以下、本発明の実施の形態について、図1に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る情報提供システム1の概略を示す概略図である。また、図2は、図1の情報提供システム1の構成の一例を示すブロック図である。
(第1の実施の形態)
図1において、情報提供システム1は、車載器10、路側無線装置20およびサーバ装置30から構成される。車載器10は、本発明に係る車載器の一実施の形態であって、車両200に搭載される装置である。車載器10は、通常、車両200の運転席の近傍であって、運転者が車載器を操作できる位置に設置される。車載器10はナビゲーション装置に接続され、後述する音声や画像のデータをナビゲーション装置に送信すると共に、ナビゲーション装置から位置情報や車速情報、方向情報等を入手するものや、オーディオ装置と接続され、音声情報をオーディオ装置に送信するもの、あるいは車載器10単体で受信した音声情報の発話処理を行うもの(以下、発話型の車載器と呼ぶこともある)がある。本実施の形態においては、車載器10の形態として発話型の車載器を用いて説明するが、上述した他の機器と接続される車載器においても当然適用可能である。一方で他の外部機器と接続しない発話型の車載器においては、他の外部機器と接続しないために自車の位置情報等車両に関する各種情報を得られない場合でも、上下線の判別が安価かつ容易に実現可能である。
路側無線装置20は、車両200が走行する道路の側方、上方あるいは地中等に設置され、その道路を通行する車両に対して短距離通信方式等にて各種情報を提供する装置である。この路側無線装置20は、道路に沿って間隔を空けて複数設置される。また、路側無線装置20は、上下線のそれぞれに対応して配置される。
サーバ装置30は、有線あるいは無線の通信路を介して路側無線装置20に接続され、路側無線装置20に送信するための各種情報を取得し、任意の路側無線装置20に所定の情報を送信する装置である。本実施の形態では、1つのサーバ装置30対して、複数の路側無線装置20が接続されているものとしているが、1つのサーバ装置30には、1つの路側無線装置20が接続される構成としてもよい。
第1の実施の形態において、車載器10は、図2に示すように、アンテナ2、無線通信部3、入力部4、記憶部5、制御部6、音声処理部7および音声出力部8等から構成されている。アンテナ2は、無線通信部3に接続され、音声出力部8は、音声処理部7に接続されている。無線通信部3、入力部4、記憶部5および音声処理部7は、制御部6に接続されている。
車載器10が備えるアンテナ2は、路側無線装置20より無線で送信された電波を受信するためのアンテナである。アンテナ2は、電波を増幅するためのブースタ(不図示)等と一緒に用いられる。
車載器10において、検出手段としての無線通信部3は、所定の無線通信方式で路側無線装置20の無線通信部23(詳細は後述)と通信を実行する無線通信回路等を有する。車載器10が備える無線通信部3と、路側無線装置20が備える後述の無線通信部23との間の無線通信方式としては、DSRCの方式を採用している。しかし他の方式を採用しても良い。また、無線通信部3は、受信した電波の電界強度値を検出できる。例えば、無線通信部3が電波を電圧に変換する際に、その得られた電圧の値を電界強度値として採用することで、電界強度値を検出できる。さらに、無線通信部3は、路側無線装置20が送信した電波に情報が載せられている場合には、受信した電波に載せられかつ変調された信号を復調する復調部(不図示)を備える。また、復調部では、電波に載せられた各信号を復調し、目的別の各信号に分離かつフィルタリングし、各目的を達成するために各デバイスへ振り分ける。例えば、受信した電波に重畳されている音声情報と、車両が走行している方位を示す方位情報を復調部が抽出した場合には、復調部は、音声情報を記憶部5へ出力し、方位情報を制御部6へ出力する。
入力部4は、ユーザインタフェースの一部とされ、押釦、タッチパネル、音声入力システムおよびリモートコントローラ等の1つまたは複数を含む部分である。入力部4は、ユーザが音量の調節等の指示を車載器10に与えるための入力手段としての機能をになう部分である。
記憶部5は、各種情報、データまたはプログラム等のいずれか1つあるいは複数を記憶しておく部分である。例えば、無線で受信した音声情報、方位情報、電波の電界強度あるいは電界強度変化率等の1つあるいは複数を記憶しておくことができる。
