JP2009156101A - 内燃機関の吸気装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸気制御弁を備える構成において吸気の充填効率を向上させる。
【解決手段】吸気管204にはターボチャージャの一部をなすコンプレッサ218が設置されており、その下流側には更に吸気を冷却するためのインタークーラ221が配設されている。このインタークーラ221の下流側には、上流側管路204cを介してサージタンク205が設置され、その下流側において、下流側管路204dを介して各気筒に連通する連通路206と連通している。連通路206にはインパルス弁224が設置されており、その開閉動作とサージタンク205による脈動波の反転作用により慣性過給が実現される。この際、サージタンク205がインタークーラ221の下流側に位置するため、良好な慣性過給効果を得ることができる。また、上流側管路204cの断面積は、下流側管路204dの断面積よりも大きく構成されている。
【選択図】図3
【解決手段】吸気管204にはターボチャージャの一部をなすコンプレッサ218が設置されており、その下流側には更に吸気を冷却するためのインタークーラ221が配設されている。このインタークーラ221の下流側には、上流側管路204cを介してサージタンク205が設置され、その下流側において、下流側管路204dを介して各気筒に連通する連通路206と連通している。連通路206にはインパルス弁224が設置されており、その開閉動作とサージタンク205による脈動波の反転作用により慣性過給が実現される。この際、サージタンク205がインタークーラ221の下流側に位置するため、良好な慣性過給効果を得ることができる。また、上流側管路204cの断面積は、下流側管路204dの断面積よりも大きく構成されている。
【選択図】図3
Description
本発明は、例えばインパルスチャージ等の慣性過給が可能な内燃機関の吸気装置の技術分野に関する。
この種の装置として、ターボチャージャ及びインタークーラを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたEGR付きツイン・ターボ・チャージャ内燃機関及びその駆動方法(以下、「第1の従来技術」と称する)によれば、ターボチャージャ下流でインタークーラによりブースト・エアを冷却することによって、ブースト・エアの流量が著しく増加するとされている。また、この際、低い回転数域ではパルス・チャージングが起こるとされている。
一方、上述したパルス・チャージングの如き所謂慣性過給を積極的に生じさせ吸気の充填効率の向上を図るものとして、例えば特許文献2に、サージタンクの下流に吸気制御弁を備えてなる内燃機関の吸気制御装置(以下、「第2の従来技術」と称する)が開示されている。
尚、吸気脈動生成部の下流側にインタークーラを備える構成も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
第1の従来技術では、慣性過給が結果的に生じるのみであるが、実践的に容易であるか否かを別とすれば、係る第1の従来技術に対して第2の従来技術を適用し、積極的に慣性過給を行わしめることが可能である。
ところが、インタークーラを通過した吸気(例えば、上述したブースト・エア)は、その脈動がインタークーラの冷却効果によって減衰するため、慣性過給が十分に行われ難い。従って、吸気の充填効率は必ずしも望ましい程度に向上しない。即ち、上記各種従来技術には、慣性過給の効果が十分に得られ難いという技術的な問題点がある。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、吸気の充填効率を向上させることが可能な内燃機関の吸気装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る内燃機関の吸気装置は、気筒内部に連通する吸気通路と、該吸気通路に設置された過給器と、前記吸気通路において前記過給器の下流側に設置され、開閉状態に応じて吸気の脈動を生成可能且つ該吸気の量たる吸気量を調整可能な吸気制御弁と、前記吸気通路において前記過給器の下流側且つ前記吸気制御弁の上流側に設置され、前記吸気を冷却可能な吸気冷却手段と、前記吸気通路において前記吸気冷却手段の下流側且つ前記吸気制御弁の上流側に設置され、前記生成された脈動に対応する脈動波の位相を反転させる位相反転手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係る「内燃機関」とは、一又は複数の気筒を有し、当該気筒の各々における燃焼室において、例えばガソリン、軽油、各種アルコール若しくは各種アルコールとガソリンとの混合燃料等各種の燃料又は当該各種燃料を含む混合気等が爆発或いは燃焼した際に生じる力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的な又は機械的な伝達経路を経て駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。また、この種の内燃機関に係る「内燃機関の吸気装置」とは、気筒内部に対する、吸気(即ち、外界から吸入される空気たる吸入空気を少なくとも概念の一部として含み、当該吸入空気そのもの、或いは例えばEGR装置等の排気再循環装置が備わる場合等には例えばEGRバルブ等の流量調整手段の開閉状態等に応じてEGRガス(即ち、排気の一部)と当該吸入空気の混合体等の各種形態を採り得る)の供給に供される装置である。
本発明に係る内燃機関の吸気装置における「吸気通路」とは、即ち、吸気の通路であって、好適な一形態として、例えばエアクリーナ、エアフローメータ、スロットルバルブ(即ち、吸気絞り弁)及び吸気ポート等を相互に且つ適宜に連結又は連通せしめ得る、例えば単一又は複数の管状部材の形態を採る。特に、本発明に係る内燃機関の吸気装置は、この吸気通路に、例えばターボチャージャ等の過給器(無論、タービン等、排気系に備わるべき一部を除外してなる一部であってもよい)が備わっており、更にその下流側(尚、「下流」とは、吸気の流れる方向を基準とする方向概念の一であり、この場合、即ち気筒側である)に、例えばインタークーラ等の吸気冷却手段を備える。吸気冷却手段は、過給器を介して供給される(過給器による過給が実践上有意に行われているか否かとは無関係であってもよい)吸気を冷却可能な物理的、機械的、機構的、電気的、磁気的又は化学的態様を有する手段であって、少なくとも幾らかなり且つ相対的に吸気が冷却されることによって、吸気の密度は相対的に上昇し、吸気の充填効率は向上し得る。
