JP2009167922A - 内燃機関の吸気制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸気制御弁を備え慣性過給を行う内燃機関においてサージタンクの車両搭載性を向上させ、騒音を抑制させる。
【解決手段】内燃機関の吸気制御装置は、気筒202内部に連通する吸気通路204と、開閉状態に応じて吸気の脈動を生成可能且つ該吸気の量たる吸気量を調整可能な吸気制御弁224と、生成された脈動に対応する脈動波の位相を反転させる位相反転手段205とを備え、位相反転手段205は、外管205a及び吸気通路と交わる方向の断面に係る断面積が吸気通路における該断面積と同一の内管205bを備え、(i)外管205aの上流側の端部は吸気通路204に接続されるとともに、下流側の端部は内管205bの外側に接続され、(ii)内管205bの上流側の端部は外管205aの内側で開放端となるとともに、下流側の端部は吸気通路204に接続されることを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
【選択図】図4
【解決手段】内燃機関の吸気制御装置は、気筒202内部に連通する吸気通路204と、開閉状態に応じて吸気の脈動を生成可能且つ該吸気の量たる吸気量を調整可能な吸気制御弁224と、生成された脈動に対応する脈動波の位相を反転させる位相反転手段205とを備え、位相反転手段205は、外管205a及び吸気通路と交わる方向の断面に係る断面積が吸気通路における該断面積と同一の内管205bを備え、(i)外管205aの上流側の端部は吸気通路204に接続されるとともに、下流側の端部は内管205bの外側に接続され、(ii)内管205bの上流側の端部は外管205aの内側で開放端となるとともに、下流側の端部は吸気通路204に接続されることを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
【選択図】図4
Description
本発明は、例えばインパルスチャージ等の慣性過給が可能な内燃機関の吸気制御装置の技術分野に関する。
内燃機関において、サージタンク下流の吸気通路に吸気制御弁を設けたものが提案されている。このような吸気制御装置によれば、吸気制御弁を吸気ポート下流の吸気弁の開弁後に開くことにより慣性過給効果を得ることが可能であるとされている。この種の装置として、特許文献1には、内燃機関の吸気の流れを利用して吸気制御弁の開閉を行う技術が開示されている。この技術においては、内燃機関の一吸気行程中に少なくとも一回ずつ吸気制御弁の開閉が行われる。この技術によれば、吸気の流れと反対方向に吸気制御弁の弁体を押圧し、弁体の上流側及び下流側の圧力差によって開弁することが出来る。
ところで、慣性過給が行われる内燃機関の吸気制御弁は、エンジン回転数が高くなるにつれて、開弁速度を増大させて、気筒内の負圧を急開放することで強い吸気の脈動を発生させる必要がある。他方で、吸気制御弁の開弁速度を増大させるには、弁の開閉を行うアクチュエータ系においてより多くの電力消費が行われることとなり、それに伴う発熱量の増大や、アクチュエータ系の大型化などが懸案となっている。
特に、慣性過給効果をより向上させるためには、内燃機関の吸気行程前半において発生する負圧波を増大させる必要があるが、そのためにポンピング損失の増大による燃費の悪化や、オイル消費の増大などを招く虞がある。
本発明は、上述した問題点に鑑みて為されたものであり、慣性過給を行う内燃機関の吸気行程前半において、発生する負圧波を好適に増大させることで慣性過給効果を向上させつつ、吸気制御弁のアクチュエータ系における電力消費の低減、及びポンピング損失の増大をも抑制し得る内燃機関の吸気制御装置を提供することを課題とする。
上記問題を解決するために、本発明の内燃機関の吸気制御装置は、気筒内部に連通する吸気通路と、該吸気通路に設置され、回転による開閉状態に応じて吸気の脈動を生成可能且つ該吸気の量たる吸気量を調整可能な吸気制御弁と、前記吸気通路において前記吸気制御弁の上流側に設置され、前記生成された脈動に対応する脈動波の位相を反転させる位相反転手段とを備え、前記吸気制御弁は、開弁速度と閉弁速度が非対称である。
本発明に係る「内燃機関」とは、一又は複数の気筒を有し、当該気筒の各々における燃焼室において、例えばガソリン、軽油、各種アルコール若しくは各種アルコールとガソリンとの混合燃料等各種の燃料又は当該各種燃料を含む混合気等が爆発或いは燃焼した際に生じる力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的な又は機械的な伝達経路を経て駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。また、この種の内燃機関に係る「内燃機関の吸気装置」とは、気筒内部に対する、吸気(即ち、外界から吸入される空気たる吸入空気を少なくとも概念の一部として含み、当該吸入空気そのもの、或いは例えばEGR装置等の排気再循環装置が備わる場合等には例えばEGRバルブ等の流量調整手段の開閉状態等に応じてEGRガス(即ち、排気の一部)と当該吸入空気の混合体等の各種形態を採り得る)の供給に供される装置である。
本発明に係る内燃機関の吸気装置における「吸気通路」とは、即ち、吸気の通路であって、好適な一形態として、例えばエアクリーナ、エアフローメータ、スロットルバルブ(即ち、吸気絞り弁)及び吸気ポート等を相互に且つ適宜に連結又は連通せしめ得る、例えば単一又は複数の管状部材の形態を採る。特に、本発明に係る内燃機関の吸気装置は、この吸気通路に、例えばターボチャージャ等の過給器(無論、タービン等、排気系に備わるべき一部を除外してなる一部であってもよい)が備わっており、更にその下流側(尚、「下流」とは、吸気の流れる方向を基準とする方向概念の一であり、この場合、即ち気筒側である)に、例えばインタークーラ等の吸気冷却手段を備える。吸気冷却手段は、過給器を介して供給される(過給器による過給が実践上有意に行われているか否かとは無関係であってもよい)吸気を冷却可能な物理的、機械的、機構的、電気的、磁気的又は化学的態様を有する手段であって、少なくとも幾らかなり且つ相対的に吸気が冷却されることによって、吸気の密度は相対的に上昇し、吸気の充填効率は向上し得る。
一方、本発明に係る内燃機関の吸気装置は、吸気通路における吸気冷却手段の下流側に吸気制御弁を備える。この吸気制御弁は、例えば二値的に、段階的に或いは連続的に制御され得る開閉状態に応じて、吸気の脈動を少なくとも生成可能な、且つ当該吸気の量たる吸気量を調整可能な、例えば弁体、或いは当該弁体に加え更に当該弁体を駆動する駆動装置等を適宜に含んでなる動弁機構又は動弁装置等の形態を採り得る手段である。この吸気制御弁は、内燃機関にスロットルバルブ等の所謂吸気絞り弁が備わる場合には、好適な一形態として、この吸気絞り弁の下流側に設置される。
