JP2009170838A - 点火コイル及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コイル制御部の絶縁性や機械的強度を犠牲にすることなく、高性能の電子回路を搭載することが可能な点火コイルの製造方法を提供する。
【解決手段】点火コイルCLは、一次ボビン10に一次巻線11を巻着した一次コイル1、及び二次ボビン20に二次巻線21を巻着した二次コイル21が収容されるコイル本体部BODYと、コイル本体部に事後的に連設される頭部であって、一次コイル1の電流を制御するスイッチング素子を収容するコイル制御部CTLと、を有して構成される。完成状態のコイルケース4に、一次コイルと二次コイルとを収容した後、コイルケース4内部に樹脂絶縁材を充填してコイル本体部BODYを完成させる第一工程と、完成状態の前記コイル本体部の上部に、前記スイッチング素子を配置した状態で、熱可塑性樹脂による射出成形によってコイル制御部CTLを連設させる第二工程と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジンなどの内燃機関のプラグホールに挿入される点火コイルのコイル本体部と、プラグホールから露出する頭部たるコイル制御部とを有するペンシル型の点火コイルおよびその製造方法に関する。
ペンシル型の点火コイルの構成及び製造方法については、例えば、特許文献1や特許文献2に記載の発明が知られている。
特開2003−158025号公報 特開2005−072547号公報
特許文献1には、一次コイル及び二次コイルを同心状に収容するコイル本体部のケースと、一次コイルの電流を制御するスイッチング素子を収容するコイル制御部のケースと、点火コイルの構成部材を互いに絶縁する絶縁材とを、射出成形エポキシ樹脂によって一体成形する発明が記載されている。この発明では、絶縁材の注入に合わせて、コイル本体部とコイル制御部の2つのケースが同時に成形される上に、絶縁材を注入するための真空引き作業も不要となるので、生産性の向上と製造コストの低減が実現されることが期待される。
一方、特許文献2には、コイル本体部とは別に、コイル制御部のケースを、コイル制御部に注入される樹脂絶縁体(エポキシ樹脂)と共に射出成形する発明が記載されている(第二実施形態)。この発明では、必要な箇所にだけエポキシ樹脂を注入するべく、コイル本体部の二次巻線を被覆する樹脂絶縁体の特性と、コイル制御部(コネクタ部)の樹脂絶縁体の特性とを異ならせている。例えば、第二実施形態では、大きさが同一のガラス繊維を含有するエポキシ樹脂を使用するものの、コネクタ部用の樹脂絶縁体におけるガラス繊維の含有率を、巻線用の樹脂絶縁体におけるガラス繊維の含有率より高く設定している。
そして、特許文献2に記載の点火コイルには、一次コイルや二次コイルを収容するコイルケースが存在せず、一次コイルの外側には、絶縁材を何ら介在することなく、外周コアが直接装着されている。同様に、二次コイルの部分を除いて、コイル本体部には樹脂絶縁体が注入されておらず、中心コアの外周と二次ボビンの内周との隙間も、最上部を除いて中空状態とされている。
上記した発明のうち、特許文献1に記載の発明では、コイル本体部のケースと、コイル制御部のケースとを一体成形することを趣旨としている。そのため、例えば、コイル本体部が共通するもののコイル制御部だけが異なる点火コイルでも、全体形状を射出成形するための金型が各々必要となり、多種類の点火コイルに対応する上では、かえって製造コストが増加してしまうという問題があった。
一方、特許文献2に記載の発明には、上記の問題はないものの、そもそも、この発明は、二次巻線間とコネクタ部(コイル制御部)に各々のニーズに応じた特性を持つ樹脂絶縁体を注入するという技術思想であり(段落0014)、二次巻線間の絶縁性を問題にするものの、コイル制御部の絶縁性を問題にしていない。そのため、製造コストの低減化は図れても、絶縁性を犠牲にした分だけコイル制御部の性能劣化が避けらず、例えば、コイル制御部に高性能の電子回路を内蔵させることができないという問題がある。すなわち、限られた狭い空間に電子素子を密に配置する上では、コイル制御部においても十分な絶縁性が必要である。また、電子回路の放熱性や耐ノイズ性を高めるべく、伝熱性や導電性に優れた金属部材をコイル制御部の内部から外部に引き出す場合にも、金属部材に起因するひび割れや液浸入などが問題にならない構成が必要となる。