一方、本発明に係る内燃機関の吸気装置は、吸気通路における吸気冷却手段の下流側に吸気制御弁を備える。この吸気制御弁は、例えば二値的に、段階的に或いは連続的に制御され得る開閉状態に応じて、吸気の脈動を少なくとも生成可能な、且つ当該吸気の量たる吸気量を調整可能な、例えば弁体、或いは当該弁体に加え更に当該弁体を駆動する駆動装置等を適宜に含んでなる動弁機構又は動弁装置等の形態を採り得る手段である。この吸気制御弁は、内燃機関にスロットルバルブ等の所謂吸気絞り弁が備わる場合には、好適な一形態として、この吸気絞り弁の下流側に設置される。
吸気制御弁の設置態様は、例えば吸気通路の物理的な構成等に応じて多種多様な形態を採り得る。即ち、吸気通路は、吸気制御弁の下流側において気筒各々に分岐してもよいし(即ち、所謂一弁式のインパルスチャージ系に類する態様)、各々に吸気制御弁を備える、気筒各々に対応する吸気枝管(それに類するものを含む)を備えていてもよい(即ち、所謂多弁式のインパルスチャージ系に類する態様)。いずれにせよ、吸気制御弁は、吸気を脈動波として各気筒へ送り込むこと(好適な一形態として、吸気は、吸気制御弁の有無にかかわらず、基本的に脈動波として気筒内に取り込まれ得るが、吸気制御弁により生じる脈動とは、好適な一形態として、この種の脈動よりも強い脈動である)を主たる目的としており(但し、例えばこの種の脈動の生成とは別に、例えばスロットルバルブ等の吸気絞り弁の開閉操作等により好適に行われ得る吸入空気の調量(吸気絞り)を実践上問題無い程度に実践し得る場合には、スロットルバルブ等の吸気絞り弁の作用を本発明に係る吸気制御弁にて代替させてもよい(或いは逆に、吸気絞り弁が、本発明に係る吸気制御弁として、その機能を代替してもよい))、好適な一形態として、その開閉により少なくとも実践上十分な吸気の脈動を生じさせ得る程度に各気筒の吸気弁に近接した位置に設置されてもよい。
このように吸気制御弁を備える内燃機関では、吸気制御弁が単一であれ複数であれ、吸気の脈動を利用した慣性過給(パルス過給或いはインパルスチャージ等とも称される)が可能であって、例えば吸気制御弁の開閉時期、開弁期間又は開度(即ち、開弁の度合いであり、一義的に開閉状態を規定する)の制御(例えば、吸気の脈動波の山に相当する部分を吸気弁の閉弁時期近傍に同期させる旨の制御等)によって、例えば自然吸気がなされる場合等と比較して多量の吸気を吸気行程で気筒内に取り込むことが可能となる。また、吸気制御弁は、その開閉状態が如何なる態様を採り得るにせよ、また実践的にみて容易であるか否かは別として吸気量の調節が可能であり、例えば、吸気弁の開弁期間の途中で実質的に吸気の流入を遮断する吸気早閉じ制御等により、ポンピングロスの低減を図ることも可能となる。
ここで、本発明に係る内燃機関の吸気装置において、吸気制御弁を利用したこの種の慣性過給を実現する場合、吸気制御弁の開閉制御に加えて、例えばサージタンク等の形態を採り得る位相反転手段による、脈動に対応する脈動波の位相反転作用が利用される。ここで、「脈動に対応する脈動波」と表現されるように、位相反転手段に係る位相の反転に供される脈動波は、好適な一形態として、吸気弁の開弁後然るべき時間経過(クランク角等により角度概念として規定されてもよい)を経て吸気制御弁が開弁することによって生じる(即ち、吸気制御弁の下流側が負圧であり、且つ吸気制御弁の上流側が大気圧以上であることにより生じる)一次的な脈動波(正圧波)ではなく、当該一次的な脈動波が、開放端とみなし得る各気筒の燃焼室入り口近傍で反射されてなる反射波(即ち、当該一次的な脈動波とは位相が反転してなる負圧波)である。この反射波の位相が反転してなる言わば二次的な脈動波(即ち、正圧波)により、上述した慣性過給が実現される。
ここで特に、上述した吸気冷却手段による吸気の冷却作用は、吸気の密度を上昇せしめ得る点においては、慣性過給に係る吸気の充填効率(即ち、気筒内部に対する吸気の充填量と相関する)の向上に寄与し得るが、脈動波の振幅を減衰させる点において逆に吸気の充填効率を低下させる要因となる。従って、慣性過給による実践上の利益を効率的且つ効果的に享受するためには、慣性過給による相対的に速い吸気の流動を、吸気冷却手段の下流側で生じさせる必要がある。そこで、本発明に係る内燃機関の吸気装置において、上述した位相反転手段は、吸気通路における、吸気冷却手段の下流側且つ吸気制御弁の上流側に設置されている。
位相反転手段の設置位置が、このように規定されることによって、吸気制御弁の開閉に際し吸気の脈動の生成を好適に生じさせつつ、生成された脈動が吸気冷却手段の冷却作用により無用に減衰せしめられる事態が防止されると共に、吸気冷却手段の吸気冷却作用により密度が高められた吸気を利用して慣性過給を行うことが可能となるため、吸気の充填効率を好適に向上させることが可能となる。また、この際、吸気冷却手段の吸気冷却作用により吸気温度が低下し、音速が低下するため、内燃機関の低回転領域(低回転であるか否かの判断基準は、適宜定められ得る性質のものである)における吸気充填効率の向上を図ることも可能となる。更に、位相反転手段を吸気冷却手段の下流側に設置することにより、慣性過給に係る脈動波が、好適な一形態として吸気冷却手段の内部に形成され得る、例えば熱交換壁等に衝突する可能性は著しく低下するから、本発明に係る内燃機関の吸気装置によれば、吸気冷却手段の物理的、機械的又は機構的な耐久性を向上させることも可能となる。
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の吸気装置によれば、吸気冷却手段と吸気制御弁との間に位相反転手段を配置したため、吸気の充填効率を向上させることが可能となるのである。
本発明に係る内燃機関の吸気装置の一の態様では、前記位相反転手段は、前記吸気通路と交わる方向の断面に係る断面積が前記吸気通路における該断面積と較べて大きく構成されてなるサージタンクである。
