JP2009143156A - フィラメントワインディング成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 熱硬化樹脂の繊維材料への含浸性、室温での作業性及び生産性に優れ、且つ、粉落ち、形状崩れ等のない外観性に優れた成形品を与えるフィラメントワインディング成形方法を提供する。
【解決手段】 シクロオレフィンモノマー及びヘテロ環構造を含有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒を含んでなる重合性組成物を、強化繊維に含浸させてなる樹脂成分含有強化繊維をマンドレルに巻き付けて加熱することを特徴とするフィラメントワインディング成形品の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 シクロオレフィンモノマー及びヘテロ環構造を含有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒を含んでなる重合性組成物を、強化繊維に含浸させてなる樹脂成分含有強化繊維をマンドレルに巻き付けて加熱することを特徴とするフィラメントワインディング成形品の製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、フィラメントワインディング成形品の製造方法に関し、さらに詳しくは、樹脂成分の繊維材料への含浸性、室温での作業性及び生産性に優れ、且つ、粉落ち、形状崩れ等のない外観性に優れたフィラメントワインディング成形品を与える製造方法に関する。
従来、繊維強化複合体の成形法の一つであるフィラメントワインディング法は、Bステージの熱硬化性樹脂を含浸した繊維材料のフィラメントをマンドレル上に巻き付けて所定の厚さとし、ラッピングテープを巻き付け、加熱してラッピングテープの熱収縮力を付与しながら熱硬化性樹脂を硬化させた後、脱型することにより行なわれている。熱硬化性樹脂としては、通常エポキシ樹脂が用いられているが、エポキシ樹脂は、繊維材料への含浸性を高めるために低粘度品を用いるとマンドレルに巻き付ける時に滑ってうまく巻けず、また逆に、エポキシ樹脂の粘度を高め巻き付け時の滑りを抑制すると繊維材料への含浸性が悪くなる問題を抱えていた。
これらの改良として、例えば、特許文献1には、ラジカル重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂、光重合開始剤、ラジカル重合開始剤及びエポキシ樹脂硬化剤を含有する硬化性組成物を繊維材料に含浸して樹脂含浸繊維材料を得、該樹脂含浸繊維材料に光を当てた後に樹脂含浸繊維材料を駆体に巻き付けて加熱する方法が行なわれている。しかしながら、光反応を行なうこと及び光に触れないようにアルミ袋で包装しなければならない、低温保管して使用時に室温まで戻さなければならない等の管理上での煩わしさがあり、また、硬化後の成形品の靭性が足りず粉落ち、形状崩れ等が見られるものがあった。
また、エポキシ樹脂の粘度を室温で硬化反応が徐々に進むようにして改良しているが、この方法では、大型の複合構造物を製造するときにワインディングの完了までに時間がかかり使えなくなる問題があった。この室温での粘度上昇を抑制するために、例えば、特許文献2には、潜在性硬化剤を用いて高粘度エポキシ樹脂を用いる方法が開示されている。しかしながらこの方法では、高粘度エポキシ樹脂の繊維材料への含浸性が悪く充分な機械特性が得られない、また、硬化時間が257°F×2時間と非常に長い問題があった。また、特許文献3には、生産性を向上させるためにエポキシ樹脂を太い補強繊維束に含浸させてフィラメントワインディング成形を行なう技術が開示されているが、硬化時間が昇温速度2℃/分、130℃×2時間、150℃×1時間、170℃×2時間と5時間以上もかかるという問題があった。
特許文献4には、繊維材料の存在下にシクロオレフィンモノマーをルテニウム触媒を用いて塊状開環重合させ、回転成形法やフィラメントワインディング法によりパイプを製造する方法が開示されている。しかしこの方法では、炭素繊維等の強化繊維を用いると重合反応が充分に進まず、成形品の外観や機械的強度、靭性等の特性が充分でないという問題があった。
本発明の目的は、熱硬化樹脂の繊維材料への含浸性、室温での作業性及び生産性に優れ、且つ、粉落ち、形状崩れ等のない外観性に優れた成形品を与えるフィラメントワインディング成形方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、シクロオレフィンモノマーおよびメタセシス重合触媒として特定構造のルテニウム触媒を含んでなる重合性組成物を強化繊維に含浸させ樹脂成分含有強化繊維を得、次いで該樹脂成分含有強化繊維をマンドレル等の駆体に巻き付けて加熱させることにより、樹脂成分の強化繊維含浸性やマンドレル巻き付け性が共に優れ、成形品の硬化時間が非常に短く、しかも硬化後に外観性に優れた成形品が製造できることを見出した。また、重合性組成物を強化繊維に含浸し次いで重合反応を行った樹脂成分含有強化繊維は、室温保管してもプリプレグ特性が損なわれず、その後該樹脂成分含有強化繊維をマンドレルに巻き付けて加熱硬化すると外観性に優れる成形品が得られることを見出した。さらに、重合性組成物に架橋剤を配合すると、成形品の外観性、機械強度、靭性、耐熱性等の特性が高度に改善されることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
