以下、本発明による内燃機関の制御装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)を火花点火式多気筒(本例では4気筒)内燃機関(ガソリンエンジン)10に適用したシステムの概略構成を示している。この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排気ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともにインテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。燃料噴射手段としてのインジェクタ39は、噴射指示信号に応答して同噴射指示信号に含まれる指示噴射量の燃料を噴射するようになっている。
吸気系統40は、インテークマニホールド41、吸気管(吸気ダクト)42、エアフィルタ43、スロットル弁44及びスロットル弁アクチュエータ44aを備えている。
インテークマニホールド41は、各気筒の燃焼室25の吸気ポート31に接続されている。より詳細には、図2に示したように、インテークマニホールド41は各吸気ポートに接続された複数の枝部41aと、それらの枝部41aが集合したサージタンク部41bと、を備えている。図1及び図2に示したように、吸気管42はサージタンク部41bに接続されている。インテークマニホールド41及び吸気管42は吸気通路を構成している。図1に示したエアフィルタ43は吸気管42の端部に設けられている。スロットル弁44は吸気管42に回動可能設けられ、回動することにより吸気管42が形成する吸気通路の開口断面積を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ(スロットル弁駆動手段)44aは、DCモータからなり、指示信号に応答してスロットル弁44を回転駆動するようになっている。
排気系統50は、エキゾーストマニホールド51、エキゾーストパイプ(排気管)52、上流側触媒53、微粒子捕集フィルタ54、下流側触媒55、バイパス通路形成部材56及び開閉弁57を備えている。
エキゾーストマニホールド51は、図1に示したように、各気筒の燃焼室25の排気ポート34に接続されている。より詳細に述べると、図2に示したように、エキゾーストマニホールド51は複数の枝部51a1〜51a4と、それらの複数の枝部が集合した部分である一つの集合部51b、とからなっている。
枝部51a1の一端は第1気筒#1の排気ポートに接続され、枝部51a1の他端は集合部51bに接続されている。
枝部51a2の一端は第2気筒#2の排気ポートに接続され、枝部51a2の他端は集合部51bに接続されている。
枝部51a3の一端は第3気筒#3の排気ポートに接続され、枝部51a3の他端は集合部51bに接続されている。
枝部51a4の一端は第4気筒#4の排気ポートに接続され、枝部51a4の他端は集合部51bに接続されている。
エキゾーストパイプ52は、エキゾーストマニホールド51の集合部51bに接続されている。
ここで、説明の便宜上、第2気筒#2、第3気筒#3及び第4気筒#4を、前記多気筒内燃機関10が備える複数の気筒のうちの「一部の気筒」と称呼し、第1気筒#1を前記複数の気筒のうちの前記一部の気筒以外の「他の気筒」と称呼する。更に、説明の便宜上、枝部51a2、枝部51a3及び枝部51a4を便宜上「第1枝部」と称呼する。この称呼方法に従うと、「第1枝部は多気筒内燃機関10が備える複数の気筒のうちの一部の気筒の排気ポートに接続されている。」と表現することができる。また、枝部51a1を便宜上「第2枝部」と称呼する。この場合、「第2枝部は多気筒内燃機関10が備える複数の気筒のうちの他の気筒の排気ポートに接続されている。」と表現することができる。
加えて、エギゾーストパイプ52は、集合部51bとともに、集合部51bに接続された主通路部を構成していると表現することもできる。更に、第1枝部、集合部及び主通路部は、「前記一部の気筒の排気ポートを通して排出された排ガスを通過させる主排気通路」を構成する「主排気通路構成部」であると表現することもできる。
上流側触媒53は、セラミックからなる担持体に「触媒物質である貴金属」及び「セリア(CeO2)」を担持していて、酸素吸蔵・放出機能(単に「酸素吸蔵機能」又は「O2ストレージ機能」とも称呼する。)を有する三元触媒である。上流側触媒53は排気通路の集合部(エキゾーストマニホールド51の集合部51b)よりも下流のエキゾーストパイプ52に配設(介装)されている。上流側触媒53は、スタート・キャタリティック・コンバータ(SC)又は第1触媒とも称呼される。
微粒子捕集フィルタ54はセラミックからなる周知の微粒子フィルタであり、機関10から排出される微粒子を捕集するようになっている。微粒子捕集フィルタ54はパティキュレート・マター・フィルタ(PMF)とも称呼される。微粒子捕集フィルタ54は、上流側触媒53よりも下流の位置において排気通路(エキゾーストパイプ52)に配設(介装)されている。換言すると、微粒子捕集フィルタ54は前記上流側触媒53よりも下流の位置において前記主通路部に配設されている。また、上流側触媒53は、前記主通路部又は前記集合部であって前記微粒子捕集フィルタ54よりも上流の位置に配設されている。
下流側触媒55は、上流側触媒53と同様、セラミックからなる担持体に貴金属及びセリアを担持していて、酸素吸蔵機能を有する三元触媒である。下流側触媒55は微粒子捕集フィルタ54よりも下流の位置においてエキゾーストパイプ52に配設(介装)されている。換言すると、下流側触媒55は、前記主通路部であって微粒子捕集フィルタ54よりも下流の位置に配設されている。即ち、前記主排気通路の主通路部には、上流側触媒53、微粒子捕集フィルタ54及び下流側触媒55が、上流から下流に向けて順に直列に配設されている。下流側触媒55は、車両のフロア下方に配設されているため、アンダ・フロア・キャタリティック・コンバータ(UFC)又は第2触媒とも称呼される。
上流側触媒53及び下流側触媒55を構成する三元触媒は、図3に示したように、三元触媒に流入するガスの空燃比が所謂「ウインドウW」の範囲内にあるとき、未燃物(HC,CO等)を酸化するとともに窒素酸化物(NOx)を還元することにより、これらの有害成分を高い効率で浄化する特性(触媒機能)を有する。
また、三元触媒は、酸素吸蔵機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC、CO及びNOxを浄化することができる。即ち、機関の空燃比が理論空燃比よりもリーン側の空燃比となって三元触媒に流入するガスにNOxが多量に含まれると、触媒はNOxから酸素分子を奪って(NOxを還元し)、その奪った酸素分子を吸蔵する。このような状態は、三元触媒が「実質的に還元剤(還元成分)を保持している状態である。」と表現することもできる。また、機関の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比になって三元触媒に流入するガスにHC,CO等の未燃物(還元成分)が多量に含まれると、三元触媒は吸蔵している酸素分子をこれらの未燃物に対して与え、これらの成分を酸化(浄化)する。このような状態は、三元触媒が「実質的に酸化剤(酸化成分)を保持している状態である。」と表現することもできる。
再び、図1及び図2を参照すると、バイパス通路形成部材56は、管状の部材からなる。バイパス通路形成部材56の一端は、図2に示したように、第1気筒#1の排気ポートに接続された枝部51a1に接続されている。バイパス通路形成部材56の他端は、微粒子捕集フィルタ54と下流側触媒55との間の位置においてエキゾーストパイプ52に接続されている。即ち、バイパス通路形成部材56は、前記複数の気筒のうちの前記一部の気筒以外の気筒である他の気筒(第1気筒#1)の排気ポートを通して排出された排ガスを、微粒子捕集フィルタ54を通過させることなく、枝部51a1と協働して下流側触媒55に直接流入させるバイパス通路を構成する「バイパス通路構成部」に相当している。更に、そのバイパス通路構成部は、「一端が前記第2枝部(枝部51a1)に接続されるとともに他端が前記微粒子捕集フィルタ54と前記下流側触媒55との間の位置にて前記主通路部に接続されることにより前記バイパス通路を構成するバイパス通路形成部材からなる。」と表現することもできる。
開閉弁57は、電磁式開閉弁であって、指示(駆動信号、指示信号)に応答してバイパス通路形成部材56のバイパス通路を遮断及び開放するようになっている。開閉弁57が閉じられることによりバイパス通路が遮断されると、バイパス通路内のガスの通流が停止される。開閉弁57が開かれてバイパス通路が開放されると、第1気筒#1から排出された排ガスがバイパス通路形成部材56及び開閉弁57を通って、エキゾーストパイプ52であって微粒子捕集フィルタ54と下流側触媒55との間の位置に流入する。
更に、このシステムは、図1及び図2に示したように、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、水温センサ65、上流側空燃比センサ66、下流側空燃比センサ67及びアクセル開度センサ68を備えている。
熱線式エアフローメータ61は、吸気管42内を流れる吸入空気の質量流量を検出し、その質量流量(機関10の単位時間あたりの吸入空気量、吸入空気流量)Gaを表す信号を出力するようになっている。以下、Gaは「吸入空気量Ga」と称呼する。
スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁44の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。この信号はG2信号とも称呼される。
クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにクランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。クランクポジションセンサ64から出力されるパルスは後述する電気制御装置70により機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、電気制御装置70は、カムポジションセンサ63及びクランクポジションセンサ64からの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
水温センサ65は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
上流側空燃比センサ66は、図2に示したように、エキゾーストマニホールド51の集合部51b(排気通路の集合部)と上流側触媒53との間の位置においてエキゾーストマニホールド51及びエキゾーストパイプ52の何れかに配設されている。換言すると、上流側空燃比センサ66は、前記主通路部又は前記集合部であって上流側触媒53よりも上流の位置に配設されている。上流側空燃比センサ66は、上流側空燃比センサ66が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(上流側触媒53に流入する排ガスである被検出ガス)の空燃比に応じた出力値を出力するようになっている。
より具体的に述べると、上流側空燃比センサ66は限界電流式の酸素濃度センサである。上流側空燃比センサ66は、図4に示したように、被検出ガスの空燃比A/F(従って、機関に供給される混合気の空燃比)に応じた電圧である出力値Vabyfsを出力するようになっている。この出力値Vabyfsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比であるときに値Vstoichに一致する。出力値Vabyfsは、被検出ガスの空燃比が大きくなる(リーンとなる)ほど増大する。
後述する電気制御装置70は、図4により示したテーブル(マップ)Mapabyfsを記憶していて、そのテーブルに実際の出力値Vabyfsを適用することによって空燃比を検出する(検出空燃比を取得する)ようになっている。但し、上流側空燃比センサ66は、上流側空燃比センサ66に到達しているガス(即ち、被検出ガス)の空燃比が時間軸上でステップ状にしても出力値Vabyfsが徐々に変化するという検出応答遅れ特性を有する。より具体的に述べると、上流側空燃比センサ66に到達しているガスの空燃比の値を入力信号とし、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfs及びテーブルMapabyfsに基いて求められる空燃比の値を出力信号とするとき、出力信号は入力信号に対してローパスフィルタ処理(例えば、所謂「なまし処理」を含む一次遅れ処理及び二次遅れ処理等)を施した信号と極めて似た信号となる。
下流側空燃比センサ67は、図2に示したように、微粒子捕集フィルタ54と下流側触媒55との間の位置においてエキゾーストパイプ52(主通路部)に配設されている。より詳細には、下流側空燃比センサ67は、バイパス通路形成部材56とエキゾーストパイプ52との接続箇所(合流位置)と、下流側触媒55と、の間の位置において、エキゾーストパイプ52(主排気通路の主通路部)に配設されている。下流側空燃比センサ67は、下流側空燃比センサ67が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(即ち、下流側触媒55に流入する排ガスである被検出ガス)の空燃比に応じた出力値を出力するようになっている。
より具体的に述べると、下流側空燃比センサ67は起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサである。従って、下流側空燃比センサ67は、酸素濃度センサとも称呼される。下流側空燃比センサ67は、図5に示したように、理論空燃比近傍において急変する電圧である出力値Voxsを出力する。即ち、下流側空燃比センサ67は、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリーン側の空燃比であるときに略0.1(V)、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリッチ側の空燃比であるときに略0.9(V)、空燃比が理論空燃比のときは0.5(V)の電圧を出力するようになっている。更に、下流側空燃比センサ67は、被検出ガスの空燃比が理論空燃比近傍の空燃比(前述した、三元触媒のウインドウWに実質的に対応する空燃比)であるとき、被検出ガスの空燃比がリッチからリーンに変化するに従って急激に減少する(略0.9(V)から略0.1(V)に向けて変化する)電圧を出力するようになっている。なお、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて得られる下流側空燃比afdownは、図5に示した出力値Voxsと下流側空燃比afdownとの関係を表す関数をfとするとき、afdown=f(Voxs)により求められる。
再び、図1を参照すると、アクセル開度センサ68は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、アクセルペダル81の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)及び定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、並びに、ADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース75は、前記センサ61〜68と接続され、CPU71にセンサ61〜68からの信号を供給するとともに、CPU71の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39、スロットル弁アクチュエータ44a及び開閉弁57等に駆動信号(指示信号)を送出するようになっている。
(作動)
次に、上記のように構成された第1制御装置による空燃比制御の概要について説明する。第1制御装置は、通常時制御及び微粒子捕集フィルタ再生制御(フィルタ再生制御)を、メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御等を利用しながら実行するようになっている。
第1制御装置のCPU71は、図6に示した概略フローチャートにより示した手順に沿って上述した各種の制御を行うようになっている。CPU71は、図6に示した手順を所定時間の経過毎に繰り返すようになっている。なお、以下の説明において、上流側空燃比センサ66及び下流側空燃比センサ67は共に活性化していると仮定する。
CPU71は、ステップ600から処理を開始してステップ610に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であるか否かを判定する。フィルタ再生要求フラグXPMの値は、微粒子捕集フィルタ54を再生する要求(フィルタ再生要求)が発生しているときに「1」に設定され、微粒子捕集フィルタ54を再生する必要がないとき「0」に設定される。フィルタ再生要求フラグXPMの操作については後述する(図7を参照。)。
いま、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であると仮定する。この場合、CPU71はステップ610にて「No」と判定し、ステップ620に進んで開閉弁57を閉じる指示を開閉弁57に与え、バイパス通路形成部材56のバイパス通路を遮断する。
次に、CPU71はステップ630に進み「通常制御」を実行する。この通常制御においては、第1気筒乃至第4気筒(複数の気筒の総て)のそれぞれに供給される混合気の空燃比の平均が実質的に理論空燃比(理論空燃比近傍空燃比)となるように、各気筒に供給される混合気の空燃比(各気筒に対する燃料噴射量)が制御される。
なお、「ある気筒に供給される混合気の空燃比を制御する」ことは「その気筒に対応して備えられているインジェクタ39からの燃料噴射を制御する」ことにより達成される。また、ここでの理論空燃比近傍空燃比は、上流側触媒53及び下流側触媒55のウインドウW内の空燃比であって、且つ、理論空燃比より僅かな所定値ΔAFだけリッチ側の空燃比(弱リッチ空燃比AFR)である。
より具体的に述べると、CPU71は、ステップ630において、後に詳述する「メインフィードバック制御」及び「サブフィードバック制御」の両制御を実行する。この場合、メインフィードバック制御の上流側目標空燃比abyfrは理論空燃比stoichに設定され、サブフィードバック制御の下流側目標値Voxsrefは弱リッチ空燃比AFRに相当する値Vrichに設定される。メインフィードバック制御は、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいて得られる上流側空燃比abyfsを上流側目標空燃比abyfr(メインフィードバック制御用目標空燃比abyfrtgt)に一致させるフィードバック制御である。サブフィードバック制御は、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを下流側目標値Voxsrefに一致させるフィードバック制御である。その後、CPU71はステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
この通常制御により、上流側触媒53及び下流側触媒55に流入するガスの空燃比はウインドウWの範囲内の理論空燃比近傍空燃比となるから、未燃物(HC,CO等)及び窒素酸化物(NOx)は、高い浄化率にて浄化される。
一方、CPU71は図7にフローチャートにより示したフィルタ再生要求フラグ操作ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。従って、CPU71は所定のタイミングにてステップ700から処理を開始し、ステップ710に進んで「前回のフィルタ再生制御を終了してからの吸入空気量Gaの積算値SGa」が所定の閾値(フィルタ再生制御実行閾値)SGath以上となっているか否かを判定する。
この積算値SGaは所定時間Δtsの経過毎に実行される図示しない吸入空気量積算ルーチンにより更新されている。即ち、CPU71は、所定時間Δtsの経過毎に、その時点の積算値SGaにその時点にてエアフローメータ61により検出されている吸入空気量Gaを加えることにより、積算値SGaを更新する。積算値SGaはバックアップRAM74内に格納される。機関10の運転によって発生する微粒子の量は吸入空気量Gaが大きくなるほど大きくなるので、積算値SGaは微粒子捕集フィルタ54に捕集された微粒子の量を表す量となる。なお、積算値SGaはフィルタ再生制御の実行が完了すると、吸入空気量積算ルーチンによって「0」に設定(クリア)されるようになっている。
この時点において積算値SGaが閾値SGath以上であると、CPU71はステップ710からステップ720に進んでフィルタ再生要求フラグXPMの値を「1」に設定し、ステップ730に進む。これに対し、積算値SGaが閾値SGathより小さいと、CPU71はステップ710からステップ730に直接進む。
なお、後述するように、積算値SGaに代え、微粒子捕集フィルタ54に捕集された微粒子の積算量(微粒子捕集量)SPMを積算値SGaよりも精度良く推定しておき、ステップ710を「推定された微粒子捕集量SPMが閾値SPMth以上か否か」を判定するステップに変更してもよい(後述する図15のステップ1510乃至ステップ1525を参照。)。
CPU71は、ステップ730にてフィルタ再生制御の開始時点(この場合、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」から「1」へと変化した時点)から所定時間Tsth(フィルタ再生制御実行時間Tsth)が経過したか否かを判定する。そして、フィルタ再生制御の開始時点から所定時間Tsth(フィルタ再生制御実行時間Tsth)が経過していると、CPU71はステップ730にて「Yes」と判定してステップ740に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値を「0」に設定する。その後、CPU71はステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、フィルタ再生制御の開始時点から所定時間Tsthが経過していなければ、CPU71はステップ730にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、フィルタ再生要求フラグXPMは、前回のフィルタ再生制御終了後からの吸入空気量Gaの積算値SGaが閾値SGath以上となったとき「1」に設定され、フィルタ再生要求フラグXPMが「0」から「1」になってから所定時間Tsthが経過すると「0」に設定される。従って、図6のステップ620及びステップ630による通常制御の通算実行期間が所定期間以上となると、積算値SGaの値が閾値SGath以上となるので、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」に設定される。
このとき、CPU71が図6のステップ610の処理を実行すると、CPU71はステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ640に進んで開閉弁57を開く指示を開閉弁57に与え、バイパス通路形成部材56のバイパス通路を開放する(ガスの通流が可能な状態に設定する)。
次に、CPU71はステップ650に進み「フィルタ再生制御」を実行する。このフィルタ再生制御においては、第1気筒に供給される混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に設定され、第2気筒、第3気筒及び第4気筒のそれぞれに供給される混合気の空燃比の平均は理論空燃比よりもリーン側の空燃比に設定される。但し、第1気筒乃至第4気筒(即ち、総ての気筒)のそれぞれに供給される混合気の全体の空燃比の平均が理論空燃比又は理論空燃比近傍空燃比(本例においては、弱リッチ空燃比AFR)となるように、第1気筒に供給される混合気の空燃比及び第2気筒〜第4気筒に供給される混合気の空燃比が制御される。
より具体的に述べると、CPU71は、ステップ650において、第1気筒に対する燃料噴射量を第2〜第4気筒のそれぞれに対する燃料噴射量よりも増量する。例えば、それぞれの気筒に供給される混合気の全体の空燃比を弱リッチ空燃比AFRに維持するために必要な一気筒あたりの燃料噴射量がFiであるとすると、第1気筒の燃料噴射量はFi・(1+3a)に設定され、第2気筒〜第4気筒のそれぞれの燃料噴射量はFi(1−a)に設定される。ここで、値aは0より大きく1より小さい数である。即ち、全体では機関10の1サイクル(クランク角度720度)あたりに4・Fi(各気筒に対する平均値=Fi)の燃料が噴射される。このとき、CPU71はメインフィードバック制御を停止し、サブフィードバック制御のみを実行する。サブフィードバック制御の下流側目標値Voxsrefは弱リッチ空燃比AFRに相当する値Vrichに設定される(図5を参照。)。
このフィルタ再生制御により、第2気筒〜第4気筒(複数の気筒のうちの一部の気筒)に理論空燃比よりもリーン側の空燃比(フィルタ再生制御用リーン空燃比)の混合気が供給されるので、第2気筒〜第4気筒からはそれらの気筒の排気ポートのそれぞれを通して「過剰な酸素を含む排ガス」が排出される。その排ガスは第2気筒、第3気筒及び第4気筒にそれぞれ連通している枝部51a2、枝部51a3及び枝部51a4(即ち、「第1枝部」)を通して集合部51bへと流れ、次いで、エキゾーストパイプ52内を通過する。従って、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は次第に増大する。そして、酸素吸蔵量OSA1が上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に略一致すると、酸素は上流側触媒53から流出して微粒子捕集フィルタ54に流入する。その結果、微粒子捕集フィルタ54に捕集されていた微粒子が燃焼するので、微粒子捕集フィルタ54の再生が開始する。
