以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
第1実施形態について図1〜図5にしたがって説明する。図1は以下のすべての実施形態に適用される給湯装置の概略構成を示した模式図である。図2は以下のすべての実施形態に適用される給湯装置に係る制御構成を示したブロック図である。
本実施形態の給湯装置は、給湯端末に出湯される給湯用水に熱を移動させて加熱する主熱源と、主熱源によって加熱された給湯用水をさらに加熱する補助熱源と、を備えたものである。当該主熱源は、給湯端末に出湯される給湯用水と熱交換される蓄熱用流体を加熱する加熱手段と、加熱手段によって加熱された蓄熱用流体を内部に貯える貯湯タンク2と、貯湯タンク2内の蓄熱用流体と給湯用水との間で熱交換を行なって給湯用水を加熱する給湯用熱交換器3と、を含んでいる。
本給湯装置は、例えば貯湯式のヒートポンプ式給湯装置であり、主に一般家庭用として使用され、貯湯タンク2内に蓄えられた蓄熱用の温水と給湯用水とを給湯用熱交換器3によって熱交換し、加熱された給湯用水を台所、洗面所、浴室などに設けられた給湯端末(手洗い栓、カラン、風呂等)に供給するとともに、所定の条件を満たすときには補助熱源器4により給湯用水をさらに加熱して温度調節する機能を有している。
図1に示すように、給湯装置は、高温高圧の冷媒と熱交換させて温水を沸き上げる加熱手段であるヒートポンプユニット1と、このヒートポンプユニット1によって加熱された温水を貯える貯湯タンク2と、この貯湯タンク2内下部の低温水が流出してヒートポンプユニット1で加熱されて貯湯タンク2内の上部に戻るように設けられた蓄熱用循環回路6と、蓄熱用の温水と給湯用水とを熱交換する給湯用熱交換器3と、給湯用熱交換器3で加熱された給湯用水をさらに補助的に加熱することができる補助熱源器4と、本給湯装置の作動を制御する制御装置100と、を備えている。
ヒートポンプユニット1は、少なくとも圧縮機、蓄熱用熱交換器、膨張弁、蒸発器およびアキュムレータ等の冷凍サイクル機能部品が環状に接続されて構成されている。ヒートポンプユニット1は、例えば、冷媒として臨界温度の低い二酸化炭素を使用することにより、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧以上になる超臨界ヒートポンプサイクルを構成する。
ヒートポンプサイクルを超臨界ヒートポンプで構成した場合、一般的なヒートポンプサイクルよりも高温、例えば、85℃〜90℃程度の湯を貯湯タンク2内に蓄えることができる。ヒートポンプサイクルは、主に、料金設定の安価な深夜時間帯の深夜電力を利用して貯湯タンク2内の湯を沸き上げる沸き上げ運転を行う。
蓄熱用循環回路6には、ヒートポンプユニット1内の蓄熱用熱交換器である水−冷媒熱交換器に供給される水の温度を検出する入水温度サーミスタと、水−冷媒熱交換器出口での沸き上げ温度を検出する沸上げ温度サーミスタと、電動ポンプと、が設けられている。そして、各サーミスタの検出温度信号は制御装置100に出力される。
貯湯タンク2は、給湯用水を加熱する蓄熱用流体である温水を蓄える縦長形状の容器であり、耐食性に優れた金属製、例えば、ステンレス製からなり、その外周部に断熱材が設けられ、高温水を長時間に渡って保温することができる。また、蓄熱用流体は、主成分が水であり、防腐剤、凍結防止剤、LLC等を含んでいてもよい。また、蓄熱用流体は、交比熱を有する蓄熱材料をマイクロカプセル等の方法により封入し、これを水に分散させて混合してもよいし、スリラー状にして混合させてもよい。
蓄熱用循環回路6の電動ポンプが作動することにより、貯湯タンク2内の温水が循環する。これにより、蓄熱用熱交換器で加熱された貯湯タンク2内の温水は、蓄熱用循環回路6を通って貯湯タンク2内の上部に送り込まれるので、貯湯タンク2内の上部側から下部側へ向かって複数の温度層を形成するように順次蓄熱されていく。
給湯用熱交換器3は、互いの内部を流れる流体同士が熱交換するように設けられた1次側通路3aおよび2次側通路3bを備えている。1次側通路3aは貯湯タンク2内部に連通し、貯湯タンク2内の温水が流れる流路である。2次側通路3bは上流側端部が給水用配管10に接続され、下流側端部が給湯用配管13に接続される流路であり、給湯端末に供給される給湯用水が流れる流路である。1次側通路3aおよび2次側通路3bは、各通路を流れる流体間で熱交換が行われる形態であればよい。例えば、一方の通路が内側管内に形成され、他方の通路が内側管の外側を覆う外側管内に形成される二重管構造で構成してもよい。また、給湯用熱交換器3は、は、1次側通路3aおよび2次側通路3bのそれぞれを流れる流体の流れ方向が対向する対向式熱交換器であることが好ましい。
貯湯タンク2は、給湯用熱交換器3の1次側通路3aとの間で循環流路である1次側循環回路8を形成するように1次側通路3aに接続されている。この1次側循環回路8は、貯湯タンク2の最上部に設けられた導出口に接続されており、この導出口と1次側通路3aとをつなぐ流路に熱交換器入口温度を検出する1次側熱交換器入口温度サーミスタ18を備えている。
さらに1次側循環回路8は、貯湯タンク2の最下部に設けられた導入口に接続されており、この導入口と1次側通路3aとをつなぐ流路に、1次側通路3aから貯湯タンク2内の下部に向けて流出する蓄熱用流体の1次側熱交換器出口温度を検出する1次側循環戻り温度サーミスタ19と、蓄熱用流体を1次側循環回路8に強制的に循環させる蓄熱用流体駆動手段である循環用ポンプ9と、を備えている。1次側熱交換器入口温度サーミスタ18および1次側循環戻り温度サーミスタ19により検出される温度信号は、制御装置100の入力回路に入力されるようになっている。
給水用配管10の上流は、水道配管に接続されており、市水(水道水)が給湯用熱交換器3の2次側通路3bに導入されるようになっている。給水用配管10には、流量検出器16と給水温度サーミスタ20とが設けられている。流量検出器16は2次側通路3b方向に向かう流量(2次側流量)を検出する検出手段であり、また給水温度サーミスタ20は市水の温度を検出し、検出された流量信号および温度信号は、制御装置100の入力回路に入力されるようになっている。
給湯用配管13は、給湯用熱交換器3の2次側通路3b出口と台所、洗面所、浴室などへの給湯端末(手洗い栓、カラン、風呂等)とを接続する配管である。そして、給湯用配管13の下流側には、給湯温度を検出する給湯温度サーミスタ22と、流量カウンタ(図示せず)とが設けられている。給湯温度サーミスタ22および流量カウンタによって検出された給湯温度信号および流量信号は、制御装置100の入力回路に入力されるようになっている。
給湯用配管13には、給湯用熱交換器3の2次側通路3b出口における給湯水の温度(熱交換器2次出口温度)を検出する2次側出口温度サーミスタ21(2次出口温度検出器)が設けられている。検出された熱交換器2次出口温度は制御装置100の入力回路に入力されるようになっている。また、給湯用配管13は、2次側出口温度サーミスタ21よりも下流側で給湯用配管13が補助熱源用通路15に分岐する分岐部を備えており、この分岐部には熱源切替弁11が設けられている。この熱源切替弁11は、給湯用水を加熱する場合に、主熱源のみを利用するか、さらに補助熱源を利用するかを切り替える熱源切替手段である。本実施形態では、熱源切替弁11は2次側通路3bを流出した給湯用水を給湯用配管13側か、補助熱源側通路15側かのいずれかを流れるように切り替えることができる。
補助熱源用通路15の途中には、補助熱源側通路15を流れてきた給湯用水を再加熱する補助熱源器4が設けられ、補助熱源用通路15の下流端部は給湯用配管13に合流している。補助熱源器4は、発熱部と、発熱部からの熱を受熱する熱交換部と、を有しており、熱交換部を補助熱源用通路15が通っている。補助熱源用通路15を通る水は、熱交換部を通過するときに発熱部からの熱を吸熱する。また、補助熱源器4は、通過する給湯用水を加熱可能な機器であれば特に限定するものではない。補助熱源器4として、例えば、ガス等の燃料による燃焼炎を用いて内部を通過する給湯用水を加熱する小型ガス湯沸かし器、灯油を燃料として燃焼させる燃焼部を発熱部とする機器、貯湯タンクに貯めた蓄熱性流体を加熱源とするもの、電気を利用した電気式ヒータ等を採用することができる。
給水用配管10は、給湯用熱交換器3の2次側通路3bの手前で分岐し、この分岐した配管は給湯用配管13に合流している。この給水用配管10の分岐部から給湯用配管13の合流部に至るまでの配管は給湯用熱交換器3をバイパスする2次側バイパス通路14である。2次側バイパス通路14と給湯用配管13との合流部には給湯用混合弁12が設けられている。
この給湯用混合弁12は、給湯端末側に出湯する湯温を調節する温度調節弁であり、給湯用配管13側と2次側バイパス通路14側との開口面積比を調節することにより、給湯用熱交換器3で加熱された給湯用水と市水との混合比を調節して設定温度に調節するように制御される。制御装置100は、リモートコントローラ110等により設定される温度と、給水温度サーミスタ20、2次側出口温度サーミスタ21および給湯温度サーミスタ22によって検出される温度情報とに基づいて給湯用混合弁12を制御する。
