JP2009157322A - 液晶表示装置 - Google Patents

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【課題】温度・湿度に依存した表示性能の変動が軽減されたインセルタイプの液晶表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも第1の偏光子(14a又は14b)と液晶セル(LC)とを有する液晶表示装置であって、前記液晶セル(LC)内に光学補償層(11a、11b)を有し、及び前記液晶セル(LC)と前記偏光子(14a又は14b)との間に、少なくとも1種のラクトン環含有重合体を主成分として含む熱可塑性樹脂フィルム(15a、15b)を有することを特徴とする液晶表示装置である。
【選択図】図1

Description

本発明はインセルタイプの液晶表示装置に関する。
液晶セルの複屈折性をより正確に光学補償するために、光学補償層を液晶セル内に配置した、いわゆるインセルタイプの液晶表示装置が種々提案されている(例えば、特許文献1及び2)。インセルタイプの液晶表示装置は、液晶セル外の構成は通常の液晶表示装置と同様であり、偏光子を有する。偏光子としては、主に、ポリビニルアルコール膜が利用されているが、このポリビニルアルコール膜は、吸水性であり、高湿度下に置かれると、吸湿によって偏光性能が変動するので、実際には、その双方の面に保護フィルムを積層した偏光板として、液晶表示装置に用いられている。したがって、偏光子の保護フィルムには、偏光子を環境湿度から保護するため、低透湿性であることが要求される。例えば、ノルボルネン系樹脂フィルムは、透湿性が低いポリマーフィルムとして知られている。
また、特許文献3には、ラクトン環含有重合体を主成分とする熱可塑性樹脂フィルムを偏光子の保護フィルムとして有する偏光板が開示されている。
特開2007−225912号公報 特開2006−276849号公報 特開2007−127893号公報
インセルタイプの液晶表示装置では、光学補償層は液晶セル内に配置されているので、液晶セル外に配置される偏光子の保護フィルム等には、入射光の偏光状態に影響を与えないよう、光学的に等方性なフィルムが好ましい。
本発明者が検討した結果、ノルボルネン系樹脂フィルムは、未延伸状態では面内レターデーションReがある程度あり、また、延伸すると厚さ方向レターデーションRthが発現してしまう。そのため、フィルムが温度・湿度に応じて部分的に伸張もしくは収縮すると、その伸張もしくは収縮の程度がわずかであっても、ReもしくはRthが変動して、それが表示特性に影響を与える場合がある。インセルタイプの液晶表示装置は、液晶セル内に光学補償層を配置して光学補償をより正確に行っているので、液晶セル外に配置されたポリマーフィルム等の温度・湿度に依存したRe・Rthの変動は、インセルタイプ以外の液晶表示装置より深刻である。
本発明は、温度・湿度に依存した表示特性の変動が軽減されたインセルタイプの液晶表示装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 液晶セルと前記液晶セルを中心にして表示面側又は光源側に配置される少なくとも1の偏光子(以下、第1の偏光子という)を有する液晶表示装置であって、前記液晶セル内に光学補償層を有し、及び前記液晶セルと前記第1の偏光子との間に、少なくとも1種のラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
[2] 前記第1の偏光子とともに、前記液晶セルを中心にして、前記第1の偏光子とは反対側に配置される少なくとも1の偏光子(以下、第2の偏光子という)を有し、前記液晶セルと前記第2の偏光子との間に、少なくとも1種のラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを有することを特徴とする[1]の液晶表示装置。
[3] 前記ラクトン環含有重合体が、下記一般式(1)で表されるラクトン環構造単位を有する重合体であることを特徴とする[1又は2]の液晶表示装置。
Figure 2009157322
[式中、R1、R2及びR3は、互いに独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を表す;なお、有機残基は酸素原子を含有していてもよい。]
[4] 前記熱可塑性樹脂フィルムの面内レターデーションReが、波長550nmにおいて−1nm〜+1nmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの液晶表示装置。
[5] TNモードであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
[6] OCBモードであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
[7] VAモードであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
[8] IPSモードであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
[9] 前記液晶セルが、マルチドメイン方式の液晶セルであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかの液晶表示装置。
[10] 前記光学補償層が、前記液晶セルの各ドメインに対応した領域ごとに配向分割されていることを特徴とする[9]の液晶表示装置。
本発明によれば、温度・湿度に依存した表示特性の変動が軽減されたインセルタイプの液晶表示装置を提供することができる。
発明の実施の形態
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション、Re、Rth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(10)及び式(11)よりRthを算出することもできる。
Figure 2009157322
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 210ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本明細書において、レターデーション等の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
図1に本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図を示す。但し、図中、各層の厚みの相対関係は、実際の相対関係とは必ずしも一致していない。
図1の液晶表示装置は、一対の偏光板PL1及びPL2と、その間に配置された液晶セルLCとを有する。液晶セルLCは、一対の基板12a及び12bと、その間に配置された液晶層10とを有する。さらに、液晶セルLC内に、液晶層10の複屈折性を光学補償する光学補償層11a及び11bを有する。光学補償層11a及び11bは、液晶層10の斜め方向に発生する複屈折性を補償可能な光学特性を示す。液晶セルLC内に、光学補償層11a及び11bを配置し、RGB画素に応じて、その光学特性を最適化することで、より正確な光学補償が可能となる。さらに、液晶セルLCがマルチドメイン構造である場合は、さらに各ドメインに応じて、光学補償層11a及び11bも配向分割することで、より正確な光学補償が可能となる。
また、光学補償層11a及び11bは、偏光板PL1及びPL2の光学補償も可能である。
なお、図中省略するが、液晶セルLC内には、液晶層10中の液晶を配向制御する配向膜、液晶層10に電界を供与するための電極、及び色表示のためのカラーフィルタ等を、基板12a及び/又は12bの内面上に有する。
偏光板PL1及びPL2は、偏光子14a及び14bと、その液晶セル側表面に保護フィルム15a及び15b、ならびにその外側表面に保護フィルム16a及び16bをそれぞれ有する積層体である。保護フィルム15a及び15bは、後に詳細に説明する少なくとも1種のラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムからなる。前記熱可塑性樹脂フィルムは、低透湿性であるとともに、光学的等方性の高いフィルムであり、面内レターデーションReが実質的に0である。前記熱可塑性樹脂フィルムを、液晶セル側の保護フィルム15a及び15bとして用いることで、環境温度・湿度に依存して、保護フィルム15a及び15bのReが変動するのを軽減することができる。その結果、環境温度・湿度が変動しても、保護フィルム15a及び15bの光学特性の影響を受けずに、液晶セルLC内に配置された光学補償層11a及び11bによって、正確に光学補償でき、良好な表示特性を維持できる。
図1中、液晶セルLCがいずれのモードであっても本発明の効果が得られる。特に、TNモード、OCBモード、VAモード及びIPSモードを利用した液晶表示装置の態様が好ましい。
なお、図1では、上下一対の偏光子と液晶セルとの間に配置される双方の保護フィルムが、前記熱可塑性樹脂フィルムからなる態様について説明したが、いずれか一方のみが前記熱可塑性樹脂フィルムである態様でも、本発明の効果が得られる。例えば、表示面側の偏光板の保護フィルム(例えば図1で上側が表示面側、下側が光源(バックライト)側である場合は、上側偏光板PL2の保護フィルム15b)が前記熱可塑性樹脂フィルムである態様では、環境湿度の影響を軽減することができ、及びバックライト側の偏光板の保護フィルム(例えば図1で上側が表示面側、下側がバックライト側である場合は、上側偏光板PL1の保護フィルム15a)が前記熱可塑性樹脂フィルムである態様では、バックライトの熱による影響を軽減することができる。勿論双方が前記熱可塑性樹脂フィルムであるほうが、より高い効果が得られるので好ましい。