吸気制御弁の設置態様は、例えば吸気通路の物理的な構成等に応じて多種多様な形態を採り得る。即ち、吸気通路は、吸気制御弁の下流側において気筒各々に分岐してもよいし(即ち、所謂一弁式のインパルスチャージ系に類する態様)、各々に吸気制御弁を備える、気筒各々に対応する吸気枝管(それに類するものを含む)を備えていてもよい(即ち、所謂多弁式のインパルスチャージ系に類する態様)。いずれにせよ、吸気制御弁は、吸気を脈動波として各気筒へ送り込むこと(好適な一形態として、吸気は、吸気制御弁の有無にかかわらず、基本的に脈動波として気筒内に取り込まれ得るが、吸気制御弁により生じる脈動とは、好適な一形態として、この種の脈動よりも強い脈動である)を主たる目的としており(但し、例えばこの種の脈動の生成とは別に、例えばスロットルバルブ等の吸気絞り弁の開閉操作等により好適に行われ得る吸入空気の調量(吸気絞り)を実践上問題無い程度に実践し得る場合には、スロットルバルブ等の吸気絞り弁の作用を本発明に係る吸気制御弁にて代替させてもよい(或いは逆に、吸気絞り弁が、本発明に係る吸気制御弁として、その機能を代替してもよい))、好適な一形態として、その開閉により少なくとも実践上十分な吸気の脈動を生じさせ得る程度に各気筒の吸気弁に近接した位置に設置されてもよい。
このように吸気制御弁を備える内燃機関では、吸気制御弁が単一であれ複数であれ、吸気の脈動を利用した慣性過給(パルス過給或いはインパルスチャージ等とも称される)が可能であって、例えば吸気制御弁の開閉時期、開弁期間又は開度(即ち、開弁の度合いであり、一義的に開閉状態を規定する)の制御(例えば、吸気の脈動波の山に相当する部分を吸気弁の閉弁時期近傍に同期させる旨の制御等)によって、例えば自然吸気がなされる場合等と比較して多量の吸気を吸気行程で気筒内に取り込むことが可能となる。また、吸気制御弁は、その開閉状態が如何なる態様を採り得るにせよ、また実践的にみて容易であるか否かは別として吸気量の調節が可能であり、例えば、吸気弁の開弁期間の途中で実質的に吸気の流入を遮断する吸気早閉じ制御等により、ポンピングロスの低減を図ることも可能となる。
ここで、本発明に係る内燃機関の吸気装置において、吸気制御弁を利用したこの種の慣性過給を実現する場合、吸気制御弁の開閉制御に加えて、例えばサージタンク等の形態を採り得る位相反転手段による、脈動に対応する脈動波の位相反転作用が利用される。ここで、「脈動に対応する脈動波」と表現されるように、位相反転手段に係る位相の反転に供される脈動波は、好適な一形態として、吸気弁の開弁後然るべき時間経過(クランク角等により角度概念として規定されてもよい)を経て吸気制御弁が開弁することによって生じる(即ち、吸気制御弁の下流側が負圧であり、且つ吸気制御弁の上流側が大気圧以上であることにより生じる)一次的な脈動波(正圧波)ではなく、当該一次的な脈動波が、開放端とみなし得る各気筒の燃焼室入り口近傍で反射されてなる反射波(即ち、当該一次的な脈動波とは位相が反転してなる負圧波)である。この反射波の位相が反転してなる言わば二次的な脈動波(即ち、正圧波)により、上述した慣性過給が実現される。
尚、本発明の内燃機関の吸気制御装置に係る吸気制御弁の開弁速度は、吸気制御弁の開弁速度と非対称となっている。典型的には、後に詳述するように、例えば、本発明によらない従来型の吸気制御弁の開弁速度、或いは少なくとも本発明に係る吸気制御弁の閉弁速度に比して速くなるよう、その開弁が制御されている。他方で、本発明に係る吸気制御弁の閉弁速度は、本発明によらない従来型の吸気制御弁の閉弁速度、或いは少なくとも本発明に係る吸気制御弁の開弁速度に比して速くなるよう、その閉弁が制御されている。
このように構成することによって、慣性過給における吸気行程前半に係る吸気制御弁の開弁時に、このような態様によらない従来型の吸気制御弁に比して、より強大な負圧波を発生せしむるため、慣性過給効果を好適に向上させることが可能となる。
他方で、閉弁時には、弁を挟んだ吸気通路の上流側と下流側との間での圧力差の変化が緩和され、気筒内の負圧の発生が遅延される。これによって、ポンピングロスの増大が好適に緩和されるとともに、オイル消費の低減をも実現することが可能となる。
また、吸気制御弁の駆動系に要される出力が低減されることから、該駆動系における消費電力及び発熱量を抑制することが出来、更に、駆動系を構成するアクチュエータ及びコイルの小型化を図ることも可能となる。
尚、前述の吸気の流れに伴われる圧力差を用いて吸気制御弁の開弁を行う内燃機関(特許文献1参照)においては、開弁時に吸気の流れとは反対方向に弁体を押圧する必要があることから、内燃機関の吸気行程前半に係る弁体の開弁速度を、吸気行程後半に係る弁体の閉弁速度に比して増大させることは出来ないため、上述の各種効果を享受することはできない。この点において、本発明に係る内燃機関の吸気制御装置は、特有の効果を享受することができる特有の構成を採用していることは明らかである。
本発明の内燃機関の吸気制御装置の一の態様は、前記吸気制御弁は、開弁速度が閉弁速度よりも早い。
この態様によれば、上述した各種効果を好適に享受することができる。
本発明の内燃機関の吸気制御装置の一の態様は、前記吸気制御弁は、開弁時における回転角度に対する開放面積の変化速度が相対的に大きく、他方で、閉弁時における回転角度に対する開放面積の変化速度が相対的に小さくなる形状である。
この態様によれば、前述の吸気制御弁の開閉速度制御などの特別な動作を伴わずに、開閉弁時における吸気制御弁の回転角度に対する開放面積の変化を、一方で開弁時には増大させ、他方で閉弁時には減少させることが出来る。
つまり、弁体の回転によってその開度の制御が行われる吸気制御弁において、弁体の角速度(つまり、吸気制御弁の開閉速度)によらず、典型的には、弁体、或いは弁体が挿入されるハウジングの形状によって、開弁時には回転角度に対する開放面積の増加を増大させ、閉弁時には回転角度に対する開放面積の減少を低減させることが出来る。
このように構成することによって、慣性過給における吸気行程前半に係る吸気制御弁の開弁時に、このような態様によらない従来型の吸気制御弁に比して、より強大な負圧波を発生せしむるため、慣性過給効果を好適に向上させることが可能となる。
他方で、閉弁時には、弁を挟んだ吸気通路の上流側と下流側との間での圧力差の変化が緩和され、気筒内の負圧の発生が遅延される。これによって、ポンピングロスの増大が好適に緩和されるとともに、オイル消費の低減をも実現することが可能となる。
また、弁前後の差圧による力による吸気制御弁における弁軸及び軸受けへの負担を好適に抑制することが出来、弁全体の耐久性の向上が実現できる。
本発明の内燃機関の吸気制御装置の他の態様は、前記吸気制御弁は、回転軸に対して非対称な形状であり、開弁時は、該吸気制御弁の前後における圧力差によって生じる力の方向に開弁する。
慣性過給時には、吸気制御弁を挟んで吸気通路の上流側と下流側との圧力差より、吸気制御弁の弁体に力が付加される。この態様によれば、回転体である吸気制御弁の弁体は、回転軸に対して非対称の形状となっているため、回転軸まわりのモーメントは一方向に偏ることになる。ここで、開弁時には前述のモーメントと同方向に弁体を回転させて開弁するように構成することで、この態様によらない従来型の吸気制御弁に比して、開弁時に必要な駆動系の出力は低減される。或いは、開弁速度を好適に増大させることが出来る。
このように構成することによって、慣性過給における吸気行程前半に係る吸気制御弁の開弁時に、このような態様によらない従来型の吸気制御弁に比して、より強大な負圧波を発生せしむるため、慣性過給効果を好適に向上させることが可能となる。
