JP2009137903A - ピリダジノン誘導体を有効成分とする糖化最終産物形成阻害剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、糸球体病変における不可逆的蛋白修飾による糖尿病性腎症の発症又は進展に対する予防及び/又は治療に有用な薬剤に関する。
現在、本邦では糖尿病患者、糖尿病が疑われる患者及び糖尿病予備群が約2千万人存在するといわれている。糖尿病を起因とした合併症のうち、糖尿病性腎症の発症率は年々増加の推移をたどり、すでに慢性糸球体腎炎の発症率を上回り第一位となっている。
糖尿病性腎症が発症した場合における最大の問題点は、末期腎不全即ち透析への移行率が、非常に高いことにある。また、糖尿病性腎症による透析への移行は医療費高騰等の社会的に大きな問題となっている。そこで、糖尿病性腎症に関わる治療剤、又は予防を期待できる薬剤が強く望まれている。
糖尿病性腎症の成因には、(1)遺伝的素因をはじめとして、(2)糸球体血行動態変化、(3)グリケーションの亢進やカルボニル・酸化ストレスにより生じた糖化最終産物(Advanced Glycation End Products(以下、「AGE」と称する))の蓄積、(4)Protein Kinase Cの活性化や、(5)ポリオール代謝の亢進等、様々な因子の関与が考えられている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。
現在、糖尿病性腎症の治療現場では、糸球体血行動態の改善を主目的としたアンジオテンシン変換酵素阻害剤(以下、「ACE阻害剤」と称する)やアンジオテンシンIIの1型受容体拮抗剤(以下、「ARB」と称する)が汎用されており、基礎のみならず臨床的なevidenceが報告されている(非特許文献6、非特許文献7)。例えば、ACE阻害剤の塩酸イミダプリルは1型糖尿病性腎症の治療剤として初めて認可された薬剤である。ARBである、ロサルタン、イルベサルタンも糖尿病性腎症の適用拡大が認可されている。しかしながら、糖尿病性腎症の患者の多くは高血圧であることから、これらの降圧剤が汎用されているに過ぎず、糖尿病性腎症に対する治療又は予防的作用を有する薬剤はほとんどないのが現状であり、新規な薬剤の登場が切望されている。
そこで次の糖尿病性腎症の治療剤として、AGE形成阻害剤が注目を浴びている。AGEで修飾されたタンパクは腎循環動態、腎糸球体基底膜の濾過機構等、多数の腎機能に悪影響を及ぼし、また、AGE自身がメサンギウム細胞等の腎構成細胞に多数存在するAGE関連受容体(例えば、Receptor for AGE(以下、「RAGE」と称する))に作用して、サイトカインや増殖因子等の障害因子を産生させることが報告されている(非特許文献8)。従って、AGEの形成を抑制することは、糖尿病性腎症の進展抑制に繋がると考えられる。
アミノグアニジンは、反応性カルボニル化合物(3−デオキシグルコソン、メチルグリオキサール等)の捕捉作用、酸素ラジカル(特に、ヒドロキシラジカル)の捕捉作用及び金属キレート形成作用により、AGEの形成を阻害すると考えられており、AGE阻害に基づく糖尿病性腎症の治療剤として、最初に本格的な研究がなされた化合物である。しかし、これはすでに臨床治験も終了したが、いまだ実用化には至っていない(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)。
また、その他のAGE形成阻害剤としてはアミノグアニジンの誘導体であるOPB−9195、LR−90、ALT−946、天然化合物及びその類縁体であるチアミン(ビタミンB1)、チアミンピロリン酸、ベンフォチアミン等幾つかの化合物が知られている(非特許文献12)が、いずれも実用化には至っていない。
その一方で、後記一般式(1)で示されるようなピリダジノン構造を骨格として持つAGE形成阻害剤は知られていなかった。
その一方で、後記一般式(1)で示されるようなピリダジノン構造を骨格として持つAGE形成阻害剤は知られていなかった。
Cooper, ME. et al.; Lancet, 352, 213-219, 1998.
