本発明のフィルタ装置について以下に詳細に説明する。図1〜図7はそれぞれ本発明のフィルタ装置の実施の形態の一例を示す分解斜視図である。図1〜図6において、1aは誘電体層、1は誘電体層1aが積層されてなる積層体、2aは接地電極、2bは内部接地電極、3a〜3dは共振器電極、3aは初段の共振器電極、3dは最終段の共振器電極、4は結合電極、4aは接地電極対向部、5は入力端子電極、5aは外部入力端子電極、5bは内部入力端子電極、6は出力端子電極、6aは外部出力端子電極、6bは内部出力端子電極、7は容量電極である。また、破線は、誘電体層1aの上下に位置する導体層(例えば初段の共振器電極3aと入力端子電極5)を電気的に接続するための誘電体層1aを貫通する貫通導体があることを示している。
本発明のフィルタ装置は、複数の誘電体層1aが積層されてなる積層体1と、この積層体1を挟んで対向するように配置された接地電極2a・2aと、積層体1内において互いに電磁界結合するように平面視で短絡端と開放端とが互い違いに横並びに整列された3個以上の複数の共振器電極3a〜3dと、積層体1内において共振器電極3a〜3dとの間に誘電体層1aを挟んで配置され、一端が1つの共振器電極3aの短絡端部と対向するとともに対向する共振器電極3aの短絡端に電気的に接続され、他端が1つの共振器電極3aと短絡端が同じ側である他の共振器電極3cの短絡端部と対向するとともに対向する共振器電極3cの短絡端に電気的に接続された結合電極4と、初段の共振器電極3aに接続された入力端子電極5と、最終段の共振器電極3dに接続された出力端子電極6とからなることを特徴とするものである。
本発明のフィルタ装置によれば、一端が1つの共振器電極3aの短絡端部と対向するとともに対向する共振器電極3aの短絡端に電気的に接続され、他端が1つの共振器電極3aと短絡端が同じ側である他の共振器電極3cの短絡端部と対向するとともに対向する共振器電極3cの短絡端に電気的に接続された結合電極を有することから、横並びの共振器電極3a・3b,3b・3c,3c・3d間の(容量性の)結合により伝達される信号と、結合電極4による結合電極4と対向する複数の共振器電極3a・3c間の(誘電性の)結合により伝達される信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合うので、フィルタの通過帯域の高域側に減衰極が形成され、通過帯域の高域側の減衰量が増大した優れた減衰特性を有するフィルタ装置とすることができる。
接地電極2a・2aは、誘電体層1aが積層された積層体1の上下面に、入力端子電極5および出力端子電極6の周囲を除いたほぼ全面に配置されており、接地電位に接続されている。
共振器電極3a,3b,3c,3dは、積層体1の1つの層間に横並びに整列させて配置されて相互に電磁界結合(エッジ結合)している。隣り合う共振器電極3a・3b,3b・3c,3c・3d同士の間隔は、小さい方が強い結合が得られ、容易に通過帯域を広くできるので好ましいが、短絡端から開放端までの間において互いに短絡しないようにして等間隔に良好に形成するには、例えば、0.05〜0.5mm程度に設定される。横並びに配置されて相互に電磁界結合するためには、共振器電極3a,3b,3c,3dの形状は細長い帯状のものであるのが好ましい。共振器電極3a〜3dは、積層体1内において互いに電磁界結合するように平面視で横並びに整列されていればよい。通常は、例えば図1に示すように、4つの共振器電極3a〜3dが1つの誘電体層1a・1a間に配置されるが、共振器電極3a,3cを1つの誘電体層1a・1a間に配置し、共振器電極3b,3dを誘電体層1aを1層介した別の誘電体層1a・1a間に配置してもよい。このように配置すると、隣り合う共振器電極間における短絡がないことからその形成は容易になるので好ましいが、誘電体層1aの層数が増加してフィルタ装置の厚みは厚いものとなる。
また、図1〜図7に示す例のように、共振器電極3a〜3dは、平面視で短絡端と開放端とが互い違いに横並びに整列されている(インターデジタル型に配置されている)ことから、共振器電極3a〜3d間の結合は磁界による結合と電界による結合とが加算されることにより、各共振器電極3a〜3d間においてより強い結合が生じることによって、それぞれの共振モードにおける共振周波数の間の周波数間隔を、従来の1/4波長共振器を利用したフィルタで実現可能だった帯域を超えて調整することができ、広帯域な通過帯域を有するフィルタ装置とすることができる。また、インターデジタル型に配置された共振器電極3a〜3d間の結合は強い磁界結合となり、共振器電極3a〜3dのパターン幅を小さくして磁界を強める必要がないので、共振器電極3a〜3dのパターン幅を大きくすることによって共振器電極3a〜3dの電気抵抗を小さくし、共振器の急峻性共振の鋭さを示すQ値(quality factor)を高くすることができる。その結果として、広い通過帯域を有し急峻な減衰特性を有する、例えばUWB用途のバンドパスフィルタに適したフィルタ装置とすることができる。