この態様によれば、位相反転手段はサージタンクであり、吸気通路と交わる方向に係る断面積が、サージタンク前後の吸気通路の当該断面積に比して大きく構成されている。即ち、この態様によれば、サージタンクとサージタンク下流側の吸気通路との接続部分もまた一種の開放端となり、吸気制御弁の開弁時に吸気制御弁前後の圧力差等に応じて吸気弁を介して燃焼室に流入する吸気により惹起される脈動波(正圧波)は、開放端となる燃焼室において位相の反転を伴って負圧波として反射した後、サージタンクにおいて同様に位相の反転を伴いつつ再び正圧波として燃焼室に到達する。従って、この態様によれば、慣性過給を比較的簡便に実現可能である。
本発明に係る内燃機関の吸気装置の他の態様では、前記吸気通路は、前記位相反転手段の上流側に位置し且つ前記吸気通路と交わる方向の断面に係る断面積S1を有する第1の通路部と、前記位相反転手段の下流側に位置し且つ前記S1よりも小さい前記断面積S2を有する第2の通路部とを備える。
この態様によれば、吸気通路における位相反転手段(好適には、上述したサージタンク又はそれに類する空間(ボリューム))の上流側に位置する第1の通路部(好適な一形態としては、少なくとも位相反転手段と吸気冷却手段との間に位置する吸気通路の少なくとも一部)における、吸気通路と交わる方向の断面に係る断面積S1が、位相反転手段の下流側に位置する第2の通路部(好適な一形態としては、少なくとも位相反転手段と吸気制御弁との間に位置する吸気通路の少なくとも一部)の当該断面積S2よりも大きいため、慣性過給による吸気の流速の上昇時において、位相反転手段の上流側で発生する慣性過給の度合いを、位相反転手段の下流側で発生する慣性過給の度合いと比較して低減することが可能となり、上流側から位相反転手段へ流入する吸気の流入速度を減少させることが可能となって、位相反転手段の内部における、位相反転手段下流側で発生する脈動波との干渉を阻止することが可能となる。従って、この態様によれば、少なくとも位相反転手段の上下流において当該断面積が同一又は略同一である場合と比較して慣性過給による効果が大となる。
一方、位相反転手段が上述したサージタンク又はそれに類するボリュームである場合等には、このように相対的に慣性過給による効果の向上が見込めることに鑑みて、その容積を低減することも可能となる。従って、この態様によれば、上述した慣性過給による効果の相対的な向上に係る実践上の利益の少なくとも一部をこの種の容積低減に割り当てて、搭載性の向上に係る利益として享受してもよい。この際、これらの割り当ての比率や度合いは、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、或いは車両又は内燃機関の仕様、仕向け若しくは要求性能等に鑑みて、少なくとも実践上十分な効果を担保し得るように、又は少なくとも実践上何らかの不具合を生じさせない程度の搭載性が担保されるように決定されていてもよい。また、断面積S1及び断面積S2の値は、その大小関係が上述した関係を逸脱しない限りにおいて自由であってよい。
尚、第1及び第2の通路部が、吸気通路の一部であり、好適な一態様として管状部材として構成され得る点に鑑みれば、第1及び第2の通路相互間における当該断面積の大小関係は、吸気通路と交わる方向たる径方向の長さ(例えば、直径や半径)等の大小関係により代替的に規定されてもよい。また、第1及び第2の通路部が管状部材であるにせよ、そうでないにせよ、当該断面積は、必ずしも各通路部内で一定でなくともよい。即ち、この態様において規定される断面積とは、上述した効果(吸気の充填効率の向上等を含む諸効果)が見込める限りにおいて、各通路部の平均的な断面積であってもよいし、位相反転手段との接続部位を含む限定された区間の断面積であってもよい。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム10の構成について一部その動作を交えて説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム10の構成について一部その動作を交えて説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、エンジンシステム10は、図示せぬ車両に搭載され、ECU100及びエンジン200を備える。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、エンジン200の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットである。
エンジン200は、軽油を燃料とする、本発明に係る「内燃機関」の一例たる直列4気筒ディーゼルエンジンである。エンジン200の概略について説明すると、エンジン200は、シリンダブロック201に4本の気筒202が並列して配置された構成を有している。そして、各気筒内における圧縮行程において、当該圧縮行程或いは吸気行程に気筒内に直接噴射される燃料と吸入空気との混合気が圧縮され、自発的に着火した際に生じる力が、夫々不図示のピストン及びコネクティングロッドを介してクランクシャフト(不図示)の回転運動に変換される構成となっている。このクランクシャフトの回転は、エンジンシステム10を搭載する車両の駆動輪に伝達され、当該車両の走行が可能となる。以下に、エンジン200の要部構成を、その動作の一部と共に説明する。尚、個々の気筒202の構成は相互に等しいため、ここでは一の気筒202についてのみ説明することとする。
図1において、外界から導かれる空気たる吸入空気は、本発明に係る「吸気通路」の一例たる吸気管204を介して、その内部が吸気管204と連通してなるサージタンク205へ供給される構成となっている。サージタンク205は、後述するターボチャージャの過給作用を適宜受けつつ供給される吸入空気の不規則な脈動を抑制し、且つ下流側(即ち、気筒202側)に安定して吸入空気を供給すると共に、後述するインパルスチャージの実行時において、本発明に係る「位相反転手段」の一例として機能するように構成されてなる貯留手段である。但し、吸入空気は基本的に大なり小なり脈動しつつ気筒202側へ供給されるため、サージタンク205を通過する吸入空気もまた、一種の脈動波である。