他方で、閉弁時には、前述のような回転軸の偏りに起因するモーメントの効果が得られないため、特に、吸気制御弁の駆動系の出力を低減させた場合においては、その閉弁速度は遅くなる。従って、閉弁時の弁を挟んだ吸気通路の上流側と下流側との間での圧力差の変化が緩和され、気筒内の負圧の発生が遅延される。これによって、ポンピングロスの増大が好適に緩和されるとともに、オイル消費の低減をも実現することが可能となる。
また、吸気制御弁の駆動系に要される出力が低減されることから、該駆動系における消費電力及び発熱量を抑制することが出来、更に、駆動系を構成するアクチュエータ及びコイルの小型化を図ることも可能となる。
また、弁前後の差圧による力による吸気制御弁における弁軸及び軸受けへの負担を好適に抑制することが出来、弁全体の耐久性の向上が実現できる。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から更に明らかにされよう。
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
(基本構成)
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム10の構成について一部その動作を交えて説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム10の構成について一部その動作を交えて説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、エンジンシステム10は、図示せぬ車両に搭載され、ECU100及びエンジン200を備える。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、エンジン200の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットである。
エンジン200は、軽油を燃料とする、本発明に係る「内燃機関」の一例たる直列4気筒ディーゼルエンジンである。エンジン200の概略について説明すると、エンジン200は、シリンダブロック201に4本の気筒202が並列して配置された構成を有している。そして、各気筒内における圧縮行程において、当該圧縮行程或いは吸気行程に気筒内に直接噴射される燃料と吸入空気との混合気が圧縮され、自発的に着火した際に生じる力が、夫々不図示のピストン及びコネクティングロッドを介してクランクシャフト(不図示)の回転運動に変換される構成となっている。このクランクシャフトの回転は、エンジンシステム10を搭載する車両の駆動輪に伝達され、当該車両の走行が可能となる。以下に、エンジン200の要部構成を、その動作の一部と共に説明する。尚、個々の気筒202の構成は相互に等しいため、ここでは一の気筒202についてのみ説明することとする。
図1において、外界から導かれる空気たる吸入空気は、本発明に係る「吸気通路」の一例たる吸気管204を介して、その内部が吸気管204と連通してなるサージタンク205へ供給される構成となっている。サージタンク205は、後述するターボチャージャの過給作用を適宜受けつつ供給される吸入空気の不規則な脈動を抑制し、且つ下流側(即ち、気筒202側)に安定して吸入空気を供給すると共に、後述するインパルスチャージの実行時において、本発明に係る「位相反転手段」の一例として機能するように構成されてなる貯留手段である。但し、吸入空気は基本的に大なり小なり脈動しつつ気筒202側へ供給されるため、サージタンク205を通過する吸入空気もまた、一種の脈動波である。
ここで、図2を参照し、サージタンク205及びその周辺部の構成について補足する。ここに、図2は、吸気管204に沿ったサージタンク205周辺部分の模式的な断面図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、サージタンク205は、その上流側において上流側管路204aに、またその下流側において下流側管路204bに夫々連結された吸入空気貯留用のボリュームであり、径方向(即ち、吸気管204の伸長方向と交わる方向)の長さRsgが、上流側管路204a及び下流側管路204bにおける径方向の長さRimよりも大きく構成されている。尚、上流側管路204a及び下流側管路204bは、夫々吸気管204の一部である。尚、補足すると、サージタンク205は、吸気管204の伸長方向と交わる断面に係る断面形状が略円形状をなしており、上流側管路204a及び下流側管路204bは当該断面形状が円形をなす管状部材である。従って、サージタンク205における当該断面の断面積は、上流側管路204a及び下流側管路204bに対して十分大きいものとなっている。
図1に戻り、サージタンク205の下流側(即ち、気筒202側)において、下流側管路204bは連通管206に接続され、その内部において連通管206と連通する構成となっている。連通管206は、各気筒202の吸気ポート(不図示)の各々に連通しており、吸気管204に導かれた吸入空気は、連通管206を介して、各気筒に対応する吸気ポートに導かれる構成となっている。吸気ポートは、一の気筒202について夫々二個ずつ備わっており、夫々が気筒202内部に連通可能に構成されている。
吸気ポートと気筒202内部との連通状態は、各吸気ポートに設けられた吸気バルブ207により制御される。吸気バルブ207は、クランクシャフトに連動して回転する吸気カムシャフト208に固定された、吸気カムシャフト208の伸長方向と垂直な断面が楕円形状をなす吸気カム209のカムプロフィール(端的に言えば、形状)に応じてその開閉特性が規定されており、開弁時に吸気ポートと気筒202内部とを連通させることが可能に構成されている。このように、エンジン200では、連通管206が、個々の気筒202(より具体的には吸気ポート)に対応する部分の上流側において集約され、下流側管路204bを介してサージタンク205と接続される構成となっており、連通管206は、吸気管204と共に本発明に係る「吸気通路」の一例を構成している。
気筒202の内部には、筒内噴射型のインジェクタ203の一部としての燃料噴射弁が露出しており、高温高圧の気筒内部に燃料たる軽油を直接噴射することが可能に構成されている。ここで、燃料は、不図示の燃料タンクに貯留されている。この燃料タンクに貯留される燃料は、不図示のフィードポンプの作用により燃料タンクから汲み出され、不図示の低圧配管を介して不図示の高圧ポンプに圧送される構成となっている。この高圧ポンプは、コモンレール203Aに対し、燃料を供給することが可能に構成されている。尚、高圧ポンプは、公知の各種態様を採り得、ここでは、その詳細については省略することとする。
コモンレール203Aは、ECU100と電気的に接続され、上流側(即ち、高圧ポンプ側)から供給される高圧燃料をECU100により設定される目標レール圧まで蓄積することが可能に構成された、高圧貯留手段である。尚、コモンレール203Aには、レール圧を検出することが可能なレール圧センサ及びレール圧が上限値を超えないように蓄積される燃料量を制限するプレッシャリミッタ等が配設されるが、ここではその図示を省略することとする。インジェクタ203は、気筒202各々について搭載されており、夫々が高圧デリバリ203Bを介してコモンレール203Aに接続されている。