図1〜図7に示す例では4つの共振器電極3a〜3d設けられているが、5つ以上の共振器電極を設けてもよく、共振器電極の個数は損失が大きくならない程度の個数であればよい。UWBのローバンド用途では、損失と減衰特性のバランスから4つが好ましい。
共振器電極3a,3b,3c,3dは、上下の接地電極2a・2aと共にストリップライン共振器を構成しており、短絡端が上下の接地電極2a・2aに接続されて接地電位に接続されることによって1/4波長共振器として機能する。共振器電極3a,3b,3c,3dと上下の接地電極2a・2aとの接続は、図1および図2に示すように、共振器電極3a〜3dを形成した層間に共振器電極3a,3b,3c,3dの短絡端同士を接続するための導体層を設け、この導体層と貫通導体(図示せず。)とにより接続したり、この導体層を誘電体層1aの端部まで延ばして誘電体層1aの端面(積層体1の側面)に形成した端面導体(図示せず。)により接続したりすればよい。共振器電極3a,3b,3c,3dの短絡端同士を接続するための導体層を設けない場合は、共振器電極3a,3b,3c,3dのそれぞれを貫通導体により接地電極2a・2aに接続してもよいし、共振器電極3a〜3dの短絡端を誘電体層1aの端部まで延ばして誘電体層1aの端面(積層体1の側面)に形成した端面導体により接地電極2a・2aに接続してもよい。端面導体で接続すると、共振器電極3a〜3dから発生する電磁波の周囲への漏洩を低減するシールド層として端面導体を機能させることができ、貫通導体の場合でも、その間隔を小さくしたり、共振器電極3a〜3dの周りに二重以上に配列し、側面から見てできるだけ貫通導体を隙間なく配置したりすれば、同様にシールドの機能がより顕著になるので好ましい。図1および図2に示すように、共振器電極3a,3b,3c,3dの短絡端同士を接続するための導体層を設けると、共振器電極3a,3b,3c,3dの短絡端を接地電極2a・2aに接続するのが容易となるので好ましい。
また、本発明のフィルタ装置は、図3〜図5および図7に示す例のように、上記構成において、共振器電極3a〜3dが形成された誘電体層1a・1a間に、平面視で複数の共振器電極3a〜3dを取り囲むように内部接地電極2bが形成されていることが好ましい。このようにすることにより、内部接地電極2bが共振器電極3a〜3dの周囲を取り囲むことによって、共振器電極3a〜3dから発生する電磁波の周囲への漏洩を低減することができる。この効果はモジュール基板の中の一部の領域にフィルタ装置が形成される場合に、モジュール基板の他の領域への悪影響を防止する上で特に有用である。内部接地電極2bは、上述した共振器電極3a,3b,3c,3dの短絡端同士を接続するための導体層と、共振器電極3a,3b,3c,3dの並びの両側に形成された導体層とからなる環状のものである。接地電極2aと共振器電極3a,3b,3c,3dとの接続を、内部接地電極2bの共振器電極3a,3b,3c,3dの並びの両側に位置する部分でも行なえば、共振器電極3a〜3dから発生する電磁波の周囲への漏洩をより効果的に低減することができる。
内部接地電極2bと共振器電極3a,3dとの距離は、共振器電極3a,3dによる磁界に影響を与えてフィルタのQ値が低下し通過帯域の損失が大きくなってしまわないように、共振器電極3a,3dによる磁束が通過できる距離があればよく、共振器電極3a,3dと接地電極2aとの間の距離より大きいことが好ましい。
結合電極4は、インターデジタル型に配置された共振器電極3a〜3dの中で、間に1つ以上の共振器電極3bを介した、1つの共振器電極3aと短絡端が同じ側である他の共振器電極3dとの間の弱い結合を強めるために設けるものであり、例えば図4に示す例において、隣接する初段の共振器電極3aと第2段の共振器電極3bとの結合や第2段の共振器電極3bと第3段の共振器電極3cとの結合が増えると、共振器電極3a〜3dと接地電極2a・2aとで形成される基本的なフィルタの中心周波数がずれるなど通過帯域内のフィルタ特性が変わることととなり、結合電極4を加えることによる減衰特性の設計が複雑になってしまう。また、結合電極4において初段の共振器電極3aに対向する部分(一端部)と第3段の共振器電極3cに対向する部分(他端部)とを接続する部分(接続部)の線幅が大きいと、結合電極4自身が接地電極のように機能することから、共振器電極3a〜3dによる磁界に影響を与えることにより、フィルタのQ値が低下して通過帯域の損失が大きくなってしまう。そのため、接続部は、第2段の共振器電極3bと対向する面積を小さくして結合をできるだけ小さくするために、第2段の共振器電極3bと直交するように設け、幅は、インダクタンスが大きくなり過ぎない程度に小さくし、具体的には0.1mm程度にするのが好ましい。また、図2に示す例のように、この接続部をさらに1層以上の誘電体層1aを挟んで第2段の共振器電極3bから離れた位置に形成して、貫通導体により一端部および他端部に接続して結合電極4を形成してもよい。このようにすることで、接続部と第2段の共振器電極3bとの距離が大きくなり、これらの間の不要な結合を小さくすることができる。