しかるに、特許文献2に記載の発明では、コイル制御部がエポキシ樹脂による射出成形で形成されるため、仮に、ガラス繊維の含有率を高めても、機械的な脆さは避けられず、応力が集中するエンジン部への取付けカラー部や、ECUへの接続コネクタ部については、内燃機関の運転時に割れてしまう可能性がある。そのため、例えば、電子回路からコイル制御部の外側に金属部材を引出す構成を採るような場合には、液浸入や漏電などが問題になる。
また、コイル制御部に使用される注型用エポキシ樹脂は、通常、50℃程度に加熱して金型に流し込まれるが、その後、成形体を加熱して所定の温度パターンで保持して熱硬化させる必要がある。そのため、エポキシ樹脂を注入してから熱硬化までに3〜5時間程度の作業時間を要することになり、作業効率が悪いという問題もある。
なお、この発明では、中心コアを中空状に保持するために、軸方向中央部だけが太い特殊形状の中心コアが必要となり、中心コアの製造時に廃棄する箇所が増える無駄が生じるだけでなく、占有空間の割に中心コアの磁気抵抗が増加して、電気的特性が劣化するという問題点もある。しかも、真空注入工程を排除して、二次コイルの外側だけにエポキシ樹脂を充填する製法を採っているので、不可避的に中空部分が多く残るという問題もある。
更にまた、一次コイルの外側に、直接、外周コアを装着するので、装着作業時に一次コイルの被覆を破損するおそれがある。そして、外周コアを装着した後においても、外周コアの軸方向に延びるスリットを通して一次コイルが剥き出し状態となり、一次コイルの断線などが問題になるところである。
本発明は、上記した種々の問題点に鑑みてなされたものであって、コイル制御部の絶縁性や機械的強度を犠牲にすることなく、高性能の電子回路を搭載することが可能であり、しかも、多種類の製品を容易に製造できる点火コイル及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、一次ボビンに一次巻線を巻着した一次コイル、及び二次ボビンに二次巻線を巻着した二次コイルが収容されるコイル本体部と、前記コイル本体部に事後的に連設される頭部であって、前記一次コイルの電流を制御するスイッチング素子を収容するコイル制御部と、を有して構成される点火コイルの製造方法であって、完成状態のコイルケースに、前記一次コイルと前記二次コイルとを収容した後、前記コイルケース内部の全部又は一部に樹脂絶縁材を充填して前記コイル本体部を完成させる第一工程と、完成状態の前記コイル本体部の上部に、前記スイッチング素子を配置した状態で、熱可塑性樹脂による射出成形によって前記コイル制御部を連設させる第二工程と、を有することを特徴とする。
本発明のコイル制御部は、熱可塑性樹脂による射出成形によって一体的に製造されて、コイル本体部に一体的に連設される。このように、本発明では、熱可塑性樹脂を使用するので、射出成形可能な粘度まで加熱する必要があるが、射出成形後は、数分の硬化時間でコイル本体部と一体化されて点火コイルが完成される。したがって、所定粘度まで加熱した熱可塑性樹脂を用意しておくだけで、大量の点火コイルを迅速に製造することができ作業効率が良い。
硬化後のコイル制御部は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に比較して、大幅に機械的強度が高いので、内燃機関に搭載された後、繰り返し強い振動を受けても、コイル制御部の取付け端部が折れたり、割れることがない。また、本発明のコイル制御部では、絶縁性を犠牲にすることなく、十分な絶縁性を確保できるので、例えば、コイル制御部から外部の導出される導体板を有する構成を採っても、二次コイルから導体板への漏電や放電のおそれがなく、放熱性や耐ノイズ性などを極限的に高めることができ、高性能の電子回路をコイル制御部に内蔵させることができる。
熱可塑性樹脂は特に限定されないが、350℃以下の温度で射出成形可能な粘度となるものが好適に採用される。具体的には、300℃程度で射出成形可能なPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイドpoly phenylene sulfide)、又はPBT樹脂(ポリブチレンテレフタレートpoly buthylene terephthalete)が好適に選択される。PPT樹脂、PBT樹脂とも、十分な機械的強度と絶縁性を有しているので、ひび割れなどによって、二次コイルの漏電や放電が問題になることはない。なお、PPT樹脂、PBT樹脂とも、耐熱性、耐薬品性、難燃性に優れるが、コスト的にはPPS樹脂が有利である。好ましくは、ガラス繊維の配合率が重量パーセントで15〜45%(最適には30%±10%)のPBT樹脂を使用するか、又はガラス繊維の配合率が10〜30%(最適には20%前後)のPPS樹脂を使用すべきである。
