JP2009168238A - 自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】 前、後進時において、1つの自己倍力機構と1つの制限機構を用いて、装置の専有容積が小さく低コストな自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構を提供する。
【解決手段】 トグル部材11を、頂部がインナパッド3の支持部に軸支11Aされるとともに、その両底辺部のそれぞれ11B、11Cを支点として揺動可能に構成し、前記トグル部材11により発生した自己倍力が所定値を超えるのを制限する制限機構21を設置したことにより、トグル部材11の揺動支点の自在な選択が可能で、後進時にもトグル部材11による自己倍力が可能となり小容量のアクチュエータを採用できるばかりでなく、トグル部材11により発生した自己倍力が過大な場合には制限機構21により効果的に逃がされて制限されるので、アクチュエータの出力を必要以上に大きくすることなく小型にできて、パッドやキャリパボディの破損も防止できる。
【選択図】 図1
【解決手段】 トグル部材11を、頂部がインナパッド3の支持部に軸支11Aされるとともに、その両底辺部のそれぞれ11B、11Cを支点として揺動可能に構成し、前記トグル部材11により発生した自己倍力が所定値を超えるのを制限する制限機構21を設置したことにより、トグル部材11の揺動支点の自在な選択が可能で、後進時にもトグル部材11による自己倍力が可能となり小容量のアクチュエータを採用できるばかりでなく、トグル部材11により発生した自己倍力が過大な場合には制限機構21により効果的に逃がされて制限されるので、アクチュエータの出力を必要以上に大きくすることなく小型にできて、パッドやキャリパボディの破損も防止できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、インナパッド押圧機構を内蔵したキャリパボディを介してインナパッドとアウタパッドによりディスクロータを挟圧してブレーキ動作を行うブレーキ装置であって、前記インナパッドをディスクロータの回転接線方向に駆動するアクチュエータと、インナパッドの移動に伴い該インナパッドをディスクロータに押圧すべく揺動するトグル部材とを前記キャリパボディに載置した自己倍力式ブレーキ装置に関する。
車両において使用されるディスクブレーキ装置にあって、インナパッド押圧機構を内蔵したキャリパボディを介してインナパッドとアウタパッドによりディスクロータを挟圧してブレーキ動作を行うキャリパディスクブレーキ装置が知られている。そして、そのようなキャリパディスクブレーキ装置にあって、従来油圧で押圧されるピストンに代わり、電動モータによりブレーキパッドを押圧する簡素な構造で信頼性の高い電動機械式のディスクブレーキ装置が多用されるようになってきている。しかしながら、大きな制動力を必要とするディスクブレーキでは大きな押圧力を必要とするところから、大出力の電動モータが必要で装置が大がかりになった。そのようなことから、サーボ機構(自己倍力機構)を備えたものが提案されている(例えば下記特許文献1および2参照)。
特開平11−315865号公報(公報要約書参照)
ドイツ国特許公開第10 2005 045 114A1 号公報(2007.04.05発行)
特許文献1に開示された第1従来例の電気機械式ブレーキを図4を用いて簡単に説明すると、ボルトキャリア126の内周に締結された電動モータ132を回転駆動することで、第1キャリア・リング114の内周面に刻設された歯部136を噛合回転(前進方向、後述するブレーキディスク112と同じω方向)させる。これにより、第1キャリア・リング114の側面に設置された多数のウェッジ118を前進時の回転方向に移動させる。前記ボルトキャリア126の環状空洞128内には前記多数のウェッジ118に対応して同数のボルト130が回転可能に取り付けられているため、ウェッジ118における小角度αの第1傾斜面120がボルト130と接触するカム作用により、第1キャリア・リング114を摩擦要素116を介してブレーキディスク112側に押圧することになる。このブレーキ力によりブレーキディスク112との間の摩擦により発生した回転接線方向のブレーキトルクによって、第1キャリア・リング114が回転方向に連れ回るので、第1キャリア・リング114に設置された前記各ウェッジ118の第1傾斜面120とボルト130との間のカム作用によりブレーキディスク112側面を押圧するブレーキ力が付加される自己倍力作用が発生する。なお、ウェッジ118における大角度βの第2傾斜面122は、後進時に機能して大きなブレーキ力を必要としない場合の使用に供される。
