JP2009136156A - 付着性細胞培養容器及び付着性細胞の培養方法 - Google Patents

付着性細胞培養容器及び付着性細胞の培養方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
本発明は、付着性細胞の効率のよい大量培養を行うことができる細胞培養容器及び付着性細胞の培養方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、付着性細胞を培養するための細胞培養容器であって、合成樹脂シートにより構成されてなるチャンバーと、導入出ポートと、複数の培養室、及び、前記チャンバーの内部を複数の培養室に仕切る弱溶着部を備え、前記複数の培養室のそれぞれの内壁には細胞付着性官能基を有する培養領域を設けてなる細胞培養容器及び付着性細胞の培養方法を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、付着性細胞培養容器及び付着性細胞の培養方法に関する。
従来より、哺乳動物の付着性細胞や懸濁細胞を生体外で培養する方法が知られている。このような培養は、例えばガラス製や合成樹脂製のフラスコ又はシャーレに代表される培養容器内で行われる。一般に、このような培養容器は容量の小さいものが多く、大量培養には不向きであった。また、培地を交換する際に雑菌が混入しやすいという問題があった。
係る課題を解決するために、浮遊性細胞を培養する細胞培養容器として、バッグ形状の細胞培養容器が開示されている(特許文献1)。
さらに、付着性細胞に適応すべく、バッグ形状の細胞培養容器には、バッグの内壁をコナ放電で処理を行い、付着性細胞との親和性を向上したものがある(特許文献2及び3)。
しかしながら、係るバッグ形状の細胞培養容器にて、付着性細胞を培養する場合、バッグ内壁の単位面積(cm)当たりの細胞濃度が低いために思うように細胞が増殖しないことがある。バッグ内壁の面積を狭くすることにより、解決はできるものの、大量培養を行うというバッグ形状の細胞培養容器における前提が否定されることは言うまでもない。
特開平3−65177号公報 特開平3−160984号公報 特開平6−98756号公報
本発明は、付着性細胞の効率のよい大量培養を行うことができる細胞培養容器、その製造方法及び付着性細胞の培養方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、培養容器における培養面積を可変できる細胞培養容器を開発し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
[1] 付着性細胞を培養するための細胞培養容器であって、
合成樹脂シートにより構成されてなるチャンバーと、導入出ポート、及び、前記チャンバーの内部を複数の培養室に仕切る弱溶着部を備え、
前記複数の培養室のそれぞれの内壁には細胞付着性官能基を有する培養領域を設けてなる細胞培養容器、
[2] 前記複数の培養室のそれぞれの内壁を構成する合成樹脂が、ポリオレフィン系重合体である[1]に記載の細胞培養容器、
[3] 前記付着性細胞接着領域が、前記複数の培養室のそれぞれの内壁をプラズマ処理することにより形成した領域である[1]に記載の細胞培養容器、
[4] 前記プラズマ処理が、酸素又は窒素雰囲気下で処理されてなる[3]に記載の細胞培養容器、
[5] 前記複数の培養室の少なくとも1つの培養室に、細胞培養培地が充填されてなる[1]に記載の細胞培養容器、
[6] 合成樹脂シートにより構成されてなるチャンバーと、導入出ポート、及び、前記チャンバーの内部を複数の培養室に仕切る弱溶着部を備え、前記複数の培養室のそれぞれの内壁には細胞付着性官能基を有する培養領域を設けてなる細胞培養容器を用いた付着性細胞の培養方法であって、下記(i)〜(iv)の工程を含む付着性細胞の培養方法:
(i) 導入出ポートから付着性細胞を複数の培養室のうち少なくとも1の培養室に導入する工程、
(ii) 付着性細胞が導入された培養室にて、当該付着性細胞を培養室の内壁に設けてなる培養領域に付着させた後、培養する工程、
(iii) 付着性細胞の培養を行った培養室と、当該培養室に隣接する培養室とを仕切る弱溶着部を開通する工程、
(iv) 前記付着性細胞の培養を再開する工程。
及び、[7] (iv) 前記付着性細胞の培養を再開する工程が、上記工程(ii)で培養した付着性細胞を剥離した後に実施することを特徴とする[6]に記載の付着性細胞の培養方法に関する。
本発明の細胞培養容器及び付着性細胞の培養方法は、容易に付着性細胞の大量培養を提供することができる。
以下、本発明を図面を用いながら説明する。図1は、本発明の細胞培養容器の外観図である。本発明の細胞培養容器は、少なくとも合成樹脂シートにより構成されてなるチャンバー1と、導入出ポート21,22、及び、前記チャンバー1の内部を複数の培養室41,42に仕切る弱溶着部3を備える。
本発明に細胞培養容器は、2つ折りにした1枚の合成樹脂シート又は2枚の合成樹脂シートを重ね合わせた状態で、周縁を強溶着することにより、チャンバー1と、強溶着により形成した周縁部5を形成する。このような容器の形状は、いわゆるバッグ形状と称するものである。つまり、チャンバーとは、本発明の細胞培養容器において、付着性細胞及び細胞培養液を収容する空間をいう。