制御部6は、検出手段および制御手段として機能するための、CPU等の信号処理部を備える。具体的には、無線通信部3、入力部4および記憶部5からの指示、情報あるいはデータが、制御部6に入力される。すると、制御部6が備えるROM(Read Only Memory)(不図示)あるいはRAM(Random Access Memory)(不図示)にそれぞれ記憶されている所定の制御プログラムおよびデータを読み出して、各種の演算、判定および処理を実行する。さらに、制御部6は、その処理されたデータを各部に出力することにより、各デバイスの制御を行う。なお、ROMは、制御部6が各部を制御するための制御プログラムおよび各定数を記憶する読み出し専用のメモリである。RAMは、制御部6からの制御指令に基づいて、各種デバイスとの通信情報あるいは取得した信号の情報を一時的に記憶するための揮発性の記憶領域である。また、RAMは、制御部6のワークメモリとして使用される。
音声処理部7は、音声データを再生可能な音声信号に変換する。変換された音声信号は、音声出力部8に送出され、音声出力部8は、その音声信号を音声として出力する。
路側無線装置20は、指向性アンテナ22、無線通信部23、通信処理部24およびデータ通信部25を備える。無線通信部23は通信処理部24と接続され、通信処理部24は、データ通信部25と接続されている。
路側無線装置20における無線通信部23は、DSRC方式の無線通信方式で車載器10の無線通信部3と通信する無線通信回路等を有する。無線通信部23にて変調された各種データは、指向性アンテナ22を介して、車載器10へ送信される。データ通信部25は、無線あるいは有線を介してサーバ装置30と通信する通信装置である。また、通信処理部24は、データ通信部25により受信された各種情報を、無線通信部23に供給する処理部である。
本実施の形態では、図1に示す路側無線装置20は、紙面に対して東方向、すなわち東方向に走行するための車線101に向けて情報を送信している。また、車載器10は、そのような指向性アンテナ22より発信された電波を、図1の破線50で囲まれる領域において受信できる。図1で示されるように、車両200は、車載器10を備える車両であって、図1に描かれる車線101を、東方向に走行する車両である(以後、順方向の車両200と言う。)。
図3は、図1の車線101を上空から地上面に対して略平行に見た場合に、指向性アンテナ22から送出される電波の電界強度を、等高線として示す説明図である。路側無線装置20が有する指向性アンテナ22は、図1のD方向へ指向する電波を送出している。具体的には、指向性アンテナ22の指向方向Dは、上空から見ると、順方向の車両200の進行方向に対して垂直に交わるような路側無線装置20からの補助線と、進行方向に逆行する方向に、例えば60°の角度θで道路方向に指向している。そのため、電波受信可能領域50は、指向性アンテナ22を基点に、D方向に電界強度が高い区域が存在し、その電界強度が高い区域から離れるに従い、徐々に電界強度が低くなる。この角度θは、15°〜75°の範囲に入るように設定される。
図4(A)は、順方向に走行する車両200が検出する電波の電界強度を、電界強度を検出し始めた地点からの走行距離と関連づけて示すグラフである。図4(A)では、縦軸が電界強度値であって、横軸がX軸上を走行する車両200の走行位置に対応している。図1および図3において、電波受信可能領域50とX軸とが交差する地点の、紙面において左側の地点が、電波を受信しはじめる地点x0である。図1および図3において、電波受信可能領域50とX軸とが交差する地点のうち、紙面において右側の地点が、X軸を進行方向に進む車両200が電波を受信できなくなる地点xbである。車両200がX軸を進行方向に走行すると、地点x0から、電波の最高電界強度値Emaxを記録する地点xmax迄の区間では、電界強度を検出し始めた地点から走行距離が進めば進むほど、検出される電界強度が向上する。一方、地点xmaxから地点xb迄は、電界強度を検出し始めた地点からの走行距離が進めば進むほど、検出される電界強度が減少する。また、x0からxmax迄の電界強度変化率(傾きα)の平均値の絶対値は、xmaxから電波を受信できなくなる地点xb迄の電界強度変化率(傾きβ)の平均値の絶対値よりも小さいものとなる。なお、電界強度変化率は、一定時間間隔(例えば、0.01秒間隔)で検出される。この電界強度変化率は、図4(A)のグラフ上の各位置の接線の角度に相当するものである。