また、図1では、上下一対の偏光子を有する透過型液晶表示装置の態様を示したが、本発明は、1つの偏光子のみを有する反射型液晶表示装置であっても勿論よい。
また、図1では、液晶セル内に配置される光学補償層が、上下基板の双方の内面上に配置された態様について説明したが、光学補償層はいずれか一方の基板のみの内面上に配置されていてもよい。光学補償層の数やその光学特性については、液晶セル外に光学補償層を有する通常の液晶表示装置と同様である。
以下、本発明の液晶表示装置に用いられる各部材、主に液晶セル外に配置される熱可塑性樹脂フィルム、について説明する。
(熱可塑性樹脂フィルム)
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと偏光子との間に、少なくとも1種のラクトン環含有重合体を主成分として含む熱可塑性樹脂フィルムを有することを特徴とする。前記熱可塑性樹脂フィルムは、偏光子の保護フィルムとして機能しているのが好ましい。前記ラクトン環含有重合体は、下記一般式(1)で表されるラクトン環構造単位を有する重合体であるのが好ましい。
Figure 2009157322
式中、R1、R2及びR3は、互いに独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を表す;なお、有機残基は酸素原子を含有していてもよい。
前記ラクトン環含有重合体の構造中における上記式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。ラクトン環構造の含有割合が5質量%未満であると、得られた重合体の耐熱性、耐溶剤性および表面硬度が低下することがある。逆に、ラクトン環構造の含有割合が90質量%を超えると、得られた重合体の成形加工性が低下することがある。
前記ラクトン環含有重合体は、上記式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造を有する共重合体であってもよい。上記式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基含有単量体と、不飽和カルボン酸と、下記式(2)で表される単量体とからなる群より選択される少なくとも1種の単量体由来の構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
Figure 2009157322
式中、R4は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、又は−CO−O−R6基を表し、Acはアセチル基を表し、R5およびR6は、水素原子又は炭素原子数1〜20の有機残基を表す。
前記ラクトン環含有重合体の構造中における上記式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルを重合して形成される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜90質量%であり、水酸基含有単量体を重合して形成される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。また、不飽和カルボン酸を重合して形成される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。さらに、上記式(2)で表される単量体を重合して形成される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
前記ラクトン環含有重合体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を得た後、得られた重合体(a)を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環化縮合工程を行うことによって得られる。
重合工程においては、例えば、下記式(3)で表される単量体を配合した単量体成分の重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体が得られる。
Figure 2009157322
式中、R5およびR6は、互いに独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を表す。
上記式(3)で表される単量体としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの単量体のうち、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性を向上させる効果が高いことから、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。
重合工程に供する単量体成分中における上記式(3)で表される単量体の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。上記式(3)で表される単量体の含有割合が5質量%未満であると、得られた重合体の耐熱性、耐溶剤性および表面硬度が低下することがある。逆に、上記式(3)で表される単量体の含有割合が90質量%を超えると、重合工程やラクトン環化縮合工程においてゲル化が起こることや、得られた重合体の成形加工性が低下することがある。
重合工程に供する単量体成分には、上記式(3)で表される単量体以外の単量体を配合してもよい。このような単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、および、下記式(2)で表される単量体などが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
Figure 2009157322
式中、R4は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、または−CO−O−R6基を表し、Acはアセチル基を表し、R5およびR6は水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を表す。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記式(3)で表される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルである限り、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの(メタ)アクリル酸エステルのうち、得られた重合体の耐熱性や透明性が優れることから、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
上記式(3)で表される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合工程に供する単量体成分中におけるその含有割合は、本発明の効果を充分に発揮させる上で、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。
水酸基含有単量体としては、上記式(3)で表される単量体以外の水酸基含有単量体である限り、特に限定されるものではないが、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられる。これらの水酸基含有単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記式(3)で表される単量体以外の水酸基含有単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中におけるその含有割合は、本発明の効果を充分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられる。これらの不飽和カルボン酸は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの不飽和カルボン酸のうち、本発明の効果が充分に発揮されることから、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。
不飽和カルボン酸を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中におけるその含有割合は、本発明の効果を充分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
上記式(2)で表される単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの単量体のうち、本発明の効果を充分に発揮することから、スチレン、α−メチルスチレンが特に好ましい。
上記式(2)で表される単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中におけるその含有割合は、本発明の効果を充分に発揮させる上で、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るための重合反応の形態としては、溶剤を使用する重合形態であることが好ましく、溶液重合が特に好ましい。
重合温度や重合時間は、使用する単量体の種類や割合などに応じて変化するが、例えば、好ましくは、重合温度が0〜150℃、重合時間が0.5〜20時間であり、より好ましくは、重合温度が80〜140℃、重合時間が1〜10時間である。