本発明において、強溶着とは、人的な外力により2枚の合成樹脂シートが剥離しない程度の溶着強度を有する溶着をいう。当該溶着強度は、例えば、3年保証する製品の場合、60℃、7週間保存後のT字剥離強度が20N/15mm以上の強度を維持することが好ましい。なお、60℃、7週間保存という条件は、放射線滅菌を施した製品を3年間品質保証する必要がある場合、規格(IAEA:TEC DOC−539(1990))を参考に、60℃×7日間=180日間相当として設定されたものである。
また、本発明において、付着性細胞とは、基材に付着して、該基材を足場として増殖することができる細胞をいい、浮遊性細胞と対立する概念である。付着性細胞としては、例えば、骨膜細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、上皮細胞及び繊維芽細胞などが挙げられる。
また、チャンバー1において対向する2枚の合成樹脂シートは、平面であっても、立体的に矩形されていてもよく、特に限定されるものではない。但し、チャンバー1内に収容した細胞培養液の泡立ちがおきにくい観点から、チャンバー1において対向する2枚の合成樹脂シートは平面、つまり、当該対向する2枚の合成樹脂シート間には空気が実質的に存在しない方が好ましい。
チャンバー1の容量は、取り扱う付着性細胞の培養系において、最終的に必要とされる付着性細胞全てが後述する細胞付着性官能基を有する培養領域に接着できる程度の内表面積を有するように、当業者が適宜設計できるため、特に限定されるものではない。付着性細胞培養の分野において、最終的に必要とされる付着性細胞数のほとんどが、約1×10〜1×1010個であることを考慮すると、例えば、当該チャンバー1の内壁全てが、後述する細胞付着性官能基を有する培養領域である場合、内表面積が約100〜200,000cm、且つ、その際の当該チャンバー1の容量は、バッグの厚みが約3〜20mm、好ましくは約5〜15mmであることが好ましい。従って、チャンバー1の内表面積が200cm(片面100cm)であれば、当該細胞培養容器の取り扱いが容易である観点から、約30〜80mlであることが好ましい。
合成樹脂は、バッグ形状に成形可能であり、可撓性を有する材料であればよく、主にポリオレフィン系重合体が挙げられる。ポリオレフィン系重合体は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(エチレン−ビニルアセテート)コポリマー、ポリ(エチレン−エチルアクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン−メタアクリレート)コポリマー、ポリ(プロピレン−α−オレフィン)コポリマー、低密度ポリエチレンとポリプロピレンを含有する組成物、低密度ポリエチレンとポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマーを含有する組成物及び環状ポリオレフィン系重合体が挙げられる。特に、合成樹脂は、可撓性を有する材料ある一方、本発明の細胞培養容器を用いて付着性細胞の培養するにあたって、当該細胞培養容器への物理的な衝撃等により、後述する細胞付着性官能基を有する培養領域に接着した付着性細胞が剥離しない程度の剛性も有するものであることが好ましい。具体的には、そのようなポリオレフィン系重合体としては、ポリ(プロピレン−α−オレフィン)コポリマー、低密度ポリエチレンとポリプロピレンを含有する組成物、低密度ポリエチレンとポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマーを含有する組成物及び環状ポリオレフィン系重合体が挙げられる。さらに、後述する弱溶着部3を形成するにあたって、別途フィルムを用意する必要がないことから、低密度ポリエチレンとポリプロピレンを含有する組成物及び低密度ポリエチレンとポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマーを含有する組成物が最も好ましい。
低密度ポリエチレンとポリプロピレンを含有する組成物及び低密度ポリエチレンとポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマーを含有する組成物は、本発明の細胞培養容器としての物理的強度が十分であり、かつ当該組成物自体が後述する弱溶着部を形成することができる材料である。本発明では、この組成物を、便宜上、「弱溶着用組成物」と称する。
弱溶着用組成物における、低密度ポリエチレンとポリプロピレン(又はポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマー)の混合方法は、当業者により適宜実施可能であるため、特に限定されるものではない。例えば、その混合方法の一例として、樹脂ペレットをドライブレンドする方法や、2軸押出機を用いて溶融ブレンドする方法が挙げられる。また、弱溶着用組成物における、低密度ポリエチレンとポリプロピレン(又はポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマー)の重量混合比率は、合成樹脂シート同士が溶着した後述の弱溶着部3の溶着強度が、後述する弱溶着の条件を達成できる観点から、80:20〜20:80であり、好ましくは75:25〜25:75であり、より好ましくは70:30〜30:70である。
本発明において、上記低密度ポリエチレンとは、密度が0.900〜 0.930のポリエチレンをいう。低密度ポリエチレンの市販品としては、例えば、東ソー製の「ペトロセン(商品名)」、日本ポリエチレン製の「ノバテック(商品名)」、住友化学製の「エクセレン(商品名)」、宇部丸善ポリエチレン製の「UBEポリエチレン(商品名)」、プライムポリマー製の「ミラソン(商品名)」などが挙げられる。