かくして本発明によれば、シクロオレフィンモノマー及びヘテロ環構造を含有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒を含んでなる重合性組成物を、強化繊維に含浸させてなる樹脂成分含有強化繊維をマンドレルに巻き付けて加熱することを特徴とするフィラメントワインディング成形品の製造方法が提供される。
該重合性組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。
該樹脂成分含有強化繊維は、重合性組成物を含浸後に重合反応を行なったものであることが好ましい。
強化繊維は、炭素繊維であることが好ましく、アクリル系炭素繊維であることがより好ましい。
該重合性組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。
該樹脂成分含有強化繊維は、重合性組成物を含浸後に重合反応を行なったものであることが好ましい。
強化繊維は、炭素繊維であることが好ましく、アクリル系炭素繊維であることがより好ましい。
本発明によれば、樹脂成分の繊維材料含浸性、室温での作業性及び生産性に優れ且つ粉落ち、形状崩れ等のない外観性に優れた成形品を容易に得ることができる。また、本発明の製造方法で得られるフィラメントワインディング成形品は、外観性に優れ、しかも強度と靭性に優れるため、自動車や航空機などの乗物用構造体、スポーツ用途、土木、建築などの一般産業分野において好適に使用することができる。
(シクロオレフィンモノマー)
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。その例として、ノルボルネン系モノマーおよび単環シクロオレフィンなどが挙げられ、ノルボルネン系モノマーが好ましい。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーである。ノルボルネン系モノマーとしては、格別な限定はないが、例えば、2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、フニルテトラシクロドデセンなどの四環体、トリシクロペンタジエンなどの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、及びこれらのアルキル置換体(メチル、エチル、プロピル、ブチル置換体など)、アルキリデン置換体(例えば、エチリデン置換体)、アリール置換体(例えば、フェニル、トリル置換体)、並びにエポキシ基、メタクリル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン基、エーテル基、エステル結合含有基などの極性基を有する誘導体などが挙げられる。単環シクロオレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィン及び置換基を有するそれらの誘導体が挙げられる。
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。その例として、ノルボルネン系モノマーおよび単環シクロオレフィンなどが挙げられ、ノルボルネン系モノマーが好ましい。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーである。ノルボルネン系モノマーとしては、格別な限定はないが、例えば、2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、フニルテトラシクロドデセンなどの四環体、トリシクロペンタジエンなどの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、及びこれらのアルキル置換体(メチル、エチル、プロピル、ブチル置換体など)、アルキリデン置換体(例えば、エチリデン置換体)、アリール置換体(例えば、フェニル、トリル置換体)、並びにエポキシ基、メタクリル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン基、エーテル基、エステル結合含有基などの極性基を有する誘導体などが挙げられる。単環シクロオレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィン及び置換基を有するそれらの誘導体が挙げられる。
これらのシクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(重合触媒)
本発明においては、シクロオレフィンモノマーを重合する触媒として、ヘテロ環構造を含有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒(以下、「特定ルテニウム触媒」ということがある。)を用いる。かかる特定の触媒は、強化繊維の存在下の重合においても、シクロオレフィンモノマーの重合活性を落とさない特性を有している。ヘテロ環構造を構成するヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子等が挙げられ、好ましくは窒素原子である。また、ヘテロ環構造としては、イミダゾリンやイミダゾリジン構造が好ましく、かかるヘテロ環構造を有する化合物の具体例としては、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
