以下、本発明の第1実施を図面を参照して詳細に説明する。図1〜図4は発明を実施する形態の一例であって、図中、図と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。図1は本発明の実施形態に係るキャップレス筆記具の全体の構成を示す断面図、図2は前記キャップレス筆記具の使用時の状態を示す断面図、図3は本発明の変形実施例に係るキャップレス筆記具の全体の構成を示す断面図、図4の(a)は図1のインナーキャップ20の断面拡大図(装着時の状態を示す)、(b)は図1の実施形態に係るインナーキャップの装着前の状態を示すインナーキャップ20の断面拡大図、(c)は前記インナーキャップの装着前の状態を示す(b)のA−A‘矢視図である。
本実施形態に係るキャップレス筆記具1は、図1に示すように、軸筒2内に筆記具用インキが充填された筆記体5を配置して、該軸筒2の先端部3に形成された開口部4より筆記体5のペン芯となるペン先部6を突出自在に構成したものである。
前記筆記体5は、軸筒2内の前側の内周に配置された弾発部材7によって後部方向に付勢されている。また、符号14は前記筆記体5の後部に位置するノック部材であって、このノック部材14を押圧することによって筆記体5が前進し、軸筒2の先端から突出する。符号8は前記ノック部材9に連結された解除駒であって、筆記体5の突出時においては、軸筒2に形成された係止溝9の係止部10に係合している。そして、その解除駒8を径方向に回転させれば、前記係合作用が解除され、弾撥部材7の弾撥力によって筆記体5が後退する。符号11は、前記外筒1に一体形成されたクリップであるが、別部材で構成し各々を固定しても良い。この筆記体5内には、筆記具用インキを吸蔵した中綿などのインキ吸蔵体が収容されており、該インキ吸蔵体の先端部側にペン先部6の後部が接しており、これにより、インキ吸蔵体のインキをペン先部に供給する構成となっている。なお、本実施形態では、中綿式のものであるが、コレクター構造を有するインキタンクを備える直液式の筆記体5であってもよいものである。
前記軸筒2内の先端部3には、図1、図4の(a)〜(c)に示すように、先端方向にドーム状に突出形成された閉塞部21を有するインナーキャップ20が設けられている。前記閉塞部21の一部位21aより、該閉塞部21のほぼ中央部23を通り、軸心方向を中心に対向する部位21bに亘り、平面視で略直線状に外形に沿ってスリット25が形成されている。
前記インナーキャップ20は、筆記具用インキに含有されるインキ溶剤に対して気体透過性の低い材質からなり、かつ、JIS K6262−1997で規定される圧縮永久歪み率が20%以下の材質から形成され、ドーム状閉塞部21の基部22の外周端部に、三角形状断面を有するペン先側のシール部を兼ねた前側取り付け部27が外周に沿って円周に亘りに連続的に先端方向に向かい突出形成されている。また、前記基部22の後端面28には、前側取り付け部27よりも内側で小径の矩形断面を有する後側のシール部を兼ねた後側取り付け部29が円周方向全周に亘りに連続的に軸筒内側方向に向かい突出形成されている。
前記前側取り付け部27は、図4の(b)に示すように、インナーキャップ20が軸筒2内に装着されていない状態で、先端部27aが軸筒軸心に沿った方向に対してやや外側に傾斜した形状に形成されている。また、後側取り付け部29は、その先端部29aが軸筒軸心に沿った方向に対してやや内側に傾斜した形状に形成され、前記スリット25は僅かな隙間を有している。
前記インナーキャップ20の後方には、該インナーキャップ20を軸筒2の先端部3内側に取付けるためのインナーキャップホルダ30が配置されている。前記インナーキャップホルダ30は、リング状に形成され、その円周方向の外周面を前記先端部3の内壁部に嵌合するとともに、前記インナーキャップ20の前側取り付け部27を軸筒2の先端部3の内側へ取付けることで、インナーキャップ20を軸筒2内部に装着するようにしている。
また、インナーキャップホルダ30の前記インナーキャップ20の後側取り付け部29と対向する部位には、前記後側取り付け部29が嵌め込まれる後側取り付け溝31がリング状で略平行に凹んだ形状で形成されている。その後側取り付け溝31の外形は、前記後側取り付け部29の先端部29aの外形よりも大きくされ、前記後側取り付け部29を外側に広げた状態で該後側取り付け溝31に嵌め込むように構成されている。
前記軸筒2の先端部3の内側には、図1に示すように、インナーキャップ20の前側取り付け部27と対向する部位に、インナーキャップ取り付け部3aが段付き形成され、前側取り付け部27が嵌め合わされる前側取り付け溝3bが軸心方向に沿って略平行に形成されている。その前側取り付け溝3bの外形は、前側取り付け部27の先端部27aの外形よりも小さくされ、前側取り付け部27を内側に向かい縮めた状態で前側取り付け溝3bに嵌め込むように構成されている。
図3は、基本的には図1の実施形態と同一であるが、軸筒2の先端部3の内方に配置されたインナーキャップ20の後方の形状が異なる。該インナーキャップ20の後方内面には、筆記体5の前方の外壁と密閉を保つための内方リブ20aが形成されている。ペン先部6を密閉する空間を少なくすることにより、ペン先部6の耐ドライアップ効果を良くするのである。
