JP2009168211A - 油圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ベルト式無段変速機のプライマリシーブの油圧を制御する変速比制御用のコントロールバルブがドレンフェールした場合に、所定の変速比になるようにそのプライマリシーブの油圧を適切に制御できるようにする。
【解決手段】変速比コントロールバルブ110がドレンフェールした場合には、フェールセーフモードをONにしてソレノイドバルブSLSおよびDSUの出力油圧PSLS およびPDSU を何れも最大圧にしてフェールセーフバルブ130を第2連通状態に切り換えた後、一方の出力油圧PSLS を所定のデューティ比率で周期的に変化させることにより、そのフェールセーフバルブ130の連通状態を周期的に切り換え、プライマリ実油圧PINPを周期的に変化させて変速比γが所定の大きさになるようにし、リンプホーム性を向上させる。
【選択図】図11
【解決手段】変速比コントロールバルブ110がドレンフェールした場合には、フェールセーフモードをONにしてソレノイドバルブSLSおよびDSUの出力油圧PSLS およびPDSU を何れも最大圧にしてフェールセーフバルブ130を第2連通状態に切り換えた後、一方の出力油圧PSLS を所定のデューティ比率で周期的に変化させることにより、そのフェールセーフバルブ130の連通状態を周期的に切り換え、プライマリ実油圧PINPを周期的に変化させて変速比γが所定の大きさになるようにし、リンプホーム性を向上させる。
【選択図】図11
Description
本発明は油圧制御装置に係り、特に、油圧制御対象の油圧を制御する調圧バルブがフェールした場合に、その油圧制御対象の油圧を適切に制御できるようにするフェールセーフ技術に関するものである。
油圧制御対象の油圧を制御する調圧バルブがフェールした場合に、その油圧制御対象の油圧を適切に制御できるようにするフェールセーフ技術が、各種の分野で提案されている。特許文献1に記載の技術はその一例で、車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置に関し、変速比制御用の電磁弁がフェールした場合には、変速機が中間的な変速比となるようにプライマリシーブ(油圧制御対象)の油圧を制御して急なダウンシフト等が防止されるようになっている。
特開2003−106441号公報
しかしながら、上記のようなフェールセーフ技術では、変速機が中間的な変速比とされるため、車両停止後の再発進時の駆動力が不足したり、高速走行時に変速比が大き過ぎて運転操作性が悪化したりするなど、未だ改善の余地があった。
一方、未だ公知ではないが、(a) 油圧制御対象に作動油を供給する出力ポートと、調圧バルブから第1油圧が供給される第1入力ポートと、その第1油圧とは異なる第2油圧が供給される第2入力ポートとを備え、前記出力ポートと前記第1入力ポートとを連通する第1連通状態と、その出力ポートと前記第2入力ポートとを連通する第2連通状態とに切り換えられる切換弁と、(b) その切換弁の連通状態を電気信号を介して切り換える切換制御手段と、を有し、(c) 通常は前記切換弁が前記第1連通状態に保持されて前記第1油圧を前記油圧制御対象に供給するが、前記調圧バルブがドレンフェールして第1油圧が低下した場合には、前記切換弁を前記第1連通状態から前記第2連通状態に切り換えて前記第2油圧を前記油圧制御対象に供給する油圧制御装置が考えられる。
図3に示す油圧制御装置はその一例で、前記特許文献1と同様に車両用ベルト式無段変速機の油圧制御に関するものであり、調圧バルブとしての変速比コントロールバルブ110がドレンフェールし、第1油圧であるプライマリ油圧PINが低下した場合には、セカンダリ油圧Pdを制御するための挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS を最大圧とすることにより、切換弁であるフェールセーフバルブ130をフェール(FAIL)側へ切り換え、第2油圧としてのセカンダリ油圧Pdがそのフェールセーフバルブ130を経てプライマリシーブ42に供給され、プライマリ実油圧PINP=Pdとされる。プライマリシーブ42の油圧シリンダが油圧制御対象で、フェールセーフバルブ130のノーマル(NORMAL)側が第1連通状態、フェール側が第2連通状態である。また、挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSや、その出力油圧PSLS を制御する制御装置を含んで切換制御手段が構成されている。
したがって、変速比コントロールバルブ110がドレンフェールした場合には、プライマリシーブ42およびセカンダリシーブ46に共にセカンダリ油圧Pdが供給されることになるが、それ等の受圧面積差に応じてこの例ではプライマリシーブ42側のベルト掛かり径が最大となり、変速比γが最小すなわち最も高速側の変速比となって、車両発進時の駆動力性能が損なわれる。特に、挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS が最大圧とされるため、それに伴ってセカンダリ油圧Pdも最大圧Pdmax すなわちライン油圧PLとなり、負荷が大きくなって駆動力性能が一層悪化するとともに耐久性の点でも好ましくない。図12のタイムチャートは、この時の出力油圧PSLS および油圧Pd、PINP等の変化を示したもので、時間t1が、変速比コントロールバルブ110のドレンフェールが検知された時間であり、出力油圧PSLS が最大圧とされるのに伴ってセカンダリ油圧Pd(=PINP)も最大圧Pdmax になる。
なお、変速比コントロールバルブ110のドレンフェールは、プライマリ油圧PINの油圧制御が不可になって所定値以下まで低下することで、変速比コントロールバルブ110そのもののバルブスティック等による機械的なフェールの他、出力油圧PSLP により変速比コントロールバルブ110を介してプライマリ油圧PINを調圧制御する変速比制御用リニアソレノイドバルブSLPの機械的フェール或いは断線やショート等の電気的なフェールを含む。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、油圧制御対象の油圧を制御する調圧バルブがドレンフェールした場合に、その油圧制御対象の油圧を適切に制御できるようにすることにある。