結合電極4と共振器電極3a,3cとの間の誘電体層1aの層数により結合電極4と共振器電極3a,3cとの間の距離を変更したり、結合電極4のパターン幅や長さ等のパターン形状や平面視での位置により結合電極4と共振器電極3a,3cとが重なる面積を変更したりすることで、結合電極4と共振器電極3a,3cとの間の電磁界結合度の強弱を調整でき、減衰極が生じる周波数を任意に設定できる。共振器電極3a,3cとの間で十分な結合が得られ、フィルタ装置を作製する際の位置ずれにより結合すべき2つの共振器電極3a,3c以外の共振器電極3b,3dとの結合が発生してしまうことがないように、結合電極4の一端部および他端部は、共振器電極3a,3cの形状に沿った帯状で、共振器電極3a,3cより幅の小さい形状とするのがよい。
結合電極4の形状は、初段の共振器電極3aと第3段の共振器電極3cとの間の磁界による結合を強めるためには、図1〜図7に示す例のように、結合電極4の一端部および他端部それぞれの共振器電極3a,3cの短絡端との接続部とは反対側の端部同士を接続したコの字型(U字型)とするのがよい。
また、図3および図7に示す例のように、結合電極4は複数個設けてもよい。例えば、図3および図7に示す例では、初段の共振器電極3aと第3段の共振器電極3cとを結合する結合電極4と、第2段の共振器電極3bと最終段の共振器電極3dとを結合する結合電極4の2つを設けている。このように、特に、4つ以上の偶数個の共振器電極3a〜3dを有する場合は、一端部が初段の共振器電極3aに結合するものと、最終段の共振器電極3dに結合するものとの2つの結合電極4・4を対称に配置して同程度の結合が得られるようにすると、入力側と出力側とで反射特性のバランスがよくなるので好ましい。
また、共振器電極3a〜3dが奇数個である場合は、初段の共振器電極3aと最終段の共振器電極3dとの結合がもっとも小さいので、これらを結合するような結合電極4とするのが好ましい。このとき、例えば共振器電極3a〜3dが5個の場合は、初段の共振器電極3a、第3段の共振器電極3cおよび最終段の共振器電極3dの3つを結合するような結合電極4としても構わないが、初段の共振器電極3aと最終段の共振器電極3dとを結合していれば、その間の共振器電極3cと結合することによる効果はほとんど現れないので、初段の共振器電極3aと最終段の共振器電極3dとを結合するような結合電極4とすればよい。また、初段の共振器電極3aと最終段の共振器電極3dとを結合することにより入力側と出力側とで反射特性のバランスがよくなるので、この1つの結合電極4だけで構わない。
また、本発明のフィルタ装置は、上記構成において、図2〜図7に示す例のように、結合電極4は、一端と他端との間で分岐した、接地電極2a・2aまたは内部接地電極2bと対向する接地電極対向部4aを有することが好ましい。これによれば、接地電極対向部4aと接地電極2a・2aまたは内部接地電極2bとの結合が大きくなり、結合電極4のインピーダンスが低くなるので、結合電極4による結合電極4と対向する複数の共振器電極3a・3c間の(誘電性の)結合を強めることができ、高域側の減衰極をフィルタの通過帯域に近づける(低周波側にシフトさせる)ことができる。このことより、通過帯域の高周波側の減衰がより急峻なものとなり、通過帯域の高周波側における減衰特性がより優れたフィルタ装置とすることができる。
接地電極対向部4aは、図2、図3および図6に示す例のように、結合電極4の一端部や他端部が形成された誘電体層1a・1a間より接地電極2aに近い誘電体層1a・1a間に配置して貫通導体で接続してもよいし、図4や図7に示す例のように、内部接地電極2bがある場合は、結合電極4が配置された誘電体層1a・1a間に配置して接続してもよい。前者の場合は、結合電極4と接地電極2aとの間の少なくとも1層の誘電体層1aの厚みを調整することにより、容易に結合電極4と接地電極2aとの間の結合量を調整し、高域側の減衰極が発現する位置(周波数)を調整することができる。このとき、図2、図3および図6に示す例のように、結合電極4の一端部から接地電極2aの方へ延びる貫通導体により引き出して、結合電極4が配置された誘電体層1a・1a間とは異なる誘電体層1a・1a間に接地電極対向部4aを設ける場合は、接地電極対向部4aが、平面視で初段の共振器電極3aより内側へ出ないようにするのがよい。接地電極対向部4aと初段の共振器電極3aとの間には結合電極4の一端部が存在することから、接地電極対向部4aと初段の共振器電極3aとの結合は小さいものとなるので、平面視で初段の共振器電極3aおよび最終段の共振器電極3dより外側にはみ出すようにして、面積の大きい接地電極対向部4aを設けるのが好ましい。