本発明において筆記体5に充填される筆記具用インキとしては、キャップレス筆記具の用途、すなわち、水性又は油性マーキングペン等の用途に応じて、その配合組成は変動するものである。本発明に用いることができる筆記具用インキ成分としては、少なくとも着色剤、溶剤、樹脂、その他筆記具用添加剤等を用いることができる。着色剤としては、油溶性染料及び顔料等が挙げられ、油溶性染料としては、有機溶剤に可溶な一般の油溶性染料であればほとんど使用可能である。例えば、染料としては、オラゾールエロー2GLN、オラゾールレッド3GL、オラゾールブルー2GLN、ネオンザポンブルーFLE、スピリットブラックSP、パリファストレッド1308、オイルブルーBA、オイルエロー185、オイルレッドTR71、オイルブラックS、Victoria Blue、Rhodamine 6JHSA、Flex Yellow 105等、また、顔料としては、特に限定されることなく、例えば、アゾ系顔料、縮合ポリアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、金属錯塩顔料、チオインジゴ顔料、染料レーキ顔料、蛍光顔料等の有機顔料及びカーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料が挙げられ、更に、表面を樹脂コーティングで加工した加工顔料、例えば、マイクロリスAタイプ各種、ASブラック、ASブルー、IKレッド等も使用することができる。これらの染料及び/又は顔料は、単独又は2種以上混合して使用することもでき、その使用量は着色剤の種類や他のインキ成分により異なるが、インキ全量に対して、1〜30重量%、好ましくは、2〜15重量%が望ましい。
用いることができる溶剤としては、例えば、エチルアルコ−ル、プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル等の低級アルコールや、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の低級脂肪族ケトンや、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸の低級アルコールエステルや、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素や、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素やグリコールのアルキルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル等が挙げられ、好ましくは、安全性等の点から、エチルアルコ−ル、プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル等の低級アルコール、グリコールのアルキルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテルの使用が望ましい。これらの特性を有する溶剤は、夫々単独で又は2種以上混合して使用することが可能であり、その使用量は、インキ全量に対して、50〜90重量%、好ましくは、70〜85重量%が望ましい。
樹脂は、溶剤に可溶な樹脂であり、被膜形成剤、被塗布面への付着剤、インキの粘度調整剤、更に、着色剤の分散剤として使用するものであり、従来より使用されている各種の天然樹脂、合成樹脂が使用でき、例えば、ロジン、エステルガム、マレイン酸変成ロジン、フェノール変成ロジン等のロジン系樹脂、エチルセルローズ、ニトロセルローズ等のセルローズ系樹脂、ポリビニルブチラール、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等のビニル系樹脂、石油系樹脂、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、アルデヒドと尿素の縮合物、マレイン酸樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することが可能であり、その使用量は、インキ全量に対して、0.1〜30重量%、好ましくは、1〜20重量%が望ましい。その他の筆記具用添加剤としては、例えば、アニオン系、ノニオン系、カチオン系などの界面活性剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、潤滑剤、pH調製剤などが挙げられる。
本発明の第1実施例におけるインナーキャップ20は、第1要件として、上述の如く、筆記具用インキに含有されるインキ溶剤に対して気体透過性の低い材質から構成、具体的には、上述のプロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル等の低級アルコールや、芳香族炭化水素、低級脂肪族ケトン、低級アルコールエステル、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、グリコールエーテル等に対して気体透過性の低い材質から構成されている。これらのインキ溶剤に対して気体透過性の低い材質としては、好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下の要件、更に好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が1.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下の要件から構成されていることが望ましい。
ところで、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)を越える材質からなるものであると、ペン先部がドライアップしてしまうことがあり、インナーキャップとしての乾燥防止機能を発揮しなくなり、好ましくない。更に、本発明では、第2要件として、上記インナーキャップ20が、JISK 6262−1997で規定される圧縮永久歪み率が20%以下、好ましくは、10%以下、更に好ましくは、8%以下のゴム材または弾性樹脂材で形成されていることが必要である。
前記筆記体5の筆記部を密閉する密閉力は、後述する密閉力の測定方法により50〜100kpaであることが好ましく、特に、60〜80kpaの範囲の密閉力であることが望ましい。この密閉力が必要な密閉部は、インナーキャップ20のスリット25と、筆記体5とインナーキャップ20の後部内方に形成されている内方リブ20aの密閉部の2箇所である。これの密閉力は、前述の通りであり、密閉力が50kpa未満であると、密閉部よりインキ溶剤が透過・揮発し、経時耐久を考慮すると筆記線が掠れるという問題が発生する。又、密閉力が100kpaを超えると、筆記体の出没動作時のノック押圧力が高くなり操作しづらくなると言った問題が発生してしまう。故に、前述の範囲の密閉力にすることにより筆記体5の筆記部の密閉状態が良好に保たれ、乾燥を確実に防止しつつ、出没作動のし易いキャップレス筆記具となる。