かかる目的を達成するために、本発明は、(a) 油圧制御対象に作動油を供給する出力ポートと、調圧バルブから第1油圧が供給される第1入力ポートと、その第1油圧とは異なる第2油圧が供給される第2入力ポートとを備え、前記出力ポートと前記第1入力ポートとを連通する第1連通状態と、その出力ポートと前記第2入力ポートとを連通する第2連通状態とに切り換えられる切換弁と、(b) その切換弁の連通状態を電気信号を介して切り換える切換制御手段と、を有し、(c) 通常は前記切換弁が前記第1連通状態に保持されて前記第1油圧を前記油圧制御対象に供給する油圧制御装置であって、(d) 前記切換制御手段は、前記調圧バルブがドレンフェールした場合に前記切換弁を所定のデューティ比率で前記第1連通状態と前記第2連通状態とに周期的に変化させることを特徴とする。
このような油圧制御装置においては、調圧バルブがドレンフェールした場合には、切換弁が所定のデューティ比率で第1連通状態と第2連通状態とに周期的に変化させられるため、第2連通状態の時には第2油圧が油圧制御対象に供給される一方、第1連通状態の時には油圧制御対象から作動油がドレンされることになり、そのデューティ比率(第1連通状態と第2連通状態との時間の比)や第2油圧の大きさに応じて油圧制御対象の作動状態(例えば、前記ベルト式無段変速機の変速比等)が定まる。したがって、例えば油圧制御対象の作動状態が所定の目標状態となるように、上記デューティ比率をフィードバック制御したり学習補正したりすることにより、油圧制御対象を目標状態に適切に制御できるとともに、目標状態を逐次変化させることにより、その目標状態に追従させて油圧制御対象の作動状態を連続的に変化させることが可能で、正常時の作動状態に近づけることができる。
本発明は、例えば車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置、特に変速比を制御する第1シーブの油圧シリンダの油圧を制御する油圧制御装置に好適に適用されるが、ベルト挟圧力を制御する第2シーブの油圧シリンダの油圧を制御する油圧制御装置にも適用できる。車両用の他の油圧制御装置に適用したり、車両用以外の油圧制御装置に適用したりすることも可能である。変速比を制御する油圧シリンダを有する第1シーブは、動力源側のプライマリシーブであっても車輪側のセカンダリシーブであっても良い。車両用ベルト式無段変速機の変速比制御用の油圧制御装置に適用された場合、車両の運転状態(車速など)に応じてフェール時の変速比が適切に制御されることにより、急なダウンシフトによる駆動力変化を防止したり、高速走行時の運転操作性および車両発進時の駆動力性能を両立させたり、過大なベルト挟圧力による耐久性の悪化を抑制したりすることが可能で、リンプホーム性を向上させることができる。
油圧制御対象が、ベルト式無段変速機の変速比を制御する第1シーブの油圧シリンダの場合、例えば(a) 前記調圧バルブは、前記ベルト式無段変速機が所定の変速比となるように前記第1油圧を調圧制御するように構成され、(b) 前記第2油圧としては、前記ベルト式無段変速機の第2シーブの油圧シリンダに供給されてベルト挟圧力を制御する油圧が好適に用いられる。
第1油圧を出力する調圧バルブは、例えばリニアソレノイドバルブやON−OFFソレノイドバルブ等の油圧制御弁と、その油圧制御弁の励磁状態を制御する制御装置とによって構成されるが、油圧制御弁の出力油圧に基づいて第1油圧を調圧制御するコントロールバルブを備えていても良いなど、種々の態様が可能である。第2油圧は、例えば前記ベルト式無段変速機の第2シーブの油圧シリンダに供給されてベルト挟圧力を制御するための油圧が用いられるが、ライン油圧や所定のモジュレータ油圧など他の油圧を採用することもできる。
上記調圧バルブのドレンフェールは、第1油圧の油圧制御が不可になって油圧制御対象を適切に作動させることができない所定値以下まで油圧が低下することで、前記油圧制御弁やコントロールバルブのバルブスティック等による機械的なフェールの他、ソレノイドを含む電気系統の断線やショート等の電気的なフェールを含む。
切換弁は、例えば一直線方向へ往復移動させられることにより第1連通状態と第2連通状態とに流路を切り換えるスプールを有して構成されるが、一中心線まわりに回転駆動される弁体を有するものなど種々の態様が可能である。この切換弁は、ソレノイドや電動モータ、シリンダ等の駆動手段を一体的に備えていて、その駆動手段によって弁体が移動させられるものでも、他のソレノイドバルブから供給されるパイロット油圧によって弁体が移動させられるものでも良いなど、種々の態様が可能である。パイロット油圧としては、専用の油圧を用いることもできるが、例えば前記第2油圧を制御するためのソレノイドバルブの出力油圧を利用したり、或いはロックアップクラッチ制御用の油圧を利用したりするなど、種々の態様が可能である。
切換制御手段は、例えば前記パイロット油圧を出力するリニアソレノイドバルブやON−OFFソレノイドバルブ等のソレノイドバルブ、或いは上記切換弁に一体的に設けられたソレノイド等の駆動手段と、それ等のソレノイドの励磁状態や駆動手段の作動状態を制御する制御装置とを有して構成される。制御装置は、例えば前記調圧バルブのドレンフェールを検知するフェール判定手段と、そのフェール判定手段によってドレンフェールが検知された場合に、前記切換弁の連通状態を所定のデューティ比率で周期的に変化させるフェールセーフ手段とを有して構成される。デューティ比率は、予め一定値が定められても良いが、例えば前記車両用ベルト式無段変速機の場合、車速等の運転状態をパラメータとして設定することもできるし、その運転状態の変化に基づいて連続的に或いは段階的に変化させることもできる。
上記デューティ比率はまた、油圧制御対象の作動状態(例えば前記ベルト式無段変速機の変速比など)が所定の目標状態(目標変速比など)となるように、フィードバック制御や学習補正などで制御することもできる。その目標状態を、車速等の運転状態に応じて逐次変化させることにより、その運転状態の変化に応じて油圧制御対象の作動状態を連続的に変化させることもできるなど、種々の態様が可能である。