ここで、インジェクタ203の構成について補足すると、インジェクタ203は、ECU100から供給される指令に基づいて作動する電磁弁と、この電磁弁への通電時に燃料を噴射するノズル(いずれも不図示)とを備える。当該電磁弁は、コモンレール203Aの高圧燃料が印加される圧力室と、当該圧力室に接続された低圧側の低圧通路との間の連通状態を制御することが可能に構成されており、通電時に当該加圧室と低圧通路とを連通させると共に、通電停止時に当該加圧室と低圧通路とを相互に遮断する。
一方、ノズルは、噴孔を開閉するニードルを内蔵し、圧力室の燃料圧力がニードルを閉弁方向(噴孔を閉じる方向)に付勢している。従って、電磁弁への通電により加圧室と低圧通路とが連通し、圧力室の燃料圧力が低下すると、ニードルがノズル内を上昇して開弁する(噴孔を開く)ことにより、コモンレール203Aより供給された高圧燃料を噴孔より噴射することが可能に構成される。また、電磁弁への通電停止により加圧室と低圧通路とが相互に遮断されて圧力室の燃料圧力が上昇すると、ニードルがノズル内を下降して閉弁することにより、噴射が終了する構成となっている。尚、このような構成は一例であり、例えば、燃料噴射プロセスそのものが電子制御化(即ち、圧力を媒体とすることなく燃料を噴射する)されていてもよい。
ここで、インジェクタ203によれば、燃料の噴射量を精細に制御することが可能であり、エンジン200では、個々のシリンダ202において、インジェクタ203を介し、目標噴射量に相当する燃料が、燃料と吸気との予混合を促進するための(無論、燃焼室内の急激な温度上昇を防止する目的もある)一又は複数回のパイロット噴射と、目標噴射量とパイロット噴射量との差分に相当するメイン噴射とに分割して噴射される構成となっている。
尚、高圧ポンプ、コモンレール203A、高圧デリバリ203B、及びインジェクタ203は、一体のコモンレールシステムとして構成されていてもよい。また、高温高圧の気筒内部に燃料を噴射するための態様は、ここに例示するものに限定されず、公知の各種態様を採ってよい。
いずれにせよ気筒202内部で形成される混合気は、圧縮行程において自着火して燃焼し、燃焼済みガスとして、或いは一部未燃の混合気として、吸気バルブ207の開閉に連動して開閉する排気バルブ210の開弁時に、不図示の排気ポートを介して排気として排気マニホールド213に導かれる構成となっている。排気バルブ210は、クランクシャフトに連動して回転する排気カムシャフト211に固定された、排気カムシャフト211の伸長方向と垂直な断面が楕円形状をなす排気カム212のカムプロフィール(端的に言えば、形状)に応じてその開閉特性が規定されており、開弁時に排気ポートと気筒202内部とを連通させることが可能に構成されている。排気マニホールド213に集約された排気は、排気マニホールド213に連通する排気管214に供給される。
排気管214には、タービンハウジング215に収容される形でタービン216が設置されている。タービン216は、排気管214に導かれた排気の圧力(即ち、排気圧)により所定の回転軸を中心として回転可能に構成された、セラミック製の回転翼車である。このタービン216の回転軸は、コンプレッサハウジング217に収容される形で吸気管204に設置されたコンプレッサ218と共有されており、タービン216が排気圧により回転すると、コンプレッサ218も当該回転軸を中心として回転する構成となっている。
コンプレッサ218は、エアクリーナ219を介して外界から吸気管204に吸入される吸入空気を、その回転に伴う圧力により下流側へ圧送供給することが可能に構成された、本発明に係る「過給器」の一例たる圧送手段である。このコンプレッサ218による吸入空気の圧送効果により、所謂過給が実現される構成となっている。即ち、エンジン200では、タービン216とコンプレッサ218とにより、一種のターボチャージャが構成されている。尚、これ以降の説明において、タービン216及びコンプレッサ217を含む包括概念として、適宜「ターボチャージャ」なる言葉を使用することとする。
エアクリーナ219とコンプレッサ218との間には、吸入空気の質量流量を検出可能なホットワイヤ式のエアフローメータ220が設置されている。エアフローメータ220は、ECU100と電気的に接続されており、検出された吸入空気量Gaは、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。尚、本実施形態において、検出された吸入空気量Gaは、気筒202に吸入される吸気の量(即ち、吸気量)と一義的な関係を有しており、エンジン200の実負荷を規定する指標値として扱われる。
吸気管204において、コンプレッサ218の下流側、且つサージタンク205の上流側には、インタークーラ221が設置されている。インタークーラ221は、その内部に熱交換壁を有しており、過給された吸入空気が(無論、コンプレッサ218が実質的にみて有意に作用しない低回転領域においても同様である)通過する際に、係る熱交換壁を介した熱交換により吸入空気を冷却することが可能に構成された、本発明に係る「吸気冷却手段」の一例である。エンジン200では、このインタークーラ221による冷却によって吸入空気の密度を増大させることが可能となるため、コンプレッサ217を介した過給がより効率的になされ得る。
インタークーラ221とサージタンク205との間には、サージタンク205へ供給される吸入空気の量を調節可能なディーゼルスロットルバルブ222が配設されている。このディーゼルスロットルバルブ222は、ECU100と電気的に接続され且つECU100により上位に制御されるスロットルバルブモータ223から供給される駆動力により回転可能に構成された回転弁であり、ディーゼルスロットルバルブ222を境にした吸気管204の上流部分と下流部分とをほぼ遮断する全閉位置から、ほぼ全面的に連通させる全開位置まで、その回転位置が連続的に制御される構成となっている。このように、エンジン200では、ディーゼルスロットルバルブ222及びスロットルバルブモータ223により、一種の電子制御式スロットル装置が構成されている。
尚、エンジン200は、ディーゼルエンジンであり、その出力は、ガソリン等を燃料とするエンジンにおける空燃比制御(吸気量を基準とした燃料噴射制御)と異なり、噴射量の増減制御を介してコントロールされる。従って、ディーゼルスロットルバルブ222を介して吸入される吸入空気の量には、少なくともその上限側に実質的な制限はなく、ディーゼルスロットルバルブ222は、エンジン200の動作期間の大部分の領域において、基本的に全開位置に制御される。
エンジン200の要求負荷は、不図示のアクセルペダルの操作量(即ち、ドライバによる操作量)たるアクセル開度Accに応じて決定される。アクセル開度Accは、アクセル開度センサ11により検出され、アクセル開度センサ11と電気的に接続されたECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。総体的には、アクセル開度が小さい程要求負荷は小さく、アクセル開度が大きい程要求負荷は大きくなる。要求負荷の大小とは、要求出力の大小と相関するから、エンジンシステム10において、エンジン要求出力は、アクセル開度Accに応じて変化する。