このインナーキャップ20は、上記インキ溶剤に対して気体透過性の低い材質から構成されること、好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下の材質から構成され、かつ、圧縮永久歪み率が20%以下となるゴム材または弾性樹脂材からなる材質を用い、更に、筆記体5の筆記部を密閉する密閉力は、後述する密閉力の測定方法により50〜100kpaであることにより、初めて、本発明の目的の効果、すなわち、軸筒内部の先端部のスリットと、筆記体5とインナーキャップ20の後部内方に形成されている内方リブ20aの2箇所の密閉部の密閉状態が経時的に完全なものとなり、ペン先部がドライアップすることがなく、インナーキャップとしての乾燥防止機能を発揮することとなる。なお、上記の要件(水蒸気透過率、圧縮永久歪み率、密閉力)を充足しないインナーキャップでは、上記本発明の目的の効果を発揮しないこととなる。
本発明において、インナーキャップ20は、上記インキ溶剤に対して気体透過性の低い材質から構成され、好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下の材質から構成され、かつ、圧縮永久歪み率が20%以下となるゴム材または弾性樹脂材からなる材質であれば、特に限定されず、例えば、これらの要件を充足するエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、シリコーンゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、クロロスルホン化ゴポリエチレンゴム(CSM)、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、その他上記各ゴム同士のブレンド品、上記各ゴムと樹脂材とのブレンド品などが挙げられ、更に好ましくは、上記水蒸気透過率及び、圧縮永久歪み率の要件を充足するEPDM、IIR、CR、FKM、オレフィン系熱可塑性エラストマーが望ましい。なお、本発明では、例えば、ゴム種が同じEPDM、IIRなどであっても、そのゴム配合剤種(補強性充填剤、軟化剤、架橋剤、老化防止剤等の種類)及びその各配合量の相違により、インキ溶剤に対して気体透過性の低い材質、例えば、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下となるもの、または、当該水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)を越えるもの、更に、圧縮永久歪み率が20%以下となるもの、または、20%を越えるものが製造されるものとなるので、インキ溶剤に対して気体透過性の低い材質、好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下となり、かつ、圧縮永久歪み率が20%以下等となる材質のもの(ゴム組成物又は軟質樹脂剤組成物)を調製し、本発明となるインナーキャップに加工して用いることとなる。
本発明のインナーキャップ20は、好ましくは、更に、JIS K 6253−1997で規定されるデュロメータ硬さを20〜90、JIS K 6251−1993で規定される引張強さ(TB)を4〜50MPa、及び切断時伸び(EB)を50〜600%となるゴム材または弾性樹脂材からなる材質となるものが望ましく、更に好ましくは、デュロメータ硬さ30〜80とし、引張強さ10〜40MPa及び切断時伸び60〜300%とすることが望ましい。インナーキャップ20のデュロメータ硬さを20〜90、引張強さを4〜50MPa及び切断時伸びを50〜600%とすることにより、更に、簡単な構成で軸筒内部の先端部の密閉状態を更に確実にしてペン先部のドライアップを更に確実に防止して優れたキャップレス機能を有するキャップレス筆記具が提供されることとなる。
次に、本実施形態に係るキャップレス筆記具の作動を説明する。まず、キャップレス筆記具1を使用しない場合、図1に示すように、軸筒2の内部に筆記体5とともにペン先部6も収容されている。
前記キャップレス筆記具1を使用する場合、図2に示すように、軸筒2を握り、筆記体5の後端部に位置するノック部材14を弾発部材7のばね力に勝って先端方向へ押し込む。図1から図2に示すように、筆記体5が軸筒2内部に入り込むとともに、解除駒8が軸筒2に形成された係止溝9を前方(ペン先)方向に向かって移動する。そして、解除駒8は、係止溝9の係止部10に係合し、使用状態となる。
この時、ペン先部6は、インナーキャップ20の閉塞部21のスリット25を押し開き、軸筒2の先端部3の開口部4より突出した状態となっている。この状態で、前記ノック部材14を開放すると、弾発部材7の弾発力により筆記体5は後方に押し戻されるが、筆記体5の後方に位置する係止駒8が、係止溝9の係止部10に係合しているため、開口部4よりペン先部6が突出した状態で保持される。
次に、ペン先部6を収容する場合は、解除駒8を径方向に回転させれば、前記係合作用が解除され、弾撥部材7の弾撥力によって筆記体5が後方に移動して、ペン先部6を軸筒2内部に収容することができる。
この時、インナーキャップ20において、スリット25からペン先部6が軸筒2内に退避すると、インナーキャップ20は、上述の如く、インキ溶剤に対して気体透過性の低い材質から構成されるもの、好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下の材質、更に好ましくは、圧縮永久歪み率が20%以下のゴム材または弾性樹脂材で形成されたものであるので、この弾性力と閉塞部21の外側から内側に作用する力によってインナーキャップに形成されたスリット25は隙間が密着した状態となる。したがって、キャップレス筆記具1を使用しない状態では、スリット25及びインナーキャップ自体からのインキに含まれる溶剤など揮発物質の揮発及び透過を最小限に止めることができる。