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Masakuni, N. et al.; Jpn. J. Pharmacol., 85: 416-422, 2001
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今泉勉 ほか;AGEs研究の最前線:209−217,2004年;メディカルレビュー社
本発明は、新規なAGE形成阻害剤を提供することにある。AGE形成阻害剤は糸球体病変における不可逆的蛋白修飾による糖尿病性腎症の発症及び進展に対する予防又は治療に有用である。また、原疾患が糖尿病性腎症と診断されていない患者であっても、慢性糸球体腎炎や高血圧性腎症等の糸球体疾患により透析移行している患者の多くは血漿中のAGEが著しく増加しているという周知の事実から、AGE形成阻害剤は糖尿病性腎症のみならず、慢性糸球体腎炎や高血圧性腎症等も含めた糸球体疾患に対する予防又は治療に有用である。
上記実情に鑑み、本発明者らは、AGE形成阻害作用を持つ化合物を探索した結果、下記一般式(1)で表されるピリダジノン誘導体が、AGEの一種であるペントシジンを指標にしたin vitro系での阻害試験において、アミノグアニジンと比較して、強いAGE形成阻害作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
[1]下記一般式(1)
[1]下記一般式(1)
[式中、R1,R2,R3,R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基又はC1〜C6アルキルオキシ基を示し、A環は、C3〜C14シクロアルキル基、C3〜C14シクロアルケニル基又はC5〜C14ヘテロ環を示し、Bは、C1〜C6アルキレン基を示し、R6及びR7は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいC1〜C6アルキルカルバモイル基、置換基を有してもよいC1〜C6アルキルオキシカルボニル基又は置換基を有してもよいC6〜C14アリール基を示す]で表されるピリダジノン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とするAGE形成阻害剤、
[2]一般式(1)で示されるピリダジノン誘導体が2−シクロプロピルメチル−6−(2,4−ジメチルオキシ−5−フルオロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)カルバモイル−2H−ピリダジン−3−オン、2−シクロプロピルメチル−6−(3,4−ジメチルオキシ−5−フルオロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)カルバモイル−2H−ピリダジン−3−オン及び5,6−ビス(4−メチルオキシフェニル)−2−(ピリジン−3−イルメチル)−2H−ピリダジン−3−オンからなる群から選ばれる化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、前記[1]記載のAGE形成阻害剤、
[3]前記[1]又は[2]で表されるAGE形成阻害剤を有効成分とする糸球体疾患の予防又は治療剤、及び
[4]糸球体疾患が糖尿病性腎症である前記[3]記載の糸球体疾患の予防又は治療剤を提供するものである。
[2]一般式(1)で示されるピリダジノン誘導体が2−シクロプロピルメチル−6−(2,4−ジメチルオキシ−5−フルオロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)カルバモイル−2H−ピリダジン−3−オン、2−シクロプロピルメチル−6−(3,4−ジメチルオキシ−5−フルオロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)カルバモイル−2H−ピリダジン−3−オン及び5,6−ビス(4−メチルオキシフェニル)−2−(ピリジン−3−イルメチル)−2H−ピリダジン−3−オンからなる群から選ばれる化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である、前記[1]記載のAGE形成阻害剤、
[3]前記[1]又は[2]で表されるAGE形成阻害剤を有効成分とする糸球体疾患の予防又は治療剤、及び
[4]糸球体疾患が糖尿病性腎症である前記[3]記載の糸球体疾患の予防又は治療剤を提供するものである。
本発明の一般式(1)で表されるピリダジノン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、後記試験例に示すように、優れたAGE形成阻害作用を示し、糸球体疾患の予防及び/又は治療剤、特に糖尿病性腎症の予防及び/又は治療剤として有用である。
本発明の用語の定義は以下の通りである。
本発明中、「C1〜C6アルキル基」とは、炭素数1乃至6個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基又は2−エチルブチル基であり、好適には、C1〜C4アルキル基である。
「C1〜C4アルキル基」とは、炭素数1乃至4個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基又はt−ブチル基である。
本発明中、「C1〜C6アルキレン基」とは、炭素数1乃至6個の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を意味し、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、t−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、2−メチルブチレン基、ネオペンチレン基、1−エチルプロピレン基、n−ヘキシレン基、イソヘキシレン基、4−メチルペンチレン基、3−メチルペンチレン基、2−メチルペンチレン基、1−メチルペンチレン基、3,3−ジメチルブチレン基、2,2−ジメチルブチレン基、1,1−ジメチルブチレン基、1,2−ジメチルブチレン基、1,3−ジメチルブチレン基、2,3−ジメチルブチレン基、1−エチルブチレン基又は2−エチルブチレン基である。本発明の「C1〜C6アルキレン基」は、好適にはC1〜C4アルキレン基である。