溶剤を使用する重合形態の場合、重合溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られるラクトン環含有重合体の残存揮発分が多くなることから、沸点が50〜200℃である溶剤が好ましい。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、単量体の組合せや反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑制するために、重合反応混合物中に生成した重合体の濃度が50質量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中に生成した重合体の濃度が50質量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して50質量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中に生成した重合体の濃度は、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、重合反応混合物中に生成した重合体の濃度が低すぎると生産性が低下するので、重合反応混合物中に生成した重合体の濃度は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中に生成した重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化をより充分に抑制することができ、特に、ラクトン環含有割合を増やして耐熱性を向上させるために分子鎖中の水酸基とエステル基との割合を高めた場合であっても、ゲル化を充分に抑制することができる。添加する重合溶剤としては、例えば、重合反応の初期仕込み時に使用した溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に使用した溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、1種のみの単一溶剤であっても2種以上の混合溶剤であってもよい。
以上の重合工程を終了した時点で得られる重合反応混合物中には、通常、得られた重合体以外に溶剤が含まれているが、溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要はなく、溶剤を含んだ状態で、続くラクトン環化縮合工程に導入することが好ましい。また、必要な場合は、固体状態で取り出した後に、続くラクトン環化縮合工程に好適な溶剤を再添加してもよい。
重合工程で得られた重合体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)であり、重合体(a)の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン換算により求めた値である。重合工程で得られた重合体(a)は、続くラクトン環化縮合工程において、加熱処理されることによりラクトン環構造が重合体に導入され、ラクトン環含有重合体となる。
重合体(a)にラクトン環構造を導入するための反応は、加熱により、重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とが環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールが副生する。ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率が不充分であると、耐熱性が充分に向上しないことや、成形時の加熱処理によって成形途中に縮合反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在することがある。
ラクトン環化縮合工程において、上記式(1)で表されるラクトン環構造が導入される。
重合体(a)を加熱処理する方法については、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を利用すればよい。例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。あるいは、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。あるいは、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を備えた加熱炉や反応装置、脱揮装置を備えた押出機などを用いて加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に使用されるp−トルエンスルホン酸などのエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸などの有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。さらに、例えば、特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に開示されているように、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などを用いてもよい。
あるいは、環化縮合反応の触媒として有機リン化合物を用いてもよい。使用可能な有機リン酸化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸などのアルキル(アリール)亜ホスホン酸(ただし、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのモノエステルまたはジエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸などのジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸などのアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのモノエステルまたはジエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸などのアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニルなどの亜リン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸オクチル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニルなどのリン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのモノ−、ジ−またはトリ−アルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィンなどのアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィンなどの酸化モノ−、ジ−またはトリ−アルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウムなどのハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;などが挙げられる。これらの有機リン化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機リン化合物のうち、触媒活性が高くて着色性が低いことから、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸モノエステルまたはジエステル、リン酸モノエステルまたはジエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸モノエステルまたはジエステル、リン酸モノエステルまたはジエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸モノエステルまたはジエステルが特に好ましい。
環化縮合反応の際に用いられる触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、重合体(a)に対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。触媒の使用量が0.001質量%未満であると、環化縮合反応の反応率が充分に向上しないことがある。逆に、触媒の使用量が5質量%を超えると、得られた重合体が着色することや、重合体が架橋して、溶融成形が困難になることがある。
触媒の添加時期は、特に限定されるものではなく、例えば、反応初期に添加してもよいし、反応途中に添加してもよいし、それらの両方で添加してもよい。
環化縮合反応を溶剤の存在下で行い、かつ、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、および、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体などの揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールを、必要に応じて減圧加熱条件下で、除去処理する工程を意味する。この除去処理が不充分であると、得られた重合体中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質などにより着色することや、泡やシルバーストリークなどの成形不良が起こることがある。
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、用いる装置については、特に限定されるものではないが、例えば、本発明をより効果的に行うために、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置やベント付き押出機、また、脱揮装置と押出機を直列に配置したものを用いることが好ましく、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置またはベント付き押出機を用いることがより好ましい。
熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置を用いる場合の反応処理温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。反応処理温度が150℃未満であると、環化縮合反応が不充分となって残存揮発分が多くなることがある。逆に、反応処理温度が350℃を超えると、得られた重合体の着色や分解が起こることがある。
熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置を用いる場合の反応処理圧力は、好ましくは931〜1.33hPa(700〜1mmHg)、より好ましくは798〜66.5hPa(600〜50mmHg)である。反応処理圧力が931hPa(700mmHg)を超えると、アルコールを含めた揮発分が残存しやすいことがある。逆に、反応処理圧力が1.33hPa(1mmHg)未満であると、工業的な実施が困難になることがある。
ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。
ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。反応処理温度が150℃未満であると、環化縮合反応が不充分となって残存揮発分が多くなることがある。逆に、反応処理温度が350℃を超えると、得られた重合体の着色や分解が起こることがある。
ベント付き押出機を用いる場合の反応処理圧力は、好ましくは931〜1.33hPa(700〜1mmHg)、より好ましくは798〜13.3hPa(600〜10mmHg)である。反応処理圧力が931hPa(700mmHg)を超えると、アルコールを含めた揮発分が残存しやすいことがある。逆に、反応処理圧力が1.33hPa(1mmHg)未満であると、工業的な実施が困難になることがある。
なお、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、後述するように、厳しい熱処理条件では得られるラクトン環含有重合体の物性が劣化することがあるので、前述した脱アルコール反応の触媒を用い、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機などを用いて行うことが好ましい。
また、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、好ましくは、重合工程で得られた重合体(a)を溶剤と共に環化縮合反応装置に導入するが、この場合、必要に応じて、もう一度ベント付き押出機などの環化縮合反応装置に通してもよい。
脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに、過程の一部においてのみ併用する形態を行ってもよい。例えば、重合体(a)を製造した装置を、さらに加熱し、必要に応じて脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応を予めある程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる形態である。
先に述べた環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態では、例えば、重合体(a)を、二軸押出機を用いて、250℃付近、あるいはそれ以上の高温で熱処理する時に、熱履歴の違いにより環化縮合反応が起こる前に一部分解などが生じ、得られるラクトン環含有重合体の物性が劣化することがある。そこで、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う前に、予め環化縮合反応をある程度進行させておくと、後半の反応条件を緩和でき、得られるラクトン環含有重合体の物性の劣化を抑制できるので好ましい。特に好ましい形態としては、例えば、脱揮工程を環化縮合反応の開始から時間をおいて開始する形態、すなわち、重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とを予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態が挙げられる。具体的には、例えば、予め釜型反応器を用いて溶剤の存在下で環化縮合反応をある程度の反応率まで進行させておき、その後、脱揮装置を備えた反応器、例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置や、ベント付き押出機などで、環化縮合反応を完結させる形態が好ましく挙げられる。特に、この形態の場合、環化縮合反応用の触媒が存在していることがより好ましい。
前述したように、重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とを予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法は、本発明においてラクトン環含有重合体を得る上で好ましい形態である。この形態により、ガラス転移温度がより高く、環化縮合反応率もより高まり、耐熱性に優れたラクトン環含有重合体が得られる。この場合、環化縮合反応率の目安としては、例えば、実施例に示すダイナッミクTG測定における150〜300℃の範囲内における質量減少率が、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に採用できる反応器は、特に限定されるものではないが、例えば、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置などが挙げられ、さらに、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に好適なベント付き押出機も使用可能である。これらの反応器のうち、オートクレーブ、釜型反応器が特に好ましい。しかし、ベント付き押出機などの反応器を用いる場合でも、ベント条件を温和にしたり、ベントをさせなかったり、温度条件やバレル条件、スクリュー形状、スクリュー運転条件などを調整することにより、オートクレーブや釜型反応器での反応状態と同じ様な状態で環化縮合反応を行うことが可能である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、例えば、重合工程で得られた重合体(a)と溶剤とを含む混合物を、(i)触媒を添加して、加熱反応させる方法、(ii)無触媒で加熱反応させる方法、および、前記(i)または(ii)を加圧下で行う方法などが挙げられる。
なお、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体(a)と溶剤とを含む混合物」とは、重合工程で得られた重合反応混合物それ自体、あるいは、いったん溶剤を除去した後に環化縮合反応に適した溶剤を再添加して得られた混合物を意味する。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に再添加できる溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;クロロホルム、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン;などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合工程に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。
方法(i)で添加する触媒としては、例えば、一般に使用されるp−トルエンスルホン酸などのエステル化触媒またはエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などが挙げられるが、本発明においては、前述の有機リン化合物を用いることが好ましい。触媒の添加時期は、特に限定されるものではないが、例えば、反応初期に添加してもよいし、反応途中に添加してもよいし、それらの両方で添加してもよい。触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、重合体(a)の質量に対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%である。方法(i)の加熱温度や加熱時間は、特に限定されるものではないが、例えば、加熱温度は、好ましくは室温〜180℃、より好ましくは50〜150℃であり、加熱時間は、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が室温未満であるか、あるいは、加熱時間が1時間未満であると、環化縮合反応率が低下することがある。逆に、加熱温度180℃を超えるか、あるいは、加熱時間が20時間を超えると、樹脂の着色や分解が起こることがある。
方法(ii)は、例えば、耐圧性の釜型反応器などを用いて、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま加熱すればよい。方法(ii)の加熱温度や加熱時間は、特に限定されるものではないが、例えば、加熱温度は、好ましくは100〜180℃、より好ましくは100〜150℃であり、加熱時間は、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が100℃未満であるか、あるいは、加熱時間が1時間未満であると、環化縮合反応率が低下することがある。逆に、加熱温度が180℃を超えるか、あるいは加熱時間が20時間を超えると、樹脂の着色や分解が起こることがある。
