JP2009158969A - 窒化物半導体厚膜基板 - Google Patents

窒化物半導体厚膜基板 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の窒化物半導体層を含む発光素子構造を成長させるために望ましい窒化物半導体厚膜基板を提供し、ひいてはその基板を用いて優れた特性を有する窒化物半導体発光装置を提供する。
【解決手段】複数の窒化物半導体層を含む発光素子構造を成長させるための窒化物半導体厚膜基板であって、基板は対向する第1と第2の主面を有し、基板の第1主面は3×1018cm-3以上1×1019cm-3以下の高不純物濃度の第1の層領域で形成されており、基板は3×1018cm-3以下1×1017cm-3以上でかつ第1層領域より低い低不純物濃度の第2の層領域をも少なくとも含み、基板の第1主面はその上に前記発光素子構造を成長させるための面であり、発光素子構造の形成後に第1主面の側で部分的に露出される基板の領域が電極を形成するための領域として使用されることを特徴とする。
【選択図】図8

Description

本発明は、窒化物半導体基板に関し、特に複数の窒化物半導体層を含む発光素子構造を成長させるための窒化物半導体厚膜基板に関するものである。
従来から、窒化物半導体は、その特性に鑑みて発光装置やハイパワー装置のために利用または研究されている。たとえば、窒化物半導体を利用して発光装置を作製する場合、その半導体の組成を調整することによって、紫色から橙色までの広い色範囲内で任意の単色光を射出し得る発光装置を得ることができる。近年では、窒化物半導体の特性を利用して、青色発光ダイオードや緑色発光ダイオードの実用化がなされ、また半導体レーザ装置として青紫色半導体レーザが開発されている。窒化物半導体膜を形成する際には、基板としてサファイア、SiC、スピネル、Si、またはGaAsなどの基板が使用される。
たとえば、基板としてサファイアを用いる場合には、GaN膜をエピタキシャル成長させる前に、予め500〜600℃の比較的低温でGaNまたはAlNのバッファ層を形成し、その後に基板を1000〜1100℃の高温に加熱してGaN膜のエピタキシャル成長を行なえば、表面が良好でかつ構造的および電気的に良好な結晶からなるGaN膜の得られることが知られている。また、SiCを基板として使用する場合には、GaN膜のエピタキシャル成長を行なう際に薄いAlN膜をバッファ層として使用すればよいことが知られている。
しかしながら、このようにGaNなどの窒化物半導体以外の基板を使用する場合には、その上に成長させられる窒化物半導体膜との熱膨張係数や格子定数の違いによって、得られる窒化物半導体膜中には多数の結晶欠陥が存在する。それらの欠陥は刃状転位と螺旋転位に分類されるが、合計転位密度は1×109〜1×1010cm-2程度にもなる。これらの欠陥はキャリアをトラップするので膜の電気的特性を損ねることが知られているほか、大電流を流すようなレーザ装置においてはその寿命特性の劣化を招くことが知られている。
したがって、格子欠陥を低減しかつ電気的特性の良好な窒化物半導体膜を得るためには、ハイドライド気相成長法(H−VPE)、高圧合成法、または昇華法などを用いてGaNなどの厚膜を形成し、これを窒化物半導体基板として使用することが試みられている。窒化物半導体厚膜を基板として使用する場合には、その厚膜における欠陥密度の減少と残留キャリア濃度の低下によって電気抵抗が高くなるので、不純物をドーピングして抵抗を下げることが行なわれている。
特開平9−312417号公報 特開平11−1399号公報
しかしながら、従来のようにH−VPE法などでGaN厚膜を成長させる際に所定濃度の不純物をドープするだけでは、得られるGaN厚膜の結晶の質と電気的特性に問題がある(以後、特に断りのない限り厚膜とは20μm以上の厚さを有する膜を意味するものとする)。たとえば、所定の高濃度の不純物をドープして形成したGaN厚膜基板を窒化物半導体レーザ装置に使用する場合、そのレーザ装置のしきい値電圧は低下するものの、しきい値電流密度は逆に増加する傾向にある。またGaN厚膜基板の表面モホロジーも非常に悪くなり、その結晶の質も良好ではない。
他方、所定の低濃度の不純物をドープして形成したGaN厚膜基板を窒化物半導体レーザ装置に使用する場合、GaN厚膜基板の表面モホロジーは良好でレーザ装置のしきい値電流密度も低くなるが、逆にしきい値電圧が増加する傾向になる。このことから、窒化物半導体発光装置の電気的特性を損なわない窒化物半導体基板(たとえば、GaN厚膜基板)が望まれている。このような従来の技術における状況に鑑み、本発明は、複数の窒化物半導体層を含む発光素子構造を成長させるために望ましい窒化物半導体厚膜基板をすることを直接的目的とし、ひいてはその基板を用いて優れた特性を有する窒化物半導体発光装置を提供することを意図している
上述の課題を解決するためには、基板として使用する窒化物半導体厚膜の表面がエピタキシャル成長によって形成される発光素子構造と電気的に良好な状態でコンタクトすることが必要であり、そのエピタキシャル成長の連続性が良好になるように成長条件を適切に制御することが重要である。
本発明によれば、複数の窒化物半導体層を含む発光素子構造を成長させるための窒化物半導体厚膜基板において、この基板は対向する第1と第2の主面を有し、基板の第1主面は3×10 18 cm -3 以上1×10 19 cm -3 以下の高不純物濃度の第1の層領域で形成されており、基板は3×10 18 cm -3 以下1×10 17 cm -3 以上でかつ第1層領域より低い低不純物濃度の第2の層領域をも少なくとも含、基板の第1主面はその上に発光素子構造を成長させるための面であり、発光素子構造の形成後に第1主面の側で部分的に露出される基板領域が電極を形成するための領域として使用されることを特徴としている。
なお、基板の第1主面側で電極を形成するための基板領域は、部分的に露出される基板の第1層領域または第2層領域のいずれであってもよい。
窒化物半導体基板は、n型の導電性を有しているのが好ましい。すなわち、窒化物半導体基板の第1層領域はn型のための導電型決定不純物を含んでいることが好ましい。窒化物半導体基板に含まれる不純物としては、シリコン、ゲルマニウム、酸素、炭素、硫黄、セレンまたはテルルを用いることができる。