このように構成される本実施形態によるキャップレス筆記具1によれば、インナーキャップ20を軸筒内に保持するにインナーキャップホルダ30を設けたことで、容易にインナーキャップ20を軸筒2内に取付けることができる。さらに、前記インナーキャップ20に、前側取り付け部27および後側取り付け部29を形成したので軸筒2内部の密閉状態を確実にすることができる。
また、本実施形態によれは、前記インナーキャップホルダ30のインナーキャップ20を取付けるための後側取り付け溝31の形状を、前記インナーキャップ20の後側取り付け部29の先端部29aの外形よりも大きく構成し、先端部29aが外側に開くように後側取り付け溝31に嵌め込むようにしたので、後側取り付け部29が外側に広げられることにより、後側取り付け部29から連続して形成される閉塞部21に外周側から中央部の方向に圧する力が作用するため、すなわち、前記閉塞部21の略中央部に形成されるスリット25の隙間を閉じる方向に力が作用するので、閉塞部21を形成するゴム材または弾性樹脂材の弾性による復元力を加えて、さらに密着性を高めることができる。
また、本実施形態によれば、インナーキャップ20に軸筒2内に嵌め込まれる前側取り付け部27を突出形成し、軸筒2の先端部3内側にインナーキャップ20の前側取り付け部27が嵌め込まれる前側取り付け溝3bを形成し、該前側取り付け部27の先端部27aが外周方向内側に向かうようにしたので、閉塞部21の外周側よりスリット25に向かい力が作用し、すなわち、前記閉塞部21の略中央部に形成されるスリット25の開口を閉じる方向に力が作用するので、さらに密着性を高めることができる。
更に、本実施形態によれは、インナーキャップ20の閉塞部21を先端開口に向かいドーム状に突出形成したので、該閉塞部21の剛性を高くでき、スリット25を閉じる方向に力が作用した場合に確実にスリット25を密着させることができる。
本発明は、軸筒内に筆記具用インキを充填された筆記体を配置して、該軸筒の先端開口より筆記体のペン先部が出入自在に構成されると共に、前記軸筒の先端開口に、ゴム材または弾性樹脂材で形成されるインナーキャップを備え、このインナーキャップは、軸筒軸心方向に沿ったペン先部出側に、ペン先部が出入自在のスリットが形成されると共に前記先端開口を閉塞する閉塞部を備えると共に、該インナーキャップをインキ溶剤に対して気体透過性の低い材質から構成されるもの、好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下の材質であって、かつ、JIS K 6262−1993で規定される圧縮永久歪み率が20%以下の材質からなり、更に、筆記体5の筆記部を密閉する密閉力は、後述する密閉力の測定方法により50〜100kpaであることを要旨とするものである。
[密閉力の測定方法]
図3の状態において、筆記体5からノック部材14は外し、該筆記体5の後端にシリコンチューブを密閉状態で連結する(図示せず)。シリコンチューブの他端をリークテスト装置(LEAK TESTER(株式会社 東京精密 社製))に密閉状態で連結する。さらに、インナーキャップ20側の軸筒2を、水を入れ適当な容器に半分位まで浸漬する。この状態で、リークテスト装置より任意のエアー圧を12秒間圧送し、密閉部より気泡が発生しないエアー圧の限界値を密閉力とした。
また、上記実施形態では、インナーキャップ20の閉塞部21の中央部を通るスリット25を1箇所に形成しているが、本発明は、スリットの形状や数に限定されるものではなく、スリットを複数形成したものであっても良く、例えば、閉塞部21の中央部より放射状に3本形成して略三菱状にしたものや、4本形成して十字状に形成したもの、あるいは6本形成したものであってもよく、好ましくは、密閉状態を確実にする点から上記実施形態のスリット25を1箇所に形成したもの、4本形成して十字状に形成したものが望ましい。なお、十字状であればその長さは同じであっても異なってもいてもよい。
また、上記実施形態では、インナーキャップ20の取り付け部である前側取り付け部27、後側取り付け部29を、連続的にリング状に形成しているが、本発明は、インナーキャップ20の取り付け部の形状に限定されるものではなく、例えば、閉塞部に形成されたスリットの形状によって、スリットを閉じるような力が有効に作用するように、取り付け部を部分的に構成したものや取り付け部を分割したものを連続的に構成したものであっても良い。
更に、上記実施形態では、インナーキャップ20の取り付け部の形状を、前側取り付け部27の先端部を外側に広く構成し、後側取り付け部29の先端部29aを内側に狭く構成するようにしているが、本発明においては、閉塞部21に形成されたスリットを閉じるように力が作用するように構成したものであれば、インナーキャップ20の取り付け部の形状や構成に限定されるものではなく、例えば、前側取り付け部27の先端部を内側に狭く構成したものや、後側取り付け部29の先端部29aを外側に広く構成したもの、あるいは、取り付け部を軸心に沿った向きに略平行に構成したものであっても良い。すなわち、閉塞部の外周部を変形させることによりスリットを閉じるようにしたものであれば、取り付け部や閉塞部周りの形状や構成を限定するものではない。
図5は本発明の第2実施形態に係るキャップレス筆記具の全体の構成を示す断面図、図6の(a)は図5のインナーキャップ40の斜視図拡大図(装着時の状態を示す)、(b)は図6の(a)を後方からみた斜視図である。
本実施形態に係るキャップレス筆記具1は、軸筒2内に筆記具用インキが充填された筆記体5を配置して、該軸筒2の先端部3に形成された開口部4より筆記体5のペン芯となるペン先部6を突出自在に構成したものである。
前記筆記体5は、軸筒2内の前側の内周に配置された弾発部材7によって後部方向に付勢されている。軸筒2の後方に配置したペン先部6を出没させる構造は、図5では特に記載しない。図1の実施形態と同様であってもよい。