貯湯タンク2の外壁面には、蓄熱用温水の貯湯量、貯湯温度を検出するための水温センサである複数個の貯湯サーミスタ17が設けられており、本実施形態では縦方向にほぼ等間隔で最上部から順にTH1,TH2,TH3,TH4,TH5という5個のサーミスタが配設されている。これら5個のサーミスタの検出温度信号は、それぞれ制御装置100の入力回路に入力されるようになっており、各水位レベルでの蓄熱用流体の温度や湯量を検出可能である。また、複数個の貯湯サーミスタ17のうち、最上部に位置するTH1は、高温の蓄熱用流体を出湯する出湯温度を検出することができる。
貯湯タンク2の天面には、貯湯タンク2内に市水を給水するための間接タンク5が載置されている。間接タンク5の上部には市水が流れてくる給水用配管と、逃し用配管とが接続されており、その下部には貯湯タンク2内下部とつながっている循環用配管7が接続されている。また間接タンク5内には水位センサが設けられており、制御装置100に送信される水位センサの検出信号によって間接タンク5内に自動的に給水が行われる。給水用配管を通って流れてきた水が間接タンク5内に貯まると、間接タンク5内の水が循環用配管7を通って貯湯タンク2内下部に流入し、余分な水は逃がし用配管を通って外部に排出される。
図2に示すように、制御装置100は、リモートコントローラ110上の各種スイッチからの信号、流量検出器16、各種サーミスタ17〜22からの通信信号が入力される入力回路と、入力回路からの信号を用いて各種演算を実行するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータによる演算に基づいてヒートポンプユニット1、補助熱源器4、循環用ポンプ9、熱源切替弁11、給湯用混合弁12等を制御する通信信号を出力する出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、記憶手段としてROMまたはRAMを内蔵し、あらかじめ設定された制御プログラムや更新可能な制御プログラムを有している。
次に、上記構成における給湯装置の作動について説明する。まず、給湯装置の沸き上げ制御を説明する。ユーザーによってリモートコントローラ110の給湯スイッチがONされている場合には、制御装置100は主に電力料金の安価な深夜時間帯(例えば、当日の23時から翌日の7時までの時間帯)にヒートポンプユニット1を運転し、貯湯タンク2内の蓄熱用流体を加熱し、必要な熱量を蓄える。
つまり、制御装置100は、深夜電力時間帯になって貯湯サーミスタが貯湯タンク2内に翌日に必要な熱量が残っていないことを検出すると、ヒートポンプユニット1に対して沸き上げ開始を指令する。指令を受けたヒートポンプユニット1は圧縮機を起動した後に蓄熱用循環回路6の循環用ポンプを駆動開始し、貯湯タンク2下部から取り出した低温水を水−冷媒熱交換器で70〜90℃程度の高温に加熱し、蓄熱用循環回路6を介して貯湯タンク2の上部から貯湯タンク2内に戻し、貯湯タンク2の上部から順次積層して高温水を貯湯していく。貯湯サーミスタ17が必要な熱量が貯湯されたことを検出すると、制御装置100はヒートポンプユニット1に対して沸き上げ停止を指令し、ヒートポンプユニット1は圧縮機を停止するとともに、循環用ポンプも停止して沸き上げ動作を終了する。
次に、ユーザーが給湯端末で湯を使用する場合の制御について、図3および図4にしたがって説明する。図3は給湯装置の給湯制御処理を示したフローチャートである。図4は、図3のステップ110における循環用ポンプ制御のサブルーチンを示したフローチャートである。
まず、制御装置100はステップ10で循環用ポンプ9および補助熱源器4の運転を停止する処理後、複数個の貯湯サーミスタ17のうち最上部のサーミスタTH1により検出された温度がユーザーにより設定された給湯設定温度に第1の所定温度Taを加えた値(給湯設定温度+Ta)以上であるか否かを判定する(ステップ20)。第1の所定温度Taは、貯湯温度が補助熱源による再加熱を必要としない程度に給湯設定温度に対して高い温度になっているかどうかを判定するために用いられる温度であり、本実施形態ではTaは20℃とする。そして、制御装置100はステップ20においてサーミスタTH1の検出温度が高い(給湯設定温度+Ta以上である)と判定すると、給湯用配管13側(出湯側)の開度が100%となるように熱源切替弁11の開度を制御する(ステップ30)。
次に、制御装置100は、ステップ40で、流量検出器16によって検出される2次側流量がQx(L/分)以上であるか否かを判定する。ここでQxは、マイクロコンピュータに予め記憶された以下の数式1を用いて算出される。
(数式1)
Qx=y/(給湯設定温度−給水温度)
y(kcal)は補助熱源器4の最低加熱能力であり、ここでは50kcalとする。給湯設定温度はユーザーが例えばリモートコントローラ110を操作することにより設定した出湯設定温度である。給水温度は、給水温度サーミスタ20によって検出される市水の温度である。
そして、制御装置100はステップ40において2次側流量が算出されたQx(L/分)未満であると判定した場合には、再びステップ20に戻りステップ20の判定処理を実行する。しかし、制御装置100は、2次側流量が算出されたQx(L/分)以上であると判定した場合には、補助熱源器4を停止する処理を実行するとともに、2次側通路3bの出口における給湯用水の目標温度である熱交換器2次出口目標温度が給湯設定温度に第4の所定温度Tdを加えた値に等しくなるように循環用ポンプ9の回転速度(循環用ポンプ9の駆動流量)を制御する(ステップ50)。
なお、本実施形態では第4の所定温度Tdは0℃とする。この場合は、貯湯タンク2内の貯湯温度が給湯設定温度よりも十分に高く(TH1の検出温度が高温である)、2次側流量も大きいため、補助熱源器4による加熱に頼らなくても貯湯タンク2内の貯湯熱量だけで給湯端末側に出湯することができる。
そして、制御装置100は、給湯温度サーミスタ22によって検出される温度が給湯設定温度となるように給湯用混合弁12について給湯用配管13側と2次側バイパス通路14側との開口面積比を調節することにより給湯用水と市水とを必要に応じて混合させるとともに、設定流量が得られるように流量調整弁(図示しない)の開度を調節する。これにより、ユーザーが所望する条件の給湯が給湯端末に出湯される。
次に、制御装置100は、ステップ20と同様の判定を行い(ステップ60)、TH1の検出温度が給湯設定温度に第1の所定温度Taを加えた値未満であると判定するまでは、ステップ40からステップ60の処理を繰り返し実行する。ステップ60またはステップ20でTH1の検出温度が給湯設定温度に第1の所定温度Taを加えた値未満であると判定すると、さらに制御装置100は、TH1の検出温度が給水温度(給水温度サーミスタ20によって検出される市水温度)に第2の所定温度Tbを加えた値以上であるか否かを判定する(ステップ70)。なお、本実施形態では第2の所定温度Tbは20℃とする。
そして、制御装置100はステップ70においてTH1の検出温度が高い(給水温度にTbを加えた値以上である)と判定すると、補助熱源側通路15側(補助熱源側)の開度が100%となるように熱源切替弁11の開度を制御する(ステップ80)。
次に、制御装置100は、上記ステップ40と同様の判定処理を実行する(ステップ90)。制御装置100はステップ90において2次側流量が算出されたQx(L/分)未満であると判定した場合には、再びステップ20に戻りステップ20の判定処理を実行する。一方、2次側流量が算出されたQx(L/分)以上であると判定した場合には、制御装置100は、ステップ100で補助熱源器4を起動する処理を実行するとともに、予めマイクロコンピュータに記憶させたサブルーチンプログラムにしたがった循環用ポンプ9の制御を実行する(ステップ110)。また、補助熱源器4の加熱出力は、給湯温度が給湯設定温度に等しくなるように制御される。
このステップ110における循環用ポンプ9の制御は、図4に示すサブルーチンのとおりである。図4に示すように、このサブルーチンにおいて制御装置100は、まず、給水温度に第5の所定温度Teを加えた値が、yを2次側流量で除した値を給湯設定温度から引いた値(給湯設定温度−y/2次側流量)よりも大きいか否かを判定する(ステップ111)。なお、本実施形態では第5の所定温度Teは10℃とする。
制御装置100は、ステップ111において給水温度に第5の所定温度Teを加えた値の方が大きいと判定した場合には、次に熱交換器2次出口目標温度が給水温度に第5の所定温度Teを加えた値に等しくなるように循環用ポンプ9の回転速度(循環用ポンプ9の駆動流量)を制御する(ステップ112)。このように循環用ポンプ9を制御することにより、熱交換器2次出口目標温度の上限が適切に決定されるので、補助熱源器4で加熱する能力が補助熱源器4の最低加熱能力を超えないように制御することができ、補助熱源器4の能力を十分に活用できる効率的な制御が得られる。
一方、ステップ111において給水温度に第5の所定温度Teを加えた値の方が大きくないと判定した場合には、次に熱交換器2次出口目標温度がyを2次側流量で除した値を給湯設定温度から引いた値(給湯設定温度−y/2次側流量)に等しくなるように循環用ポンプ9の回転速度(循環用ポンプ9の駆動流量)を制御する(ステップ113)。
ここで、給湯設定温度を満たす給湯のために必要な能力の合計は、数式2で表される。
(数式2)
必要能力の合計=(給湯設定温度−給水温度)×2次側流量
貯湯タンク2内の貯湯熱量による加熱能力は、数式3で表される。
(数式3)