いずれの方法においても、条件によっては、加圧下となっても何ら問題はない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題ではない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の終了時、すなわち、脱揮工程開始直前における、ダイナミックTG測定における150〜300℃の範囲内における質量減少率は、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下である。質量減少率が2%を超えると、続けて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行っても、環化縮合反応率が充分高いレベルまで上がらず、得られるラクトン環含有重合体の物性が劣化することがある。なお、上記の環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。
重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とを予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態の場合、予め行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基との少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)と溶剤を、そのまま脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入してもよいし、必要に応じて、前記重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基との少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)を単離してから溶剤を再添加するなどのその他の処理を経てから脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入しても構わない。
脱揮工程は、環化縮合反応と同時に終了することには限らず、環化縮合反応の終了から時間をおいて終了しても構わない。
ラクトン環含有重合体の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン換算により求めた値である。
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG測定における150〜300℃の範囲内における質量減少率が好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。
ラクトン環含有重合体は、環化縮合反応率が高いので、成形後の成形品中に泡やシルバーストリークが入るという欠点が回避できる。さらに、高い環化縮合反応率によってラクトン環構造が重合体に充分に導入されるので、得られたラクトン環含有重合体が充分に高い耐熱性を有している。
ラクトン環含有重合体は、濃度15質量%のクロロホルム溶液にした場合、その着色度(YI)が、好ましくは6以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。着色度(YI)が6を超えると、着色により透明性が損なわれ、本来目的とする用途に使用できないことがある。
ラクトン環含有重合体は、熱質量分析(TG)における5%質量減少温度が、好ましくは330℃以上、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは360℃以上である。熱質量分析(TG)における5%質量減少温度は、熱安定性の指標であり、これが330℃未満であると、充分な熱安定性を発揮できないことがある。
ラクトン環含有重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは140℃以上である。
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が、好ましくは1,500ppm以下、より好ましくは1,000ppm以下である。残存揮発分の総量が1,500ppmを超えると、成形時の変質などによって着色したり、発泡したり、シルバーストリークなどの成形不良の原因となる。
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品に対するASTM−D−1003に準拠した方法で測定された全光線透過率が、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は、透明性の指標であり、これが85%未満であると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できないことがある。
本発明に用いられる前記熱可塑性樹脂フィルムは、ラクトン環含有重合体を主成分として含む、具体的にはその含有割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、さらに好ましくは70〜100質量%、特に好ましくは80〜100質量%である。熱可塑性樹脂フィルム中のラクトン環含有重合体の含有割合が50質量%未満であると、本発明の効果を充分に発揮できないことがある。
前記熱可塑性樹脂フィルムには、その他の成分として、ラクトン環含有重合体以外の重合体(以下「その他の重合体」ということがある。)を含有していてもよい。その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩素化ビニル樹脂などのハロゲン化ビニル系重合体;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系重合体;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂などのゴム質重合体;などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂フィルムにおけるその他の重合体の含有割合は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜40質量%、さらに好ましくは0〜30質量%、特に好ましくは0〜20質量%である。
前記熱可塑性樹脂フィルムには、種々の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;フェニルサリチレート、(2,2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤などの帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂フィルム中における添加剤の含有割合は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0〜0.5質量%である。
前記熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ラクトン環含有重合体と、その他の重合体や添加剤などを、従来公知の混合方法で充分に混合し、予め熱可塑性樹脂組成物としてから、これをフィルム成形することで製造することができる。あるいは、ラクトン環含有重合体と、その他の重合体や添加剤などを、それぞれ別々の溶液にしてから混合して均一な混合液とした後、フィルム成形してもよい。
まず、熱可塑性樹脂組成物を製造するには、例えば、オムニミキサーなど、従来公知の混合機で上記のフィルム原料をプレブレンドした後、得られた混合物を押出混練する。この場合、押出混練に用いられる混合機は、特に限定されるものではなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機や加圧ニーダーなど、従来公知の混合機を用いることができる。
フィルム成形の方法としては、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、従来公知のフィルム成形法が挙げられる。これらのフィルム成形法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチエルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーターなどが挙げられる。
溶融押出法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法などが挙げられ、その際の成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
Tダイ法でフィルム成形する場合は、公知の単軸押出機や二軸押出機の先端部にTダイを取り付け、フィルム状に押出されたフィルムを巻取って、ロール状のフィルムを得ることができる。この際、巻取りロールの温度を適宜調整して、押出方向に延伸を加えることで、1軸延伸することも可能である。また、押出方向と垂直な方向にフィルムを延伸することにより、同時2軸延伸、逐次2軸延伸などを行うこともできる。
前記熱可塑性樹脂フィルムは、未延伸フィルムまたは延伸フィルムのいずれでもよい。延伸フィルムである場合は、1軸延伸フィルムまたは2軸延伸フィルムのいずれでもよい。2軸延伸フィルムである場合は、同時2軸延伸フィルムまたは逐次2軸延伸フィルムのいずれでもよい。2軸延伸した場合は、機械的強度が向上し、フィルム性能が向上する。ラクトン環含有重合体を主成分とする熱可塑性樹脂フィルムは、その他の熱可塑性樹脂を混合することにより、延伸しても位相差の増大を抑制することができ、光学的等方性を保持することができる。