結合電極4の一部である接地電極対向部4aと共振器電極3a〜3dとの結合をより小さくするには、接地電極対向部4aは結合電極4の一端部(または他端部)に沿った帯状で、結合電極4の一端部(または他端部)より幅や長さの小さい形状で、平面視したときに一端部からはみ出さないようにするのが好ましい。また接地電極対向部4aと結合電極4の一端部との電気的接続は、分岐して誘電体層1a・1a間に延在させてから貫通導体で接続するようにしてもよいが、この場合の接地電極対向部4aも、共振器電極3a〜3dとの結合が小さくなるように、平面視で共振器電極3a〜3dと重ならないような形状および配置するのがよい。また、後者の場合は、例えばセラミックグリーンシート上に導体ペーストを印刷することにより結合電極4を形成する際に、接地電極対向部4aも同時に形成することが可能となる。図5に示す例のように、接地電極対向部4aの配置および接続は、前者と後者の両方を備えるものであってもよい。いずれの場合においても、結合電極4から分岐して接地電極対向部4aに至るまでの部分(結合電極4の一端部と接地電極対向部4aとの接続部)の長さは、不要なインダクタンスを減らすために短い方が好ましい。
図8(a)は、図4に示す例の共振器電極3a〜3dおよび内部接地電極2bが形成された誘電体層1aを上面視した平面図であり、共振器電極3a〜3dとその下の誘電体層1a上に形成された結合電極4(破線で示す)との重なりの例を示している。図8(b)〜(f)は、(a)と同様の平面図であり、接地電極対向部4aの異なる形状の例を示す。上述したように結合電極4は他の共振器電極3b,3cと重ならない方がよいので、図8(a),(b),(c)に示す例の方が好ましい。結合電極4の一端部と接地電極対向部4aとの接続部の長さを短くするには、図8(a)に示す例がより好ましい。そして、接地電極対向部4aと結合電極4との接続部は、結合電極4の一端部と他端部との接続部と同様に、その幅をインダクタンスが大きくなり過ぎない程度に小さく、具体的には0.1mm程度にするのが好ましい。
また、本発明のフィルタ装置は、上記構成において、図6および図7に示す例のように、接地電極2aと共振器電極3a,3b,3c,3dとの間において誘電体層1aを挟んで接地電極2aと対向するとともに、複数の共振器電3a,3b,3c,3dの開放端にそれぞれ電気的に接続された複数の容量電極7を有することが好ましい。これにより、容量電極7と接地電極2aとの距離は共振器電極3a,3b,3c,3dと接地電極2aとの距離より短く、これにより共振器電極3a,3b,3c,3dと接地電極2aとの間の結合がより強くなり、共振器電極3a,3b,3c,3dと接地電極2aとのC結合(容量結合)が強化されるので、各共振器電極3a,3b,3c,3dの長さを短縮することができ、より小型なフィルタ装置を提供することができる。
また、本発明のフィルタ装置は、上記構成において、図7に示す例のように、容量電極7の一部が誘電体層1aを挟んで内部接地電極2bと対向するように配置されていることが好ましい。図9は図7に示すフィルタ装置のA−A断面の一例を示す断面図である。内部接地電極2bは、共振器電極3a〜3dが形成された誘電体層1a・1a間と同じ誘電体層1a・1a間に形成されており、容量電極7を内部接地電極2bと結合するように対向させると、容量電極7を接地電極2aのみと結合するように対向させた場合(図9に破線で示した容量電極7aの場合)と比較して、共振器電極3a〜3dと容量電極7との電気的接続を行なう貫通導体等の配線長を短くすることができるので、この配線による不要なインダクタンスを減らすことができ、インダクタンスによる副次的な共振のない優れたフィルタ特性を有するフィルタ装置とすることができる。また、共振器電極3a〜3dと容量電極7との電気的接続を行なう貫通導体等の配線長が同じ場合であっても、容量電極7と内部接地電極2bとの間の静電容量が加わるので、共振器電極3a〜3dの開放端と接地電位との間の静電容量がさらに増加し、共振器電極3a〜3dの長さを短縮することができるので、より小型のバンドパスフィルタとしてのフィルタ装置を得ることができる。
容量電極7と共振器電極3a〜3dとは、貫通導体で電気的に接続される。容量電極7と共振器電極3a〜3dとが平面視で重なると、その重なった面積分だけ共振器電極3a〜3dと接地電極2aとの結合が小さくなってしまい、また、例えば共振器電極3aに接続された容量電極7と他の共振器電極3b〜3dとが平面視で重なると、初段の共振器電極3aと他の共振器電極3b〜3dとの結合量が変わってしまうので、図6および図7に示す例のように、容量電極7を長方形や楕円形のような細長い形状とし、共振器電極3a〜3dの開放端と容量電極7の一方端とを接続し、容量電極7の他方端を共振器電極3a〜3dの開放端を延長する方向に向けるとよい。