貯湯熱量の加熱能力=(熱交換器2次出口目標温度−給水温度)×2次側流量
そして、補助熱源器4による加熱能力は、数式2から数式3を差し引いた数式4となる。
(数式4)
補助熱源器の加熱能力=(給湯設定温度−熱交換器2次出口目標温度)×2次側流量
前述のように補助熱源器4の最低加熱能力をyとすると、補助熱源器の加熱能力はyを超えてはいけないので、y=補助熱源器の加熱能力のときが熱交換器2次出口目標温度の最大値となる。
ゆえに、熱交換器2次出口目標温度の最大値は、数式5で表すことができる。
(数式5)
熱交換器2次出口目標温度の最大値=給湯設定温度−y/2次側流量
したがって、ステップ113の処理において制御装置100は、最初に低下させるときの熱交換器2次出口目標温度を補助熱源器4が有する最低加熱能力に基づいて決定するようにしている。
このように循環用ポンプ9を制御することにより、熱交換器2次出口目標温度の上限が適切に決定されるので、補助熱源器4で加熱する能力が補助熱源器4の最低加熱能力を超えないように制御することができる。
以上のように図4に示すサブルーチンに係る制御では、貯湯タンク2内の貯湯温度がそれほど高くなく給水温度よりも第2の所定温度Tb以上高い場合(TH1の検出温度が中温である)に、貯湯タンク2内の貯湯熱量だけでは所望の給湯能力を満たすことができないため、循環用ポンプ9による蓄熱用流体の循環流量を低下させるとともに、補助熱源器4による再加熱を実行し給湯能力を補ったうえで、出湯するものである。
そして、制御装置100は、給湯温度サーミスタ22によって検出される温度が給湯設定温度となるように給湯用混合弁12について給湯用配管13側と2次側バイパス通路14側との開口面積比を調節することにより給湯用水と市水とを必要に応じて混合させるとともに、設定流量が得られるように流量調整弁(図示しない)の開度を調節する。これにより、ユーザーが所望する条件の給湯が給湯端末に出湯される。
図4に示すサブルーチンの処理を実行した後、制御装置100は、ステップ70と同様の判定を行い(ステップ120)、TH1の検出温度が給湯設定温度に第2の所定温度Tbを加えた値未満であると判定するまでは、ステップ90からステップ110の処理を繰り返し実行する。ステップ120またはステップ70でTH1の検出温度が給湯設定温度に第2の所定温度Tbを加えた値未満であると判定すると、さらに制御装置100は、ステップ80と同様に補助熱源側通路15側(補助熱源側)の開度が100%となるように熱源切替弁11の開度を制御する(ステップ300)。
そして、制御装置100は、上記ステップ40と同様の判定処理を実行する(ステップ310)。制御装置100はステップ310において2次側流量が算出されたQx(L/分)未満であると判定した場合には、再びステップ20に戻りステップ20の判定処理を実行する。一方、2次側流量が算出されたQx(L/分)以上であると判定した場合には、制御装置100は、補助熱源器4を起動する処理を実行するとともに、循環用ポンプ9の運転を停止する(ステップ320)。このステップ320の処理は、ステップ310において2次側流量がQx(L/分)未満であると判定されるまで繰り返し実行される。この場合も補助熱源器4の加熱出力は給湯温度が給湯設定温度に等しくなるように制御される。
この制御により、貯湯タンク2内の貯湯熱量が低く、給湯用熱交換器3によって熱量が得られないときには、補助熱源器4による加熱を重視することにより、ユーザー所望の出湯を実施でき、無駄な運転を排除してランニングコストの低減が図れる。
さらに、制御装置100は、給湯温度サーミスタ22によって検出される温度が給湯設定温度となるように給湯用混合弁12について給湯用配管13側と2次側バイパス通路14側との開口面積比を調節することにより給湯用水と市水とを必要に応じて混合させるとともに、設定流量が得られるように流量調整弁(図示しない)の開度を調節する。これにより、ユーザーが所望する条件の給湯が給湯端末に出湯される。なお、上記Ta,Tb,Td,Teは、ユーザーが要求する出湯量に応じて変化する値であり、出湯量に応じて選択された値が一連の制御に用いられる。
図5は、ある条件において、本実施形態に係る給湯装置の給湯制御を実行した場合の各種パラメータの分布図である。図5では、出湯流量20(L/min)、出湯温度40℃、給水温度9℃という条件において、Δt(循環戻り温度(1次側熱交換器出口温度)から給水温度をひいた値、単位は℃、実線で示す)、給水温度(単位は℃、破線で示す)、循環流量(単位はL/min、一点鎖線で示す)、循環戻り温度(1次側熱交換器出口温度、単位は℃、実線で示す)、熱交換器2次出口温度(単位は℃、破線で示す)および熱交換効率(単位は%、実線で示す)の各分布を、横軸に設定した貯湯温度(サーミスタTH1の検出温度、単位は℃)に対して表している。
従来の間接式給湯装置においては、一般に上記Δtは貯湯温度が低下するほど徐々に大きくなる傾向があり、Δtが大きくなると循環戻り温度の上昇とともに熱交換効率が悪化することになる。そして循環戻り温度の上昇によって、貯湯タンク2内下部におけるヒートポンプユニット1への給水温度が上昇し、この温度上昇した給水が蓄熱用循環回路6に取り出されてヒートポンプユニット1によって加熱されるため、ヒートポンプユニット1の成績係数が低下することになり、さらに貯湯タンク2内に十分な貯湯熱量を蓄えることができなくなる。これにより、貯湯タンク2の容量を大きくする、昼間の追加沸き増し運転が必要になるなどの対策を講じなければならない。
そこで、給湯用熱交換器3を有する間接式給湯装置に補助熱源器4を組み合わせた本実施形態の給湯装置は、給湯端末へ出湯するときに、貯湯タンク2内から給湯用熱交換器3の1次側通路3aに向けて流出する蓄熱用流体が所定温度以下であるときは、蓄熱用流体の流量を低下させるように循環用ポンプ9を制御するとともに、補助熱源器4を起動させて給湯用水を加熱する。
このような制御を実行することにより、図5に示すように、貯湯温度が60℃以下に低下しても、熱交換器2次出口温度の低下分は補助熱源器4の再加熱分で補うことで、循環戻り温度およびΔtの上昇を抑制して熱交換効率の低下を抑制することができる。ゆえに、貯湯タンク2の容量の拡大、昼間の追加沸き増し運転等行うことなく、ランニングコストおよび製品コストの低減を実現できる。
以上のように、本実施形態に係る給湯装置について図3および図4にしたがって説明した上記給湯制御を適用することにより、貯湯温度が低下した場合でも、貯湯タンク2内の上部にまで及んでいる中温水を無駄なく使用する給湯運転を実施できる。さらに、上記給湯制御では循環戻り温度の低下を図ることにより、ヒートポンプユニット1への給水温度の上昇を抑え、ヒートポンプユニット1の成績係数の向上やランニングコストの低減を提供できる。また、貯湯タンク2内の中温水を回収するための中温水取り出し管や混合弁を設けずとも良好な給湯運転を実施できるので、部品点数の減少や製品コストの低減が図れる。また、本実施形態によれば、貯湯タンク内に中温水が多くなった場合でも中温水の熱量を有効活用できるので、間接式給湯装置の不具合を解消するとともに、間接式給湯装置および補助熱源器のそれぞれの優れた利点を兼ね備えた給湯装置を提供できる。
また、制御装置100は、最初に蓄熱用流体の流量を低下させるときに、2次側通路3bの出口における給湯用水の目標温度である熱交換器2次出口目標温度を補助熱源器4が有する最低加熱能力に基づいて決定する。これにより、補助熱源器4の能力を十分に活用できる効率的な再加熱制御が得られる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態で説明した上記給湯制御の他の形態について図6〜図8にしたがって説明する。図6に示すフローチャートにおいて図3に示すフローチャートと同符号を付したステップは、同様の処理を行うもので、同様の作用効果を奏し、その説明は省略する。図6は本実施形態に係る給湯制御処理を示したフローチャートである。図7は、図6のステップ170における循環用ポンプ制御のサブルーチンを示したフローチャートである。図8は、ある条件において給湯制御を実行した場合の各種パラメータの分布図である。
図6に示すように、本実施形態に係る給湯制御処理は、図3に示すフローチャートに対して、ステップ70またはステップ120でTH1の検出温度が給湯設定温度に第2の所定温度Tbを加えた値未満であると判定された場合にステップ300に飛ばず、TH1の検出温度が給水温度に第3の所定温度Tc(TcはTbよりも小さい値)を加えた値以上であるか否かを判定する処理を実行し(ステップ130)、
給水温度+Tc≦TH1<給水温度+Tbを満たす条件における制御をさらに実行する点が異なっている。なお、本実施形態では第2の所定温度Tbは20℃とする。
以下に新たに加わるステップ130〜ステップ180の処理について説明する。制御装置100は、ステップ130においてTH1の検出温度が、給水温度+Tc以上、給水温度+Tb未満であると判定すると、補助熱源側通路15側(補助熱源側)の開度が100%となるように熱源切替弁11の開度を制御する(ステップ140)。
