JP2009156275A - 直動ガイド装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ピニオンの組み付け開始位置が機械的に正確にかつ簡単容易に規定されるように、リテーナの構造及びガイドポストのラックギヤを工夫すること。
【解決手段】 本直動ガイド装置は、ガイドポスト11のラックギヤとスリーブ12のラックギヤにリテーナ13のピニオンギヤ14を噛み合わせて、リテーナ13の往復動をラック・ピニオン機構によって規制するようにした直動ガイド装置であって、上記ピニオンギヤ14がリテーナ13の窓孔18に着脱自在に配置されており、上記ガイドポスト11のラックギヤ11aの一端にギヤを刻設しないランド部20が設けられ、このランド部20がピニオンギヤ14の組み付け開始位置Aを規定するとともに、スリーブ12の組み付け後のスリーブ12とリテーナ13の動作位置が設定される位置決め基準部材となる。
【選択図】 図7

Description

この発明はガイドポストによる直動ガイド装置に関するもので、具体的には多数のボール、ローラ等の転動体を保持するリテーナの位置決め機構に関するものであり、リテーナをラック・ピニオン機構によって規制してその位置が軸方向にずれるのを防止するものについて、ガイドポストへのリテーナ及びスリーブの組付けを容易にし、その組み付け位置を簡単容易にかつ正確に規定することができるものである。
ガイドポストにリテーナとスリーブを摺動自在に嵌合させて、ガイドポストによって転動体を介してスリーブを高精度で案内する直動ガイド装置は従来周知である。このような直動ガイド装置では、往復動による慣性や重力、動作時のスリップ等のために転動体がガイドポスト、スリーブの転動面に対してマイクロスリップし、リテーナの長手方向位置がずれ、極端な場合は往復動の上死点、下死点でリテーナが飛び出し動作不能の状態になることもある。
上記のようなリテーナの位置ずれを防止するためにガイドポストにコイルバネを嵌めてこれでリテーナを支えさせるものもあり、さらに、ラック・ピニオン機構によってリテーナの往復動を機械的に規制するものがある(特開2000−346064号公報:特許文献1)。
ラック・ピニオン機構によってリテーナを駆動する直動ガイド装置は、図15に示すようなものであり、ガイドポスト41のラックギヤ41a、スリーブ42のラックギヤ42a、リテーナ43のピニオンギヤ44によってラック・ピニオン機構が構成されている。ラック・ピニオン機構が噛み合った状態でスリーブ42がスライドすると、ラック・ピニオン機構の駆動力でリテーナ43がスリーブ42の往復動の1/2の速度で確実に往復駆動されるので、リテーナ43の長手方向位置のずれが生じることはない。なお、図15中、30は、リテーナ43に保持されてガイドポスト41とスリーブ42との間に配置されたボール等の転動体である。
ところで、上記従来技術(図15)は、リテーナ43の軸穴にピニオンギヤ44の回転軸を挿入して回転自在に支持させており、また、ガイドポスト41の外面のラックギヤ41aとスリーブ42の内面のラックギヤ42aがそれぞれ全長にわたって設けられている。この直動ガイド装置は、ガイドポスト41にリテーナ43を嵌め、そのピニオンギヤ44をガイドポスト41のラックギヤ41aに噛み合わせて所定の組み付け開始位置A位置まで移動させ、当該位置Aに止めておいてスリーブ42を嵌合させて、スリーブ42のラックギヤ42aを上記ピニオンギヤ44に噛み合わせ、スリーブ42を組み付け位置Bまで移動させて組み立てが完了する。
他方、図17に示すように、支持レール51にスライド部材52が水平方向にガイドされる直動ガイド装置であって、ラック・ピニオン機構によってリテーナ53の往復動を規制するものにおいて、リテーナ53に保持されたピニオンギヤ54をリテーナ53に対して着脱自在に装着できるようにし、リテ−ナ53を支持レール51の所定位置に組み付けた後、その位置でピニオンギヤ54をリテーナ54の長穴53に挿入し、その軸54bを上面に開口した凹部53cに落とし込んで支持させて組み付けつつ支持レール51のラックギヤ51aに噛み合わせ、その後、スライド部材52を組み付けてそのラックギヤ52aをピニオンギヤ54に噛み合わせるようにしたものがある(実開平7−4091号:特許文献2)。