一方、本発明において、上記ポリ(プロピレン−α−オレフィン)コポリマーとは、ポリプロピレンと、炭素数2または4〜8のα−オレフィンとの共重合体をいう。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン及び1−オクテンが挙げられる。ポリ(プロピレン−α−オレフィン)コポリマーの市販品としては、例えば、日本ポリエチレン製「ノバテックPP(商品名)」、「ウィンテック(商品名)」、住友化学製「エクセレン(商品名)」、サンアロマー製及びプライムポリマー製ポリプロピレンなどが挙げられる。
そして、本発明の合成樹脂シートとして、上記弱溶着用組成物を用いる場合、上記強溶着を達成するためには、例えば、150〜200℃、1〜3秒、圧力0.2〜0.5MPaの条件にて溶着を行う必要がある。
また、合成樹脂シートとして環状ポリオレフィンを使用する態様についても説明する。本発明において、環状ポリオレフィン系重合体とは、分子内に脂環式炭化水素基(環状オレフィンモノマーユニット)を含む重合体の総称をいい、非晶質かつ透明性の高い重合体をいう。環状ポリオレフィン系重合体は、主に付加重合体及び開環重合体が挙げられる。ここで、環状ポリオレフィン系重合体は、オリゴマーの溶出量が少ない観点から開環重合体であることが好ましく、さらに水素付加された開環共重合体が好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
環状ポリオレフィン系重合体の重量平均分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるため特に限定されるものではないが、成形体の物理的強度が高く、かつ成形加工性がよい観点から、5,000〜500,000、好ましくは8,000〜250,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲である。本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー測定(PEG換算)により算定されたものとする。
上記脂環式炭化水素基(環状オレフィンモノマーユニット)は、分子内に脂環式構造を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられる。特に、物理的強度及び耐熱性が高い観点から、シクロアルカン構造が好ましい。脂環構造は主鎖又は側鎖のいずれかに存在すればよいが、物理的強度及び耐熱性が高い観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は、物理的強度及び耐熱性が高く、かつフィルム成形加工性がよい観点から、約4〜30個、好ましくは約5〜20個、より好ましくは約5〜15個の範囲である。脂環式炭化水素基を有する化合物(環状オレフィンモノマー)は、シクロペンタジエン類又はその熱分解中間体のシクロペンタジエンと、オレフィン類とをDiels-Alder反応により縮合することより合成することができる(化1)。
Figure 2009136156
このような脂環式炭化水素化合物(環状オレフィンモノマー)は、例えば、ビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン系化合物(ノルボルネン、化2)、トリシクロ[4,3,0,12.5]−3−デセン系化合物(ジシクロペンタジエン、化3)、テトラシクロ[4,4,0,12.5,17.10]−3−ドデセン系化合物(化4)、ヘキサシクロ[6,6,1,13.6,110.13,02.7,09.14]−4−ヘプタデセン系化合物(化5)、及び、ペンタシクロ[6,6,1,13.6,02.7,09.14]−4−ヘキサデセン系化合物(化6)などが挙げられる。
Figure 2009136156
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Figure 2009136156
Figure 2009136156
上記「〜系化合物」とは、「〜」に記載された化合物を基本とし、その誘導体を含む概念をいう。例えば、ビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン系化合物は、ビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化2)の他に、6−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化7)、5,6−ジメチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化8)、1−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化9)、6−エチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化10)、6−n−ブチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化11)、6−イソブチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化12)、及び、7−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化13)などが挙げられる。