前記軸筒2内の先端部3には、図5、図6の(a)、(b)に示すように、先端方向にドーム状に突出形成された閉塞部41を有するインナーキャップ40が設けられている。前記閉塞部41のドーム状頂点付近には、直方体形状の凸部42が形成されている。該凸部42の最先端面43には、一部位42aより、ほぼ中央部を通り、軸心方向を中心に対向する部位42bに亘り、略直線状にスリット45が形成されている。
インナーキャップ40の外方には、スリット45を完全に閉ざして密閉するためのクリップ状板バネ46が配置されている。該クリップ状板バネ46は、図6の(b)に示す通り、リング状基部46aから対向するようにクリップ状板バネ部46b、46cが構成されている。
前記クリップ状板バネ46の板厚は、0.3〜0.8mmであることが好ましい。この板厚が0.3mm未満であると、スリット45よりインキ溶剤が透過・揮発し、経時耐久を考慮すると筆記線が掠れるという問題が発生する。又、板厚が0.8mmを超えると、クリップ状板バネの挟む力(挟持力)が強くなりすぎて、ペン先部の出没動作に影響を及ぼし、操作しづらくなると言った問題が発生してしまう。故に、前述の範囲の板厚にすることにより筆記体5の筆記部の密閉状態が良好に保たれ、乾燥を確実に防止しつつ、出没作動のし易いキャップレス筆記具となる。
該インナーキャップ40の後方内面には、筆記体5の前方の外壁と密閉を保つための内方リブ40aが形成されている。ペン先部6を密閉する空間を少なくすることにより、ペン先部6の耐ドライアップ効果を良くするのである。
前記インナーキャップ40は、筆記具用インキに含有されるインキ溶剤に対して気体透過性の低い材質からなり、かつ、JIS K6262−1997で規定される圧縮永久歪み率が20%以下の材質から形成され、ドーム状閉塞部41の基部48の外周端部に、三角形状断面を有する前側取り付け部47が外周に沿って円周に亘り先端方向に向かい突出形成されている。しかし、該前側取り付け部47は、図6の(a)に示す通り、クリップ状板バネ部46b、46cが配置されているので、その部分を2箇所、逃がすために切り欠いている。
尚、前記軸筒2の先端部3の内側には、図5に示すように、インナーキャップ40の前側取り付け部47と対向する部位に、インナーキャップ取り付け部3aが段付き形成され、前側取り付け部27が嵌め合わされる前側取り付け溝3bが軸心方向に沿って略平行に形成されている。その前側取り付け溝3bの外形は、前側取り付け部27の先端部27aの外形よりも小さくされ、前側取り付け部27を内側に向かい縮めた状態で前側取り付け溝3bに嵌め込むように構成されている。
図7〜図9は本発明のキャップレス式筆記具の第3実施形態を示している。先ず、図7及び図8に示すように本願のキャップレス式筆記具はサインペン、マーカー等のインキを搭載させた筆記具であって、先端口52aを有する先軸52の後端内孔に円周上又は円周上の所要箇所に突部52bが形成されている。
一方、軸筒51は前端部51eの前部外周に所要数のリブを形成すると共に、リブの外周に円周状の溝部54dが設けられ、又、前端部51eの前方内孔に段部54aを有して前方に延びた筒状部の所要位置に円周上又は円周上の所要箇所に係止突部54fが形成され、更に筒状部の頭部54bに於いて、内面から先端にかけて適宜アール面54cが形成されている。又、内筒54の後端孔には円周状の突部と成した係止部54eが設けられている。又、軸筒51の後方側面にスリット部51cが穿設されて、そのスリット部51cに対向する側でクリップ51aが後端の基部51bで軸筒51の側面と一体に接合され、又、基部51bの後端から上記スリット部1cに連通するスリット部51gが設けられている。又、上記クリップ51a先端の軸筒面に対向して膨出した玉部に係止段部51dが設けられ、又、上記基部51bのスリット部51gの両内壁面にテーパー状に狭縮しながら先端に段部が形成される係止部51hが設けられている。更に、軸筒51の内孔には上記スリット部51cの適宜前方に後述する可動筒57の後退位置を規制する突起51fが円周上又は円周上の所要箇所に形成されている。
又、内筒54の内孔後方には摺動筒55が嵌挿される。摺動筒55は筒状体で、後方の外周部に円周状の鍔部55cが、前方の外周部に円周上又は円周上の所要箇所に係止突部55bが形成されている。又、摺動筒55は前記内筒54の内孔に嵌挿され、前記係止部54eの前端に鍔部55cが弾性的に嵌挿して抜け止め係止され、前方の筒部が内筒54の内孔に前後動可能に周接する。又、摺動筒55の外周部と内筒54の内周部との間は回り止めされる(図示せず)。尚、筒部先端の内孔には内方突条の係止部55aが形成されている。
一方、栓体56は内筒部56a、外筒部56bで連続した薄肉二重筒構造の弾性体より形成されて、内筒部から外筒部に移る部位の側面に球体56cを一体に有して成り、内筒部56aの後端が上記摺動筒55の係止突部55bで固定されると共に、外筒部56bの後端が上記内筒54の係止突部54fで固定されて、上記球体56cが内筒部56aの先方内孔に密着して内孔を密閉する。又、内筒54の溝部54dに前記先軸52の突部52bが弾性的に嵌入して軸筒51の先端に先軸52が固着される。前述した可動筒57は筒状体で後端に円周状の鍔部57aを有している。可動筒57は軸筒51の後端から挿入され、鍔部57aが軸筒の突起51fを弾性的に乗り越えてその前端で係止されて後退規制される。その際に、軸筒の前端部51eと可動筒の鍔部57aとの間にスプリング59が附勢される。又、可動筒57は前進可能である。
又、ノック筒53は弾性変形に優れた樹脂製の筒状体で、筒部後方の一側に板状部53cが形成され、それと同一線上で前方に弾性片53aを有してその先端に外方に突出した鉤上の係止突起53bが設けられている。上記板状部53cの前端には前述した軸筒基部のスリット部51gに設けた係止部51hに嵌挿すると共にノック筒53が軸筒に対し抜出不能に係止する段部53dが設けられている。筒部の後端孔には円周状の係止溝53eが設けられている。ノック筒53は軸筒51の後端から挿入され、係止突起53bが軸筒のスリット部51cから貫出し、板状部53cが基部のスリット部51gに嵌装して軸筒に対し抜出不能に係止される。