この図17に示す直動ガイド装置は、図15に示すガイドポスト41によるものとは違って、支持レール51のラックギヤ51aの端部からピニオンギヤ54を噛み合わせる必要はないから、任意の位置で支持レール51のラックギヤ51aにピニオンギヤ54を噛み合わせ、その位置でスライド部材52のラックギヤ52aを支持レール51に近づけてそのラックギヤ52aをピニオンギヤ54に噛み合わせることができる(図17)。そしてこの場合は、スライド部材52の支持レール51に対する組み付け位置を任意に選択できるので、直動ガイド装置の作動範囲を組み立て時に適宜選択することができる。
特許文献1のものは、円筒状のリテーナ43の長穴にピニオンギヤ44が挿入されてリテーナ43に保持され、軸穴にピニオンギヤ44の軸を挿入して回転自在に保持させているから、リテーナ43が分割型にならざるを得ず、その構造が複雑になる。また、このものは、組み立てられた直動ガイド装置を不用意に縦にするとスリーブ42がその重さで落下し(図16)、ラックギヤ41a,42aがピニオンギヤ44から外れてしまうことがある。
他方、特許文献2のものは、リテーナ53に長穴53、軸受の凹部53cを設け、当該凹部53cにピニオンギヤ54の軸54bを落とし込むのであるから、リテーナ53の構造が単純である(図17(b)(c))。
ところで、リテーナをラック・ピニオン機構で駆動するガイドポストによる直動ガイド装置(特許文献1のもの)は、ピニオンギヤ44がガイドポストのラックギヤ41aに噛み合わされた状態でスリーブ43が嵌められ、このときピニオンギヤ44にスリーブ42のラックギヤ42aの外側端の歯から噛み合わされる。さらに、スリーブ43のラックギヤ42a端部の歯がピニオンギヤ44に噛み合わされた状態でスリーブ43が押し込まれる。このとき、スリーブ42とともにその進行速度の1/2の速度でリテーナ43がガイドポスト41に対して前進し、リテーナ43は、スリーブ42に対して後退しつつスリーブ42の中に嵌り込む。
このように組み立てられた位置でスリーブ43が所定ストロークで往復作動する。スリーブ42が所定の作動位置に前進したところでリテーナ43がスリーブ42に収まって組み立てが完了するには、ピニオンギヤ44をガイドポスト41に対して規定された所定の組み付け開始位置A(図15)においてスリーブ42のラックギヤ42aをピニオンギヤ44に噛み合わせることが必要であるが、ピニオンギヤ44のガイドポスト41に対する位置決めを正確かつ簡単容易に行うことが容易でない。
他方、ガイドポストによる直動ガイド装置においては、所定の直動精度を有し、摺動抵抗が小さく、耐久性が高いことが最も重要なことであり、極めて高精度の直動ガイド装置については、リテーナ及びスリーブがガイドポストに対して正確にかつ確実に所定の作動位置に組み付けられることが重要である。
したがって、上記問題は高精度の直動ガイド装置にとっては極めて重大な問題である。
特開2000−346064号公報 実開平7−4091号公報
この発明は、ガイドポストのラックギヤとスリーブのラックギヤにリテーナのピニオンギヤを噛み合わせて、リテーナの往復動をラック・ピニオン機構によって駆動するようにした直動ガイド装置について、
組み付け開始時のリテーナのガイドポストに対する位置、すなわち、ピニオンの組み付け開始位置が機械的に正確にかつ簡単容易に規定されるように、リテーナの構造及びガイドポストのラックギヤを工夫することをその課題とするものである。
上記課題を解決するための手段は、ガイドポストに筒状のスリーブが挿通され、このガイドポストとスリーブとの間隙内に多数の転動体を保持した筒状のリテーナが配置されており、ガイドポストのラックギヤとスリーブのラックギヤにリテーナのピニオンギヤを噛み合わせて、リテーナの往復動をラック・ピニオン機構によって規制するようにした直動ガイド装置を前提として次の(イ)(ロ)によるものである。