窒化物半導体基板内には、8×1018cm-3以下の最も低い不純物濃度を有する層領域が含まれていることが好ましい。また、窒化物半導体基板の第1層領域は10μm以下の厚さを有することが好ましい。
本発明によれば、窒化物半導体厚膜基板を用いて優れた特性を有する窒化物半導体発光装置を提供することができる。
本発明に密接に関連する参考例による窒化物半導体レーザ装置を示す模式的な断面図である。 GaN厚膜基板の成長終端領域における不純物濃度とその基板を含むレーザ装置のしきい値電圧との関係を示すグラフである。 GaN厚膜基板を成長させる際のSiH4導入量とその基板中に含まれる不純物濃度との関係を示すグラフである。 GaN厚膜基板中の不純物濃度とその基板を含むレーザ装置のしきい値電圧との関係を示すグラフである。 GaN厚膜基板中の不純物濃度とその基板を含むレーザ装置のしきい値電流密度との関係を示すグラフである。 GaN厚膜基板中の不純物濃度とその基板の表面粗さとの関係を示すグラフである。 本発明に密接に関連する他の参考例による窒化物半導体レーザ装置を示す模式的な断面図である。 本発明の実施例による窒化物半導体レーザ装置を示す模式的な断面図である。 本発明の他の実施例による窒化物半導体レーザ装置を示す模式的な断面図である。 本発明によるレーザ装置に使用される窒化物半導体基板中の不純物濃度分布の一例を示す図である。 本発明によるレーザ装置に使用される窒化物半導体基板中の不純物濃度分布の他の例を示す図である。 本発明によるレーザ装置に使用される窒化物半導体基板中の不純物濃度分布の他の例を示す図である。 本発明の効果と厚膜基板中の不純物濃度範囲との関係を示す図である。 本発明による窒化物半導体基板中の不純物濃度分布の他の例を示す図である。 本発明による窒化物半導体基板中の不純物濃度分布の他の例を示す図である。 本発明による窒化物半導体基板中の不純物濃度分布の他の例を示す図である。
参考例1)
本発明に密接に関連する参考例1において窒化物半導体の厚膜を成長させる方法としては、H−VPE法、高圧合成法、または昇華法が考えられるが、大面積にわたって膜厚変動なく膜成長させる方法としては、H−VPE法が最も好ましい。本参考例ではサファイア基板上にH−VPE法を用いて成長させたGaNの厚膜を窒化物半導体基板として用いた窒化物半導体発光装置について説明する。
まず、(0001)面を有するサファイア基板を洗浄し、MOCVD(有機金属気相堆積)法を用いて、以下の手順で厚さ約2μmのノンドープGaN膜を下地層として成長させた。すなわち、洗浄されたサファイア基板がMOCVD装置内に導入され、水素(H2)雰囲気中で約1100℃の高温においてクリーニングが行なわれた。その後、比較的低温の600℃において、キャリアガスとしてH2を10l/minの流量で導入しながら、5l/minのNH3と20μmol/minのトリメチルガリウム(TMG)を導入して、厚さ約20nmのGaNバッファ層を成長させた。その後、一旦TMGの供給を停止して再び約1050℃まで昇温した後に、約100μmol/minのTMGを導入して1時間で厚さ約3μmのノンドープGaN膜を成長させた。その後、TMGとNH3の供給を停止して室温まで冷却し、ノンドープのGaN下地層が成長させられたサファイア基板をMOCVD装置から取出した。バッファ層としては、GaNに限られず、トリメチルアルミニウム(TMA)、TMG、およびNH3を選択的に利用してAlN膜またはGaAlN膜が形成されてもよい。
次に、上記方法でサファイア基板上に形成されたノンドープGaN下地層上に厚膜を形成する際に、その厚膜中にクラックが生じないようにするために、約0.2μmの厚さと7μmの幅と10μmの間隔を有するストライプ状の成長抑制膜を形成し、その上にH−VPE法で選択成長(横方向エピタキシャル成長を伴う)を行なって平坦なGaN厚膜が成長させられた。本参考例では、成長抑制膜として、電子ビーム蒸着法(EB法)によって堆積されたSiO2膜をフォトリソグラフィを用いてエッチングしたものが用いられた。
以下において、図1に示されているようなGaN厚膜102のH−VPE法による成長方法を説明する。上述の方法で形成されたストライプ状の成長抑制膜を含むノンドープGaN下地層が成長させられたサファイア基板が、H−VPE装置内へ導入された。N2キャリアガスとNH3をそれぞれ5l/minの流量で導入しながら、基板が約1050℃まで昇温された。その後、基板上に100cc/minのGaClを導入してGaN厚膜102の成長を開始した。GaClは約800℃に保持された金属GaにHClガスを反応させることによって生成された。基板近傍まで単独で配管されているドーピングラインを通して不純物ガスを供給することによって、膜成長中に任意に不純物ドーピングを行なうことができた。本参考例では、膜成長を開始すると同時に200nmol/minのモノシラン(SiH4)を供給(SiH4不純物濃度:約3.8×1018cm-3)して低SiドープGaN層領域102bを成長させ、膜成長が終了する3分前にSiH4の流量を500nmol/min(SiH4不純物濃度:約8.0×1018cm-3)に増大させて高SiドープGaN層領域102aを約5μmの厚さに成長させた。
なお、Siのドーピングに関してはSiH4に限られず、モノクロロシラン(SiH3Cl)、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、またはトリクロロシラン(SiHCl3)などの他の原料を使用してもよい。上記方法で3時間の膜成長が行なわれ、合計厚さが約350μmのGaN厚膜が成長させられた。その後、研磨によってサファイア基板を除去し、GaN厚膜基板102が得られた。
上述のようにして得られたGaN厚膜基板102上に、MOCVD法によって発光素子構造が形成された。以下、GaN厚膜基板102上に青紫色レーザ素子構造を形成した例について説明する。