一方、この第3の実施例であるキャップレス式筆記具に使用されるリフィール60は、インクの蒸発を抑制する特性に優れた樹脂成形品よりなるリフィール本体61を後軸部61a、中軸部61b、前軸部61cで一体に成形し、前軸部61cの先端孔にサインペンやマーカー等に使用されるペン芯65が嵌挿且つ固定されている。又、中軸部61bの内孔部前端に形成したリブ61eの後端から後軸部61aの後方にかけて設けられた空間部にインキを充填したインキ吸蔵体66が挿入され、上記ペン芯65の後端がインキ吸蔵体66の先端部に適宜没入している。又、後軸部61aの後端孔には先端に切欠き部と外周に周リブを備えた尾栓67が周リブで密嵌して固着され、尾栓67の先端はインキ吸蔵体66の後端面に略当接している。
ところで、前記中軸部61bの略後方には円周状の溝で空間部が形成され、更に溝内で内孔部に連通する横孔61dが形成されている。又、リフィール本体61の内孔部にはインキ吸蔵体66の前後端を空気流通可能とする空間部が設けられ、特に上記横孔61dが位置する部位には適宜空間が保てる様内孔部にはインキ吸蔵体66を保持するリブ(図示せず)が設定されている。
又、上記リフィール本体61と同質の樹脂成形品で成形されたリフィール前筒62が前記中軸部61b、前軸部61cの外周部に密嵌状に固着されている。但し、リフィール前筒62の内径部には先端に至る長い縦溝状の空気流通路63が形成されており、上記リフィール本体の横孔61dと連通した空気流通路と成っている。又、リフィール前筒62先端に於いてペン芯65が突出する孔部周面に所要数の通気溝部62bを設けて、該通気溝部が上記空気流通路63と連通状に成されている。又、リフィール前筒62の略後方外周部に円周状の鍔部62eが形成されている。その前方に段部62dが設けられている。尚、上記空気流通路63は上記形状に限らず縦溝をリフィール本体側に形成したり、リフィール本体とリフィール前筒との相互間に空気流通路が形成される異形断面形状と成すことも可能である。
前記リフィール前筒62前方の前軸部62aの所要位置でその外周に円周状の溝を設けて、該溝部に弾性体より成るOリング64が止着され、Oリングの外周部が摺動筒55の内周面55dに摺動可能な状態で密接するよう成される。尚、Oリングを用いず前軸部62aに一体のリング形状部を形成することもある。又、前軸部62aの先端部外周に適宜突部62cが形成されている。
以上のように構成されたリフィール60は前記軸筒51の後端から挿入される。その際にリフィール60は摺動筒55の鍔部55cとリフィール60の段部62dとの間にスプリング58が附勢され、前記前軸部の突部62cが摺動筒の係止部55aの前部に係合し、Oリング64が摺動筒の内周面55dに周接するように取付けられる。又、摺動筒の鍔部55cが内筒の係止部54eに当接し、リフィールの鍔部62eは可動筒の鍔部57aに当接状態となり、鍔部62eは軸筒の突起51fの前部に略係合する。
尾栓68は後端閉塞状の樹脂製筒体で、段部を有して前方にやや小径とした筒部外周に円周上又は円周上の所要箇所に係止突部68aが設けられている。尾栓68は前記ノック筒53の後端孔から嵌挿され、係止突部68aがノック筒の係止溝53eに着脱可能に係合し、前記リフィール60の尾栓67の後端が尾栓68内孔後端のリブ状の段部18bに当接して、リフィール60、尾栓68、ノック筒53は一体に前後動可能となる。尚、リフィール60の交換を容易とする為にリフィール後端部と尾栓68を強固に固着して構成する場合もある。その際にはリフィール後端に設けた尾栓67は不要とすることもできる。
[密閉力の測定方法]
図7の状態において、尾栓68を外し、更にリフィール60から尾栓67を外し、該リフィール60の後端にシリコンチューブを密閉状態で連結する(図示せず)。シリコンチューブの他端をリークテスト装置(LEAK TESTER(株式会社 東京精密 社製))に密閉状態で連結する。さらに、内筒54側の軸筒51,先軸52を、水を入れ適当な容器に半分位まで浸漬する。この状態で、リークテスト装置より任意のエアー圧を12秒間圧送し、密閉部より気泡が発生しないエアー圧の限界値を密閉力とした。
前記ペン芯65を密閉する密閉力は、後述する密閉力の測定方法により50〜100kpaであることが好ましく、特に、60〜80kpaの範囲の密閉力であることが望ましい。これの密閉力は、前述の通りであり、密閉力が50kpa未満であると、密閉部よりインキ溶剤が透過・揮発し、経時耐久を考慮すると筆記線が掠れるという問題が発生する。又、密閉力が100kpaを超えると、スプリング58の荷重を上げることが必要であることから、筆記体の出没動作時のノック押圧力が高くなり操作しづらくなると言った問題が発生してしまう。故に、前述の範囲の密閉力にすることによりリフィール前筒62先端に於いてペン芯65の密閉状態が良好に保たれ、乾燥を確実に防止しつつ、出没作動のし易い出没式筆記具となる。
又、前記内筒部56a、外筒部56bで連続した薄肉二重筒構造の弾性体により形成された栓体56は、気体不透過性に優れた材質から構成されている。好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下の要件、更に好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が1.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下の要件から構成されていれば、特に、材質に限定はされない。具体的材質の1例としては、ブチルゴム(IIR)らアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、クロロスルホン化ゴポリエチレンゴム(CSM)、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられるが、その他、上記各ゴム同士のブレンド品、上記各ゴムと樹脂材とのブレンド品などが挙げられる。特に、好ましくは、気体不透過性に優れたブチルゴム(IIR)、或いは、ブチルゴム成分を備えたオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPE)が望ましい。