サーバ装置30は、図2に示すように、データ格納部33と、データ格納部33と接続される通信処理部34と、データ通信部35を有する。また、通信処理部34は、データ通信部35と接続されている。なお、サーバ装置30がインターネット等の通信網を介して他の大型のサーバ装置と接続されるように構成してもよい。
サーバ装置30において、データ通信部35は、路側無線装置20のデータ通信部25と通信するための通信装置を有する。データ格納部33は、地域の情報を含む地域情報および付近の道路状況を含む道路情報等の各種情報を、デジタルの情報データとして格納する記憶媒体等から成る。データ格納部33を構成する記憶媒体としては、ハードディスクドライブ等が挙げられる。通信処理部34は、まず、データ格納部33から道路情報等の各種情報データを読み出す。そして、通信処理部34は、データ通信部35を介して所望の路側無線装置20へ読み出した各種情報データを送信する。なお、通信処理部34は、専用の集積回路で構成されるようにしてもよいし、プログラムをプロセッサで実行して実現するようにしてもよい。
データ格納部33に格納される情報データは、災害の発生、渋滞の発生および天候の変化等により、追加あるいは削除が可能な情報である。また、データ格納部33の情報データすべてを路側無線装置20へ送信する必要はなく、通信処理部34は、必要と認められる情報データのみをデータ格納部33より読み出して、所望の路側無線装置20に各種情報として送信する。
ユーザに提供するために、路側無線機20が車載器10に送信する各種情報としては、音声情報、情報種別、道路種別、方位情報、車線種別および路線番号等がある。音声情報とは、音声で出力するための情報である。音声で出力するための情報は、例えば、音声を変調して電波に重畳してもよいし、符号化してデジタルの音声データとして搬送波に重畳しても良い。また、各種情報の一部または全部を車載器10が有していてもよい。情報種別は、例えば、後述の緊急災害情報、安全運転支援情報、電子標識、長文読み上げ情報およびローカル情報等に分類される各音声情報の種別を示すものである。道路種別は、例えば、高速道路、有料道路、あるいは一般国道等の道路の種別を表すものである。方位情報は、その路側無線装置20が情報の送信対象とする車線の走行方位を示す方位データ等からなる。方位データは、東西南北の4方位、16方位、あるいは方位角等で示される。車線種別は、主要幹線道路等における上下線の区別する上下線データ、および環状道路における内周り若しくは外周りを示す周回方向データ等からなる。また、路線番号は、その道路の路線番号を示すものである。
音声情報としての緊急災害情報は、例えば、地震あるいは津波等の天災が発生した際などに、ユーザに対し、停車や非難等の行動指示を与えるための情報である。安全運転支援情報は、走行先に存在する急なカーブ、落下物、停止車両、あるいは合流部等の情報であり、ドライバーの安全運転を支援するための情報である。例えば、「この先、故障車があります」等の音声情報が、安全運転支援情報である。電子標識とは、例えば制限速度、歩道位置、あるいは駐車禁止区域等の標識記載事項を報知する情報である。長文読み上げ情報とは、交通状況、天候状況あるいはドライバーへの安全政策アピールのための情報である。ローカル情報とは、路面状況あるいは天候の急変部等を報知するための情報である。例えば、「このトンネル出口の路面は現在、凍結しています。」等の音声情報が、ローカル情報である。
次に、上述の情報提供システム1における各装置の動作について説明する。図5は、第1の実施の形態における発話型の車載器10の電波受信時の処理動作を示すフローチャートである。
まず、路側無線装置20の無線通信部23が、音声情報を含まない電波を、指向性アンテナ22より所望の道路へ向けて送出する。
車載器10の無線通信部3は、路側無線装置20から送出される電波の受信状況を監視している。車載器10を備える車両200が、路側無線装置20から送出される電波の受信可能領域50に入ると、無線通信部3は、アンテナ2を介して路側無線装置20の送出した電波を検出する(ステップS101)。また、その電波を検出しはじめた地点x0より、その電波が検出されなくなる地点xbまで、その電波の電界強度値を取得する(ステップS102:検出ステップ)