「C1〜C4アルキレン基」とは、炭素数1乃至4個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を意味し、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基又はt−ブチレン基であり、より好適には、メチレン基である。
本発明中、「C1〜C6アルキルオキシ基」とは、炭素数1乃至6個の直鎖状又は分岐状のアルキルオキシ基を意味し、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、2−メチルブチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、2,2−ジメチルブチルオキシ基、1,1−ジメチルブチルオキシ基、1,2−ジメチルブチルオキシ基、1,3−ジメチルブチルオキシ基、2,3−ジメチルブチルオキシ基、1−エチルブチルオキシ基又は2−エチルブチルオキシ基であり、好適には、C1〜C4アルキルオキシ基である。
「C1〜C4アルキルオキシ基」とは、炭素数1乃至4個の直鎖状又は分枝状のアルキルオキシ基を意味し、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基又はt−ブチルオキシ基であり、より好適には、メチルオキシ基である。
本発明において、「C1〜C6アルキルオキシカルボニル基」とは、炭素数1乃至6個の直鎖状又は分岐状のアルキルオキシカルボニル基を意味し、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、s−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、2−メチルブチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、1−エチルプロピルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、イソヘキシルオキシカルボニル基、4−メチルペンチルオキシカルボニル基、3−メチルペンチルオキシカルボニル基、2−メチルペンチルオキシカルボニル基、1−メチルペンチルオキシカルボニル基、3,3−ジメチルブチルオキシカルボニル基、2,2−ジメチルブチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチルブチルオキシカルボニル基、1,2−ジメチルブチルオキシカルボニル基、1,3−ジメチルブチルオキシカルボニル基、2,3−ジメチルブチルオキシカルボニル基、1−エチルブチルオキシカルボニル基又は2−エチルブチルオキシカルボニル基であり、好適には、C1〜C4アルキルオキシカルボニル基である。
「C1〜C4アルキルオキシカルボニル基」とは、炭素数1乃至4個の直鎖状又は分枝状のアルキルオキシカルボニル基を意味し、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、s−ブチルオキシカルボニル基又はt−ブチルオキシカルボニル基である。
本発明において、「C1〜C6アルキルカルバモイル基」とは、炭素数1乃至6個の直鎖状又は分岐状のアルキルカルバモイル基を意味し、例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n−プロピルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、イソブチルカルバモイル基、s−ブチルカルバモイル基、t−ブチルカルバモイル基、n−ペンチルカルバモイル基、イソペンチルカルバモイル基、2−メチルブチルカルバモイル基、ネオペンチルカルバモイル基、1−エチルプロピルカルバモイル基、n−ヘキシルカルバモイル基、イソヘキシルカルバモイル基、4−メチルペンチルカルバモイル基、3−メチルペンチルカルバモイル基、2−メチルペンチルカルバモイル基、1−メチルペンチルカルバモイル基、3,3−ジメチルブチルカルバモイル基、2,2−ジメチルブチルカルバモイル基、1,1−ジメチルブチルカルバモイル基、1,2−ジメチルブチルカルバモイル基、1,3−ジメチルブチルカルバモイル基、2,3−ジメチルブチルカルバモイル基、1−エチルブチルカルバモイル基又は2−エチルブチルカルバモイル基であり、好適には、C1〜C4アルキルカルバモイル基である。
「C1〜C4アルキルカルバモイル基」とは、炭素数1乃至4個の直鎖状又は分枝状のアルキルカルバモイル基を意味し、例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n−プロピルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、イソブチルカルバモイル基、s−ブチルカルバモイル基又はt−ブチルカルバモイル基であり、より好適には、メチルカルバモイル基が挙げられる。
本発明において、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、好適にはフッ素原子を意味する。
本発明において、「C3〜C14シクロアルキル基」とは、単環状又は多環状の炭素数3乃至14個の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[4.1.0]ヘプチル基、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ノルボニル基、スピロ[4.5]デシル基、スピロ[4.4]ノニル基、スピロ[4.3]オクチル基、及びスピロ[4.2]ヘプチル基が挙げられる。本発明の「C3〜C14シクロアルキル基」は、好適には「C3〜C6シクロアルキル基」である。
本発明の「C3〜C6シクロアルキル基」は、炭素数3乃至6個の上記シクロアルキル基を示し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル等が挙げられ、より好適にはシクロプロピル基である。