次に、制御装置100は、上記ステップ40と同様の判定処理を実行する(ステップ150)。制御装置100はステップ150において2次側流量が算出されたQx(L/分)未満であると判定した場合には、再びステップ20に戻りステップ20の判定処理を実行する。一方、2次側流量が算出されたQx(L/分)以上であると判定した場合には、制御装置100は、ステップ160で補助熱源器4を起動する処理を実行するとともに、予めマイクロコンピュータに記憶させたサブルーチンプログラムにしたがった循環用ポンプ9の制御を実行する(ステップ170)。また、補助熱源器4の加熱出力は、給湯温度が給湯設定温度に等しくなるように制御される。
このステップ170における循環用ポンプ9の制御は、図7に示すサブルーチンのとおりである。図7に示すように、このサブルーチンにおいて制御装置100は、まず、2次側出口温度サーミスタ21によって検出された熱交換器2次出口温度がyを2次側流量で除した値を給湯設定温度から引いた値(給湯設定温度−y/2次側流量)よりも大きいか否かを判定する(ステップ171)。
制御装置100は、ステップ171において熱交換器2次出口温度の方が大きいと判定した場合には、熱交換器2次出口温度が高くなりすぎているとみなして、循環用ポンプ9を停止する処理を実行し(ステップ173)、次回の出湯まで給湯用熱交換器3による給湯用水の加熱をこれ以上行わない。
一方、ステップ171において熱交換器2次出口温度の方が大きくないと判定した場合には、循環用ポンプ9を回転数を低下させた一定回転数f(例えば1000rpm)となるように一定出力で制御する(ステップ172)。このように循環用ポンプ9を制御することにより、熱交換器2次出口温度は、成り行きに任せになる。
以上のように図7に示すサブルーチンに係る循環用ポンプ9の制御では、貯湯タンク2内の貯湯温度が給水温度に第2の所定温度Tbを加えた値よりも低い場合に、さらに熱交換器2次出口温度に応じて循環用ポンプ9の一定回転数制御または停止を行うことにより、熱交換器2次出口温度に基づいた制御ではなく簡単な処理によって補助熱源器4による再加熱を実行し、給湯能力を補うことができる。
そして、制御装置100は、給湯温度サーミスタ22によって検出される温度が給湯設定温度となるように給湯用混合弁12について給湯用配管13側と2次側バイパス通路14側との開口面積比を調節することにより給湯用水と市水とを必要に応じて混合させるとともに、設定流量が得られるように流量調整弁(図示しない)の開度を調節する。これにより、ユーザーが所望する条件の給湯が給湯端末に出湯される。
図7に示すサブルーチンの処理を実行した後、制御装置100は、ステップ130と同様の判定を行い(ステップ180)、TH1の検出温度が給湯設定温度に第3の所定温度Tcを加えた値未満であると判定するまでは、ステップ150からステップ170の処理を繰り返し実行する。ステップ180またはステップ130でTH1の検出温度が給湯設定温度に第3の所定温度Tcを加えた値未満であると判定すると、さらに制御装置100は、第1実施形態と同様のステップ300以降の処理を実行していく。
図8は、前述の図5と同様の条件において、本実施形態に係る給湯装置の給湯制御を実行した場合の各種パラメータの分布図である。図8において横軸に貯湯温度(サーミスタTH1の検出温度、単位は℃)を設定して分布を表した各種パラメータは、図5と同様のものである。
本実施形態では、給湯用熱交換器3を有する間接式給湯装置に補助熱源器4を組み合わせた装置において上記制御を実行することにより、図8に示すように、貯湯温度が30℃以下に低下しても、熱交換器2次出口温度の低下分を補助熱源器4の再加熱分で補うことで、循環戻り温度およびΔtの上昇を抑制して熱交換効率の低下を抑制することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態では、第2実施形態で説明した上記給湯制御におけるステップ170(サブルーチン)の他の形態について図9にしたがって説明する。図9は、図6のステップ170における循環用ポンプ制御のサブルーチンを示したフローチャートである。本実施形態に係る給湯制御処理の基本的流れは、図6に示すフローチャートと同様であるのでその説明は省略する。
図9に示すように、循環用ポンプ9制御のサブルーチンにおいて制御装置100は、まず、給水温度に第6の所定温度Tgを加えた値が、yを2次側流量で除した値を給湯設定温度から引いた値(給湯設定温度−y/2次側流量)よりも大きいか否かを判定する(ステップ175)。なお、第6の所定温度Tgは第5の所定温度Teよりも小さい値であり、本実施形態では5℃とする。
制御装置100は、ステップ175において給水温度に第6の所定温度Tgを加えた値の方が大きいと判定した場合には、熱交換器2次出口温度が高くなりすぎているとみなして、循環用ポンプ9を停止する処理を実行し(ステップ177)、次回の出湯まで給湯用熱交換器3による給湯用水の加熱をこれ以上行わない。
一方、ステップ175において給水温度に第6の所定温度Tgを加えた値の方が大きくないと判定した場合には、次に熱交換器2次出口目標温度が給水温度に第6の所定温度Tgを加えた値に等しくなるように循環用ポンプ9の回転速度(循環用ポンプ9の駆動流量)を制御する(ステップ176)。このように循環用ポンプ9を制御することにより、熱交換器2次出口目標温度の上限が適切に決定されるので、補助熱源器4で加熱する能力が補助熱源器4の最低加熱能力を超えないように制御することができる。なお、第6の所定温度Tgは、ユーザーが要求する出湯量に応じて変化する値であり、出湯量に応じて選択された値が一連の制御に用いられる。
以上のように図9に示すサブルーチンに係る循環用ポンプ9の制御では、貯湯タンク2内の貯湯温度が給水温度に第2の所定温度Tbを加えた値よりも低い場合に、熱交換器2次出口目標温度が図4のステップ112よりもさらに低い温度(給水温度+Tg)となるように循環用ポンプ9の回転速度(循環用ポンプ9の駆動流量)を低下させる制御を実行することにより、給湯用熱交換器3による加熱分を抑えめにし、給湯用熱交換器3による加熱では足りない熱量分を補助熱源器4による再加熱によって補充するようにしている。
そして、制御装置100は、給湯温度サーミスタ22によって検出される温度が給湯設定温度となるように給湯用混合弁12について給湯用配管13側と2次側バイパス通路14側との開口面積比を調節することにより給湯用水と市水とを必要に応じて混合させるとともに、設定流量が得られるように流量調整弁(図示しない)の開度を調節する。これにより、ユーザーが所望する条件の給湯が給湯端末に出湯される。
以上のように、図6および図9にしたがって説明した本実施形態に係る上記給湯制御を実施することにより、第1実施形態で説明した給湯制御と同様の作用効果が得られるとともに、貯湯タンク2内にさらに低温の中温水が蓄えられている場合でも、当該中温水を有効に活用した給湯運転を実施できる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、第2実施形態で説明した上記給湯制御の他の形態について図10および図11にしたがって説明する。図10は、本実施形態に係る給湯制御処理を示したフローチャートである。図11は、ある条件において、本実施形態に係る給湯制御を実行した場合の各種パラメータの分布図である。
本実施形態に係る給湯制御のフローチャートは、図10に示すように、図6のフローチャートに対して、図6のステップ70,80,90,100,110,120がない点が異なっており、さらにステップ20においてNOと判定された場合やステップ60においてNOと判定された場合は次にステップ130が実行されるようになっている。図10において図6に示すフローチャートと比較して同様の処理を実行するステップには同符号を付しており、各ステップの詳細説明は省略する。
図11は、前述の図5と同様の条件において、本実施形態に係る給湯制御を実行した場合の各種パラメータの分布図である。図11において横軸に貯湯温度(サーミスタTH1の検出温度、単位は℃)を設定して分布を表した各種パラメータは、図5と同様のものである。
本実施形態では、給湯用熱交換器3を有する間接式給湯装置に補助熱源器4を組み合わせた装置において上記制御を実行することにより、図11に示すように、貯湯温度が60℃以下に低下しても、熱交換器2次出口温度の低下分を補助熱源器4の再加熱分で補うことで、循環戻り温度およびΔtの上昇を抑制して熱交換効率の低下を抑制することができる。上記制御構成により、貯湯タンク2内の中温水を有効活用するための給湯制御プログラムをより簡単なアルゴリズムによって構築することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態では、第4実施形態で説明した上記給湯制御の他の形態について図12および図13にしたがって説明する。図12は、本実施形態に係る給湯制御処理を示したフローチャートである。図13は、図12のステップ200における循環用ポンプ9制御のサブルーチンを示したフローチャートである。
図12に示すフローチャートにおいて図10に示すフローチャートと同符号を付したステップは、同様の処理を行うもので同様の作用効果を奏し、その説明は省略する。図12に示すように、本実施形態に係る給湯制御処理は、図10に示すフローチャートに対して、ステップ60をステップ60aに、ステップ170をステップ200に、ステップ180をステップ220に、それぞれ置き換えたものである。
上記置き換えた各ステップの処理について説明する。制御装置100は、ステップ50の処理を実行した後、Δt(=循環戻り温度−給水温度)が所定の許容温度h以下であるか否かを判定する(ステップ60a)。本実施形態ではhは5℃とする。