即ち、フィルタ再生制御において、前記フィルタ再生制御用リーン空燃比に設定された混合気が前記一部の気筒(第2〜第4気筒)内において燃焼することにより生成された「過剰な酸化成分(例えば、酸素)を含む排ガス」が前記主排気通路(前記第1枝部、前記集合部及び前記主通路部)を通して微粒子捕集フィルタ54に供給される。従って、微粒子捕集フィルタ54に捕集されている微粒子が燃焼する。この結果、微粒子捕集フィルタ54が再生させられ始める。このとき、前記一部の気筒内において多量に発生した窒素酸化物(NOx)は、上流側触媒53によっては殆ど浄化されないので、下流側触媒55に流入する。
一方、第1気筒(複数の気筒のうちの他の気筒)に理論空燃比よりもリッチ側の空燃比(フィルタ再生制御用リッチ空燃比)の混合気が供給されるので、第1気筒から第1気筒の排気ポートを通して「過剰な還元成分(未燃物HC,CO)を含む排ガス」が排出される。その排ガスは枝部51a1の一部とバイパス通路形成部材56とからなるバイパス通路(バイパス通路構成部)を通過して(上流側触媒53及び微粒子捕集フィルタ54を通過することなく)下流側触媒55に直接流入する。
従って、下流側触媒55には、主排気通路を介して窒素酸化物が流入し、バイパス通路を介してその窒素酸化物を還元する還元成分が流入する。従って、窒素酸化物は下流側触媒55内で浄化(還元)される。この結果、第1制御装置は、窒素酸化物の排出量を低減しながら微粒子捕集フィルタ54を再生させることができる。
また、フィルタ再生制御中においても、第1気筒乃至第4気筒(即ち、総ての気筒)のそれぞれに供給される混合気の全体の空燃比の平均が理論空燃比又は理論空燃比近傍空燃比(本例においては、弱リッチ空燃比AFR)となるように制御されるので、下流側触媒55にもウインドウWの範囲内の理論空燃比近傍空燃比の排ガスが流入する。従って、下流側触媒55は窒素酸化物を高効率にて浄化(還元)することができる。この結果、フィルタ再生制御中における窒素酸化物の排出量を極めて小さくすることができる。
このフィルタ再生制御が所定時間Tsth以上だけ継続したとき、CPU71が図7のステップ730の処理を実行すると、CPU71はステップ730からステップ740に進んでフィルタ再生要求フラグXPMの値を「0」に設定する。この結果、CPU71は図6のステップ610にて「No」と判定してステップ620及びステップ630へと進み、通常制御を再び実行する。
(通常制御の詳細)
ここで、上記ステップ630において実行されるメインフィードバック制御及びサブフィードバック制御について説明する。
<メインフィードバック制御の概要>
前述したように、第1制御装置は、通常制御において、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいて取得された上流側空燃比abyfsが上流側目標空燃比abyfr(メインフィードバック目標値)に一致するように機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御(メインフィードバック制御)する。上流側目標空燃比abyfrは通常制御時において理論空燃比に設定される。なお、その他の場合(例えば、機関暖機中及び触媒過熱防止時等)において上流側目標空燃比abyfrは理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に設定されることがある。
<サブフィードバック制御の概要>
前述したように、第1制御装置は、通常制御及びフィルタ再生制御において、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが、下流側目標空燃比に相当する値である下流側目標値Voxsrefに一致するように、機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御(サブフィードバック制御)する。この下流側目標値Voxsrefは、図5に示したように、下流側空燃比センサ67が配設された位置を通過するガス(被検出ガス)の空燃比が理論空燃比より僅かな所定値ΔAFだけリッチ側の空燃比(弱リッチ空燃比AFR)に相当する空燃比であるときに下流側空燃比センサ67が出力するべき値(例えば、Voxsref=Vrich=0.55V)に設定されている。
これにより、機関10に供給される混合気の全体の空燃比、即ち、下流側触媒55に流入するガスの空燃比の平均(中心、中央値)は理論空燃比よりも僅かにリッチ側の空燃比(弱リッチ空燃比AFR)に一致させられる。この弱リッチ空燃比AFRは、図3に示したように、ウインドウWの範囲内であって理論空燃比よりも僅かにリッチ側の空燃比である。
ところで、上流側触媒53は酸素吸蔵機能を有するから、上流側触媒53の上流の空燃比変化は所定の遅れ時間が経過した後に上流側触媒53の下流の空燃比変化となって現れる。従って、サブフィードバック制御のみでは過渡的な空燃比変動を抑制することが困難である。そこで、第1制御装置は、上記メインフィードバック制御を実行し、過渡的な空燃比変動を抑制する。このとき、第1制御装置は、メインフィードバック制御とサブフィードバック制御との間に制御上の干渉が発生することがないように、機能ブロック図である図8に示した複数の手段等によって空燃比制御を実行する。以下、図8を参照しながら説明する。但し、以下の説明は、通常制御(各気筒に供給される燃料噴射量が気筒間で相違しない制御)におけるメインフィードバック制御及びサブフィードバック制御の態様に従って行われる。
<補正後基本燃料噴射量の算出>
筒内吸入空気量算出手段A1は、エアフローメータ61が計測している吸入空気量Gaと、クランクポジションセンサ64の出力に基づいて得られる機関回転速度NEと、ROM72が記憶しているテーブルMapMcと、に基づき今回の吸気行程を迎える気筒の吸入空気量である筒内吸入空気量Mc(k)を求める。ここで、添え字の(k)は、今回の吸気行程に対する値であることを示している。筒内吸入空気量Mc(k)は、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。筒内吸入空気量Mc(k)は機関10の吸気通路における空気の挙動をモデル化した周知の空気量推定モデル(空気モデル)を用いて求められてもよい。
上流側目標空燃比設定(決定)手段A2は、上流側目標空燃比abyfr(k)を理論空燃比に設定する。上流側目標空燃比abyfr(k)は以下に述べるように変更されることもあるので、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。即ち、上流側目標空燃比設定(決定)手段A2は、内燃機関10の運転状態である機関回転速度NE及びアクセルペダル操作量Accp(機関の負荷)等に基づいて上流側目標空燃比abyfr(k)を決定するように構成されてもよい。
補正前基本燃料噴射量算出手段A3は、下記の(1)式に示したように、筒内吸入空気量算出手段A1により求められた筒内吸入空気量Mc(k)を上流側目標空燃比設定手段A2により設定された上流側目標空燃比abyfr(k)で除することにより、機関の空燃比を上流側目標空燃比abyfr(k)とするための今回の吸気行程に対する基本燃料噴射量Fbaseb(k)を求める。基本燃料噴射量Fbaseb(k)は、後述する基本補正値KF等による補正がなされる前の基本燃料噴射量であるから、補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)とも称呼される。補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)は各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。
Fbaseb(k)=Mc(k)/abyfr(k) …(1)
補正後基本燃料噴射量算出手段A4は、補正前基本燃料噴射量算出手段A3により求められた今回の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)に後述する基本補正値算出手段A16により求められてバックアップRAM74に格納されている基本補正値KFを乗じることで補正後基本燃料噴射量Fbase(k)(=KF・Fbaseb(k))を求める。基本補正値KFを算出する基本補正値算出手段A16については後に詳述する。
このように、第1制御装置は、筒内吸入空気量算出手段A1、上流側目標空燃比設定手段A2、補正前基本燃料噴射量算出手段A3、補正後基本燃料噴射量算出手段A4及び基本補正値算出手段A16を利用して、補正後基本燃料噴射量Fbase(k)を求める。
<最終燃料噴射量の算出>
最終燃料噴射量算出手段A5は、下記の(2)式により示したように、補正後基本燃料噴射量Fbase(k)(=KF・Fbaseb(k))に後述するメインフィードバック補正値更新手段A15によって求められているメインフィードバック補正値KFmainを乗じ、それらの積(=Fbase(k)・KFmain)に後述するPIDコントローラA9によって求められているサブフィードバック補正値Fisubを加えて今回の最終燃料噴射量Fi(k)を求める。最終燃料噴射量Fi(k)は、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。
Fi(k)=(KF・Fbaseb(k))・KFmain+Fisub=Fbase(k)・KFmain+Fisub …(2)
このように、第1制御装置は、最終燃料噴射量算出手段A5により、補正後基本燃料噴射量Fbase(k)をメインフィードバック補正値KFmainとサブフィードバック補正値Fisubとに基づいて補正することにより最終燃料噴射量Fi(k)を求める。更に、第1制御装置は、この最終燃料噴射量Fi(k)の燃料が、今回の吸気行程を迎える気筒のインジェクタ39から噴射されるように、そのインジェクタ39に対して噴射指示信号を送出する。換言すると、噴射指示信号は、最終燃料噴射量Fi(k)に関する情報を指示噴射量として含んでいる。
<サブフィードバック補正値の算出>
下流側目標値設定手段A6は、下流側目標値Voxsrefを出力するようになっている。下流側目標値Voxsrefは、上述した弱リッチ空燃比AFRに対応する値Vrich(例えば、0.55(V))に設定される。なお、下流側目標値設定手段A6は、上述した上流側目標空燃比設定手段A2と同様、内燃機関10の運転状態である機関回転速度NE及びアクセルペダル操作量Accp(機関の負荷)等に基づいて下流側目標値Voxsrefを変更するように構成され得る。
出力偏差量算出手段A7は、下記(3)式に基づいて、下流側目標値設定手段A6により設定されている現時点(具体的には、今回のFi(k)の噴射指示開始時点)での下流側目標値Voxsrefから同現時点での下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求める。出力偏差量算出手段A7は、求めた出力偏差量DVoxsをローパスフィルタA8に出力する。
DVoxs=Voxsref−Voxs …(3)
ローパスフィルタA8は一次のデジタルフィルタである。ローパスフィルタA8の特性を表す伝達関数A8(s)は下記の(4)式により示される。(4)式において、sはラプラス演算子であり、τ1は時定数である。ローパスフィルタA8は周波数(1/τ1)以上の高周波数成分が通過することを実質的に禁止する。ローパスフィルタA8は出力偏差量DVoxsの値を入力するとともに出力偏差量DVoxsの値をローパスフィルタ処理した後の値であるローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowをPIDコントローラA9に出力する。
A8(s)=1/(1+τ1・s) …(4)
PIDコントローラA9は、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを下記(5)式に基づいて比例・積分・微分処理(PID処理)し、サブフィードバック補正値Fisubを求める。
Fisub=Kp・DVoxslow+Ki・SDVoxslow+Kd・DDVoxslow …(5)
上記(5)式において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。また、SDVoxslowはローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの時間積分値であり、DDVoxslowはローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの時間微分値である。以上により、サブフィードバック補正値Fisubが求められる。
以上から明らかなように、下流側目標値設定手段A6、出力偏差量算出手段A7、ローパスフィルタA8及びPIDコントローラA9はサブフィードバック補正値算出手段を構成している。
<メインフィードバック制御及びメインフィードバック補正値の算出>
先に説明したように、上流側触媒53は触媒機能及び酸素吸蔵機能を有している。従って、上流側触媒53の上流の排ガスの空燃比の変動における「比較的周波数の高い高周波数成分(前記周波数1/τ1以上の高周波数成分)」及び「比較的周波数が低く且つ振幅が比較的小さい低周波数成分(前記周波数1/τ1以下の周波数にて変動するとともに理論空燃比からの偏移量が比較的小さい低周波成分)」は、上流側触媒53の触媒機能及び酸素吸蔵機能により吸収されるから、上流側触媒53の下流の排ガスの空燃比の変動として現れ難い。
従って、例えば、排ガスの空燃比が前記周波数(1/τ1)以上の高周波数で大きく変動するような「過渡運転状態における空燃比の急変」に対する補償は、サブフィードバック制御により行われ得ない。それ故、「過渡運転状態における空燃比の急変」に対する補償を確実に行うためには、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいたメインフィードバック制御を行う必要がある。
一方、上流側触媒53の上流の排ガスの空燃比の変動における「周波数が比較的低くて振幅が比較的大きい低周波数成分(例えば、前記周波数(1/τ1)以下の周波数で変動するとともに理論空燃比からの偏移量が比較的大きい低周波成分)」は、上流側触媒53により吸収され得ない。従って、そのような上流側触媒53の上流における空燃比の変動は、所定の遅れを有しながら下流の排ガスの空燃比の変動として現れる。この結果、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsと下流側空燃比センサ67の出力値Voxsとが理論空燃比近傍の空燃比に対して互いに逆方向に偏移した空燃比を示す値となる場合が存在する。この場合、メインフィードバック制御とサブフィードバック制御は機関に供給される混合気の空燃比を互いに逆方向に補正しようとするため、これらの制御の間に空燃比制御上の干渉が生じる場合がある。
以上のことから、第1制御装置は、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsの変動における各周波数成分のうち上流側触媒53の下流の空燃比の変動として現れ得る程度の周波数成分である所定の周波数(本例では、周波数(1/τ1))以下の低周波数成分を上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsから除去した値をメインフィードバック制御に使用する。このメインフィードバック制御に使用される上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに応じた値は、本例においては、「メインフィードバック制御用目標空燃比abyfrtgtと上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfs(k)に基づく上流側空燃比(検出空燃比)abyfs(k)との偏差Daf」に対して「ハイパスフィルタ処理を施した値DafHi」である。この値DafHiに基づいてメインフィードバック制御を実行する結果、前述した空燃比制御上の干渉が発生することを回避することができる。より具体的には、メインフィードバック制御の結果として得られるメインフィードバック補正値は以下に述べるようにして求められる。
テーブル変換手段A10は、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsと、図4に示した上流側空燃比センサ出力値Vabyfsと空燃比A/Fとの関係を表すテーブルMapabyfsと、に基づいて、上流側空燃比センサ66が検出している現時点の検出空燃比abyfs(k)を求める。
目標空燃比遅延手段A11は、上流側目標空燃比設定手段A2により決定され、且つ、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されている上流側目標空燃比abyfrのうち、現時点からNストローク(N回の吸気行程)前の時点の上流側目標空燃比abyfrをRAM73から読み出し、これを上流側目標空燃比abyfr(k-N)として設定する。ここで、添え字の(k-N)は、今回の吸気行程からNストローク(4気筒エンジンにおいて、N・180°CA、CA;クランク角)前の吸気行程に対した値であることを示している。上流側目標空燃比abyfr(k-N)は、現時点からNストローク前に吸気行程を迎えた気筒の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)(=Mc(k-N)/abyfr(k-N))を算出するために用いられた上流側目標空燃比である(上記(1)式を参照。)。
ここで、前記値Nは、内燃機関10の排気量及び燃焼室25から上流側空燃比センサ66までの距離等により異なる値である。このように、現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)をメインフィードバック補正値の算出に用いるのは、インジェクタ39から噴射された燃料を含み且つ燃焼室25内で燃焼された混合気が上流側空燃比センサ66に到達するまでには、Nストロークに相当する無駄時間L1を要するからである。なお、値Nは、機関回転速度NEが大きいほど小さくなり、且つ、機関の負荷(例えば、筒内吸入空気量Mc)が大きくなるほど小さくなるように変更されることが望ましい。
ローパスフィルタA12は、目標空燃比遅延手段A11から出力された現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)に対してローパスフィルタ処理を施し、メインフィードバック制御用目標空燃比(上流側フィードバック制御用目標空燃比)abyfrtgt(k)を算出する。メインフィードバック制御用目標空燃比abyfrtgt(k)を、以下、単に「MFB用目標空燃比abyfrtgt(k)」とも称呼する。このように、MFB用目標空燃比abyfrtgt(k)は、上流側目標空燃比設定手段A2により決定されていた上流側の上流側目標空燃比abyfr(k-N)に応じた値(基づいた値)である。
このローパスフィルタA12は一次のディジタル・フィルタである。ローパスフィルタA12の伝達特性A12(s)は下記の(6)式により示される。(6)式において、sはラプラス演算子であり、τは時定数(応答性に関するパラメータ)である。この特性により、周波数(1/τ)以上の高周波数成分の通過が実質的に禁止される。
A12(s)=1/(1+τ・s) …(6)
前述したように、上流側空燃比センサ66に到達しているガスの空燃比の値を入力信号とし、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基いて求められる空燃比の値を出力信号とするとき、出力信号は入力信号に対してローパスフィルタ処理(例えば、所謂「なまし処理」を含む一次遅れ処理及び二次遅れ処理等)を施した信号と極めて似た信号となる。この結果、ローパスフィルタA12により生成されるMFB用目標空燃比abyfrtgt(k)は、上流側空燃比センサ66に上流側目標空燃比abyfr(k−N)に応じた望ましい空燃比の排ガスが到達しているとき、実際に上流側空燃比センサ66が出力するであろう値となる。
上流側空燃比偏差算出手段A13は、下記(7)式に基づいて、「ローパスフィルタA12から出力されたMFB用目標空燃比abyfrtgt(k)」から「テーブル変換手段A10により求められた現時点の検出空燃比abyfs(k)」を減じることにより、空燃比偏差Dafを求める。この空燃比偏差Dafは、Nストローク前の時点において筒内に供給された混合気の空燃比の目標空燃比からの偏差を表す量である。
Daf=abyfrtgt(k)−abyfs(k) …(7)
ハイパスフィルタA14は一次のフィルタである。ハイパスフィルタA14の特性を表す伝達関数A14(s)は(8)式により示される。(8)式において、sはラプラス演算子であり、τ1は時定数である。時定数τ1は上記ローパスフィルタA8の時定数τ1と同一の時定数である。ハイパスフィルタA14は、周波数(1/τ1)以下の低周波数成分が通過することを実質的に禁止する。
A14(s)={1−1/(1+τ1・s)} …(8)
ハイパスフィルタA14は、前記上流側空燃比偏差算出手段A13により求められた空燃比偏差Dafを入力するとともに、上記(8)式より表された特性式に従って空燃比偏差Dafをハイパスフィルタ処理した後の値であるメインフィードバック制御用偏差DafHiを出力する。
メインフィードバック補正値更新手段A15は、ハイパスフィルタA14の出力値であるメインフィードバック制御用偏差DafHiを比例処理する。即ち、メインフィードバック補正値更新手段A15は、メインフィードバック制御用偏差DafHiに比例ゲインGpHiを乗じることにより、メインフィードバック補正値KFmainを求める。このメインフィードバック補正値KFmainは、前記(2)式により示したように、最終燃料噴射量Fi(k)を求める際に使用される。
なお、メインフィードバック補正値更新手段A15は、下記(9)式に基いて、ハイパスフィルタA14の出力値であるメインフィードバック制御用偏差DafHiを比例・積分処理(PI処理)することにより、メインフィードバック補正値KFmainを求めてもよい。
KFmain=(Gphi・DafHi+Gihi・SDafHi)・KFB …(9)
上記(9)式において、Gphiは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Gihiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)である。SDafHiはメインフィードバック制御用偏差DafHiの時間積分値である。係数KFBは本例では「1」である。しかしながら、係数KFBは、機関回転速度NE及び筒内吸入空気量Mc等により可変としても良い。
以上から明らかなように、上流側目標空燃比設定手段A2、テーブル変換手段A10、目標空燃比遅延手段A11、ローパスフィルタA12、上流側空燃比偏差算出手段A13、ハイパスフィルタA14及びメインフィードバック補正値更新手段A15は、メインフィードバック補正値算出手段を構成している。
このように、第1制御装置は、メインフィードバック制御系とサブフィードバック制御系とを補正前基本燃料噴射量Fbasebの算出系に対して並列且つ独立に接続している。即ち、第1制御装置は、補正後基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック補正値KFmainを乗じることによるメインフィードバック制御と、補正後基本燃料噴射量Fbaseとメインフィードバック補正値KFmainとの積にサブフィードバック補正値Fisubを加えることによるサブフィードバック制御とを、独立に実行する。更に、前述したように、メインフィードバック制御用偏差DafHiは、ハイパスフィルタA14によって空燃比偏差Dafにハイパスフィルタ処理を施した値であって上流側触媒53の下流には現れない空燃比変動を反映した値である。従って、メインフィードバック補正値KFmainとサブフィードバック補正値Fisubとは、機関に供給される混合気の空燃比の変動を互いに干渉するように補正することがない。加えて、メインフィードバック制御により過渡運転状態における空燃比の急変が抑制され、サブフィードバック制御により「上流側触媒53の下流の空燃比の変動として現れる緩やかな空燃比の偏移」が解消される。更に、サブフィードバック制御によって、「上流側空燃比センサ66の特性ズレ」及び「上流側空燃比センサ66の配設位置」等に起因する「空燃比の平均に対する検出誤差」により「機関に供給される混合気の空燃比の平均」がウインドウWから外れてしまうことを回避することができる。
<基本補正値の算出>
前述したように、サブフィードバック補正値FisubはPIDコントローラA9によりローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを比例・積分・微分処理することによって算出される。しかしながら、上流側触媒53の酸素吸蔵機能等の影響により機関10の空燃比の変化は少し遅れて同上流側触媒53の下流の排ガスの空燃比の変化として現れる。従って、エアフローメータの検出精度や空気量推定モデルの推定精度に起因する定常的な誤差の大きさが運転領域の急変等によって比較的急激に増大する場合、その誤差に起因する燃料噴射量の過不足分をサブフィードバック制御のみにより直ちに補償することはできない。