本発明において「C3〜C14シクロアルケニル基」とは、1又は2個、好ましくは1個の二重結合を含む環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基(例えば、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル基又は2,5−シクロヘキサジエン−1−イル基等)、シクロヘプテニル基及びシクロオクテニル基を挙げることができる。
本発明において、「C5〜C14へテロ環基」とは、炭素原子の他に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも一つ、好ましくは1乃至4個のヘテロ原子を包含する飽和若しくは不飽和(部分的不飽和及び完全不飽和を含む)の5乃至14員のへテロ環を意味し、例えば、ピロリジニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、1,3−ジオキソラニル基、1,3−オキサチオラニル基、オキサゾリジニル基、チアゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピペラジノ基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ジオキサニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、2−オキソピロリジニル基、2−オキソピペリジニル基、4−オキソピペリジニル基、2,6−ジオキソピペリジニル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、1,2−ジヒドロ−2−オキソイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、1,2,4−トリアゾリル基、1,2,3−トリアゾリル基、テトラゾリル基、1,3,4−オキサジアゾリル基、1,2,4−オキサジアゾリル基、1,3,4−チアジアゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基、フラザニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、3,4−ジヒドロ−4−オキソピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、1,3,5−トリアジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリニル基、オキサゾリニル基(例えば、2−オキサゾリニル基、3−オキサゾリニル基、4−オキサゾリニル基等)、イソオキサゾリニル基、チアゾリニル基、イソチアゾリニル基、ピラニル基、2−オキソピラニル基、2−オキソ−2,5−ジヒドロフラニル基又は1,1−ジオキソ−1H−イソチアゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソイソインドリル基、ベンゾフラニル基、インダゾリル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、インドリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、1,2−ジヒドロ−2−オキソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノリジニル基、プリル基、プテリジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、5,6,7,8−テトラヒドロキノリル基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリル基、2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリル基、ベンゾ[1.3]ジオキソリル基、2,3−ジヒドロベンゾ[1.4]ゾオキシリル基、3,4−メチレンジオキシピリジル基、4,5−エチレンジオキシピリミジニル基、クロメニル基、クロマニル基又はイソクロマニル基等を挙げることができる。本発明の「5〜14員へテロ環」は、好適には「5〜7員へテロ環」である。
本発明において、「5〜7員へテロ環」とは、上記定義の5乃至7員のへテロ環を意味し、例えば、ピロリジニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、1,3−ジオキソラニル基、1,3−オキサチオラニル基、オキサゾリジニル基、チアゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピペラジノ基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ジオキサニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、2−オキソピロリジニル基、2−オキソピペリジニル基、4−オキソピペリジニル基、2,6−ジオキソピペリジニル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、1,2−ジヒドロ−2−オキソイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、1,2,4−トリアゾリル基、1,2,3−トリアゾリル基、テトラゾリル基、1,3,4−オキサジアゾリル基、1,2,4−オキサジアゾリル基、1,3,4−チアジアゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基、フラザニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、3,4−ジヒドロ−4−オキソピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、1,3,5−トリアジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリニル基、オキサゾリニル基、イソオキサゾリニル基、チアゾリニル基、イソチアゾリニル基、ピラニル基、2−オキソピラニル基、2−オキソ−2,5−ジヒドロフラニル基又は1,1−ジオキソ−1H−イソチアゾリル基であり、より好適には、ピリジル基が挙げられる。