制御装置100は、Δtがh以下であると判定している間は、ステップ40からステップ60aの処理を繰り返し実行する。ステップ60aでΔtがhよりも大きいと判定すると、制御装置100はステップ130の処理を実行する。そして、順次ステップ140、150、160の各処理を実行した後、制御装置100は、予めマイクロコンピュータに記憶させたサブルーチンプログラムにしたがった循環用ポンプ9の制御を実行する(ステップ200)。
このステップ200における循環用ポンプ9の制御は、図13に示すサブルーチンのとおりである。図13に示すように、このサブルーチンにおいて制御装置100は、まず、Δt(=循環戻り温度−給水温度)がhより大きいか否かを判定する(ステップ201)。
制御装置100は、ステップ201においてΔtがhより大きいと判定した場合には、2次側出口温度サーミスタ21によって検出される熱交換器2次出口温度を1℃低下させるように循環用ポンプ9の回転速度を低下させる(ステップ202)。つまり、Δtがhより大きいときには給湯用熱交換器3による熱交換を抑えてΔtを一定範囲内に維持する給湯制御を実行する。
一方、ステップ201においてΔtが所定の許容温度h以下であると判定した場合には、熱交換器2次出口目標温度がyを2次側流量で除した値を給湯設定温度から引いた値(給湯設定温度−y/2次側流量)よりも大きいか否かを判定する(ステップ203)。
制御装置100は、ステップ203において熱交換器2次出口目標温度の方が大きいと判定した場合には、上記ステップ202の処理を実行し、さらに循環用ポンプ9の回転速度を低下させる。そしてステップ201の処理に飛ぶ。
熱交換器2次出口目標温度の最大値は、前述の数式5で表すことができる。したがって、ステップ203の処理において制御装置100は、最初に低下させるときの熱交換器2次出口目標温度を補助熱源器4が有する最低加熱能力に基づいて決定し、熱交換器2次出口目標温度がその最大値を超えないように制御している。
一方、ステップ203において熱交換2次出口目標温度の方が大きくないと判定した場合には、次に、hから2(℃)を差し引いた値(h−2)よりもΔtが大きいか否かを判定する(ステップ204)。ステップ204でΔtの方が大きいと判定すると、ステップ201の処理に飛ぶが、ステップ204でΔtの方が大きくないと判定すると、次に制御装置100は、2次側出口温度サーミスタ21によって検出される熱交換器2次出口温度を1℃上昇させるように循環用ポンプ9の回転速度を増加させる(ステップ205)。つまり、Δtがh−2以下であるときには給湯用熱交換器3による熱交換を増加させてΔtを一定範囲内に維持する給湯制御を実行する。
以上のように図13に示すサブルーチンに係る循環用ポンプ9の制御では、貯湯タンク2内の貯湯温度TH1が、
給水温度+Tc≦TH1<給水温度+Taを満たす場合に、Δtを監視し、Δtが所定値以上(ここでは5℃以上)にならないように熱交換器2次出口目標温度に基づいて循環用ポンプ9の回転数を制御する。これにより、貯湯タンク2内の中温水の有効活用と補助熱源器4の再加熱とを組み合わせて、必要給湯能力を確保することができる。
そして、制御装置100は、給湯温度サーミスタ22によって検出される温度が給湯設定温度となるように給湯用混合弁12について給湯用配管13側と2次側バイパス通路14側との開口面積比を調節することにより給湯用水と市水とを必要に応じて混合させるとともに、設定流量が得られるように流量調整弁(図示しない)の開度を調節する。これにより、ユーザーが所望する条件の給湯が給湯端末に出湯される。
図13に示すサブルーチンの処理を実行した後、制御装置100は、ステップ60aと同様の判定を行い(ステップ220)、Δtが所定の許容温度hよりも小さくなるまでは、ステップ150,160,200の各処理を繰り返し実行する。ステップ220でΔtがhよりも小さい判定されるか、またはステップ130でTH1の検出温度が給湯設定温度に第3の所定温度Tcを加えた値未満であると判定すると、さらに制御装置100は、第4実施形態と同様のステップ300以降の処理を実行していく。
以上のように制御装置100は、最初に熱交換器2次出口目標温度を低下させた以降の制御においても、熱交換器2次出口目標温度を補助熱源器4の最低加熱能力に基づいて決定する。これにより、補助熱源器4が作動できなくなってしまうことを防止でき、再加熱能力を安定して供給し続けることができる。
(第6実施形態)
第6実施形態では、第5実施形態で説明した上記給湯制御におけるステップ200(サブルーチン)の他の形態について図14にしたがって説明する。図14は、図12のステップ200における循環用ポンプ制御のサブルーチンを示したフローチャートである。本実施形態に係る給湯制御処理の基本的流れは、図12に示すフローチャートと同様であるのでその説明は省略する。
このステップ200における循環用ポンプ9の制御は、図14に示すとおりである。このサブルーチンにおいて制御装置100は、まず、Δt(=循環戻り温度−給水温度)が所定の許容温度hより大きいか否かを判定する(ステップ201)。
制御装置100は、ステップ201においてΔtがhより大きいと判定した場合には、循環用ポンプ9の回転数を50rpm低下させる(ステップ206)。つまり、Δtがhより大きいときには給湯用熱交換器3による熱交換を抑えてΔtを一定範囲内に維持する給湯制御を実行する。
一方、ステップ201においてΔtがh以下であると判定した場合には、2次側出口温度サーミスタ21によって検出される熱交換器2次出口温度がyを2次側流量で除した値を給湯設定温度から引いた値(給湯設定温度−y/2次側流量)よりも大きいか否かを判定する(ステップ207)。
制御装置100は、ステップ207において熱交換器2次出口温度の方が大きいと判定した場合には、上記ステップ206の処理を実行し、さらに循環用ポンプ9の回転速度を50rpm低下させる。そしてステップ201の処理に飛ぶ。
一方、ステップ207において熱交換2次出口温度の方が大きくないと判定した場合には、次に、hから2(℃)を差し引いた値(h−2)よりもΔtが大きいか否かを判定する(ステップ208)。ステップ208でΔtの方が大きいと判定すると、ステップ201の処理に飛ぶが、ステップ208でΔtの方が大きくないと判定すると、次に制御装置100は、循環用ポンプ9の回転数を50rpm増加させる(ステップ209)。つまり、Δtがh−2以下であるときには給湯用熱交換器3による熱交換を増加させてΔtを一定範囲内に維持する給湯制御を実行する。
以上のように図14に示すサブルーチンに係る循環用ポンプ9の制御では、貯湯タンク2内の貯湯温度TH1が、
給水温度+Tc≦TH1<給水温度+Taを満たす場合に、Δtを監視し、Δtが所定値以上(ここでは5℃以上)にならないように熱交換器2次出口温度に基づいて循環用ポンプ9の回転数を制御する。これにより、貯湯タンク2内の中温水の有効活用と補助熱源器4の再加熱とを組み合わせて、必要給湯能力を確保することができる。
また、制御装置100は、最初に熱交換器2次出口目標温度を低下させた以降の制御においても、熱交換器2次出口目標温度を補助熱源器4の最低加熱能力に基づいて決定する。これにより、補助熱源器4が作動できなくなってしまうことを防止でき、再加熱能力を安定して供給し続けることができる。
(第7実施形態)
第7実施形態では、上記すべての実施形態に適用可能な給湯装置の他の形態を図15にしたがって説明する。図15は、図1に示す給湯装置に床暖房回路30を追加した装置の概略構成を示した模式図である。図15に示す給湯装置の模式図において図1に示す給湯装置と同符号を付した構成要素については、同一構成要素であり同様の作動および作用効果を奏しており、その説明は省略する。
図15に示すように、本実施形態の給湯装置は、第1実施形態に係る給湯装置に対してさらに、上流端部が貯湯タンク2内の上部に接続され、下流端部が貯湯タンク2内の下部または中央部に接続されている床暖房回路30を備えている。この床暖房回路30の途中には放熱端末器の一例である床暖房パネル31と、回路内に貯湯タンク2内の温水を循環させるための暖房用循環用ポンプ32と、回路内の温水を補助的に加熱できる補助熱源器33と、暖房用循環用ポンプ32の上流側通路および下流側通路に接続され、途中に補助熱源器33が配されている補助熱源用回路34と、が設けられている。
さらに床暖房回路30は、床暖房パネル31内の温水が貯湯タンク2内に流れないで床暖房パネル31内を循環可能なように床暖房パネル31に並列に配されたバイパス通路36と、このバイパス通路36と床暖房回路30との合流部に設けられる混合弁35と、を備えている。なお、放熱端末器である床暖房パネル31は、温水式温風暖房器や温水式パネルコンベクタ、温水式パネルラジエータ等に置き換えることもできる。また、混合弁35は、下流側の二つの通路の開度をそれぞれ0〜100%の範囲で制御可能に構成されている。
上記構成において床暖房を実施する場合には、制御装置100は、まず、暖房用循環用ポンプ32を作動させ、下流の床暖房回路30側の開度が100%になるように混合弁35を制御する。そして、貯湯タンク2内上部の高温の蓄熱用流体が床暖房回路30に取り出され、床暖房パネル31内を通過して放熱することにより床面を暖房し、さらに床暖房回路30を貯湯タンク2に向かって流れ、中温流体として貯湯タンク2内下部に流入する。