容量電極7は、図6および図7に示す例では、共振器電極3a〜3dに対して誘電体層1aを挟んで下方にそれぞれ1つずつ設けられているが、共振器電極3a〜3dの上下に設けてもよいし、共振器電極3a〜3dの上方にそれぞれ1つずつあるいは上方または下方のいずれかにそれぞれ1つずつ設けてもよい。
入力端子電極5および出力端子電極6は、図1、図2および図4〜図6に示す例のように、貫通導体等の配線導体により電気的に接続してもよいが、誘電体層1aを挟んで共振器電極3a,3dと対向するように配置し、それぞれ共振器電極3a,3dと電磁界結合するようにしてもよい。この場合、図3および図7に示す例のように、入力端子電極5は、初段の共振器電極3aに沿った形状で、誘電体層1aを挟んで初段の共振器電極3aと対向するように配置されて初段の共振器電極3aと電磁界結合する内部入力端子電極5bと、積層体1の外表面に形成され、内部入力端子電極5bに初段の共振器電極3aの開放端側で接続された外部入力端子電極5aとを具備し、出力端子電極6は、最終段の共振器電極3dに沿った形状で、誘電体層1aを挟んで共振器電極3の最終段3dと対向するように配置されて最終段の共振器電極3dと電磁界結合する内部出力端子電極6bと、積層体1の外表面に形成され、内部出力端子電極6bに最終段の共振器電極3dの開放端側で接続された外部出力端子電極6aとを具備しているのが好ましい。このような構成により、入力端子電極5と初段の共振器電極3aとの間および出力端子電極6と最終段の共振器電極3dとの間において、磁界による結合と電界による結合とが加算されて強い結合が生じるので、従来の1/4波長共振器を利用したフィルタで実現可能だった帯域より広い通過帯域であっても、それぞれの共振モードの共振周波数の間に位置する周波数における挿入損失が大きく増加することのない、広い通過帯域の全域に渡って平坦で低損失な通過特性を有するフィルタ装置を提供することができる。この結果、広い通過帯域を有し急峻な減衰特性を有する、例えばUWB用途のバンドパスフィルタに適したフィルタ装置となる。
内部入力端子電極5bと外部入力端子電極5aとの接続、および内部出力端子電極6bと外部出力端子電極6aとの接続は、図3および図7に示す例のように、誘電体層1aを貫通する貫通導体で行なえばよい。また、内部入力端子電極5b,外部入力端子電極5a,内部出力端子電極6bおよび外部出力端子電極6aをそれぞれ誘電体層1aの端部まで延ばして、端面導体で接続することもできる。共振器電極3a〜3dと接地電極2a・2aとの接続を端面導体で行なう場合は、端面導体の形成が導体ペーストの印刷等により他の電極と同時に行なえるので、製造上で都合がよい。
図10は図1と同様の分解斜視図であり、図10において、8は減衰共振器電極である。本発明のフィルタ装置は、図10に示す例のように、上記各構成において、共振器電極3a・3b,3b・3c,3c・3d間以外の積層体1内において共振器電極3a〜3dの1つと電磁界結合するように配置され、一方端が短絡端で他方端が開放端である、少なくとも1つの減衰共振器電極8を有することが好ましい。減衰共振器電極8により共振器電極3a〜3dによる減衰極と通過帯域との間に反作用共振器(ノッチフィルタ)として機能する減衰極を形成することができるので、所望の通過帯域を有し、かつ特定の周波数における不要信号を除去した、より急峻な減衰特性を有するフィルタ装置とすることができる。
減衰共振器電極8は、共振器電極3a〜3d間以外の積層体1内、例えば図10に示すように、共振器電極3a〜3dが形成された誘電体層1a・1a間とは異なる誘電体層1a・1a間において共振器電極3a〜3dの1つと電磁界結合するように配置され、一方端が接地電極2a・2aに接続された短絡端で、他方端が他とは接続されていない開放端である。減衰共振器電極8と接地電極2a・2aとの接続は、図10に示す例のように、減衰共振器電極8の短絡端を誘電体層1aの端部まで延ばし、誘電体層1aの端面(積層体1の側面)に形成した端面導体(図示せず。)により接続してもよいし、貫通導体により接続してもよい。
減衰共振器電極8は共振器電極3a〜3dの1つと電磁界結合するが、その結合量の調整により所望の減衰特性を得ることができる。例えば、所望の結合量が得られていない場合は、通過帯域の外側でカットオフ周波数の極めて近傍の帯域で急峻な減衰特性を得られても、減衰共振器電極8による減衰極の高域側(減衰極間)で減衰特性の跳ね上がりが生じるのに対し、所望の結合量が得られている場合は、このような減衰特性の跳ね上がりは生じず、急峻で跳ね上がりのない減衰特性を得ることができる。
減衰共振器電極8の数は、共振器電極3の形成領域の中心に対して点対称となるようにペア(一対)で設置するのが好ましい。このようにすると、フィルタ装置を作製する際に位置ずれが発生して、減衰共振器電極8と共振器電極3との結合が一方が強まる方向に変化した場合であっても、他方は弱まる方向に変化するため、全体の結合量は大きく変化しないので、設計値とのずれの小さいものを作るのが容易となる。