Figure 2009136156
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Figure 2009136156
Figure 2009136156
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Figure 2009136156
Figure 2009136156
一方、上記付加重合体とは、α−オレフィンモノマーと環状オレフィンモノマーとの付加重合体をいい、環状オレフィンモノマーの橋かけ構造は維持された重合体をいう。付加重合は、主に遷移金属/アルキル金属化合物からなるチグラー触媒、又は、遷移金属錯体/アルミ系助触媒からなるメタロセン触媒を用いて重合されたものが挙げられる。付加重合体の一般式を以下に示す(化14)。
Figure 2009136156
上記付加重合体に使用するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン及び5−ビニル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。尚、ここでいうα−オレフィンは、上記弱溶着用組成物において使用できるα−オレフィンと異なることを付記しておく。
これら環状ポリオレフィン系付加重合体の市販品としては、例えば、三井化学社のアベル(登録商標)及びティコナ社のTopas(登録商標)などが挙げられる。
上記開環重合体とは、環状オレフィンモノマーの二重結合が開環し、環状オレフィンモノマーの橋かけ構造が開裂した重合体をいう。開環重合は、主にメタシス重合触媒を用いて重合されたものが挙げられる。開環重合体の一般式を以下に示す(化15)。
Figure 2009136156
また、得られた開環重合体は、酸化安定性を向上させる観点から、二重結合に水素付加したものが好ましい。水素付加は、一般的に上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加しより達成することができる。開環重合における水素付加の一般式を以下に示す(化16)。
Figure 2009136156
これら環状ポリオレフィン系開環重合体の市販品としては、例えば、日本ゼオン社のゼオネックス(登録商標)及びゼオノア(登録商標)、並びに、JSR社のアートン(登録商標)などが挙げられる。
また、以上に説明した環状ポリオレフィン系重合体は、共重合体であってもよい。共重合体中における環状ポリオレフィンモノマーと共重合を行うモノマーとの割合は、共重合体の物性などにより当業者が適宜設定できるため特に限定されるものではないが、例えば、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5である。
また、合成樹脂シートは、単層のシートであってもよいが、他の合成樹脂と積層したシートであってもよい。例えば、本発明の合成樹脂シートが、環状ポリオレフィン系重合体を基本とする場合、合成樹脂シートのバリをなくすことや、形状を維持できるように他の合成樹脂と積層することが考えられる。合成樹脂シートのバリをなくす観点から、環状ポリオレフィン系樹脂と積層できる合成樹脂としては、環状ポリオレフィン系重合体と相溶性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリ酢酸エチル、ポリビニルアルコール及びポリ−1,2−ジクロロエタンなどが挙げられる。さらに、形状を維持できる観点から、その外層にポリエチレンテレフタレート又はポリアミドを積層することが挙げられる。
以上のことから、本発明の合成樹脂シートにおいて、環状ポリオレフィン系重合体を基本とする場合は、材料のコスト並びに製造コストが安価であり、かつ成形加工性がよい観点から、内層が環状ポリオレフィン系重合体、中間層にポリエチレン、外層にポリエチレンテレフタレートの3層構造であることが最も好ましい。
そして、本発明の合成樹脂シートとして、上記3層構造のものを用いる場合、上記強溶着を達成するためには、例えば、150〜200℃、1〜3秒、圧力0.2〜0.5MPaの条件にて溶着を行う必要がある。
次に、本発明の細胞培養容器は、導入出ポート21,22を備える。導入出ポートは、細胞培養容器外に存在する付着性細胞を、チャンバー1内、当該チャンバー1が後述する弱溶着部により仕切られている場合は、複数の培養室のうち少なくとも1の培養室(主に、図1の態様では、符号41が付された培養室)に導入及び導出するためのポートをいう。当該導入出ポート21,22の材料は、容器のポートとして成形可能であって、かつ上記合成樹脂シートの材料と溶着することができる材料であれば、特に限定されるものではない。つまり、合成樹脂シートが上記弱溶着用組成物である場合は、当該ポートの材料も上記弱溶着用組成物を用いることができる。当然のごとく同種の材料であるため、その溶着性は最も高いことは言うまでもない。また、当該組成物を上記環状ポリオレフィン系重合体とも溶着性が高いため、合成樹脂シートの材料としてポリオレフィン系重合体が採用された場合でも、有効に用いることができる。そして、当該ポートは、例えば、射出成形、圧縮成形及び押出成形等により製造することができる。いずれの製造方法であっても、安価に製造することができるため、本発明これら製造方法に限定されるものではない。また、導入出ポート21,22は、1つだけではなく、2つ以上設けてもよい。