ステップS102において検出された電界強度値は、制御部6へ送出される。制御部6では、その得られた電界強度値と、その電界強度値を検出し始めた地点からの走行距離とを関連付ける。電界強度値を検出し始めた地点からの走行距離は、電界強度値を得た時刻およびその時の走行速度情報により得られる。そして、制御部6は、電波を検出し始めた地点x0から、最高電界強度値が得られた地点xmax迄の電界強度変化率αの平均値を算出する。また、最高電界強度値が得られた地点xmaxから電波を検出できなくなった地点xb迄の電界強度の変化率βの平均値を算出する。そして、その算出された電界強度変化率αと電界強度変化率βとの各平均値の絶対値を比較して、電界強度変化率αの平均値の絶対値が電界強度変化率βの平均値の絶対値よりも小さいか否かを判定する(ステップS103:制御ステップ)。具体的には、電界強度変化率αの平均値の絶対値が電界強度変化率βの平均値の絶対値よりも小さい場合には(ステップS103においてYES)、その車両が順方向に走行していると、制御部6が認識する(ステップS106)。
制御部6が、その車両200は、順方向に走行していると認識した場合には、制御部6は、逆走である旨の報知を行わないと認識する(ステップS107)。すなわち、制御部6は、音声処理部7に音声情報を送出しない。例えば、本実施の形態における順方向の車両200に備えられる車載器10は、順方向に走行していると認識されるため、逆走である旨の発話をしない。
一方、東方向の車線101に提供される電波を、その車線101を逆方向に走行する車両が取得すると、逆方向に走行する車両が電波受信可能領域50中で受信する電波の電界強度は、図4(B)に示すグラフのように変化する。そして、その電界強度変化率αの平均値の絶対値は、電界強度変化率βの平均値の絶対値よりも大きいものとなる。そのため、制御部6は、ステップS103において否定的(NO)な判定を行う。すると、制御部6は、その車両が逆走していると認識する(ステップS104)。そして、制御部6は、その車両が逆走していると認識した場合には、逆走である旨の音声情報を発話する(ステップS105)。
ステップS105において、発話すると判定された場合には、制御部6は、逆走している旨の音声を出力する(ステップS105)。具体的には、制御部6は、逆走している旨を報知するための音声情報を記憶部5より取得して、その音声情報を音声処理部7に送出する。音声処理部7は、その音声情報を音声信号に変換し、音声出力部8へ送出する。音声出力部8は、その音声信号を音声として出力する、すなわち、逆走である旨を発話する。
以上の説明のように、本発明の第1の実施の形態に係る情報提供システム1は、GPSセンサあるいはジャイロ等を備えない車両であっても、指向性アンテナ22より送信される電波の電界強度変化率を測定することにより、順方向に走行しているか、あるいは逆方向に走行しているかを認識できる。したがって、安価かつ単純なシステムで、発話型の車載器10は、逆走しているユーザに注意喚起できる。
次に、第2の実施の形態に係る情報提供システム1Aにおける各装置の動作について説明する。図2と図3は、第2の実施の形態でも適用される。なお、第1の実施の形態と同じ要素には同じ符号を付して説明する。
図6は、第2の実施の形態における情報提供システム1Aの説明図である。第2の実施の形態において、紙面において東方向へ走行するための車線101(以後、東方向車線という。)と、紙面において西方向へ走行するための車線102(以後、西方向車線という。)と、が隣接して延びている。
第2の実施の形態において、路側無線装置20からの電波は、第1の実施の形態と同様に、東方向車線101を走行する車両200に向けて発信されている。しかし、電波の受信可能領域50は、西方向車線102の一部に侵入している。無線で送信される電波は、天候等により到達距離が異なるために、ある車線(この例では、東方向車線101)にしか向けていない電波が、図6のように他方向への車線(この例では、西方向車線102)でも受信可能となることがある。
図7は、東方向車線101の車両200の為の情報を含む電波の電界強度を等高線として表した説明図である。また、図7には、東方向車線101を走行する車両200(以後、東方向の車両200という。)と、西方向車線102を走行する車両200a(以後、西方向の車両200aという。)と、の各走行方向を、それぞれ、X(A)およびX(B)として示してある。
図8(A)に示されるように、東方向の車両200は、第1の実施の形態と同様の電界強度プロフィールを記録する。具体的には、電波を検出し始めた地点x(A)0から、最高電界強度値が得られた地点x(A)max迄の電界強度変化率α(A)の平均値の絶対値と、最高電界強度値が得られた地点x(A)maxから電波を検出できなくなった地点xb迄の電界強度変化率β(A)の平均値の絶対値とを比較すると、電界強度変化率α(A)の平均値の絶対値は、電界強度変化率β(A)の平均値の絶対値よりも小さい。