一方、連通管206の集約部分(即ち、個々の気筒202に分岐する分岐部分よりも上流側(サージタンク205側)の部分であって、下流側管路204bとの接続部分)には、単一のインパルス弁224が設けられている。インパルス弁224は、後述する弁体224Aの位置に応じて規定される開度が、下流側管路204b(一義的にサージタンク205)と連通管206との連通を遮断する全閉開度と、下流側管路204b(一義的にサージタンク205)と連通管206とをほぼ全面的に連通させる全開開度との間で連続的に変化するように構成された、本発明に係る「吸気制御弁」の一例たる電磁制御弁である。尚、インパルス弁224は、下流側管路204bに設けられていてもよい。
ここで、図3を参照し、インパルス弁224の詳細について説明する。ここに、図3は、インパルス弁224周辺の模式的な断面図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図3において、インパルス弁224は、弁体224A、ハウジング224B、回転軸224C、駆動モータ224D及び駆動回路224Eを備えた弁装置として構成されている。
弁体224Aは、図示断面における面内で回転可能に構成された回転体である。
ハウジング224Bは、吸気通路204上に設けられ、内部に弁体224Aが挿入されることで典型的な弁を構成する、所謂バルブハウジングである。ハウジング224Bは、その内部において弁体224Aが図示断面における面内で回転可能に支持され、該弁体224Aが回転することによって、インパルス弁224の開度の調整が行われる。
回転軸224Cは、弁体224Aの回転中心を規定する軸体であり、駆動モータ224Dの回転軸に連結されている。
駆動モータ224Dは、三相交流型の電動機であり、その回転軸には上述した回転軸224Cが連結されている。駆動モータ224Dは、当該回転軸に連結され且つ永久磁石が付設されてなる不図示のロータが、駆動回路224Eにより駆動モータ224D内に形成される磁界の作用によって回転することにより、その回転方向に駆動力を発生する構成となっている。
駆動回路224Eは、駆動モータ224Dに形成される磁界の状態を制御することが可能に構成された電力制御回路である。駆動回路224Eは、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によりその動作が上位に制御される構成となっている。
ここで、インパルス弁224の開度を規定する弁体224Aの位置は、平常時において、図示全閉位置CLと図示全開位置OPとの間で連続的に(或いは実践上連続的にとみなし得る程度に段階的に)制御される。全閉位置CLとは、上述した全閉開度に相当する位置であり、全開位置OPとは、上述した全開開度に相当する位置である。補足すると、平常時におけるインパルス弁224の弁体224Aの基準位置(即ち、非駆動時の位置であり、デフォルトの位置である)は全閉位置である。弁体224Aは、当該基準位置から時計回り方向に開角90°(即ち、全開位置に相当する)までの範囲で連続的に位置制御される。
ECU100は、弁体224Aが、インパルス弁224の目標開度に相当する目標位置(目標開角)で停止するように駆動回路224Eを制御する。その結果、駆動回路224Eからの電力の供給を受け、駆動モータ224D内には、駆動モータ224Dのロータを当該目標位置に相当する位置に回転させるための、或いは当該目標位置に相当する位置に保持するための磁界が形成され、当該ロータに間接的に固定された弁体224Aが最終的に目標位置で停止する。尚、上述した開角の制御範囲内において、弁体224Aは、時計回り方向にも反時計回り方向にも回転可能である。このように、エンジン200では、ディーゼルスロットルバルブ222よりも下流側においてインパルス弁224を備えることにより、各気筒202への吸入空気の供給の有無が、インパルス弁224の開閉状態に応じて制御される構成となっている。
尚、本実施形態においては、インパルス弁224の開弁速度が、例えば従来型のインパルス弁に比して相対的に速くなるよう、ECU100の制御のもと、駆動回路224Eは、駆動モータ224Dを介して弁体224Aを回転させる。他方で、インパルス弁224の閉弁速度は、例えば従来型のインパルス弁に比して相対的に遅くなるよう、同様に弁体224Aの回転が制御される。ここに、従来型のインパルス弁に比して相対的に速く、或いは遅くとは、本実施形態における記載のようなインパルス弁224の開弁速度及び閉弁速度に関する限定の存在しないインパルス弁、或いはインパルス弁に準じる構成において、典型的には相等しい開弁速度及び閉弁速度に比して、いくらかなりとも速く、或いは遅く構成されていることを示す。尚、後に詳述するように本実施形態において、好適には、開弁速度は、慣性過給の際にインパルス弁224の開弁によって発生する負圧波を増大させる程度に速く構成されていることが好ましく、閉弁速度は、吸気の充填効率に影響を与えない範囲で駆動回路224Eに係る消費電力及び発熱量を低減できる程度に遅く構成されていることが好ましい。
図1に戻り、連通管206におけるインパルス弁224の近傍には、回転角センサ225が設置されている。回転角センサ225は、ロータの2相コイルから出力される電圧の位相が変化することを利用して角度を検出することが可能な、所謂レゾルバであり、インパルス弁224の開度(即ち、一義的に弁体224Aの位置)を検出することが可能に構成されている。また、回転角センサ225は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたインパルス弁224の開度は、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。尚、インパルス弁224の開度を検出する手段は、レゾルバに限定されない。
排気管214には、DPF(Diesel Particulate Filter)226が設置されている。DPF226は、エンジン200から排出されるPM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集可能且つ浄化可能に構成されている。また、気筒202を収容するシリンダブロック201には、水温センサ227が配設されている。シリンダブロック201内部には、気筒202を冷却するための冷却水(例えば、LLC)の流路たるウォータジャケットが張り巡らされており、当該ウォータジャケット内部において、冷却水が不図示の循環系の作用により循環供給されている。水温センサ227は、このウォータジャケット内部に検出端子の一部が露出しており、冷却水の温度を検出することが可能に構成されている。水温センサ227は、ECU100と電気的に接続されており、検出された冷却水温は、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