切換制御手段は、上記デューティ比率とは別に、切換弁が第2連通状態とされた時に油圧制御対象に供給される前記第2油圧の油圧値を制御するように構成することもできる。また、切換制御手段による切換制御とは別に、切換弁を強制的に第1連通状態或いは第2連通状態とする強制切換手段を設けることも可能である。例えば前記車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置の場合、ロックアップクラッチを解放する低車速では、前記切換制御手段とは別にロックアップクラッチ制御用のソレノイドバルブの出力油圧を用いて切換弁を強制的に前記第1連通状態とし、第1シーブの油圧シリンダの作動油をドレンして変速比が最大となるようにすることもできる。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。この車両用駆動装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の動力源としてエンジン12を備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切換装置16、ベルト式無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。この車両用駆動装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の動力源としてエンジン12を備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切換装置16、ベルト式無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、油圧制御回路100(図2、図3参照)内のロックアップコントロールバルブ140などによって係合側油室および解放側油室に対する油圧供給が切り換えられることにより、係合または解放されるようになっており、完全係合させられることによってポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tは一体回転させられる。ポンプ翼車14pには、ベルト式無段変速機18を変速制御したりベルト挟圧力を発生させたり、ロックアップクラッチ26を係合解放制御したり、或いは各部に潤滑油を供給したりするための油圧を発生する機械式のオイルポンプ28が連結されている。
前後進切換装置16は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、ベルト式無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされてタービン軸34が入力軸36に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力がベルト式無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されると、後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力がベルト式無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)になる。
ベルト式無段変速機18は、入力軸36に設けられた入力側部材である有効径が可変、すなわち溝幅が可変のプライマリシーブ42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変、すなわち溝幅が可変のセカンダリシーブ46と、それ等のシーブ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、シーブ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。
一対のシーブ42および46は、入力軸36および出力軸44にそれぞれ固定された入力側固定回転体42aおよび出力側固定回転体46aと、入力軸36および出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた入力側可動回転体42bおよび出力側可動回転体46bと、それらの間のV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとしての入力側油圧シリンダ42cおよび出力側油圧シリンダ46cとを備えて構成されている。そして、入力側油圧シリンダ42cへ供給されるプライマリ油圧PINが油圧制御回路100によって制御され、その入力側油圧シリンダ42cに対する作動油の供給排出流量が制御されることにより、両シーブ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT )が連続的に変化させられる。また、出力側油圧シリンダ46cの油圧(セカンダリ油圧Pd)が油圧制御回路100によって調圧制御されることにより、伝動ベルト48が滑りを生じないようにベルト挟圧力が制御される。本実施例では、変速比制御に関与する入力側油圧シリンダ42cが油圧制御対象で、プライマリ油圧PINは第1油圧、セカンダリ油圧Pdは第2油圧であり、プライマリシーブ42は第1シーブ、セカンダリシーブ46は第2シーブに相当する。
図2は、図1の車両用駆動装置10に備えられている制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御やベルト式無段変速機18の変速比制御およびベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用やベルト式無段変速機18およびロックアップクラッチ26の油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置50には、エンジン回転速度センサ52により検出されたエンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NE を表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸34の回転速度(タービン回転速度)NT を表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出されたベルト式無段変速機18の入力回転速度である入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)NINを表す信号、車速センサ58により検出されたベルト式無段変速機18の出力回転速度である出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)NOUT すなわち車速Vに対応する回転速度を表す信号、スロットルセンサ60により検出されたエンジン12の吸気配管32(図1参照)に備えられた電子スロットル弁30のスロットル弁開度θTHを表すスロットル弁開度信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温TW を表す信号、CVT油温センサ64により検出されたベルト式無段変速機18等の作動油温度(油温)TCVT を表す信号、アクセル開度センサ66により検出されたアクセルペダル68の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度信号、フットブレーキスイッチ70により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無BONを表すブレーキ操作信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバー74のレバーポジション(操作位置)PSHを表す操作位置信号などが供給されている。