特許文献2に開示された第2従来例の自己倍力装置を備えた摩擦ブレーキを図5を用いて簡単に説明すると、ディスクロータ207に対して、車両前進の正回転V時には、電動モータ204を回転駆動して該電動モータ204と螺子噛合するスピンドル部材203を介して楔部材202をディスクロータ207とカム部材205との間に進出させ、ディスクロータ207と楔部材202との間の摩擦力にて発生した回転接線方向のブレーキトルクにより楔部材202とカム部材205との間のカム作用により、楔部材202によるディスクロータ207への押圧力が増大する自己倍力作用が発生する。過大な自己倍力が発生した場合には、矢印のようにばねを圧縮してカム部材205が後退する。車両後進の逆回転V’時には、同様にして、楔部材202’によるディスクロータ207’への押圧力が増大する自己倍力作用が発生した時に、過大な自己倍力が発生した場合には、矢印のようにばねを圧縮してカム部材205’が後退する。
以上述べた第1および第2従来例のもののような電気機械式のブレーキ装置を採用することによって、大きな押圧制動力を必要とする鉄道用のディスクブレーキ装置にあっても、油圧装置を用いたブレーキ装置のように配管等の複雑な構造を伴うことなしに自己倍力機能を持ったブレーキ装置が提供できることとなった。しかしながら、これらの従来例のものにあって、前記図4の第1従来例の電気機械式ブレーキでは、ウェッジ118における前進方向と後進方向での傾斜面120と122の角度を異ならせて、発生する自己倍力を僅かに調整する試みはなされているものの、ディスクロータとパッドとの間に異物が混入したり、何らかの原因によるディスクロータの肉厚変動によって軸力が上昇し、パッドとの間で発生する摩擦力が上昇した場合、制動用電動モータの制御力を超えてしまい、摩擦力の作用によりセルフロック状態に陥ったり、車輪ロックを引き起こし、過大なパッド押付け力発生によって、パッドやキャリパボディの破損を引き起こす虞れがあった。これらの諸課題に対処するためには、制御用電動モータの大型化や出力の増大化が必要となり、装置の小型化を阻害していた。
前記図5の第2従来例のものでは、過大な自己倍力が発生する場合には、その倍力を制限すべく、矢印のようにばねを圧縮してカム部材205を後退させることで、セルフロック状態や車輪ロックを引き起こしてパッドやキャリパボディの破損を引き起こす虞れは抑制されるものの、前述したように、前進側と後進側のそれぞれにおいて、特に、自己倍力機構を構成する、スピンドル部材203、203’、楔部材202、202’、カム部材205、205’をそれぞれ一対準備する必要があって、やはり装置の大型化を招いた。
そこで本発明は、前記従来の自己倍力式ブレーキ装置の課題を解決して、前進時と後進時において、1つの自己倍力機構のみを用いて大きな制動力が得られて、過大な自己倍力の発生も1つの制限機構によりあるいは分散させて効果的に制限することができ、装置の専有容積も小さくて済む、低コストな自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構を提供することを目的とする。
このため本発明は、インナパッド押圧機構を内蔵したキャリパボディを介してインナパッドとアウタパッドによりディスクロータを挟圧してブレーキ動作を行うブレーキ装置であって、前記インナパッドをディスクロータの回転接線方向に駆動するアクチュエータと、インナパッドの移動に伴い該インナパッドをディスクロータに押圧すべく揺動するトグル部材とを前記キャリパボディに載置した自己倍力式ブレーキ装置において、前記トグル部材を、頂部がインナパッドの支持部に軸支されるとともに、その両底辺部のそれぞれを支点として揺動可能に構成し、前記トグル部材により発生した自己倍力が所定値を超えるのを制限する制限機構を設置したことを特徴とする。また本発明は、前記制限機構が、制動に必要な押付け力を確保するばね特性を有する制限ばね等を前記トグル部材とキャリパボディとの間に介設して構成したことを特徴とする。また本発明は、前記トグル部材が、キャリパボディにおいてディスクロータに対する位置を調整可能なアンカプレート上に載置されたことを特徴とする。また本発明は、前記制限機構が、アンカプレートの背面に形成したテーパカム面等を介して前記インナパッドの押付け方向と異なった方向に変換された部位に配設されたことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