まず、GaN厚膜基板102がMOCVD装置内に導入され、N2とNH3をそれぞれ5l/minの流量で導入しながら温度が約1050℃まで上げられた。温度が約1050℃に達すれば、H2のキャリアガスの下で、100μmol/minのTMGと10nmol/minのSiH4を導入して、n型GaNバッファ層103を約4μmの厚さに成長させた。その後、TMGの流量を50μmol/minに調整し、40μmol/minのTMAを導入して、n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層104を0.5μmの厚さに成長させた。その後、TMAの供給を停止し、TMGの流量を100μmol/minに調整して、n型GaN光伝播層105を0.1μmの厚さに成長させた。
その後、TMGの供給を停止して、キャリアガスとしてのH2をN2に代えて、700℃まで降温し、インジウム原料として10μmol/minのトリメチルインジウム(TMI)を導入するとともに、15μmol/minのTMGを導入し、厚さ4nmのIn0.05Ga0.95N障壁層(図示せず)を成長させた。その後、TMIの供給量を50μmol/minに増大させ、厚さ2nmのIn0.2Ga0.8N量子井戸層(図示せず)を成長させた。このような障壁層と井戸層の形成が交互に繰返され、4層の障壁層と3層の井戸層を含む多重量子井戸(MQW)層106を形成した。MQW層106の形成が終了すれば、TMIとTMGの供給を停止し、再び温度が1050℃まで上げられ、キャリアガスを再びN2からH2に代えて、50μmol/minのTMG、30μmol/minのTMA、およびp型ドーピング原料としての10nmol/minのビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を供給し、厚さ20nmのp型Al0.2Ga0.8Nキャリアブロック層107を成長させた。その後、TMAの供給を停止し、TMGの供給量を100μmol/minに調整し、厚さ0.1μmのp型光伝播層108を成長させた。その後、TMGの供給量を50μmol/minに調整し、40μmol/minのTMAを導入し、厚さ0.4μmのp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層109を成長させ、最後にTMGの供給量を100μmol/minに調整してTMAの供給を停止し、厚さ0.1μmのp型GaNコンタクト層110の成長を行なって発光素子構造の成長を終了した。その後、TMGとCp2Mgの供給を停止して室温まで冷却し、厚膜基板102上に形成された発光素子構造をMOCVD装置から取出した。
レーザ素子構造に含まれる膜の最外表面の表面粗さの平均値Raは約8nmであり、良好な平坦性を示していた。その後、ドライエッチング装置を用いて、p型GaNコンタクト層110を幅5μmのストライプ状に残してp型Al0.1Ga0.9Nガイド層109までエッチングを行なって、光導波路を形成した。その後、p型GaNコンタクト部110上にAu/Pd電極111を形成し、GaN厚膜基板102の裏面上にAl/Ti電極101を形成した。最後に、劈開またはドライエッチング法を用いて共振器長が約1mmになるように加工し、ミラー端面を形成した。
以上のようにして、図1に示されているように青紫色の発光波長を有するレーザ装置が窒化物半導体を利用して作製することができる。本参考例によって作製されたレーザ装置は、発振のために必要とされる約5Vのしきい値電圧と1kA/cm2のしきい値電流密度を有し、それらのしきい値近傍の条件の下における約1000時間の寿命試験の結果では特性劣化は見られなかった。なお、参考例1ではサファイア基板上にGaN厚膜102を成長させた後に、そのサファイア基板を剥離してからGaN厚膜基板102上に窒化物半導体発光素子構造が形成されたが、サファイア基板を剥離することなくGaN厚膜102上に窒化物半導体発光素子構造を形成した後にそのサファイア基板を剥離してもよいことは言うまでもない。また、GaN厚膜基板だけでなく、他の窒化物半導体(AlxGayIn1-x-yN:0≦x≦1、0≦y≦1)からなる厚膜基板を用いても本参考例1と同様の効果が得られる。さらに、窒化物半導体構成元素のうちで窒素元素の一部(10%程度以下)を、P、As、またはSbで置換した材料を厚膜基板に用いても参考例1と同様の効果が得られる。
参考例2)
本発明に密接に関連する参考例2による複数のレーザ装置においては、GaN厚膜基板をH−VPEで形成する際のSiH4ドーピング濃度が装置ごとに種々に変えられたが、その他の製造条件は参考例1の場合と同様であった。
まず、参考例1と同様の方法によってストライプ状の成長抑制膜を含むノンドープGaN下地層が形成されたサファイア基板をH−VPE装置内に導入し、N2キャリアガスとNH3をそれぞれ5l/minの流量で導入しながら、基板を約1050℃まで昇温した。その後、基板上に100cc/minのGaClを導入してGaN厚膜102の成長を開始した。この膜成長開始時において、不純物のドーピング濃度が5×1017cm-3、1×1018cm-3、3×1018cm-3、5×1018cm-3、および8×1018cm-3になるようにSiH4ガスを供給してSiドープGaN膜を成長させ、全厚が350μmのGaN膜成長が終了する3分前からSiH4流量を種々の割合で増大させて成長終端領域102aにおけるドーピング濃度が高められた。ただし、いずれの場合も、成長終端領域102aにおける濃度はほぼ2×1019cm-3以下になるように設定された。その後、参考例1と同様の方法によってレーザ装置が作製された。
図2のグラフにおいて、参考例2で作製された種々レーザ装置のしきい値電圧の値が示されている。すなわち、このグラフにおいて縦軸はしきい値電圧を示し、横軸はGaN厚膜基板の成長終端領域102aにおける不純物濃度を示している。また、参照番号201;202;203;204;および205はGaN厚膜基板の成長開始時にSiH4ドーピング濃度がそれぞれ5×1017cm-3、1×1018cm-3、3×1018cm-3、5×1018cm-3、および8×1018cm-3に設定された場合に対応している。