尚、本実施形態に係るエンジンシステム10では、本発明に係る「内燃機関」の一例として、ディーゼルエンジンたるエンジン200が採用されているが、本発明に係る内燃機関とはディーゼルエンジンのみを指すものではなく、無論ガソリンエンジンや、アルコール混合燃料を使用するエンジン等であってもよい。また、説明の煩雑化を防ぐ目的から、本実施形態に係るエンジン200には、EGR装置等の排気再循環装置が装着されないが、無論好適な一形態としてエンジン200に排気再循環装置が装着されていてもよい。ここで、排気再循環装置が装着されない構成に鑑みれば、本実施形態におけるエンジン200において、各気筒202に吸気ポートを介して吸入される吸気は、吸気管204を介して導かれる吸入空気のみにより構成される。
このように、本実施形態に係るエンジンシステム10では、吸気管204(上流側管路204a及び下流側管路204bを含む)、コンプレッサ218、インタークーラ221、サージタンク205、連通管206及びインパルス弁224を含む吸気系が、本発明に係る「内燃機関の吸気装置」の一例をなしており、特に、サージタンク205の下流側に位置するインパルス弁224の下流側において連通管206が各気筒に対し分岐する、所謂一弁式のインマニレス吸気系として構成されている。但し、本発明に係る内燃機関は、例えばサージタンク205に対し相互に独立した吸気マニホールドが接続され、個々の吸気マニホールドを介して各気筒202へ吸入空気が導かれる構成を有していてもよい。この場合、複数の吸気マニホールドの一部にインパルス弁が設置されていてもよいし、各吸気マニホールドにインパルス弁が設置されていてもよい。
(第1実施形態の基本動作)
エンジンシステム10では、エンジン200の機関回転速度NEが所定のインパルスチャージ領域にある場合に、インパルスチャージが実行される。ここで、インパルスチャージとは、インパルス弁224の開閉により生じる吸気の脈動を利用した慣性過給を指す。より具体的に説明すると、インパルス弁224が閉弁した状態で一の気筒202が吸気行程を迎えると、当該気筒202の吸気バルブ207が開弁され、当該気筒202のピストンが下降し始める。この際、インパルス弁224が閉弁しているため、連通管206の管内圧は負圧となり、大気圧又は過給により大気圧以上に維持される下流側管路204bの管内圧との圧力差が拡大する。
エンジンシステム10では、エンジン200の機関回転速度NEが所定のインパルスチャージ領域にある場合に、インパルスチャージが実行される。ここで、インパルスチャージとは、インパルス弁224の開閉により生じる吸気の脈動を利用した慣性過給を指す。より具体的に説明すると、インパルス弁224が閉弁した状態で一の気筒202が吸気行程を迎えると、当該気筒202の吸気バルブ207が開弁され、当該気筒202のピストンが下降し始める。この際、インパルス弁224が閉弁しているため、連通管206の管内圧は負圧となり、大気圧又は過給により大気圧以上に維持される下流側管路204bの管内圧との圧力差が拡大する。
このような状態においてインパルス弁224を開弁する(即ち、吸気バルブ207の開弁タイミング以降の開弁期間において開弁する)と、下流側管路204b(一義的にサージタンク205)と該当する気筒202(即ち、その時点で吸気行程にある気筒)の内部とが連通し、インパルス弁224を介して吸入空気が吸気として一気に気筒202内部の燃焼室に流入することとなる。
一方、燃焼室との連通部位において連通管206は所謂開放端となっており、燃焼室への吸入空気の流入に惹起された正圧波は、燃焼室で反射することによって、位相が反転した負圧波(即ち、本発明に係る「脈動に対応する脈動波」の一例)となる。この負圧波は、連通管206、インパルス弁224及び下流側管路204bを順次介してサージタンク205に到達する。他方、下流側管路204bの断面積は、上述したようにサージタンク205の当該断面積よりも小さいから、下流側管路204bにおけるサージタンク205側の端部もまた開放端として作用することとなる。
このため、サージタンク205に到達した負圧波は、内管205bの上流側の端部において反射され、位相が反転した正圧波として再び下流側管路204b、インタークーラ221、インパルス弁224及び連通管206を介して燃焼室に到達する。この言わば二次的な正圧波のピークが燃焼室に(或いは吸気バルブ207に)到達した時点で(必ずしも、当該時点のみに限定されるものではなく、吸気の充填効率を幾らかなり向上させ得る限りにおいて当該時点を含む一定又は不定の期間であってよい)吸気バルブ207を閉弁すれば、燃焼室内の圧力は上昇し、吸気の充填効率が向上する。インパルス弁224を利用したインパルスチャージはこのように実行される。
一方で、サージタンク205は、その物理構造上、脈動波(正圧波の反射波たる負圧波)の位相を反転させ得るから、吸気バルブ207(或いは、その近傍部位)との距離に起因する脈動波の減衰が実践上問題とならない限りにおいて、或いは設置上の制約等、他の要請に抵触しない限りにおいて、本来、その吸気管204上の設置位置は比較的自由である。
ここで、エンジンシステム10にはインタークーラ221が備わって構成されていても良く、このように構成された場合、インパルスチャージにより気筒内202内に供給される吸気は、インタークーラ221の冷却効果により、元よりその密度が増大した(少なくともインタークーラ221が備わらない場合と較べて増大した)状態にある。従って、インパルスチャージによって、吸気の充填効率はより向上し得る。
尚、本実施形態に係るエンジン200には、所謂一弁式のインマニレス吸気系が採用されており、4本の気筒202の全てにおけるインパルスチャージが単一のインパルス弁224により賄われる構成となっている。そのため、少なくともエンジン200では、インパルス弁224は、次気筒の吸気行程に備えるため、一の気筒202の吸気行程中に閉弁する構成となっている。一方で、インパルス弁224の開閉に要する時間には、インパルス弁224が相対的にみれば高い応答速度を有する電磁弁として構成されているとは言え、インパルス弁224の物理的、機械的、機構的又は電気的な構成上定まり得る最小値が存在し、吸気バルブ207の開弁期間がこの最小値に相当する駆動時間よりも短い場合には、連続的に開閉する吸気バルブ207の動作に追従することができなくなる。吸気バルブ207の開弁期間は、開弁時期と閉弁時期とが固定されていれば即ち機関回転速度NEに応じて一義的に定まり、また例えばVVT(Variable Valve Timing:可変動弁装置)等により開弁時期及び閉弁時期の少なくとも一方或いはバルブリフト量が可変であるにせよ、機関回転速度NEに応じて変化することに変わりは無い。上述したインパルスチャージ領域とは、このようなインパルスチャージを少なくとも実践上破綻しない(好適には、全気筒に対し実行できる)程度の余裕をもって実行可能な機関回転速度NEの領域であり、機関回転速度NEの値が、当該領域の上限を規定する機関回転速度以下であるか否かに基づいて決定される。
尚、これは一例に過ぎず、インパルスチャージ領域は、より複雑に規定されていてもよい。例えば、定常走行時等の軽負荷領域では、必要とされる吸気量は少なく、実践上、吸入空気量は、ディーゼルスロットルバルブ222により相当量絞られた状態となる。このような吸気絞り領域においては、元よりインパルスチャージは必要とされない場合が多く、例えば要求負荷が、インパルスチャージの有用性を否定し得る程度の軽負荷に該当する旨が判別される場合には、インパルスチャージは実行されずともよい。