本発明によれば、インナパッド押圧機構を内蔵したキャリパボディを介してインナパッドとアウタパッドによりディスクロータを挟圧してブレーキ動作を行うブレーキ装置であって、前記インナパッドをディスクロータの回転接線方向に駆動するアクチュエータと、インナパッドの移動に伴い該インナパッドをディスクロータに押圧すべく揺動するトグル部材とを前記キャリパボディに載置した自己倍力式ブレーキ装置において、前記トグル部材を、頂部がインナパッドの支持部に軸支されるとともに、その両底辺部のそれぞれを支点として揺動可能に構成し、前記トグル部材により発生した自己倍力が所定値を超えるのを制限する制限機構を設置したことにより、キャリパボディに載置されたトグル部材の揺動によって、揺動初期にはインナパッドを迅速にディスクロータ側に移動し、揺動後期には緩やかにインナパッドをディスクロータに接触させることができるので、ブレーキ作動時の空走域を極力小さくできて迅速なブレーキ動作を可能にするとともに、トグル部材の揺動支点の自在な選択が可能で、前進時は言うに及ばず、後進時にもトグル部材による自己倍力が可能となり小容量のアクチュエータを採用できるばかりでなく、トグル部材により発生した自己倍力が過大な場合には制限機構により効果的に逃がされて制限されるので、アクチュエータの出力を必要以上に大きくすることなく小型にでき、パッドやキャリパボディの強度も過大にする必要がなく、減肉等の軽量化が可能で、それらの破損を引き起こす虞れもない。
また、前記制限機構が、制動に必要な押付け力を確保するばね特性を有する制限ばねを前記トグル部材とキャリパボディとの間に介設して構成された場合は、前進時は言うに及ばず、後進時にも自己倍力が可能な1つの自己倍力機構であるトグル部材の背面側でキャリパボディとの間に制限ばね等からなる簡素な構造の制限機構を配置すればよいので、前進時および後進時のいずれの場合も、1つの制限ばねに等より過大な自己倍力の発生を制限して抑制することが可能となる。さらに、前記トグル部材が、キャリパボディにおいてディスクロータに対する位置を調整可能なアンカプレート上に載置された場合は、パッド摩耗時のトグル部材の過揺動ストロークによりアンカプレートのディスクロータに対する位置を調整する自動隙間調整機能を付与することも可能となり、その際には、キャリパボディと別素材の選択が自在なアンカプレートを、制限機構の一部として兼用できて構成がより簡素化される。
さらにまた、前記制限機構が、アンカプレートの背面に形成したテーパカム面等を介して前記インナパッドの押付け方向と異なった方向に変換された部位に配設された場合は、前進時および後進時のいずれの場合もアンカプレートの背面側で負担したインナパッドからの押付け力が効果的に分散されたものを、インナパッドの押付け方向と異なった方向に配設された制限機構により受け止めることができる上、制限機構の配設位置の制約が解消されて装置の設計の自由度が向上する。
以下本発明に係る自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構の第1実施例を示す制動時の平断面図、図2は同、初期状態の平断面図、図3は本発明の自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構の第2実施例を示す制動時の要部平断面図である。本発明の自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構の基本的な構成は、図1に示すように、インナパッド押圧機構を内蔵したキャリパボディ1を介してインナパッド3とアウタパッド4によりディスクロータ2を挟圧してブレーキ動作を行うブレーキ装置であって、前記インナパッド3をディスクロータ2の回転接線方向に駆動するアクチュエータ6、7と、インナパッド3の移動に伴い該インナパッド3をディスクロータ2に押圧すべく揺動するトグル部材11とを前記キャリパボディ1に載置した自己倍力式ブレーキ装置において、前記トグル部材11を、頂部がインナパッド3の支持部10Bに軸支されるとともに、その両底辺部のそれぞれを支点として揺動可能に構成し、前記トグル部材11により発生した自己倍力が所定値を超えるのを制限する制限機構21を設置したことを特徴とする。