図2に示されているように、GaN厚膜基板102の成長終端領域102aの不純物濃度が1×1018cm-3以上の場合に、しきい値電圧の低下が観測される。ただし、この効果が顕著に表われるのは、成長終端領域102aの不純物濃度が3×1018cm-3以上の範囲である。他方、厚膜基板に過剰の不純物濃度をドーピングすれば、その上に成長させられるエピタキシャル層内で結晶欠陥が増加するので、好ましくは厚膜基板の成長終端領域102aにおける不純物濃度は3×1018cm-3以上で1×1019cm-3以下の範囲内にあることが好ましい。
また、GaN厚膜基板102内で成長終端領域102aを除いた他の領域102bが8×1018cm-3以下の不純物濃度を有する場合に、高不純物濃度の成長終端領域102aによるしきい値電圧の低下割合の効果が顕著になる。ただし、成長終端領域102aを除いたGaN厚膜基板内の不純物濃度が3×1018cm-3を超えればしきい値電流密度の増加する傾向が表われ(図5参照)、逆に1×1017cm-3以下であれば基板自体の抵抗が大きくなりすぎるので、GaN厚膜基板102の成長端領域102aを除く他の領域102bの不純物濃度は3×1018cm-3以下で1×1017cm-3以上の範囲にあることが好ましい。
なお、この参考例2では不純物としてSiをドーピングした例について説明されたが、n型導電性を生じさせる他の不純物を用いてもSiの場合と同様の傾向を示すことがわかっている。
(比較例1)
比較例1による複数のレーザ装置においても、GaN厚膜基板をH−VPEで形成する際のSiH4ドーピング濃度が装置ごとに種々に変えられた。しかし、比較例1は、GaN厚膜基板の成長開始時に設定されたドーピング濃度がその成長終了時まで一定に維持されたことにおいて参考例1および2と異なっている。
すなわち、H−VPE法によるGaN厚膜基板の成長中に、SiH4流量が10nmol/minから1000nmol/minの範囲内で種々の一定値に維持された。こうして、不純物濃度の異なる複数種類のGaN厚膜基板が形成され、その基板上に作製されたレーザ素子構造の特性が測定された。図3に示されているように、SiH4供給量とGaN厚膜基板中の不純物濃度は比例関係にあり、SiH4供給量が1000nmol/minのときの不純物濃度は、1.6×1019cm-3であった。こうして形成されたGaN厚膜基板内の不純物濃度とその上に形成されたレーザ素子構造のしきい値電圧との関係が図4に示され、基板内の不純物濃度としきい値電流密度との関係が図5に示され、そして不純物濃度と基板の平均表面粗さとの関係が図6に示されている。
図4に示されているように、GaN厚膜基板中の不純物濃度が増大するに従って、得られるレーザ装置の発振しきい値電圧が低下している。この理由の1つは、GaN厚膜基板の抵抗が不純物の影響で低下することによる。しかし、さらに重要な理由として、GaN厚膜基板とその上にMOCVDで形成されるレーザ素子構造の最下層とのコンタクト領域で生じるショットキ障壁が低減することによってしきい値電圧が低くなることが、本発明者たちの電子線励起電流法(EBIC法)による観測から明らかになっている。レーザ発振しきい値電圧は、GaN厚膜基板の不純物濃度が約5×1018cm-3以上の範囲においてほぼ5V程度の値に収束している。他方、図5を参照すれば、GaN厚膜基板の不純物濃度が約3×1018cm-3以上になれば、レーザ発振しきい値電流密度が増大する傾向を示す。これは、図6に示されているようにGaN厚膜基板中の不純物濃度が約3.2×1018cm-3を超えるに伴って、基板の平均表面粗さRaが増大し始めることに起因していると考えられる。すなわち、基板表面粗さが増大すれば、その上に形成されるレーザ素子構造に含まれる各層界面の凹凸が増大し、レーザ光を伝播する伝播層105内での光の分散が増大し、このことがしきい値電流密度の増大を生じさせると考えられる。なお、参考例1および2では、GaN厚膜基板102の成長終端領域102aのみにおいて不純物濃度を高めることによって、上記問題を回避できている。
たとえば、図4、図5、および図6の中で、破線は参考例1で作製されたレーザ装置における特性値を示している(すなわち図1において、高SiドープGaN領域102aの不純物濃度が約8.0×1018cm-3で、低SiドープGaN領域102bの不純物濃度が約3.8×1018cm-3の場合)。比較例1のように全厚にわたって一定の不純物濃度を有するGaN厚膜基板を用いたレーザ装置においては、参考例1のレーザ装置に比べて同等以上の特性を実現し得るような基板中の適切な一定不純物量が存在しないことがわかる。
参考例3)
本発明に密接に関連する参考例3では、参考例1における各層の導電型が反転されたレーザ装置が作製された。すなわち、本参考例では参考例1に類似してH−VPE法によってGaN厚膜基板が形成されたが、不純物としては有機金属のビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)が導入された。その膜成長終了の3分前から不純物Mgの導入量を増大させ、全厚350μmでp型導電性を示すGaN厚膜が形成された。得られたGaN厚膜基板はMOCVD装置内に導入され、p型GaNバッファ層、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、p型伝播層、InGaN−MQW活性層、キャリアブロック層、n型伝播層、n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、およびn型コンタクト層を順次に成長させた。その後、参考例1と同様のプロセスを経てレーザ装置が作製された。
参考例3で作製されたレーザ装置においては、p型厚膜基板の成長終端領域の不純物濃度を増大させることにより、3〜5Vのしきい値電圧の低下が確認された。しかし、p型基板を用いた場合には、その不純物濃度をどのように変えてもしきい値電圧は20V以上であり、参考例1のようにn型GaN厚膜基板を使用した場合ほど好ましい効果は表われなかった。これは、p型基板自体の抵抗値がn型基板に比べて高いので、良好なコンタクト界面が形成されにくいからであると考えられる。
参考例4)