延伸温度は、フィルム原料である熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度近傍であることが好ましく、具体的には、好ましくは(ガラス転移温度−30℃)〜(ガラス転移温度+100℃)、より好ましくは(ガラス転移温度−20℃)〜(ガラス転移温度+80℃)の範囲内である。延伸温度が(ガラス転移温度−30℃)未満であると、充分な延伸倍率が得られないことがある。逆に、延伸温度が(ガラス転移温度+100℃)超えると、樹脂組成物の流動(フロー)が起こり、安定な延伸が行えなくなることがある。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍、より好ましくは1.3〜10倍の範囲内である。延伸倍率が1.1倍未満であると、延伸に伴う靭性の向上につながらないことがある。逆に、延伸倍率が25倍を超えると、延伸倍率を上げるだけの効果が認められないことがある。
延伸速度は、一方向で、好ましくは10〜20,000%/min、より好ましく100〜10,000%/minの範囲内である。延伸速度が10%/min未満であると、充分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなることがある。逆に、延伸速度が20,000%/minを超えると、延伸フィルムの破断などが起こることがある。
なお、前記熱可塑性樹脂フィルムの光学的等方性や機械的特性を安定化させるために、延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うことができる。熱処理の条件は、従来公知の延伸フィルムに対して行われる熱処理の条件と同様に適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
前記熱可塑性樹脂フィルムは、その厚さが好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満であると、フィルムの強度が低下するだけでなく、偏光板の耐久性試験を行うと捲縮が大きくなることがある。逆に、厚さが200μmを超えると、フィルムの透明性が低下するだけでなく、透湿性が小さくなり、水系接着剤を用いた場合、その溶剤である水の乾燥速度が遅くなることがある。
前記熱可塑性樹脂フィルムは、その表面の濡れ張力が、好ましくは40mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上、さらに好ましくは55mN/m以上である。表面の濡れ張力が少なくとも40mN/m以上であると、前記熱可塑性樹脂フィルムと他の層、例えば、偏光子等との接着強度がさらに向上する。表面の濡れ張力を調整するために、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他の従来公知の表面処理を施すことができる。
前記熱可塑性樹脂フィルムは、種々の添加剤を含んでいてもよい。例えば、フィルムの面内レターデーション及び/又は厚み方向レターデーションを増加又は減少させるレターデーション調整剤を添加してもよい。レターデーション調整剤を添加し、所望により延伸処理することで、光学特性を所望の範囲とすることができる。偏光子の保護フィルムとしてのみならず、液晶セルの光学補償にも寄与する光学補償フィルムとしても機能させることができる。かかるレターデーション調整剤の例には、棒状または円盤状化合物からなるものを挙げることができる。
上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。具体的な化合物は、特開2007-3788の記載を参考にすることができる。
前記熱可塑性樹脂フィルムは、低透湿性であるのが好ましい。ポリマーフィルムの透湿度は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法により測定することができる。具体的には、フィルム試料70mmφを60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、調湿前後の質量差より、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)する。この際、恒温恒湿装置にいれたカップを適当な時間間隔で取り出して秤量する操作を繰り返し、二つの連続する秤量で、それぞれ単位時間あたりの質量増加を求め、それが5%以内で一定になるまで評価を続ける。また、試料の吸湿等による影響を除外するため、吸湿剤の入れていないブランクのカップを測定し、透湿度の値を補正する。
前記熱可塑性樹脂フィルムは、上記方法で測定した透湿度が、低いほど好ましく、より具体的には、透湿度が、10〜600g/m2・日であるのが好ましく、20〜300g/m2・日であるのがより好ましい。透湿度が前記範囲であると、使用環境において、熱可塑性樹脂フィルムのReの変動をより軽減できる。なお、市販のノルボルネン系樹脂フィルム等、透湿度が前記範囲である(又はそれよりさらに低透湿性である)フィルムを用いても、ラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを用いるよりも湿度によるReの変動があり、本発明の効果を得ることはできない。本発明では、前記熱可塑性樹脂フィルムとして、Reが小さく、0nm程度のものを使用するのが好ましい。ラクトン環含有重合体を主原料として用いることにより、低透湿性で、しかもReが0nm程度のフィルムとなる。具体的には、前記熱可塑性樹脂フィルムは、Reが−1nm〜+1nm程度であるのが好ましい。Reが前記範囲であると、湿度に依存してフィルムが部分的にある程度伸張もしくは収縮しても、Reの変動がほとんどなく、表示特性に影響を与えない。一方、市販のノルボルネン系樹脂フィルムは、Reがある程度あるので、湿度によって部分的に伸張もしくは収縮すると、その程度がわずかであっても、Reが変動して、表示特性を低下させる要因になる。
前記熱可塑性樹脂フィルムは、その厚みについては特に制限はないが、厚みが薄くても、低透湿性を達成できるという特徴がある。例えば、市販のノルボルネン系樹脂フィルムは、厚みが60μm程度であるのに対して、前記熱可塑性樹脂フィルムは、厚み30μm程度でも同様の低透湿性を発揮する。したがって、本発明は、液晶表示装置の薄型化にも寄与する。薄型化の観点では、前記熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、10μm〜40μm程度であるのが好ましく、10μm〜30μm程度であるのがより好ましい。
(易接着層)
本発明では、前記熱可塑性樹脂フィルムと、偏光子等の他の層との接着性を改善するために、前記熱可塑性樹脂フィルムの表面に易接着層を形成するのが好ましい。該易接着層は、ポリウレタン樹脂組成物(ポリウレタン樹脂および/または反応後にポリウレタン樹脂を与える前駆体を含有する組成物)および/またはアミノ基含有ポリマーを含有する樹脂組成物(以下、いずれも「易接着層コーティング組成物」ということがある。)から形成するのが好ましい。該組成物を塗布液として調製し、前記熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に塗布した後、乾燥・硬化または乾燥することにより形成される。
前記易接着層の厚さは、好ましくは0.01〜10μm程度、より好ましくは0.05〜3μm程度、さらに好ましくは0.1〜1μm程度である。易接着層の厚さが上記範囲であると、接着強度が十分となり、且つ耐水性または耐湿性試験において、偏光板の色抜けや変色なども起こり難いので好ましい。
前記易接着層の形成に用いられるポリウレタン樹脂、反応後にポリウレタン樹脂を与える前駆体を含有する組成物、及びアミノ基含有ポリマーについて、及び易接着層の形成方法については、特開2007−127893号公報の[0124]〜[0175]に詳細が記載されていて、かかる記載は、本発明における易接着層の材料及び形成方法の説明として参照することができる。
なお、表面の濡れ張力を調整するために、易接着層の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他の従来公知の表面処理を施してもよい。
(偏光子)
本発明の液晶表示装置が有する偏光子としては、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜のいずれも用いることができる。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
(第2の保護フィルム)
本発明の偏光板は、前記熱可塑性樹脂フィルム以外の第2の保護フィルム(図1では、16a及び16b)を有しているのが好ましい。前記第2の保護フィルムは、偏光子の表面であって、前記熱可塑性樹脂フィルムが貼り合せられていない他方の表面に貼り合せられる。前記第2の保護フィルムは、前記熱可塑性樹脂フィルムであってもよいし、また他のポリマーフィルム、セルロースアシレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系フィルム等、いずれであってもよい。
(接着剤)
前記熱可塑性樹脂フィルムと偏光子等の他の層とを貼り合せるのに、接着剤を利用してもよい。より好ましくは、前記熱可塑性樹脂フィルムの表面に前記易接着層を形成し、該易接着層と、他の層とを、接着剤を用いて貼り合せるのが好ましい。使用可能な接着剤の例には、PVA系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、イソシアネート系接着剤などが含まれる。これらの接着剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの接着剤のうち、ポリウレタン系接着剤およびイソシアネート系接着剤が特に好適である。なお、接着剤の形態は、特に限定されるものではないが、例えば、溶剤系、水系、無溶剤系などの各種形態の接着剤を使用することができる。
ポリウレタン系接着剤、イソシアネート系接着剤、及びそれに用いられる反応触媒、添加剤、およびそれらの使用量等については、特開2007−12789号公報の[0174]〜[0194]に詳細な記載があり、本発明において使用可能な接着剤の説明として参酌することができる。