本発明の第二工程では、好ましくは、完成状態の前記コイル本体部の上部に、放熱性及び/又は導電性を有する板材を配置した状態で実行される。この板材は、第二工程において、前記スイッチング素子及び/又は前記スイッチング素子を含んだ電子回路のグランドラインに接続されて配置されるのが好適である。更に好ましくは、前記板材は、射出成形後も、その一部が前記コイル制御部の最上部に露出するよう配置されるべきである。このような構成を採ると、コイル制御部に複雑な電子回路を搭載した場合でも、確実に回路のグランドを設けることができる上に、グランド端子による放熱効果によって電子回路の誤動作を有効に防止することができる。
好ましくは、コイル制御部には、取付穴が貫通して形成されるべきであり、また、リング状に形成された前記グランド端子が、前記取付穴の最上部に配置されていると好ましい。このような構成を採ると、取付穴を利用して点火コイルをエンジンブロックに取付けるだけで、エンジンブロックへの放熱経路とグランドラインとを同時に構築することができる。
放熱効果や耐ノイズ性能を高めるためには、前記板材を可能な限り大型化すべきであるが、本発明では、コイル制御部が、PBT樹脂やPPS樹脂などの熱可塑性樹脂で構成されているので、熱硬化性樹脂を使用した場合のような機械的な脆さがなく、強い振動を受け続ける環境においても、大型の板材との絶縁性が問題にならない。
また、前記射出成形は、ECU(Electronic Control Unit)への接続端子が他の配線と共に所定位置に配置された状態で実行されるのが好適である。ここで、前記接続端子を含むコネクタ部は、射出成形により一体成形しても良いが、ECUへの接続端子を含んだ完成状態のコネクタ部を、所定位置に配置された状態で射出成形工程を実行する方が製作容易である。
ところで、本発明のコイル本体部は、コイルケース内部か又は一次ボビン内部かの全ての隙間に樹脂絶縁材を充填して完成される。したがって、エポキシ樹脂などの樹脂絶縁材によって、コイル本体部を一体的に製造した場合に比べて、コイル本体部の機械的強度が高まる。本発明のコイルケースや一次ボビンも、好ましくは、熱可塑性樹脂によって構成されており、より好ましくは、PBT樹脂やPPS樹脂が選択される。なお、コイルケース内部や一次ボビン内部に充填される絶縁樹脂材としては、好ましくは、エポキシ樹脂が使用され、真空引き作業によって全ての隙間に充填される。
前記第一工程では、同一設計のコイル本体部が画一的に製造される一方、前記第二工程では、仕様に応じた形状又は内部構成のコネクタ部が個々的に製造されるのが好ましい。コイル本体部に要求される性能には、それほどのバリエーションがないのに対して、コイル制御部の内部回路構成や使用する電子素子は多様であり、且つ、技術進歩も速いので、上記の製法を採ると、技術進歩や要求仕様に迅速に対応した点火コイルを製造できる。また、製造コストの安い国でコイル本体部を製造する一方、技術レベルの高い国でコイル制御部を製造することもでき、全体としての製造コストを抑制することができる。
また、請求項13に係る発明は、一次ボビンに一次巻線を巻着した一次コイル及び、二次ボビンに二次巻線を巻着した二次コイルが収容されるコイル本体部と、前記コイル本体部に事後的に連設される頭部であって、前記一次コイルの電流を制御するスイッチング素子を収容するコイル制御部と、を有して構成された点火コイルであって、前記コイル本体部は、完成状態のコイルケースに、前記一次コイルと前記二次コイルとを収容した後、前記コイルケース内部の全体又は一部に樹脂絶縁材を充填して完成されており、前記コイル制御部は、完成状態の前記コイル本体部の上部に、前記スイッチング素子を配置した状態で、熱可塑性樹脂による射出成形によって一体的に連設されてなる。
また、請求項14に係る発明は、一次ボビンに一次巻線を巻着した一次コイル及び、二次ボビンに二次巻線を巻着した二次コイルが収容されるコイル本体部と、前記コイル本体部に事後的に連設される頭部であって、前記一次コイルの電流を制御するスイッチング素子を収容するコイル制御部と、を有して構成される点火コイルの中間体であって、完成状態のコイルケースに、前記一次コイルと前記二次コイルとを収容した後、前記コイルケース内部の全部又は一部に、真空引き作業によって樹脂絶縁材を充填して完成されたコイル本体部である。