(イ)上記ピニオンギヤがリテーナの窓孔に着脱自在に配置されており、
(ロ)上記ガイドポストのラックギヤの一端にギヤを刻設しないランド部が設けられ、このランド部がピニオンギヤの組み付け開始位置を規定するとともに、スリーブ組み付け後のスリーブとリテーナの動作位置が設定される位置決め基準部材となること。
〔作用〕
リテーナの窓孔をガイドポストのラックギヤに合致させた状態で、リテーナをガイドポストに嵌合させ、ピニオンギヤを上記窓孔に嵌めてガイドポストのラックギヤに噛み合わせるとともに、ラックギヤの端部のランド部に当接させる。この位置を組み付け開始位置にして、スリーブを嵌合させてスリーブのラックギヤを上記ピニオンギヤに噛み合わせ、スリーブを移動させると、スリーブ及びリテーナがガイドポストに対して所定の動作位置に組み付けられる。
上記ランド部をガイドポストの両端に設けることができ、この場合はその左右両端のいずれ側からも同様にしてリテーナ、スリーブを組み付けることができる。そして、この組み付け側と反対のランド部にピニオンギヤが当たると、これ以上にリテーナ及びスリーブが進むことが阻止される。従って、スリーブの組み付け側の反対側へは、リテーナ及びスリーブがガイドポストから外れることはない。
また、上記ガイドポストのラックギヤとランド部は、ガイドポストの外周面に軸方向の全長にわたって設けた軸方向溝内に、ラックギヤが刻設されたラック部とラックギヤが設けられていないランド部とが別部材又は同一部材に形成された帯板材を固定して構成することができる。上記スリーブのラックギヤは、スリーブの内周面に軸方向の全長にわたって設けた軸方向溝内に、ラックギヤが刻設された帯板材を固定して構成することができる。このように、ラックギヤやランド部を、ガイドポスト、スリーブと別体で構成することで、ラックギヤやランド部を形成する帯板材をプレスなどで簡単に作製することができ、しかも、この帯板材を予め用意しこれをガイドポスト、スリーブに固定させることで、ラックギヤやランド部を設けたガイドポスト、スリーブを簡易に且つ短期に製造することができる。また、ラック部とランド部とがそれぞれ別部材に形成された帯板材とすれば、ガイドポストにおけるラックギヤの長さやランド部の位置の設定が簡易に行える。一方、ラック部とランド部とが同一部材に形成された帯板材とすれば、ラック部とランド部のガイドポストへの組み付け構造を簡単に形成することができる。
また、上記ガイドポストのラックギヤとランド部は、ガイドポスト外周面に直接形成して構成することもできる。このように、ラックギヤやランド部を、ガイドポストに一体形成することで、これを別体とする場合に比して、ガイドポストには、ラックギヤやランド部を形成する帯板材を固定するための軸方向溝を形成しなくてもよいから、ガイドポストの剛性を強い状態のまま保持することができる。
また、リテーナに設けた上記窓孔には、ピニオンギヤの軸を配置する軸受が形成されており、この軸受は、ピニオンギヤの軸の外径よりも大きく形成されてピニオンギヤがリテーナの進み方向の前後に移動可能となる隙間(遊び)を設けるようにしてもよい。この場合、ガイドポストにスリーブを嵌めて組み付けるに際し、上記組み付け開始位置にて、スリーブのラックギヤがピニオンギヤに当接されると、ピニオンギヤがリテーナの進み方向の前後に移動してスリーブのラックギヤとの噛み合わせ位置が自動調整される。従って、ピニオンギヤがスリーブのラックギヤに滑らかに噛み合わされ、ガイドポストに対するスリーブの組み付けを円滑に行うことができる。
また、上記窓孔における軸受の入り口には、ピニオンギヤの軸をガイドする舌片がリテーナの進み方向の前後に対向して形成することができ、この場合、舌片によって軸受に配置されたピニオンギヤの軸が軸受の略中心位置に配置することができる。従って、ピニオンギヤの軸での摩擦が低減され、ピニオンギヤの回転を円滑にすることができる。