本発明に密接に関連する参考例4では、参考例1と同様に、H−VPE法でGaN厚膜成長を開始すると同時に所定流量のSiH4を導入してn型のGaN厚膜を成長させた。ただし、その膜成長終了の3分前から不純物をSiH4からゲルマニウム(Ge)または酸素(O)に変えるとともに成長終端領域の不純物濃度を増大させ、厚さ350μmで不純物濃度変化を含むn型GaN厚膜が形成された。得られたGaN厚膜基板をMOCVD装置に導入し、以後は参考例1と同様の方法によってレーザ装置が作製された。
こうして得られた参考例4のレーザ装置においては、基板中の不純物濃度を変化させない比較例1の方法で作製したレーザ装置と比べて、しきい値電圧における1〜20V程度の低減が確認された。また、基板中の不純物濃度を適切に制御することによって、しきい値電圧としきい値電流密度も、それぞれ5V程度と1kA/cm2程度の低い値まで低減させることができた。
参考例5)
本発明に密接に関連する参考例5は、図7に示されているように厚膜基板102の成長開始領域102cと成長終端領域102aの2ヶ所に高不純物濃度領域が設けられたことのみにおいて参考例1と異なっている。
この参考例5のレーザ装置は、厚膜基板102中の不純物濃度を適正化することによって、約5Vのしきい値電圧と約1kA/cm2のしきい値電流密度で発振し、長寿命の特性を示した。なお、電極101が接合される高SiドープGaN領域102cの不純物濃度は、エピタキシャル成長の下地となる高SiドープGaN領域102aの不純物濃度以下であることが好ましい。図10において、この参考例5に使用された窒化物半導体基板の厚さ方向における不純物濃度分布の一例が示されている。
成長開始領域102cと成長終端領域102aとの両方の不純物濃度を高めることによって、電極101から発光部分106までのキャリアの流れがスムースになって、しきい値電圧が低減されると考えられる。
(実施例
図8と図9は、本発明の実施例によるレーザ装置を模式的な断面図で示している。この実施例によるレーザ装置も基本的には参考例1と同様のプロセスで作製されるが、参考例1に比べて電極101の位置が変更されている点において異なっている。すなわち、図8のレーザ装置では、厚膜基板102上にレーザ素子構造が形成された後に、反応性イオンエッチングによって厚膜基板102中の高不純物濃度領域102aの一部が露出され、その露出部上にn型用のAl/Ti電極101が形成されている。他方、図9のレーザ装置では、厚膜基板102中の低不純物濃度領域102bの一部が同様なエッチングによって露出され、その露出部上にAl/Ti電極101が形成されている。図8と図9に示されているようないずれのレーザ装置も、参考例1のレーザ装置とほぼ同等のしきい値電圧およびしきい値電流密度を有するとともに良好な寿命特性を有していた。特に、図8のレーザ装置においては、低SiドープGaN領域102bに必ずしも不純物をドーピングする必要がなく、このことに起因して厚膜基板102の表面平坦性が良好になってしきい値電流密度の低減が容易であった。
上述の実施例および参考例においては、結晶成長方法としてH−VPE法およびMOCVD法が利用されたが、他の厚膜成長法が用いられてもよいし、レーザ素子構造はMBE(分子線エピタキシ)法などで形成されてもよい。しかし、H−VPE法によって形成された窒化物厚膜基板を使用した場合には、上述の実施例で述べられた効果が特に顕著に確認された。この理由としては、H−VPEによって膜成長する際に窒化物半導体厚膜基板中に取込まれる塩素(Cl)が本発明の効果に寄与しているのであろうと考えられる。
また、使用する原料もTMG、TMA、TMI、NH3、およびCp2Mgに限られず、所望の化合物層を成長させ得るどのような原料をも用いることができる。さらに、n型GaN厚膜基板のための不純物もSi、O、またはGeに限られず、炭素(C)、セレン(Se)、硫黄(S)、またはテルル(Te)などをも用いることができる。
さらに、以上の実施例では高不純物濃度領域102aの厚さは約5μmにされたが、厚膜基板表面の不所望な凹凸を生じない程度の厚膜であればよい。適切な高不純物濃度領域102aの厚さは、不純物濃度に依存して変化するが、本発明の効果を得るためには50μm以下であることが望ましく、10μm以下で2nmの範囲内にあるのがさらに望ましいことが実験結果から明らかになっている。また、窒化物厚膜基板を成長させる際に、その表面領域(約50nm以下の厚さ)に高ドープ(δドープ)する方法も効果的であった。
11と図12は、本発明の効果が確認された他の窒化物半導体基板の厚さ方向における不純物濃度プロファイルを示している。図11においては、GaN厚膜基板102中に不純物濃度勾配の異なる3つの領域が存在し、エピタキシャル成長でレーザ素子構造が形成される面に向かって不純物濃度が高くなっている場合が示されている。エピタキシャル成長が行なわれる面側の不純物濃度領域を第1の領域とすれば、その第1領域の不純物濃度はその下方に位置する第2の領域の不純物濃度よりも高い関係にある。
12のGaN厚膜基板102はエピタキシャル成長が行なわれる側から順にA領域、B領域、C領域、およびD領域の4つの不純物濃度領域を含み、C領域が最も高い不純物濃度を有している。エピタキシャル成長が行なわれる面側のA領域は、その下方に位置するB領域とD領域に比べて高い不純物濃度を有している。
11と図12に示された以外の不純物濃度プロファイルを有する窒化物半導体基板の場合であっても、エピタキシャル成長の行なわれる面側から順にA領域、B領域、C領域などとするときに、A領域の下方に、より不純物濃度の低い領域が存在する場合に本発明の効果が得られた。
また、以上の実施例では発光装置としてレーザ装置について説明されたが、本発明は発光ダイオード(LED)装置を作製する場合においてもその駆動電圧の低減と装置表面の平坦性の向上を図ることができる。
(本発明の効果と不純物濃度範囲の関係についての考察)