一方、前記酸素吸蔵機能による遅れの影響がないメインフィードバック制御において、ハイパスフィルタA14によるハイパスフィルタ処理は微分処理(D処理)と同等の機能を達成する処理である。従って、ハイパスフィルタA14通過後の値がメインフィードバック補正値更新手段A15の入力値とされている上記メインフィードバック制御においては、仮にメインフィードバック補正値更新手段A15が積分処理を行うことによりメインフィードバック補正値KFmainを求めるように構成されている場合であっても、実質的な積分項を含むメインフィードバック補正値KFmainを算出することができない。それ故、上記メインフィードバック制御より、上記エアフローメータの検出精度や空気量推定モデルの推定精度に起因する燃料噴射量の定常的な誤差は補償され得ない。その結果、運転領域が変化した場合等において、一時的にHC,CO及びNOx等のエミッションの排出量が増大する場合が発生するという可能性がある。
以上のことから、第1制御装置は、下記(10)式により示される「補正前基本燃料噴射量Fbasebを補正する基本補正値KF」を求め、その基本補正値KFによって補正後基本燃料噴射量Fbase(k)を求め、その補正後基本燃料噴射量Fbase(k)を更にメインフィードバック補正値KFmain及びサブフィードバック補正値Fisubにより補正している(上記(2)式を参照。)。
上記(10)式において、Fbasetは、目標空燃比を得るために必要な真の指示噴射量であり、誤差を含まない基本燃料噴射量であるということもできる。以下、Fbasetを、「真の基本燃料噴射量」と称呼する。この真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)は、下記の(11)式により算出される。
上記(11)式について説明を加える。上述したように、現時点における検出空燃比abyfs(k)は最終燃料噴射量Fi(k-N)に基いて噴射された燃料によりもたらされている空燃比である。従って、(11)式における右辺の分子のabyfs(k)・Fi(k-N)は、最終燃料噴射量Fi(k-N)を決定した際の筒内空気量を表していることになる。それ故、(11)式に示したように、最終燃料噴射量Fi(k-N)を決定した時点の筒内空気量(abyfs(k)・Fi(k-N))を、最終燃料噴射量Fi(k-N)を決定した時点の上流側目標空燃比abyfr(k-N)で除することにより、真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)が算出される。
一方、上記(10)式にて使用される補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)は、下記に再度記載した上述の(1)式に基いて求められる。
Fbaseb(k)=Mc(k)/abyfr(k) …(1)
そこで、第1制御装置は、(1)式、(10)式及び(11)式から得られる下記(12)式に基いて基本補正値KFを求め、求めた基本補正値KFを同基本補正値KFを算出したときの運転領域に対応させてメモリ(バックアップRAM74)に記憶しておく。この運転領域は、例えば、筒内吸入空気量Mcにより区画される。
以下、基本補正値算出手段A16の詳細機能ブロック図である図9を参照しながら、基本補正値KFの実際の算出の仕方について説明する。基本補正値算出手段A16は、A16a〜A16fの各手段等を含んで構成されている。
最終燃料噴射量遅延手段A16aは、今回の最終燃料噴射量Fi(k)を遅延させることにより現時点からNストローク前の最終燃料噴射量Fi(k-N)を求める。実際には、最終燃料噴射量遅延手段A16aは最終燃料噴射量Fi(k-N)をRAM73から読み出す。
目標空燃比遅延手段A16bは、今回の上流側目標空燃比abyfr(k)を遅延させることにより現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)を求める。実際には、目標空燃比遅延手段A16bは上流側目標空燃比abyfr(k-N)をRAM73から読み出す。
真の基本燃料噴射量算出手段A16cは、上記(11)式(Fbaset(k-N)=(abyfs(k)・Fi(k-N)/abyfr(k-N))に従って現時点からNストローク前の真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)を求める。
補正前基本燃料噴射量遅延手段A16dは、今回の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)を遅延させることにより現時点からNストローク前の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)を求める。実際には、補正前基本燃料噴射量遅延手段A16dは補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)をRAM73から読み出す。
フィルタ前基本補正値算出手段A16eは、上述した(12)式に基く式(KFbf=Fbaset(k-N)/Fbaseb(k-N))に従って、真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)を補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)で除することにより、フィルタ前基本補正値KFbfを算出する。
ローパスフィルタA16fは、フィルタ前基本補正値KFbfに対してローパスフィルタ処理を施すことにより基本補正値KFを算出する。このローパスフィルタ処理は、基本補正値KFを安定化させるため(フィルタ前基本補正値KFbfに重畳しているノイズ成分を除去するため)に行われる。このようにして求められた基本補正値KFは、現時点からNストローク前の運転状態が属していた運転領域に対応させられながらRAM73及びバックアップRAM74に記憶・格納されて行く。なお、基本補正値KFが格納される運転領域は、例えば、図10に示したように、機関10の負荷(筒内吸入空気量Mc及びアクセルペダル操作量Accp等)により区画されている。この運転領域は、機関回転速度NEと機関の負荷とによって区画されてもよい。
このように、基本補正値算出手段A16は、最終燃料噴射量Fi(k)の計算時点が到来する毎に、A16a〜A16fの各手段等を利用して基本補正値KFを更新する。そして、基本補正値算出手段A16は、図8に示したように、最終燃料噴射量Fi(k)の算出時において機関10の運転状態が属する運転領域に格納されている基本補正値KFをバックアップRAM74から読み出し、読み出した基本補正値KFを補正後基本燃料噴射量算出手段A4に提供する。この結果、燃料噴射量(補正前基本燃料噴射量)の定常的な誤差が迅速に補償されていく。
(フィルタ再生制御の詳細)
次に、上記ステップ650において実行されるフィルタ再生制御の詳細について説明する。この場合、メインフィードバック制御は停止される。但し、CPU71は、筒内吸入空気量算出手段A1により筒内吸入空気量Mc(k)を求める。そして、CPU71は、第1気筒に対して設定されるフィルタ再生制御用リッチ空燃比TRにより筒内吸入空気量Mc(k)を除して第1気筒用の燃料噴射量Fib(k)#1を求める。
更に、CPU71は、第2気筒〜第4気筒に対して設定されるフィルタ再生制御用リーン空燃比TLにより筒内吸入空気量Mc(k)を除して第2気筒、第3気筒及び第4気筒用の燃料噴射量Fib(k)#2,Fib(k)#3及びFib(k)#4をそれぞれ求める。なお、フィルタ再生制御用リッチ空燃比TR及びフィルタ再生制御用リーン空燃比TLは、下記の(13)式が成立するように予め決定されていて、ROM72内に格納されている。即ち、CPU71は、ROM72からフィルタ再生制御用リッチ空燃比TR及びフィルタ再生制御用リーン空燃比TLを読み出す。(13)式において、STは理論空燃比である。(13)の左辺の分母の「3」は機関10の気筒数(n=4)から「1」を減算した値である。(13)式は、左辺により表される「第1気筒に供給される混合気により生じる理論空燃比からの燃料の一気筒あたりの過剰分」が、右辺により表される「第2〜第4気筒に供給される混合気により生じる理論空燃比からの燃料の一気筒あたりの不足分」と等しいことを表す。
そして、CPU71は、下流側目標値設定手段A6、出力偏差量算出手段A7、ローパスフィルタA8及びPIDコントローラA9を用いて「サブフィードバック補正値Fisub」を求め、下記(14)式に従って今回の気筒別最終燃料噴射量Fi(k)#Nを算出する。#Nは気筒を表す。即ち、例えば、Fi(k)#1は今回の第1気筒に対する燃料噴射量を示す。
Fi(k)#N=Fib(k)#N+Fisub …(14)
(実際の作動)
次に、第1制御装置の実際の作動について説明する。以下、説明の便宜上、「MapX(a1,a2,…)」は、a1,a2,…を引数とする値Xを求めるためのテーブルを表すものとする。また、引数の値がセンサの検出値である場合、その引数の値には現在値が適用される。
<最終燃料噴射量Fi(k)の算出>
CPU71は、図11にフローチャートにより示した最終燃料噴射量Fiの計算及び噴射指示を行うルーチンを、各気筒のクランク角が各気筒の吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、繰り返し実行するようになっている。従って、任意の気筒のクランク角度が上記所定クランク角度になると、CPU71はステップ1100から処理を開始してステップ1105に進み、現在の運転状態がフューエルカット条件(減速フューエルカット条件)を満足するか否かを判定する。
フューエルカット条件は、例えば、アクセルペダル操作量Accpが「0」であり、且つ、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEFC以上であるときに成立する。このフューエルカット条件は、フューエルカット中(フューエルカット条件成立中)においてアクセルペダル操作量Accpが「0」でなくなるか、又は、機関回転速度NEがフューエルカット復帰回転速度NEFK以下となったときに不成立となり、フューエルカット復帰条件が成立する。フューエルカット復帰回転速度NEFKは、フューエルカット回転速度NEFCよりも小さい。フューエルカット制御が終了されて燃料噴射が再開されることを「フューエルカット復帰」とも称呼する。
いま、フューエルカット条件が成立していれば、CPU71はステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1195に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。従って、燃料噴射の指示を行うステップ1150が実行されないので、燃料噴射は停止される(フューエルカット制御が実行される。)。
一方、ステップ1105の判定時点においてフューエルカット条件が成立していなければ、CPU71はステップ1105にて「No」と判定してステップ1110に進み、テーブルMapMc(NE,Ga)に基づいて今回の吸気行程を迎える気筒(以下、「燃料噴射気筒」と云うこともある。)に吸入される今回の筒内吸入空気量Mc(k)を推定・決定する。次に、CPUはステップ1115に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であるか否かを判定する。
いま、微粒子捕集フィルタ54を再生する要求が発生しておらず、従って、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であると仮定して説明を続ける。なお、フィルタ再生要求フラグXPMの値は後述する図15のフィルタ再生要求フラグXPM操作ルーチンにて変更される。
この場合、CPU71は、以下に記載したステップ1120乃至ステップ1150の処理を順に行い、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1120:CPU71は、開閉弁57を閉じる指示を開閉弁57に与え、バイパス通路形成部材56のバイパス通路を遮断する。これにより、機関10から排出された排ガスは総て集合部51b及びエギゾーストパイプ52(即ち、主通路部)を通過する。
ステップ1125:CPU71は、上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比STを設定する。
ステップ1130:CPU71は、後述するルーチンによって計算されるとともにバックアップRAM74に運転領域毎に格納されている基本補正値KFの中から、現時点における運転状態が属する運転領域に格納されている基本補正値KFを読み出す。更に、CPU71は後述するルーチンにより求められているメインフィードバック補正値KFmainを読み出す。
ステップ1135:CPU71は、上記ステップ1110にて求めた筒内吸入空気量Mc(k)を上流側目標空燃比abyfr(k)で除することにより、補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)を算出する。補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)は各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。
ステップ1140:CPU71は、補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)に基本補正値KFを乗じた値を補正後基本燃料噴射量Fbaseとして設定する。
ステップ1145:CPU71は、上記(2)式(及び上記(14)式)に従い、補正後基本燃料噴射量Fbaseとメインフィードバック補正値KFmainとの積にサブフィードバック補正値Fisubを加えて今回の最終燃料噴射量Fi(k)を求める。
ステップ1150:CPU71は、最終燃料噴射量Fi(k)の燃料が燃料噴射気筒に対するインジェクタ39から噴射されるように、そのインジェクタ39に対して噴射指示を行う。
以上の処理により、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」である場合、総ての気筒に対して、理論空燃比STを上流側目標空燃比abyfr(k)として決定された燃料噴射量Fi(k)の燃料が噴射される。このようにして、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」である場合、上述した通常制御が実行される。
次に、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」に変更された場合の処理について説明する。この場合、CPU71はステップ1115にて「Yes」と判定してステップ1155に進み、開閉弁57を閉じる指示を開閉弁57に与え、それにより、バイパス通路形成部材56のバイパス通路を遮断する。次いで、CPU71はステップ1160に進み、燃料噴射気筒が第1気筒であるか否かを判定する。
いま、燃料噴射気筒が第1気筒であるとすると、CPU71はステップ1160にて「Yes」と判定してステップ1165に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)にフィルタ再生制御用リッチ空燃比TRを設定する。前述したように、フィルタ再生制御用リッチ空燃比TRは理論空燃比STよりもリッチ側の予め定められた空燃比である。次に、CPU71はステップ1170に進み、基本補正値KFの値を「1」に設定するとともに、メインフィードバック補正値KFmainの値を「1」に設定する。その後、CPU71は上述したステップ1135乃至ステップ1150の処理を行い、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上の処理により、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」である場合、第1気筒に供給される混合気の空燃比がフィルタ再生制御用リッチ空燃比TRに制御される。
一方、CPU71がステップ1160に進んだとき、燃料噴射気筒が第1気筒以外の気筒(第2〜第4気筒)であると、CPU71はステップ1160にて「No」と判定してステップ1175に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)にフィルタ再生制御用リーン空燃比TLを設定する。前述したように、フィルタ再生制御用リーン空燃比TLは理論空燃比STよりもリーン側の空燃比であり、フィルタ再生制御用リッチ空燃比TRとの間で上記(13)式が成立するように予め定められている。そして、CPU71はステップ1170と、ステップ1135乃至ステップ1150と、の処理を行い、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上の処理により、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」である場合、第2乃至第4気筒に供給される混合気の空燃比がフィルタ再生制御用リーン空燃比TLに制御される。このようにして、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」である場合、上述したフィルタ再生制御が実行される。
<メインフィードバック補正値の計算>
次に、メインフィードバック補正値KFmainを算出する際の作動について説明する。CPU71は図12にフローチャートにより示したルーチンを実行周期Δt(一定)の経過毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングにてCPU71はステップ1200から処理を開始し、以下に記載したステップ1205及びステップ1210の処理を順に行った後、ステップ1215に進む。なお、この実行周期Δtは、例えば、機関回転速度NEが想定される最大の機関回転速度である場合における連続する二つの噴射指示の発生時間間隔より短い時間に設定されている。
ステップ1205:CPU71は、ステップ1205に記載した簡易のローパスフィルタ式(abyfrtgt(k)=α・abyfrtgtold+(1−α)・abyfr(k−N))に従ってMFB用目標空燃比abyfrtgt(k)を求める。この処理は、前述した目標空燃比遅延手段A11及びローパスフィルタA12の処理に対応している。ここで、αは0より大きく1より小さい定数であり、上記ローパスフィルタA12の時定数τに応じて設定されている。abyfrtgtoldは、次のステップ1210にて設定される「前回本ルーチンを実行した際に算出されたMFB用目標空燃比abyfrtgt」である。abyfrtgtoldは、前回MFB用目標空燃比(前回メインフィードバック制御用目標空燃比)と称呼される。abyfr(k−N)は、現時点からNストローク前の上流側目標空燃比である。但し、本例においては、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であって通常制御が実行される場合にのみメインフィードバック制御が実行される(後述するステップ1215を参照。)。通常制御における上流側目標空燃比abyfrは理論空燃比STである(前述した図11のステップ1125を参照。)。従って、ステップ1205の処理は、MFB用目標空燃比abyfrtgt(k)を理論空燃比STに設定する処理に置換することもできる。
ステップ1210:CPU71は、次回の本ルーチンの実行のために、前回MFB用目標空燃比abyfrtgtoldにステップ1205にて算出したMFB用目標空燃比abyfrtgt(k)を格納する。
次に、CPU71はステップ1215に進み、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「1」であるか否かを判定する。メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値は、メインフィードバック制御条件が成立したときに「1」に設定され、メインフィードバック制御条件が不成立のとき「0」に設定される。更に、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値は、図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更された際に実行されるイニシャルルーチンにて「0」に設定される。メインフィードバック制御条件は、例えば、以下の総ての条件J1〜J3が成立したときに成立する。
J1:上流側空燃比センサ66が活性化している。
J2:フューエルカット条件が不成立である。
J3:フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」である。
いま、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「1」であるとすると、CPU71は、ステップ1215にて「Yes」と判定し、以下に記載したステップ1220乃至ステップ1235の処理を順に行い、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1220:CPU71は、現時点の上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsを図4に示したテーブルMapabyfs(Vabyfs)に基づいて変換することにより、現時点の検出空燃比abyfs(k)を求める。
ステップ1225:CPU71は、上記(7)式であるステップ1225内に記載した式に従ってMFB用目標空燃比abyfrtgt(k)から今回の検出空燃比abyfs(k)を減じることにより、空燃比偏差Dafを求める。
ステップ1230:CPU71は、空燃比偏差Dafに上記(8)式により表された特性を有するハイパスフィルタ処理を施すことにより、メインフィードバック制御用偏差DafHiを取得する。この処理は、前述したハイパスフィルタA14による処理に対応している。
ステップ1235:CPU71は、メインフィードバック制御用偏差DafHiに比例ゲインGpHiを乗じて得られる積に値「1」を加えることにより、メインフィードバック補正値KFmainを求める。
一方、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「0」であるとすると、CPU71は、ステップ1215にて「No」と判定し、以下に記載したステップ1240及びステップ1245の処理を順に行い、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1240:CPU71は、メインフィードバック補正値KFmainを「1」に設定する。
ステップ1245:CPU71は、基本補正値KFを「1」に設定する。
このように、メインフィードバック制御条件が不成立(XmainFB=0)の場合、メインフィードバック補正値KFmainの更新が停止されるとともに、メインフィードバック補正値KFmainの値が「1」に設定されるので、メインフィードバック制御が停止される(メインフィードバック補正値KFmainの最終燃料噴射量Fiへの反映が停止される)。また、メインフィードバック制御条件が不成立の場合、基本補正値KFの値が「1」に設定されるので、基本補正値KFの最終燃料噴射量Fiへの反映が停止される。
<サブフィードバック補正値の計算>
次に、サブフィードバック補正値Fisubを算出するための作動について説明する。CPU71は図13にフローチャートにより示したルーチンを、所定時間が経過する毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになるとCPU71はステップ1300から処理を開始し、ステップ1305に進んでサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が「1」であるか否かを判定する。
サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値は、サブフィードバック制御条件が成立したときに「1」に設定され、サブフィードバック制御条件が不成立のとき「0」に設定される。更に、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値は、図示しない前記イニシャルルーチンにて「0」に設定される。サブフィードバック制御条件は、例えば、以下の総ての条件K1及びK2が成立したときに成立する。
K1:下流側空燃比センサ67が活性化している。
K2:フューエルカット条件が不成立である。
なお、サブフィードバック制御条件には、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であることが含まれていない。換言すると、サブフィードバック制御条件は、上述したように、通常制御及びフィルタ再生制御のいずれにおいても実行される。
いま、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が「1」であるとすると、CPU71は、ステップ1305にて「Yes」と判定し、以下に記載したステップ1310乃至ステップ1335の処理を順に行い、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1310:CPU71は、上記(3)式であるステップ1310内に記載した式に従って、下流側目標値Voxsrefから現時点の下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求める。なお、前述したように、下流側目標値Voxsrefは弱リッチ空燃比AFRに対応したVrichに設定されている。
ステップ1315:CPU71は、出力偏差量DVoxsに対して上記(4)式により表された特性を有するローパスフィルタ処理を施すことによりローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを算出する。