本発明によれば、ガイドポストにおいてそのラックギヤの一端にギヤを刻設しないランド部を設けることで、組み付け開始時のリテーナ及びスリーブのガイドポストに対する組み付け開始位置が機械的に正確にかつ簡単容易に規定することができる。また同時に、組み付け後のリテーナ及びスリーブの動作位置も正確にかつ簡単容易に設定することができる。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、実施の形態による直動ガイド装置は、ガイドポスト11に筒状のスリーブ12が挿通され、このガイドポスト11とスリーブ12との間隙内に多数の転動体(ローラ31、ボール32等)30を保持した筒状のリテーナ13が配置されたものである。ガイドポスト11は、鋼、超硬合金、ステンレス等の金属製であり、中心孔を設けた中空軸で構成され、外周面が多角形形状(六角形形状)となっており、スリーブ12は、鋼、超硬合金、ステンレス等の金属製であり、内周面がガイドポスト11の外周面と相似な多角形形状(六角形形状)となっている。リテーナ13は、合成樹脂製であり、ガイドポスト11とスリーブ12の間隙の形状・大きさに合わせた多角形(六角形)筒状に形成されている。このリテーナ13には、転動体30として、多数のローラ31とボール32とが回転自在に保持されている。すなわち、ローラ31は、リテーナ13の各平面部に配置され、ボール32は、1箇所の角部を跨いだ2箇所の角部に配置されている。ローラ31やボール32は、各種金属、セラミック等からなる。そして、これらローラ31及びボール32は、ガイドポスト11の外周面とスリーブ12の内周面との間に転動自在に挟持されている。なお、ガイドポスト11においてボール32と対応する角部は、半円状の溝が形成されている。
また、図2も参照して、ガイドポスト11には、その外周面に軸方向溝15が対向して2つ設けられており、これらの軸方向溝15は、ガイドポスト11における転動体の転動部分の全長にわたって設けられている。この軸方向溝15は、ガイドポスト11の多角形断面の角部に設けられている。そして、各軸方向溝15には、片面にラックギヤが刻設された帯板材からなるラック部材11aと、平坦面からなるランド部を有するランド部材20とが嵌められて固定されている。ランド部材20は、スリーブ12及びリテーナ13組み付けの位置決め基準部材であって、ラック部材11aの端部に当接されてガイドポスト11の両端にそれぞれ設けられている。また、ランド部材20は、帯板材で形成されるが、ラックギヤが設けられていないランド部を有する部材である。なお、このガイドポスト11の両端のランド部材20は、同じ長さに設定されている。
また、図2も参照して、スリーブ12には、その内周面に軸方向溝16が対向して2つ設けられており、これらの軸方向溝16は、スリーブ12の全長にわたって設けられている。この軸方向溝16は、スリーブ12の多角形断面の角部に設けられており、ガイドポスト11の軸方向溝16と対向されている。そして、各軸方向溝16には、片面にラックギヤが刻設された帯板材からなるラック部材12aが全長にわたって嵌められて固定されている。
上記ガイドポスト11のランド部材20やラック部材11a、上記スリーブ12のラック部材12aは、鋼、ステンレス等の金属、セラミック、合成樹脂等の材質で形成することができる。そして、ラック部材11a,12aのラックギヤは、プレス、成形、切削、放電加工等により形成することができるが、この歯型自体は、図3に示すように、完全なギヤに形成されてもよいし(図3(a))、平面に多数の溝を刻設しただけの不完全なギヤであってもよい(図3(b))。
一方、図4も参照して、リテーナ13には、多角形の周壁の角部において軸方向中央位置に対向して窓孔18が2つ設けられている。これらの窓孔18は、軸方向に延びた貫通孔18aと周方向に延びた凹部の軸受18bとからなる十字状に形成されている。各窓孔18には、ピニオンギヤ14が配置されている。
上記ピニオンギヤ14は、例えば、金属製の軸に樹脂製のギヤを設けたもの、そのすべてが樹脂、金属、セラミック等から形成したものを使用することができる。そして、図5に示すように、このピニオンギヤ14における歯型は、インボリュート形(図5(a))、サイクロイド形(図5(b))等の各種の形状が採用されるが、歯元強さを有し歯の欠けが少ないことから、歯元が分厚くなるサイクロイド曲線に近似した形状のものが好ましい。