上記シフトレバー74は、例えば運転席の近傍に配設され、順番に設けられた5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、および「L」のうちの何れかへ手動操作されるようになっている。「P」ポジションは車両用駆動装置10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸44の回転を阻止(ロック)するための駐車ポジション(位置)であり、「R」ポジションは出力軸44の回転方向を逆回転とするための後進走行ポジション(位置)であり、「N」ポジションは車両用駆動装置10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジション(位置)であり、「D」ポジションはベルト式無段変速機18の変速を許容する変速範囲で自動変速モードを成立させて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)であり、「L」ポジションは強いエンジンブレーキが作用させられるエンジンブレーキポジション(位置)である。
一方、電子制御装置50からは、エンジン12の出力制御の為に、例えば電子スロットル弁30の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータ76を駆動するスロットル信号や燃料噴射装置78から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号、点火装置80によるエンジン12の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。また、ベルト式無段変速機18の変速比γに関与する前記プライマリ油圧PINを制御するための変速比制御用リニアソレノイドバルブSLPを駆動する制御信号、およびベルト挟圧力に関与する前記セカンダリ油圧Pdを制御するための挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSを駆動する制御信号を出力し、それ等の出力油圧PSLP 、PSLS をそれぞれ所定の油圧に制御する。更に、ロックアップクラッチ26の係合解放制御に関して、前記ロックアップコントロールバルブ140を制御するON−OFFソレノイドバルブDSUの励磁電流をデューティ制御する制御信号を出力し、その出力油圧PDSU を所定の油圧に制御する。
図3は、油圧制御回路100のうちベルト式無段変速機18の変速比制御、ベルト挟圧力制御、およびロックアップクラッチ26の係合解放制御に関する要部を示す油圧回路図で、前記変速比制御用リニアソレノイドバルブSLPの出力油圧PSLP に応じてプライマリ油圧PINを調圧する変速比コントロールバルブ110、前記挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS に応じてセカンダリ油圧Pdを調圧する挟圧力コントロールバルブ120、前記ON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PDSU に応じてロックアップクラッチ26の係合トルク容量、すなわち係合側油室内の油圧と解放側油室内の油圧との差圧であるロックアップ係合油圧を制御するロックアップコントロールバルブ140、および変速比コントロールバルブ110とプライマリシーブ42の油圧シリンダ42cとの間に配設されたフェールセーフバルブ130を備えている。
変速比コントロールバルブ110は、ライン油圧PLが供給される入力ポート110iと、そのライン油圧PLを調圧したプライマリ油圧PINを出力する出力ポート110tと、ドレンポートEXと、軸方向へ移動可能に設けられて入力ポート110iと出力ポート110tとの間の流通断面積および出力ポート110tとドレンポートEXとの間の流通断面積を連続的に変化させるスプール弁子110aと、そのスプール弁子110aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング110bと、そのスプリング110bを収容し且つスプール弁子110aに開弁方向の推力を付与するために前記変速比制御用リニアソレノイドバルブSLPの出力油圧PSLP を受け入れる油室110cと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するために出力ポート110tから出力されたプライマリ油圧PINを受け入れるフィードバック油室110dと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するために所定のモジュレータ油圧PM1を受け入れる油室110eとを備えており、変速比制御用リニアソレノイドバルブSLPの出力油圧PSLP が前記電子制御装置50から供給される制御信号ISLP に応じて制御されることにより、その出力油圧PSLP に応じてプライマリ油圧PINが調圧される。そして、このように調圧されたプライマリ油圧PINは、フェールセーフバルブ130を経てプライマリシーブ42の油圧シリンダ42cに供給され、通常はそのプライマリ油圧PINが油圧シリンダ42cの実際の油圧であるプライマリ実油圧PINPとなって、そのプライマリ実油圧PINPに応じて溝幅が変化して変速比γが調整される。上記ライン油圧PLは、エンジン12により回転駆動される機械式のオイルポンプ28から出力(発生)される作動油圧を元圧として、例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブによってエンジン負荷等に応じた油圧値に調圧される。
図4の(a) は、上記変速比制御用リニアソレノイドバルブSLPの制御信号ISLP と出力油圧PSLP との関係を示す図で、制御信号ISLP が0付近で出力油圧PSLP は最大になり、制御信号ISLP が大きくなるに従ってリニアに低下するが、通常は制御信号ISLP が予め定められた所定値ISLP 1よりも大きい領域、すなわち制御信号ISLP に対して出力油圧PSLP がリニアに変化する領域で制御される。また、図4の(b) は、その出力油圧PSLP とプライマリ油圧PINとの関係を示す図で、プライマリ油圧PINは出力油圧PSLP に対してリニアに増大させられる。したがって、制御信号ISLP が大きくなるに従ってプライマリ油圧PINは低下し、変速比γが大きくなるようにベルト式無段変速機18がダウンシフトされる一方、制御信号ISLP が小さくなるに従ってプライマリ油圧PINは上昇し、変速比γが小さくなるようにベルト式無段変速機18がアップシフトされる。