また、貯湯タンク2内の貯湯熱量が十分でない場合には、制御装置100は補助熱源器33を作動させて、温水加熱量を補充することができる。また、貯湯タンク2内の貯湯熱量を使用せずに床暖房を行いたい場合には、制御装置100は、補助熱源器33を作動させるとともに、混合弁35を下流の床暖房回路30側の開度が0%で、バイパス通路36側の開度が100%になるように制御する。
上記床暖房運転を行った場合に貯湯タンク2内の中温水(例えば30〜50℃程度の温水)の増加が起こりうるが、本実施形態の給湯装置において第1実施形態乃至第6実施形態の給湯制御を実施することにより、貯湯タンク2内に蓄えられた中温水を有効に活用した給湯制御を提供できる。また、通常床暖房回路に必要とされる膨張タンクや水−水熱交換器を設けなくとも床暖房回路を構成することができるので、製品コストの低減や放熱ロスの低減を実現できる。
(第8実施形態)
第8実施形態では、上記第1実施形態において説明した給湯装置に対して他の形態である給湯装置および熱源切替え時の制御について説明する。図16は、図1に示す給湯装置に対して、補助熱源器4を流れる水の温度を検出できる熱交換部温度センサ28を追加するとともに、風呂26に湯張りするための出湯経路を明示したものであり、第8実施形態から第11実施形態に係る給湯装置に適用できる構成である。図17は当該給湯装置に係る制御構成を示したブロック図である。図16および図17において図1および図2に示す図面と同符号を付した構成要素については、同一構成要素であり同様の作動および作用効果を奏しており、その説明は第1実施形態に記載のとおりである。
本給湯装置は、主熱源に含まれる貯湯タンク2と他の補助熱源である補助熱源器4とを基本構成として備えている。そして本給湯装置は、主熱源が有する熱量に応じて給湯用水を補助熱源器4に通過させるか否かを熱源切替手段によって切り替える。すなわち、主熱源の熱量が足りない場合(例えば、貯湯タンク2内に高温水が少なく中温水が大量に貯まっている場合)には、補助熱源器4によって熱量を補充するために、熱源切替手段を補助熱源器4側に切り替える。本給湯装置は、このような切り替え制御を実施することにより、シャワー、給湯水栓、風呂等の給湯端末側に所望温度の温水を供給する。
このような構成を有する従来の給湯装置としては、例えば、特開平10−47764号公報に記載の装置が知られている。この従来の給湯装置は、主熱源である集熱器と貯湯タンクとを熱媒体が流れる循環配管を介して接続し、貯湯タンクに接続された給湯管の途中に加圧ポンプを備えるとともに、加圧ポンプの吸入側に補助熱源(給湯機)に切替弁を介して分岐管を備えたものである。そしてこの従来の給湯装置の作動において、貯湯タンクからの湯が加圧ポンプの入口側給湯管に直接流れるように切替弁が切り替わっている場合には、貯湯タンクの湯は補助熱源である給湯機には流れない。一方、貯湯タンクからの湯が分岐管に直接流れるように切替弁が切り替わっている場合には、貯湯タンクの湯は加圧ポンプに流れる前に予め補助熱源の給湯機で加熱された湯とともに分岐管を経由して、加圧ポンプに吸い込まれ、給湯端末である給湯栓側に流れることになる。
しかしながら、補助熱源を経由しない給湯から補助熱源を経由する給湯に切り替えるときに、切り替えの初期に冷水が給湯栓側に排出されるという問題がある。これは、貯湯タンクと補助熱源との間の配管、補助熱源と給湯栓(出湯口)との間の配管等に冷水が停留しているからである。この冷水の停留発生は、冬期や補助熱源をしばらく使用していないときに補助熱源を経由した給湯経路を使用とする場合に顕著となる。このような冷水が例えばシャワーの出湯口から急に排出されると、湯が排出されると思っているユーザーは不意をつかれ、ユーザーに不快感を与えてしまう。
そこで、本実施形態に記載する発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は配管内に停留している冷水によってユーザーに不快感を与えることを防止する給湯装置を提供することである。
図16に示すように、補助熱源器4の熱交換部を通る補助熱源用通路15の表面には、補助熱源器4内部を流れる水の温度を検出できる熱交換部温度センサ28が設けられている。給湯用配管13には、給湯用混合弁12よりも下流側部位に風呂用配管27が接続されている。風呂用配管27は、その上流端が給湯用配管13に接続され、その下流端が浴槽26に接続されており、浴槽26内に湯張り、差し湯、たし湯などを行うときに、所定温度に温度調節された給湯用水を導く配管である。風呂用配管27の流路の中途には、温度調節手段である風呂用電磁弁23、浴槽26内に流入する湯の量を検出する流量センサ24、および湯張りされる湯の温度を検出できる風呂用温度サーミスタ25が設けられている。
図17に示すように、流量センサ24および風呂用温度サーミスタ25によって検出された流量信号および給湯温度信号は、制御装置100の入力回路に入力されるようになっている。風呂用電磁弁23は、風呂用配管27の流路を開閉する弁であり、浴槽26内に浴水を湯張り、差し湯、たし湯などを行うときに制御装置100によって制御される。そして、流量センサ24が風呂用配管27内の水の流れを検出したときは、風呂用電磁弁23が開弁されて浴槽26内に湯張りが行われている状態である。制御装置100は、浴槽26に湯張りを行うときに、風呂用電磁弁23を開き、給湯用混合弁12によって所定温度に調節された湯を風呂用配管27に流入させ、設定湯量になるまで浴槽26内に湯を取り込む。
冬期や補助熱源器4をしばらく使用していないときには、貯湯タンク2と補助熱源器4との間の配管や補助熱源器4と給湯端末の出湯口との間の配管等に水が停留することがある。この停留水が低温の冷水となっているときであって、主熱源である貯湯タンク2内に十分な貯湯熱量が確保されていないときに、シャワーが使用されると、補助熱源器4での再加熱を利用する熱源の切り替え制御が行われる。このとき、まず、低温の停留水がシャワーの出湯口から流出するため、ユーザーが冷水を浴びてしまうことがある。本実施形態の給湯装置は、このようなことを回避するために、所定の切替条件が成立した場合に、熱源切替弁11を給湯用水が補助熱源器4を経由して流れるように切り替えることにより、当該停留水を給湯用水とともにシャワーを除く給湯端末に流出させるように制御する。
次に、上記構成の給湯装置において熱源を切り替えるときの制御の一例を図18にしたがって説明する。図18は、熱源切替手段である熱源切替弁11の制御の一例を示したフローチャートである。リモートコントローラ110が操作されて電源がONされると、熱源切替弁11は、例えば、給湯用配管13を100%開放するように出湯側に開いた状態にある。さらに、補助熱源用通路15や補助熱源器4内部の通路には低温の水が停留している。そして、制御装置100は、熱源切替弁11を出湯側が開弁している状態から補助熱源器4側が開弁する状態に切り替える所定の切替条件が成立したか否かを判定する。制御装置100はその一例として、浴槽26への湯張りが開始されているか否かを判定する(ステップ400)。また、湯張りの開始命令は、ユーザーがリモートコントローラ110を操作して湯張り運転を命令した場合、自動運転によって湯張りが開始された場合等に制御装置100に送信される。
制御装置100はステップ400で湯張りが開始されていると判定すると、補助熱源器4の開度を補助熱源用通路15側に100%開放するように切り替える(ステップ410a)。この状態では風呂用電磁弁23は開弁されている。このステップ410aでの処理により、2次側通路3bを流れる水が、循環用ポンプ9によって強制的循環される貯湯タンク2内の湯と給湯用熱交換器3で熱交換されて補助熱源用通路15を流れた後、風呂用配管27に流入して浴槽26内に流出することになる。
このとき、補助熱源用通路15、補助熱源器4内部等に停留している冷水は、給湯用熱交換器3で熱交換された湯によって押し流され、風呂用配管27内を流れて浴槽26内に流出される。浴槽26内の湯張り量は当該冷水に対して多量であるので、湯の温度が冷水によってあまり低下しないため、後でユーザーが浴槽26内に入っても冷水を感じることもなく、所望の湯張りを行うことができる。
次に、制御装置100は、熱源切替弁11の開弁を給湯用配管13側に切り替えるタイミングを判定するためにステップ420aの判定処理を実行する。ステップ420aの判定処理では、熱交換部温度センサ28によって検出された補助熱源器4内の通路表面温度が給湯設定温度(湯張り設定温度)に所定の温度Tαを加えた値(給湯設定温度+Tα)以上であるか否かを判定する。所定温度Tαは、補助熱源器4内の通路を通る水の温度が給湯設定温度に近い温度になっているかどうかを判定するために用いられる温度であり、本実施形態ではTαは例えば1℃とする。
そして、制御装置100は補助熱源器4内の通路表面温度がステップ420aで規定する温度以上に暖められるまで熱源切替弁11を補助熱源側が開放される状態に維持する。制御装置100はステップ420aにおいて補助熱源器4内の通路表面温度が高くなった(給湯設定温度+Tα以上である)と判定すると、給湯用配管13側(出湯側)の開度が100%となるように熱源切替弁11の開度を制御し(ステップ430)、通常の給湯経路によって、湯張りを継続する。このような一連の制御により、補助熱源器4内部等に停留している冷水は所定のタイミングで浴槽26内に排出される。なお、熱源切替弁11を補助熱源側開放状態に維持している間、補助熱源器4は運転状態、停止状態のいずれであってもよい。