そして、図6を参照して、窓孔18の軸受18bは、ピニオンギヤ14の軸の外径よりも大きく形成されてピニオンギヤ14がリテーナ13の進み方向(軸線方向)の前後に移動可能となる遊び(隙間19)が設けられている。また、この軸受18bの入り口には、ピニオンギヤ14の軸をガイドする舌片18cが前後に対向して形成されている(図6(a))。これら舌片18cによって軸受に配置されたピニオンギヤ14の軸が軸受の略中心位置に配置される。従って、ピニオンギヤ14の軸での摩擦が低減され、ピニオンギヤ14の回転を円滑にすることができる。なお、ピニオンギヤ14の軸を軸受18bの略中心位置に配置させる手段としては、舌片18cに代えて、例えば、図6(b)に示すように、1対のコイルバネ18dを軸受18bに取り付けてピニオンギヤ14の軸を挟持するもの等、その他種々の手段を用いてもよい。
また、リテーナ13における軸受18には上記隙間19が設けられているので、ガイドポスト11にスリーブ12を嵌めて組み付けるに際し、組み付け開始位置にて、スリーブ12のラック部材12aにおけるラックギヤがピニオンギヤ14に当接されると、ピニオンギヤ14がリテーナ13の進み方向の前後に移動してスリーブ12のラックギヤとの噛み合わせ位置が自動調整される。従って、ピニオンギヤ14がスリーブ12のラックギヤに滑らかに噛み合わされ、ガイドポスト11に対するスリーブ12の組み付けを円滑に行うことができる。
上記直動ガイド装置は、次の手順で組み立てられる。
まず、リテーナ13の窓孔18をガイドポスト11のラック部材11aに合致させた状態でリテーナ13をガイドポスト11に嵌合させ、ピニオンギヤ14を上記窓孔18に嵌めてガイドポスト11のラック部材11aのラックギヤに噛み合わせるとともにリテーナ13を移動させてラック部材11aの端部のランド部材20に当接させる。ピニオンギヤ14がランド部材20に当接したこの位置にリテーナ13を止めておき、スリーブ12のラック部材12aをガイドポスト11のラック部材11aに合致させておいてスリーブ12をガイドポスト11に嵌める。
図7に示すように、リテーナ13のピニオンギヤ14がガイドポスト11のランド部材20の端部に達し、スリーブ12の端部がこのピニオンギヤ14に達した状態を、組み付け開始位置Aとする。そして、この組み付け開始位置Aからスリーブ12を移動させてピニオンギヤ14をスリーブ12のラック部材12aのラックギヤにも噛み合わさせ、さらにスリーブ12を移動させてガイドポスト11に嵌め込む。すると、ピニオンギヤ14が各ラック部材11a,12aのラックギヤに噛み合ってラック・ピニオン機構が組み立てられ、同時に、リテーナ13は、ガイドポスト11に対してスリーブ12の軸方向移動量の1/2だけ同方向に移動しつつスリーブ12の中に嵌り込んで行く。これにより、スリーブ12及びリテーナ13は、ガイドポスト11に対して所定の動作位置に自然と組み付けられる。すなわち、この動作位置の初期位置Bでは、リテーナ13がスリーブ12の略中央位置に到達した位置となる。従って、このようにして組み付けられた直動ガイド装置では、スリーブ12の往復運動の間にリテーナ13に保持する各転動体30がガイドポスト11の外周面とスリーブ12の内周面との間に挟持されて転動可能な状態となっている。
このようにして、直動ガイド装置の組み立てが完了する。
なお、上記ガイドポスト11の両端のランド部材20の長さが同じであるので、ガイドポスト11の両端を区別することなく上記手順で所定の動作位置にスリーブ12を組み付けることができる。そして、両端のランド部材20の長さを異ならしめることも可能であり、この場合は、ランド部材20の長さによって組み付け開始位置Aが異なり、組み付け後の動作位置が異なるので、両端のランド部材20を選択して利用することができる。
