JP2009155391A - 耐熱性樹脂成形物 - Google Patents

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部 克 弘 阿
Nobuyuki Niwa
羽 宣 行 丹
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Abstract

【課題】耐熱性、耐摩耗性、および機械強度に優れ、かつ溶融時の流動性も高い射出成形用樹脂成形物の提供。
【解決手段】5〜50重量%のポリベンゾイミダゾール、40〜85重量%の芳香族ポリエーテルイミド、および5〜40重量%の炭素繊維を含んでなる射出成形用耐熱性樹脂成形物。この樹脂成形物中に含まれる、ポリベンゾイミダゾール/芳香族ポリエーテルイミドの含有量の比は0.2〜1.25とされる。
【選択図】なし

Description

本発明は、高温で安定して使用することができる機材を製造するのに用いられる、射出成形用樹脂成形物に関するものである。
一般的に、300℃以上の温度領域で使用される機材に用いられる材料には、金属が多く使用されてきた。しかし、金属では重量が大きいことや、使用時などに接触する材料に対して傷などの損傷を与えてしまうなどの問題があった。特に摺動材料として用いられる場合、金属のような硬度が高すぎる部材は好ましくなかった。
したがって、金属に比べて軽量であり、かつ比較的柔軟である樹脂を適用することも検討されてきた。このような耐熱性材料または摺動材料として検討されてきた樹脂材料は、例えば超高分子ポリエチレン、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、芳香族ポリアミド、およびその他が挙げられる。
しかし、これらの従来の樹脂では、耐熱性の点で不十分であり、または強度も不足する傾向があった。
このような用途に適したものとして、芳香族ポリエーテルイミドが検討されてきた。この材料は、耐熱性、強度、耐薬品性の点で優れた高機能性樹脂として知られており、GEプラスチックス社からウルテム(Ultem)という登録商標名で市販されている。その中には芳香族ポリエーテルイミドに耐熱性、強度を向上させるために炭素繊維を加えたものもある。しかし、これらであっても、例えば高温摺動部品のような用途で用いる射出成形品には耐熱性、耐摩耗性がまだ充分とは言えず、その改良が望まれている。
また、耐熱性および強度の高い樹脂として、芳香族ポリベンゾイミダゾールと芳香族ポリイミドまたは芳香族ポリエーテルイミドとを含む組成物が提案されている(特許文献1)。この特許文献に記載された組成物は、芳香族ポリベンゾイミダゾールと芳香族ポリイミドまたは芳香族ポリエーテルイミドとを相互溶剤に溶解させたのち、非溶剤に投入して析出させて得られるものである。しかし、この組成物はフィルム製造用の組成物(特許文献1特許請求の範囲第21〜32項)であり、フィルム形状以外の機材や部品を形成させるための射出成形用材料としては改良の余地があるものであった。
特開昭62−283154号公報
本発明は上記のような問題点に鑑みて、耐熱性が高く、高温などの過酷な環境でも機械強度、耐摩耗性などが劣化しない、射出成形に適した、樹脂成形物を提供するものである。
本発明による射出成形用耐熱性樹脂成形物は、5〜50重量%のポリベンゾイミダゾール、40〜85重量%の芳香族ポリエーテルイミド、および5〜40重量%の炭素繊維を含んでなり、ポリベンゾイミダゾール/芳香族ポリエーテルイミドの含有量の比が0.2〜1.25であることを特徴とするものである。
本発明によれば、耐熱性、耐摩耗性、および機械強度に優れ、かつ射出成形などに付すために溶融させた場合の流動性をも高いレベルで有する射出成形用樹脂成形物が提供される。
本発明による樹脂成形物は、ポリベンゾイミダゾール、芳香族ポリエーテルイミド、および炭素繊維を必須成分として含んでなるものである。これらの各成分について説明すると以下の通りである。
<ポリベンゾイミダゾール>
本発明の樹脂成形物は、ポリベンゾイミダゾールを含んでなる。ここで、ポリベンゾイミダゾールとは、置換または非置換のベンゾイミダゾールをモノマー単位として含む重合体をいう。ベンゾイミダゾールが置換基を有する場合、その置換基は本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択される。
好ましいポリベンゾイミダゾールは、下記一般式(I)で表されるものである。
Figure 2009155391
ここで、R〜RおよびR’〜R’は、それぞれ独立に選択される置換基であり、
は2価の連結基であり、
は、R〜Rのいずれか一つと、R’〜R’のいずれか一つとを連結する2価の連結基であり、
pおよびqは重合度を表す数である。
ここで、R〜RおよびR’〜R’は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシル基であることが好ましく、