上記した本発明によれば、機械的強度や電気的特性を劣化させることなく、多種類の製品を安価に製造できる点火コイル及びその製造方法を実現できる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態の点火コイルCLは、コイル本体部BODYを完成させる第一工程と、完成状態の前記コイル本体部BODYの上部に、コイル制御部CTLを連設させる第二工程とを経て製造される。
<第一工程>
図1(a)〜図1(d)は、第一工程を説明する図面である。図1(a)は、筒状の中心鉄心3と、二次コイル2と、一次コイル1とが同心状に配置された状態を示しており、図1(b)は、円筒状のコイルケース4の中に、中心鉄心3と二次コイル2と一次コイル1とを収容した状態を示している。
中心鉄芯3は、ケイ素鋼板などの磁性体からなる板材が、多数枚重ね合わされて断面略八角形状の棒状とされている。その際、外側に重ね合わされるものほどケイ素鋼板の幅寸法を小さくして、全体として断面略八角形状に形成される。なお、この実施形態では、各鋼板同士は長手方向数箇所において、加締めて固定しているが、それに代えて、或いはそれに加えて、各鋼板間を接着するようにしてもよい。
何れにしても、図2(a)に示すように、中心鉄心3は真っ直ぐな筒状であって、軸方向の何れの箇所でも、その断面積が同一である。そのため、軸方向の中心部だけ断面積を大きくするような場合のように、ケイ素鋼板の廃棄部分が増加することがなく、中心鉄心3の占有空間に対応した最小の磁気抵抗となる。なお、このような形状の中心鉄心3の基端には、キャップ状の緩衝材CPを装着した後、熱収縮チューブTUを被せて、これを熱収縮させて硬化させている。
図2(b)に示すように、二次コイル2は、中心鉄心3の外径よりやや大きい内径を有する二次ボビン20と、二次ボビン20の外周に巻着されるコイル巻線21とで構成されている。そして、二次ボビン20の内部には、緩衝材CPと熱収縮チューブTUが装着された中心鉄心3が収容される。
二次ボビン20に巻着される二次コイル巻線21は、二次ボビン20の先端側から巻き始め、複数箇所に区分された巻着セクションを経由して、基端側で巻き終わっている。そして、二次コイル巻線21の終端は、接続端子T1に半田付けされ、二次コイル巻線21の先端は、接続端子T2に半田付けされている。なお、完成された点火コイルの使用時には、接続端子T2は、高圧端子5と導体スプリング6とを経由して、点火プラグPGに接続される。
図2(c)に示すように、一次コイル1は、二次ボビン20の外径よりやや大きい内径を有する一次ボビン10と、一次ボビン10の外周に巻着されるコイル巻線11とで構成されている。そして、一次ボビン10の内部には、中心鉄心3を保有した二次コイル2が収容される。
一次ボビン10は、詳細には、コイル巻線11が巻着される円筒状の本体部10aと、高圧端子5と導体スプリング6とを受け入れる先端部10bと、コイル制御部CTLを受け入れる矩形箱状の受入部10cとに区分される。そして、一次ボビン10に二次コイル2を収容した状態では、二次コイル2の接続端子T2が、高圧端子5に接触している。
一次ボビン基端側の受入部10cには、二次コイル2を通過させる通過穴HOを有する底部BTMと、底部BTMから立ち上がる周縁EDとが設けられている。ここで、通過穴HOは、二次コイル2より十分に大径であり、その中心は、底部BTMの中心より、図2(c)の下方に偏移している。また、周縁EDは、図2(c)の下方一辺を除いた三辺に形成されている。そして、周縁EDの存在しない一辺に、コネクタ部の受入辺RVを形成している。
一次ボビン10に巻着される一次コイル巻線11は、一次ボビン10の基端側から巻き始め、先端側を経由して基端側に戻って巻き終わっている。そして、一次コイル巻線11の先端と終端は、各々、接続端子T3,T4に巻着されている。なお、図2(d)は、コネクタ部の受入辺RVを正面から見た一次コイル1を示している。
上記の構成の中心鉄心3、二次コイル2、及び一次コイル1が、同心状に配置されて図1(a)の状態となる。そして、これら中心鉄心3、二次コイル2、及び一次コイル1が、円筒状のコイルケース4に収容されて図1(b)の状態となる。