本発明においては、シクロオレフィンモノマーを重合する触媒として、ヘテロ環構造を含有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒(以下、「特定ルテニウム触媒」ということがある。)を用いる。かかる特定の触媒は、強化繊維の存在下の重合においても、シクロオレフィンモノマーの重合活性を落とさない特性を有している。ヘテロ環構造を構成するヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子等が挙げられ、好ましくは窒素原子である。また、ヘテロ環構造としては、イミダゾリンやイミダゾリジン構造が好ましく、かかるヘテロ環構造を有する化合物の具体例としては、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
特定ルテニウム触媒としては、ヘテロ環構造を含有する化合物を配位子として有する限り特に限定されないが、通常ルテニウム原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が結合してなる錯体が挙げられる。これらの中でも、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性が優れるため、樹脂成分含有強化繊維の生産性に優れ、得られる樹脂成分含有強化繊維の、未反応のモノマーに由来する臭気が少なく作業性に優れる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも生産が可能である。
好ましい特定ルテニウム触媒の例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリドなどの、配位子としてヘテロ環構造を有する化合物と中性の電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物が挙げられる。
これらの特定ルテニウム触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。その使用量は、(触媒中の金属原子:シクロオレフィンモノマー)のモル比で、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
重合触媒は必要に応じて、少量の不活性溶剤に溶解又は懸濁して使用することができる。かかる溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;インデン、テトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、および脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。
(重合性組成物)
本発明に使用される重合性組成物は、上記シクロオレフィンモノマーおよび特定ルテニウム触媒を必須成分として、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、重合調整剤、重合反応遅延剤、連鎖移動剤、エラストマー材料、老化防止剤、充填剤及びその他の添加剤を添加することができる。
本発明に使用される重合性組成物は、上記シクロオレフィンモノマーおよび特定ルテニウム触媒を必須成分として、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、重合調整剤、重合反応遅延剤、連鎖移動剤、エラストマー材料、老化防止剤、充填剤及びその他の添加剤を添加することができる。
(架橋剤)
本発明においては、重合性組成物に架橋剤を配合することにより、得られるフィラメントワインディング成形品(以下、単に「成形品」という場合がある。)の外観性、強度、靭性、耐熱性等の特性が高度に改善されるので好適である。架橋剤としては、樹脂成分含有強化繊維を架橋できるものであれば格別な制限はないが、通常、ラジカル発生剤が用いられる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物および非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物や非極性ラジカル発生剤である。
本発明においては、重合性組成物に架橋剤を配合することにより、得られるフィラメントワインディング成形品(以下、単に「成形品」という場合がある。)の外観性、強度、靭性、耐熱性等の特性が高度に改善されるので好適である。架橋剤としては、樹脂成分含有強化繊維を架橋できるものであれば格別な制限はないが、通常、ラジカル発生剤が用いられる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物および非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物や非極性ラジカル発生剤である。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオサシド類;などが挙げられる。中でも、重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシドおよびペルオキシケタール類が好ましい。
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