前記熱可塑性樹脂フィルムの接着方法としては、例えば、(1)偏光子および熱可塑性樹脂フィルムの両方または片方に接着剤の溶液を塗布し、塗膜が乾燥しないうちに偏光子と熱可塑性樹脂とを貼り合わせ、次いで溶媒を除去して接着する方法(いわゆる、ウェットラミネーション)、および、(2)偏光子および熱可塑性樹脂フィルムの両方または片方に接着剤の溶液を塗布し、次いで溶媒をほぼ除去して塗膜をほぼ乾燥させてから偏光子と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせ、加圧および/または加熱などにより接着する方法(いわゆる、ドライラミネーション)が挙げられる。接着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.03〜3μm、さらに好ましくは0.05〜1μmである。なお、硬化剤を含む接着剤を使用する場合、主成分と硬化剤との反応は、接着および養生の間に加熱されることにより進行するので、別途、硬化工程を設ける必要はない。
(1)ウェットラミネーションの場合は、例えば、接着後の接着剤層の厚みや塗工性などを考慮し、固形分濃度が、例えば、1〜50質量%となるように、接着剤を溶媒に溶解させた後、メイヤバー、グラビアコーター、マイクログラビアコーターなどで接着剤溶液を偏光子および/または保護フィルムに塗工または滴下し、熱可塑性樹脂フィルムを接着した偏光子を、例えば、2本のロールなどでラミネートしながら溶媒を加熱などにより除去する。ロールで余分な接着剤を押し出しながらラミネートして、それを熱風などで乾燥させて接着する。
乾燥温度は、好ましくは120℃以下、より好ましくは50〜100℃である。接着剤溶液の粘度は、好ましくは10〜20,000mPa・s、より好ましくは100〜12,000mPa・sである。粘度が10mPa・s未満であると、ラミネート時の加圧によって接着剤溶液が偏光板の外部に余分に流れ出し、接着剤層の厚みが薄くなることがある。逆に、粘度が20,000mPa・sを超えると、塗工性が低下することがある。ウェットラミネーションにおいては、溶媒として水を用いると、保護フィルムとしてTACフィルムを用いていた従来の偏光板の製造設備をそのまま熱可塑性樹脂フィルムの接着設備として有効利用できる。
(2)ドライラミネーションの場合は、例えば、接着後の接着剤層の厚みや塗工性などを考慮し、適当な固形分濃度となるように接着剤を溶媒に溶解し、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーターなどで偏光子および/または熱可塑性樹脂フィルムに塗工し、乾燥炉を通すなどの手段を用いて溶媒を除去する。加熱温度は、好ましくは、常温〜130℃の範囲内に設定する。偏光子と保護フィルムとのラミネートは、例えば、2本のロールなどを用いて、好ましくは98〜980kPaの圧力をかけて圧着することにより行う。その際、偏光子の光学性能を低下させない範囲で偏光板を加熱してもよく、その温度は、好ましくは120℃以下、より好ましくは30〜100℃である。接着剤溶液の粘度は、ウェットラミネーションの場合と同様の範囲内である。粘度が10mPa・s未満であると、溶媒の除去に時間がかかり生産性が低下することがある。逆に、粘度が20,000mPa・sを超えると、塗工性が低下する。ドライラミネーションにおいては、溶媒として有機溶剤を用いると、偏光子と熱可塑性樹脂フィルムとの接着強度が優れるので好ましい。
いずれの接着方法においても、偏光子と熱可塑性樹脂フィルムとのラミネートは、公知のいかなる手段を用いてもよいが、ニップロールによる方法が簡便で、かつ、生産性にも優れるので好ましい。ニップロールとしては、ゴムロールと金属ロールとを組み合わせるか、あるいはゴムロールとゴムロールとを組み合わせることができる。ラミネート時の圧力は、ニップ線圧で、好ましくは1〜100kgf/cm、より好ましくは3〜30kgf/cmである。
上記方法で得られた偏光板は、必要に応じて、養生、すなわち一定時間放置して何ら問題なく、養生することにより、接着剤層と各層との接着強度、各層の耐久性などを向上させることができる。養生の条件は、例えば、常温または加温(例えば、約30〜60℃程度)で、5〜72時間程度放置しておくことが好ましい。また、熱可塑性樹脂フィルムと偏光子とを接着剤層を介して貼合した後、これに圧力をかけることにより、接着剤層の厚みを調整しても構わない。
前記偏光板には、液晶セルなどの他の部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などの重合体をベースとする粘着剤を適宜選択して用いることができる。これらの粘着剤のうち、アクリル系粘着剤は、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性という良好な粘着特性を示し、耐候性や耐熱性などに優れるので、特に好ましい。
(反射防止層)
本発明の液晶表示装置は、反射防止層を有していてもよい。反射防止層は、偏光板の一部材として配置されていてもよい。反射防止層は、表面の反射を抑えて、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止するためのものであるので、最表面層として配置するのが好ましい。反射防止層は、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物の薄膜からなる場合と、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させたものからなる場合とがある。また、特開2003−292805号公報に開示されているような無機系化合物と有機系化合物との複合微粒子を含む薄膜を積層させたものも使用できる。
(その他の機能層)
本発明の液晶表示装置は、その他の種々の機能層を有していてもよく、これらの機能層は、偏光板の一部材として配置されていてもよい。種々の機能層の例には、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー性層等が含まれる。これらの形成に用いる材料等については、特開2006−96960号公報の[0060]〜[0065]等に詳細な記載があり、かかる記載は、本発明における各種機能層の形材料の説明として参照することができる。
(光学補償層)
本発明の液晶表示装置は、液晶セル内に、光学補償層を有する。光学補償層は、液晶表示装置のモードに応じて、好ましい光学特性を決定し、及びその光学特性を達成するための材料を選択して作製される。液晶セル内に光学補償層を配置することの利点を考慮すると、RGB光のそれぞれに対して最適な光学補償を可能にするために、RGB各画素に応じて、光学補償層の光学特性も、最適な範囲となるように調整されているのが好ましい。光学補償層の光学特性は、例えば、特開2007−225912号公報に記載されている通り、各画素に応じて光学補償層の厚みを変えることで、及び光学補償層に厚みは一定として、カラーフィルタの厚みを変えることで、調整することができる。
また、液晶セルがマルチドメイン方式である態様では、液晶セルの各ドメインに応じて、光学補償層も配向分割するのが好ましい。マルチドメイン方式とは、液晶セル中の液晶の配向や電圧印加時の液晶分子の立ち上がり方向が異なる複数のドメインをRGBの各画素中に形成した方式をいう。マルチドメイン化することで、異なる方向から観察した際の差が軽減され、視野角が拡大される。特に、TNモードやVAモードにおいて効果がある。光学補償層を配向分割するためには、光学補償層を、硬化性液晶組成物から形成するのが好ましい。光学補償層の作製に使用可能な液晶は、種々の棒状液晶及び円盤状液晶から選択することができる。光学補償層の形成に利用する材料の選択、及び光学補償の配向分割の態様等については、特開2006−276849号公報の記載を参考にすることができる。
本発明の液晶表示装置は、上記した通り、TN、OCB、IPS及びVAのいずれのモードであってもよい。中でも、マルチドメイン方式の液晶セルを用いると特に効果が高められるTNモード及びVAモードが好ましい。
また、本発明の液晶表示装置は、種々の用途に供することができる。特に、バックライトの熱の影響が大きい大型液晶TVや、屋外での使用頻度が高く、環境温度・湿度の変動を受けることが頻繁な携帯電話用液晶ディスプレイ、及び屋外に設置されるインフォメーション用液晶ディスプレイとして特に有用である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
種々の保護フィルム、光学補償層、液晶セルを用いて、種々の液晶表示装置を作製した。
まず、用いた種々の部材の製造方法について以下に説明する。
[TNモード液晶セル]
基板の内面に光学補償層(図1中、11a及び11b)を有するTNモード液晶セルを用いた。光学補償層のRe(550)は36nmであり、Rth(550)は152nmであった。また、このTNモード液晶セルの電圧非印加時のΔndは約400nmであった。
[OCBモード液晶セル]
基板の内面に光学補償層(図1中、11a及び11b)を有するOCBモード液晶セルを用いた。光学補償層のRe(550)は30nmであり、Rth(550)は245nmであった。また、このOCBモード液晶セルの電圧非印加時のΔndは約700nmであった。
[IPSモード液晶セル]
基板の内面に光学補償層(図1中、11a及び11b)を有するIPSモード液晶セルを用いた。光学補償層のRe(550)は275nmであり、Rth(550)は0nmであった。また、このIPSモード液晶セルの電圧非印加時のΔndは約310nmであった。
[VAモード液晶セル]
基板の内面に光学補償層(図1中、11a及び11b)を有する、一画素が8ドメインに分割されたマルチドメインのVAモード液晶セルを用いた。光学補償層のRe(550)は65nmであり、Rth(550)は230nmであった。また、このVAモード液晶セルの電圧非印加時のΔndは約290nmであった。