前述の本発明に密接に関連する参考例1と2および比較例1から認識された本発明の効果と不純物濃度範囲との関係について、図13を参照しつつ説明する。図13において、第I領域と第II領域の不純物濃度範囲が示されている。ここで、第I領域は、しきい値電圧の減少効果が得られる不純物濃度範囲を表わしている。比較例1で述べられたように、しきい値電圧の減少効果は、不純物の添加によって基板と発光素子構造との間のコンタクト領域で生じるショットキ障壁が減少したことによる。この効果が表われる不純物濃度は、1×1018/cm3以上であった。特に、不純物濃度が3×1018/cm3以上で1×1019/cm3以下の範囲内にある場合に、しきい値電圧減少効果が顕著に表われた。ただし、不純物濃度が1×1019/cm3を超えれば、結晶欠陥が増大するので好ましくなかった。
他方、第II領域は、しきい値電流密度の減少効果が得られる不純物濃度範囲を表わしている。比較例1で述べられたように、しきい値電流密度の減少効果は、不純物濃度を適正化することによって窒化物半導体基板の表面粗さが改善され、発光素子構造の光伝播層105内での光分散が減少したことによる。この効果が表われる不純物濃度は、8×1018/cm3以下であった。特に、不純物濃度が1×1017/cm3以上で3×1018/cm3以下の範囲内にある場合に、しきい値電流密度減少効果が顕著に表われた。ただし、不純物濃度が1×1017/cm3未満になれば、電気抵抗が増大するので好ましくなかった。
上記結果からして、窒化物半導体基板が第I領域と第II領域に該当する互いに異なる不純物濃度を有する2以上の層領域を含む場合に、その基板を用いて作製された発光装置(レーザ装置)は、低しきい値電圧と低しきい値電流密度の効果を容易に満足することがわかる。ただし、低しきい値電圧の効果を得るためには、第I領域に接して発光素子構造が形成されなければならない。なぜならば、基板と発光素子構造との間のコンタクト領域に生じるショットキ障壁が減少したことによるしきい値電圧の減少効果だからである。
したがって、窒化物半導体基板が異なる不純物濃度を有する複数の層領域を含んでいない場合(すなわち、一定の均一な不純物濃度を有する場合)、その基板を用いて作製された発光装置(レーザ装置)は、低しきい値電圧と低しきい値電流密度の効果を同時に満たすことができない(比較例1参照)。
上述の発明の効果は、しきい値電圧の減少効果としきい値電流密度の減少効果の説明のみに留まっている。しかしながら、本発明者らによるさらなる検討の結果、窒化物半導体基板が異なる2以上の不純物濃度層領域を含むことによって、前述の効果のみならずその基板と発光素子構造との間の格子歪みを緩和させる働きのあることが新たにわかった。この格子歪みの緩和効果について、図1、図4、および図5を参照して説明する。ここで説明の簡略化のために、窒化物半導体基板が不純物濃度の高いA層領域とそれよりも不純物濃度の低いB層領域との2層領域のみを含むと仮定する。なお、窒化物半導体基板が異なる3以上の不純物濃度層領域を含む場合にも下記と同様に説明することができる。
参考例1のレーザ装置(図1)においては、A領域としての高SiドープGaN領域102a(SiH4不純物濃度:8.0×1018/cm3)とB領域としての低SiドープGaN領域102b(SiH4不純物濃度:3.8×1018/cm3)からなる窒化物半導体基板102上に、発光素子構造103〜111が形成されている。
図4は、比較例1における窒化物半導体基板中の均一な不純物濃度と、その基板を含んで作製された発光装置(レーザ装置)のしきい値電圧との関係を示している。図5は、比較例1における窒化物半導体基板中の均一不純物濃度と、その基板を含んで作製された発光装置(レーザ装置)のしきい値電流密度との関係を示している。
図4と図5における破線は、参考例1のレーザ装置で得られた電気特性を示している。図4中の破線が示すしきい値電圧値は、全体がA領域とおなじ不純物濃度(8.0×1018/cm3)を有する基板を含む発光装置(レーザ装置)のそれと比較して少し低くなっている。また、図5中の破線が示すしきい値電流密度も、全体がB領域と同じ不純物濃度(3.8×1018/cm3)を有する基板を含む発光装置と比較して低くなっている。これらのことから、A領域とB領域の異なる不純物濃度領域を有する窒化物半導体基板を用いた発光装置(レーザ装置)は、A領域による低しきい値電圧効果とB領域による低しきい値電流密度効果の単なる足し合わせでないことがわかる。
このことは、A領域とB領域のような異なる不純物濃度領域が含まれることによって、窒化物半導体基板と発光素子構造との間の格子歪みが緩和されたことによると考えられる。この格子歪みを緩和させる効果は、不純物濃度に比例して表われ、不純物濃度が1×1018/cm3以上で顕著になることが本発明者らによって明らかにされた。ただし、不純物濃度が1×1019/cm3を超えれば基板の結晶性が低下するので、格子歪みの緩和効果が得られる好ましい不純物濃度は1×1018/cm3以上で1×1019/cm3以下の範囲内にある。
格子歪みの緩和効果によってしきい値電圧としきい値電流密度がさらに低減できた理由について、以下において説明する。
図1の窒化物半導体レーザ装置は、B領域/A領域/発光素子構造の順で積層されている。基板102に含まれるA領域102aとB領域102bは、互いに異なる不純物濃度を有しているが、これらのいずれもが主にGaNからなっている。他方、発光素子構造は同様に窒化物半導体で構成されているが、GaN以外にそれより格子定数の小さいAlGaNや格子定数の大きいInGaNなどからなる層をも含んでいる。したがって、基板(A領域とB領域を含む)と発光素子構造との間には、格子不整合による格子歪みが発生することが考えられる。
ところが、A領域102aはB領域102bよりも高い不純物濃度を有しているので、前述のように格子歪みを緩和させる働きが強く、発光素子構造とB領域との間の格子歪みがA領域を介して緩和される。この格子歪みの緩和は、発光素子構造中の結晶欠陥減少に伴う低しきい値電流密度の効果と、結晶欠陥に起因するキャリアトラップ減少に伴う低しきい値電圧の効果とを与える。
したがって、図4と図5に示されているように、A領域のみまたはB領域のみからなる窒化物半導体基板を用いた発光装置に比べて、異なる2つの不純物濃度のA領域とB領域の両方を含む窒化物半導体基板を用いた発光装置の方が、そのしきい値電圧としきい値電流密度の値が低くなる。