架橋剤がラジカル発生剤の場合の1分半減期温度は、架橋の条件により適宜選択されるが、通常、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃の範囲である。ここで1分間半減期温度は、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。例えば、ジ−t−ブチルペルオキシドでは186℃、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンでは194℃である。
これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
本発明においては、架橋助剤を配合すると、重合性組成物の強化繊維への含浸性を高度に向上でき、また、硬化して得られる成形品の機械的強度と耐熱性を高度に向上させることができ好適である。
本発明で使用される架橋助剤としては、般的に用いられるものを格別な限定なく使用でき、例えば、炭素−炭素不飽和結合を2つ有する2官能性架橋助剤、炭素−炭素不飽和結合を3つ以上有する多官能架橋助剤などを挙げることができる。
本発明に使用される架橋助剤の構造は、格別な限定はないが、対称性の高い構造を有する化合物であるときにシクロオレフィンモノマーを含む重合性組成物の強化繊維への含浸性を高度に改善でき好適である。特に、架橋助剤が、炭化水素で、対称性の高い構造を有するものであるときに重合性組成物の強化繊維への含浸性、及び硬化して得られる成形品の機械的強度、強靭性及び耐熱性を高度に改善させ好適である。
かかる架橋助剤の具体例としては、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの2官能架橋助剤、トリイソプロペニルベンゼン、トリメタアリルイソシアネートなどの3官能架橋助剤等が挙げられる。中でも、トリイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンが好ましく、m−ジイソプロペニルベンゼンがより好ましい。
これらの架橋助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋助剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロオレフィンモノマー100重量部に対し、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部、最も好ましくは5〜15重量部である。
重合調整剤は、重合活性を制御したり、重合反応率を向上させるものであれば格別限定されない。重合調整剤の具体例としては、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、(重合触媒中の金属原子:重合調整剤)のモル比で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
連鎖移動剤としては、例えば、置換基を有していてもよい鎖状のオレフィン類を用いることができる。その具体例としては、例えば、1−ヘキセン、ジビニルベンゼン、エチルビニルエーテル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸3−ブテン−2−イル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、アクリル酸3−ブテン−1−イル、アクリル酸3−ブテン−2−イル、アクリル酸スチリル、エチレングリコールジアクリレート、アリルジメチルビニルシラン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレートなどが挙げられる。
これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができ、その添加量は、シクロオレフィンモノマー全体に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。連鎖移動剤の添加量がこの範囲であるときに、重合反応率が高く、しかも後架橋可能な樹脂成分含有強化繊維を効率よく得ることができる。連鎖移動剤の添加量が少なすぎると、重合と同時に架橋が進行し、後架橋ができない場合がある。逆に添加量が多すぎても、後架橋が困難になる場合がある。
本発明に用いる重合性組成物は、重合反応遅延剤を含有していると、その粘度増加を抑制でき、容易に強化繊維に均一に重合性組成物を含浸できるので、好ましい。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;アニリン、ピリジンなどのルイス塩基;等を用いることができる。
これら重合反応遅延剤の中でも、室温以下での重合反応の進行を抑制する効果が大きいので、ホスフィン化合物が好ましく、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィンおよびビニルジフェニルホスフィンがより好ましい。重合反応遅延剤の量は、(ルテニウム金属原子:重合反応遅延剤)のモル比で、通常、1:0.01〜1:100、好ましくは1:0.1〜1:10、より好ましくは1:0.1〜1:5の範囲である。