図1および図2は本発明の自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構の第1実施例を示すもので、図1は制動状態の平断面図、図2は初期状態の平断面図である。図2の初期状態に示すように、車体の静止部等に固定されるサポート22に対してキャリパボディ1が摺動ピン5によって内外(図2の図面上では上下)にスライド自在に構成されている。つまり、サポートに対してキャリパボディ1がフローティング形態にて設置されている。ディスクロータ2の内外に位置して、それぞれインナパッド3とアウタパッド4が配置される。インナパッド3の背面側(図2の図面上では下側)である内側のキャリパボディ1内には、インナパッド押圧機構を兼ねて自己倍力機構を構成するトグル部材11およびアクチュエータを構成する第1電動モータ6および第2電動モータ7等が配設される。
電動モータ6、7は好適には、前記ディスクロータ2の円周上にてトグル部材11の両側に振り分けて配設する。これにより、トグル部材11の両側にてバランス良く円滑にインナパッド3をディスクロータ2の回転接線方向に駆動することができ、しかも1つずつのアクチュエータとしての電動モータ6、7の容量をより小さくできる。トグル部材11の両側に振り分けて配設された各電動モータ6、7は、ディスクロータ2の回転軸と平行な回転軸を有している。図1に示すように、各電動モータ6、7の出力ギヤ6A、7Aはそれぞれ第1および第2偏心カムギヤ8、9の外周の歯部と噛合する。これら偏心カムギヤ8、9の回転軸も各電動モータ6、7の回転軸と平行に配置される。
前記各偏心カムギヤ8、9の外周部には、インナパッド3側に突出させて第1および第2偏心カムピン8A、9Aが設置され、前記インナパッド3の基板であるプレッシャプレート10に対応して刻設されたピンガイド溝10A、10A(図1の下部の図)内に挿入掛止される。これらの電動モータの出力ギヤ6A、7A、偏心カムギヤ8、9、偏心カムピン8A、9A、プレッシャプレート10におけるピンガイド溝10A、10Aの噛合および挿入掛止関連構成が図1の下部に明瞭に描かれている。電動モータ6側にて説明(電動モータ7側も同様)すると、電動モータ6の出力ギヤ6Aが偏心カムギヤ8を回転駆動させると、偏心カムギヤ8の外周部に設置された偏心カムピン8Aを半径の腕の長さにて回転させ、偏心カムピン8Aがピンガイド溝10Aに挿入掛止されたプレッシャプレート10を梃子作用による大きな力でディスクロータ2の回転接線方向に移動させることを可能にする。
前記インナパッド3の基板であるプレッシャプレート10の中央内側に形成された支持部10Bに、略正三角形状のトグル部材11の頂部が支軸11Aにて軸支されるとともに、その両底辺部が前記ディスクロータ2に対する位置調整可能に配設されたアンカプレート12上にフリーの状態で、転動または摺動自在に載置される。したがって、トグル部材11はその両底辺部における両側の第1および第2支軸11B、11C近傍のそれぞれのいずれかを揺動支点として選択して揺動可能に構成されている。つまり、後述するように、前進時あるいは後進時に、ディスクロータ2の正転時あるいは逆転時の回転接線方向に駆動されるプレッシャプレート10の移動に応じて、トグル部材11の両底辺部における支軸11Cあるいは支軸11B近傍を揺動支点として揺動することで、ディスクロータ2の正転時あるいは逆転時のいずれの場合も、プレッシャプレート10を介してインナパッド3をディスクロータ2の側面に押し付けることができる。前記アンカプレート12は、キャリパボディ1の底部1A上に制限機構21を介設して設置される。
制限機構21は以下のように構成される。図2に示すように、制動に必要な押付け力を確保するばね特性を有する制限ばね17を、筒状の制限台座16を介して前記トグル部材11を載置したアンカプレート12とキャリパボディ1の底部1Aとの間に配設される。制限台座16は、アンカプレート12の内側(図面上、下側)に隣接する径大の外側フランジ16Aと、内側に延びる筒状の筒部16Bと、段部を有する内側フランジ16Cとから構成される。前記外側フランジ16Aとキャリパボディ1の底部1Aとの間には、積層された2つの皿ばね等からなる制限ばね17が介設される。制限台座16はキャリパボディ1の底部1Aの内周に遊嵌されており、前記インナパッド3とディスクロータ2との間の摩擦力によりトグル部材11において自己倍力による過大な押圧力が発生したときには、制限台座16は制限ばね17の復元力に抗して内側に移動可能に構成されている。しかしながら、前記制限ばね17は、制動に必要な押付け力を確保するばね特性を有している、つまり、制限ばね17が弾性変形する時点では、制動に必要な通常の押付け力は充分に発生していることになる。