以上のように、停留水をシャワーを除く給湯端末に流出させる制御に一実施形態として、所定の切替条件成立の一例である湯張り時に、補助熱源器4内部等に停留している冷水を浴槽26内に流出させる制御を実施することにより、ユーザーに低温の停留水が直接当たることを防止できる。
本実施形態に係る給湯装置がもたらす作用効果を以下に述べる。本給湯装置は、給湯端末に出湯される給湯用水に熱を移動させて加熱する主熱源と、主熱源によって加熱された給湯用水をさらに加熱するように設けられた補助熱源器4と、給湯用水を給湯端末に出湯するときに補助熱源器4を経由するか否かを切り替える熱源切替手段である熱源切替弁11と、熱源切替弁11の切替え動作を制御する制御装置100と、を備えている。
そして制御装置100は、所定の切替条件が成立した場合に、熱源切替弁11を給湯用水が補助熱源器4を経由して流れるように切り替えることにより、補助熱源器4の内部および補助熱源器4に接続される配管の内部に停留している水を給湯用水とともにシャワーを除く給湯端末から流出させる。
これによれば、所定の切替条件が成立した場合に当該停留水をシャワー以外の給湯端末(例えば、浴槽、各種カラン等)のいずれかから流出させることにより、ユーザーが低温の停留水を浴びてしまうことを回避できる。したがって、停留水が冷水になっていた場合でもユーザーに対して不快感を与えないように停留水の排出を行うことができる。
また、好ましくは、制御装置100は所定の切替条件が成立した場合に、当該補助熱源器4の内部等に停留している水を給湯用水とともに浴槽26内に流出させる。
これによれば、所定の切替条件が成立した場合に当該停留水を浴槽26内に流出させることにより、ユーザーに低温の停留水が直接当たることを防止でき、ユーザーに対して不快感を与えない停留水の排出を行うことができる。また、熱源切替え時に出湯される給湯水の温度変動を抑制することができる。また、主熱源によって加熱された温水を補助熱源器4に通すことにより、停留水が当該温水によって温められて浴槽26に流出されることになる。また、長時間配管内等に停留している停留水について仮に水が変質している場合には、これをユーザーが飲用することのない浴槽内に流出させるため、ユーザーの衛生面を悪化させるようなことがない。
また、制御装置100は、浴槽26への湯張りが開始されていることを検出した場合に上記所定の切替条件が成立したものとする。これによれば、湯張り時に補助熱源器内部等に留まっている停留水を浴槽26内に流出させることにより、ユーザーに低温の停留水が直接当たることを防止できる。
例えば、湯張り開始時にまず当該停留水を浴槽26内に流出させる場合でもユーザーは浴槽26に入っていないため、ユーザーは冷水に触れることはない。あるいは、湯張り中に当該停留水を浴槽26内に流出させる場合であってユーザーが浴槽26に入っている場合でも、浴槽26内の暖められた温水の中に比較的少量の冷水が混入されるため、ユーザーは冷水に直接触れることはなく、不快感を与えることがない。停留水が長時間配管内等に停留している場合には、衛生上好ましくない。これをユーザーが飲用することのない浴槽内に流出させるので、衛生面を確保することができる。
また、ユーザーは夜に入浴する生活パターンである場合が多く、このパターンでは貯湯タンク2内の貯湯量が不足し、補助熱源を使用する熱源の切替えが必要になるのは湯張り完了後にユーザーがシャワーを使用する場合である。したがって、本実施形態のようにシャワーを使用する前の湯張り時に停留水を流出しておけば、その後のシャワー使用時に熱源の切り替えが行われたとしても、停留水がユーザーに向けて排出されることを回避できる。
(第9実施形態)
第9実施形態では、第8実施形態で説明した上記制御の他の形態について図19および図20にしたがって説明する。図19は本実施形態における熱源切替弁11の切り替え制御を示したフローチャートである。図20は、図19のフローチャートにおいてステップ510aの判断処理を他の形態(ステップ510b)で実行する例を示したフローチャートである。
図19に示すように、リモートコントローラ110が操作されて電源がONされると、制御装置100は熱源切替弁11の開放側が給湯用配管13(出湯側)であるならば計時(カウント)を開始する(ステップ500)。次に、制御装置100は、熱源切替弁11の所定の切替条件が成立したか否か、すなわち具体的には、複数個の貯湯サーミスタ17のうち上から3番目のサーミスタTH3により検出された温度がユーザーにより設定された給湯設定温度に所定温度Tβを加えた値(給湯設定温度+Tβ)以下であること、およびステップ500で開始した計時のカウントが2時間以上になったことの両方の条件が満たされたか否かを判定する(ステップ510a)。このとき、補助熱源用通路15や補助熱源器4内部の通路には低温の水が停留している。なお、計時のカウントは一例として2時間以上としたものであり、この時間に限定するものではない。
所定温度Tβは、貯湯タンク2内の中間部の温度が給湯設定温度に対して若干高い温度よりも低い温度であるかどうかを判定するために用いられる温度であり、本実施形態ではTβは5℃とする。ステップ510aの所定の条件は、貯湯タンク2内の蓄熱用流体が所定の温度以下になったこと、すなわち具体的には、貯湯タンク2内の中間部の温度があまり高くなく給湯加熱能力が低い状態であり、かつ給湯用水を補助熱源器4を経由しないで出湯する状態になってから所定の時間が経過したこと、すなわち具体的には、停留水が低温になるほどの時間留まっている状態を満たす条件である。つまり、このような条件を満たす停留水がシャワー等の水栓からユーザーに向けて流出されると、ユーザーに不快感を与えてしまうため、これを防止すべく、以下の処理にしたがって浴槽26内に停留水を排出する。
また、ステップ510aの判断処理は、以下のような判断基準によって判断しても同様の作用効果が得られる。すなわち、制御装置100は複数個の貯湯サーミスタ17のうち上から2番目のサーミスタTH2により検出された温度がユーザーにより設定された給湯設定温度に所定温度Tγを加えた値(給湯設定温度+Tγ)以下であること、およびステップ500で開始した計時のカウントが2時間以上になったことの両方の条件が満たされたか否かを判定する(ステップ510a)。この場合のTγは15℃とする。
また、ステップ510aの判断処理は、図20に示すステップ510bによって判断しても同様の作用効果が得られる。すなわち、図20に示すように、制御装置100は、熱源切替弁11の所定の切替条件が成立したか否か、すなわち具体的には、ステップ500で開始した計時のカウントが所定時間以上になったか否かを判定する(ステップ510b)。ステップ510bでの所定時間の経過は、停留水が低温になるほどの時間留まっている状態であることを満たす条件である。また、ステップ510bでの所定時間は、ステップ510aでの2時間よりも長い時間とし、例えば4時間に設定する。
制御装置100はステップ510aまたはステップ510bの所定の条件が満たされていると判定すると、補助熱源器4の開度を補助熱源用通路15側に100%開放するように切り替えるとともに、風呂用電磁弁23を開弁する(ステップ520)。さらにステップ520では先の計時(カウント)を終了する。このステップ520での処理により、2次側通路3bを流れる水が、循環用ポンプ9によって循環される貯湯タンク2内の湯と給湯用熱交換器3で熱交換されて補助熱源用通路15を流れた後、風呂用配管27に流入して浴槽26内に流出することになる。このとき、補助熱源用通路15、補助熱源器4内部等に停留している冷水は、給湯用熱交換器3で熱交換された湯によって押し流され、風呂用電磁弁23によって開放された風呂用配管27内を流れて浴槽26内に流出される。
次に、制御装置100は、熱源切替弁11の開弁を給湯用配管13側に切り替えるタイミングを判定するためにステップ530の判定処理を実行する。ステップ530の判定処理では、熱交換部温度センサ28によって検出された補助熱源器4内の通路表面温度が給湯設定温度(湯張り設定温度)に所定の温度Tαを加えた値(給湯設定温度+Tα)以上であるか否かを判定する。所定温度Tαは、上記第8実施形態におけるステップ420aのTαと同様の温度である。
そして、制御装置100は補助熱源器4内の通路表面温度がステップ530で規定する温度以上に暖められるまで熱源切替弁11を補助熱源側が開放される状態に維持する。制御装置100はステップ530において補助熱源器4内の通路表面温度が高くなった(給湯設定温度+Tα以上である)と判定すると、給湯用配管13側(出湯側)の開度が100%となるように熱源切替弁11の開度を制御し、(ステップ540)、ステップ500に戻る。このような一連の処理により、補助熱源器4内部等に停留している冷水は所定の状態のときに浴槽26内に排出される。なお、ステップ520からステップ540にかけての処理は、停留水をすべて排出できるだけの時間行えばよく、全体の給湯時間に対して非常に短時間で行われる。
以上のように、制御装置100は、このように所定の切替条件が満たされる毎に停留水を浴槽26に排出する制御を実施する。停留水が浴槽26内に排出された後は補助熱源用通路15および補助熱源器4内部には冷水が残っていないため、その後シャワー、手洗い栓等が使用されてもユーザーが冷水に触れることはない。制御装置100に電源が投入されて給湯装置が可動状態にあれば、上記一連の排水処理に係る制御は繰り返し行われる。