ここで、図2を参照し、サージタンク205及びその周辺部の構成について補足する。ここに、図2は、吸気管204に沿ったサージタンク205周辺部分の模式的な断面図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、サージタンク205は、その上流側において上流側管路204aに、またその下流側において下流側管路204bに夫々連結された吸入空気貯留用のボリュームであり、径方向(即ち、吸気管204の伸長方向と交わる方向)の長さRsgが、上流側管路204a及び下流側管路204bにおける径方向の長さRimよりも大きく構成されている。尚、上流側管路204a及び下流側管路204bは、夫々吸気管204の一部である。尚、補足すると、サージタンク205は、吸気管204の伸長方向と交わる断面に係る断面形状が略円形状をなしており、上流側管路204a及び下流側管路204bは当該断面形状が円形をなす管状部材である。従って、サージタンク205における当該断面の断面積は、上流側管路204a及び下流側管路204bに対して十分大きいものとなっている。
図1に戻り、サージタンク205の下流側(即ち、気筒202側)において、下流側管路204bは連通管206に接続され、その内部において連通管206と連通する構成となっている。連通管206は、各気筒202の吸気ポート(不図示)の各々に連通しており、吸気管204に導かれた吸入空気は、連通管206を介して、各気筒に対応する吸気ポートに導かれる構成となっている。吸気ポートは、一の気筒202について夫々二個ずつ備わっており、夫々が気筒202内部に連通可能に構成されている。
吸気ポートと気筒202内部との連通状態は、各吸気ポートに設けられた吸気バルブ207により制御される。吸気バルブ207は、クランクシャフトに連動して回転する吸気カムシャフト208に固定された、吸気カムシャフト208の伸長方向と垂直な断面が楕円形状をなす吸気カム209のカムプロフィール(端的に言えば、形状)に応じてその開閉特性が規定されており、開弁時に吸気ポートと気筒202内部とを連通させることが可能に構成されている。このように、エンジン200では、連通管206が、個々の気筒202(より具体的には吸気ポート)に対応する部分の上流側において集約され、下流側管路204bを介してサージタンク205と接続される構成となっており、連通管206は、吸気管204と共に本発明に係る「吸気通路」の一例を構成している。
気筒202の内部には、筒内噴射型のインジェクタ203の一部としての燃料噴射弁が露出しており、高温高圧の気筒内部に燃料たる軽油を直接噴射することが可能に構成されている。ここで、燃料は、不図示の燃料タンクに貯留されている。この燃料タンクに貯留される燃料は、不図示のフィードポンプの作用により燃料タンクから汲み出され、不図示の低圧配管を介して不図示の高圧ポンプに圧送される構成となっている。この高圧ポンプは、コモンレール203Aに対し、燃料を供給することが可能に構成されている。尚、高圧ポンプは、公知の各種態様を採り得、ここでは、その詳細については省略することとする。
コモンレール203Aは、ECU100と電気的に接続され、上流側(即ち、高圧ポンプ側)から供給される高圧燃料をECU100により設定される目標レール圧まで蓄積することが可能に構成された、高圧貯留手段である。尚、コモンレール203Aには、レール圧を検出することが可能なレール圧センサ及びレール圧が上限値を超えないように蓄積される燃料量を制限するプレッシャリミッタ等が配設されるが、ここではその図示を省略することとする。インジェクタ203は、気筒202各々について搭載されており、夫々が高圧デリバリ203Bを介してコモンレール203Aに接続されている。
ここで、インジェクタ203の構成について補足すると、インジェクタ203は、ECU100から供給される指令に基づいて作動する電磁弁と、この電磁弁への通電時に燃料を噴射するノズル(いずれも不図示)とを備える。当該電磁弁は、コモンレール203Aの高圧燃料が印加される圧力室と、当該圧力室に接続された低圧側の低圧通路との間の連通状態を制御することが可能に構成されており、通電時に当該加圧室と低圧通路とを連通させると共に、通電停止時に当該加圧室と低圧通路とを相互に遮断する。
一方、ノズルは、噴孔を開閉するニードルを内蔵し、圧力室の燃料圧力がニードルを閉弁方向(噴孔を閉じる方向)に付勢している。従って、電磁弁への通電により加圧室と低圧通路とが連通し、圧力室の燃料圧力が低下すると、ニードルがノズル内を上昇して開弁する(噴孔を開く)ことにより、コモンレール203Aより供給された高圧燃料を噴孔より噴射することが可能に構成される。また、電磁弁への通電停止により加圧室と低圧通路とが相互に遮断されて圧力室の燃料圧力が上昇すると、ニードルがノズル内を下降して閉弁することにより、噴射が終了する構成となっている。尚、このような構成は一例であり、例えば、燃料噴射プロセスそのものが電子制御化(即ち、圧力を媒体とすることなく燃料を噴射する)されていてもよい。
ここで、インジェクタ203によれば、燃料の噴射量を精細に制御することが可能であり、エンジン200では、個々のシリンダ202において、インジェクタ203を介し、目標噴射量に相当する燃料が、燃料と吸気との予混合を促進するための(無論、燃焼室内の急激な温度上昇を防止する目的もある)一又は複数回のパイロット噴射と、目標噴射量とパイロット噴射量との差分に相当するメイン噴射とに分割して噴射される構成となっている。
尚、高圧ポンプ、コモンレール203A、高圧デリバリ203B、及びインジェクタ203は、一体のコモンレールシステムとして構成されていてもよい。また、高温高圧の気筒内部に燃料を噴射するための態様は、ここに例示するものに限定されず、公知の各種態様を採ってよい。
いずれにせよ気筒202内部で形成される混合気は、圧縮行程において自着火して燃焼し、燃焼済みガスとして、或いは一部未燃の混合気として、吸気バルブ207の開閉に連動して開閉する排気バルブ210の開弁時に、不図示の排気ポートを介して排気として排気マニホールド213に導かれる構成となっている。排気バルブ210は、クランクシャフトに連動して回転する排気カムシャフト211に固定された、排気カムシャフト211の伸長方向と垂直な断面が楕円形状をなす排気カム212のカムプロフィール(端的に言えば、形状)に応じてその開閉特性が規定されており、開弁時に排気ポートと気筒202内部とを連通させることが可能に構成されている。排気マニホールド213に集約された排気は、排気マニホールド213に連通する排気管214に供給される。