本発明に使用される重合性組成物は、エラストマー材料を加えることにより格段と強靭性を向上させることができ好適である。エラストマー材料としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらの水素添加物が挙げられる。これらのエラストマー材料は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜30重量部の範囲である。
本発明に使用される重合性組成物は、老化防止剤として、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を添加することにより、重合反応を阻害しないで、得られる成形品の耐酸化劣化性を高度に向上させることができ好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤とアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤が特に好ましい。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して大して、通常0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
本発明においては、重合性組成物に充填剤を加えることにより、耐熱性を格段に向上させることができ好適である。充填剤としては、工業的に一般に使用されるものであれば格別な限定はなく、無機系充填剤や有機系充填剤のいずれも用いることができが、好適には無機系充填剤である。これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは50〜350重量部の範囲である。
その他の添加剤としては、例えば、難燃剤、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤、高分子改質剤などが挙げられる。難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物系難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。これらのその他の添加剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
本発明に使用される重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、特定ルテニウム触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を、シクロオレフィンモノマーに必要に応じてその他の添加剤を配合した液(モノマー液)に添加し、攪拌することによって調製することができる。
(強化繊維)
本発明に使用される強化繊維の種類としては、格別な制限はないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維などの無機繊維;などを挙げることができる。これらの中でも、有機繊維、ガラス繊維、および炭素繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。特に、炭素繊維は、得られる成形品の強度と剛性を高度に向上させることができ好適である。炭素繊維の種類としては、格別な限定はなく、例えば、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系等の各種の従来公知の方法で製造される炭素繊維が使用でき、中でも、アクリル系炭素繊維がシクロオレフィンモノマーを含む重合性組成物との相溶性に優れ、成形品の強度と剛性等の特性を高度に付与でき好適である。ここで、アクリル系炭素繊維は、アクリル繊維(ポリアクリロニトリル繊維)を原料として製造される炭素繊維である。
本発明に使用される強化繊維の種類としては、格別な制限はないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維などの無機繊維;などを挙げることができる。これらの中でも、有機繊維、ガラス繊維、および炭素繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。特に、炭素繊維は、得られる成形品の強度と剛性を高度に向上させることができ好適である。炭素繊維の種類としては、格別な限定はなく、例えば、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系等の各種の従来公知の方法で製造される炭素繊維が使用でき、中でも、アクリル系炭素繊維がシクロオレフィンモノマーを含む重合性組成物との相溶性に優れ、成形品の強度と剛性等の特性を高度に付与でき好適である。ここで、アクリル系炭素繊維は、アクリル繊維(ポリアクリロニトリル繊維)を原料として製造される炭素繊維である。
本発明に使用される強化繊維の強度特性は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択される。引張強度としては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張強度で、通常0.5〜50GPa、好ましくは1〜10GPa、より好ましくは2〜8GPaの範囲である。引張弾性率としては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張弾性率で、通常100〜1,000GPa、好ましくは200〜800GPa、より好ましくは300〜700GPaの範囲である。伸びとしては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張伸びで、通常0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、より好ましくは1〜3%の範囲である。強化繊維の強度特性がこれらの範囲にあるときに、成形品の強度と靭性が高度にバランスされ好適である。