ステップ1320:CPU71は、下記(13)式に基づきローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの微分値DDVoxslowを求める。(13)式において、DVoxslow1は前回の本ルーチン実行時においてステップ1335(後述)にて更新された「ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslow」の前回値である。また、Δtは本ルーチンが前回実行された時点から今回実行された時点までの時間である。
DDVoxslow=(DVoxslow-DVoxslow1)/Δt …(13)
ステップ1325:CPU71は、上記(5)式であるステップ1325内に示した式に従ってサブフィードバック補正値Fisubを求める。
ステップ1330:CPU71は、その時点におけるローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの積分値SDVoxslowに上記ステップ1315にて求めたローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを加えて、新たなローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの積分値SDVoxslowを求める。
ステップ1335:CPU71は、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの前回値DVoxslow1に上記ステップ1315にて求めたローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを格納する。
一方、ステップ1305の判定時において、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が「0」であるとすると、CPU71はステップ1305にて「No」と判定してステップ1340に進み、サブフィードバック補正値Fisubを「0」に設定し、続くステップ1345にてローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの積分値SDVoxslowを「0」に設定した後、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、サブフィードバック制御条件が不成立(XsubFB=0)であるとき、サブフィードバック補正値Fisubが「0」に設定されるから、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに応じた空燃比のフィードバック制御は行われない。なお、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」から「1」へと変化した直後、及び/又は、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」から「0」へと変化した直後、サブフィードバック補正値Fisubを「0」に設定するとともに、積分値SDVoxslowを「0」に設定してもよい。
<基本補正値の計算と記憶・格納>
CPU71は図14にフローチャートにより示したルーチンを、図11に示したルーチンの実行に先だって繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングにてCPU71はステップ1400から処理を開始し、ステップ1405に進んでメインフィードバック制御条件成立フラグXmainFB及びサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が共に「1」であるか否かを判定する。いま、これらのフラグの両方が「1」であるとすると、CPU71は、以下に記載したステップ1410乃至ステップ1430の処理を順に行い、ステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1410:CPU71は、上記(11)式であるステップ1410内に記載した式に従って、現時点における検出空燃比abyfs(k)と現時点からNストローク前の最終燃料噴射量Fi(k-N)との積を現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)により除することによって、現時点からNストローク前の真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)を算出する。なお、現時点からNストローク前の最終燃料噴射量Fi(k-N)及び現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)は、いずれもRAM73から読み出される。
ステップ1415:CPU71は、上記(12)式と同じ式であるステップ1415に記載した式に基いて、ステップ1410にて算出した現時点からNストローク前の真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)を現時点からNストローク前の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)により除することによって、基本補正値KFの基礎となる今回値KFnew(フィルタ前基本補正値KFbf)を算出する。なお、現時点からNストローク前の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)はRAM73から読み出される。
ステップ1420:CPU71は、現時点からNストローク前の時点における機関10の運転状態が属する運転領域に対応してバックアップRAM74内に格納してある基本補正値KFを同バックアップRAM74から読み出す。この読み出された基本補正値KFは、過去の基本補正値KFoldである。
ステップ1425:CPU71は、ステップ1425に記載した簡易のローパスフィルタ式(KF=β・KFold+(1−β)・KFnew)に従って新たな基本補正値KF(最終基本補正値KF)を算出する。ここで、βは0より大きく1より小さい定数である。
ステップ1430:CPU71は、ステップ1425にて求められた基本補正値KFを、現時点からNストローク前の時点における機関10の運転状態が属する運転領域に対応したバックアップRAM74内の格納領域に記憶・格納する。
このようにして、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「1」である場合、基本補正値KFが更新され、且つ、記憶されて行く。
一方、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値及びサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFMの値の何れかが「0」であるとすると、CPU71はステップ1405にて「No」と判定し、ステップ1495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、基本補正値KFの更新及び同基本補正値KFのバックアップRAM74への記憶・格納処理は実行されない。
<フィルタ再生要求フラグの操作>
次に、フィルタ再生要求フラグXPMの操作のための作動について説明する。CPU71は所定時間の経過毎に図15にフローチャートにより示したルーチンをステップ1500から実行するようになっている。従って、所定のタイミングにてCPU71はステップ1505に進み、現時点においてフィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」に設定されているか否かを判定する。フィルタ再生要求フラグXPMの値は、前述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であるとして説明を続ける。この場合、CPU71はステップ1505にて「No」と判定し、以下に述べるステップ1510及びステップ1515の処理を実行し、その後、ステップ1520に進む。
ステップ1510:現時点の上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいて得られる現時点の検出空燃比abyfsと、ステップ1510内に示したマップと、に基づいて係数k1を求める。このマップによれば、検出空燃比abyfsが理論空燃比STから遠ざかるほど係数k1が大きくなる。特に、検出空燃比abyfsが理論空燃比STよりリッチ側の領域において理論空燃比STから遠ざかる場合、検出空燃比abyfsが理論空燃比STよりリーン側の領域において理論空燃比STから遠ざかる場合よりも係数k1はより大きくなる。このように係数k1を定めるのは、吸入空気量Gaが一定であったとしても、機関10に供給される混合気の空燃比が理論空燃比STから乖離するほど、機関10から発生する微粒子の量が増大することに依拠している。
ステップ1515:CPU71は、現時点の微粒子捕集量SPM(微粒子捕集フィルタ54に捕集されている微粒子の量(総量)の推定値)に、上記係数k1と現時点においてエアフローメータ61が計測している吸入空気量Gaとの積(k1・Ga)を加えた値を、新たな微粒子捕集量SPMとして設定する。この微粒子捕集量SPMはバックアップRAM74内に格納される。
次に、CPU71は、ステップ1520に進み、前記ステップ1515にて更新(推定)された微粒子捕集量SPMが閾値SPMth以上であるか否かを判定する。このとき、微粒子捕集量SPMが閾値SPMthより小さければ、CPU71はステップ1520にて「No」と判定してステップ1595に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
その後、機関10の運転が行われると、微粒子捕集量SPMの値は次第に増大し閾値SPMth以上となる。このとき、CPU71がステップ1520に進むと、CPU71はステップ1520にて「Yes」と判定してステップ1525に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値を「1」に設定する。そして、CPU71はステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、CPU71は、図11のステップ1115にて「Yes」と判定してフィルタ再生制御を実行するようになる。従って、微粒子捕集フィルタ54の再生が開始する。
次に、CPU71が図15のステップ1505に進んだとき、CPU71はステップ1505にて「Yes」と判定してステップ1530に進み、フィルタ再生制御の継続時間(即ち、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」から「1」に変更されてからの経過時間)Tsが所定時間Tsth(フィルタ再生制御実行時間Tsth)以上であるか否かを判定する。
現時点はフィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」から「1」へと変更になった直後である。従って、フィルタ再生制御の継続時間Tsは所定時間Tsthに到達していない。従って、CPU71はステップ1530にて「No」と判定し、ステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
その後、フィルタ再生制御が継続して実行されることにより、フィルタ再生制御の継続時間Tsは所定時間Tsthに到達する。このとき、CPU71はステップ1505に続くステップ1530にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1535及びステップ1540の処理を順に行い、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1535:微粒子捕集量SPMの値を「0」に設定(クリア)する。
ステップ1540:フィルタ再生要求フラグXPMの値を「0」に設定する。
この結果、CPU71は、図11のステップ1115にて「No」と判定して通常制御を再開する。更に、CPU71は図15のステップ1505にて「No」と判定し、再び微粒子捕集量SPMの更新を開始する。
以上、説明したように、第1制御装置は、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であるとき総ての気筒のそれぞれに供給される混合気の空燃比を理論空燃比近傍に制御するとともに総ての気筒から排出される排ガスを上流側触媒53、微粒子捕集フィルタ54及び下流側触媒55を通して大気中に排出する。従って、未燃物、窒素酸化物及び微粒子の排出量を極めて小さくすることができる。更に、第1制御装置は、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」に変更されたとき、所定期間(Tsth)に渡り、第1気筒に供給される混合気の空燃比をフィルタ再生制御用リッチ空燃比TRに設定し且つ第2〜第4気筒の空燃比をフィルタ再生制御用リーン空燃比TLに設定するとともに、第1気筒から排出される排ガスをバイパス通路を介して下流側触媒55に直接供給し、第2〜第4気筒から排出される排ガスを上流側触媒53、微粒子捕集フィルタ54及び下流側触媒55に供給する。その結果、微粒子捕集フィルタには酸素が供給されるので、微粒子捕集フィルタ54が再生される。更に、下流側触媒55に流入するガスの空燃比の平均が、略理論空燃比となるので、下流側触媒55に流入する窒素酸化物を下流側触媒55によって浄化することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼する。)について説明する。第2制御装置は、下流側触媒55が「所定量の窒素酸化物を浄化することができる還元状態」に到達したか否かを判定する還元状態判定手段を備え、前記通常制御実行中において下流側触媒55が「前記還元状態」に到達したと判定したとき、前記フィルタ再生制御の実行を許容(フィルタ再生要求があれば開始)するように構成されている点のみにおいて、第1制御装置と相違する。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
より具体的に述べると、第2制御装置は、フィルタ再生要求が発生した場合であっても、前回(直前)のフューエルカット制御の実行停止後(フューエルカット復帰後)からの吸入空気量の積算値(フューエルカット復帰後積算吸入空気量)tGaSが閾値Gth以上となるまで通常制御を実施し、積算値tGaSが閾値Gth以上となった時点から所定期間に渡りフィルタ再生制御を実行する。この吸入空気量積算値tGaSは、機関10に供給される混合気の空燃比の平均が通常制御によって弱リッチ空燃比AFRに設定されることにより「過剰な還元成分が排出される期間」における「吸入空気量Gaの積算値」であるから、「機関10から排出された未燃物である還元成分の量」から「還元成分を酸化させる機関10から排出された酸化成分の量」を減じた量である「還元成分の過剰量」の積算値(以下、「第1積算値」と称呼する。)である。
以下、第2制御装置の実際の作動について説明する。第2制御装置のCPU71は、図16に示した概略フローチャート示した手順に沿って上述の制御を行うようになっている。CPU71は、図16に示した手順を所定時間の経過毎に繰り返すようになっている。なお、図16において図6に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図6のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は省略される。
CPU71は、所定のタイミングにてステップ1600から処理を開始し、ステップ1610に進んで現在の運転状態がフューエルカット条件(減速フューエルカット条件)を満足するか否かを判定する。ステップ1610は先に説明した図11のステップ1105と同一の処理を行うステップである。このとき、フューエルカット条件が成立していると、CPU71はステップ1610からステップ1695に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これにより、燃料噴射が実行されず、フューエルカット制御が実行される。
一方、フューエルカット条件が成立していなければ、CPU71はステップ1610にて「No」と判定してステップ610に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であるか否かを判定する。このフィルタ再生要求フラグXPMの値は、後述する図17に示したフィルタ再生要求フラグ操作ルーチンにより設定される。
いま、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であると仮定する。この場合、CPU71はステップ610にて「No」と判定し、ステップ620に進んで開閉弁57を閉じ、ステップ630にて通常制御を実行する。従って、第1気筒乃至第4気筒(複数の気筒の総て)のそれぞれに供給される混合気の空燃比の平均が理論空燃比近傍空燃比である「弱リッチ空燃比AFR」となるように、各気筒に供給される混合気の空燃比(各気筒に対する燃料噴射量)が制御される。
次いで、CPU71はステップ1630に進み、再生実行中フラグ(フィルタ再生制御実行中フラグ)XJの値を「0」に設定する。再生実行中フラグXJは、フィルタ再生制御が実行されているとき「1」に設定され(後述のステップ1640を参照。)、その他の場合(通常制御中、及び、フューエルカット制御中等)において「0」に設定される。
一方、CPU71は図17にフローチャートにより示したフィルタ再生要求フラグXPM操作ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。この図17において図15に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図15のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付与されている。これらのステップについての詳細な説明は省略される。
CPU71は所定のタイミングにてステップ1700から処理を開始し、ステップ1505んで現時点においてフィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」に設定されているか否かを判定する。フィルタ再生要求フラグXPMの値は、前述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であるとして説明を続ける。この場合、CPU71はステップ1505にて「No」と判定し、上述したステップ1510乃至ステップ1520の処理を実行する。更に、CPU71は、ステップ1520にて「Yes」と判定する場合、上述のステップ1525の処理を実行する。この結果、機関10の運転が所定期間以上行われることにより微粒子捕集量SPMの値が閾値SPMthに到達すると、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」に設定される。
このとき、CPU71は図16のステップ1610にて「No」と判定するとともに、ステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ1620に進んでフューエルカット復帰後からの吸入空気量の積算値tGaSが閾値Gth以上であるか否かを判定する。
この吸入空気量の積算値tGaSは、図18に示した積算ガス量計算ルーチンにより算出される。具体的に述べると、CPU71は所定時間Δt1の経過毎に図18のステップ1800から処理を開始し、ステップ1810に進んで現時点がフューエルカット制御中であるか否かを判定する。そして、現時点がフューエルカット制御中であれば、CPU71はステップ1810にて「Yes」と判定してステップ1820に進み、吸入空気量の積算値tGaSを「0」に設定する。その後、CPU71はステップ1895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、CPU71がステップ1810に進んだとき、フューエルカット制御中でなければ、CPU71はステップ1810にて「No」と判定し、以下に述べるステップ1830及びステップ1840の処理を順に行い、ステップ1895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1830:CPU71は、吸入空気量の積算値tGaSの値を、その時点にてエアフローメータ61により検出されている吸入空気量Gaに所定時間Δt1を乗じた値(Ga・Δt1)だけ増大する。
ステップ1840;CPU71は、吸入空気量の積算値tGaSが所定の最大値tGaSmを超えないように、吸入空気量の積算値tGaSの値を制限する。
以上の処理により、吸入空気量の積算値tGaSは、フューエルカット復帰時点から吸入空気量Gaを積算した値(第1積算値)となる。換言すると、吸入空気量の積算値tGaSは、フューエルカット中に「0」に設定され、フューエルカット復帰後に実行され且つ機関10に供給される混合気の空燃比の平均を弱リッチ空燃比AFRに設定する通常制御における吸入空気量Gaの積算値である。通常制御においては、単位時間あたり、「機関10から排出される未燃物である還元成分の量」から同還元成分を酸化させる「機関10から排出される酸化成分の量」を減じた量である「還元成分の過剰量」は吸入空気流量Gaに比例する。従って、吸入空気量の積算値tGaSは、還元成分の過剰量をフューエルカット復帰時点から積算した値(第1積算値)となる。
現時点がフューエルカット復帰時点から所定の時間が経過していないとすると、吸入空気量の積算値tGaSは閾値Gth以上となっていない。即ち、第1積算値が閾値に到達しておらず、下流側触媒55は「所定量の窒素酸化物を浄化することができる還元状態」に到達していないと判定することができる。従って、CPU71はステップ1620にて「No」と判定してステップ620、ステップ630及びステップ1630に進むので、通常制御が実行される。
そして、フューエルカット復帰時点から所定の時間が経過し、吸入空気量の積算値tGaSが閾値Gth以上となると、CPU71はステップ1620にて「Yes」と判定し、ステップ640に進んで開閉弁57を開き、ステップ650にてフィルタ再生制御を実行する。従って、第1気筒に供給される混合気の空燃比の平均はフィルタ再生制御用リッチ空燃比TRに一致し、第2〜第4気筒に供給される混合気の空燃比の平均はフィルタ再生制御用リーン空燃比TL一致するように、各気筒に供給される混合気の空燃比(各気筒に対する燃料噴射量)が制御される。
次いで、CPU71はステップ1640に進み、再生実行中フラグXJの値を「1」に設定し、ステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上の処理により、微粒子捕集フィルタ54の再生が開始される。
この時点において、CPU71が図17のステップ1700から処理を開始すると、CPU71はステップ1505にて「Yes」と判定するとともに、「再生実行中フラグXJの値が「1」であるか否かを判定するステップ1710」にて「Yes」と判定してステップ1530に進み、フィルタ再生制御の継続時間(即ち、再生実行中フラグXJの値が「0」から「1」に変更されてからの経過時間)Tsが所定時間Tsth(フィルタ再生制御実行時間Tsth)以上であるか否かを判定する。
現時点は再生実行中フラグXJの値が「0」から「1」へと変更になった直後である。従って、フィルタ再生制御の継続時間は所定時間Tsthに到達していない。従って、CPU71はステップ1530にて「No」と判定し、ステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
その後、フィルタ再生制御が継続して実行されることにより、フィルタ再生制御の継続時間Tsは所定時間Tsthに到達する。このとき、CPU71は図17のステップ1505及びステップ1710に続くステップ1530にて「Yes」と判定し、上述したステップ1535及びステップ1540の処理を順に行う。
この結果、CPU71は、図16のステップ610にて「No」と判定して通常制御を再開する。更に、CPU71は図17のステップ1505にて「No」と判定し、再び微粒子捕集量SPMの更新を開始する。なお、即ち、1710にて「No」と判定されるとき、CPU71は、ステップ1710からステップ1795に直接進む。
以上、説明したように、第2制御装置は、下流側触媒55が所定量の窒素酸化物を浄化することができる還元状態に到達したか否かを判定する還元状態判定手段(ステップ1620、図18)を備え、通常制御実行中において下流側触媒55が前記還元状態に到達したと判定したときフィルタ再生制御の実行を許可する(ステップ610、ステップ1620、ステップ640及びステップ650)又は開始する(ステップ1620、ステップ640及びステップ650)ように構成された空燃比制御手段を備えている。
フィルタ再生制御が開始されると、微粒子捕集フィルタ54には酸素が供給され、下流側触媒55に流入するガスの空燃比は理論空燃比近傍空燃比(弱リッチ空燃比AFR)になる。しかしながら、その直前の運転状態が例えばフューエルカット運転状態のように下流側触媒55に多量の酸素が供給される状態であると、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2は下流側触媒の最大酸素吸蔵量Cmax2近傍の値になっている。従って、フューエルカット運転状態の直後において微粒子捕集フィルタ54の再生要求が発生したときにフィルタ再生制御を直ちに開始すると、下流側触媒55に理論空燃比近傍空燃比の空燃比のガスが流入した場合であっても、下流側触媒55は多量の窒素酸化物を直ちに高い浄化率にて浄化することができない。