更に、本実施形態においては、インパルスチャージ時に、インパルス弁224の開弁速度は、例えば従来型のインパルス弁に比して、或いは、少なくとも閉弁速度に対して相対的に速くなるよう、ECU100の制御のもと、駆動回路224Eは、駆動モータ224Dを介して弁体224Aを回転させる。他方で、インパルス弁224の閉弁速度は、例えば従来型のインパルス弁に比して、或いは、少なくとも開弁速度に対して相対的に遅くなるよう、同様に弁体224Aの回転が制御される。
ここで、図4を参照して、本実施形態に係るインパルス弁224の開弁速度制御について説明する。図4は本実施形態に係る、ECU100によるインパルス弁224の開閉動作の制御の流れを示すフローチャートである。
先ず、前述の如く、吸気バルブ207の開弁タイミング以降のタイミングにおいて、インパルス弁224の開閉タイミングの計算が行われる(ステップS101)。次に、計算されたタイミングにおいて、行われるインパルス弁224の駆動が、開弁制御であるか、閉弁制御であるかの判定が行われる(ステップS102)。このとき、開弁制御である場合(ステップS102:Yes)、インパルス弁224の駆動時の速度目標として、前述のように相対的に速く設定された開弁時速度目標が定められる。他方で、インパルス弁224の閉弁時(ステップS102:No)には、前述のように相対的に遅く設定された閉弁時速度目標が、駆動時の速度目標として設定される。そして、夫々設定された速度目標に基づいて、インパルス弁224の駆動が実行されるよう、ECU100の制御のもと、駆動回路224Eを介した駆動モータ224Dへの電力の供給が行われる。
このような構成により、インパルス弁224の開弁により発生する負圧波を増大させることが出来、結果として慣性過給の効果を向上させることが出来る。他方で、吸気の充填効率に大きな影響を及ぼすことの無い閉弁速度を遅くすることに伴って、弁体224Aの回転を行う駆動モータ224D及び駆動回路224Eにおける電力消費を低減させることが出来、また発熱量をも抑制出来る。更に、閉弁時のインパルス弁224の上流と下流との間における圧力差の変化が遅くなり、気筒内の負圧の発生をも遅滞させることが出来、結果としてポンピング損失の増大を好適に緩和し得るとともに、オイル消費をも低減することが出来るのである。
更に、このように構成された駆動モータ224Dにおいては、コイル或いはモータ自体の小型化を図ることが出来、車両への搭載性の向上及び質量の低減を実現することが出来る。
(第2実施形態)
次に、図5及び図6を参照し、本発明の第2実施形態に係るインパルス弁224’及びインパルス弁224’’について説明する。ここに、図5及び図6は、夫々本実施形態に係るインパルス弁224の吸気通路方向の構成を概念的に表してなる断面図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
次に、図5及び図6を参照し、本発明の第2実施形態に係るインパルス弁224’及びインパルス弁224’’について説明する。ここに、図5及び図6は、夫々本実施形態に係るインパルス弁224の吸気通路方向の構成を概念的に表してなる断面図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
本実施形態におけるインパルス弁224’及びインパルス弁224’’は、開弁時における弁体224Aの回転角度に対する吸気通路204の開放面積の変化率(或いは、変化速度)が、例えば従来型のインパルス弁に比して、或いは、少なくとも閉弁時の回転角度に対する開放面積の変化率(或いは、変化速度)に対して相対的に大きくなるよう構成されている。他方で、閉弁時における弁体224Aの回転角度に対する吸気通路204の開放面積の変化率(或いは、変化速度)が、例えば従来型のインパルス弁に比して、或いは、少なくとも開弁時の回転角度に対する開放面積の変化率(或いは、変化速度)に対して相対的に小さくなるよう構成されている。このために、本実施形態に係るインパルス弁224’では、図5に示すように弁体224Aの形状が構成されている。また、本実施形態に係るインパルス弁224’’では、図6に示すようにハウジング224Bの形状が構成されている。
先ず、図5に示すように、インパルス弁224’においては、閉弁時の弁体224A’の端部が、吸気通路204の下流側(或いは上流側)から上流側(或いは下流側)に向かうにつれてハウジング224Bより遠ざかるように傾斜をつけて構成されている。図5に示すこのようなインパルス弁224’では、弁体224’Aを反時計回りに回転させて弁の開閉を行うことにより、開弁時には、閉弁時に比して、回転角度に対するその開放面積の変化率(或いは、変化速度)は相対的に大きくなる。
尚、このように構成された弁体224’Aにおける傾斜の向きを逆向きに(つまり、図5において、回転軸224’Cを通り吸気通路204に直交する直線に対して対称となるように)構成した場合、開閉に係る弁体224’Aの回転方向を逆向きにすることで(つまり、時計回り)、前述した本実施形態に係る効果を得ることが出来る。
また、図6に示すように、インパルス弁224’’においては、ハウジング224’’Bの少なくとも一部において、閉弁時の弁体224A’’の端部の位置から時計回りに回転するにつれて、回転軸224’’Cからハウジング224’’Bまでの距離が長くなり、他方で、同じ位置から反時計回りに回転するにつれて、回転軸224’’Cからハウジング224’’Bまでの距離が短くなるよう傾斜をつけて構成されている。図6に示すこのようなインパルス弁224’’でも、弁体224’’Aを反時計回りに回転させて弁の開閉を行うことにより、開弁時には、閉弁時に比して、回転角度に対するその開放面積の変化率(或いは、変化速度)は相対的に大きくなる。
尚、このように構成されたハウジング224’’Aにおける傾斜の向きを逆向きに(つまり、図6において、回転軸224’’Cを通り吸気通路204に直交する直線に対して対称となるように)構成した場合、開閉に係る弁体224’’Aの回転方向を逆向きにすることで(つまり、時計回り)、前述した本実施形態に係る効果を得ることが出来る。
以上説明したように、本実施形態に係るインパルス弁224’及びインパルス弁224’’によれば、開弁時には、弁体224’A(224’’A)の回転角度に対する開放面積の変化率(或いは、変化速度)が、少なくとも閉弁時に比して相対的に大きくなる。言い換えれば、閉弁時の回転角度に対する開放面積の変化率(或いは、変化速度)は、開弁時に比して相対的に小さくなる。
従って、開弁時には、本実施形態によらない従来型のインパルス弁に比して、弁の開放面積がより速く増大するため(つまり、開弁速度が増大するため)、慣性過給時に発生する負圧波を好適に増大することが出来る。他方で、閉弁時には、弁の開放面積がより遅く減少するため(つまり、閉弁速度が減少するため)、弁前後の圧力の変化も遅くなり、結果、気筒内の負圧の発生が遅滞し、ポンピングロスの増大が好適に緩和されるとともに、オイル消費が低減される。