さらに、本発明の細胞培養容器は、上記チャンバー1を複数の培養室41,42に仕切る弱溶着部3を備える。本発明における弱溶着部とは、弱溶着により上記チャンバーを複数の培養室に仕切る部分をいう。この弱溶着部3の形成により、チャンバー1は、複数の培養室に仕切られる。図1の場合は、2つの培養室に仕切られる。培養室の容量及びその数は、主にチャンバー1の容量に依存するため、特に限定されるものではない。例えば、2つの培養室からなる内表面積360cm、その際の容量100mlのチャンバー1を用いた場合、当該培養室の内表面積は36〜180cm、またその際の容量は約5〜50mlと設定することができる。また、チャンバー1における弱溶着部の位置及び培養室の配置についても、特に限定されるものではないが、後述する付着性細胞の培養において、弱溶着部の開通を容易とする観点から、図1に示すように1列かつ直列の配置であることが好ましい。
本発明において、弱溶着とは、人的な外力により溶着した2枚の合成樹脂シート同士が剥離可能な程度の溶着強度を有する溶着をいう。当該溶着強度は、例えば、3年保証する製品の場合、60℃、7週間保存後のT字剥離強度が約0.5〜3N/15mmの強度を維持することが好ましい。なお、60℃、7週間保存という条件は、上記強溶着の定義と同様に、放射線滅菌を施した製品を3年間品質保証する必要がある場合、規格(IAEA:TEC DOC−539(1990))を参考に、60℃×7日間=180日間相当として設定されたものである。
ここで弱溶着部3の形成においては、合成樹脂シートの材料が弱溶着部3形成可能か否かにより、別途弱溶着部形成用フィルムを用意するか否かを判断する必要がある。
例えば、合成樹脂シートの材料として、上記弱溶着用組成物を選択する場合は、当該材料自体が弱溶着部3を形成することができるため、弱溶着部形成用フィルムは不要である。この場合は、上記の弱溶着の条件により合成樹脂シートを弱溶着することにより、弱溶着部3を形成することができる。
一方、例えば、合成樹脂シートの材料として、上記環状ポリオレフィン系重合体を選択する場合は、当該材料自体が弱溶着部3を形成できるため、弱溶着部形成用フィルムを必要とする。弱溶着部形成用フィルムの材料は、上記合成樹脂シートと溶着性が高く、かつ上記弱溶着部3を形成できる材料であれば特に限定されるものではない。例えば、合成樹脂シートの材料として環状ポリオレフィン系重合体を用いる場合は、当該環状ポリオレフィン系重合体と溶着可能である観点から、弱溶着部形成用フィルムの材料は、上記弱溶着用組成物を用いればよい。
上述の環状ポリオレフィン系重合体を用いるケースの場合、弱溶着部3を形成する具体的な方法としては、例えば、以下の(a)〜(c)の方法がある。これら(a)〜(c)の方法は、概していえば、弱溶着部形成用フィルムがチャンバー1を構成するように対向した合成樹脂シートの一方とは強溶着され、他方とは弱溶着する方法である。
(a) チャンバー1を構成するように対向した環状ポリオレフィン系重合体のシートの内、一方のシートの上に、弱溶着部形成用フィルムを強溶着した後、当該弱溶着部形成用フィルムを他方の環状ポリオレフィン系重合体のシートに弱溶着する。この時の弱溶着は、環状ポリオレフィン系重合体のシートの外側から行う。
(b) チャンバー1を構成する、対向する環状ポリオレフィン系重合体のシートの間に、弱溶着部形成用フィルムを挿入し、環状ポリオレフィン系重合体のシートの外側から溶着する。この時、2つの金型に温度差を設けて、一方の側では強溶着し、他方のフィルム側では弱溶着する。
(c) チャンバー1を構成するように対向した環状ポリオレフィン系重合体のシートの内、一方のシートの上に、弱溶着部形成用フィルムを弱溶着した後、当該弱溶着部形成用フィルムを他方の環状ポリオレフィン系重合体のシートに強溶着する。この時の強溶着は、環状ポリオレフィン系重合体のシートの外側から行う。
尚、上記(a)〜(c)の方法は、チャンバー1を形成する前に実施してもよいし、チャンバー1を形成する後に実施してもよい。後述する細胞培養培地Aが予め充填されてなる態様について考慮すれば、上記(a)〜(c)の方法は、チャンバー1を形成する後に実施することが好ましい。
そして、複数の培養室41,42のそれぞれの内壁には細胞付着性官能基を有する培養領域を設けてなる。複数の培養室41,42のそれぞれの内壁とは、上述の説明からも明らかのように、チャンバー1の内壁でもあり、合成樹脂シートにより構成される。ここで、細胞付着性官能基とは、細胞との親和性に優れた化学官能基という。細胞付着性官能基として、例えば、アミノ基、アミン基、水酸基、スルホン基、スルフェン基、スルフィン基、エーテル基、カルボキシル基及びカルボニル基などが挙げられる。これらの細胞付着性官能基のうち、細胞との付着性が高い観点から、アミノ基及びカルボキシル基が好ましい。
培養領域は、例えば、合成樹脂シートの少なくとも1面を細胞付着性官能基を有するように表面処理する方法、及び、合成樹脂シート自体が細胞付着性官能基を有するものを予め用意する方法が挙げられる。但し、上述したように、細胞培養容器を構成する材料は、主にポリオレフィン系重合体が好ましく、当該ポリオレフィン系重合体自体が細胞付着性官能基を有するものではない。このため、合成樹脂シートの少なくとも1面を細胞付着性官能基を有するように表面処理する方法が好ましい。