一方、西方向の車両200aは、図8(B)に示されるような電界強度プロフィールを記録する。具体的には、電波を検出し始めた地点x(B)0から、最高電界強度値が得られた地点x(B)max迄の電界強度変化率α(B)と、最高電界強度値が得られた地点x(B)maxから電波を検出できなくなった地点x(B)b迄の電界強度変化率β(B)とを比較すると、電界強度変化率α(B)の平均値の絶対値は、電界強度変化率β(B)の平均値の絶対値よりも大きい。また、東方向の車両200が記録する最高電界強度値E(A)maxと、西方向の車両200aが記録する最高電界強度値E(B)maxを比較すると、最高電界強度値E(A)maxは、最高電界強度値E(B)maxよりも、大きいものとなる。
以下、第2の実施の形態に係る情報提供システム1Aの動作について説明する。図9は、第2の実施の形態に係る発話型の車載器10の動作を説明するフローチャートである。
まず、サーバ装置30の通信処理部34は、データ格納部33に格納されている各種情報データを定期的に読み出し、データ通信部35を介して所望の路側無線装置20が存在する通信領域へ送出する。
各種情報をデータ通信部25にて受信した路側無線装置20は、通信処理部24を介して、それらの情報を無線通信部23に送出する。各種情報を受信した無線通信部23は、それらの各種情報を変調した後に、電波に載せて指向性アンテナ22より道路へその電波を送出する。
車載器10の無線通信部3は、路側無線装置20から送出される電波の受信状況を監視している。車載器10が路側無線装置20の通信エリアに入ると、アンテナ2を介して無線通信部3は、路側無線装置20の送出した電波を検出する。具体的には、その検出された電波に載せられた各種情報を取得する(ステップS200:第1の検出ステップ)。また、ステップS200において、制御部6は、取得された各情報を記憶部5に記憶する。
次に、制御部6は、ステップS200で検出された音声情報に、緊急災害情報が含まれるか否かを判定する(ステップS201)。
ステップS201において、音声情報に緊急災害情報が含まれていないと判定(ステップS201においてYES)された場合には、記憶部5に記憶されている後述のステップ206において記憶した前回の判定結果としての判定データに含まれる判定時刻と、電波を受信した時刻とを比較する。そして、その判定データを取得した時刻から一定時間以上が経過したか否かを判定する(ステップS202:第2の制御ステップ)。
例えば、東方向の車両200は、前回の判定データを記憶部5に記憶してから一定時間以上経過していないものとする。また、西方向の車両200aは、前回の判定データが記憶部5に記憶されていないものとする。その場合には、東方向の車両200および西方向の車両200aの両方とも、ステップS202において肯定的(YES)な判定がなされる。
ステップS202において肯定的(YES)な判定がなされると、ステップS203に移行し、制御部6は、無線通信部3を介してその受信した電波の電界強度値を取得する(ステップS203:第2の検出ステップ)。ステップS203において、無線通信部3が検出する電波の電界強度値は、制御部6に送出される。すると、制御部6は、取得された電界強度値を、時刻および車両の走行速度と関連づける。
さらに、制御部6は、無線通信部3が取得した電波の最高電界強度値が、一定の電界強度値以上であるか否かを判定する(ステップS204:第1の制御ステップ)。例えば、東方向の車両200に搭載された車載器10が検出する最高電界強度値E(A)maxは、西方向の車両200aの車載器10が検出する最高電界強度値E(B)maxよりも大きい。このような状況を考慮してステップS204における、判定基準とする最高電界強度値を、最高電界強度値E(B)maxよりも大きく、最高電界強度値E(A)maxよりも小さいものとする。そのように判定基準を設定すると、東方向の車両200に搭載された車載器10が検出する最高電界強度値E(A)maxは、基準となる電界強度よりも高くなるため、制御部6は、ステップS204において肯定的(YES)な判定をする。すなわち、制御部6は、その車両200が電波の送信対象の走行方向と同一の方向に走行していると認識する。一方、西方向の車両200aに搭載された車載器10が検出する最高電界強度値E(B)maxは、基準となる電界強度よりも低くなる。そのため、西方向の車両200aに搭載された車載器10の制御部6は、ステップS205において否定的(NO)な判定をする。すなわち、制御部6は、電波の送信対象の走行方向と逆走する方向に、車両200aが走行していると認識する。