[熱可塑性樹脂フィルム(保護フィルム1)の作製]
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、9000gのメタクリル酸メチル(MMA)、1000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10000gの4−メチル−2−ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn−ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、重合開始剤として5.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(アクゾ化薬製、商品名:カヤカルボン Bic−7)を添加すると同時に、10.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を4時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜120℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学製、商品名:Phoslex A−18)を加え、還流下(約90〜120℃)で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明なペレット(1A)を得た。
得られたペレット(1A)について、特開2006−96960号公報に記載の方法で各種物性を測定し、特開2006−96960号公報の実施例で作製したペレット1Aが製造されたことを確認した。
〔熱可塑性樹脂フィルムの作製〕
特開2006−96960号公報の[実施例]に記載の実施例1を参照して、熱可塑性樹脂フィルム1B〜4Bを製造した。具体的には、以下の方法で製造した。
得られたペレット(1A)を、20mmφのスクリューを有する二軸押出し機を用いて、幅150mmのコートハンガータイプTダイから溶融押出しし、厚さ約30μmの熱可塑性樹脂フィルムを作製した。
この熱可塑性樹脂フィルム1のRe(550)及びRth(550)はそれぞれ0nm及び0.3nmであった。また透湿度は約50g/m2・日であった。この熱可塑性樹脂フィルムを保護フィルム1として用いた。
[ノルボルネン系ポリマーフィルム(保護フィルム2)]
ノルボルネン系ポリマーフィルムとしてZEONOR(日本ゼオン株式会社製)を保護フィルム2として使用した。
このフィルムの厚みは約60μmであり、Re(550)及びRth(550)はそれぞれ約6nm及び約8nmであり、透湿度は約40g/m2・日であった。
[セルローストリアセテート(TAC)フィルム(保護フィルム3)]
セルローストリアセテートフィルム(TACフィルム、富士フイルム製「TD80UL」)を、保護フィルム3として用いた。このフィルムの厚みは80μmであり、Re(550)及びRth(550)はそれぞれ約2nm及び約55nmであり、透湿度は約40g/m2・日であった。
[偏光板の作製]
偏光子としてヨウ素系ポリビニルアルコール膜を準備した。このポリビニルアルコール膜の厚みは40μmであった。
この偏光子の両面にそれぞれ、上記保護フィルム1〜3のいずれかを下記表1に示す組み合わせで貼り付けて、偏光板を種々作製した。
さらに、作製した偏光板のいずれかを表示面側及び光源側偏光板として用い、表1に示す通り、上記TN、OCB、IPS及びVAモード液晶セルのそれぞれと組み合わせ、液晶表示装置を作製した。いずれの液晶表示装置においても、表示面側及び光源側の偏光板を、それぞれの偏光子の方向を直交させて配置した。
[液晶表示装置の評価]
作製した液晶表示装置のそれぞれについて、斜め方向のカラーシフト評価を行った。
<カラーシフト評価>
温度50℃、0.5MPaの圧力で30分間オートクレーブ処理を行った。その後、温度80℃dry雰囲気、及び60℃90%RHの雰囲気にて、それぞれ500時間保存した後、25℃、55%RHで1時間保存して評価用サンプルを得た。
各サンプルの斜め方向(極角60°、方位角45°)に発生するカラーシフトの有無を、目視にて観察評価した。結果を下記表1に示す。
◎:上記処理によってカラーシフトは生じず、表示性能は変化しなかった。
○:上記処理によってカラーシフトはほとんど生じず、表示性能にはほとんど差が感じられなかった。
△:上記処理によってカラーシフトが若干生じ、表示性能に差があるが、実用上はほとんど問題にならない程度であった。
×:上記処理によってカラーシフトが明らかに生じ、実用上問題のある程度に表示性能に差が生じた。
<偏光板の薄膜化効果の評価>
表示面側及び光源側の偏光板(保護フィルム/偏光子/保護フィルムの積層体)の厚みの合計について、その薄膜化効果を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。なお、標準値とは、表示面側及び光源側の偏光板の双方に、TACフィルム(80μm)/偏光子(40μm)/TACフィルム(80μm)の積層体を用いた場合の偏光板の合計の厚み、すなわち400μmである。
以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:標準値より150μmを超える薄膜化効果があった。
○:標準値より100μmを超え150μm以下の薄膜化効果があった。
△:標準値より50μmを超え100μm以下の薄膜化効果があった。
×:標準値より50μm以下の薄膜化効果があった。
Figure 2009157322
Figure 2009157322
上記表に示す通り、表示面側及び光源側の偏光板として、偏光子の双方の表面に保護フィルム2(ノルボルネン系ポリマーフィルム)を貼り合わせた偏光板を用いると、いずれのモードの液晶表示装置でも、上記温湿度処理をした後に斜め方向に生じるカラーシフトが軽減され、表示性能は良好であった。しかし、保護フィルム2の厚みは60μmであり、薄膜化効果は、本発明の実施例と比較して劣っていた。一方、薄膜化評価を、「○」または「◎」とするために、保護フィルム2の厚みを薄くすると、カラーシフト評価が低下し、本発明の実施例と比較して表示性能が劣ることとなった。
表1に示す結果、及び上記結果から、保護フィルム1を偏光板の保護フィルムとして用いた本発明の実施例の液晶表示装置は、温度・湿度に依存した表示性能の変動が軽減されていることが理解できる。さらに、保護フィルム1を用いることによって、液晶表示装置の薄型化も達成できることが理解できる。
本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
符号の説明
10 液晶層
11a、11b 光学補償層
12a、12b 基板
14a、14b 偏光子
15a、15b 保護フィルム(所定の熱可塑性樹脂フィルム)
16a、16b 保護フィルム
LC 液晶セル
PL1、Pl2 偏光板

Claims (10)

  1. 液晶セルと前記液晶セルを中心にして表示面側又は光源側に配置される少なくとも1の偏光子(以下、第1の偏光子という)を有する液晶表示装置であって、前記液晶セル内に光学補償層を有し、及び前記液晶セルと前記第1の偏光子との間に、少なくとも1種のラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
  2. 前記第1の偏光子とともに、前記液晶セルを中心にして、前記第1の偏光子とは反対側に配置される少なくとも1の偏光子(以下、第2の偏光子という)を有し、前記液晶セルと前記第2の偏光子との間に、少なくとも1種のラクトン環含有重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
  3. 前記ラクトン環含有重合体が、下記一般式(1)で表されるラクトン環構造単位を有する重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
    Figure 2009157322
    [式中、R1、R2及びR3は、互いに独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を表す;なお、有機残基は酸素原子を含有していてもよい。]
  4. 前記熱可塑性樹脂フィルムの面内レターデーションReが、波長550nmにおいて−1nm〜+1nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  5. TNモードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  6. OCBモードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  7. VAモードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  8. IPSモードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  9. 前記液晶セルが、マルチドメイン方式の液晶セルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  10. 前記光学補償層が、前記液晶セルの各ドメインに対応した領域ごとに配向分割されていることを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
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WO2006112207A1 (ja) * 2005-03-31 2006-10-26 Nippon Shokubai Co., Ltd. 偏光子保護フィルム、偏光板、および画像表示装置

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