図10及び図11は第3実施形態の変形例を示している。この実施例は前記第3の実施例と基本的には同じであるが、栓体56の構造が異なる。以下、相違点のみ説明する。この該実施例は、栓体56が内筒部56aの略対向する側面に夫々一体に接合された半球体56dから成り、内筒部56aの内孔が密閉される際に夫々の半球体56dが球体となるように夫々密接面56eを有して成るものである。
本発明のキャップレス式筆記具は以上のように構成されており、未使用時には図10に示すように前記内筒部56aの内孔先方が密閉され、更にOリング64が摺動筒55の内周面55dに密接されるので、ペン先は内筒部56aの小空間(小室)に密閉され、インキの蒸発とペン芯65の乾燥が防止される。次に、尾栓68の後端をノックしてノック筒53と連動してリフィール60を前進させると、スプリング58の付勢力で摺動筒55が連動して前進し、球体56cが先軸52の所要箇所に設けた窓部52cから外方に突出して上記球体による密閉状態が解除されると共に摺動筒55の鍔部55cが内筒54の段部54aに当接して摺動筒55の前進が阻止され、更にリフィール60のみが前進して先軸52の先端口52aからペン芯65が突出する図11参照。
又、ペン先の密閉状態に於いては、ノック筒53の係止突起53bが図7に示すように軸筒のスリット部51cから貫出してリフィール62が後退した位置に設定される。この状態で、前記軸筒基部のスリット部51gに設けた係止部51hにノック筒の板状部53cに設けた段部53dが当接してノック筒53が後方へ抜け止め係止されている。又、尾栓68とノック筒53の係合を解除するとリフィール60を軸筒51から抜き出すことが可能となり、リフィール60の交換を行う。
又、リフィール60は、空気流通路が空間部や細く長い縦溝等により構成されているので長期間使用されてもインキの蒸発は抑制されており筆記寿命を長く維持出来る。又横孔や複雑な空気流通路の構成により落下及びノック衝撃や温度ショックによってもインキの吹出し等のトラブルが回避される。
本実施例においては、栓体56を二箇所の半球体56dと成して密閉時には夫々の密接面56eで密着して球体とするものである。よって、開口時に半球体に別れて突出するので、前記第3実施例のように球体が先軸外周より大きく突出する体裁の悪さを解消できる。又、設計上先軸70の窓部70aを除去することも可能となる。
図12の(a)、(b)は本発明の第4実施形態に適用するキャップレスマーカ−の筆記部収納時、筆記部突出時の全体説明図、図13は気密部開閉装置の説明図、図14は薄板部材の説明図である。
図12に示すように、キャップレスマーカは、軸部80内に筆記部82がノック操作により進退動可能に収容され、筆記部82の筆記先端84が軸部80先端に嵌着固定された先軸部88の開放孔86から進出して筆記可能になるキャップレスマーカである。
詳細には、このキャップレスマーカにおいては、中空円筒状の軸部80の軸方向前端部には、先端に開放孔86が形成された弾頭形状の先軸部88が嵌着して一体的に固定されている。筆記部82においては、軸部80内に収容された筆記部82本体がインキタンク82aを内蔵した太径構造になり、かつ、この本体先端に連続して細径の筆記先端84が設けられている。前記筆記先端84には、繊維芯からなるペン芯84aが先端部を露出させ、又、後端部をインキタンク82a内に臨ませて固定されている。又、筆記部82は、軸部80内面部を筆記部82外面部との間に設けられたスプリング90の弾性力で後方に向けて付勢されて、進退動自在に軸部80内に収容されている。その軸部80の後端開口に収容された尾栓部92を押してノック操作するようになっている。実施形態のノック機構は、軸部後端に固定された係止部94に尾栓92内面の係止突起96が係止して、ノックして筆記部82を前進させた筆記位置が位置決めされる。一方、再度ノックして筆記部82を後退させた非筆記位置で尾栓部92が係止部94に当接し筆記部82の位置決めをするものである。なお、尾栓部92の立て溝92aには、係止部94の両端部が誘導可能に遊嵌している。
この第4実施形態のキャップレスマーカでは、図13、図14に示すように、軸部80と先軸部88の内部に孔98aが形成されている薄板バネ体(薄板部材に相当)98が溝100上を摺動可能に、かつ、薄板バネ体98が先軸部88先端の開放孔86を開閉するように収容され、筆記部82のノック機構と薄板バネ体98が連動する機構を有している。ノック機構のノック操作により、薄板バネ体98は筆記部82の進出に連動して前記開放孔86を孔98aで開き、一方、筆記部82の後退に連動して薄板バネ体98の孔98aが形成されていない部分で前記開放孔86を塞ぐよう、気密部開閉装置を有している。
本実施形態によれば、薄板バネ体98の進退動作で先軸部88の先端を開閉するので、部品点数が少なく、組み立てが容易でコストがかからない。
尚、実施形態においては、薄板バネ体98は、金属材、樹脂材などの種々の材質の板材であって、例えば先軸部88の壁厚より薄く、弾力性のある厚み0.05〜0.15の板材からなることが好適である。薄板バネ体98には、好適には防錆性のある金属薄板材(SUS板材等)が好適である。また、薄板バネ体98は、図3に示すように本体98bは概略同幅の帯状体になっており、その一端に近い側にほぼ矩形の孔98aが穿設されており、他端に筆記部82の外周に嵌り込む環状リング部98cが連接形成されている。この環状リング部98cが薄板バネ体98本体98bと直角に曲げた状態で筆記部82外周に嵌め込んで固定するので、筆記部82の進退動に連動して薄板バネ体98が進退動し、孔98aが開放部86に一致あるいは外れる。
又、薄板バネ体98が摺動する先軸部88内面部の摺動部には、薄板バネ体98の幅に対応した溝100が形成され該溝100に薄板バネ体が摺動可能に嵌まり込んでいる。