図1(b)の状態では、コイルケース4の外側に、弾性を有する外装鉄心7が組み付けられる。図3(a)は、2枚の外装鉄心7が組み付けられたコイルケース4が示されている。このコイルケース4は、熱可塑性樹脂たるPPS樹脂又はPBT樹脂によって予め筒状に製造されている。そして、コイルケース4の上部には、径方向外側に延びるフランジFGが形成されており、一次ボビン10に形成された受入れ部10cの底面が、フランジFGに着座することでコイルケース4の上部が閉塞されている(図1(b)参照)。
図3(a)に示す通り、外装鉄心7には、誘導電流の電流ループを排除するべく、軸方向に延びるスリット7aを設けられている。しかし、一次コイル1と外装鉄心7の間には、コイルケース4が存在するので、一次コイル1がスリット7aを通して剥き出し状態になることはなく、一次コイル1の断線や、コイル巻線11の被覆が加水分解などにより変質するおそれがない。また、コイルケース4が存在するので、外装鉄心7を装着する作業時に、外装鉄心7が一次コイル1の被覆を破損させるおそれもない。なお、外装鉄心7の組み付け時には、コイルケース4の先端側から基端側に向けて、外装鉄心7が押し込まれる。
図1(b)の状態に続いて、コイルケース4の先端側に、図3(b)に示すプラグブーツ8が装着される。具体的には、コイルケース4の先端外周に接着剤が塗布された状態で、導体スプリング6を保有するプラグブーツ8が装着され、その後の加熱処理によって接着剤が硬化されて図1(c)の状態となる。
以上の準備の後、一次ボビン10の内部に、真空引き作業によってエポキシ樹脂が充填され、隙間なく充填されたエポキシ樹脂が熱硬化処理によって硬化されてコイル本体部BODYが完成される。ここで、エポキシ樹脂は、一次ボビンの受入部10cの底部BTMに形成された通過穴HOと、二次コイル2との間に形成される充填口INSから充填される(図1(d)参照)。図4は、完成状態のコイル本体部BODYを図示したものであり、コイル本体部BODYから接続端子T1,T3,T4が突出しているが、一次ボビン10の受入部10cの底部BTMは、エポキシ樹脂によって完全に閉塞されている。
なお、本実施形態では、二次ボビン20の内部にもエポシキ樹脂が充填されるので、二次ボビン20の空隙の膨張/収縮による冷熱ストレスが問題になることはない。一方、一次ボビン10とコイルケース4との間には、エポキシ樹脂が充填されないので、その分だけ作業効率が良い。但し、一次ボビン10とコイルケース4との間にもエポキシ樹脂を充填することが禁止されるものではない。なお、二次ボビン20の内部にエポシキ樹脂を充填しない構成を採っても良い。
<第二工程>
続いて、完成状態のコイル本体部BODYの上部に、熱可塑性樹脂による射出成形によってコイル制御部CTLを連設させる第二工程について説明する。
第二工程では、先ず、電子回路が樹脂モールドされているイグナイタ部30と、ECUとの接続端子を内包するコネクタ部31とが連結される。この実施形態では、コネクタ部31には4本の接続端子C1〜C4が設けられている。図3(c)は、連結状態のイグナイタ部30及びコネクタ部31を示す概略平面図である。なお、図3(c)では、電子回路を収容する樹脂容器が省略されているが、実際のイグナイタ部30は、コネクタ部31とは別体の箱状の樹脂容器に、電子回路が収容されて樹脂モールドされている(図3(d)参照)。
このように、本実施形態では、イグナイタ部30の樹脂容器とコネクタ部31とを別体に形成しているので、仕様変更に即応して、イグナイタ部30だけを設計変更をすることができる。この場合でも、コネクタ部31は引き続き使用できるので、設計変更時に無駄なコストが生じない。また、この実施形態のイグナイタ部30は、予め、内蔵電子回路に最適な絶縁性を確保する樹脂モールドされているので、最終製品では電子回路が二重に樹脂モールドされることになり絶縁性に問題が生じる余地がない。
前記の通り、イグナイタ部30の内部構成は仕様に応じて適宜に変更されるが、この実施形態では、図5に示す電子回路で構成されている。図示のイグナイタ部30は、一次巻線11の電流をON/OFF制御するトランジスタTRの他に、イオン電流検出回路が内蔵されて構成されている。イオン電流検出回路4は、点火プラグPGの点火放電時に充電されてバイアス電圧を蓄電するコンデンサC1と、バイアス電圧を規定するツェナーダイオードZD1と、点火プラグ3の点火放電時における充電路を形成するダイオードD1と、抵抗R1,R2及びOPアンプQ1による電流検出回路(イオン電流の電圧変換部)とで構成されている。OPアンプQ1は、コネクタ部の接続端子C1から供給されるバッテリ電圧で動作する。なお、OPアンプQ1の入力側に保護用ダイオードD2を設けても良い。