本発明において、「C6〜C14アリール基」とは、炭素数6乃至14の芳香族炭化水素基を意味し、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、インデニル、アズレニル、フルオレニル又はフェナントリル基等である。本発明の「C6〜C14アリール基」は、好適には「C6〜C10アリール基」である。
「C6〜C10アリール基」とは、炭素数6乃至10の芳香族炭化水素基を意味し、例えば、フェニル基、ナフチル基又はアズレニル基であり、より好適には、フェニル基である。
本発明の、「置換基を有してもよいC1〜C6アルキルカルバモイル基」、「置換基を有してもよいC1〜C6アルキルオキシカルボニル基」又は「置換基を有してもよいC6〜C14アリール基」における置換基は、水酸基、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキルオキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基であり、1以上置換されてもよい。「C1〜C6アルキル基」、「C1〜C6アルキルオキシ基」、「ハロゲン原子」とは、前記と同じものを意味する。
その他、ここに定義のない基については、通常の定義に従う。
本発明の一般式(1)において、環Aとしては、シクロプロピル基及びピリジン−3−イル基が好ましい。
本発明の一般式(1)において、Bとしては、メチレン基が好ましい。
本発明の一般式(1)において好適な様態の一としては、R7が、C1〜C6アルキルカルバモイル基を示し、R6が、水素原子を示すときが好ましく、R7がメチルカルバモイル基を示し、R6が、水素原子を示すときがより好ましい。
本発明の一般式(1)において、R1としては、水素原子が好ましい。
本発明の一般式(1)において、R3としては、C1〜C6アルキルオキシ基が好ましく、C1〜C4アルキルオキシ基がより好ましく、メチルオキシ基が特に好ましい。
本発明の一般式(1)において、R2としては、水素原子又はハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
本発明の一般式(1)において、R4及びR5としては、水素原子又はC1〜C6アルキルオキシ基が好ましい。C1〜C6アルキルオキシ基としては、C1〜C4アルキルオキシ基が好ましく、メチルオキシ基がより好ましい。
本発明の一般式(1)において、R6としては、4−メチルオキシフェニル基が好ましい。
本発明の一般式(1)において、R7としては、ヒドロキシメチルカルバモイル基が好ましい。
本発明の特に好ましい様態としては、2−シクロプロピルメチル−6−(2,4−ジメチルオキシ−5−フルオロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)カルバモイル−2H−ピリダジン−3−オン、2−シクロプロピルメチル−6−(3,4−ジメチルオキシ−5−フルオロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)カルバモイル−2H−ピリダジン−3−オン及び5,6−ビス(4−メチルオキシフェニル)−2−(ピリジン−3−イルメチル)−2H−ピリダジン−3−オンである。
本発明の一般式(1)で表されるピリダジノン誘導体は、公知の方法(特開平7−69894、新編へテロ環化合物 基礎編 山中宏著 講談社等に記載の方法)に従い製造することができる。
[1]R6がC1〜C6アルキルカルバモイル基又はC1〜C6アルキルオキシカルボニル基を示す時、ピリダジノン誘導体(1)は以下の通り製造することができる。すなわち、マロン酸誘導体(2)と、アセトフェノン誘導体(3)とを反応させることにより、ベンゾイル誘導体(4)を製造する。次いで、ベンゾイル誘導体(4)とヒドラジン類とを公知の方法で反応させることにより、ピリダジノン誘導体(6)を製造する。ピリダジノン誘導体(6)の側鎖部分を公知の方法で変換することにより、ピリダジノン誘導体(1)を製造することができる。すなわち、エステル基よりアルキルカルバモイル基又はアルキルオキシカルボニル基へ変換することができる。原料となるマロン酸誘導体(2)は公知の方法(WO/1999/25697等に記載の方法)に従い製造することができる。
[式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,A及びBは、前記と同じものを示し、Raはアルキル基を示す。]
[2]R6が、アリール基を示す時、ピリダジノン誘導体は以下の通り製造することができる。すなわち、[1]同様、ケトエステル誘導体(7)とアセトフェノン誘導体(3)とを公知の方法に従い反応させ、ベンゾイル誘導体(8)を製造する。ベンゾイル誘導体(8)とヒドラジン類とを反応させることにより、ピリダジノン誘導体(1)を製造することができる。
[式中、R1,R2,R3,R4,R5,R7,A及びBは、前記と同じものを示し、Raは、アルキル基を示す。]
本発明の一般式(1)で表されるピリダジノン誘導体は、上記方法によって得られるが、さらに必要に応じて再結晶法、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段を用いて精製することができる。また必要に応じて、常法によって所望の溶媒和物にすることもできる。
また、一般式(1)で表されるピリダジノン誘導体は、水和物に代表される任意の溶媒和物を形成することができ、これらの溶媒和物も本発明に包含される。
また、一般式(1)で表されるピリダジノン誘導体は、塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸、及びマレイン酸塩等の有機酸塩に代表される任意の塩を形成することができ、これらの塩も本発明に包含される。
さらに、一般式(1)で表されるピリダジノン誘導体に光学異性体や幾何異性体が存在する場合は、これらすべての異性体が本発明に包含される。