そこで、第2制御装置は、通常制御実行中において下流側触媒55が還元状態に到達したと判定されたときフィルタ再生制御を許可し且つ微粒子捕集フィルタ54の再生要求があるときフィルタ再生制御を開始する。従って、フィルタ再生制御の開始時点にて、下流側触媒55はある程度の高い還元能力(所定量以上の窒素酸化物を浄化できる能力)を有しているから、下流側触媒55に窒素酸化物が流入しても、その窒素酸化物を高い効率にて浄化することが可能となる。
更に、第2制御装置は、機関10の運転状態が所定のフューエルカット運転状態となったときに機関10への燃料の供給を停止するフューエルカット手段(図16のステップ1610からステップ1695への流れを参照。)を備える。
加えて、
(A1)第2制御装置は、前記通常制御において前記複数の気筒のそれぞれに供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比を含む所定の空燃比範囲(ウインドウW)内の空燃比であって理論空燃比よりもリッチ側の空燃比である弱リッチ空燃比AFRに制御し(図16のステップ630を参照。)、且つ、
(A2)第2制御装置は、ステップ1610にて「Yes」と判定してフューエルカット運転を実行している状態からステップ1610にて「No」と判定してステップ610に進んだ場合、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であっても吸入空気量の積算値tGaSは閾値Gthより小さいのでステップ620及びステップ630の通常制御を実行する。即ち、第2制御装置は、フューエルカット手段による機関10への燃料の供給停止が解除されて同機関10に再び燃料が供給され始めたフューエルカット復帰時点から前記通常制御の実行を開始するように構成されている。従って、フューエルカット制御中に「酸化状態(酸素吸蔵量OSA2が最大酸素吸蔵量Cmax2に一致するか最大酸素吸蔵量Cmax2に極めて近い量になっている状態)」となった下流側触媒55の状態は、通常制御において機関から排出される過剰な還元成分により、「前記還元状態」に向けて変化する。
そして、第2制御装置は、
(B1)機関10から排出された未燃物である「還元成分の量」から同還元成分を酸化させる同機関から排出された「酸化成分の量」を減じた量である「還元成分の過剰量」をフューエルカット復帰時点から積算する(図18を参照。)ことにより「第1積算値tGaS」を取得するとともに、
(B2)その第1積算値tGaSが第1所定値Gth以上となったとき下流側触媒55が前記還元状態に到達したと判定するように構成されている(図16のステップ1620を参照。)。第1積算値tGaSは、前述したように、下流側触媒55に流入する還元成分の過剰量に応じた量となる。即ち、第1積算値tGaSは、フューエルカット復帰後において機関から流出した過剰な還元成分の総和量から上流側触媒53により消費(吸収)された還元成分の量(上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に相当する量)を減じた量となる。従って、第2制御装置は、その第1積算値tGaSが第1所定値Gth以上となったか否かを判定することにより、下流側触媒55がフューエルカット復帰後において「前記還元状態に到達したか否か」を容易に判定することができる。なお、第2制御装置は、周知の方法を用いて上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1を取得し、且つ、取得された最大酸素吸蔵量Cmax1が大きいほど前記第1所定値Gthを大きい値に設定するように構成されていてもよい。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第3制御装置」とも称呼する。)について説明する。第3制御装置は、第2制御装置にて使用される「吸入空気量Gaの積算値(第1積算値)tGaS」の積算開始時点を「フューエルカット復帰時点」ではなく、下流側空燃比センサ67により検出される下流側空燃比afdownが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に変化した「リッチ反転時点」に設定している点のみにおいて、第2制御装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
第3制御装置のCPU71は、第2制御装置のCPU71が実行する図18に示した積算ガス量計算ルーチンに代えて図19に示した積算ガス量計算ルーチンを実行するようになっている。即ち、第3制御装置のCPU71は、図16、図17及び図19に示したルーチンを実行する。なお、図19において図18に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図18のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。
CPU71は所定時間Δt1の経過毎に図19のステップ1900から処理を開始し、ステップ1810に進んで現時点がフューエルカット制御中であるか否かを判定する。そして、現時点がフューエルカット制御中であれば、CPU71はステップ1810にて「Yes」と判定してステップ1820に進み、吸入空気量の積算値tGaSを「0」に設定する。その後、CPU71はステップ1895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、CPU71がステップ1810に進んだとき、フューエルカット制御中でなければ、CPU71はステップ1810にて「No」と判定してステップ1910に進み、フューエルカット復帰後において下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比に相当する値(0.5(V))より小さい値(理論空燃比に相当する値よりもリーン側の値)から、理論空燃比に相当する値より大きい値(理論空燃比に相当する値よりもリッチ側の値)に変化(反転)したか否かを判定する。即ち、直前のフューエルカット制御が終了した時点から現時点までの値に、下流側空燃比センサの出力値Voxsが「リッチ反転」したか否かを判定する。
いま、フューエルカット復帰直後であると仮定する。フューエルカット制御中においては、上流側触媒53に多量の酸素が供給されるので、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に実質的に到達している。従って、フューエルカット復帰直後においては上流側触媒53にて還元成分(未燃物)が消費されるので、上流側触媒53から還元成分は流出しない。それ故、下流側空燃比センサ6の出力値Voxsは理論空燃比に相当する値よりもリーン側の値となる。そのため、CPU71はステップ1910にて「No」と判定してステップ1820に進み、吸入空気量の積算値tGaSを「0」に設定する。即ち、CPU71は吸入空気量の積算値(第1積算値)tGaSの積算を開始しない。
この結果、CPU71が図16に示したルーチンを実行すると、仮にフィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」に設定されている場合であっても、CPU71はステップ1620にて「No」と判定してステップ620及びステップ630を実行する。即ち、通常制御が実行される。その結果、機関10からは過剰な還元成分が流出し続けるので、所定時間の経過後に上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は実質的に「0」に到達する。そして、その時点以降、上流側触媒53から還元成分が流出し始めるので、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが「リッチ反転」する。
このとき、CPU71が図19に示したルーチンを実行すると、CPU71はステップ1810に続くステップ1910にて「Yes」と判定し、上述したステップ1830及びステップ1840の処理を実行する。即ち、吸入空気量Gaの積算値tGaSを算出するために吸入空気量Gaの積算を開始する。更に、この時点(リッチ反転時点)以降、CPU71は吸入空気量Gaの積算(積算値tGaSの更新)を継続する。
従って、所定の時間が経過すると、吸入空気量の積算値tGaSは閾値Gthに到達するので、CPU71は図16のステップ1620に進んだとき、そのステップ1620にて「Yes」と判定し、ステップ640及びステップ650の処理を実行するようになる。即ち、CPU71はフィルタ再生制御を開始する。そして、そのフィルタ再生制御の開始時点からフィルタ再生制御実行時間Tsthが経過すると、CPU71はフィルタ再生要求フラグXPMの値を図17のステップ1540にて「0」に設定する。その結果、CPU71は図16のステップ610にて「No」と判定し、再び通常制御を実行する。
以上、説明したように、第3制御装置は、
(C1)通常制御において機関の総ての気筒(前記複数の気筒)のそれぞれに供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比を含む前記所定の空燃比範囲(ウインドウW)内の空燃比であって理論空燃比よりもリッチ側の空燃比である弱リッチ空燃比にAFR制御し(ステップ630を参照。)、且つ、
(C2)前記フューエルカット手段による前記機関への燃料の供給停止が解除されて同機関に再び燃料が供給され始めたフューエルカット復帰時点から前記通常制御の実行を開始するように構成されている(図19のステップ1910及び1820と、図16のステップ1620、ステップ620及びステップ630と、を参照。)。
更に、第3制御装置は、
(D1)前記機関から排出された前記還元成分の過剰量を「フューエルカット復帰時点」以降であって下流側空燃比センサ67により検出される検出空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に変化した「リッチ反転時点」から積算することにより第1積算値(吸入空気量の積算値tGaS)を取得し(図19のステップ1910、ステップ1830及び1840を参照。)、且つ、
(D2)その第1積算値tGaSが第1所定値Gth以上となったとき「下流側触媒55が前記還元状態に到達した」と判定し(図16のステップ1620を参照。)、フィルタ再生要求があれば上記フィルタ再生制御を実行する(図16のステップ610、ステップ640及びステップ650を参照。)。
このように、フューエルカット復帰時点から通常制御が開始されるから、機関10に供給される混合気の空燃比が弱リッチ空燃比AFRに制御され、その結果、前記複数の気筒(前記一部の気筒及び前記他の気筒)から過剰な還元成分が排出される。しかしながら、フューエルカット復帰後に上記通常制御が開始されても、下流側触媒55には直ちに過剰な還元成分が流入しない。換言すると、フューエルカット復帰後から所定の時間が経過した後に、過剰な還元成分が下流側触媒55に流入し始める。この時点は、機関の吸入空気量及び機関回転速度等によって変動する。更に、第3制御装置は、上流側触媒53を備えているから、過剰な還元成分は、フューエルカット復帰後において上流側触媒53により消費され、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が実質的に「0」になった後に下流側触媒55に到達する。従って、下流側触媒55に過剰な還元成分が流入し始める時点は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1にも依存して変化する。
そこで、第3制御装置においては、前記フューエルカット復帰時点以降の前記「リッチ反転時点」から、過剰な還元成分(吸入空気量Ga)を積算し、それにより「第1積算値tGaS」を取得する。このリッチ反転時点は、機関の吸入空気量、機関回転速度及び上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1等に関わらず、下流側触媒55に過剰な還元成分が流入し始める時点に精度良く一致している。従って、その第1積算値tGaSは下流側触媒55の還元成分の保持量(下流側触媒55の酸素吸蔵量の減少量、或は、下流側触媒55の窒素酸化物を浄化できる還元能力)を精度良く表す。そして、第3制御装置は、その第1積算値tGaSが第1所定値Gth以上となったか否かを判定することにより、下流側触媒55がフューエルカット復帰後において「前記還元状態に到達したか否か」を判定している。従って、第3制御装置は、下流側触媒55が「前記還元状態」に到達したか否かをより一層精度良く判定することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第4制御装置」とも称呼する。)について説明する。第4制御装置は、微粒子捕集フィルタ54に捕集された微粒子の量である微粒子量SPMを取得(推定)するとともに、フィルタ再生制御を実行するときに取得された微粒子量SPMが多いほど前記一部の気筒(第2気筒〜第4気筒)に供給される混合気の空燃比の平均をよりリーン側の空燃比に制御する(前記他の気筒である第1気筒に供給される混合気の空燃比の平均をよりリッチ側の空燃比に制御する)ように構成されている。
以下、図20乃至図22にフローチャートにより示されたルーチンに従って、第4制御装置の作動について説明する。なお、これらの図において既に説明したステップと同一の処理を行うためのステップには、既に説明したステップに付された符号と同一の符号が付与されている。
第4制御装置のCPU71は、図20に示した概略フローチャート示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返すようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU71は、ステップ2000から処理を開始してステップ2010に進み、フィルタ再生要求フラグXPM1の値が「1」であるか否かを判定する。フィルタ再生要求フラグXPM1の値は、前述したフィルタ再生要求フラグXPMと同様、微粒子捕集フィルタ54を再生する要求(フィルタ再生要求)が発生しているときに「1」に設定され、微粒子捕集フィルタ54を再生する必要がないとき「0」に設定される。フィルタ再生要求フラグXPM1の操作については後述する(図21を参照。)。
いま、フィルタ再生要求フラグXPM1の値が「0」であると仮定する。この場合、CPU71はステップ2010にて「No」と判定し、ステップ620及びステップ630に進んで、上述した通常制御を実行する。即ち、CPU71は、開閉弁57を閉じることによりバイパス通路形成部材56のバイパス通路を遮断するとともに、第1気筒乃至第4気筒(複数の気筒の総て)のそれぞれに供給される混合気の空燃比の平均が実質的に理論空燃比近傍空燃比(弱リッチ空燃比AFR)となるように、各気筒に供給される混合気の空燃比(各気筒に対する燃料噴射量)を制御する。
一方、CPU71は図21にフローチャートにより示したフィルタ再生要求フラグ操作ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。従って、CPU71は所定のタイミングにてステップ2100から処理を開始し、ステップ2110に進んで「前回のフィルタ再生制御を終了してからの機関10の運転時間teの積算値Ste」が所定の閾値(フィルタ再生制御実行閾値)Steth以上となっているか否かを判定する。機関10の運転時間teの積算値Steは、図示しないルーチンにより更新されている。運転時間teの積算値SteはバックアップRAM74内に格納される。機関10の運転によって発生する微粒子の量は機関10の運転時間が長くなるほど大きくなるので、積算値SGaは微粒子捕集フィルタ54に捕集された微粒子の量に関連した量となる。なお、運転時間teの積算値Steはフィルタ再生制御の実行が完了すると、後述するステップ2150にて「0」に設定(クリア)されるようになっている。
そして、運転時間teの積算値Steが閾値Steth以上であると、CPU71はステップ2110からステップ2120に進んでフィルタ再生要求フラグXPM1の値を「1」に設定し、ステップ2130に進む。これに対し、運転時間teの積算値Steが閾値Stethより小さいと、CPU71はステップ2110からステップ2130に直接進む。
CPU71は、ステップ2130にてフィルタ再生要求フラグXPM1の値が「0」から「1」へと変化した時点(即ち、フィルタ再生制御の開始時点)から所定時間Tsth(フィルタ再生制御実行時間Tsth)が経過したか否かを判定する。そして、フィルタ再生要求フラグXPM1の値が「0」から「1」へと変化した時点から所定時間Tsth(フィルタ再生制御実行時間Tsth)が経過していると、CPU71はステップ2130にて「Yes」と判定して以下に述べるステップ2140乃至ステップ2160の処理を実行し、ステップ2195に進んで本ルーチンを一旦終了する。また、フィルタ再生要求フラグXPM1の値が「0」から「1」へと変化した時点から所定時間Tsthが経過していなければ、CPU71はステップ2130からステップ2195に直接進んで、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ2140:CPU71は、フィルタ再生要求フラグXPM1の値を「0」に設定する。
ステップ2150:CPU71は、機関10の運転時間teの積算値Steの値を「0」に設定(クリア)する。
ステップ2160:CPU71は、後述する図22に示したルーチンにより別途算出されている微粒子捕集量SPMの値を「0」に設定(クリア)する。
ところで、上記ステップ2120にてフィルタ再生要求フラグXPM1の値が「1」に設定された直後、CPU71が図20のステップ2010の処理を実行すると、CPU71はステップ2010にて「Yes」と判定し、ステップ640に進んで開閉弁57を開く指示を開閉弁57に与え、バイパス通路形成部材56のバイパス通路を開放する(ガスの通流が可能な状態に設定する)。
次いで、CPU71はステップ2020に進み、図22の微粒子捕集量SPM算出ルーチンにより算出されている微粒子捕集量SPMを読み込む。ここで、図22の微粒子捕集量SPM算出ルーチンについて簡単に説明を加える。CPU71は所定時間の経過毎に図22に示したルーチンを繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ2200から処理を開始して上述したステップ1510に進み、係数k1を決定する。次に、CPU71は上述したステップ1515に進み、現時点において推定されている微粒子捕集量SPMに、上記係数k1と現時点においてエアフローメータ61が計測している吸入空気量Gaとの積(k1・Ga)を加えた値を、新たな微粒子捕集量SPMとして設定する。この微粒子捕集量SPMはバックアップRAM74内に格納される。
再び、図20を参照すると、CPU71はステップ2020に続くステップ2030に進み「フィルタ再生制御」を実行する。このフィルタ再生制御においては、第1気筒(他の気筒)に供給される混合気の空燃比の平均は、ステップ2030のブロック内に図示したマップに従って微粒子捕集量SPMが大きいほどリッチ側の空燃比TR(フィルタ再生制御用リッチ空燃比TR)となるよう設定される。この空燃比TRは理論空燃比よりもリッチ側の空燃比である。加えて、第2気筒、第3気筒及び第4気筒(一部の気筒)のそれぞれに供給される混合気の空燃比の平均は、ステップ2030のブロック内に図示したマップに従って微粒子捕集量SPMが大きいほどリーン側の空燃比TL(フィルタ再生制御用リーン空燃比TL)となるように設定される。この空燃比TLは理論空燃比よりもリーン側の空燃比である。
但し、フィルタ再生制御用リッチ空燃比TR及びフィルタ再生制御用リーン空燃比TLは、上記(13)式の関係が成立するように、即ち、第1気筒乃至第4気筒(即ち、総ての気筒)のそれぞれに供給される混合気の全体の空燃比の平均が理論空燃比又は理論空燃比近傍空燃比(本例においては、弱リッチ空燃比AFR)となるように、予め定められている。その後、CPU71はステップ2095に進み、本ルーチンを一旦終了する。
以上、説明したように、第4制御装置は、微粒子捕集フィルタ54に捕集された微粒子の量である微粒子量SPMを取得(推定)する(図22を参照。)。更に、第4制御装置は、フィルタ再生制御を実行するに際し、「取得された微粒子量(微粒子捕集量)SPMが多いほど前記一部の気筒(第2〜第4気筒)に供給される混合気の空燃比の平均をよりリーン側の空燃比(フィルタ再生制御用リーン空燃比TL)に制御する」ように構成されている(図20のステップ2030を参照。)。
従って、微粒子捕集フィルタ54に捕集されている微粒子の量が大きいほど単位時間あたりに微粒子捕集フィルタに流入する酸素の量も大きくなるので、微粒子捕集フィルタ54内において単位時間あたりに燃焼する微粒子の量も多くなる。また、この燃焼により微粒子捕集フィルタ54の温度も増大するので、より一層高い効率にて微粒子が燃焼する。この結果、捕集されている微粒子の量SPMに依らず、短時間内にフィルタ再生制御を終了すること(微粒子捕集フィルタの再生を完了すること)が可能となる。換言すると、上流側触媒53及び下流側触媒55の両方によって排ガスを浄化することができる通常制御の期間を長くとることができるので、エミッションをより良好に維持することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第5制御装置」とも称呼する。)について説明する。第5制御装置は、微粒子捕集フィルタ54の温度が高いほど大きくなるフィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)を取得するとともに、そのフィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)が高側フィルタ閾値温度THithより高いとき、及び、そのフィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)が低側フィルタ閾値温度TLothより低いとき、フィルタ再生制御の実行を禁止するように構成されている点のみにおいて第1制御装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
第5制御装置のCPU71は、図6に代わる図23にフローチャートにより示したルーチンと、図7に示したフィルタ再生要求フラグ操作ルーチンと、図示しないフィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)推定ルーチンと、をそれぞれ所定時間の経過毎に実行するようになっている。なお、図23において図6に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図6のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は省略される。
CPU71は、所定のタイミングにて図23のステップ2300から処理を開始してステップ610に進み、図7に示したルーチンにより変更されるフィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であるか否かを判定する。
いま、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であると仮定する。この場合、CPU71はステップ610にて「No」と判定し、ステップ620に進んで開閉弁57を閉じ、ステップ630にて通常制御を実行する。従って、第1気筒乃至第4気筒(複数の気筒の総て)のそれぞれに供給される混合気の空燃比の平均が理論空燃比近傍空燃比である「弱リッチ空燃比AFR」となるように、各気筒に供給される混合気の空燃比(各気筒に対する燃料噴射量)が制御される。
その後、前回のフィルタ再生制御終了後からの吸入空気量Gaの積算値SGaが閾値SGath以上となることに伴ってフィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」に設定される(図7のステップ710及びステップ720を参照。)。この場合、CPU71は図23のステップ610にて「Yes」と判定してステップ2310に進み、別途推定(取得されている)微粒子捕集フィルタ温度TempPMFが低側フィルタ閾値温度TLoth以上であるか否かを判定する。そして、微粒子捕集フィルタ温度TempPMFが低側フィルタ閾値温度TLothより低いと、CPU71はステップ2310にて「No」と判定してステップ620及びステップ630に進み、通常制御を続行する。即ち、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であっても、フィルタ再生制御の実行が禁止される。
一方、微粒子捕集フィルタ温度TempPMFが低側フィルタ閾値温度TLoth以上であると、CPU71はステップ2310にて「Yes」と判定してステップ2320に進み、微粒子捕集フィルタ温度TempPMFが高側フィルタ閾値温度THith以下であるか否かを判定する。そして、微粒子捕集フィルタ温度TempPMFが高側フィルタ閾値温度THithより高いと、CPU71はステップ2320にて「No」と判定してステップ620及びステップ630に進み、通常制御を続行する。即ち、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であっても、フィルタ再生制御の実行が禁止される。
これに対し、微粒子捕集フィルタ温度TempPMFが高側フィルタ閾値温度THith以下であれば、CPU71はステップ2320にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ640及びステップ2330の処理を行うことによりフィルタ再生制御を実行する。
ステップ640:CPU71は開閉弁57を開く指示を開閉弁57に与え、バイパス通路形成部材56のバイパス通路を開放する(ガスの通流が可能な状態に設定する)。