本発明に使用される強化繊維の断面形状は、格別な限定はなく、扁平、円形のいずれのものも用いることができる。断面形状が円形の時に、樹脂を含浸させる際、フィラメントの再配列が起こりやすくなり、繊維間への樹脂の浸み込みが容易になり好適である。また、繊維束の厚みを薄くすることが可能となるため、ドレープ製に優れたプリプレグを得やすい利点がある。
本発明に使用される強化繊維のフィラメント数は、格別な限定はないが、繊維束糸条1本中のフィラメント数は、1,000〜1、000,000本、好ましくは5,000〜500,000本、より好ましくは10,000〜100,000本の範囲である。
これらの強化繊維は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、得られる成形品中の強化繊維含有量が、通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲になるように選択される。強化繊維含有量がこの範囲にあるときに強度と剛性の特性が高度にバランスされ好適である。
(樹脂成分含有強化繊維)
本発明に使用される樹脂成分含有強化繊維は、前記重合性組成物を上記強化繊維に含浸させて容易に得ることができる。
本発明に使用される樹脂成分含有強化繊維は、前記重合性組成物を上記強化繊維に含浸させて容易に得ることができる。
含浸方法としては、常法に従えばよく、例えば、重合性組成物の所定量を、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法により強化繊維に塗布し、必要に応じてその上に保護フィルムを重ね、上側からローラーなどで押圧することにより行うことができる。本発明に使用される重合性組成物は、従来のエポキシ樹脂等と比較して低粘度であり、強化繊維に対する含浸性に優れ、且つ樹脂成分含有強化繊維中での保持力も高く、樹脂成分が強化繊維に均一に分散され、しかも外観性に優れる成形品を製造することができる。また、本発明に使用する重合性組成物は、反応に関与しない溶媒等の含有量が少ないので、強化繊維に含浸させた後に溶媒を除去するなどの工程が不要であり、生産性に優れ、残存溶媒による臭気、フクレ、ボイド等の発生も起こらず、また成形品の耐熱性にも優れる。
本発明においては、上記樹脂成分含有強化繊維として、重合反応を行なったものを用いると、樹脂成分含有強化繊維を長期に室温保管が可能となるため好適である。すなわち、シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤を含んでなる重合性組成物を強化繊維に含浸させ、次いで該シクロオレフィンモノマーを重合して樹脂成分含有強化繊維を得て、これを駆体に巻き付けて加熱してフィラメントワインディング成形品を製造する方法である。この方法によれば、樹脂成分含有強化繊維の長期間の室温保存が可能となり、且つ室温での操作性とマンドレル等への巻き付け性に優れ、しかも外観性に優れる成形品が得られることから好適である。
重合方法としては、特に限定されないが、塊状重合が好ましい。塊状重合を行う場合には、重合性組成物は反応に関与しない溶媒等の含有量が少ないので、強化繊維に含浸させた後に、重合、賦形、硬化するときに溶媒による臭気、フクレ、ボイド等の問題が発生せず好適である。重合温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜170℃の範囲であり、また、前記架橋剤がラジカル発生剤を用いる場合は、通常ラジカル発生剤の1分半減期温度以下、好ましくは1分半減期温度の10℃以下の温度、より好ましくは1分半減期温度の20℃以下の温度である。重合時間は適宜選択すればよいが、通常、10秒間から20分間、好ましくは5分間以内である。重合性組成物をこの範囲温度に加熱することにより未反応モノマーの少ない樹脂成分含有強化繊維が得られるので好適である。
(ワインディング方法)
本発明に使用される上記樹脂成分含有強化繊維のマンドレルへの巻き付け方法(ワインディング方法)は、常法に従って行なうことができる。たとえば、マンドレルの軸方向に沿って樹脂成分含有強化繊維を往復させ、該マンドレル上に樹脂成分含有強化繊維を巻き付ける方法が挙げられる。ワインディングパターンは、用途に応じて適宜選択できるが、例えば、パラレル巻、ヘリカル巻、ポーラ巻、インプレーン巻などを挙げることができる。
本発明に使用される上記樹脂成分含有強化繊維のマンドレルへの巻き付け方法(ワインディング方法)は、常法に従って行なうことができる。たとえば、マンドレルの軸方向に沿って樹脂成分含有強化繊維を往復させ、該マンドレル上に樹脂成分含有強化繊維を巻き付ける方法が挙げられる。ワインディングパターンは、用途に応じて適宜選択できるが、例えば、パラレル巻、ヘリカル巻、ポーラ巻、インプレーン巻などを挙げることができる。