前記挟圧力コントロールバルブ120は、ライン油圧PLが供給される入力ポート120iと、そのライン油圧PLを調圧したセカンダリ油圧Pdを出力する出力ポート120tと、ドレンポートEXと、軸方向へ移動可能に設けられて入力ポート120iと出力ポート120tとの間の流通断面積および出力ポート120tとドレンポートEXとの間の流通断面積を連続的に変化させるスプール弁子120aと、そのスプール弁子120aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング120bと、そのスプリング120bを収容し且つスプール弁子120aに開弁方向の推力を付与するために前記挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS を受け入れる油室120cと、スプール弁子120aに閉弁方向の推力を付与するために出力ポート120tから出力されたセカンダリ油圧Pdを受け入れるフィードバック油室120dと、スプール弁子120aに閉弁方向の推力を付与するために所定のモジュレータ油圧PM2を受け入れる油室120eとを備えており、挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS が前記電子制御装置50から供給される制御信号ISLS に応じて制御されることにより、その出力油圧PSLS に応じてセカンダリ油圧Pdが調圧される。そして、このように調圧されたセカンダリ油圧Pdがセカンダリシーブ46の油圧シリンダ46cに供給されることにより、そのセカンダリ油圧Pdに応じてベルト挟圧力が調整される。
図5の(a) は、上記挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの制御信号ISLS と出力油圧PSLS との関係を示す図で、制御信号ISLS が0付近で出力油圧PSLS は最大になり、制御信号ISLS が大きくなるに従ってリニアに低下するが、通常は制御信号ISLS が予め定められた所定値ISLS 1よりも大きい領域、すなわち制御信号ISLS に対して出力油圧PSLS がリニアに変化する領域で制御される。また、図5の(b) は、その出力油圧PSLS とセカンダリ油圧Pdとの関係を示す図で、セカンダリ油圧Pdは出力油圧PSLS に対してリニアに増大させられる。したがって、制御信号ISLS が大きくなるに従ってセカンダリ油圧Pdは低下し、ベルト挟圧力が低下させられる一方、制御信号ISLS が小さくなるに従ってセカンダリ油圧Pdは上昇し、ベルト挟圧力が増大させられる。
前記ロックアップコントロールバルブ140は、ON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PDSU が最大圧とされることによりロックアップクラッチ26を最大係合トルクで完全係合させるように構成されており、所定車速以上でロックアップクラッチ26は完全係合させられる。また、ロックアップクラッチ26を係合解放制御する際には、ON−OFFソレノイドバルブDSUをデューティ制御することにより、出力油圧PDSU を所定の変化パターンに従って変化させ、ロックアップクラッチ26を滑らかに係合または解放することができる。
前記フェールセーフバルブ130は、前記変速比コントロールバルブ110からプライマリ油圧PINが供給される第1入力ポート130iと、前記挟圧力コントロールバルブ120からセカンダリ油圧Pdが供給される第2入力ポート130jと、それ等の油圧PINまたはPdをプライマリシーブ42の油圧シリンダ42cへ出力する出力ポート130tと、軸方向へ移動可能に設けられて一対の入力ポート130i、130jと出力ポート130tとの間の連通状態を切り換えるスプール弁子130aと、そのスプール弁子130aを軸方向の一方へ付勢する付勢手段としてのスプリング130bと、スプール弁子130aに軸方向の他方へ移動させる推力を付与するために前記ON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PDSU を受け入れる油室130cと、同じくスプール弁子130aに軸方向の他方へ移動させる推力を付与するために前記挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS を受け入れる油室130dとを備えている。そして、挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの制御信号ISLS が前記所定値ISLS 1よりも大きい領域で制御される通常の制御時には、ON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PDSU の大きさに拘らず、スプール弁子130aはスプリング130bの付勢力に従って図3における上方に位置させられ、中心線よりも左側半分のノーマル(NORMAL)側に示すように第1入力ポート130iと出力ポート130tとを連通させ且つ第2入力ポート130jと出力ポート130tとを遮断する第1連通状態となり、変速比コントロールバルブ110から供給されるプライマリ油圧PINをプライマリシーブ42の油圧シリンダ42cに出力する。これにより、定常状態においては、油圧シリンダ42cのプライマリ実油圧PINP=PINとなり、プライマリ油圧PINに応じて変速比γが制御される。
一方、前記ON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PDSU が最大圧とされた状態、すなわちロックアップクラッチ26が完全係合させられる所定車速以上の車両走行時において、挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの制御信号ISLS が0とされ、その出力油圧PSLS が通常時よりも高い最大圧にされると、スプール弁子130aはスプリング130bの付勢力に抗して図3における下方に位置させられ、中心線よりも右側半分のフェール(FAIL)側に示すように第2入力ポート130jと出力ポート130tとを連通させ且つ第1入力ポート130iと出力ポート130tとを遮断する第2連通状態となり、挟圧力コントロールバルブ120から供給されるセカンダリ油圧Pdをプライマリシーブ42の油圧シリンダ42cに出力する。これにより、定常状態においては、油圧シリンダ42cのプライマリ実油圧PINP=Pdとなり、本実施例では油圧シリンダ42cと46cとの受圧面積差により変速比γが最小、すなわち最高速走行時の状態になる。