排気管214には、タービンハウジング215に収容される形でタービン216が設置されている。タービン216は、排気管214に導かれた排気の圧力(即ち、排気圧)により所定の回転軸を中心として回転可能に構成された、セラミック製の回転翼車である。このタービン216の回転軸は、コンプレッサハウジング217に収容される形で吸気管204に設置されたコンプレッサ218と共有されており、タービン216が排気圧により回転すると、コンプレッサ218も当該回転軸を中心として回転する構成となっている。
コンプレッサ218は、エアクリーナ219を介して外界から吸気管204に吸入される吸入空気を、その回転に伴う圧力により下流側へ圧送供給することが可能に構成された、本発明に係る「過給器」の一例たる圧送手段である。このコンプレッサ218による吸入空気の圧送効果により、所謂過給が実現される構成となっている。即ち、エンジン200では、タービン216とコンプレッサ218とにより、一種のターボチャージャが構成されている。尚、これ以降の説明において、タービン216及びコンプレッサ217を含む包括概念として、適宜「ターボチャージャ」なる言葉を使用することとする。
エアクリーナ219とコンプレッサ218との間には、吸入空気の質量流量を検出可能なホットワイヤ式のエアフローメータ220が設置されている。エアフローメータ220は、ECU100と電気的に接続されており、検出された吸入空気量Gaは、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。尚、本実施形態において、検出された吸入空気量Gaは、気筒202に吸入される吸気の量(即ち、吸気量)と一義的な関係を有しており、エンジン200の実負荷を規定する指標値として扱われる。
吸気管204において、コンプレッサ218の下流側、且つサージタンク205の上流側には、インタークーラ221が設置されている。インタークーラ221は、その内部に熱交換壁を有しており、過給された吸入空気が(無論、コンプレッサ218が実質的にみて有意に作用しない低回転領域においても同様である)通過する際に、係る熱交換壁を介した熱交換により吸入空気を冷却することが可能に構成された、本発明に係る「吸気冷却手段」の一例である。エンジン200では、このインタークーラ221による冷却によって吸入空気の密度を増大させることが可能となるため、コンプレッサ217を介した過給がより効率的になされ得る。
インタークーラ221とサージタンク205との間には、サージタンク205へ供給される吸入空気の量を調節可能なディーゼルスロットルバルブ222が配設されている。このディーゼルスロットルバルブ222は、ECU100と電気的に接続され且つECU100により上位に制御されるスロットルバルブモータ223から供給される駆動力により回転可能に構成された回転弁であり、ディーゼルスロットルバルブ222を境にした吸気管204の上流部分と下流部分とをほぼ遮断する全閉位置から、ほぼ全面的に連通させる全開位置まで、その回転位置が連続的に制御される構成となっている。このように、エンジン200では、ディーゼルスロットルバルブ222及びスロットルバルブモータ223により、一種の電子制御式スロットル装置が構成されている。
尚、エンジン200は、ディーゼルエンジンであり、その出力は、ガソリン等を燃料とするエンジンにおける空燃比制御(吸気量を基準とした燃料噴射制御)と異なり、噴射量の増減制御を介してコントロールされる。従って、ディーゼルスロットルバルブ222を介して吸入される吸入空気の量には、少なくともその上限側に実質的な制限はなく、ディーゼルスロットルバルブ222は、エンジン200の動作期間の大部分の領域において、基本的に全開位置に制御される。
エンジン200の要求負荷は、不図示のアクセルペダルの操作量(即ち、ドライバによる操作量)たるアクセル開度Accに応じて決定される。アクセル開度Accは、アクセル開度センサ11により検出され、アクセル開度センサ11と電気的に接続されたECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。総体的には、アクセル開度が小さい程要求負荷は小さく、アクセル開度が大きい程要求負荷は大きくなる。要求負荷の大小とは、要求出力の大小と相関するから、エンジンシステム10において、エンジン要求出力は、アクセル開度Accに応じて変化する。
一方、連通管206の集約部分(即ち、個々の気筒202に分岐する分岐部分よりも上流側(サージタンク205側)の部分であって、下流側管路204bとの接続部分)には、単一のインパルス弁224が設けられている。インパルス弁224は、後述する弁体224Aの位置に応じて規定される開度が、下流側管路204b(一義的にサージタンク205)と連通管206との連通を遮断する全閉開度と、下流側管路204b(一義的にサージタンク205)と連通管206とをほぼ全面的に連通させる全開開度との間で連続的に変化するように構成された、本発明に係る「吸気制御弁」の一例たる電磁制御弁である。尚、インパルス弁224は、下流側管路204bに設けられていてもよい。
ここで、図3を参照し、インパルス弁224の詳細について説明する。ここに、図3は、インパルス弁224周辺の模式的な断面図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図3において、インパルス弁224は、弁体224A、回転軸224B、駆動モータ224C及び駆動回路224Dを備えた弁装置として構成されている。
弁体224Aは、図示断面における面内で回転可能に構成された回転体である。
回転軸224Bは、弁体224Aの回転中心を規定する軸体であり、駆動モータ224Cの回転軸に連結されている。