本発明の製造方法では、上記により樹脂成分含有強化繊維をマンドレルに巻き付けた後、加熱して樹脂成分含有強化繊維を硬化させる。硬化させる方法は、常法に従って行なうことができる。硬化温度は、前記架橋剤の架橋の起こる温度であり、ラジカル発生剤を用いた場合は、1分半減期温度以上、好ましくは1分半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分半減期温度より10℃以上高い温度であり、通常100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。また、加熱時間は、0.1〜180分、好ましくは1〜120分、より好ましくは2〜20分の範囲である。
本発明のフィラメントワインディング成形方法によって得られる成形品は、外観性に優れ、しかも強度と剛性に優れるので、例えば、パイプ、チューブ、タンク、ロータ、フライホールローターなどの管状体、車軸などの複合管状体、圧力容器、OAやAV機器、自動車や鉄道などの車両用構造体材、航空機内装部品などをはじめとして、ゴルフシャフトや釣竿等のスポーツ用途、その他一般産業用途に好適に用いられる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定した。
(1)樹脂成分の含浸性:成形品のX線解析をX線非破壊解析装置(松定プレシジョン社製)を用いて行い、下記基準で判断した。
◎:空洞部が殆ど見られない
△:空洞が僅かに見られる。
×:中程度以上に空洞が見られる
(1)樹脂成分の含浸性:成形品のX線解析をX線非破壊解析装置(松定プレシジョン社製)を用いて行い、下記基準で判断した。
◎:空洞部が殆ど見られない
△:空洞が僅かに見られる。
×:中程度以上に空洞が見られる
(2)作業性:マンドレルの巻き付け性を下記基準で判断した。
◎:問題がなく巻きつけられた
×:巻き付け性に問題が生じた
◎:問題がなく巻きつけられた
×:巻き付け性に問題が生じた
(3)生産性:硬化・重合時間を下記基準で判断した。
◎:30分以内
△:30分超える〜2時間未満
×:2時間以上
◎:30分以内
△:30分超える〜2時間未満
×:2時間以上
(4)外観:成形品を目視で観察し、下記基準で判断した。
◎:粉落ち、形状崩れのいずれも認められない
△:粉落ち、形状崩れのいずれかが認められる
×:両方認められるか、いずれか一方だけでも程度が酷いもの
◎:粉落ち、形状崩れのいずれも認められない
△:粉落ち、形状崩れのいずれかが認められる
×:両方認められるか、いずれか一方だけでも程度が酷いもの
実施例1
ガラス製フラスコ中で、ベンジリデン(1,3−ジメチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させて触媒液を調製した。これとは別に、ポリエチレン製の瓶にシクロオレフィンモノマーとして、ジシクロペンタジエン(DCP)を100部入れ、ここに架橋助剤としてm−ジイソプロペニルベンゼン20部、連鎖移動剤としてアリルメタクリレートを0.74部、架橋剤としてジ−t−ブチルペルオキシド(1分間半減期温度186℃)1.2部、ポリブタジエン15重量部を加えた後、上記触媒液をシクロオレフィンモノマー100gあたり0.12mlの割合で加えて撹拌し、重合性組成物を調製し樹脂浴に移した。
ガラス製フラスコ中で、ベンジリデン(1,3−ジメチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させて触媒液を調製した。これとは別に、ポリエチレン製の瓶にシクロオレフィンモノマーとして、ジシクロペンタジエン(DCP)を100部入れ、ここに架橋助剤としてm−ジイソプロペニルベンゼン20部、連鎖移動剤としてアリルメタクリレートを0.74部、架橋剤としてジ−t−ブチルペルオキシド(1分間半減期温度186℃)1.2部、ポリブタジエン15重量部を加えた後、上記触媒液をシクロオレフィンモノマー100gあたり0.12mlの割合で加えて撹拌し、重合性組成物を調製し樹脂浴に移した。
次いで、炭素繊維束(PAN系炭素繊維、フィラメント数24,000本)をクリールから400g/stの張力で引き出した後、重合性組成物が入っている樹脂浴に10秒間樹脂含浸し、150℃の温度に温度管理された炉の中に炭素繊維束を1分間滞留するように通過させて重合を行ない、樹脂成分含有強化繊維を製造した。その後、得られた樹脂成分含有強化繊維を、フィラメントワインディング法で直径500mmのマンドレルに3.6mmピッチで3往復、6プライ積層した300mm長の円筒状に巻いた。この樹脂成分含有強化繊維が巻かれたマンドレルにを、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持して加熱し、樹脂を硬化させた。樹脂の硬化後、マンドレルを抜き取り、円筒状のフィラメントワインディング成形品を得た。得られた成形品の炭素繊維含有率は55%であった。各評価の結果を表1に示した。
実施例2
樹脂成分含有強化繊維を室温で1週間保管した後に用いてフィラメントワインディング成形を行なう以外は実施例1と同様に行い、各評価の結果を表1に示した。
樹脂成分含有強化繊維を室温で1週間保管した後に用いてフィラメントワインディング成形を行なう以外は実施例1と同様に行い、各評価の結果を表1に示した。
比較例1
エピコート828(ジャパン エポキシ レジン社製、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)100部、カヤハードMCD(日本化薬社製、メチルナジック酸無水物)90部、及びベンジルジメチルアミン2部を加えたエポキシ樹脂組成物を調製し樹脂浴に移した。