以上のように、本実施の形態による直動ガイド装置によれば、ガイドポスト11及びスリーブ12にラックギヤを設け、リテーナ13にピニオンギヤ14を設けてこれらによってラック・ピニオン機構を構成し、このラック・ピニオン機構によって、リテーナ13の往復運動を規制し、このことによって、リテーナ13の位置ずれ、転動体30の転動面(ガイドポスト11の外周面及びスリーブ12の内周面)に対する滑りを防止することができる。従って、スリーブ12の相対的な往復運動の間は、常に、リテーナ13に保持する各転動体30がガイドポスト11の外周面とスリーブ12の内周面とによって挟持されて転動することとなるから、本直動ガイド装置を長期間使用しても経年劣化を大幅に抑制することができる。
また、直動ガイド装置における予圧が、例えば2μm以下の低予圧のものにあっては転動体のスリップが発生し易いことから、上記ラック・ピニオン機構は、このような低予圧のものにおいてリテーナの位置ズレを規制するのに有効である。この場合、直動ガイド装置の予圧が低予圧であることから摺動抵抗が小さくし耐久性が高く、そして、上記ラック・ピニオン機構によってリテーナの位置ズレが防止されるため、高精度の直動精度を長期にわたって発揮させることができる。
そして、特に、本直動ガイド装置によれば、ガイドポスト11においてラック部材11aの端部に設けたランド部材20は、ガイドポスト11に対するスリーブ12及びリテーナ13の組み付けの位置決め基準部材となる。従って、このランド部材20を設けることで、組み付け開始時のリテーナ13及びスリーブ12のガイドポスト11に対する位置、すなわち、ラック・ピニオン機構の組み付け開始位置Aが機械的に正確にかつ簡単容易に規定することができる。また同時に、組み付け後のリテーナ13及びスリーブ12の動作位置も正確にかつ簡単容易に設定することができる。
そして、ランド部材20を短くすれば、スリーブ12の所定の動作位置をその組み付け側に近いガイドポスト11の位置に設定することができ、逆にランド部材20を長くすれば、組み付け側よりも遠いガイドポスト11の位置にスリーブ12の動作位置を設定することができる。このように、ランド部材20の長さを加減することによって簡単にスリーブ12が所定の動作位置に機械的に正確に組み付けることができる。
また、直動ガイド装置の組み立て後は、ピニオンギヤ14が組み付け側と反対側のランド部材20の端部に当たると、リテーナ13がこれ以上に進められなくなり、リテーナ13がこの反対側のランド部材20の方向に抜け出ることがない(図8参照)。従って、この反対側のランド部材20を下側にしてガイドポスト11の上部を把持して持ち上げても、ピニオンギヤ14がこのランド部材20に当接してスリーブ12及びリテーナ13が不用意にガイドポスト11から抜け落ちることもない。すなわち、スリーブ12は、予圧状態で転動体30をガイドポスト11との間で挟持するようにガイドポスト11に外嵌されているので、転動体30がスリップしない限り移動されないからである。このように、ランド部材20は、スリーブ12及びリテーナ13の抜け落ち防止のストッパともなる。
また、直動ガイド装置は、ラック部材11a,12a、ピニオンギヤ14によるラック・ピニオン機構を2つ備えており、これが中心軸に対して対称に配置されている。これにより、ラック・ピニオン機構による駆動力がリテーナ13の中心軸線に対して対称に作用するので、偏って作用する場合に比して、リテーナ13の往復運動がスムーズであり、また、リテーナ13の往復運動による負荷が各ピニオンギヤ14に分散される。
(その他)
上記リテーナ13には、ピニオンギヤ14を対向して2つ配置するが、一方の窓孔18にだけピニオンギヤ14を配置し他方の窓孔18にはピニオンギヤ14を配置しないようにすることもできる。これにより、1つのピニオンギヤ14の噛み合わせを行うことで組み立てられるので、リテーナ13及びスリーブ12の組み付けが容易に行える。