また、本発明のフィルタ装置は、上記構成において、減衰共振器電極8は開放端が複数に分岐した形状であり、短絡端から分岐した開放端の各先端までの長さがそれぞれ異なることが好ましい。このことから、減衰共振器電極8の短絡端から分岐した開放端の各先端までの電気長に応じた複数の減衰極を形成することができるので、短絡端から分岐した開放端の各先端までの長さを調整して複数の減衰極の位置を調整することにより、容易により急峻な減衰特性を有するフィルタ装置とすることができる。
減衰共振器電極8の形状は、共振器電極3a〜3dとの結合量に応じてその形状を調整すればよいが、全体としては共振器電極3a〜3dに沿った帯状のもので開放端が複数に分岐しているものが好ましい。
減衰共振器電極8の開放端の形状は、複数に分岐し、短絡端から分岐した開放端の各先端までの長さがそれぞれ異なるものであれば特に制限はなく、分岐点から先端までが曲線状(この例ではいわゆる曲線的なY字状)でもよく、短絡端から開放端までの本体部も同様に曲線状でもよい。また、分岐の数も2つだけでなく、3つに分岐してもよいし、あるいはそれ以上の数に分岐していてもよい。短絡端から分岐した開放端の各先端までの長さや分岐の数は、求められるフィルタ特性により必要な減衰極の周波数や減衰極の数に応じて設定すればよい。
共振器電極3a〜3dに対する、結合電極4、入力端子電極5、出力端子電極6、容量電極7、および減衰共振器電極8の平面視の配置やそれぞれとの距離(間に介在する誘電体層1aの厚みまたは層数)は、特に制限はなく、所望の減衰特性となるように各電極と共振器電極3a〜3dとの結合を調整するように設定すればよい。
誘電体層1aとしては、例えば、アルミナ,ムライト,窒化アルミニウム,BaO−TiO2系,CaO−TiO2系,MgO−TiO2系およびガラスセラミックス等のセラミック材料、あるいは四ふっ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン;PTFE),四ふっ化エチレン−エチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合樹脂;ETFE),四ふっ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルテロアルキルビニルエーテル共重合樹脂;PFA)等のフッ素樹脂やガラスエポキシ樹脂,ポリイミド等の有機樹脂材料が用いられる。これらの材料による誘電体層1aの形状や寸法(厚みや幅,長さ)は、使用される周波数や用途等に応じて設定される。セラミック材料の場合は、より高周波の信号を伝送することが可能な、Au,Ag,Cu等の低抵抗金属からなる導体材料と同時焼成が可能な低温焼成セラミックスが好ましい。
接地電極2a,内部接地電極2b,共振器電極3a〜3d,結合電極4,入力端子電極5,出力端子電極6,容量電極7,減衰共振器電極8は、誘電体層1aがセラミック材料からなる場合は、W,Mo,Mo−Mn,Au,Ag,Cu等の金属を主成分とするメタライズ層により形成される。また、誘電体層1aが樹脂系材料からなる場合は、厚膜印刷法,各種の薄膜形成方法,めっき法あるいは箔転写法等により形成した金属層や、このような金属層上にめっき層を形成したもの、例えばCu層,Cr−Cu合金層,Cr−Cu合金層上にNiめっき層およびAuめっき層を被着させたもの,TaN層上にNi−Cr合金層およびAuめっき層を被着させたもの,Ti層上にPt層およびAuめっき層を被着させたもの,Ni−Cr合金層上にPt層およびAuめっき層を被着させたもの等が挙げられる。その厚みや幅は、伝送される高周波信号の周波数や用途等に応じて設定される。
誘電体層1a,接地電極2a,内部接地電極2b,共振器電極3a〜3d,結合電極4,接地電極対向部4a,入力端子電極5,出力端子電極6,容量電極7,減衰共振器電極8の形成は、従来周知の方法を用いればよい。例えば誘電体層1aがガラスセラミックスから成る場合であれば、まずそれら誘電体層1aとなるガラスセラミックスのグリーンシートを準備し、グリーンシート上にスクリーン印刷法によりAg等の導体ペーストを所定形状で印刷塗布して接地電極2a,内部接地電極2b,共振器電極3a〜3d,結合電極4,接地電極対向部4a,入力端子電極5,出力端子電極6,容量電極7,減衰共振器電極8の各電極パターンを形成する。次に、これらの電極パターンが形成されたグリーンシートを重ねて圧着するなどして積層体を作製し、この積層体を850〜1000℃で焼成することにより形成する。その後、外表面に露出している導体層上には、NiめっきおよびAuめっき等のめっき皮膜を形成する。誘電体層1aが有機樹脂材料から成る場合であれば、例えば有機樹脂シート上に接地電極2a,内部接地電極2b,共振器電極3a〜3d,結合電極4,接地電極対向部4a,入力端子電極5,出力端子電極6,容量電極7,減衰共振器電極8の各電極パターン形状に加工したCu箔を転写し、Cu箔が転写された有機樹脂シートを積層して接着剤で接着することにより形成する。