すなわち、窒化物半導体基板が少なくとも2以上の異なる不純物濃度領域を含むことによって、その基板上と発光素子構造との格子歪みが緩和され、しきい値電圧としきい値電流密度が低くなることがわかる。
次に、図12に示された窒化物基板による格子歪みの緩和効果を説明する。図12においては、窒化物半導体基板102が4つの異なる不純物濃度領域から構成されている。これら4つの異なる不純物濃度領域について、エピタキシャル成長が行なわれる面側から順にA領域、B領域、C領域、およびD領域とする。すなわち、A領域に接するように発光素子構造(レーザ素子構造)が形成される。ここで、A領域とC領域は図13の第I領域に相当し、かつB領域とD領域は第II領域に相当すると仮定する。この仮定の下で、図12の窒化物半導体基板に含まれる複数の不純物濃度領域が発光装置(レーザ装置)に与える効果について説明する。
A領域は、その不純物濃度範囲が第I領域に属するので、発光素子構造との間のコンタクト領域で生じるショットキ障壁を減少させ、発光装置に対して低しきい値電圧の効果をもたらす。また、A領域は、B領域やD領域に比べて高い不純物濃度を有するので、窒化物半導体基板と発光素子構造との間の格子歪みを緩和する緩衝層として作用する。B領域とD領域は、これらの不純物濃度範囲が第II領域に属するので、発光装置に対して低しきい値電流密度の効果をもたらす。C領域は、その不純物濃度範囲が第I領域に属するけれども発光素子構造と直接接触していないので、発光装置に対して低しきい値電圧の効果をほとんどもたらさない。しかし、C領域はその他の領域に比べて最も高い不純物濃度を有しているので、窒化物半導体基板と発光素子構造との間の格子歪みを緩和する緩衝層として大きく寄与し得る。このようにして、図12の窒化物半導体基板を用いた発光装置においては、その電気的特性が向上させられ得る。
次に、窒化物半導体基板に含まれる複数の異なる不純物濃度領域が図13に示された第III領域(不純物濃度が1×1018/cm3以上で8×1018/cm3以下の範囲内)に属する場合について説明する。図13に示されているように、第III領域は、第I領域と第II領域の両方の効果が得られる不純物濃度範囲を表わしている。厳密に言えば、第III領域のうちで3×1018/cm3以上で8×1018/cm3以下の範囲内では第I領域による効果が優勢であり、1×1018/cm3以上で3×1018/cm3以下の範囲内では第II領域による効果が優勢である。なお、基板全体が一定の均一な不純物濃度を有する場合(不純物濃度領域が1つの場合)、しきい値電圧としきい値電流密度の効果が最も効率よく得られる不純物濃度は3×1018/cm3である。しかしながら、この場合には基板が複数の異なる不純物濃度領域を有しないので、上述の格子歪みの緩和効果が得られない。また、前述のように、高不純物濃度領域の厚さは50μm以下であることが望ましく、さらに望ましくは10μm以下であるので、均一不純物濃度の基板自体の厚さも制約を受けて50μm以下または10μm以下でなければならなくなる。
次に、窒化物半導体基板に含まれる複数の異なる不純物濃度領域のいずれもが第III領域に属する場合について、図14を参照しつつ説明する。図14は、窒化物半導体基板中の不純物濃度分布を表わしている。複数の不純物濃度の領域について、エピタキシャル成長が行なわれる面側から順に、A領域およびB領域とする。すなわち、A領域に接するように発光素子構造(レーザ素子構造)が形成される。図13と図14からわかるように、A領域もB領域も第III領域に相当している。
14の窒化物半導体基板を構成している複数の不純物濃度領域が発光装置に与える効果は以下のとおりである。まず、A領域はその不純物濃度が第III領域に属しているので、しきい値電圧の減少効果としきい値電流密度の減少効果の両方が期待される。しかし、A領域は発光素子構造と接していることと、B領域よりも高い不純物濃度を有していることから、主にしきい値電圧の減少効果を生じるように作用する。また、A領域はB領域よりも高い不純物濃度を有していることから、窒化物半導体基板と発光素子構造との間の格子歪みを緩和する緩衝層としても寄与し得る。他方、B領域も、その不純物濃度範囲が第III領域に属しているので、しきい値電圧の減少効果としきい値電流密度の減少効果の両方が期待される。しかし、B領域はA領域よりも低い不純物濃度を有しているので、主にしきい値電流密度の減少効果を生じるように作用する。
次に、窒化物半導体基板が4つの異なる不純物濃度領域から構成されている場合について、図15を参照しつつ説明する。図15は、窒化物半導体基板中の不純物濃度分布を表わしている。複数の不純物濃度の領域について、エピタキシャル成長が行なわれる面側から順に、A領域、B領域、C領域、およびD領域とする。すなわち、A領域に接するように発光素子構造(レーザ素子構造)が形成される。ここで、A領域は第III領域に相当し、B領域とD領域は第II領域に相当し、そしてC領域は第I領域に相当している。
15の窒化物半導体基板を構成している複数の不純物濃度領域が発光装置に与える効果は以下のとおりである。まず、A領域は、その不純物濃度が第III領域に属しているので、しきい値電圧の減少効果としきい値電流密度の減少効果の両方が期待される。しかし、A領域は発光素子構造と接しているので、主にしきい値電圧の減少効果を生じるように作用する。また、A領域はB領域よりも高い不純物濃度を有しているので、窒化物半導体基板と発光素子構造との間の格子歪みを緩和する緩衝層としても寄与し得る。他方、B領域とD領域は、これらの不純物濃度が第II領域に属しているので、発光装置に対してしきい値電流密度の減少効果を生じるように作用する。また、C領域はその不純物濃度範囲が第I領域に属しているが、発光素子構造と直接接触していないので、発光素子構造との間のショットキ障壁の減少による低しきい値電圧の効果よりも、その他の不純物領域に比べて最も高い不純物濃度を有することに起因して窒化物半導体と発光素子構造との間の格子歪みを緩和する緩衝層として大きく寄与し得る。このようにして、図15の窒化物半導体基板を用いた発光装置においては、その電気的特性が向上させられ得る。