ステップS204において、肯定的な判定(YES)がなされた場合には、制御部6は、最高電界強度値が得られた時刻から電波を検出し始めた時刻迄の電界強度の変化率を算出する。そして、その算出された電界強度の変化率に走行速度に応じた定数を積算して求められる数値が、一定の数値よりも大きいか否かを判定する(ステップS205:第1の制御ステップ)。
例えば、東方向の車両200において得られるx(A)maxからx(A)b迄の電界強度変化率β(A)の平均値の絶対値は、西方向の車両200aにおいて得られるx(B)maxからx(B)b迄の電界強度変化率β(B)の平均値の絶対値よりも大きいものである。得られた各電界強度変化率β(A)、β(B)に対して走行速度に応じた定数を積算して走行速度による差をなくす。したがって、ステップS205における判定の基準になる数値を、東方向の車両200において得られる電界強度変化率β(A)の平均値の絶対値に走行速度に応じた定数を積算した値よりも小さく、西方向の車両200aにおいて得られる電界強度変化率β(B)の平均値の絶対値に走行速度に応じた定数を積算した値よりも大きいものとすることで判定できる。
ステップS204あるいは、ステップS206において否定的な判定(NO)がなされた場合には、制御部6は、ステップS200で記憶部5に記憶した音声情報を発話しない(ステップS205)。ステップS205においては、音声情報を発話する必要がないため、制御部6は、ステップS200で記憶した音声情報等を記憶部5から削除する。
ステップS206において肯定的(YES)な判定がなされた場合には、制御部6は、発話可能である旨の判定結果を、判定データとして時刻と関連付けて記憶部5に記憶する(ステップS207:記憶ステップ)。
ステップS201またはステップS202において、否定的(NO)な判定が為された場合、あるいは、ステップS207の処理後には、制御部6は、記憶部5に記憶されている音声情報を発話する(ステップS208)。ステップS208において音声情報を発話する場合には、制御部6は、記憶部5に記憶されている音声情報を音声処理部7に送出する。音声処理部7は、その音声情報を音声信号に変換し、音声出力部8に送出する。音声出力部8は、音声信号を音声として出力する。
以上の説明のように、本発明の第2の実施の形態に係る情報提供システム1Aでは、受信された情報を発話するべきか否かを、緊急災害情報が含まれるか、過去のものと同一か、および走行方向は正しいか等の基準にて判定できる。したがって、安全運転支援情報および渋滞情報等のように、ある一方方向にしか関係のない情報が、他方向に向かう車両の有する発話型車載器10より発話されない。そのため、関係のない情報が発話されて混乱すること等を防止できる。
また、複数の路側無線装置20が、比較的短距離間隔で配置され、それぞれ情報を送信している場合に、毎回判定を行わずに、前回の認識結果を活用することができる。
さらに、音声情報に、緊急災害情報が含まれる場合には、車載器10は、走行方向の判定処理をすることなく、その緊急災害情報を音声として出力できる。そのため、ドライバーは、上下線関係なく緊急災害情報をより早く取得できる。
以上、本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態について述べたが、本発明は、これらの第1の実施の形態および第2の実施の形態に限定されることなく、種々の変形および組合せが可能である。
たとえば、第1の実施の形態では、路側無線装置20より送信される電波中には、各種情報が含まれないものとしたが、このような形態に限らず、路側無線装置20により送信される電波中には、各種情報が含まれるものとしても良い。また、逆方向の走行である旨の音声情報を記憶しているものとして記憶部5を示したが、その音声情報は、路側無線装置20やサーバ装置30に記憶されているようにしてもよい。
また、第2の実施の形態では、路側無線装置20より送信される電波中に、各種情報が含まれるものとしたが、このような形態に限らない。情報が含まれない電波、すなわち、搬送波のみからなる電波を発する路側無線装置20を、各情報が含まれる電波を発する路側無線装置20の前に設置するような形態でもよい。すなわち、上述の1対の路側無線装置20を、間隔をおいて配置しても良い。