駆動モータ224Cは、三相交流型の電動機であり、その回転軸には上述した回転軸224Bが連結されている。駆動モータ224Cは、当該回転軸に連結され且つ永久磁石が付設されてなる不図示のロータが、駆動回路224Dにより駆動モータ224C内に形成される磁界の作用によって回転することにより、その回転方向に駆動力を発生する構成となっている。
駆動回路224Dは、駆動モータ224Cに形成される磁界の状態を制御することが可能に構成された電力制御回路である。駆動回路224Dは、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によりその動作が上位に制御される構成となっている。
ここで、インパルス弁224の開度を規定する弁体224Aの位置は、平常時において、図示全閉位置CLと図示全開位置OPとの間で連続的に(或いは実践上連続的にとみなし得る程度に段階的に)制御される。全閉位置CLとは、上述した全閉開度に相当する位置であり、全開位置OPとは、上述した全開開度に相当する位置である。補足すると、平常時におけるインパルス弁224の弁体224Aの基準位置(即ち、非駆動時の位置であり、デフォルトの位置である)は全閉位置である。弁体224Aは、当該基準位置から時計回り方向に開角90°(即ち、全開位置に相当する)までの範囲で連続的に位置制御される。
ECU100は、弁体224Aが、インパルス弁224の目標開度に相当する目標位置(目標開角)で停止するように駆動回路224Dを制御する。その結果、駆動回路224Dからの電力の供給を受け、駆動モータ224C内には、駆動モータ224Cのロータを当該目標位置に相当する位置に回転させるための、或いは当該目標位置に相当する位置に保持するための磁界が形成され、当該ロータに間接的に固定された弁体224Aが最終的に目標位置で停止する。尚、上述した開角の制御範囲内において、弁体224Aは、時計回り方向にも反時計回り方向にも回転可能である。このように、エンジン200では、ディーゼルスロットルバルブ222よりも下流側においてインパルス弁224を備えることにより、各気筒202への吸入空気の供給の有無が、インパルス弁224の開閉状態に応じて制御される構成となっている。
図1に戻り、連通管206におけるインパルス弁224の近傍には、回転角センサ225が設置されている。回転角センサ225は、ロータの2相コイルから出力される電圧の位相が変化することを利用して角度を検出することが可能な、所謂レゾルバであり、インパルス弁224の開度(即ち、一義的に弁体224Aの位置)を検出することが可能に構成されている。また、回転角センサ225は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたインパルス弁224の開度は、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。尚、インパルス弁224の開度を検出する手段は、レゾルバに限定されない。
排気管214には、DPF(Diesel Particulate Filter)226が設置されている。DPF226は、エンジン200から排出されるPM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集可能且つ浄化可能に構成されている。また、気筒202を収容するシリンダブロック201には、水温センサ227が配設されている。シリンダブロック201内部には、気筒202を冷却するための冷却水(例えば、LLC)の流路たるウォータジャケットが張り巡らされており、当該ウォータジャケット内部において、冷却水が不図示の循環系の作用により循環供給されている。水温センサ227は、このウォータジャケット内部に検出端子の一部が露出しており、冷却水の温度を検出することが可能に構成されている。水温センサ227は、ECU100と電気的に接続されており、検出された冷却水温は、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
尚、本実施形態に係るエンジンシステム10では、本発明に係る「内燃機関」の一例として、ディーゼルエンジンたるエンジン200が採用されているが、本発明に係る内燃機関とはディーゼルエンジンのみを指すものではなく、無論ガソリンエンジンや、アルコール混合燃料を使用するエンジン等であってもよい。また、説明の煩雑化を防ぐ目的から、本実施形態に係るエンジン200には、EGR装置等の排気再循環装置が装着されないが、無論好適な一形態としてエンジン200に排気再循環装置が装着されていてもよい。ここで、排気再循環装置が装着されない構成に鑑みれば、本実施形態におけるエンジン200において、各気筒202に吸気ポートを介して吸入される吸気は、吸気管204を介して導かれる吸入空気のみにより構成される。
このように、本実施形態に係るエンジンシステム10では、吸気管204(上流側管路204a及び下流側管路204bを含む)、コンプレッサ218、インタークーラ221、サージタンク205、連通管206及びインパルス弁224を含む吸気系が、本発明に係る「内燃機関の吸気装置」の一例をなしており、特に、サージタンク205の下流側に位置するインパルス弁224の下流側において連通管206が各気筒に対し分岐する、所謂一弁式のインマニレス吸気系として構成されている。但し、本発明に係る内燃機関は、例えばサージタンク205に対し相互に独立した吸気マニホールドが接続され、個々の吸気マニホールドを介して各気筒202へ吸入空気が導かれる構成を有していてもよい。この場合、複数の吸気マニホールドの一部にインパルス弁が設置されていてもよいし、各吸気マニホールドにインパルス弁が設置されていてもよい。
<実施形態の動作>
エンジンシステム10では、エンジン200の機関回転速度NEが所定のインパルスチャージ領域にある場合に、インパルスチャージが実行される。ここで、インパルスチャージとは、インパルス弁224の開閉により生じる吸気の脈動を利用した慣性過給を指す。より具体的に説明すると、インパルス弁224が閉弁した状態で一の気筒202が吸気行程を迎えると、当該気筒202の吸気バルブ207が開弁され、当該気筒202のピストンが下降し始める。この際、インパルス弁224が閉弁しているため、連通管206の管内圧は負圧となり、大気圧又は過給により大気圧以上に維持される下流側管路204bの管内圧との圧力差が拡大する。