本実施形態に係る給湯装置がもたらす作用効果を以下に述べる。本実施形態において制御装置100は、給湯用水を補助熱源器4を経由しないで出湯する状態になってから所定の時間が経過したときに上記所定の切替条件が成立したものとする。これによれば、熱源切替弁11が出湯側に切り替わった時にカウントを開始し、所定の時間が経過すると、熱源切替弁11を補助熱源器4側に切り替えて停留水を排出する。このため、当該停留水がユーザーに対して不快感を与えるレベルの低温の水になったときに、当該停留水を浴槽26に流出することができる。これにより、当該停留水の排出制御を必要な場合にだけ行えるので、無駄な切替え制御を抑制することができる。
また、制御装置100は、貯湯タンク2内の蓄熱用流体が所定の温度(TH3≦給湯設定温度+Tβ)以下になったときに上記所定の切替条件が成立したものとする。これによれば、貯湯タンク2内の流体の温度を切り替えの判定基準とするため、貯湯タンク2内の湯があまり低くならないうちに停留水を浴槽26に流出することができる。このため、補助熱源器4が再加熱を開始する温度よりも少し高い温度で当該停留水を流出させることが可能となる。したがって、補助熱源器4が再加熱を開始するときに低温の停留水がすでに排出されているため、効率の良い再加熱が実施でき、消費電力低減が図れる。
(第10実施形態)
第10実施形態では、第8実施形態で説明した上記制御の他の形態について図21にしたがって説明する。図21に示すフローチャートにおいて図18に示すフローチャートと同符号を付したステップは、同様の処理を行うもので、同様の作用効果を奏し、その説明は第8実施形態に記載のとおりである。図21は本実施形態に係る熱源切替弁11の制御を示したフローチャートである。
図21に示すように、本実施形態に係る制御は、図18に示すフローチャートに対してステップ420aをステップ420bに置き換えたものである。すなわち、制御装置100は、ステップ410aの処理の後、熱源切替弁11の開弁を補助熱源側から給湯用配管13側に切り替えるタイミングを判定するためにステップ420bの判定処理を実行する。ステップ420bの判定処理では、流量センサ24によって検出された浴槽26に流入する水量を読み込み、この風呂への流入水量が補助熱源器4および補助熱源用通路15の配管が保有する水量に、所定の水量Gαを加えた値(補助熱源器4等の保有水量+Gα)以上であるか否かを判定する。
補助熱源器4等の保有水量は、本給湯装置固有である、補助熱源器4の容積および補助熱源用通路15の容積から求められる保有可能な水量であり、これを予め制御装置100に記憶された値である。当該記憶された保有水量は、例えば本給湯装置と同機であるマスター機を用いた評価実験により測定された実験値である。また、所定水量Gαは、補助熱源器4内の通路を通る水の温度が給湯設定温度に近い温度になっているかどうかを判定するために用いられる温度であり、本実施形態ではGαは例えば5リットルとする。
そして、制御装置100は浴槽26内に流入する水量がステップ420bで規定する所定の水量以上に検出されるまで熱源切替弁11を補助熱源側が開放される状態に維持する。制御装置100はステップ420bにおいて風呂への流入水量が所定の水量に達した(補助熱源器4等の保有水量+Gα以上である)と判定すると、給湯用配管13側(出湯側)の開度が100%となるように熱源切替弁11の開度を制御し(ステップ430)、通常の給湯経路によって、湯張りを継続する。
このような一連の制御により、補助熱源器4内部等に停留している冷水は所定のタイミングで浴槽26内に排出され、確実にユーザーが当該冷水に直接触れることを回避できる。なお、熱源切替弁11を補助熱源側開放状態に維持している間、補助熱源器4は運転状態、停止状態のいずれであってもよい。
(第11実施形態)
第11実施形態では、第8実施形態で説明した上記制御の他の形態について図22にしたがって説明する。図22に示すフローチャートにおいて図18に示すフローチャートと同符号を付したステップは、同様の処理を行うもので、同様の作用効果を奏し、その説明は第8実施形態に記載のとおりである。図22は本実施形態に係る熱源切替弁11の制御を示したフローチャートである。
図22に示すように、本実施形態に係る制御は、図18に示すフローチャートに対してステップ410aをステップ410bに、並びにステップ420aをステップ420cに、置き換えたものである。すなわち、制御装置100は、ステップ400で湯張りが開始されていると判定すると、ステップ410bで補助熱源器4の開度を補助熱源用通路15側に100%開放するように切り替えるとともに、停留水の流出時間の計時(カウント)を開始する。
次に、制御装置100は、熱源切替弁11の開弁を補助熱源側から給湯用配管13側に切り替えるタイミングを判定するためにステップ420cの判定処理を実行する。ステップ420cの判定処理では、ステップ410bで計時を開始した停留水の流出時間が所定時間(例えば10秒)経過したか否かを判定する。この所定時間は、例えば本給湯装置と同機であるマスター機を用いた評価実験により停留水が配管等から流出しきるまでに要する時間を測定して得られた実験値であり、これを予めプログラムに記憶させておく。また、この所定時間は現場の施工状況によっても変化する時間であるため、機器に備えたディップスイッチ等を操作することにより製品設置後に可変できる構成としてもよい。
そして、制御装置100は停留水の流出時間が所定時間(例えば10秒)を経過するまで熱源切替弁11を補助熱源側が開放される状態に維持する。制御装置100はステップ420cにおいて所定時間(例えば10秒)が経過したと判定すると、給湯用配管13側(出湯側)の開度が100%となるように熱源切替弁11の開度を制御し(ステップ430)、通常の給湯経路によって、湯張りを継続する。このような一連の制御により、補助熱源器4内部等に停留している冷水は所定のタイミングで浴槽26内に排出され、確実にユーザーが当該冷水に直接触れることを回避できる。なお、熱源切替弁11を補助熱源側開放状態に維持している間、補助熱源器4は運転状態、停止状態のいずれであってもよい。
このように所定時間の経過によるタイマー機構によって熱源切替弁11を出湯側に切り替えることにより、上記第8実施形態および第9実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、本実施形態では、熱交換部温度センサ28がなく、補助熱源器4内部または補助熱源用通路15の水の温度を計測することができない場合でも、予め記憶している停留水の流出に必要な時間を判断処理に用いたソフト仕様の工夫により、部品点数を少なくすることができ、冷水を浴槽26内に確実に流出させる給湯装置が得られる。
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
例えば、上記第9実施形態においてステップ530を、以下のような判断処理に置き換えてもよい。すなわち、熱源切替弁11を補助熱源側を開弁するように切り替えた時から時間を計測し、所定時間(例えば10秒)経過したか否かで判断する。制御装置100は所定時間(例えば10秒)経過したと判断した場合には次のステップで熱源切替弁11を出湯側を開弁するように切り替える。この所定時間は、第11実施形態での説明と同様に、例えば本給湯装置と同機であるマスター機を用いた評価実験により得られた実験値であり、これを予めプログラムに記憶させておく。また、この所定時間は、機器に備えたディップスイッチ等を操作することにより製品設置後に可変できる構成としてもよい。
このように所定時間の経過によるタイマー機構によって熱源切替弁11を出湯側に切り替えることにより、上記第8実施形態および第9実施形態と同様の作用効果が得られる。また、熱交換部温度センサ28がなく、補助熱源器4内部または補助熱源用通路15の水の温度を計測することができない場合でも、冷水を浴槽26内に確実に流出させる給湯装置が得られる。
また、上記第10実施形態のステップ420bを上記第8実施形態のステップ420aだけでなく、上記第9実施形態においてもステップ530の代わりに適用することもできる。ステップ420bを上記第9実施形態のフローチャートに適用することによっても、第10実施形態に記載のものと同様の作用効果が得られる。
また、上記第8実施形態から第11実施形態において、熱源切替弁11を出湯側に切り替えるときに、給湯用配管13を100%の開度に開放するようにしているが、この開度限定するものではない。例えば50%の開度に固定してもよいし、50%の開度から時間の経過とともに徐々に開度を大きくするように熱源切替弁11を制御してもよい。
また、上記実施形態において、湯張り時に熱源切替弁11を出湯側に切り替えて停留水を浴槽26内に流出させるときに、給湯用熱交換器3で加熱される2次側の温水が通常よりも高い温度になるように循環用ポンプ9を制御するようにしてもよい。これにより、浴槽26内で混入される停留水による浴水の温度低下分を抑制することができる。
また、上記実施形態において、湯張り時に熱源切替弁11を出湯側に切り替える代わりに、追い焚き運転を開始する前に熱源切替弁11を出湯側に切り替えるとともに風呂用電磁弁23を開弁することにより、停留水を浴槽26内に流出させるようにしてもよい。