかった。そこで、本実施形態におけるコンバインAは、各駆動部に電動モータ101〜104を配設することにより、各駆動部を個別に動作させて、メンテナンスを行うことができる。
例えば、運転席の操作部80にメンテナンスモードへの操作スイッチ127〜130を設け、作業者がこのメンテナンスモードの操作スイッチ127〜130を入力することにより、通常の走行・作業モードからメンテナンスモードへ切換を行うことができる。メンテナンスモードは、エンジンEの駆動時または停止時に関係なく設定可能である。
また、作業者が機体1から降りた状態でメンテナンスできるように、無線リモコン(図示せず)で各駆動部を駆動できるようにしている。すなわち、無線リモコンの操作パネルに各駆動部を動作させるように各駆動部のメンテナンス用の操作スイッチ127〜130を設け、作業者は各操作スイッチ127〜130を入れることによりメンテナンスモードに設定して、各駆動部のメンテナンスを行うことができる。
さらに、プラットホーム21に、各駆動部のメンテナンス用の操作スイッチ127〜130を設け、作業者は各操作スイッチ127〜130を入れることによりメンテナンスモードに設定して、各駆動部のメンテナンスを行うことができる。このようにして、メンテナンスモードへの設定を運転部7、無線リモコン、プラットホームの各操作スイッチから行うことができる。
各駆動部の各メンテナンス用の操作スイッチ127〜130は、そのスイッチを継続して押し続けた時間だけ各駆動部を作動させることができるようにしている。例えば、掻き込みリール11のタインバー20を変更したときには、リール用メンテナンスSW127を数秒間押し続けることにより、掻き込みリール11を低速で回転作動させて任意の位置で停止させることができる。
また、掻き込みリール11の各タインバー20には、大豆刈取時のヘッドロスを抑える大豆用リールスラット(半透明のカバー)を配設しているが、メンテナンスモードに設定して、掻き込みリール11を回転しながら前記大豆用リールスラットを取り付けるのにも有効である。
さらに、フィーダハウス用メンテナンスSW130を入力しながら、FHコンベア14内のフィーダチェーン24の継ぎ手リンクの破損箇所を探したいときにも使用することができる。
次に、複数個の電動モータの周波数の管理について説明する。
本実施形態におけるコンバインAでは、前記複数個の電動モータの周波数を刈取部コントローラ100においてプログラムにより管理している。ここで、電動モータの周波数とは、電気振動(電磁波や振動電流)などの現象が単位時間(Hzの場合は1秒)当りに繰り返される回数のことである。このようにして、隣接カバーの周波数の影響を受けやすい部品の共振点を事前に入力し、共振点を回避して、機械の破損防止または部品の耐久性の維持・向上を図るようにしている。プログラムとしては、危険回転数での長時間作業を避けるため、すべての制御より優先して、例えば、±20%減速増速回避するようにしている。