エピコート828(ジャパン エポキシ レジン社製、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)100部、カヤハードMCD(日本化薬社製、メチルナジック酸無水物)90部、及びベンジルジメチルアミン2部を加えたエポキシ樹脂組成物を調製し樹脂浴に移した。
次いで、炭素繊維束(PAN系炭素繊維、フィラメント数24,000本)をクリールから400g/stの張力で引き出した後、エポキシ樹脂組成物が入っている樹脂浴に10秒間含浸し、フィラメントワインディング法で直径500mmのマンドレルに3.6mmピッチで3往復、6プライ積層した300mm長の円筒状に巻いた。樹脂が含浸され、マンドレルに巻かれた炭素繊維を、昇温速度2℃/分で130℃まで昇温し、130℃で2時間保持し、次いで150℃で1時間、さらに170℃で2時間加熱し、樹脂を硬化させた。樹脂硬化後、マンドレルを抜き取り、円筒状のフィラメントワインディング成形品を得た。得られた成形品の炭素繊維含有率は60%であった。各評価の結果を表1に示した。
比較例2
分子量7,000のポリエチレングリコール1モルを、エポキシ当量が188g/eqであるジグリシジルエーテルビスフェノールA1モルと反応させて、重量平均分子量8,000のコポリマーを製造した。このコポリマー1,000部、ジシアンジアミド880部及び3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素440部を均一に混合し、70℃に加温してから、同量の70℃の脱イオン水に注いで乳濁液を作製し、樹脂浴に移した。
分子量7,000のポリエチレングリコール1モルを、エポキシ当量が188g/eqであるジグリシジルエーテルビスフェノールA1モルと反応させて、重量平均分子量8,000のコポリマーを製造した。このコポリマー1,000部、ジシアンジアミド880部及び3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素440部を均一に混合し、70℃に加温してから、同量の70℃の脱イオン水に注いで乳濁液を作製し、樹脂浴に移した。
次いで、炭素繊維束(PAN系炭素繊維、フィラメント数24,000本)をクリールから400g/stの張力で引き出した後、上記の乳濁液が入っている樹脂浴に60秒間含浸し、フィラメントワインディング法で直径500mmのマンドレルに3.6mmピッチで3往復、6プライ積層した300mm長の円筒状に巻いた。樹脂が含浸され、マンドレルに巻かれた炭素繊維を、昇温速度2℃/分で135℃まで昇温し、135℃で2時間保持して加熱し、樹脂を硬化させた。樹脂硬化後、マンドレルを抜き取り、円筒状のフィラメントワインディング成形品を得た。得られた成形品の炭素繊維含有率は65%であった。各評価の結果を表1に示した。
表1の結果より、本発明の製造方法で得られるフィラメントワインディング成形品は、含浸性、作業性、生産性及び外観性のいずれの特性にも優れることがわかる(実施例1,2)。特に、作製した樹脂成分含有強化繊維を室温で1週間保管後にフィラメントワインディング成形を行なっても何ら問題なく、含浸性、作業性、生産性及び外観性のいずれの特性にも優れることがわかる(実施例2)。一方、それに対して、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を用いたものは、いずれの特性も充分でないことがわかる(比較例1,&2)。特に、高粘度エポキシ樹脂は、室温での作業性である程度優れるが、他の特性はいずれも劣ることが判る。
Claims (5)
- シクロオレフィンモノマー及びヘテロ環構造を含有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒を含んでなる重合性組成物を、強化繊維に含浸させてなる樹脂成分含有強化繊維をマンドレルに巻き付けて加熱することを特徴とするフィラメントワインディング成形品の製造方法。
- 重合性組成物が、架橋剤を含むものである請求項1記載の製造方法。
- 樹脂成分含有強化繊維が、重合性組成物を含浸後に重合反応を行なったものである請求項1または2記載の製造方法。
- 強化繊維が、炭素繊維である請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
- 炭素繊維が、アクリル系炭素繊維である請求項4記載の製造方法。
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JP2007324040A JP2009143156A (ja) | 2007-12-14 | 2007-12-14 | フィラメントワインディング成形品の製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2013176801A1 (en) | 2012-05-22 | 2013-11-28 | Dow Global Technologies Llc | Process for treating a dicyclopentadiene monomer |
-
2007
- 2007-12-14 JP JP2007324040A patent/JP2009143156A/ja active Pending
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