エンジンシステム10では、エンジン200の機関回転速度NEが所定のインパルスチャージ領域にある場合に、インパルスチャージが実行される。ここで、インパルスチャージとは、インパルス弁224の開閉により生じる吸気の脈動を利用した慣性過給を指す。より具体的に説明すると、インパルス弁224が閉弁した状態で一の気筒202が吸気行程を迎えると、当該気筒202の吸気バルブ207が開弁され、当該気筒202のピストンが下降し始める。この際、インパルス弁224が閉弁しているため、連通管206の管内圧は負圧となり、大気圧又は過給により大気圧以上に維持される下流側管路204bの管内圧との圧力差が拡大する。
このような状態においてインパルス弁224を開弁する(即ち、吸気バルブ207の開弁タイミング以降の開弁期間において開弁する)と、下流側管路204b(一義的にサージタンク205)と該当する気筒202(即ち、その時点で吸気行程にある気筒)の内部とが連通し、インパルス弁224を介して吸入空気が吸気として一気に気筒202内部の燃焼室に流入することとなる。
一方、燃焼室との連通部位において連通管206は所謂開放端となっており、燃焼室への吸入空気の流入に惹起された正圧波は、燃焼室で反射することによって、位相が反転した負圧波(即ち、本発明に係る「脈動に対応する脈動波」の一例)となる。この負圧波は、連通管206、インパルス弁224及び下流側管路204bを順次介してサージタンク205に到達する。他方、下流側管路204bの断面積は、上述したようにサージタンク205の当該断面積よりも小さいから、下流側管路204bにおけるサージタンク205側の端部もまた開放端として作用することとなる。
このため、サージタンク205に到達した負圧波は、サージタンク205において反射され、位相が反転した正圧波として再び下流側管路204b、インパルス弁224及び連通管206を介して燃焼室に到達する。この言わば二次的な正圧波のピークが燃焼室に(或いは吸気バルブ207に)到達した時点で(必ずしも、当該時点のみに限定されるものではなく、吸気の充填効率を幾らかなり向上させ得る限りにおいて当該時点を含む一定又は不定の期間であってよい)吸気バルブ207を閉弁すれば、燃焼室内の圧力は上昇し、吸気の充填効率が向上する。インパルス弁224を利用したインパルスチャージはこのように実行される。
尚、本実施形態に係るエンジン200には、所謂一弁式のインマニレス吸気系が採用されており、4本の気筒202の全てにおけるインパルスチャージが単一のインパルス弁224により賄われる構成となっている。そのため、少なくともエンジン200では、インパルス弁224は、次気筒の吸気行程に備えるため、一の気筒202の吸気行程中に閉弁する構成となっている。一方で、インパルス弁224の開閉に要する時間には、インパルス弁224が相対的にみれば高い応答速度を有する電磁弁として構成されているとは言え、インパルス弁224の物理的、機械的、機構的又は電気的な構成上定まり得る最小値が存在し、吸気バルブ207の開弁期間がこの最小値に相当する駆動時間よりも短い場合には、連続的に開閉する吸気バルブ207の動作に追従することができなくなる。吸気バルブ207の開弁期間は、開弁時期と閉弁時期とが固定されていれば即ち機関回転速度NEに応じて一義的に定まり、また例えばVVT(Variable Valve Timing:可変動弁装置)等により開弁時期及び閉弁時期の少なくとも一方或いはバルブリフト量が可変であるにせよ、機関回転速度NEに応じて変化することに変わりは無い。上述したインパルスチャージ領域とは、このようなインパルスチャージを少なくとも実践上破綻しない(好適には、全気筒に対し実行できる)程度の余裕をもって実行可能な機関回転速度NEの領域であり、機関回転速度NEの値が、当該領域の上限を規定する機関回転速度以下であるか否かに基づいて決定される。
尚、これは一例に過ぎず、インパルスチャージ領域は、より複雑に規定されていてもよい。例えば、定常走行時等の軽負荷領域では、必要とされる吸気量は少なく、実践上、吸入空気量は、ディーゼルスロットルバルブ222により相当量絞られた状態となる。このような吸気絞り領域においては、元よりインパルスチャージは必要とされない場合が多く、例えば要求負荷が、インパルスチャージの有用性を否定し得る程度の軽負荷に該当する旨が判別される場合には、インパルスチャージは実行されずともよい。
ここで、エンジンシステム10にはインタークーラ221が備わっており、インパルスチャージにより気筒内202内に供給される吸気は、元よりその密度が増大した(少なくともインタークーラ221が備わらない場合と較べて増大した)状態にある。従って、インパルスチャージによって、吸気の充填効率はより向上し得る。
一方で、サージタンク205は、その物理構造上、脈動波(正圧波の反射波たる負圧波)の位相を反転させ得るから、吸気バルブ207(或いは、その近傍部位)との距離に起因する脈動波の減衰が実践上問題とならない限りにおいて、或いは設置上の制約等、他の要請に抵触しない限りにおいて、本来、その吸気管204上の設置位置は比較的自由である。
ところが、インタークーラ221を通過する吸入空気は、インタークーラ221による冷却を受けてその脈動(必ずしもインパルスチャージによる脈動に限定されない)が減衰する。従って、負圧波の位相反転に供すべきサージタンク205がインタークーラ221の上流側に設置されている場合、サージタンク205に向かう負圧波も、サージタンク205から気筒202内部に向かう正圧波も、このインタークーラ221による減衰を受ける形となって、吸気密度の増大に係る恩恵は別として、インパルスチャージの効果が減少することとなる。
その点、本実施形態に係るエンジンシステム10では、サージタンク205がインタークーラ221の下流側に設置されており、インパルスチャージによる吸気の脈動が、インタークーラ221の下流側で生じる構成となっている。従って、インタークーラ221が、インパルスチャージによる吸気の充填効率の向上に係る効果を阻害することはなく、上述した吸気密度の増大による効果と、インパルスチャージによる吸気の充填効率向上に係る効果とが相互に協調し合う形となって、吸気の充填効率を極めて向上させることが可能となるのである。即ち、エンジンシステム10では、サージタンク205の設置位置が、インパルス弁224とインタークーラ221との間に規定されることにより、ある種の最適化が図られているのである。