また、第2の実施の形態では、東方向に走行中の場合にのみ音声情報を出力するものとしているが、このような形態に限らない。西方向に走行中の場合にのみ音声情報を出力するものとしてもよいし、逆走している場合にのみ音声情報を出力するものとしてもよい。例えば、高速道路の出入り口あるいはサービスエリアの出入り口には、逆走報知用の路側無線装置20を設け、逆走報知用の路側無線装置20は、逆走している場合にのみ発話する音声情報を有してもよい。
また、各実施の形態で例示した寸法あるいは角度等により本発明が限定されるものではない。例えば、各実施の形態では、上空から見ると、車線101および車線102に対して垂直に交わるような路側無線装置20からの補助線と、進行方向に逆行する方向に、電波は、15°〜75°の角度θで道路方向に指向しているものとしている。しかし、このような形態に限らない。例えば、角度θが−15°〜−75°となる方向に指向していても良い。そのような場合には、順方向に走行する車両200が電波の検出を開始するx0から最高電界強度を検出するxmax迄の電界強度変化率αの平均値の絶対値は、xmaxから電波を受信できなくなる地点xb迄の電界強度変化率βの平均値の絶対値よりも大きいものとなる。東方向に走行する車両200の場合にも同様に、電界強度変化率α(A)は、電界強度変化率β(A)よりも大きいものとなり、西方向に走行する車両200aの場合には、電界強度変化率α(B)は、電界強度変化率β(B)よりも小さいものとなる。
また、第2の実施の形態において、ステップS204で情報の出力可否を行う、すなわち、最高電界強度値で情報の出力可否を判定する場合には、車線101および車線102に対してどのような角度で電波が送信されていても良いし、送信される電波は、指向性の電波でなくても良い。しかし、路側無線装置20から送信される電波が、地上面に略平行な方向において、車線101および車線102に対して15°〜75°の角度を為して指向する電波を送信する場合には、電界強度変化率で情報の出力可否を判定できるものとなる。
また、第2の実施の形態では、電界強度、車両の走行速度、および時刻を関連づけることにより電界強度変化率β(A)と電界強度変化率β(B)との平均値の絶対値を比較できるようにしているが、このような形態に限らない。例えば、絶対値の平均値を採用してもよい。また、走行速度および時刻を関連付ける以外の方法で距離が測定できる場合には、走行速度および時刻を関連付ける必要はない。あるいは、第1の実施の形態のように、電波の受信範囲に突入してから最高電界強度迄の間の電界強度変化率αと、最高電界強度を記録してから電波の受信範囲外になるまでの間の電界強度変化率βとの平均値の絶対値を比較する形態の場合には、すなわち、同一車両における電界強度変化率αと電界強度変化率βを比較する場合には、車両の速度は同じと考えてよいため、走行速度あるいは時刻を電界強度変化率に関連付ける必要はない。
また、第1の実施の形態および第2の実施の形態において、変化していく電界強度変化率の平均値の絶対値をそれぞれ算出しているが、このような形態に限らない。例えば、電波を検出してから最高電界強度を検出するまでの間の電界強度変化率の最大値と、最高電界強度を検出してから電波が検出できなくなるまでの間の電界強度変化率の最大値とを比較するような形態でもよい。また、電波を検出し始めた地点x0と、最高電界強度値が得られた地点xmaxおよび最高電界強度値Emaxと、電波を検出できなくなった地点xbの4つの値から簡易的に地点x0から地点xmax迄の電界強度変化率αと地点xmaxから地点xb迄の電界強度変化率βを算出し、その値を利用するようにしてもよい。他の値についても同様に、4つの値から簡易的に電界強度変化率αと電界強度変化率βを算出してもよい。
なお、第2の実施の形態においては、所定の電界強度以上であるか否か、および電界強度変化率は正常か否かという2つの判定を行っているが、両方が必須ではない。どちらか一方のみを判定するようにしてもよい。
また、第2の実施の形態において、電界強度を検出するステップおよび音声情報を検出するステップの順番は、前後逆になってもよい。あるいは、電界強度を検出するステップは、音声情報を検出するステップと、同時に行っても良い。