本実施例では、上記フェールセーフバルブ130が切換弁で、プライマリ油圧PINが第1油圧、セカンダリ油圧Pdが第2油圧であり、プライマリシーブ42の油圧シリンダ42cが油圧制御対象である。また、変速比コントロールバルブ110は変速比制御用リニアソレノイドバルブSLPと共に調圧バルブを構成しており、フェールセーフバルブ130の連通状態を切り換えるための挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSおよびON−OFFソレノイドバルブDSUや、それ等の出力油圧PSLS 、PDSU を制御する電子制御装置50は切換制御手段として機能している。なお、車速Vが所定値以下になるなどして、ロックアップクラッチ26を解放するためにON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PDSU が最大圧から低下させられると、挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS が通常時よりも高い最大圧であっても、フェールセーフバルブ130はノーマル側の第1連通状態とされるため、そのON−OFFソレノイドバルブDSUを、フェールセーフバルブ130を強制的にノーマル側の第1連通状態とする強制切換手段として用いることもできる。
前記電子制御装置50は、油圧制御に関して図6に示すように変速比制御手段150、ベルト挟圧力制御手段152、ロックアップ制御手段154、フェール判定手段160、およびフェールセーフ手段162を機能的に備えている。変速比制御手段150は、ベルト式無段変速機18の入力軸回転速度NINの目標回転速度NIN * を例えば図7に示すようにアクセル開度Accおよび車速Vをパラメータとして予め設定されたマップから求め、前記変速比制御用リニアソレノイドバルブSLPの制御信号ISLP を前記所定値ISLP 1よりも大きい領域でフィードバック制御するなどして、実際の入力軸回転速度NINが目標回転速度NIN * と一致するようにプライマリ油圧PINを制御する。変速比γは入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT で、出力軸回転速度NOUT は車速Vに対応して短時間的には一定であるため、目標回転速度NIN * はその時の車速Vを基準とする目標変速比に対応し、入力軸回転速度NINが目標回転速度NIN * と一致するように制御することにより、実質的に変速比γが目標変速比に制御される。上記図7のマップは、アクセル開度Accすなわち運転者の出力要求量が大きい程、また車速Vが低い程、車速Vに対する目標回転速度NIN * の比率が大きくなって変速比γが大きくなるように定められる。
ベルト挟圧力制御手段152は、例えば図8に示すように伝達トルクに対応するアクセル開度Accおよび変速比γをパラメータとして、ベルト滑りが発生しない範囲でできるだけ低圧となるように予め定められた目標セカンダリ油圧Pd* のマップから目標セカンダリ油圧Pd* を求め、前記挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの制御信号ISLS を前記所定値ISLS 1よりも大きい領域でフィードバック制御するなどして、実際のセカンダリ油圧Pdがその目標セカンダリ油圧Pd* となるように制御する。セカンダリシーブ46の油圧シリンダ46cの油圧、すなわち実際のセカンダリ油圧Pdを検出する油圧センサが必要に応じて設けられる。上記図8のマップは、アクセル開度Accすなわち運転者の出力要求量が大きい程、また変速比γが大きい程、目標セカンダリ油圧Pd* が大きくなってベルト挟圧力が大きくなるように定められる。セカンダリ油圧Pdはベルト挟圧力に対応するため、目標セカンダリ油圧Pd* の代わりに目標ベルト挟圧力のマップを用いてセカンダリ油圧Pdを制御することもできる。
ロックアップ制御手段154は、例えば図9に示すように入力トルクに対応するスロットル弁開度θTHおよび車速Vをパラメータとして予め記憶された切換マップに基づいて、実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに応じてロックアップクラッチ26のON(係合)−OFF(解放)を切り換えるように、前記ON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PDSU を制御する。切換マップは、実線で示す係合切換線と破線で示す解放切換線とが所定のヒステリシスを有して定められており、ロックアップクラッチ解放状態において車速Vが係合切換線を横切って高車速側へ変化したり、スロットル弁開度θTHが係合切換線を横切って低スロットル開度側へ変化すると、ロックアップクラッチ26を係合させるために出力油圧PDSU を最大圧まで上昇させる。また、ロックアップクラッチ係合状態において車速Vが解放切換線を横切って低車速側へ変化したり、スロットル弁開度θTHが解放切換線を横切って高スロットル弁開度側へ変化すると、ロックアップクラッチ26を解放するために出力油圧PDSU が0とされる。このロックアップクラッチ26の係合時または解放時、或いはその両方で、ON−OFFソレノイドバルブDSUがデューティ制御されることにより、出力油圧PDSU やその出力油圧PDSU に応じてロックアップコントロールバルブ140によって制御されるロックアップ係合油圧が所定の変化パターンで変化させられ、ロックアップクラッチ26を滑らかに係合、解放するスムーズ制御が行なわれる。
フェール判定手段160およびフェールセーフ手段162は、前記変速比コントロールバルブ110がドレンフェールした場合に、挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSおよびON−OFFソレノイドバルブDSUと共に、前記フェールセーフバルブ130の連通状態を所定のデューティ比率で周期的に変化させてプライマリ実油圧PINPを所定の油圧に制御する切換制御手段として機能するもので、図10のフローチャートに従って信号処理を行なう。図10のステップS1はフェール判定手段160に相当し、ステップS2〜S3はフェールセーフ手段162に相当する。