接地電極2aと共振器電極3a〜3dの短絡端とを接続する接続導体は、それらの間に位置する誘電体層1a内に形成された貫通導体または誘電体層1aの端面に形成された端面導体の形態で形成することにより、積層されたそれら誘電体層1aの内部に形成するフィルタ装置の設計自由度が向上するとともに、より小型で高性能なフィルタ装置とすることができる。
このような接続導体となる貫通導体や側面導体は、誘電体層1aがガラスセラミックス等のセラミックスから成る場合には、貫通導体は、例えば前述の製造方法において接地電極2a,内部接地電極2b,共振器電極3a〜3d,結合電極4,接地電極対向部4a,入力端子電極5,出力端子電極6,容量電極7,減衰共振器電極8の各電極パターンを形成する前に、グリーンシートに金型加工やレーザー加工によりあらかじめ形成しておいた貫通孔内に同様の導体ペーストを印刷法等により充填することで形成することができ、端面導体は、例えば共振器電極3a〜3dの電極パターンの短絡端を端面に露出させたグリーンシート積層体を形成した後、同様の導体ペーストをグリーンシート積層体の側面に印刷することにより形成することができる。また、端面導体は、グリーンシートに共振器電極3a〜3dの列の幅程度の貫通孔を形成しておき、共振器電極3a〜3dの電極パターンの短絡端をこの貫通孔に接するように形成した後、グリーンシートの積層前または積層後に導体ペーストを貫通孔の内面に印刷し、または貫通穴に充填して、貫通孔の部分で切断することによっても形成することができる。誘電体層1aが樹脂系材料から成る場合も同様に、グリーンシートに代えて有機樹脂シートを用い、導体ペーストの印刷やめっきにより貫通孔内に貫通導体を形成したり、薄膜法等により側面導体を形成したりすればよい。共振器電極3a〜3dの電極パターンの短絡端を積層体の側面に露出させるには、共振器電極3a〜3dの電極パターンの短絡端がグリーンシート(あるいは有機樹脂シート)の端部に位置するように形成したり、共振器電極3a〜3dの電極パターンを形成したグリーンシート(有機樹脂シート)を積層した後に、共振器電極3a〜3dの電極パターンの短絡端が側面に露出するように積層体を切断したりすればよい。
具体的には、UWBのローバンド規格に用いられるような、通過帯域の中心周波数が3.9GHzのバンドパスフィルタとしてのフィルタ装置は、図7に示すような形態であれば、例えば誘電体層1aとして比誘電率が9.4のガラスセラミックスを用い、接地電極2a,内部接地電極2b,共振器電極3a〜3d,結合電極4,入力端子電極5,出力端子電極6,容量電極7および貫通導体にAgメタライズを用いることにより得られる。比誘電率が9.4のガラスセラミックスは、例えば、ガラス成分としてPbO,B2O3,SiO2,Al2O3,ZnOおよびアルカリ土類金属酸化物を主成分とする結晶化ガラスが50質量%とフィラー成分としてアルミナが50質量%とからなるものを用いればよい。
このとき、誘電体層1aは、厚みを上から順に、400μm,75μm,75μm,350μmとする。接地電極2a・2aは、寸法を3.35mm×5.0mmとし、内部接地電極2bは外寸を3.35mm×5.0mmで内寸(開口の寸法)を2.945mm×3.5mmとする。この開口内に寸法が0.4mm×3.35mmの共振器電極3a,3b,3c,3dを0.155mm,0.135mm,0.155mmの間隔で横並びに整列し、各短絡端を内部接地電極2bに接続して、各開放端と内部接地電極2bとの間隔を0.15mm、共振器電極3aおよび3dと内部接地電極2bとの間隔を0.45mmとなるように配置する。内部接地電極2bと積層体1の上下面の接地電極2a・2aとは、外周部に配列した直径0.1mmの貫通導体で接続する。入力端子電極5は、0.3mm×3.35mmの内部入力端子電極5bを初段の共振器電極3aの開放端側と平面視で0.3mm×3.35mmの範囲で重なるように配置し、0.2mm×0.2mmの外部入力端子電極5aと直径0.1mmの貫通導体で接続する。出力端子電極6も同様に、0.3mm×3.35mmの内部出力端子電極6bを最終段の共振器電極3dの開放端側と平面視で0.3mm×3.35mm重なるように配置し、0.2mm×0.2mmの外部出力端子電極6aと直径0.1mmの貫通導体で接続する。
結合電極4は、2つの0.1mm×1.15mmの対向部(一端部および他端部)の一方の端部を0.99mm×0.1mmの接続部で接続したコの字形とする。2つの結合電極4,4のうちの一方の結合電極4を、2つの対向部がそれぞれ初段の共振器電極3aおよび第3段の共振器電極3cの短絡端側と平面視で0.1mm×1.05mmの範囲で重なり、接続部を初段の共振器電極3aおよび第3段の共振器電極3cの開放端側にして配置し、対向部の他方端部が内部接地電極2bと重なる0.1mm×0.1mmの部分の中心で直径0.1mmの貫通導体により内部接地電極2bに接続する。また、他方の結合電極4を、2つの対向部がそれぞれ第2段の共振器電極3bおよび最終段の共振器電極3dの短絡端側と平面視で0.1mm×1.05mmの範囲で重なり、接続部を第2段の共振器電極3bおよび最終段の共振器電極3dの開放端側にして配置し、対向部の他方端部が内部接地電極2bと重なる0.1mm×0.1mmの部分の中心で直径0.1mmの貫通導体により内部接地電極2bに接続する。