次に、窒化物半導体基板が連続的に変化する不純物濃度分布を有する場合について、図16を参照しつつ説明する。ここで、図16で示された連続的な不純物濃度のプロファイルを適当な4つの領域に分割して説明する。複数の不純物濃度の領域について、エピタキシャル成長が行なわれる面側から順に、A領域、B領域、C領域、およびD領域とする。すなわち、A領域に接するように発光素子構造(レーザ素子構造)が形成される。ここで、A領域とC領域は第III領域に相当し、B領域は第I領域に相当し、そしてD領域は第II領域に相当する。
16の窒化物半導体基板を構成している複数の不純物濃度領域が発光装置に与える効果は以下のとおりである。まず、A領域は、その不純物濃度範囲が第III領域に属しているので、しきい値電圧の減少効果としきい値電流密度の減少効果の両方が期待される。しかし、A領域は発光素子構造と接しているので、主にしきい値電圧の減少効果を生じるように作用する。また、A領域は、B領域との境界から発光素子構造との界面に向けて不純物濃度が減少しているので、不純物添加による基板と発光素子構造との界面近傍における結晶性の劣化を軽減するようにも作用し得る。さらに、不純物濃度を連続的に変化させることによって、たとえば図14や図15に示されているように不純物濃度を不連続(急峻)に変化させた場合に比べて、A領域とB領域との間の境界領域における抵抗を低く抑えることができる。
他方、B領域は、その不純物濃度範囲が第I領域に属しているが、発光素子構造と直接接触していないので、しきい値電圧の減少効果よりも、その他の不純物領域に比べて最も高い不純物濃度を有していることに起因して、窒化物半導体基板と発光素子構造との間の格子歪みを緩和する緩衝層として寄与する。また、不純物濃度を連続的に変化させることによって格子歪みを連続的に分散させることができるので、その格子歪み緩和効果が効率よく発揮され得る。
C領域はその不純物濃度範囲が第III領域に属しているので、しきい値電圧の減少効果としきい値電流密度の減少効果の双方が期待される。しかし、C領域は発光素子構造と直接接触していないので、しきい値電圧の減少効果よりもしきい値電流密度の減少効果を生じるように作用する。また、不純物濃度を連続的に変化させることによって、B領域とC領域との間の境界領域における抵抗を低く抑えることができる。D領域は、その不純物濃度範囲が第II領域に属しているので、発光装置に対してしきい値電流密度の減少効果を生じるように作用する。このようにして、図16の窒化物半導体基板を用いた発光装置においては、その電気的特性が向上させられ得る。
なお、前述の実施例において、窒化物半導体厚膜基板上に発光素子構造を形成する場合に、その基板の表面が研磨された後に用いられてもよいことは言うまでもない。
以上のように、本発明によれば、窒化物半導体厚膜基板を用いて優れた特性を有する窒化物半導体発光装置を提供することができる。
101 Al/Ti電極、102 GaN厚膜基板、102a 高SiドープGaN領域、102b 低SiドープGaN領域、102c 高SiドープGaN領域、103 n型GaNバッファ層、104 n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、105 n型GaN光伝播層、106 多重量子井戸層、107 p型Al0.2Ga0.8Nキャリアブロック層、108 p型光伝播層、109 p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、110 p型GaNコンタクト層、111 Au/Pd電極。

Claims (8)

  1. 複数の窒化物半導体層を含む発光素子構造を成長させるための窒化物半導体厚膜基板であって、
    前記基板は対向する第1と第2の主面を有し、
    前記基板の第1主面は、3×10 18 cm -3 以上1×10 19 cm -3 以下の高不純物濃度の第1の層領域で形成されており、
    前記基板は、3×10 18 cm -3 以下1×10 17 cm -3 以上でかつ前記第1層領域より低い低不純物濃度の第2の層領域をも少なくとも含み、
    前記基板の第1主面はその上に前記発光素子構造を成長させるための面であり、
    前記発光素子構造の形成後に前記第1主面の側で部分的に露出される前記基板の領域が電極を形成するための領域として使用されることを特徴とする窒化物半導体厚膜基板
  2. 前記電極を形成するための前記基板領域は部分的に露出される前記第1層領域であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体厚膜基板。
  3. 前記電極を形成するための前記基板領域は部分的に露出される前記第2層領域であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体厚膜基板。
  4. 前記窒化物半導体基板はn型の導電性を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の窒化物半導体厚膜基板
  5. 前記窒化物半導体基板の前記第1層領域はn型のための導電型決定不純物を含んでいることを特徴とする請求項に記載の窒化物半導体厚膜基板
  6. 前記窒化物半導体基板が含む不純物は、シリコン、ゲルマニウム、酸素、炭素、硫黄、セレンおよびテルルからなるグループから選択されたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の窒化物半導体厚膜基板
  7. 前記窒化物半導体基板内には、8×1018cm-3以下の最も低い不純物濃度を有する層領域が含まれていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の窒化物半導体厚膜基板
  8. 前記窒化物半導体基板の前記第1層領域は10μm以下の厚さを有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の窒化物半導体厚膜基板
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