(第3実施形態)
次に、図7を参照し、本発明の第3実施形態に係るインパルス弁224’’’について説明する。ここに、図7(a)は、本実施形態に係るインパルス弁224’’’の吸気通路方向の構成を概念的に表してなる断面図であり、図7(b)は、該インパルス弁224’’’の吸気通路に直行する方向の断面図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
次に、図7を参照し、本発明の第3実施形態に係るインパルス弁224’’’について説明する。ここに、図7(a)は、本実施形態に係るインパルス弁224’’’の吸気通路方向の構成を概念的に表してなる断面図であり、図7(b)は、該インパルス弁224’’’の吸気通路に直行する方向の断面図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図7(a)及び(b)に示されるように、本実施形態に係るインパルス弁224’’’においては、回転軸224’’’Cにより規定される弁体224’’’Aの回転中心が、弁体224’’’Aの中心よりも、吸気通路204に直交する面内において、一方の端部に偏って配置されている。言い換えるならば、弁体224’’’Aが、回転軸224’’’Cに対し非対称となるよう構成されている。
以上説明したように、本実施形態に係るインパルス弁224’’’においては、閉弁時にインパルス弁224’’’を挟んで上流側と下流側の吸気通路204における圧力差によって生じる力の方向に開弁することによって、開弁時の駆動モータ224’’’Dに必要とされる出力を抑えることができる。すなわち、インパルス弁224’’’の弁体224’’’Aは閉弁時に、下流側の吸気通路が上流側の吸気通路に比して負圧となった場合に、圧力差によって下流側へ向かう力を受けるが、その力による回転軸224’’’C周りのモーメントを考慮した場合に、回転軸224’’’Cから弁体224’’’Aの端部までの距離が長い方(図7(a)及び(b)における回転軸224’’’Cより下方側)に付与されるモーメント(つまり、回転軸224’’’Cを中心として反時計回りのモーメント)の方が大きくなる。ここで、該モーメントと同方向に弁体224’’’Aを回転させるよう駆動モータ224’’’Dによる回転力を付与することで、弁体224’’’Aは本実施形態に依らない構成に比して、インパルス弁224’’’の開弁速度の増大に伴って慣性過給時の発生負圧波の増大、及び開弁時に要する駆動モータ224’’’Dの出力の低減を達成することが出来る。
他方で、閉弁時には、典型的には、弁体224’’’Aに加えられる弁前後の圧力差に起因するモーメントが存在しないため、開弁時と同等の出力で駆動モータ224’’’Dを起動した場合には、閉弁速度は遅くなり、弁前後の圧力の変化も遅くなる。結果、気筒内の負圧の発生が遅滞し、ポンピングロスの増大が好適に緩和されるとともに、オイル消費が低減される。
従って、本実施形態によれば、インパルス弁224’’’の開閉に係る駆動系、すなわち駆動モータ224’’’Dの出力を低減させることが出来るため、駆動モータ224’’’D小型化に伴う車両への搭載性の向上、及び質量低減を達成することが可能となる。更に、インパルス弁224’’’の前後の圧力差に起因して付与される回転軸224’’’C及び図示されない軸受けに対する力の衝撃的な負担を軽減することが出来、結果としてインパルス弁224’’’の耐久性の向上をも達成することが出来る。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の吸気制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…エンジンシステム、100…ECU、200…エンジン、202…気筒、204…吸気通路、205…サージタンク、206…連通管、207…吸気バルブ、216…タービン、218…コンプレッサ、221…インタークーラ、222…スロットルバルブ、224…インパルス弁、224A…弁体、224B…ハウジング、224C…回転軸、224D…駆動モータ、224E…駆動回路
Claims (4)
- 気筒内部に連通する吸気通路と、
該吸気通路に設置され、回転による開閉状態に応じて吸気の脈動を生成可能且つ該吸気の量たる吸気量を調整可能な吸気制御弁と、
前記吸気通路において前記吸気制御弁の上流側に設置され、前記生成された脈動に対応する脈動波の位相を反転させる位相反転手段と
を備え、
前記吸気制御弁は、開弁速度と閉弁速度が非対称であることを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。 - 前記吸気制御弁は、開弁速度が閉弁速度よりも早いことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
- 前記吸気制御弁は、開弁時における回転角度に対する開放面積の変化速度が相対的に大きく、他方で、閉弁時における回転角度に対する開放面積の変化速度が相対的に小さくなる形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の吸気制御装置。
- 前記吸気制御弁は、回転軸に対して非対称な形状であり、開弁時は、該吸気制御弁の前後における圧力差によって生じる力の方向に開弁することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気制御装置。
Priority Applications (1)
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JP2008007611A JP2009167922A (ja) | 2008-01-17 | 2008-01-17 | 内燃機関の吸気制御装置 |
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JP2008007611A JP2009167922A (ja) | 2008-01-17 | 2008-01-17 | 内燃機関の吸気制御装置 |
Publications (1)
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JP2009167922A true JP2009167922A (ja) | 2009-07-30 |
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ID=40969379
Family Applications (1)
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Country Status (1)
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JP (1) | JP2009167922A (ja) |
-
2008
- 2008-01-17 JP JP2008007611A patent/JP2009167922A/ja active Pending
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