前記制限台座16の内側フランジ16Cにおける内周側の段部には自動隙間調整機構を構成するアンカ部14が載置され、該アンカ部14の軸に螺合された筒状のアジャスタ部13を介してアンカプレート12がその外側に配設される。詳述はしないが、自動隙間調整機構では、インナパッド3の摩耗によりトグル部材11に過揺動ストーク(図1の揺動角αより大きな揺動角)が発生することによって、アンカプレート12にピン軸等にて軸支された図示省略のリターンスプリング等にて牽引されるアジャスタレバーの揺動により、アジャスタ部13のアジャスタギヤ13A(図2)と係合してラチェット回転させ、アジャスタ部13を回転させる。これにより、アジャスタ部13がアンカ部14の螺合軸に対して進出して、アンカプレート12をインナパッド3の摩耗分だけディスクロータ2側へ移動させて調整がなされる。
このように構成された本発明の自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構のブレーキ動作を図1を用いて説明する。図1の矢印にて示す方向を正転の車両前進方向とする。一対の電動モータ6、7の正転により、その出力ギヤ6A、7Aが正転してそれらに噛合する各偏心カムギヤ8、9が矢印の時計方向(図1の下部の図面上)に回転する。これに伴い、各偏心カムギヤ8、9の外周部に設置された偏心カムピン8A、9Aも時計方向に回転移動し、これらの偏心カムピン8A、9Aをピンガイド溝10Aに挿入掛止したプレッシャプレート10が梃子作用による大きな力でディスクロータ2の回転接線方向(矢印)に移動する。これに伴い、トグル部材11は、アンカプレート12上にて両底辺部における一方の支軸11C近傍を揺動支点として時計方向(図面上)に揺動角度αだけ揺動するので、トグル部材11における頂部の支軸11Aを円弧運動にてディスクロータ2側に移動させる。これにより、インナパッド3をディスクロータ2の側面に押し付けてブレーキ動作を開始する。前記トグル部材11における頂部の支軸11Aが円弧運動を描くことにより、ブレーキ動作におけるパッドクリアランスを埋める初期の挙動において迅速な応答性が得られるとともに、全体としてのブレーキ動作の応答性が改善される。
このように、インナパッド3がディスクロータ2の側面に接触して押圧が開始されると、ディスクロータ2との摩擦力によりインナパッド3が連れ回り、前記トルク部材11を、支軸11C近傍を揺動支点とした揺動運動を助長する。この助長された揺動運動が、さらにインナパッド3をディスクロータ2の側面に押圧することになる。ここに、インナパッド3とディスクロータ2との摩擦摺接により回転接線方向に発生したブレーキトルクによるブレーキ力の自己倍力機能が作用することになる。一方、車両の後進時には、ディスクロータ2は図1の矢印方向と反対方向に回転する。電動モータ6、7も変速機の後進位置に連動させる等して逆回転させることで、インナパッド3のプレッシャプレート10を図面左方向に移動させ、トグル部材11を、アンカプレート12上にて両底辺部における他方の支軸11B近傍を揺動支点として反時計方向(図面上)に揺動運動させる。以下の動作は前記前進時と同様なので、説明を省略する。
本発明ではさらに、前記トグル部材11により発生した自己倍力が所定値を超えるのを制限する制限機構21を設置した。制限ばね17が、制動に必要な所定の押付け力を確保するばね特性を有しているので、ディスクロータとパッドとの間に異物が混入したり、何らかの原因によるディスクロータの肉厚変動によって軸力が上昇し、パッドとの間で発生する摩擦力が上昇して、自己倍力が過大になった場合でも、制限ばね17が弾性変形する時点では、制動に必要な通常の押付け力を確保できるにも拘らず、前進時は言うにおよばず、後進時にも自己倍力が可能な1つの自己倍力機構であるトグル部材11の背面側でキャリパボディ1との間に制限ばね17からなる簡素な構造の制限機構21が変形して、過大な自己倍力が効果的に逃がされて制限されるので、アクチュエータの出力を必要以上に大きくすることなく小型にでき、パッドやキャリパボディの強度も過大にする必要がなく、減肉等の軽量化が可能で、それらの破損を引き起こす虞れもなくなった。