およびLは、それぞれ独立に、単結合であるか、カルコゲン原子、芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、または複素環化合物からなる2価の連結基であることが好ましい。
またはLが脂肪族化合物からなる連結基である場合は、炭素数が1〜8のアルキレンであることがより好ましく、芳香族化合物である場合は、フェニレン、またはナフチレンであることが好ましく、複素環化合物からなる連結基である場合は、ピリジニレン、ピラジニレン、フラニレン、キノリニレン、チオフェニレン、ピラニレン、インデニレン、またはフリレニレンであることが好ましく、カルコゲンからなる連結基である場合は、−O−、−S−、−SO−であることが好ましい。
好ましいポリベンゾイミダゾールの具体的なものとしては、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(ジフェニレン−2’’,2’’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(ジフェニレン−4’’,4’’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(1’’、1’’、3’’−トリメチルインダニレン)−3’’、5’’−p−フェニレン−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンゾイミダゾール/2,2’−(1’’、1’’、3’’−トリメチルインダニレン)−3’’、5’’−p−フェニレン−5,5’−ジベンゾイミダゾール共重合体、
2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンゾイミダゾール/2,2’−(ジフェニレン−2’’,2’’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール共重合体、
ポリ−2,2’−(フリレン−2’’,5’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(ナフタレン−1’’、6’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(ナフタレン−2’’、6’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−アミレン−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−オクタメチレン−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−シクロヘキセニル−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)エーテル、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)サルファイド、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)スルフォン、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)メタン、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)プロパン2,2、
ポリ−エチレン−1,2,2,2’’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)エチレン−1,2、
およびその他が挙げられる。
これらのうち、本発明の樹脂成形物に用いるのにより好ましいものは、下記式(Ia)で表される、ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンゾイミダゾールである。
Figure 2009155391
ここで、nは重合度を表す数である。
これらのポリベンゾイミダゾールは、本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択して、また必要に応じて2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらのポリベンゾイミダゾールは、構造や分子量に応じて広範な範囲の固有粘度を有するが、固有粘度が0.2以上であることが好ましい。さらに、熱的性質も構造に依存するが、耐熱性が求められるという観点から、形成される材料が曝され得る温度よりも高い熱変形温度を有するべきである。一般的には、熱変形温度が180℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。前記のポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンゾイミダゾールは通常、熱変形温度が約435℃であり、特に好ましい化合物である。