図9に示すように、上記リテーナ13において、同一の軸線方向に複数(例えば、2つ)のピニオンギヤ14を並べて配置することもできる。これにより、1つのピニオンギヤ14が破損しても、残りのピニオンギヤ14によって直動ガイド装置が運転不能になることを回避することができる。また、この場合、ランド部材20の長さが一定であっても、どれか1つのピニオンギヤ14を選んでランド部材20に当接させることで、そのピニオンギヤ14がスリーブ12の組み付け開始位置Aを決める基準ギヤとなるから、スリーブ12やリテーナ13の動作位置を適宜に変更することができる。
図10に示すように、上記リテーナ13において、同一の軸線方向に複数の窓孔18を並設し、どれか1つの窓孔18にピニオンギヤ14を配置させるようにすることもできる。この場合、ランド部材20の長さが一定であっても、ピニオンギヤ14を配置する窓孔18の位置によって、スリーブ12の組み付け開始位置Aを決めることとなるから、スリーブ12やリテーナ13の動作位置を適宜に変更することができる。
上記リテーナ13の窓孔18は、ピニオンギヤ14の軸を配置する軸受18bも貫通孔とした十字孔とすることもできる。これにより、上記窓孔18の形成が容易となる。なお、この場合、リテーナ13がガイドポスト11に嵌め合わされた状態でピニオンギヤ14を窓孔18に配置し、そしてスリーブ12が外嵌されることで、ピニオンギヤ14は、リテーナ13に回転自在に配置された状態となる。
また、窓孔18を貫通孔とした場合、この窓孔18は、図11に示すように、ピニオンギヤ14がリテーナ13の進み方向の前後に移動可能となる隙間19が形成される大きさとし、窓孔18の前後に舌片18cを形成するようにしてもよい。
また、図12(a)(b)に示すように、リテーナ13の窓孔18を例えば矩形状の貫通孔とし、この窓孔18に、ピニオンギヤ14を配置する軸受部材Gを嵌め込むようにしてもよい。これにより、リテーナ13において窓孔18の形成が容易となる。同時に、軸受部材Gを種々の形態に加工することが容易となる。例えば、図12(b)のように、リテーナ13と別体とした軸受部材Gにおいて孔g31や凹所G2〜G4を形成してピニオンギヤ14の軸の保持部分を弾性部Dとすることが容易にでき、これにより、ピニオンギヤ14をリテーナ13の進み方向の前後に移動可能にすることができる。
また、図13に示すように、リテーナ13の貫通孔による窓孔18に対し、軸受部材Gをリテーナ13の進み方向の前後に移動可能に遊嵌させる構成とすることも容易にでき、これによっても、軸受部材Gと共にピニオンギヤ14をリテーナ13の進み方向の前後に移動可能にすることができる。
また、図14に示すように、ピニオンギヤ14は、その軸径Rがリテーナ13の側壁の厚みtよりも大きいものを使用することもできる。この場合、ピニオンギヤ14の軸の強度が高くなり折れ難くなる。そのため、ピニオンのギヤと同じくピニオン軸をもプラスチック製とし、ピニオンギヤをプラスチックで一体成形できる点で有利となる。
上記ガイドポスト11のラックギヤを2つ設けるが、1つだけ設けることでもよい。この場合、ガイドポスト11の製作工数が軽減され、且つ製造コストが低減される。同様に、スリーブ12のラックギヤも1つ設けるだけにすればスリーブ12の製作工数が軽減され、且つ製造コストも低減される。
上記ランド部材20は、ラック部材11aの端部に一体に形成することもできる。この場合、ランド部材20及びラック部材11aのガイドポスト11への組み付け構造を簡略にすることができる。
上記ガイドポスト11のラックギヤとランド部は、ガイドポスト11外周面に直接形成して構成し、上記スリーブ12のラックギヤは、スリーブ12内周面に直接形成して構成することもできる。このように、ラックギヤやランド部を、ガイドポスト11、スリーブ12に一体形成することで、これを別体とする場合に比して、ガイドポスト11やスリーブ12には、ラックギヤやランド部を形成する帯板材を固定するための軸方向溝15,16を形成しなくてもよいから、ガイドポスト11やスリーブ12の剛性を強い状態のまま保持することができる。
上記ランド部は、ラックギヤの一端側にのみ配置することでもよい。これにより、ガイドポスト11の製作工数が軽減され、且つ製造コストが低減される。