上記表面処理する方法としては、主にプラズマ処理及びイオンビーム処理があげられる。特に、製造コストが安価である観点から、上記表面処理する方法としては、プラズマ処理が好ましい。プラズマ処理とは、特定ガス雰囲気下で放電して、特定ガスの電離作用によって生じるプラズマを処理対象物に照射することにより、処理対象物の表面に、エッチング、親水性(濡れ性)の向上、及び、官能基の導入などの効果を付与する処理である。プラズマ処理における放電としては、一般に、コロナ放電(高圧低温プラズマ)、アーク放電(高圧高温プラズマ)、グロー放電(低圧低温プラズマ)及び大気圧プラズマが挙げられるが、製造コストが安価である観点から、大気圧プラズマが好ましい。プラズマ処理は、市販されるプラズマ処理装置を用いる又は特定の表面処理を行う業者に依頼して行うことができる。
大気圧プラズマは、大気圧下で行われるプラズマ処理であり、通常、約8.88×10〜10.85×10 MPaの圧力下で行われるプラズマ処理をいう。その他の条件は当業者が適宜設定できるために、特に限定されないが、例えば、温度が約25〜50℃、出力が約100〜500W、放電時間が約1〜10000秒の範囲で行われ、1〜10回繰り返し行われる。
プラズマ処理に用いられる上記特定ガスは、少なくとも酸素原子又は窒素原子を含む気体であれば、当業者により任意に選択されるため、特に限定されるものではない。このような特定ガスとして、例えば、酸素、窒素、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、亜酸化窒素、アンモニア、三フッ化窒素などの他、混合ガスとして、酸素/希ガス、窒素/希ガス、空気/希ガス、一酸化炭素/希ガス、亜酸化窒素/希ガス、及び三フッ化窒素/希ガスなどが挙げられる。また、酸素元素又は窒素元素を含む水、ヒドラジンなどの液体を気化させたものであってもよい。さらに、本発明の効果を損なわない限り、これらのガス以外に、水素、メタン、四フッ化炭素などが特定ガスに含まれていてもよい。また、上記希ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン及びキセノンが挙げられる。
プラズマ処理は、第1に、チャンバー1を形成する前の合成樹脂シートに施す方法が挙げられる。この際、チャンバー1を形成する前に合成樹脂シートにプラズマ処理を施す場合には、強溶着に影響を及ばさないようにする観点から、強溶着により形成される周縁部5及び弱溶着部3を形成する箇所をマスキングして施すことが好ましいが、本発明は必ずしもこれらの手法に限定されるものではない。
また、第2に、プラズマ処理は、チャンバー1を形成した後に施されてもよい。この場合、チャンバー1内にプラズマ処理に使用する対向する電極のうち1つを配置させてから処理を行う。
但し、効率よく細胞付着性官能基を導入し、培養領域を形成するためには、少なくとも上述の弱溶着部3を形成する前、つまり、チャンバー1を複数の培養室41,42に仕切る前に行う必要があることに注意しなければならない。表面処理を施したチャンバー1は、複数の培養室41,42に仕切られることにより、結果として、複数の培養室41,42のそれぞれの内壁には細胞付着性官能基を有する培養領域を設けられるのである。
尚、上記の表面処理による培養領域の有無は、当該培養領域と水との接触角として評価することができる。培養領域と水との接触角は、付着性細胞の付着性がよい観点から、80°以下が好ましく、より好ましくは45°以下である。
さらに、本発明の細胞培養容器は、複数の培養室41,42の少なくとも1つの培養室41,42に、細胞培養培地Aが予め充填されていることが好ましい。本発明の細胞培養容器を製造する際における培地の充填は、上述の弱溶着部3形成の前又は後に、導入出ポート21又は22より導入することになる。充填される細胞培養培地Aは、例えば、RPMI−1640培地、DMEM培地、MEM培地、α−MEM培地及びIMDM培地等が挙げられるが、これらの培地に限定されるものではない。
細胞培養培地Aの充填は、少なくともチャンバー1の形成の後でなければならないことは言うまでもない。さらに、培養領域を形成する方法が、上述の表面処理である場合は、細胞培養培地Aの充填は、当該表面処理の後でなければならないことも言うまでもない。そして、細胞培養培地Aが充填される培養室41,42は、当業者により適宜決定することができるため、特に限定されるものではない。例えば、細胞培養培地Aは、一部の培養室、例えば培養室41のみ充填されていてもよいし、全ての培養室41,42に充填されていてもよい。一部の培養室のみ細胞培養培地Aを充填するためには、細胞培養培地Aを充填する工程と、弱溶着部3を形成する工程を行う手順を適宜設定して行うことより実施される。
尚、弱溶着部3を形成により仕切られる各培養室の容積は、細胞培養培地Aが予め充填されているか否かで適宜設計することができる。主に、後述する弱溶着部を開通の作業を容易に行える観点から、培地が存在する培養室が広い容積であることが好ましいが、本発明は必ずしもこれら培養室の容積の設計に限定されるものではない。例えば、図1に示すように、細胞培養培地Aが充填されてなる培養室42は、培養室41と比較して容積が大きいことがわかる。逆に、細胞培養培地Aが予め充填されていない場合は、最初に付着性細胞の培養を行う培養室の容積を、他の培養室の容積よりも大きくすればよい。
本発明は、以上に説明した細胞培養容器を用いて、付着性細胞を培養する方法にも及ぶ。当該方法は、下記工程(i)〜(iv)を含むものである。
(i) 導入出ポートから付着性細胞を複数の培養室のうち少なくとも1つの培養室に導入する工程、
(ii) 付着性細胞が導入された培養室にて、当該付着性細胞を培養室の内壁に設けてなる培養領域に付着させた後、培養する工程、