尚、このようにサージタンク205をインタークーラ221の下流側に配することによって、インタークーラ221の熱交換壁にインパルスチャージによる比較的強い脈動波が流入することが防止され、インタークーラ221の耐久性をより向上させることも可能となる。
<第2実施形態>
次に、図4を参照し、本発明の第2実施形態に係るエンジンシステム20について説明する。ここに、図4は、エンジンシステム20の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
<第2実施形態>
次に、図4を参照し、本発明の第2実施形態に係るエンジンシステム20について説明する。ここに、図4は、エンジンシステム20の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、エンジンシステム20は、上流側管路204a及び下流側管路204bに夫々代替する上流側管路204c及び下流側管路204dを備える点において、第1実施形態に係るエンジンシステム10と相違している。
ここで、図5を参照し、上流側管路204c及び下流側管路204dの詳細について説明する。ここに、図5は、吸気管204に沿ったサージタンク205周辺部分の模式的な断面図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図5において、上流側管路204cは、その下流側の端部がサージタンク205に連通してなる、本発明に係る「第1の通路部」の一例である。また、下流側管路204dは、その上流側の端部がサージタンク205に連通してなる、本発明に係る「第2の通路部」の一例である。ここで、上流側管路204cの径方向の長さはRim1であり、下流側管路204bにおける径方向の長さRim2に対し、Rim2<Rim1なる関係を有している。尚、Rim1及びRim2は、夫々第1実施形態に係るRimと異なる値であってもよいし、いずれか一方がRimと等しい値であってもよい。
ここで、上流側管路204c及び下流側管路204dは、夫々吸気管204の伸長方向と交わる断面に係る断面形状が円形となる管状部材であり、Rim1及びRim2は夫々上流側管路204c及び下流側管路204dの直径に相当する。従って、上流側管路204cにおける当該断面に係る断面積(即ち、本発明に係る「断面積S1」の一例)は、下流側管路204dにおける当該断面に係る断面積(即ち、本発明に係る「断面積S2」の一例)よりも大きくなっている。
第1実施形態で述べたようなインパルスチャージの実行時には、サージタンク205の下流側(即ち、下流側管路204d及び連通路206を好適に含む)のみならず、サージタンク205の上流側(即ち、上流側管路204cを好適に含む)においても吸気の脈動が生じるが、エンジンシステム20では、このように上流側管路204cの断面積が下流側管路204dの断面積よりも大きい構成となっているため、サージタンク205の上流側における脈動の度合いは相対的に小さくなる。
このため、エンジンシステム20では、上流側管路204dを介してサージタンク205に吸気が流入する際の流入速度を低下させることが可能となり、サージタンク205内部での、流入した脈動波と、サージタンク205下流側における吸気の脈動波との干渉が抑制されることとなって、吸気の充填効率の低下が防止される。即ち、吸気の充填効率を相対的に向上させることが可能となるのである。また、このように吸気の充填効率を相対的に向上させ得る点に鑑みれば、その分サージタンク205を縮小化することも可能であり、エンジンシステム20の搭載性を向上させることも可能となる。尚、この際、サージタンク205の縮小化による搭載性向上に係る効果は、無論インパルスチャージによる吸気の充填効率向上に係る効果と言わばトレードオフの関係を有するから、これら相互間の関係は、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、少なくとも実践上不足の無い吸気充填効率を確保しつつ可及的に搭載性が向上し得るように決定されていてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の吸気装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…エンジンシステム、100…ECU、200…エンジン、202…気筒、204…吸気管、205…サージタンク205…連通管、207…吸気バルブ、216…タービン、218…コンプレッサ、221…インタークーラ、222…スロットルバルブ、224…インパルス弁。
Claims (3)
- 気筒内部に連通する吸気通路と、
該吸気通路に設置された過給器と、
前記吸気通路において前記過給器の下流側に設置され、開閉状態に応じて吸気の脈動を生成可能且つ該吸気の量たる吸気量を調整可能な吸気制御弁と、
前記吸気通路において前記過給器の下流側且つ前記吸気制御弁の上流側に設置され、前記吸気を冷却可能な吸気冷却手段と、
前記吸気通路において前記吸気冷却手段の下流側且つ前記吸気制御弁の上流側に設置され、前記生成された脈動に対応する脈動波の位相を反転させる位相反転手段と
を具備することを特徴とする内燃機関の吸気装置。 - 前記位相反転手段は、前記吸気通路と交わる方向の断面に係る断面積が前記吸気通路における該断面積と較べて大きく構成されてなるサージタンクである
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。 - 前記吸気通路は、前記位相反転手段の上流側に位置し且つ前記吸気通路と交わる方向の断面に係る断面積S1を有する第1の通路部と、前記位相反転手段の下流側に位置し且つ前記S1よりも小さい前記断面積S2を有する第2の通路部とを備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の吸気装置。
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