また、ガイドポスト11、スリーブ12、リテーナ13は、各種の多角形形状を有するもの、円形形状のものなど種々の形状を採用することができる。また、転動体30も、各種のローラ31、ボール32等の各種の形状のものを使用することができる。
実施の形態による直動ガイド装置の構成を示す断面図である。 実施の形態による直動ガイド装置の構成を示す縦断面図である。 ガイドポスト及びスリーブのラックギヤの歯型の例を示す模式図であり、同図(a)は完全なギヤに形成されたもの、同図(b)は不完全なギヤに形成されたものをそれぞれ示す。 リテーナの側面図である。 ピニオンギヤの形態を示す模式図であり、同図(a)はインボリュート歯型のもの、同図(b)はサイクロイド歯型のものをそれぞれ示す。 リテーナに設けた窓孔の構造を示す断面図であり、同図(a)は窓孔に舌片を設けたもの、同図(b)は窓孔にコイルバネを取り付けたものをそれぞれ示す。 実施の形態による直動ガイド装置の組み立てを説明するための縦断面図である。 実施の形態による直動ガイド装置においてピニオンギヤが組み立て側と反対側のランド部に当接された状態を示す縦断面図である。 ピニオンギヤを2つ配置した状態を示す模式図である。 リテーナに複数の窓孔を設けた一例を示す側面図である。 リテーナのピニオンギヤを配置する窓孔として、一変形例を示す構成図である。 リテーナのピニオンギヤを配置する窓孔として、他の変形例を示す構成図である。 リテーナのピニオンギヤを配置する窓孔として、更に他の変形例を示す構成図である。 ピニオンギヤの一変形例を示す断面図である。 従来技術の直動ガイド装置の構成を示す縦断面図である。 従来技術の直動ガイド装置のスリーブ及びリテーナが落下する状態の説明図である。 他の従来技術の他の直動ガイド装置の要部構成を示す断面図である。
符号の説明
11:ガイドポスト
11a:ガイドポストのラックギヤ
12:スリーブ
12a:スリーブのラックギヤ
13:リテーナ
14:ピニオンギヤ
18:窓孔
19:隙間
20:ランド部

Claims (6)

  1. ガイドポストに筒状のスリーブが挿通され、このガイドポストとスリーブとの間隙内に多数の転動体を保持した筒状のリテーナが配置されており、ガイドポストのラックギヤとスリーブのラックギヤにリテーナのピニオンギヤを噛み合わせて、リテーナの往復動をラック・ピニオン機構によって規制するようにした直動ガイド装置であって、
    上記ピニオンギヤがリテーナの窓孔に着脱自在に配置されており、
    上記ガイドポストのラックギヤの一端にギヤを刻設しないランド部が設けられ、このランド部がピニオンギヤの組み付け開始位置を規定するとともに、スリーブ組み付け後のスリーブとリテーナの動作位置が設定される位置決め基準部材となる直動ガイド装置。
  2. 上記ランド部をガイドポストの両端に設けられている請求項1の直動ガイド装置。
  3. 上記ガイドポストのラックギヤとランド部は、ガイドポストの外周面に軸方向に設けた軸方向溝内に、ラックギヤが刻設されたラック部とラックギヤが設けられていないランド部とが別部材又は同一部材に形成された帯板材を固定して構成されており、
    上記スリーブのラックギヤは、スリーブの内周面に軸方向の全長にわたって設けた軸方向溝内に、ラックギヤが刻設された帯板材を固定して構成されている請求項1又は2の直動ガイド装置。
  4. 上記ガイドポストのラックギヤとランド部は、ガイドポスト外周面に直接形成して構成されている請求項1乃至3のいずれかの直動ガイド装置。
  5. 上記窓孔には、ピニオンギヤの軸を配置する軸受が形成されており、この軸受は、ピニオンギヤの軸の外径よりも大きく形成されてピニオンギヤがリテーナの進み方向の前後に移動可能となる隙間が設けられている請求項1乃至4のいずれかの直動ガイド装置。
  6. 上記軸受の入り口には、ピニオンギヤの軸をガイドする舌片がリテーナの進み方向の前後に対向して形成されている請求項5の直動ガイド装置。
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