ステップ2330:CPU71は、第1気筒(他の気筒)に供給される混合気の空燃比の平均を、ステップ2330のブロック内に図示したマップに従ってフィルタ再生制御用リッチ空燃比TRに設定する。更に、CPU71は、第2〜第4気筒(他の気筒)に供給される混合気の空燃比の平均を、ステップ2330のブロック内に図示したマップに従ってフィルタ再生制御用リーン空燃比TLに設定する。
更に詳細には、ステップ2330において、フィルタ再生制御用リッチ空燃比TRは、(1)理論空燃比よりもリッチ側の空燃比であり、且つ、
(2)微粒子捕集フィルタ温度TempPMFが低側フィルタ閾値温度TLoth以上であるが低側フィルタ閾値温度TLothに高側フィルタ閾値温度THithよりも近い低温領域において、低側フィルタ閾値温度TLothに近づくほどリーン側の空燃比(理論空燃比により近い空燃比)であり、且つ、
(3)微粒子捕集フィルタ温度TempPMFが高側フィルタ閾値温度THith以下であるが高側フィルタ閾値温度THithに低側フィルタ閾値温度TLothよりも近い高温領域において、高側フィルタ閾値温度THithに近づくほどリーン側の空燃比(理論空燃比により近い空燃比)となるように決定される。
また、ステップ2330において、フィルタ再生制御用リーン空燃比TLは、
(5)理論空燃比よりもリーン側の空燃比であり、且つ、
(5)微粒子捕集フィルタ温度TempPMFが低側フィルタ閾値温度TLoth以上である前記低温領域において低側フィルタ閾値温度TLothに近づくほどリッチ側の空燃比(理論空燃比により近い空燃比)であり、且つ、
(6)微粒子捕集フィルタ温度TempPMFが高側フィルタ閾値温度THith以下である前記高温領域において高側フィルタ閾値温度THithに近づくほどリッチ側の空燃比(理論空燃比により近い空燃比)となるように決定される。
更に、フィルタ再生制御用リーン空燃比TLとフィルタ再生制御用リッチ空燃比TRとは、上記(13)式が成立するように予め定められている。そして、CPU71はステップ2330からステップ2395に進み、本ルーチンを一旦終了する。このようにして実行されるフィルタ再生制御は、図7のステップ730、ステップ740及び図23のステップ610によって、フィルタ再生制御の開始後から所定時間Tsthが経過するまで続行され、その後、再び、通常制御が実行される。
なお、図示しないフィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)推定ルーチンにおいて、CPU71は次のようにして微粒子捕集フィルタ温度TempPMFを推定する。
ステップ1:CPU71は、所定時間毎に、機関回転速度NE、筒内吸入空気量Mc(k)及び上流側空燃比センサ66が検出している検出空燃比abyfs(k)と、テーブルMapTempPMFt(NE,Mc(k),abyfs(k))と、に基づき、微粒子捕集フィルタ54の瞬時温度TempPMFtを決定する。テーブルMapTempPMFt(NE,Mc(k),abyfs(k))は、ある機関回転速度NE,ある筒内吸入空気量Mc(k)及びある検出空燃比abyfs(k)が定常的に継続した場合に、それらの変数と微粒子捕集フィルタ54の収束温度TempPMFtとの関係を定めたテーブルである。このテーブルは予め実験により取得され、ROM72内に格納されている。
ステップ2:CPU71は、得られた瞬時温度TempPMFtを下記の(14)式に従ってフィルタリング(積分)することにより微粒子捕集フィルタ温度TempPMFを取得する。(14)式において、γは0より大きく1より小さい定数であり、TempPMFoldは、このフィルタ温度関係値推定ルーチンを前回実行した時点にて推定された微粒子捕集フィルタ温度TempPMFである。
TempPMF=γ・TempPMFold+(1−γ)・TempPMFt …(14)
なお、第5制御装置は、微粒子捕集フィルタ54の温度を直接検出する「微粒子捕集フィルタ温度センサ」を微粒子捕集フィルタ54に対して配設し、その微粒子捕集フィルタ温度センサの出力値に基づいて微粒子捕集フィルタ温度TempPMFを取得するように構成されてもよい。
以上、説明したように、第5制御装置は、フィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)が高側フィルタ閾値温度THithより高いときフィルタ再生制御の実行を禁止するように構成されている。これにより、微粒子捕集フィルタの温度が非常に高いときにフィルタ再生制御が実行されることにより微粒子が燃焼し、それにより発生する熱によって微粒子捕集フィルタ54の温度が過度に高くなることを回避することができる。即ち、第5制御装置は、フィルタ再生制御に起因する微粒子捕集フィルタ54の過熱による破損が発生する可能性を低減することができる。
更に、第5制御装置は、フィルタ再生制御を実行する際の前記一部の気筒(第2〜第4気筒)に供給される混合気の空燃比の平均をフィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)が前記高温領域において高側フィルタ閾値温度THithに近づくほど「よりリッチ側の空燃比(より理論空燃比に近い空燃比)」に制御するように構成されている(ステップ2330を参照。)。
従って、微粒子捕集フィルタ54の温度が高くなるほど微粒子捕集フィルタ54に供給される酸素の量が減少するので、燃焼する微粒子の量(発生する熱量)が低下する。その結果、微粒子捕集フィルタ54を前述した過熱による破損から保護することができる。
加えて、第5制御装置は、フィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)が低側フィルタ閾値温度TLothより低いときフィルタ再生制御の実行を禁止するように構成されている。これにより、微粒子捕集フィルタに酸素が供給されても微粒子は燃焼しないような「フィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)が低側フィルタ閾値温度TLothより低いとき」に、無駄にフィルタ再生制御が実行されることを回避することができる。
更に、第5制御装置は、前記フィルタ再生制御を実行する際の前記一部の気筒(第2〜第4気筒)に供給される混合気の空燃比の平均を、前記フィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)が前記低温領域において低側フィルタ閾値温度TLothに近づくほど「よりリッチ側の空燃比(より理論空燃比に近い空燃比)」に制御するように構成されている(ステップ2330を参照。)。
微粒子捕集フィルタ54の温度が低側フィルタ閾値温度TLoth以上であれば、微粒子は微粒子捕集フィルタ54内において燃焼する。しかしながら、微粒子捕集フィルタ54の温度が低側フィルタ閾値温度TLothに近いほど、微粒子は燃焼し難くなる(微粒子の燃焼が緩慢になる)。従って、そのような場合に、微粒子捕集フィルタ54に酸素を多量に供給しても多くの酸素は無駄になる。一方、微粒子捕集フィルタ54に酸素を多量に供給することは、前記一部の気筒の空燃比を理論空燃比から大きくリーン側に乖離した空燃比に設定することを意味する。その場合、多量の窒素酸化物が前記一部の気筒から排出される。
そこで、第5制御装置は、フィルタ温度関係値(微粒子捕集フィルタ温度TempPMF)が低側フィルタ閾値温度TLothに近づくほど「よりリッチ側の空燃比(より理論空燃比に近い空燃比)」に制御する。この結果、無駄な酸素が微粒子捕集フィルタ54に供給されることがなく、前記一部の気筒から排出される窒素酸化物の量を低減することがでる。従って、機関10から排出される窒素酸化物の量を低減できるので、下流側触媒55にて浄化されることなく(下流側触媒55を吹き抜けて)大気中に排出される窒素酸化物の量を低減することができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第6制御装置」とも称呼する。)について説明する。第6制御装置は、下流側触媒55の温度が高いほど大きくなる下流側触媒温度関係値(下流側触媒温度TempUF)を取得(推定)するとともに、前記取得された下流側触媒温度関係値(下流側触媒温度TempUF)が低側下流側触媒閾値温度TLoUFth(下流側触媒55の活性温度)より低いとき前記フィルタ再生制御の実行を禁止するように構成されている。
更に、第6制御装置は、機関10に供給される混合気の空燃比を所定の態様に従って制御するとともに上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsと下流側空燃比センサ67の出力値Voxsとに基づいて上流側触媒53が劣化したか否かを判定する劣化判定制御を実行する劣化判定手段(触媒劣化判定手段)を備えるとともに、その劣化判定手段が劣化判定制御を実行しているとき前記フィルタ再生制御の実行を禁止するように構成されている。
第6制御装置のCPU71は、図6に代わる図24にフローチャートにより示したルーチンと、図7に示したフィルタ再生要求フラグ操作ルーチンと、図示しない下流側触媒温度関係値(下流側触媒温度TempUF)推定ルーチンと、をそれぞれ所定時間の経過毎に実行するようになっている。なお、図24において図6に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図6のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は省略される。
CPU71は、所定のタイミングにて図24のステップ2400から処理を開始してステップ610に進み、図7に示したルーチンにより変更されるフィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であるか否かを判定する。
いま、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であると仮定する。この場合、CPU71はステップ610にて「No」と判定し、ステップ620に進んで開閉弁57を閉じ、ステップ630にて通常制御を実行する。従って、第1気筒乃至第4気筒(複数の気筒の総て)のそれぞれに供給される混合気の空燃比の平均が理論空燃比近傍空燃比である「弱リッチ空燃比AFR」となるように、各気筒に供給される混合気の空燃比(各気筒に対する燃料噴射量)が制御される。
その後、前回のフィルタ再生制御終了後からの吸入空気量Gaの積算値SGaが閾値SGath以上となることに伴ってフィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」に設定される。この場合、CPU71は図24のステップ610にて「Yes」と判定してステップ2410に進み、別途推定(取得されている)下流側触媒温度TempUFが低側下流側触媒閾値温度TLoUFth以下であるか否かを判定する。
この下流側触媒温度TempUFは、微粒子捕集フィルタ温度TempPMFと同様に推定されている。即ち、CPU71は、図示しない下流側触媒温度関係値推定ルーチンにおいて、所定時間毎に、機関回転速度NE、筒内吸入空気量Mc(k)及び上流側空燃比センサ66が検出している検出空燃比abyfs(k)と、テーブルMapTempUFt(NE,Mc(k),abyfs(k))と、に基づき、下流側触媒55の瞬時温度TempUFtを決定する。テーブルMapTempPMFt(NE,Mc(k),abyfs(k))は、ある機関回転速度NE,ある筒内吸入空気量Mc(k)及びある検出空燃比abyfs(k)が定常的に継続した場合に、それらの変数と下流側触媒55の収束温度TempUFtとの関係を定めたテーブルである。このテーブルは予め実験により取得され、ROM72内に格納されている。
更に、CPU71は、得られた瞬時温度TempUFtを上記(14)式と同様な式(即ち、TempUF=ψ・TempUFold+(1−ψ)・TempUFt、ψは0より大きく1より小さい定数であり、TempUFoldは、この下流側触媒温度関係値推定ルーチンを前回実行した時点にて推定された下流側触媒温度TempUFである。)に従ってフィルタリング(積分)することにより、下流側触媒温度TempUFを取得する。なお、第6制御装置は、下流側触媒55の温度を直接検出する「下流側触媒温度センサ」を下流側触媒55に対して配設し、その下流側触媒温度センサの出力値に基づいて下流側触媒TempPUFを取得するように構成されてもよい。
そして、下流側触媒温度TempUFが低側下流側触媒閾値温度TLoUFth以下であると、CPU71はステップ2410にて「Yes」と判定しステップ620及びステップ630に進み、通常制御を続行する。即ち、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であっても、フィルタ再生制御の実行が禁止される。なお、下流側触媒温度TempUFが低側下流側触媒閾値温度TLoUFth以下であると、点火時期が通常制御時の点火時期よりも遅角され、上流側触媒53及び下流側触媒55の暖機を促進する触媒暖機制御が併せて実行される。
一方、下流側触媒温度TempUFが低側下流側触媒閾値温度TLoUFthより高いと、CPU71はステップ2410にて「No」と判定してステップ2420に進み、触媒劣化判定要求フラグXHNの値が「1」であるか否かを判定する。この触媒劣化判定要求フラグXHNの値は図示しない触媒劣化判定要求フラグ操作ルーチンにより変更される。触媒劣化判定要求フラグ操作ルーチンにおいて、触媒劣化判定要求フラグXHNの値は、前回の触媒劣化判定制御の実行後における機関10の運転時間の合計が所定時間以上(又は前回の触媒劣化判定制御の実行後における吸入空気量Gaの積算値が所定量以上)となったときに「1」に設定され、触媒劣化判定制御が実行されると「0」に設定される。
そして、触媒劣化判定要求フラグXHNの値が「1」であると、CPU71はステップ2420にて「Yes」と判定してステップ2430に進み、触媒劣化判定制御を実行する。即ち、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であっても(且つ、下流側触媒温度TempUFが低側下流側触媒閾値温度TLoUFthより高くても)、触媒劣化判定要求フラグXHNの値が「1」であると、フィルタ再生制御の実行が禁止される。
一方、CPU71がステップ2420に進んだとき、触媒劣化判定要求フラグXHNの値が「0」であると、CPU71はステップ2420にて「No」と判定してステップ640及びステップ650に進み、フィルタ再生制御を実行する。そして、CPU71はステップ650からステップ2495に進み、本ルーチンを一旦終了する。このようにして実行されるフィルタ再生制御は、図7のステップ730、ステップ740及び図24のステップ610によって、フィルタ再生制御の開始後から所定時間Tsthが経過するまで続行され、その後、再び、通常制御が実行される。
ここで、ステップ2430の触媒劣化判定制御について簡単に説明する。この触媒劣化制御においては、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1が取得される。このとき、CPU71は、例えば「アクティブ制御」と呼ばれる周知の制御等を実行し最大酸素吸蔵量Cmax1を取得する(特開2005−194981号公報、特開2006−057461号公報、特開2005−207286号公報等を参照。)。
アクティブ制御について、簡単に述べると、CPU71は機関10に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に設定し、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に対応する値になったか判定する。その後、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比を示す値に変化したとき、CPU71は、機関に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン側の空燃比に設定し、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリーン側の空燃比に対応する値に変化したかを監視する。
そして、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリーン側の空燃比に対応する値に変化したことが検出されたとき(時刻ta)、機関10に供給される混合気の空燃比を再びリッチ側の空燃比に設定する。そして、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に対応する値に再び変化する時点(時刻tb)まで、下記(15)式に基いて酸素吸蔵量の変化量ΔO2を所定時間(計算周期tsample)の経過毎に算出するとともに、下記(16)式に基づいて変化量ΔO2を積算することにより上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1を算出する。
ΔO2=0.23・mfr・(stoich
− abyfrr) …(15)
Cmax1=ΣΔO2(区間t=ta〜tb) …(16)
上記(15)式において、値「0.23」は大気中に含まれる酸素の重量割合である。mfrは所定時間(計算周期tsample)内の燃料噴射量Fiの合計量である。stoichは理論空燃比(例えば、14.7)である。abyfrrは所定時間tsampleにおいて上流側空燃比センサ66により測定された空燃比である。なお、abyfrrは前記所定時間tsample内の上流側空燃比センサ66により検出された空燃比の平均値としてもよい。
更に、CPU71は、得られた上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1が劣化判定閾値CmaxR以上であれば上流側触媒53は劣化していないと判定し、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1が劣化判定閾値CmaxRより小さければ上流側触媒53は劣化していると判定する。
なお、CPU71はステップ2430に代えて、ステップ630による通常制御を実行し、所定時間における上流側空燃比センサの出力値Vabyfsの軌跡長さ及び下流側空燃比の出力値Voxsの軌跡長さの比較に基づいて上流側触媒53が劣化しているか否かを判定してもよい。
このように、上流側触媒53の劣化判定は、機関10に供給される混合気の空燃比をフィルタ再生制御における態様とは相違する「所定の態様」に従って制御するとともに、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsと下流側空燃比センサ67の出力値Voxsとに基づいて行われる。
以上、説明したように、第6制御装置は、下流側触媒55の温度が高いほど大きくなる下流側触媒温度関係値(下流側触媒温度TempUF)を取得(推定)するとともに、その取得された下流側触媒温度関係値が低側下流側触媒閾値温度TLoUFthより低いときフィルタ再生制御の実行を禁止するように構成されている(図24のステップ2410、ステップ620及びステップ630を参照。)。従って、活性温度に到達していために本来の浄化機能を発揮し得ない下流側触媒55にフィルタ再生制御によって多量の窒素酸化物が流入してしまうことを回避することができる。その結果、窒素酸化物が下流側触媒55により浄化されないまま大量に大気中に排出されてしまうことを回避することができる。
更に、第6制御装置は、前記劣化判定手段が前記劣化判定制御を実行しているときには前記フィルタ再生制御の実行を禁止する(図24のステップ2420及びステップ2430を参照。)。これにより、上流側触媒53の劣化判定とフィルタ再生制御とが異なるタイミングにて実行されるので、これらの制御を両立させることができる。
なお、第6制御装置は、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であるか否かに関わらず、触媒劣化判定要求フラグXHNの値が「0」から「1」に変更された時点にて、上記劣化判定制御を実行するように構成されてもよい。この場合、劣化判定制御が実行されている最中にフィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」から「1」に変更され、且つ、下流側触媒温度関係値が低側下流側触媒閾値温度TLoUFth以上であっても、フィルタ再生制御の実行を禁止するように構成される。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第7制御装置」とも称呼する。)について説明する。第7制御装置は、通常制御中にサブフィードバック補正値Fisubを学習し、フィルタ再生制御中にサブフィードバック補正値Fisubの学習を停止するように構成されている点のみにおいて第1制御装置と相違している。
第1制御装置のCPU71は、図11乃至図15に示されたルーチンを実行していた。これに対し、第7制御装置のCPU71は、図11と、図12と、図13に代わる図25と、図14と、図15と、に示されたルーチンを実行するようになっている。即ち、第7制御装置のCPU71が実行する複数のルーチンのうち「サブフィードバック補正量を計算するルーチン」のみが第1制御装置のCPU71が実行する複数のルーチンと相違している。そこで、以下、図25に示したルーチンに基づく作動を中心として説明する。なお、図25において図13に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図13のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は省略される。
CPU71は、所定のタイミングにて図25のステップ2500から処理を開始し、ステップ1305にてサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBが「1」であるかを判定し、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が「0」であるとき、上述したステップ1340及びステップ1345に進む。これにより、サブフィードバック制御が停止される。
一方、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が「1」であると、CPU71はステップ1305にて「Yes」と判定してステップ2510に進み、現時点がサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBが「0」から「1」に変化した直後(サブフィードバック制御が開始された直後)であるか否かを判定する。
そして、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBが「0」から「1」に変化した直後であれば、CPU71はステップ2520に進んでサブフィードバック補正値Fisubに学習値(サブフィードバック学習値)GKFisubを設定し、その後、ステップ1310に進む。学習値GKFisubは、後述するように、バックアップRAM74に格納されている。これに対し、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBが「0」から「1」に変化した直後でなければ、CPU71はステップ2510からステップ1310乃に直接進む。以上の処理により、サブフィードバック制御が開始されたとき、サブフィードバック補正値Fisubに学習値GKFisubが設定される。
次に、CPU71はステップ1310乃至ステップ1335の処理を実行し、サブフィードバック補正値Fisubを更新(計算)する。続いて、CPU71はステップ2530に進み、フィルタ再生制御が実行中であるか否かを判定する。CPU71は、フィルタ再生制御が実行されていないとき(即ち、通常制御が実行されているとき)、ステップ2530にて「No」と判定して以下に述べるステップ2540及びステップ2550の処理を順に行い、ステップ2595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ2540:CPU71は、その時点においてバックアップRAM74に保持されていた学習値GKFisubと、ステップ1325にて新たに求められたサブフィードバック補正値Fisubと、を下記の(17)式の右辺に代入することにより、学習値GKFisubを更新する。(17)式においてP1は0より大きく1より小さい所定の定数である。
GKFisub=P1・GKFisub+(1−P1)・Fisub …(17)
ステップ2550:CPU71は、ステップ2540にて求めた学習値GKFisubをバックアップRAM74に保存(格納・記憶)する。
一方、CPU71がステップ2530に進んだときにフィルタ再生制御が実行されていると、CPU71はステップ2530にて「Yes」と判定してステップ2595に直接進む。即ち、この場合、CPU71はステップ2540及びステップ2550を実行しないので、サブフィードバック補正値Fisubの学習(学習値GKFisubの更新及び記憶)が禁止される。
以上、説明したように、第7制御装置は、フィルタ再生制御中にサブフィードバック補正値Fisubの学習を停止(禁止)するように構成されている。フィルタ再生制御が実行される頻度は、通常制御が実行される頻度よりも極めて小さい。更に、フィルタ再生制御においては、排ガスの一部が上流側触媒53をバイパスする。従って、通常制御時の学習値GKFisubはフィルタ再生制御に適切な値ではなく、フィルタ再生制御中に学習値GKFisubを更新した場合、その学習値GKFisubは通常制御にとって適切な値とはならない。それ故、第7制御装置は、「フィルタ再生制御中にサブフィードバック補正値Fisubの学習を停止(禁止)する」ことにより、通常制御におけるサブフィードバック制御の開始時に適切な学習値GKFisubを設定することができる。その結果、エミッションが悪化することを回避することができる。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第8制御装置」とも称呼する。)について説明する。第8制御装置は、通常制御中のサブフィードバック補正値Fisubの学習値と、フィルタ再生制御中のサブフィードバック補正値Fisubの学習値と、を別々に有するように構成されている点のみにおいて第1制御装置と相違している。