(iii) 付着性細胞の培養を行った培養室と、当該培養室に隣接する培養室とを仕切る弱溶着部を開通する工程、
(iv) 前記付着性細胞の培養を再開する工程。
以下、工程(i)〜(v)についてそれぞれ説明する。
工程(i)
本工程は、導入出ポート(図1の態様では、導入ポート21)から付着性細胞を複数の培養室41,42のうち少なくとも1つの培養室に導入する工程である。付着性細胞は、通常、細胞懸濁液として取り扱われる。付着性細胞を懸濁する溶媒は、上述の細胞培養培地Aの他、例えば、リン酸緩衝液等も使用することができる。細胞懸濁液における付着性細胞の濃度は、培養領域の単位面積(cm)当たりの付着性細胞の数に応じて、当業者により適宜設定されるものではある。主に、培養領域の単位面積(cm)当たり、約1,000〜3,000cellsが目安とされる。付着性細胞が導入される培養室は、導入出ポート21により、外部と連通される位置にある培養室である。この培養室とは、図1の細胞培養容器にあっては、符号41が付された培養室が該当する。
工程(ii)
本工程は、付着性細胞が導入された培養室(図1の態様では、培養室41)にて、当該付着性細胞を培養室の内壁に設けてなる培養領域に付着させた後、培養する工程である。付着性細胞を培養室の内壁に設けてなる培養領域に付着させる方法は、上記工程(i)の後、静置しておけば、付着性細胞の特性により、容易に実施することができる。もちろん、静置は、培養領域が底面にあるようにするのが通常である。
また、付着性細胞の培養は、培養する付着性細胞の種類により、当業者が適宜設定できるため、特に限定されるものではない。したがって、付着性細胞の培養条件としては、特段の事情がない限りにおいては、37℃、5%CO環境下が通常である。
通常である。
工程(iii)
本工程は、付着性細胞の培養を行った培養室と、当該培養室に隣接する培養室(図1の態様では、培養室42)とを仕切る弱溶着部(図1の態様では、弱溶着部3)を開通する工程である。弱溶着部の開通は、細胞培養培地Aが充填された培養室(図1の態様では、培養室42)を圧縮することにより実施することができる。これにより、培養室に隣接する培養室とを仕切る弱溶着部3は開通される。尚、図1の細胞培養容器における培養室の数は2つであるが、例えば、培養室の数が3つ以上である場合は、所望の弱溶着部のみ開通させるように注意しなければならない。例えば、開通すべきではない弱溶着部を、クリップ等の狭持器具を用いて当該弱溶着部を狭持した後、弱溶着部を開通することで対応することができる。
尚、付着性細胞を一定面積の基材上で培養すると、当該付着性細胞は、一定面積の基材上を埋め付くすように増加することは言うまでもない。しかし、付着性細胞が一定面積の基材上を埋め付くした後に、基材の面積を増加させ、培養を再開しても、当該付着性細胞はもはや増殖しない。このような付着性細胞の培養における現象を、コンタクトインフィビションという。この現象について、本発明の付着性細胞の培養方法について照らし合わせると、本工程を実施するタイミングは、上記工程(ii)における培養において、増殖する付着性細胞が、培養室に存在する培養領域を埋め尽くす少し前が好ましいということになる。
尚、本発明においてはコンタクトインフィビションがおきたとしても、後述する方法により容易に付着性細胞のさらなる培養を再開することができる。
また、本発明の細胞培養容器が、付着性細胞の培養を行った培養室に隣接する培養室に、細胞培養培地Aが充填されてなる態様であれば、本工程の実施により、既に上記工程(ii)で使用した細胞培養培地Aが、付着性細胞の培養を行った培養室に隣接する培養室に充填された新鮮な細胞培養培地Aによって希釈され、後述する工程(iv)において効率のよい細胞培養環境を提供するという効果がある。
工程(iv)
本工程は、付着性細胞の培養を再開する工程である。その培養の条件等は、上記(ii)と相違はないため、詳細な説明は省略する。
尚、本工程は、上記工程(ii)で培養した付着性細胞を剥離した後に実施することが好ましい。これは、上記工程(iii)により付着性細胞の培養を行った培養室と、当該培養室に隣接する培養室が、弱溶着部を開通することにより、当該2つの培養室を大きな1つの培養室(図1の態様では、培養室41と培養室42)として取り扱うためであり、この大きな1つの培養室に満遍なく増殖した付着性細胞を培養領域に付着させることができる。この時の単位面積(cm)当たりの細胞個数は、付着性細胞の培養を効率よく行う個数となるのである。
この付着性細胞を剥離する工程は、例えば、トリプシン、コラゲナーゼ及びディスパーゼを添加する方法が挙げられる。これらの細胞剥離液は、付着性細胞の培養を再開するために大きな1つの培養室の培養領域に付着性細胞を付着させた後に、上記導入出ポート21又は22から導出することができる。
付着性細胞を剥離する工程は、少なくとも工程(iv)の前に実施することは言うまでもないが、工程(iii)の前後のどちらかで行うことに関しては特に限定されるものではない。本発明の細胞培養容器が、付着性細胞の培養を行った培養室に隣接する培養室に、細胞培養培地Aが予め充填されてなる態様であるならば、付着性細胞を剥離する方法は、工程(iii)の前に実施することが好ましい。何故ならば、上記工程(iii)の実施により、当該付着性細胞を剥離する工程で使用した細胞剥離液が、付着性細胞の培養を行った培養室に隣接する培養室に充填された新鮮な細胞培養培地Aによって希釈され、付着性細胞へのダメージを軽減することができるからである。但し、この細胞剥離液を希釈する培地は、付着性細胞の培養を再開するために大きな1つの培養室の培養領域に付着性細胞を付着させた後に、上記導入出ポート21又は22から導出するために、安価なものであることが1つの条件となる。