又、図14に示すように、軸部80先端の開放部86の周縁内部にゴムパッキンやOリングなどの弾性材102を嵌めて気密性を向上させたことが好適である。
前記筆記先端84の先端に配置したペン芯84aを密閉する密閉力は、後述する密閉力の測定方法により50〜100kpaであることが好ましく、特に、60〜80kpaの範囲の密閉力であることが望ましい。これの密閉力は、前述の通りであり、密閉力が50kpa未満であると、密閉部よりインキ溶剤が透過・揮発し、経時耐久を考慮すると筆記線が掠れるという問題が発生する。又、密閉力が100kpaを超えると、薄板バネ体98の厚みを増す等して弾力を上げ、解放部86を塞ぐ必要があることから、筆記部82の出没動作時のノック押圧力が高くなり操作しづらくなると言った問題や、気密性を向上させるために、軸部80先端の開放部86の周縁内部にゴムパッキンやOリングなどの弾性材102を嵌めた場合は、弾性材102と薄板バネ体98とのクリアランスを小さくして気密性を保たせることが必要であるから、やはり筆記部82の出没動作時のノック押圧力が高くなり操作しづらくなると言った問題が発生してしまう。故に、前述の範囲の密閉力にすることにより、筆記先端84の先端に配置したペン芯84aに於いてペン芯65の密閉状態が良好に保たれ、乾燥を確実に防止しつつ、出没作動のし易い出没式筆記具となる。
[密閉力の測定方法]
図12(a)の状態において、尾栓92やノック機構部品を外し、筆記部82の後端を解放させて、該筆記部82の後端にシリコンチューブを密閉状態で連結する(図示せず)。シリコンチューブの他端をリークテスト装置(LEAK TESTER(株式会社 東京精密 社製))に密閉状態で連結する。さらに、筆記先端84側を、水を入れ適当な容器に半分位まで浸漬する。この状態で、リークテスト装置より任意のエアー圧を12秒間圧送し、密閉部より気泡が発生しないエアー圧の限界値を密閉力とした。
又、弾性材102は、気体不透過性に優れた材質から構成されている。好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下の要件、更に好ましくは、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が1.0g.mm/m2.day at 37.8℃(90%RH)以下の要件から構成されていれば、特に、材質に限定はされない。具体的材質の1例としては、ブチルゴム(IIR)らアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、クロロスルホン化ゴポリエチレンゴム(CSM)、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられるが、その他、上記各ゴム同士のブレンド品、上記各ゴムと樹脂材とのブレンド品などが挙げられる。特に、好ましくは、気体不透過性に優れたブチルゴム(IIR)、或いは、ブチルゴム成分を備えたオレフィン系熱可塑性エラストマーが望ましい
又、本発明のキャップレス筆記具は、上述した説明や図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、筆記具用インキを塗布液とし、筆記体を塗布具本体とした塗布具であってもよいものである。
[経時耐久性の評価]
第1〜第4実施形態の状態において、筆記体内にはインキ吸蔵体(アクリル製)を配置し、エタノールが主溶剤のアルコール系油性インキを3g充填する。筆記体の先端にはペン先部(アクリル製)が圧入嵌着され、ペン先部の後端は、筆記体内のインキ吸蔵体に圧入している。
〔実施例及び比較例1、2〕
下記表1に示すゴム材質(オレフィン系TPE、IIR、NBR)、特性(硬度、圧縮永久歪み率、水蒸気透過率、密閉力)を有する各ゴム材質をインナーキャップの材料として使用した。
使用した各ゴム材質の特性試験は、デュロメータ硬さについては、JIS K6253−1997の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法(デュロメータ硬さ試験方法)に準拠し、圧縮永久歪みについては、JIS K 6262−1997の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法(試験片形状:大型試験片、試験温度:100±1℃、試験時間:168時間、試験片を圧縮する割合25%)に準拠し、密閉力は前述した密閉力の測定方法にて測定した。また、水蒸気透過率は、ASTM F 1249に規定されているものとする。
実施例、比較例についての評価は、次の通りとする。各サンプルを50℃で、1日間、横向き放置後、室温に1時間放置してから、上質紙に筆記する。継続して、50℃、7日間、横向き放置後、室温に1時間放置してから、上質紙に筆記する。それぞれの筆跡状態を確認し、下記の評価基準で、目視で評価した。
○:問題なく筆記できる
△:筆記線がやや掠れる
×:乾燥し筆記線が掠れる。
経時耐久性の結果は、表1の通りであった。
上記表1の結果から明らかなように、本発明となる実施例1は、筆記体の先端に配置されたペン先部の気密性が十分に保たれる50〜100kpaの密閉力があり、気体不透過性に優れた材質でもある。更に、圧縮永久歪み率が20%以下で形成されたインナーキャップであることから、短期的な経時(50℃、1日間)、並びに、長期的な経時(50℃、7日間)にも問題のなく筆記できる密閉力を得ることがきた。
これに対して、比較例1では、インナーキャップ20は圧縮永久歪み率が20%以下で形成され、気体不透過性に優れた材質ではあるが、密閉力が40kpaであり、気密性が十分でないため、インキ溶剤が密閉部より揮発したので、経時耐久性試験で筆記線が掠れる結果になった。又、比較例2では、インナーキャップは、圧縮永久歪み率が20%以下で形成され、密閉力は50kpaあるものの、水蒸気透過率が高く、つまり不透過性に劣った材料となっているため、短期的な経時では問題ないが長期的な経時において、筆記線が掠れてしまう結果となった。