第1制御装置のCPU71は、図11乃至図15に示されたルーチンを実行していた。これに対し、第8制御装置のCPU71は、図11、図12、図14及び図15と、図13に代わる図26及び図27と、に示されたルーチンを実行するようになっている。そこで、以下、図26及び図27に示したルーチンに基づく作動を中心として説明する。なお、図26において図13及び図25に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図13及び図25のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップについての詳細な説明は省略される。
CPU71は、所定のタイミングにて図26のステップ2600から処理を開始し、ステップ1305にてサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBが「1」であるかを判定し、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が「0」であるとき、上述したステップ1340及びステップ1345に進む。これにより、サブフィードバック制御が停止される。
一方、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が「1」であると、CPU71はステップ1305にて「Yes」と判定してステップ1310乃至ステップ1335の処理を実行し、サブフィードバック補正値Fisubを更新(計算)する。続いて、CPU71はステップ2530に進み、フィルタ再生制御が実行中であるか否かを判定する。CPU71は、フィルタ再生制御が実行されていないとき(即ち、通常制御が実行されているとき)、ステップ2530にて「No」と判定して以下に述べるステップ2610及びステップ2620の処理を順に行い、ステップ2695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ2610:CPU71は、その時点においてバックアップRAM74に保持されていた通常制御用学習値GKFisubNと、ステップ1325にて新たに求められたサブフィードバック補正値Fisubと、を下記の(18)式の右辺に代入することにより、通常制御用学習値GKFisubNを更新する。(18)式においてP1は0より大きく1より小さい所定の定数である。
GKFisubN=P1・GKFisubN+(1−P1)・Fisub …(18)
ステップ2620:CPU71は、ステップ2610にて求めた通常制御用学習値GKFisubNをバックアップRAM74に保存(格納・記憶)する。
一方、CPU71がステップ2530に進んだときにフィルタ再生制御が実行されていると、CPU71はステップ2530にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ2630及びステップ2640の処理を順に行い、ステップ2695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ2630:CPU71は、その時点においてバックアップRAM74に保持されていたフィルタ再生制御用学習値GKFisubPと、ステップ1325にて新たに求められたサブフィードバック補正値Fisubと、を下記の(19)式の右辺に代入することにより、フィルタ再生制御用学習値GKFisubPを更新する。(19)式においてP2は0より大きく1より小さい所定の定数である。
GKFisubP=P2・GKFisubP+(1−P2)・Fisub …(19)
ステップ2640:CPU71は、ステップ2630にて求めたフィルタ再生制御用学習値GKFisubPをバックアップRAM74に保存(格納・記憶)する。
以上により、通常制御中に通常制御用学習値GKFisubNが更新されてバックアップRAM74に格納され、フィルタ再生制御中にフィルタ再生制御用学習値GKFisubPが更新されてバックアップRAM74に格納される。
更に、CPU71は図27に示したサブフィードバック学習値設定ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ2700から処理を開始し、ステップ2710に進んで現時点がフィルタ再生制御が開始された直後であるか否かを判定する。そして、現時点がフィルタ再生制御が開始された直後であれば、CPU71はステップ2710にて「Yes」と判定してステップ2720に進み、サブフィードバック補正値Fisubにフィルタ再生制御用学習値GKFisubPを設定し、ステップ2730に進む。一方、現時点がフィルタ再生制御が開始された直後でなければ、CPU71はステップ2710にて「No」と判定してステップ2730に直接進む。
CPU71はステップ2730にて現時点が通常制御が開始された直後であるか否かを判定する。そして、現時点が通常制御が開始された直後であれば、CPU71はステップ2730にて「Yes」と判定してステップ2740に進み、サブフィードバック補正値Fisubに通常制御用学習値GKFisubNを設定し、ステップ2795に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、現時点が通常制御が開始された直後でなければ、CPU71はステップ2730にて「No」と判定してステップ2795に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
以上により、通常制御の開始時のサブフィードバック補正値Fisubが通常制御用学習値GKFisubNに一致せしめられ、フィルタ再生制御の開始時のサブフィードバック補正値Fisubがフィルタ再生制御用学習値GKFisubPに一致せしめられる。従って、フィルタ再生制御開始時及び通常制御開始時のそれぞれにおいてサブフィードバック補正値Fisubが適正値に近い値となるので、エミッションをより良好にすることができる。
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第9制御装置」とも称呼する。)について説明する。第9制御装置は、機関10の吸入空気量が大きいほど大きくなる吸入空気量関係値(吸入空気流量Ga)を取得するとともに、その取得された吸入空気量関係値が吸入空気量閾値GaPMthより大きいときフィルタ再生制御の実行を禁止するように構成されている点のみにおいて、第1制御装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
第9制御装置のCPU71は、図6に代わる図28と図7とにフローチャートにより示されたルーチンの処理を所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。なお、図28において既に説明したステップと同一の処理を行うためのステップには、そのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらのステップの詳細な説明は省略される。
所定のタイミングになると、CPU71は図28のステップ2800から処理を開始してステップ610に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であるか否かを判定する。フィルタ再生要求フラグXPMの値は図7に示したルーチンにより変更される。
いま、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」であると仮定する。この場合、CPU71はステップ610にて「No」と判定してステップ620及びステップ630に進み、上述した通常制御を実行する。通常制御の制御内容は、第1制御装置による通常制御の制御内容と同一である。
これに対し、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であると仮定する。この場合、CPU71はステップ610にて「Yes」と判定してステップ2810に進み、その時点にてエアフローメータ61により検出されている吸入空気量Gaを読み込む。次いで、CPU71はステップ2820に進み、図示しないルーチンにより別途算出されている上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1を読み込む(上述した(15)式及び(16)式を参照。)。
次に、CPU71はステップ2830に進み、下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2を、ステップ2830内に示したテーブルと、上記ステップ2820にて読み込んだ上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1と、に基づいて推定(取得)する。このテーブルは、予め実験により測定され、ROM72内に格納されている。このテーブルによれば、最大酸素吸蔵量Cmax1が大きいほど最大酸素吸蔵量Cmax2も大きくなる。
次に、CPU71はステップ2840に進み、吸入空気量閾値GaPMthを、ステップ2840内に示したテーブルと、上記ステップ2830にて推定した下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2と、に基づいて決定する。このテーブルは、予め実験により決定され、ROM72内に格納されている。このテーブルによれば、最大酸素吸蔵量Cmax2が大きいほど吸入空気量閾値GaPMthも大きくなる。
次いで、CPU71はステップ2850に進み、上記ステップ2810にて読み込んだ吸入空気量(吸入空気量が大いほど大きくなる吸入空気量関係値)Gaが、吸入空気量閾値GaPMthより小さいか否かを判定する。このとき、吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMthより小さければ、CPU71はステップ2850にて「Yes」と判定してステップ640及びステップ650に進み、上述したフィルタ再生制御を実行する。フィルタ再生制御の制御内容は、第1制御装置によるフィルタ再生制御の制御内容と同一である。
一方、CPU71がステップ2850に進んだとき、吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMth以上であると、CPU71はステップ2850にて「No」と判定してステップ620及びステップ630に進み、上述した通常制御を実行する。
加速時及び高負荷時等の機関10の吸入空気量Gaが大きい場合にフィルタ再生制御を実行すると、単位時間あたりに生成される窒素酸化物の量が非常に多くなる。従って、フィルタ再生制御中において下流側触媒55に流入するガスの空燃比の平均がサブフィードバック制御によって理論空燃比に近い値(この場合、弱リッチ空燃比AFR)に制御されていても、窒素酸化物が下流側触媒55に浄化されないまま大気中に放出されてしまう(窒素酸化物が下流側触媒55を吹き抜ける)場合がある。
そこで、第9制御装置は、吸入空気量関係値(吸入空気量Ga)が吸入空気量閾値GaPMthより大きいときフィルタ再生制御の実行を禁止する。この結果、吸入空気量Gaが大きい運転状態においてフィルタ再生制御が実行されることがないので、大気中に放出される窒素酸化物の量を低減することができる。
更に、第9制御装置は、下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2が大きいほど吸入空気量閾値GaPMthが大きくなるように、吸入空気量閾値GaPMthを設定している(ステップ2840を参照。)。
下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2が大きいことは、下流側触媒55の劣化が進行しておらず、従って、下流側触媒55は単位時間により多くの窒素酸化物を浄化できることを意味する。従って、第9制御装置のように、下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2が大きいほど吸入空気量閾値GaPMthを大きく設定することにより、窒素酸化物が大気中に放出されないようにしながら、フィルタ再生制御を実行する機会を増大することができる。
なお、吸入空気量関係値は、負荷KL(筒内吸入空気量Mcを各気筒の排気量により除した値)、スロットル弁開度TA及びアクセルペダル81の操作量Accp等により代替してもよい。
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第10制御装置」とも称呼する。)について説明する。第10制御装置は、フィルタ再生制御中において吸入空気量関係値(吸入空気量Ga)が吸入空気量閾値GaPMth以上となったこと、又は、フィルタ再生制御開始後の吸入空気量の積算値tGaSLが閾値(フィルタ再生制御終了閾値)GLthより大きくなったこと等、によって、「フィルタ再生制御を終了した後、所定の期間に渡って機関10に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチ側の空燃比(前述した通常制御時における弱リッチ空燃比AFRよりもリッチ側の空燃比)に制御し、その後、通常制御に復帰する点」を特徴としている。
第10制御装置は、図29乃至図33にフローチャートにより示されたルーチンをそれぞれ所定時間の経過毎に実行するようになっている。以下、図29に従う作動から順に説明する。なお、これらの作動は、機関10が暖機を完了し、メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御を実行可能な状態(機関の暖機が完了した状態)になってから行われる作動である。また、メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御を実行可能な状態になった時点において、通常制御実行フラグXSTOIの値は「1」に設定されるようになっている。
<第1フラグ操作>
CPU71は、所定のタイミングにて図29のステップ2900から処理を開始し、フューエルカット実行フラグXFCの値が「0」であるか否かを判定する。いま、フューエルカット実行フラグXFCの値が「0」であるとして説明を続けると、CPU71はステップ2910にて「Yes」と判定してステップ2920に進み、フューエルカット条件が成立しているか否かを判定する。フューエルカット条件は、図11のステップ1105におけるフューエルカット条件と同一の条件(減速フューエルカット条件)である。
このとき、機関10の運転状態が所定の減速状態となることに伴ってフューエルカット条件が成立していると、CPU71はステップ2920にて「Yes」と判定してステップ2930に進み、フューエルカット実行フラグXFCの値を「1」に設定するとともに、他のフラグの値を「0」に設定する。その後、CPU71はステップ2995に進み、本ルーチンを一旦終了する。他のフラグは以下の通りである。これらのフラグの値は後述するルーチンにより変更される。なお、フューエルカット条件が成立していなければ、CPU71はステップ2920にて「No」と判定し、ステップ2995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
フィルタ再生制御実行フラグXPMFS:このフラグは、フィルタ再生制御を実行する条件が成立したとき及びフィルタ再生制御を実行しているときに「1」、その他の場合に「0」に設定されるフラグである(図30のステップ3050を参照。)。
フィルタ再生制御通常終了後リッチ制御フラグXRINE:このフラグは、以下、単に「通常終了後リッチ制御フラグ」と称呼される。通常終了後リッチ制御フラグXRINEは、フィルタ再生制御を開始してからの吸入空気量の積算値tGaSLがフィルタ再生制御終了閾値GLthより大きくなったときに「1」に設定される(図31のステップ3160を参照。)。通常終了後リッチ制御フラグXRINEの値が「1」に変更されるとフィルタ再生制御が終了され、機関の空燃比は通常制御時の空燃比よりもリッチ側の空燃比に制御される。即ち、後述する「通常終了後リッチ制御」が実行される。
フィルタ再生制御高Ga強制終了後リッチ制御フラグXRIGA:このフラグは、以下、単に「高Ga後リッチ制御フラグ」と称呼される。高Ga後リッチ制御フラグXRIGAは、フィルタ再生制御を実行中に吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMth以上となったことによりフィルタ再生制御を終了したときに「1」に設定される(図31のステップ3130を参照。)。高Ga後リッチ制御フラグXRIGAの値が「1」に変更されるとフィルタ再生制御が終了され、機関の空燃比は通常制御時の空燃比よりもリッチ側の空燃比に制御される。即ち、「高Ga復帰後リッチ制御」が実行される。
通常制御実行フラグXSTOI:通常制御実行フラグXSTOIは、通常制御を行うべきとき及び通常制御を実行しているときに「1」に設定され、その他の場合に「0」に設定される(図32を参照。)。前述したように、通常制御実行フラグXSTOIの値は、機関10の暖機が完了した時点(メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御が実行可能な状態になった時点)にて「1」に設定される。
再び、図29を参照すると、CPU71はステップ2910を実行するとき、フューエルカット実行フラグXFCの値が「1」であると、ステップ2910にて「No」と判定してステップ2940に進み、フューエルカット復帰条件が成立したか否かを判定する。このフューエルカット復帰条件も前述したとおりである。
そして、フューエルカット復帰条件が成立していると、CPU71はステップ2940にて「Yes」と判定してステップ2950に進み、通常制御実行フラグXSTOIの値を「1」に、他のフラグの値を「0」に設定する。その後、CPU71はステップ2995に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、フューエルカット復帰条件が成立していなければ、CPU71はステップ2940にて「No」と判定し、ステップ2995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上に説明したように、フューエルカット実行フラグXFCの値は、フューエルカット条件が成立したときに「1」に設定され、フューエルカット復帰条件が成立したときに「0」に設定される。更に、通常制御実行フラグXSTOIの値は、フューエルカット復帰条件が成立したときに「1」に設定される。
<第2フラグ操作>
CPU71は、所定のタイミングにて図30のステップ3000から処理を開始し、以下に述べるステップ3010乃至ステップ3050の処理を行う。
ステップ3010:CPU71は、通常制御実行フラグXSTOIの値が「1」であるか否かを判定し、通常制御実行フラグXSTOIの値が「1」であればステップ3020に進み、通常制御実行フラグXSTOIの値が「1」でなければステップ3095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ3020:CPU71は、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であるか否かを判定し、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であればステップ3030に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」でなければステップ3095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、フィルタ再生要求フラグXPMの値は、図示しないルーチンにより微粒子捕集フィルタ54を再生する要求(フィルタ再生要求)が発生していると判定されたときに「1」に設定される。例えば、フィルタ再生要求フラグXPMの値は、「前回のフィルタ再生制御を終了してからの吸入空気量Gaの積算値SGa」が所定の閾値(フィルタ再生制御実行閾値)SGath以上となったとき「1」に設定される。更に、フィルタ再生要求フラグXPMの値は、フィルタ再生制御が完了することに伴って微粒子捕集フィルタ54を再生する必要が消滅したとき「0」に設定される(図31のステップ3170を参照。)。
ステップ3030:CPU71は、図16のステップ1620と同様、図示しないルーチンにより別途求められている「フューエルカット復帰時点以降の吸入空気量Gaの積算値(フューエルカット復帰後積算吸入空気量)tGaSが閾値Gth以上であるか否かを判定し、フューエルカット復帰後積算吸入空気量tGaSが閾値Gth以上であればステップ3040に進み、そうでなければステップ3095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ3040:CPU71は、その時点にてエアフローメータ61により検出されている吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMthより小さいか否かを判定し、吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMthより小さければステップ3050に進み、そうでなければステップ3095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ3050:CPU71は、フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値を「1」に設定するとともに他のフラグの値を「0」に設定し、ステップ3095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上に説明したように、フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値は、
・通常制御実行フラグXSTOIの値が「1」であり(即ち、通常制御が実行中であり)、
・フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であり(即ち、フィルタ再生要求が発生していて)、
・フューエルカット復帰後からの吸入空気量の積算値tGaSが閾値Gth以上であり(即ち、下流側触媒55が上記還元状態に到達していて)、且つ、
・吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMthより小さい(即ち、窒素酸化物が下流側触媒55を吹き抜ける可能性が小さい)とき、
「1」に設定される。この結果、後述するように、フィルタ再生制御が実行される。
<第3フラグ操作>
CPU71は、所定のタイミングにて図31のステップ3100から処理を開始し、ステップ3110に進んでフィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「1」であるか否かを判定する。即ち、CPU71はステップ3110にてフィルタ再生制御が実行中であるか否かを判定する。いま、フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「1」でない(フィルタ再生制御実行中でない)と仮定すると、CPU71はステップ3110にて「No」と判定し、ステップ3195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
これに対し、いま、フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「1」である(フィルタ再生制御実行中である)と仮定すると、CPU71はステップ3110にて「Yes」と判定してステップ3120に進み、その時点にてエアフローメータ61により検出されている吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMth以上であるか否かを判定する。そして、吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMth以上であれば、CPU71はステップ3120にて「Yes」と判定してステップ3130に進み、高Ga後リッチ制御フラグXRIGAの値を「1」に、他のフラグの値を「0」に設定する。次いで、CPU71はステップ3140に進み、別途推定されている「微粒子捕集量SPM」から「フィルタ再生制御開始後の吸入空気量の積算値tGaSLに対して単調増加する量g(tGaSL)」を減じた値を、「新たな微粒子捕集量SPM」として格納する。その後、CPU71はステップ3195に進み、本ルーチンを一旦終了する。
このように、フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「1」である(フィルタ再生制御実行中である)場合において、吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMth以上となると、フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「0」に変更されるとともに、高Ga後リッチ制御フラグXRIGAの値が「1」に設定される。これにより、後述するように、所定の期間に渡って機関10に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比(弱リッチ空燃比AFRよりもリッチ側の空燃比)に制御される。また、ステップ3140は、推定されている微粒子捕集量SPMから、直前までに実行されていたフィルタ再生制御によって燃焼した微粒子量を減じることにより、その時点の「微粒子捕集量SPM」をより精度良く推定するステップである。