また、第2の実施の形態において、前回の制御ステップの判定結果と比較するステップを有しているが、このステップは、必須ではない。また、第2の実施の形態において、判定結果を時刻と関連づけて記憶することとしているが、このような形態に限らない。例えば、判定結果を取得した際に得られる上下線についての車線種別に関する情報を関連づけて記憶することとしてもよい。判定結果と車線種別に関する情報を関連づけて記憶した場合には、ステップS202において、判定結果を取得した後に受信した電波に含まれる車線種別に関する情報と、判定結果が有する車線種別に関する情報とを比較することにより、判定してもよい。例えば、具体例を挙げると、先に検出した電波に「上り線」である旨の情報が含まれていた場合に、ステップS207において、記憶部5は、「上り線」である旨の情報を記憶する。その後に検出した電波に「上り線」である旨の情報が含まれている、すなわち、先に記憶した車線種別が同一である場合には、ステップS202において、否定的(NO)な判定を行うこととしてもよい。また、同様に、車線種別に関する情報ではなく、方位情報に基づき判定しても良い。方位情報に基づき判定する場合には、4方位、16方位、あるいは方位角を用いることができる。また、例えば16方位を用いる場合に、先に検出した電波には「北」である旨の情報が含まれていた場合に、誤差なども考慮して、「北西」および「北東」も同一であると判定するようにしてもよい。
また、第2の実施の形態に係る車載器10は、受信した情報中に緊急災害情報が含まれる場合には、その情報を発話するものとしているが、このような判定は、必須ではない。また、緊急災害情報が含まれる電波に、緊急災害情報と共に他の音声情報を受信した場合には、緊急災害情報のみを発話するものとしてもよい。また、緊急災害情報と共に受信した他の音声情報は、ステップS202〜ステップS205にて発話可否を判定し、緊急災害情報のみを先に発話するものとしてもよい。
また、発話可否と、逆走報知とを同時に行えるシステムとしてもよい。例えば、第2の実施の形態に係る車載器10において、最高電界強度は所定の値以上であって(ステップS204においてYES)、かつ電界強度変化率の値が正常範囲外である場合(ステップS205においてNO)には、逆走している旨を報知するようなシステムとしても良い。
さらに、各実施の形態における車載器10は、ナビゲーション装置と接続された構成またはナビゲーション装置に組み込まれた構成としても良い。
また、上述の実施の形態の情報提供システム1が有する各構成ブロックの機能は、全てまたはその一部をソフトウェアによって実現しても、あるいはその少なくとも一部をハードウェアで実現しても良い。例えば、制御部6における処理の全部またはその一部は、1または複数のプログラムによりコンピュータ上で実現しても良く、その少なくとも一部をハードウェアで実現しても良い。
また、上述の実施の形態は、あくまでも説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。例えば、車載器10を装置の全部または一部として動作させるためのコンピュータプログラムを、メモリーカード、CD(compact disc)、DVD(digital versatile disk)、MO(magneto−optical)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、これを別のコンピュータ、例えば、携帯電話、オーディオ機器、電子時計等にインストールし、車載器10として動作させ、あるいは、車載器10が行う工程を実行させてもよい。さらに、インターネット上のサーバ装置が有するディスク装置等にプログラムを格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、車載器10となるコンピュータにダウンロード等するものとしてもよい。
なお、各実施の形態では、音声のみを出力する発話型の車載器10としたが、音声のみを出力するものに限らず、視覚、聴覚、嗅覚あるいは触覚等によりユーザが認識できるような各種の方法により出力されても良い。具体的には、例えば、振動、映像、画像あるいは光等により各情報を出力する車載器10としてもよい。また、2以上の方法により、情報を出力する車載器10としてもよい。また、映像等により情報が出力される場合には、路側無線装置20より送信される情報には、テキスト情報、静止画情報、映像情報、あるいはそれらの組み合わせによる情報等が追加されてもよい。また、他の方法によりユーザに提供される情報に対応するために、映像処理部等の各情報に対応した処理部を車載器10が有する、あるいは、車載器10に接続できるようにしてもよい。