以下に図1に示す細胞培養容器の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
合成樹脂シート
190×120mm四方の弱溶着用組成物製の合成樹脂シート2枚を用意した。弱溶着用組成物における、低密度ポリエチレンは、密度0.922g/cm3の東ソー製(商品名:ペトロセン)のものを、ポリ(プロピレン−α−オレフィン)コポリマーは、融点135℃の日本ポリプロピレン製(商品名:ノバテックPP)のものを用いた。低密度ポリエチレンとポリ(プロピレン−α−オレフィン)コポリマーを、50対50の重量比率で混合した。合成樹脂シートは、この弱溶着用組成物を共押出法により成形することにより得た。
大気圧プラズマ処理
次に、この2枚の合成樹脂シートそれぞれの片面を、周縁部5及び弱溶着部3を形成する位置(図1における周縁部5及び弱用着部の位置)を10mm幅でマスキングを行い、大気圧プラズマ処理を行った。これにより、2枚の合成樹脂シートそれぞれの片面に細胞付着性官能基を有する培養領域を設けた。大気圧プラズマ処理は、約25℃、アルゴン68容量%、ヘリウム29容量%、窒素3容量%の混合ガス雰囲気下、大気圧で行った。また、高圧電極及び低圧電極は板状(335mm×250mm)とし、電極間距離を3mmに設定した。また、電源として周波数が5kHzの交流電源を用い、高圧電極と低圧電極との間に2.2kVの電圧を与えた。このプラズマ処理を30秒間行った。この大気圧プラズマ処理をした合成樹脂シートを、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光)装置(日本分光、商品名:FT/IR−420)及び元素分析装置(日本電子、JMS−6360LP)を用いて分析したところ、当該合成樹脂シートにアミノ基が導入されていることを確認した。
次に、これら2枚の合成樹脂シートのマスキングを剥がし、培養領域を設けた面を対向した状態で重ね合わせた後、導入出ポート21及び22を設ける箇所のみを残し、かつ図1に示す形状となるように、幅10mmで上述の強溶着の条件により強溶着した。そして、強溶着していない導入出ポートを設ける箇所における2枚の合成樹脂シート間に上記弱溶着用組成物製の導入出ポート21,22を配置した後、これら導入出ポート21,22を固定するように図1における縦島の箇所を強溶着した。これによりチャンバー1及び周縁部5を形成した。強溶着の条件は、温度190℃、3秒、圧力0.5MPaとした。
そして、チャンバー1において、上述の弱溶着の条件により弱溶着部3を形成した。これにより、2つの培養室41,42を形成した。強溶着の条件は、温度150℃、3秒、圧力0.5MPaとした。
本発明の細胞培養容器及び付着性細胞の培養方法は、容易に付着性細胞の大量培養を提供することができる。近年は、骨膜細胞及び上皮細胞を利用したビジネスも展開されており、本発明の細胞培養容器及び付着性細胞の培養方法は有用なものとなるであろう。
本発明の細胞培養容器の一実施態様を示す図である。
符号の説明
A 細胞培養培地
1 チャンバー
21,22 道入出ポート
3 弱溶着部
41,42 培養室
5 周縁部

Claims (7)

  1. 付着性細胞を培養するための細胞培養容器であって、
    合成樹脂シートにより構成されてなるチャンバーと、導入出ポート、及び、前記チャンバーの内部を複数の培養室に仕切る弱溶着部を備え、
    前記複数の培養室のそれぞれの内壁には細胞付着性官能基を有する培養領域を設けてなる細胞培養容器。
  2. 前記複数の培養室のそれぞれの内壁を構成する合成樹脂が、ポリオレフィン系重合体である請求項1に記載の細胞培養容器。
  3. 前記付着性細胞接着領域が、前記複数の培養室のそれぞれの内壁をプラズマ処理することにより形成した領域である請求項1に記載の細胞培養容器。
  4. 前記プラズマ処理が、酸素又は窒素雰囲気下で処理されてなる請求項3に記載の細胞培養容器。
  5. 前記複数の培養室の少なくとも1つの培養室に、細胞培養培地が充填されてなる請求項1に記載の細胞培養容器。
  6. 合成樹脂シートにより構成されてなるチャンバーと、導入出ポート、及び、前記チャンバーの内部を複数の培養室に仕切る弱溶着部を備え、前記複数の培養室のそれぞれの内壁には細胞付着性官能基を有する培養領域を設けてなる細胞培養容器を用いた付着性細胞の培養方法であって、下記(i)〜(iv)の工程を含む付着性細胞の培養方法:
    (i) 導入出ポートから付着性細胞を複数の培養室のうち少なくとも1つの培養室に導入する工程、
    (ii) 付着性細胞が導入された培養室にて、当該付着性細胞を培養室の内壁に設けてなる培養領域に付着させた後、培養する工程、
    (iii) 付着性細胞の培養を行った培養室と、当該培養室に隣接する培養室とを仕切る弱溶着部を開通する工程、
    (iv) 前記付着性細胞の培養を再開する工程。
  7. (iv) 前記付着性細胞の培養を再開する工程が、上記工程(ii)で培養した付着性細胞を剥離した後に実施することを特徴とする請求項6に記載の付着性細胞の培養方法。
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