本発明の医薬組成物は、一般式(1)で表されるピリダジノン誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有するものであって、単独で用いてよいが、通常は薬学的に許容される担体、添加物等を配合して使用される。医薬組成物の投与形態は、特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択できる。斯かる剤形としては、例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、注射剤等を挙げることができる。
これらの製剤は、その剤形に応じて製剤学上使用される賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤等の医薬品添加物と適宜混合、希釈又は溶解し、常法に従い製造することができる。
例えば、散剤の場合は、必須成分のほかに、必要に応じて適当な賦形剤、滑沢剤等を加えよく混和して調製すればよい。錠剤の場合は、必要に応じて適当な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等を加え、常法に従い打錠して調製すればよい。また錠剤は必要に応じてコーティングを施し、フィルムコート錠、糖衣錠等にすることができる。
また、注射剤の場合は、液剤(無菌水又は非水溶液)、乳剤及び懸濁剤の形態とすることができる。これらに用いられる非水担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルとしては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、オレイン酸エチル等の注射可能な有機酸エステルが挙げられる。また、該組成物には防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤等の補助剤を適宜配合することができる。
本発明の一般式(1)で表される化合物の投与量は年齢、体重、症状、投与形態及び投与回数等によって異なるが、通常は成人に対して1日1〜1000mgを、1回又は数回に分けて経口投与又は非経口投与するのが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
血液透析患者の血漿を用いてのAGE形成阻害作用
血液透析患者の血漿中AGE(指標:ペントシジン)の測定はMiyataらの報告に従って実施した(Miyata, T. et al: J Am Soc Nephrol, 13, 2478-2487, 2002)。血液透析患者の血漿0.9mLをアミノグアニジン又は各被検薬物の存在下(添加量は0.1mL)で、37℃で7日間反応した。アミノグアニジン及び各被検薬物の最終濃度は5.0mMとした。なお、アミノグアニジン又は各被検薬物はジメチルスルフォキシド(DMSO)に溶解して使用した。DMSOの最終濃度は反応溶液1mL中、反応時における酸化反応に影響しない10%とした。7日間の反応後に、アミノグアニジン又は各被検薬物を添加した血漿中のペントシジンの濃度を以下に示す方法で測定した。
血液透析患者の血漿中AGE(指標:ペントシジン)の測定はMiyataらの報告に従って実施した(Miyata, T. et al: J Am Soc Nephrol, 13, 2478-2487, 2002)。血液透析患者の血漿0.9mLをアミノグアニジン又は各被検薬物の存在下(添加量は0.1mL)で、37℃で7日間反応した。アミノグアニジン及び各被検薬物の最終濃度は5.0mMとした。なお、アミノグアニジン又は各被検薬物はジメチルスルフォキシド(DMSO)に溶解して使用した。DMSOの最終濃度は反応溶液1mL中、反応時における酸化反応に影響しない10%とした。7日間の反応後に、アミノグアニジン又は各被検薬物を添加した血漿中のペントシジンの濃度を以下に示す方法で測定した。
反応溶液0.05mLに等量の10%トリクロロ酢酸(以下、「TCA」と称する)を加え、5000×g、5分間遠心した。上清を除去し、沈殿物を5%TCA0.3mLで洗い、その後凍結乾燥し乾燥させた。次いで、窒素条件下で110℃、16時間6N塩酸0.1mLを添加し、乾燥物を加水分解した。引き続き、5N水酸化ナトリウム0.1mLと0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4)0.2mLを添加し中和した。中和溶液は、口径0.5μmのフイルターを通し、リン酸緩衝液で希釈し、ペントシジン測定用サンプルを調整した。ペントシジン濃度の測定はMiyataらの方法に従って実施した。
表1に、各被検薬物によるペントシジン形成阻害強度を、アミノグアニジンによる形成阻害強度を1.0とした場合における相対値として表した(形成阻害強度はコントロール群を対照においた。コントロール群にはDMSOのみ添加した)。
相対値=(被検薬物の形成阻害率)÷(アミノグアニジンの形成阻害率)
相対値=(被検薬物の形成阻害率)÷(アミノグアニジンの形成阻害率)
アミノグアニジン及び各被検薬物の反応中における最終濃度は5.0mMに固定した。
各被検薬物の相対値は、いずれもアミノグアニジンによるペントシジン形成阻害強度と同等以上であった。以上から、一般式(1)で表される本発明の化合物は、アミノグアニジンよりも強力なAGE形成阻害作用を有し、さらに強力な治療剤としての可能性が本実験結果より明らかとなった。
Claims (4)
- 下記一般式(1)
- 2−シクロプロピルメチル−6−(2,4−ジメチルオキシ−5−フルオロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)カルバモイル−2H−ピリダジン−3−オン、2−シクロプロピルメチル−6−(3,4−ジメチルオキシ−5−フルオロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)カルバモイル−2H−ピリダジン−3−オン及び5,6−ビス(4−メチルオキシフェニル)−2−(ピリジン−3−イルメチル)−2H−ピリダジン−3−オンからなる群から選ばれるピリダジノン誘導体である請求項1記載のAGE形成阻害剤。
- 請求項1又は2記載のAGE形成阻害剤を有効成分とする糸球体疾患の予防及び/又は治療剤。
- 糸球体疾患が糖尿病性腎症である請求項3記載の糸球体疾患の予防及び/又は治療剤。
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