一方、フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「1」である(フィルタ再生制御実行中である)場合において、吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMth以上とならなければ、CPU71はステップ3110にて「Yes」と判定し、ステップ3120にて「No」と判定してステップ3150に進む。そして、CPU71は、ステップ3150にて、フィルタ再生制御開始後の吸入空気量の積算値tGaSLがフィルタ再生制御終了閾値GLth以上となったか否かを判定する。このとき、積算値tGaSLが閾値GLthより小さいと、CPU71はステップ3195に直接進んで、本ルーチンを一旦終了する。この結果、フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「1」に維持されるので、フィルタ再生制御が継続して実行される。
そして、この状態において所定の時間が経過し、それによりフィルタ再生制御開始後の吸入空気量の積算値tGaSLがフィルタ再生制御終了閾値GLth以上となると、CPU71はステップ3110及びステップ3120に続くステップ3150にて「Yes」と判定してステップ3160に進み、通常終了後リッチ制御フラグXRINEの値を「1」に、他のフラグの値を「0」に設定する。次いで、CPU71はステップ3170に進み、フィルタ再生要求フラグXPMの値を「0」に設定するとともに、推定されている微粒子捕集量SPMの値を「0」に設定し、ステップ3195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「1」である(フィルタ再生制御実行中である)場合において、吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMthを超えることなく、フィルタ再生制御開始後の吸入空気量の積算値tGaSLがフィルタ再生制御終了閾値GLth以上となると、フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「0」に変更されるとともに、通常終了後リッチ制御フラグXRINEの値が「1」に設定される。これにより、後述するように、所定の期間に渡って機関10に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比(弱リッチ空燃比AFRよりもリッチ側の空燃比)に制御される。また、この場合はフィルタ再生制御が十分に実行されて微粒子捕集フィルタ54の再生が完了した場合であるから、ステップ3170にてフィルタ再生要求フラグXPMの値及び微粒子捕集量SPMの値が「0」に設定される。
<第4フラグ操作>
CPU71は、所定のタイミングにて図32のステップ3200から処理を開始し、以下に述べるステップ3210乃至ステップ3230の処理を実行し、その後、ステップ3240に進む。
ステップ3210:CPU71は、高Ga後リッチ制御フラグXRIGAの値が「1」であるか否かを判定する。CPU71は、高Ga後リッチ制御フラグXRIGAの値が「1」であればステップ3220に進み、そうでなければステップ3240に直接進む。
ステップ3220:CPU71は、高Ga後リッチ制御フラグXRIGAの値が「0」から「1」に変化されてから第1時間TR1が経過したか否かを判定する。CPU71は、第1時間TR1が経過しているとステップ3230に進み、そうでなければステップ3240に直接進む。
ステップ3230:CPU71は、通常制御実行フラグXSTOIの値を「1」に設定し、その他のフラグの値を「0」に設定する。
このように、高Ga後リッチ制御フラグXRIGAの値が「1」となってから第1時間TR1が経過すると、高Ga後リッチ制御フラグXRIGAの値は「0」に変更され、通常制御実行フラグXSTOIの値が「1」に変更される。この結果、後述するように、機関10に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比(弱リッチ空燃比AFR)に制御される。
続いて、CPU71は、以下に述べるステップ3240乃至ステップ3260の処理を実行し、その後、ステップ3295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ3240:CPU71は、通常終了後リッチ制御フラグXRINEの値が「1」であるか否かを判定する。CPU71は、通常終了後リッチ制御フラグXRINEの値が「1」であればステップ3250に進み、そうでなければステップ3295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ3250:CPU71は、通常終了後リッチ制御フラグXRINEの値が「0」から「1」に変化されてから第2時間TR2が経過したか否かを判定する。CPU71は、第2時間TR2が経過しているとステップ3260に進み、そうでなければステップ3295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ3260:CPU71は、通常制御実行フラグXSTOIの値を「1」に設定し、その他のフラグの値を「0」に設定する。
このように、通常終了後リッチ制御フラグXRINEの値が「1」となってから第2時間TR2が経過すると、通常終了後リッチ制御フラグXRINEの値は「0」に変更され、通常制御実行フラグXSTOIの値が「1」に変更される。この結果、後述するように、機関10に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比(弱リッチ空燃比AFR)に制御される。
<空燃比制御>
CPU71は、更に、所定時間の経過毎に図33にフローチャートにより示したルーチンを実行するようになっている。このルーチンの処理により、以下の制御がなされる。
(1)フューエルカット実行フラグXFCの値が「1」であるとき、フューエルカット制御が実行され、開閉弁57は閉じられる(ステップ3305及びステップ3310を参照。)。
(2)フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「1」であるとき、フィルタ再生制御が実行され、開閉弁57は開かれる(ステップ3315及びステップ3320を参照。)。このフィルタ再生制御の内容は、図6のステップ640及びステップ650の制御内容と同じである。
(3)高Ga後リッチ制御フラグXRIGAの値が「1」であるとき、高Ga復帰後リッチ制御が実行され、開閉弁57は閉じられる(ステップ3325及びステップ3330を参照。)。この高Ga復帰後リッチ制御において、メインフィードバック制御の上流側目標空燃比abyfrは理論空燃比よりリッチ側で前記弱リッチ空燃比AFRよりも更にリッチ側の空燃比である「強制リッチ空燃比abyfrich」に設定され、メインフィードバック制御が実行される。サブフィードバック制御は停止される。この結果、機関10に供給される混合気の空燃比の平均は、上述の弱リッチ空燃比AFRよりもリッチ側の空燃比に制御される。なお、前記強制リッチ空燃比abyfrichは、直前のフィルタ再生制御中における吸入空気量Gaの積算値GaSLが大きいほどリッチ側の空燃比に設定されてもよい。
(4)通常終了後リッチ制御フラグXRINEの値が「1」であるとき、通常終了後リッチ制御(通常再生終了後リッチ制御)が実行され、開閉弁57は閉じられる(ステップ3335及びステップ3340を参照。)。この通常終了後リッチ制御において、メインフィードバック制御の上流側目標空燃比abyfrは前記強制リッチ空燃比abyfrichに設定され、メインフィードバック制御が実行される。サブフィードバック制御は停止される。この結果、機関10に供給される混合気の空燃比の平均は、上述の弱リッチ空燃比AFRよりもリッチ側の空燃比に制御される。なお、前記強制リッチ空燃比abyfrichは、直前のフィルタ再生制御中における吸入空気量Gaの積算値GaSLが大きいほどリッチ側の空燃比に設定されてもよい。
(5)フューエルカット実行フラグXFC、フィルタ再生制御実行フラグXPMFS、高Ga後リッチ制御フラグXRIGA及び通常終了後リッチ制御フラグXRINEの何れかの値が「1」でないとき(これらのフラグの値が総て「0」であるとき)、前述した通常制御(図6のステップ630における通常制御と同じ制御)が実行され、開閉弁57は閉じられる。
以上、説明したように、第10制御装置は、フィルタ再生制御実行中(フィルタ再生制御実行フラグXPMFSの値が「1」であるとき)に吸入空気量関係値(吸入空気量Ga)が吸入空気量閾値GaPMthより大きくなることにより同フィルタ再生制御の実行を停止した時点(図31のステップ3120及びステップ3130を参照。)からの所定期間(第1時間TR1)、開閉弁57に前記バイパス通路を遮断する指示を与えるとともに、機関10の複数の気筒に供給される混合気の空燃比の平均を「通常制御時において同複数の気筒に供給される混合気の空燃比の平均」よりもリッチ側の空燃比abyfrichとなるように制御し(図33のステップ3330による高Ga復帰後リッチ制御を参照。)その後、前記通常制御の実行を開始するように構成されている(図32のステップ3220及びステップ3230と、図33のステップ3345と、を参照。)。
フィルタ再生制御実行中、上流側触媒53には多量の酸素が流入する。従って、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1又はその近傍量に到達している。このような状態において、吸入空気量Gaが増大することによりフィルタ再生制御が停止されると、その直後において、上流側触媒53は窒素酸化物を効果的に浄化できない。その結果、窒素酸化物が上流側触媒53及び下流側触媒55を浄化されないまま通過する(吹き抜ける)場合がある。
そこで、第10制御装置は、フィルタ再生制御実行中に吸入空気量Gaが吸入空気量閾値GaPMthより大きくなることによりフィルタ再生制御の実行を停止した時点からの所定期間TR1、上記高Ga復帰後リッチ制御(複数の気筒に供給される混合気の空燃比の平均を通常制御時において複数の気筒に供給される混合気の空燃比の平均よりもリッチ側の空燃比となるようする制御)を実行する。これにより、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1を迅速に低下させることができる。その結果、フィルタ再生制御停止後から短期間内に、上流側触媒53はより多くの窒素酸化物を浄化することが可能な状態となる。よって、上流側触媒53及び下流側触媒55を吹き抜ける窒素酸化物の量を低減することができる。
なお、第10制御装置は、フィルタ再生制御開始後の吸入空気量の積算値tGaSLがフィルタ再生制御終了閾値GLth以上となった場合においても、その語、第2時間TR2が経過するまで上記通常終了後リッチ制御(複数の気筒に供給される混合気の空燃比の平均を通常制御時において複数の気筒に供給される混合気の空燃比の平均よりもリッチ側の空燃比となるようする制御)を実行する。従って、フィルタ再生制御後における流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1を迅速に低下させることができる。その結果、フィルタ再生制御停止後から短期間内に、上流側触媒53はより多くの窒素酸化物を浄化することが可能な状態となる。
(第11実施形態)
次に、本発明の第11実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第11制御装置」とも称呼する。)について説明する。第11制御装置は、フューエルカット制御実行中に排ガス(この場合、フューエルカット実行中であるため排ガスは空気である。)の一部を微粒子捕集フィルタ54に供給するように構成されている点において、第1制御装置と相違する。以下、この相違点を中心に説明する。
第11制御装置は、図34に示したように、図3に示したバイパス通路形成部材56に代わる第1バイパス通路形成部材56a、第2バイパス通路形成部材56b及び第3バイパス通路形成部材56cを備えている。第1〜第3バイパス通路形成部材56a〜56cのそれぞれは管状の部材からなる。更に、第11制御装置は、図3に示した開閉弁57に代わる三方弁(通路切換え手段、切換弁)58を備えている。
第1バイパス通路形成部材56aの一端は、第1気筒#1の排気ポートに接続された枝部51a1に接続されている。第1バイパス通路形成部材56aの他端は、三方弁58の入口部に接続されている。
第2バイパス通路形成部材56bの一端は、三方弁58の二つの出口部のうちの一つ(以下、「第1出口部」とも称呼する。)に接続されている。第2バイパス通路形成部材56bの他端は、微粒子捕集フィルタ54と下流側触媒55との間の位置においてエキゾーストパイプ52(前記主通路部)に接続されている。
即ち、枝部51a1、第1バイパス通路形成部材56a及び第2バイパス通路形成部材56bは、機関10の複数の気筒のうちの一部の気筒(第2〜第4気筒)以外の気筒である他の気筒(第1気筒)の排気ポートを通して排出されたガスを、微粒子捕集フィルタ54(及び上流側触媒53)を通過させることなく、下流側触媒55に直接流入させるバイパス通路を構成する「バイパス通路構成部」に相当している。
第3バイパス通路形成部材56cの一端は、三方弁58の二つの出口部のうちの他の一つ(以下、「第2出口部」とも称呼する。)に接続されている。第3バイパス通路形成部材56cの他端は、上流側触媒53と微粒子捕集フィルタ54との間の位置においてエキゾーストパイプ52(前記主通路部)に接続されている。
三方弁58は、電気制御装置70のCPU71からの指示信号に応じて、一つの入口部と第1出口部とを連通する状態、一つの入口部と第2出口部とを連通する状態、及び、一つの入口部を第1出口部及び第2出口部の何れにも連通しない状態のうちの一つの状態を選択できるようになっている。
次に、上述のように構成された第11制御装置の作動について説明する。第11制御装置のCPU71は、図35に示したルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。なお、図35において図6に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図6のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。そのようなステップについての詳細な説明は省略される。以下、場合を分けて説明する。
(場合1)微粒子捕集フィルタ54の再生要求が発生してフィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」となっていて、且つ、フューエルカット条件が成立していない場合。
この場合、CPU71はステップ3500に続く「フィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」であるか否かを判定するステップ610」にて「Yes」と判定する。更に、CPU71は次の「フューエルカット条件が成立しているか否かを判定するステップ3510」にて「No」と判定し、ステップ3520に進む。
CPU71は、ステップ3520にて三方弁58に「入口部と第1出口部とを連通させる」指示信号を送出する。これにより、第1気筒から排出されたガスは上流側触媒53及び微粒子捕集フィルタ54をバイパスして下流側触媒55に直接導入される。CPU71は、次のステップ650にて、上述した「フィルタ再生制御」を実行する。その後、CPU71はステップ3595に進んで本ルーチンを一旦終了する。この制御状態は、第1制御装置によるフィルタ再生制御中の制御状態と同じである。従って、窒素酸化物の排出量が抑制されながら、微粒子捕集フィルタ54が再生される。
(場合2)微粒子捕集フィルタ54の再生要求が発生してフィルタ再生要求フラグXPMの値が「1」となっていて、且つ、フューエルカット条件が成立している場合。
この場合、CPU71はステップ3500に続くステップ610にて「Yes」と判定し、且つ、次のステップ3510にても「Yes」と判定してステップ3530に進む。
CPU71は、ステップ3530にて三方弁58に「入口部と第2出口部とを連通させる」指示信号を送出する。これにより、第1気筒から排出されたガスは上流側触媒53をバイパスして微粒子捕集フィルタ54に直接導入される。なお、この場合、後述するようにフューエルカット制御が実行されるから、第1気筒から排出されるガスは酸素を多量に含む空気である。次に、CPU71はステップ3540に進み、総てのインジェクタ39からの燃料噴射を停止するフューエルカット制御を実行する。この結果、微粒子捕集フィルタ54に酸素が供給されるので、微粒子捕集フィルタ54内に捕集されていた微粒子が燃焼し、微粒子捕集フィルタ54が再生される。その後、CPU71はステップ3595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
(場合3)微粒子捕集フィルタ54の再生要求が発生していないのでフィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」となっていて、且つ、フューエルカット条件が成立していない場合。
この場合、CPU71はステップ3500に続くステップ610にて「No」と判定してステップ3550に進み、三方弁58に「入口部と第1出口部及び第2出口部との連通を遮断させる」指示信号を送出する。これにより、第1気筒から排出されたガスの総ては、第2気筒乃至第4気筒から排出されたガスとともに、集合部51bへと流れ、次いで、エキゾーストパイプ52内を通過する。
次に、CPU71はステップ3560に進み、フューエルカット条件が成立しているか否かを判定する。この場合、フューエルカット条件は成立していない。従って、CPU71はステップ3560にて「No」と判定してステップ630に進み、上述した「通常制御」を実行する。その後、CPU71はステップ3595に進んで本ルーチンを一旦終了する。この制御状態は、第1制御装置による通常制御中の制御状態と同じである。従って、未燃物及び窒素酸化物は上流側触媒53及び下流側触媒55によって浄化され、微粒子は微粒子捕集フィルタ54によって捕集される。
(場合4)微粒子捕集フィルタ54の再生要求が発生していないのでフィルタ再生要求フラグXPMの値が「0」となっていて、且つ、フューエルカット条件が成立している場合。
この場合、CPU71はステップ3500に続くステップ610にて「No」と判定してステップ3550に進み、三方弁58に「入口部と第1出口部及び第2出口部との連通を遮断させる」指示信号を送出する。これにより、第1気筒から排出されたガスの総ては、第2気筒乃至第4気筒から排出されたガスとともに、集合部51bへと流れ、次いで、エキゾーストパイプ52内を通過する。
次に、CPU71はステップ3560にて「Yes」と判定し、ステップ3570に進んでフューエルカット制御を実行する。即ち、CPU71は、総てのインジェクタ39からの燃料噴射を停止し、ステップ3595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上、説明したように、第11制御装置において、「一部の気筒(第2〜第4気筒)の排気ポートを通して排出された排ガスを通過させる主排気通路」を構成する「主排気通路構成部」は、他の気筒(第1気筒)の排気ポートに接続されるとともに集合部51bに接続される第2枝部51a1を含む。
また、前記バイパス通路構成部は、
一端が前記第2枝部51a1に接続されるとともに他端が「微粒子捕集フィルタ54と下流側触媒55との間の位置」にて前記主通路部(エギゾーストパイプ52)に接続されるバイパス通路を構成する第1管状部(56a、56b)と、
一端が前記第2枝部51a1に接続されるとともに他端が「上流側触媒53と微粒子捕集フィルタ54との間の位置」にて前記主通路部(エギゾーストパイプ52)に接続される通路を構成する第2管状部(56a、56c)と、
通路切換え手段である三方弁58と、
を備える。
このとき、前記通路切換え手段(三方弁58)は、
前記第2枝部51a1と、前記微粒子捕集フィルタ54と前記下流側触媒55との間の位置の前記主通路部(エギゾーストパイプ52)と、のみを連通する第1状態(ステップ3520を参照。)、
前記第2枝部51a1と、前記上流側触媒53と前記微粒子捕集フィルタ54との間の位置の前記主通路部(エギゾーストパイプ52)と、のみを連通する第2状態(ステップ3530を参照。)、及び、
第1管状部(56a、56b)及び第2管状部(56a、56c)を通しての「前記第2枝部51a1と前記主通路(エギゾーストパイプ52)との連通」を遮断する第3状態(ステップ3550を参照。)、
の何れかの状態を指示に応じて選択的に達成するように構成されている。
そして、第11制御装置は、
前記フィルタ再生制御を実行するとき前記通路切換え手段に前記第1状態を達成させる指示を与えて前記フィルタ再生制御を実行し(ステップ3520及びステップ650を参照。)、
前記機関の運転状態が所定のフューエルカット運転状態となったとき前記機関への燃料の供給を停止するとともに前記通路切換え手段に前記第2状態を達成させる指示を与えてフューエルカット制御を実行し(ステップ3530及び3540を参照。)、
前記フィルタ再生制御及び前記フューエルカット制御のいずれの制御も実行しないとき前記複数の気筒のそれぞれに供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比を含む前記所定の空燃比範囲内の空燃比に制御するとともに前記通路切換え手段に前記第3状態を達成させる指示を与えて通常制御を実行する(ステップ3550及びステップ630を参照。)、
ように構成されている。
従って、他の制御装置と同様に、フューエルカット制御が実行されていない場合、フィルタ再生制御又は通常制御が実行される。更に、微粒子捕集フィルタの再生要求が存在している場合においてフューエルカット制御を実行するときには、前記他の気筒(第1気筒)から排出された空気が微粒子捕集フィルタ54の直前且つ上流位置に導入される。従って、酸素を多量に含む大気が微粒子捕集フィルタ54に供給されるので、フューエルカット制御中においても微粒子捕集フィルタ54を再生することができる。
なお、第11制御装置は、微粒子捕集フィルタの再生要求が存在していない場合においてフューエルカット制御を実行する場合、前記通路切換え手段に前記第3状態を達成させる指示を与えていた。即ち、総ての気筒から排出されるガスを総て上流側触媒53に流入させていた。これに代え、第11制御装置は、微粒子捕集フィルタの再生要求が存在していない場合においてフューエルカット制御を実行する場合、前記通路切換え手段に前記第2状態を達成させる指示を与え、微粒子捕集フィルタ54にフューエルカット制御中の排ガス(空気)を供給してもよい。
以上、説明したように、本発明の各実施形態によれば、フィルタ再生制御において微粒子捕集フィルタ54に酸素が供給されるとともに、下流側触媒55に流入するガスの空燃比の平均を略理論空燃比に制御することができる。従って、ガソリン機関の制御装置であって、窒素酸化物の排出量を増大させることなく微粒子捕集フィルタを再生させることができる制御装置が提供される。
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各実施形態において、一回のフィルタ再生制御の継続時間を、そのフィルタ再生制御を開始する時点において推定されていた微粒子捕集量SPMが多いほど長くしてもよい。更に、一回のフィルタ再生制御の継続時間を、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1が大きいほど長く設定してもよい。
サブフィードバック制御は、例えば、特開2007−278186号公報に開示されているように、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが下流側目標値に一致するように、上流側空燃比センサ66によって検出される空燃比を見かけ上補正するような制御であってもよい。代替として、サブフィードバック制御は、特開平06−010738号公報に開示されているように、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて、上流側空燃比センサ66の出力値に基づいて作成される空燃比補正係数を変更する制御であってもよい。
更に、各実施形態において、第1気筒の排気ポートに接続された枝部51a1とバイパス通路形成部材56(又は第1バイパス通路形成部材56a)との接続位置と、集合部51bと、の間に、枝部51a1を開閉する第2開閉弁を配設し、制御装置は、フィルタ再生制御中には第2開閉弁を閉じ、それ以外の通常制御中等において第2開閉弁を開くように構成されてもよい。また、サブフィードバック制御における下流側目標空燃比は、弱リッチ空燃比に代え、理論空燃比であってもよい。
10…多気筒内燃機関(ガソリンエンジン)、21…シリンダ、22…ピストン、25…燃焼室、31…吸気ポート、32…吸気弁、34…排気ポート、35…排気弁、39…インジェクタ、40…吸気系統、44…スロットル弁、50…排気系統、51…エキゾーストマニホールド、51a1…枝部、51a2…枝部、51a3…枝部、51a4…枝部、51b…集合部、52…エキゾーストパイプ、53…上流側触媒、54…微粒子捕集フィルタ、55…下流側触媒、56…バイパス通路形成部材、57…開閉弁、58…三方弁、61…熱線式エアフローメータ、66…上流側空燃比センサ、67…下流側空燃比センサ、70…電気制御装置、71…CPU、74…バックアップRAM。