2つの0.15mm×0.6mmの接地電極対向部4a,4aを、それぞれ共振器電極3aの外側および共振器電極3dの外側に、一方および他方の結合電極4,4からそれぞれ0.625mm離間させて、かつ一方および他方の結合電極4,4の対向部とそれぞれ一方端を揃えて平行に配置して内部接地電極2bと重なるようにし、それぞれの他方端を0.625mm×0.1mmの接続部で一方および他方の結合電極4,4の対向部と接続する。
容量電極7は0.2mm×0.4mmおよび0.4mm×0.6mmの2つの矩形を接続した凸型で、内部接地電極2bと0.4mm×0.6mmの範囲で重なり、共振器電極3a,3b,3c,3dの開放端部と平面視で0.2mm×0.25mmの範囲で重なるように配置し、重なる部分の中心で直径0.1mmの貫通導体により接続する。
このような例の本発明のフィルタ装置(実施例1)のフィルタ特性は、図12の線図に実線の特性曲線で示すようなものとなる。また、このような実施例1のフィルタ特性に対して、接地電極対向部4a,4aのみを有さない本発明のフィルタ装置(実施例2)において得られるフィルタ特性は、図12の線図に破線の特性曲線で、また図11の線図に実線で示すようなものとなる。さらに、実施例2のフィルタ装置に対して、結合電極4のみを有さないフィルタ装置(比較例)のフィルタ特性は、図11の線図に破線の特性曲線で示すようなものとなる。図11および図12に示す線図において、縦軸は挿入損失(単位:dB)を、横軸は周波数(単位:GHz)を示す。
図11に示すフィルタ特性から、実施例2の本発明のフィルタ装置のフィルタ特性は、フィルタの通過帯域の高域側に減衰極が形成され、通過帯域より高周波側の減衰量が大きい減衰特性を有することがわかる。そして、図13に示すようなクランク型の結合電極14を有する従来のフィルタ装置において、実施例2と同様の4段の共振器電極とするとともに、隣接する共振器電極ではなく最も離れた初段の共振器電極3aの短絡端と第4段の共振器電極とを結合した場合と同等の減衰特性である。
図12に示すフィルタ特性から、実施例1の本発明のフィルタ装置のフィルタ特性は、実施例2のフィルタ装置のフィルタ特性と比較して、高域側の減衰極をフィルタの通過帯域に近づいている(低周波側にシフトしている)。このことより、通過帯域の高周波側の減衰がより急峻なものとなり、通過帯域の高周波側における減衰特性がより優れたフィルタ装置であることがわかる。
以上のことから、本発明のフィルタ装置は、一端が1つの共振器電極3aの短絡端部と対向するとともに対向する共振器電極3aの短絡端に電気的に接続され、他端が1つの共振器電極3aと短絡端が同じ側である他の共振器電極3cの短絡端部と対向するとともに対向する共振器電極3cの短絡端に電気的に接続された結合電極を有することから、横並びの共振器電極3a・3b,3b・3c,3c・3d間の(容量性の)結合により伝達される信号と、結合電極4による結合電極4と対向する複数の共振器電極3a,3c間の(誘電性の)結合により伝達される信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合うので、フィルタの通過帯域の高域側に減衰極が形成され、通過帯域の高域側の減衰量が増大した優れた減衰特性を有するものであることがわかる。そして、結合電極4が、一端と他端との間で分岐した接地電極2a・2aまたは内部接地電極2bと対向する接地電極対向部4aを有するときには、接地電極対向部4aと接地電極2a・2aまたは内部接地電極2bとの結合が大きくなり、結合電極4のインピーダンスが低くなるので、結合電極4による結合電極4と対向する複数の共振器電極3a,3c間の(誘電性の)結合を強めることができ、高域側の減衰極をフィルタの通過帯域に近づける(低周波側にシフトさせる)ことができる。このことより、通過帯域の高周波側の減衰がより急峻なものとなり、通過帯域の高周波側における減衰特性がより優れたものであることがわかる。
なお、従来のフィルタ装置は、比較例に対してさらに容量電極7を有さない構造である。このような従来のフィルタ装置において、本発明のフィルタ装置(および比較例のフィルタ装置)と同様の周波数に減衰極を有するものとするには、共振器電極3a〜3dを長くしなければならず、フィルタ装置の大きさが大きくなってしまうばかりでなく、減衰極よりさらに高周波側に減衰特性の跳ね上がりがあり、無線LANで使用する帯域に対する減衰帯域において十分に減衰していないフィルタ特性となってしまう。