このように、前進時および後進時のいずれの場合も、1つの制限ばね17等により過大な自己倍力の発生を制限して抑制することが可能となり、さらに、前記トグル部材11が、キャリパボディ1においてディスクロータ2に対する位置を調整可能なアンカプレート12上に載置されているので、パッド摩耗時のトグル部材11の過揺動ストロークによりアンカプレート12のディスクロータ2に対する位置を調整する前述した自動隙間調整機能を付与することも可能となり、その際には、キャリパボディ1と別素材の選択が自在で設計の自由度が向上したアンカプレート12を、制限機構21の一部として兼用できて構成がより簡素化されることになる。
図3は本発明の自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構の第2実施例を示す制動時の要部平断面図である。本実施例の制限機構21では、図3(A)に示すように、アンカプレート12の内側である背面に傾斜角θの一対のテーパカム面12S、12Sを形成し、前記インナパッド3からの押付け荷重f(図示のものは反作用力f)が作用する押付け方向(ディスクロータ2の回転軸方向)と直交する位置に配設されたプランジャ16、16の先端のテーパカム面16S、16Sと摺接させ、これら各プランジャ16、16の背面にコイル状の制限ばね17、17を配設する。前記プランジャ16、16は前記インナパッド3の押付け方向と直交する部位に配設されるが、設計条件によっては必ずしも直交する部位でなくてもよい。
このように構成されているので、図3(B)に示すように、前述したような何らかの原因によるディスクロータの肉厚変動等によって軸力が上昇し、パッドとの間で発生する摩擦力が上昇して過大な押付け力Fが発生してアンカプレート12が内側に戻された場合には、その反力Fがアンカプレート12に作用して、前記アンカプレート12のテーパカム面12Sとプランジャ16のテーパカム面16Sとのカム作用により、各プランジャ16は左右両側に拡開移動し、制限ばね17、17を圧縮する。これにより、過大な自己倍力が効果的に分散して逃がされて制限されるので、アクチュエータの出力を必要以上に大きくすることなく小型にでき、パッドやキャリパボディの強度も過大にする必要がなく、減肉等の軽量化が可能で、それらの破損を引き起こす虞れもなくなった。前記アンカプレート12の内側への後退は、前述したように、1つのトグル部材11の前進時および後進時のいずれの場合の揺動にても可能であるので、1つのアンカプレート12の後退により効果的に2つのプランジャ16に分散されたものをインナパッド3の押付け方向と異なった方向に配設された制限ばね16、16により受け止めることができる上、制限機構の配設位置の制約が解消されて装置の設計の自由度が向上する。
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、キャリパボディの形状(インナパッド側からアウタパッドの外側に延設される形状等)、形式およびそのサポートへの取付け摺動形態(摺動ピンの他、適宜の摺動部材が採用できる)、アクチュエータの形状、形式(好適には電動モータが採用されるが、流体モータを排除するものではない)および数(好適には小型小容量の2つの電動モータを、ディスクロータの円周上にてトグル部材の両側に振り分けて配設される)、偏心カムピンの設置形態を含む偏心カムギヤの形状、形式、インナパッドのディスクロータの回転接線方向への駆動形態(プレッシャプレートにおけるピンガイド溝の形状、前進時と後進時とで偏心カムピンとの間に発生する操作力を異ならせるようにピンガイド溝を傾斜させてもよい。該溝への偏心カムピンの挿入掛止形態等)、トグル部材の形状(実施例のような中実の略正三角形状の他、頂部支軸を頂点とする山形形状、中空の略正三角形状等)、形式およびそのインナパッド(プレッシャプレート)への支持形態ならびにキャリパボディ(アンカプレート)への載置形態(フリーの状態で、転動または摺動自在)、キャリパボディにおけるトグル部材のディスクロータに対する位置調整形態(アジャスタレバーの形状、形式、揺動形態、ラチェット噛合によるアジャスタレバーとアジャスタギヤとの調整形態)、制限機構を構成する制限台座の形状、形式および制限ばねならびにキャリパボディとの関連構成、制限ばねの形状、形式(皿ばね、コイルばね、圧縮ばね、引張りばね等)およびそのキャリパボディへの配設形態(インナパッドの押付け方向とのなす角度、プランジャおよび制限ばね等をパイプ内にサブアセンブリ化してキャリパボディ中に勘合して組み込んだり、キャリパボディ内の穴部にプランジャおよび制限ばねを挿入して組み込む等)等については適宜選定できる。実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