図3(c)の連結状態では、コネクタ部31の四本の接続端子C1〜C4のうち、接続端子C2〜C4は、各々、トランジスタTRのベース端子、電子回路のアースライン、及び、OPアンプの出力端子に接続される。また、イグナイタ部30からは、コイル本体部BODYの接続端子T1,T3,T4に接続されるべき接続端子t1,t3,t4が露出して配置されている。更に、イグナイタ部30からは、コイル制御部CTLの導体金属板PTに接続されるべきグランド端子GNDが露出している。なお、コネクタ部31の接続端子C1は、コネクタ部31とイグナイタ部30の連結時に、接続端子t4に接続される。
コネクタ部31とイグナイタ部30の連結時には、イグナイタ部30から露出するグランド端子GNDに、導体金属板PTが接続される。導体金属板PTは、屈曲形成された良導電性の板材であり、図6に示す通り、グランド端子GNDに接続される水平部PT1と、直交して延長される垂直部PT2と、水平方向に延長されるリング状の露出部PT3とを有している。
このような構成の導体金属板PTがイグナイタ部30に連結されると共に、コネクタ部31とイグナイタ部30とが連結されると、この組立体が、図6に示すように、コイル本体部BODYの上に配置される。そして、コイル本体部BODYから突出する二次コイル2の接続端子T1が、イグナイタ部30の接続端子t1に接続される。また、コイル本体部BODYから突出する一次コイル1の接続端子T3,T4が、イグナイタ部30の接続端子t3,t4に接続される。ここで、これらの接続端子の接続時にはレーザー溶接が使用される。なお、先に説明したイグナイタ部30のグランド端子GNDと導体金属板PTの接続についても、同様にレーザー溶接が使用される。
続いて、この半完成状態の点火コイルは、射出成形用の成形金型に配置される。この時には、導体金属板の露出部PT3に、円筒状のブッシングBUが配置される。射出成形には、熱可塑性樹脂たるPPS樹脂又はPBT樹脂が使用されるが、30±10%程度のガラス繊維を含有させたPBT樹脂か、20%程度のガラス繊維を含有させたPPS樹脂が好適に採用される。
何れの樹脂を使用する場合でも、300℃程度まで加熱した熱可塑性樹脂が成形金型内に射出されてコイル制御部CTLが一体成形される。なお、射出成形後の硬化時間は数分であり、3〜5時間の硬化時間を要する熱硬化樹脂を使用する場合より製造効率が良い。
図7(a)と図8は、射出生成後の点火コイルを示しており、この状態で防水用のレインカバー32を装着すると、図7(b)に示すように本実施形態の点火コイルCLが完成する。なお、外装鉄心を、この最終段階で装着しても良いのは勿論である。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、具体的な記載内容は特に本発明の限定するものではない。例えば、上記の説明では、予め製造した完成状態のコネクタ部31を使用したが、樹脂モールドされるイグナイタ部30から、例えば四本の接続端子C1〜C4を露出させておき、コイル制御部CTLを射出成形する際に、接続端子C1〜C4を覆う樹脂コネクタ部31を完成させるのも好適である。
本発明の実施形態の製造方法の第1工程を説明する図面である。 図1に製法で製造される点火コイルの構成部材を説明する図面である。 図1に製法で製造される点火コイルの別の構成部材を説明する図面である。 完成状態のコイル本体部を示す図面である。 コイル制御部の内部構成を例示する回路図である。 本発明の実施形態の製造方法の第2工程を説明する図面である。 完成状態の点火コイルを説明する図面である。 図1の製法で製造される点火コイルを示す斜視図である。
符号の説明
CL 点火コイルCL
10 一次ボビン
11 一次巻線
20 二次ボビン
21 二次巻線
BOBY コイル本体部
CTL コイル制御部

Claims (14)

  1. 一次ボビンに一次巻線を巻着した一次コイル、及び二次ボビンに二次巻線を巻着した二次コイルが収容されるコイル本体部と、
    前記コイル本体部に事後的に連設される頭部であって、前記一次コイルの電流を制御するスイッチング素子を収容するコイル制御部と、を有して構成される点火コイルの製造方法であって、
    完成状態のコイルケースに、前記一次コイルと前記二次コイルとを収容した後、前記コイルケース内部の全部又は一部に樹脂絶縁材を充填して前記コイル本体部を完成させる第一工程と、