図10のフローチャートは、例えばシフトレバー74がDポジション等の走行ポジションへ操作されている場合に実行され、ステップS1では、変速比コントロールバルブ110がドレンフェールしたか否かを検知する。変速比コントロールバルブ110のドレンフェールは、プライマリ油圧PINの油圧制御が不可になって変速比γを適切に制御することができない所定値以下まで低下することで、変速比コントロールバルブ110そのもののバルブスティック等による機械的なフェールの他、出力油圧PSLP により変速比コントロールバルブ110を介してプライマリ油圧PINを調圧制御する変速比制御用リニアソレノイドバルブSLPの機械的フェール、或いは電気系統のショートにより制御信号ISLP が最大になって、出力油圧PSLP が0となり、変速比コントロールバルブ110から出力されるプライマリ油圧PINが所定値以下となる場合を含む。そして、このようなドレンフェールが発生すると、プライマリ実油圧PINPが低下してベルト式無段変速機18の変速比γが大きくなるため、例えば前記目標回転速度NIN * に対して実際の入力軸回転速度NINが所定値以上大きい状態が一定時間以上継続したか否か、或いは目標回転速度NIN * に対応する目標変速比に対して実際の変速比γが所定値以上大きい状態が所定時間以上継続したか否か、等によって判断できる。また、実際のプライマリ油圧PINやプライマリ実油圧PINPを油圧センサによって検出し、それ等の油圧変化と制御信号ISLP の変化との関係からドレンフェールを判断(推定)することもできるし、ソレノイド等の電気系統のショートは電気的に検出することも可能である。
そして、上記ステップS1の判断がNO(否定)の場合にはそのまま終了するが、YES(肯定)の場合すなわちドレンフェールを検知した場合には、ステップS2以下を実行する。ステップS2ではフェールセーフモードをONとし、前記挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSおよび前記ON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PSLS およびPDSU を何れも最大圧とすることにより、前記フェールセーフバルブ130を第1連通状態(ノーマル側)から第2連通状態(フェール側)に切り換える。これにより、プライマリシーブ42の油圧シリンダ42cにセカンダリ油圧Pdが供給されるようになり、変速比コントロールバルブ110のドレンフェールに拘らず、プライマリ実油圧PINPの急な低下が抑制されてベルト式無段変速機18の変速比γが急に大きくなることが防止される。
図11は、所定車速以上の車両走行中、すなわち前記ON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PDSU が最大圧とされてロックアップクラッチ26が完全係合させられている場合に、時間t1で変速比コントロールバルブ110のドレンフェールが検知され、ステップS1の判断がYESとなってステップS2以下のフェールセーフモードが実行された場合の、油圧PINP、Pdや変速比γ、出力油圧PSLS 、PDSU の変化を示すタイムチャートの一例であり、出力油圧PDSU に加えて挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS が最大圧とされ、フェールセーフバルブ130が第2連通状態(フェール側)に切り換えられることにより、プライマリ実油圧PINPの急な低下、更には変速比γの急な増大が防止される。
なお、所定車速以下の低車速走行中でロックアップクラッチ26が解放されている場合に、ON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PSLS を最大圧とすると、ロックアップクラッチ26が係合してエンジンストールが発生する可能性があるとともに、低車速走行中であれば変速比γが増大しても大きな影響が無いため、所定車速以下の低車速走行中はステップS2以下のフェールセーフモードを実行しないようにすることも可能である。
ここで、このようにフェールセーフバルブ130が第2連通状態(フェール側)に切り換えられた状態が継続すると、プライマリシーブ42およびセカンダリシーブ46の油圧シリンダ42c、46cの油圧が共にセカンダリ油圧Pdになり、それ等の受圧面積差に応じて本実施例ではプライマリシーブ42側のベルト掛かり径が最大となり、変速比γが最小値γmin まで小さくなる。このため、車両が一旦停止した後の再発進時の駆動力性能が損なわれる。また、挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS が最大圧とされるため、それに伴ってセカンダリ油圧Pdも最大圧Pdmax すなわちライン油圧PLとなり、ベルト式無段変速機18の負荷が大きくなって駆動力性能が一層悪化するとともに耐久性の点でも好ましくない。図12のタイムチャートは、このようにフェールセーフバルブ130が第2連通状態(フェール側)に維持された場合のものである。なお、挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS の最大圧は、ON−OFFソレノイドバルブDSUの出力油圧PDSU の最大圧よりも大きく、約2倍である。
これに対し、本実施例では前記ステップS2に続いてステップS3が実行され、変速比γが所定値γtとなるように挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSをデューティ的に制御する。すなわち、挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの制御信号ISLS を、前記所定値ISLS 1よりも大きい所定の切換値ISLS 2と0とに所定のデューティ比率で周期的に変化させると、その出力油圧PSLS が図11に示すように周期的に変化し、フェールセーフバルブ130が第1連通状態と第2連通状態とに周期的に切り換えられる。これにより、プライマリシーブ42の油圧シリンダ42cにセカンダリ油圧Pdが供給される状態と、その油圧シリンダ42c内の作動油がドレンされる状態とに周期的に変化し、それに伴ってプライマリ実油圧PINPが周期的に変化するため、制御信号ISLS のデューティ比率すなわち0の時間と切換値ISLS 2の時間との比率をフィードバック制御するなどして、変速比γが上記所定値γtの近傍に保持されるように制御することができる。
図11において、出力油圧PSLS が最大圧の時、すなわちフェールセーフバルブ130が第2連通状態の時でも、プライマリ実油圧PINPがセカンダリ油圧Pdと一致していないのは、油圧変化の応答遅れによるものである。制御信号ISLS の変化周期すなわちフェールセーフバルブ130の連通状態の切換周期は、油圧変化の応答遅れ等を考慮して例えば1秒〜数秒程度等の所定の周期に設定される。制御信号ISLS の切換値ISLS 2は、フェールセーフバルブ130を第1連通状態へ切り換えることができるように、前記所定値ISLS 1よりも大きい範囲で設定されるが、この切換値ISLS 2に応じて出力油圧PSLS が低下すると、それに伴ってセカンダリ油圧Pdも低下するため、所定のベルト挟圧力が得られる範囲で定められる。