1 キャリパボディ
1A 底部
2 ディスクロータ
3 インナパッド
4 アウタパッド
5 摺動ピン
6 第1アクチュエータ(電動モータ)
6A 第1出力ギヤ
7 第2アクチュエータ(電動モータ)
7A 第2出力ギヤ
8 第1偏心カムギヤ
8A 第1偏心カムピン
9 第2偏心カムギヤ
9A 第2偏心カムピン
10 プレッシャプレート
10A ピンガイド溝
10B 支持部
11 トグル部材
11A 頂部支軸
11B 第1支軸
11C 第2支軸
12 アンカプレート
16 制限台座
17 制限ばね
20 自己倍力機構
21 制限機構
1A 底部
2 ディスクロータ
3 インナパッド
4 アウタパッド
5 摺動ピン
6 第1アクチュエータ(電動モータ)
6A 第1出力ギヤ
7 第2アクチュエータ(電動モータ)
7A 第2出力ギヤ
8 第1偏心カムギヤ
8A 第1偏心カムピン
9 第2偏心カムギヤ
9A 第2偏心カムピン
10 プレッシャプレート
10A ピンガイド溝
10B 支持部
11 トグル部材
11A 頂部支軸
11B 第1支軸
11C 第2支軸
12 アンカプレート
16 制限台座
17 制限ばね
20 自己倍力機構
21 制限機構
Claims (4)
- インナパッド押圧機構を内蔵したキャリパボディを介してインナパッドとアウタパッドによりディスクロータを挟圧してブレーキ動作を行うブレーキ装置であって、前記インナパッドをディスクロータの回転接線方向に駆動するアクチュエータと、インナパッドの移動に伴い該インナパッドをディスクロータに押圧すべく揺動するトグル部材とを前記キャリパボディに載置した自己倍力式ブレーキ装置において、前記トグル部材を、頂部がインナパッドの支持部に軸支されるとともに、その両底辺部のそれぞれを支点として揺動可能に構成し、前記トグル部材により発生した自己倍力が所定値を超えるのを制限する制限機構を設置したことを特徴とする自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構。
- 前記制限機構が、制動に必要な押付け力を確保するばね特性を有する制限ばね等を前記トグル部材とキャリパボディとの間に介設して構成したことを特徴とする請求項1に記載の自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構。
- 前記トグル部材が、キャリパボディにおいてディスクロータに対する位置を調整可能なアンカプレート上に載置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構。
- 前記制限機構が、アンカプレートの背面に形成したテーパカム面等を介して前記インナパッドの押付け方向と異なった方向に変換された部位に配設されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008010437A JP2009168238A (ja) | 2008-01-21 | 2008-01-21 | 自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008010437A JP2009168238A (ja) | 2008-01-21 | 2008-01-21 | 自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2009168238A true JP2009168238A (ja) | 2009-07-30 |
Family
ID=40969634
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2008010437A Withdrawn JP2009168238A (ja) | 2008-01-21 | 2008-01-21 | 自己倍力式ブレーキ装置の押付け力制限機構 |
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JP (1) | JP2009168238A (ja) |
-
2008
- 2008-01-21 JP JP2008010437A patent/JP2009168238A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
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