    完成状態の前記コイル本体部の上部に、前記スイッチング素子を配置した状態で、熱可塑性樹脂による射出成形によって前記コイル制御部を連設させる第二工程と、
    を有して製造される点火コイルの製造方法。
  2. 前記コイルケース又は前記一次コイルの外周に、外装コアが配置されている請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記第二工程では、樹脂モールドされた状態の前記スイッチング素子が、完成状態の前記コイル本体部の上部に配置される請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記第二工程の射出成形は、完成状態の前記コイル本体部の上部に、放熱性及び/又は導電性を有する板材を配置した状態で実行される請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
  5. 前記板材は、前記第二工程において、前記スイッチング素子及び/又は前記スイッチング素子を含んだ電子回路のグランドラインに接続されて配置される請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記板材は、前記射出成形後も、その一部が前記コイル制御部の最上部に露出するよう配置される請求項4又は5に記載の製造方法。
  7. 前記コイル制御部には、取付穴が貫通して形成され、リング状に形成された前記板材の一部が、前記取付穴の最上部に配置される請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂は、PBT樹脂又はPPS樹脂である請求項1〜7の何れかに記載の製造方法。
  9. 前記PBT樹脂には、20〜40Wt%のガラス繊維が配合され、前記PPS樹脂には、10〜30Wt%のガラス繊維が配合されている請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記第二工程では、樹脂モールドされた状態の前記スイッチング素子が、完成状態の前記コイル本体部の上部に配置される請求項1〜9の何れかに記載の製造方法。
  11. 前記射出成形は、ECUへの接続端子を含んだ完成状態のコネクタ部が、所定位置に配置された状態で実行される請求項1〜10の何れかに記載の製造方法。
  12. 前記第一工程では、同一設計のコイル本体部が画一的に製造される一方、前記第二工程では、仕様に応じた形状又は内部構成のコネクタ制御部が個々的に製造される請求項1〜11の何れかに記載の点火コイル。
  13. 一次ボビンに一次巻線を巻着した一次コイル及び、二次ボビンに二次巻線を巻着した二次コイルが収容されるコイル本体部と、前記コイル本体部に事後的に連設される頭部であって、前記一次コイルの電流を制御するスイッチング素子を収容するコイル制御部と、を有して構成された点火コイルであって、
    前記コイル本体部は、完成状態のコイルケースに、前記一次コイルと前記二次コイルとを収容した後、前記コイルケース内部の全部又は一部に樹脂絶縁材を充填して完成されており、
    前記コイル制御部は、完成状態の前記コイル本体部の上部に、前記スイッチング素子を配置した状態で、熱可塑性樹脂による射出成形によって一体的に連設されてなることを特徴とする点火コイル。
  14. 一次ボビンに一次巻線を巻着した一次コイル及び、二次ボビンに二次巻線を巻着した二次コイルが収容されるコイル本体部と、前記コイル本体部に事後的に連設される頭部であって、前記一次コイルの電流を制御するスイッチング素子を収容するコイル制御部と、を有して構成される点火コイルの中間体であって、
    完成状態のコイルケースに、前記一次コイルと前記二次コイルとを収容した後、前記コイルケース内部の全部又は一部に、真空引き作業によって樹脂絶縁材を充填して完成されたコイル本体部。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015002257A (ja) * 2013-06-14 2015-01-05 ダイヤモンド電機株式会社 内燃機関用点火コイル及び当該点火コイルの製造方法
CN106229111A (zh) * 2016-07-21 2016-12-14 昆山凯迪汽车电器有限公司 点火线圈结构

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