本発明による樹脂成形物において、ポリベンゾイミダゾールの含有量は、樹脂成形物の総重量を基準として5〜50重量%である必要があり、10〜30重量%であることが好ましい。ポリベンゾイミダゾールの含有量は、後述するように製造する場合に押出機で混練されるときや、射出成形材料として溶融されて使用される場合の流動性を高く保つために、50%以下である必要があり、一方で、射出成形により得られた機材または部材の耐摩耗性を向上させるために、5%以上である必要がある。
<芳香族ポリエーテルイミド>
芳香族ポリエーテルイミドは、耐熱性、および耐薬品性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックであることが知られており、各種のものが検討されている。本発明による樹脂成形物に用いられる芳香族ポリエーテルイミドは、これらのうち、芳香族部分にイミド環が縮合環構造を形成しているものが好ましい。このような構造をとることにより、前記したポリベンゾイミダゾールとの相溶性が改良される傾向にあるためである。
より具体的には、本発明による樹脂成形物に用いられるのに好ましい芳香族ポリエーテルイミドは、下記一般式(II)で示されるものである。
Figure 2009155391
ここで、ArおよびArは、それぞれ独立に3価芳香族基であり、LおよびLはそれぞれ独立に2価芳香族基、または炭素数6以下の2価脂肪族基であり、rは重合度を表す、0以上の数であり、sおよびtは重合度を表す数である。
このような芳香族ポリエーテルイミドの例は、特許文献1にも示されているほか、市販もされている(例えば、Ultem(登録商標名)、GEプラスチックス社製)。特に好ましい芳香族ポリエーテルイミドの例は、下記一般式(IIa)で示されるもの(Ultem 1000(商品名)、重量平均分子量30,000±10,000)の他、コポリマーであるUltem 6000またはUltem D5000などが挙げられる。このような芳香族ポリエーテルイミドは2種類以上を混合して用いることもできる。
Figure 2009155391
ここで、mは重合度を表す数である。
芳香族ポリエーテルイミドの含有量は、樹脂成形物の総重量を基準として40〜85重量%である必要があり、50〜60重量%であることが好ましい。芳香族ポリエーテルイミドの含有量は、後述するように製造する場合に押出機で混練されるときや、射出成形材料として溶融されて使用される場合の流動性を高く保つために、40%以上ある必要がある。一方で、芳香族ポリアミドの含有量の上限はポリベンゾイミダゾールおよび炭素繊維の含有量により決まる。なお、ポリベンゾイミダゾール/芳香族ポリエーテルイミドの含有量の比が0.2以上1.25以下であることが樹脂の流動性および成形性の点から必要であり、好ましくは0.3以上0.75以下である。
<炭素繊維>
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などに分類されるが、それらのいずれを用いてもよい。しかしながら、補強効果、耐摩耗性の改良効果が大きいという点からPAN系の炭素繊維が好ましく用いられる。炭素繊維の長さおよび直径などは特に限定されないが、例えば繊維長は好ましくは2〜10mm、より好ましくは5〜8mmであり、直径は5〜15μmであることが好ましい。また、またアスペクト比は0.001〜0.0025であることが好ましく0.0015〜0.0020であることがより好ましい。なお、ここで繊維長は配合時の長さであり、最終的な樹脂組成物中では混練時にかかる応力などのために切断され、または折られるために短くなっているものと考えられる。
本発明による樹脂成形物において、炭素繊維の含有量は、樹脂成形物の総重量を基準として5〜40重量%であり、好ましくは、10〜30重量%である。本発明による樹脂成形物において、溶融時の流動性を確保するためには、炭素繊維の含有量は40重量%以下である必要がある。一方で炭素繊維による補強効果および耐熱性向上効果を十分に発揮させるために炭素繊維の含有量は5重量%以上である必要がある。
<樹脂成形物の製造方法およびその用途>
本発明による樹脂成形物は、任意の方法で製造することができるが、原料であるポリベンゾイミダゾールおよび芳香族ポリエーテルイミドを同時に溶解することができる溶剤が限られていること、および配合する炭素繊維を溶解させた場合には所望の機械強度改良の効果が得られないことから、パウダー状の原材料を混合し、それを溶融し混練することにより製造することが好ましい。より具体的には、以下のように製造されることが好ましい。まずパウダー状態のポリベンゾイミダゾールおよび芳香族ポリエーテルイミドを規定の重量比で混合し、混合されたパウダーを押出成形機で溶融させ、混練する。次いで混練中にサイドフィーダーから炭素繊維を導入することにより、樹脂中に炭素繊維を分散させたのち押出機より押し出す。押出時のシリンダー温度は300〜450℃であることが好ましく、340〜410℃であることがより好ましい。また押出速度は10〜50kg/hourであることが好ましく、15〜30kg/hourであることがより好ましい。押し出された混練物をペレタイザーで一定の長さに切断し、ペレットなどの形状の樹脂成形物とする。このように形成されたペレットなどは通常知られた方法により射出成形に付され、所望の部品形状に成形加工される。