また、前記所定値γtは、予め一定値が定められても良いが、本実施例ではアクセル開度Accおよび車速V等の運転状態をパラメータとして定められており、運転状態に応じて変速比γが制御されるようになっている。但し、油圧制御の応答遅れ等により必ずしも高い制御精度が期待できない場合もあるため、車速Vのみをパラメータとして段階的に設定されるようにしても良いなど、種々の態様を採用できるが、少なくとも車両停止時には変速比γが最大値γmax またはその近傍までダウンシフトされ、高速走行時にはアップシフトされるようにすることが望ましい。変速比γの代わりに入力軸回転速度NINを用いて制御信号ISLS のデューティ比率を制御しても良いことは、前記図7の変速マップに基づく通常の変速比制御の場合と同様である。
このような本実施例の車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置においては、変速比コントロールバルブ110がドレンフェールした場合には、フェールセーフバルブ130が所定のデューティ比率で第1連通状態と第2連通状態とに周期的に変化させられるため、第2連通状態の時にはセカンダリ油圧Pdがプライマリシーブ42の油圧シリンダ42cに供給される一方、第1連通状態の時には油圧シリンダ42cから作動油がドレンされることになり、そのデューティ比率やセカンダリ油圧Pdの大きさに応じてプライマリ実油圧PINPが定まり、そのプライマリ実油圧PINPに応じてベルト式無段変速機18の変速比γが制御される。そして、本実施例では、変速比γがアクセル開度Accおよび車速V等の運転状態をパラメータとして定められる所定値γtとなるように、上記デューティ比率がフィードバック制御されるため、運転状態に応じて変速比γが適切に制御されるようになり、正常時に近い変速比γを実現することができる。これにより、例えば急なダウンシフトによる駆動力変化を防止したり、高速走行時の運転操作性と車両発進時の駆動力性能とを両立させたりすることが可能で、リンプホーム性が向上する。
また、本実施例では、ベルト挟圧力に関与するセカンダリ油圧Pdを制御する挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS を利用してフェールセーフバルブ130を第1連通状態から第2連通状態に切り換えるが、その連通状態を周期的に変化させるために出力油圧PSLS が周期的に変動させられることにより、その出力油圧PSLS に応じて制御されるセカンダリ油圧Pdの平均油圧Pdav(図11参照)が図12に示す最大圧Pdmax よりも低くなるため、過大なベルト挟圧力による耐久性の悪化が抑制される。
また、本実施例では、既存の挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSの出力油圧PSLS を利用してフェールセーフバルブ130の連通状態を切り換えるとともに、第2連通状態では既存のセカンダリ油圧Pdがプライマリシーブ42の油圧シリンダ42cに供給されるようになっているため、フェールセーフバルブ130の連通状態を切り換えるための専用のソレノイドバルブ等を追加したり、第2連通状態で油圧シリンダ42cへ供給される専用の油圧を生成したりする場合に比較して、装置が簡単で且つ安価に構成される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は他の態様で実施することも可能である。
例えば、上記実施例では変速比コントロールバルブ110とプライマリシーブ42との間にフェールセーフバルブ130が設けられているが、挟圧力コントロールバルブ120とセカンダリシーブ46との間にフェールセーフバルブを設け、挟圧力コントロールバルブ120がドレンフェールした場合にライン油圧PL等が所定の周期でセカンダリシーブ46の油圧シリンダ46cに供給されるようにして所定の挟圧力を確保できるようにすることもできる。また、車両用以外の油圧制御装置に適用することも可能である。
また、上記実施例では挟圧力制御用リニアソレノイドバルブSLSをデューティ的に制御してフェールセーフバルブ130の連通状態を周期的に切り換えるようになっていたが、ON−OFFソレノイドバルブDSUを周期的にON(励磁)、OFF(非励磁)してフェールセーフバルブ130の連通状態を周期的に切り換えるようにすることもできる。
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を加えた態様で実施することができる。
18:ベルト式無段変速機 42:プライマリシーブ 42c:油圧シリンダ(油圧制御対象) 50:電子制御装置 110:変速比コントロールバルブ(調圧バルブ) 130:フェールセーフバルブ(切換弁) 130i:第1入力ポート 130j:第2入力ポート 130t:出力ポート 160:フェール判定手段(切換制御手段) 162:フェールセーフ手段(切換制御手段) SLP:変速比制御用リニアソレノイドバルブ SLS:挟圧力制御用リニアソレノイドバルブ PIN:プライマリ油圧(第1油圧) Pd:セカンダリ油圧(第2油圧)
Claims (1)
- 油圧制御対象に作動油を供給する出力ポートと、調圧バルブから第1油圧が供給される第1入力ポートと、該第1油圧とは異なる第2油圧が供給される第2入力ポートとを備え、前記出力ポートと前記第1入力ポートとを連通する第1連通状態と、該出力ポートと前記第2入力ポートとを連通する第2連通状態とに切り換えられる切換弁と、
該切換弁の連通状態を電気信号を介して切り換える切換制御手段と、
を有し、通常は前記切換弁が前記第1連通状態に保持されて前記第1油圧を前記油圧制御対象に供給する油圧制御装置であって、
前記切換制御手段は、前記調圧バルブがドレンフェールした場合に前記切換弁を所定のデューティ比率で前記第1連通状態と前記第2連通状態とに周期的に変化させる
ことを特徴とする油圧制御装置。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016014399A (ja) * | 2014-06-30 | 2016-01-28 | ダイハツ工業株式会社 | 油圧制御装置 |
-
2008
- 2008-01-18 JP JP2008009093A patent/JP2009168211A/ja active Pending
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