本発明の射出成形用の耐熱性樹脂成形物は、任意の用途に用いることができるが、特に高熱などの過酷な環境において用いられる機材やその部材を形成するのに用いられることが好ましい。具体的には、シリコンウェーハ搬送用カセット、ハンダ付け用搬送部品、高温で用いられるネジおよび、滅菌用トレイ等を製造するための射出成形用材料として用いられることが好ましい。
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
実施例1
下記の通りに流動性テストを行った。
炭素繊維(東レ株式会社製TORAYCA MLD−300(商品名))、ポリベンゾイミダゾール(PBI Performance Products社製、100mesh polymer、メジアン粒径80μm)、および芳香族ポリエーテルイミド(Ultem(登録商標) 1000P−1000(GEプラスチックス社製))を配合比を変化させて、複数の樹脂成形物を製造し、その流動性を評価した。各樹脂成形物のポリベンゾイミダゾールおよび炭素繊維の含有率は表1に示すとおりであり、残部を芳香族ポリエーテルイミドとした。得られた流動性を以下の基準で評価した結果は表1に示すとおりであった。
○:メルトフローレイトが2g/10min以上
△:メルトフローレイトが0.01〜2g/10min
×:メルトフローレイトが0.01g/10min以下
ここで、メルトフローレイトはISO 1133に準拠し、380℃、5kgfの条件で測定した。
Figure 2009155391
実施例2
25重量%のポリベンゾイミダゾールパウダー(ポリベンゾイミダゾール 100mesh polymer、 PBI Performance Products社製)、および75重量%の芳香族ポリエーテルイミドパウダー (ULTEM 1000P−1000(商品名)、GEプラスチックス社製)をヘンシェルミキサー(FM−150L; 三井鉱山社製)を用いて均一に混合した。この混合物パウダーを2軸押出し機(PCM−46(商品名)、株式会社池貝製)のメインフィーダーに充填し、サイドフィーダーに炭素繊維(HTAC6UH(商品名)、東邦テナックス株式会社製)を充填した。2軸押出機のシリンダーおよびダイの温度を340〜370℃に、メインフィーダーからの充填量を12kg/hour、サイドフィーダーからの充填量を3kg/hourに設定し、押出成形を行った。
押出された樹脂混練物は、ホットカットペレタイザーにてペレット形状に切断された。切断されたペレットは直ちに水中に投下され、次いで遠心脱水機にて水分を除去後、ペレットの大きさをそろえるため篩分けされ、貯蔵タンクへ貯蔵された。貯蔵されているペレットを熱風循環式乾燥機(富士科学器械株式会社製)にて160℃、14時間乾燥を行い、20重量%のポリベンゾイミダゾール、60重量%の芳香族ポリエーテルイミド、20重量%の炭素繊維を含むペレットが得られた。
比較例1
Ultem JD7710(GEプラスチックス社製、芳香族ポリエーテルイミド炭素繊維強化グレード)を射出成形に用いる材料とした。
摺動特性の評価
実施例2および比較例1で得られた射出成形用材料から射出成形して得られた試験片の摺動特性の評価を行った。試験条件は以下の通りであった。
試験条件
JIS K7218A法準拠
試験片: 中空円筒状試験片
相手材: S45C
試験荷重: 15kgf/cm
試験速度: 5m/min
試験距離: 10km
試験温度: 23℃
得られた結果を図1および2に示す。本発明による樹脂成形物を用いて形成された部材は摩擦係数が低く安定しており、また耐摩耗性が高いことが確認された。
実施例2と比較例1との耐摩耗性を比較するグラフ。 実施例2と比較例1との動摩擦係数を比較するグラフ。

Claims (4)

  1. 5〜50重量%のポリベンゾイミダゾール、40〜85重量%の芳香族ポリエーテルイミド、および5〜40重量%の炭素繊維を含んでなり、ポリベンゾイミダゾール/芳香族ポリエーテルイミドの含有量の比が0.2〜1.25であることを特徴とする、射出成形用耐熱性樹脂成形物。
  2. 前記樹脂成形物の形状がペレット状である、請求項1に記載の射出成形用耐熱性樹脂成形物。
  3. パウダー状の原料を溶融し、混練することにより製造された、請求項1または2に記載の射出成形用耐熱性樹脂成形物。
  4. 10〜30重量%のポリベンゾイミダゾール、50〜60重量%の芳香族ポリエーテルイミド、および10〜30重量%の炭素繊維を含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形用耐熱性樹脂成形物。
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