JP2009133333A - 歯車伝動機構のスラスト支持構造 - Google Patents

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將志 吉野
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Abstract

【課題】入出力歯車間で動力伝達を行う中間歯車ユニットの伝動中における傾倒を防止し、且つ、その支承軸受に予圧式の軸受を使用する必要がないスラスト支持構造を提供する。
【解決手段】入力歯車12から入力側歯車14への回転は中間軸16を介して出力側歯車15に伝達され、これから更に出力歯車13に達する。歯車12, 14が伝動中に発生するスラストの向きα1と、歯車13, 15が伝動中に発生するスラストの向きα3とが同じ向きになるよう、はす歯の傾斜方向を決定する。α1,α3は、ギヤユニット10に相互逆向きの回転モーメントβ1,β3を付与して、ギヤユニット10を傾倒させることがなく、この傾倒による噛み合い不良を防止してギヤノイズの悪化を回避する。大きなスラストα1+α3は、スラストベアリング24で受け止めるため、軸受21,22に及ばず、これら軸受21,22を、予圧を付与する必要がない円筒ころ軸受となし得て、回転フリクションを軽減し得る。
【選択図】図3

Description

本発明は、歯車伝動機構の伝動中において噛合歯車間に発生するスラストを支持するスラスト支持構造の改良提案に関するものである。
歯車伝動機構のスラスト支持構造としては従来、例えば特許文献1に記載のごときものが知られている。
このスラスト支持構造は、入力歯車に噛合した入力側歯車および出力歯車に噛合した出力側歯車を共通な中間軸と共に回転するよう具え、これら入力側歯車、中間軸および出力側歯車よりなる中間歯車ユニットを介し入力歯車および出力歯車間での動力伝達を行うようにした歯車伝動機構に用いるもので、
上記入力歯車および入力側歯車より成る入力側歯車組が伝動中に発生するスラストの向きと、上記出力歯車および出力側歯車より成る出力側歯車組が伝動中に発生するスラストの向きとが逆向きになるよう、これら入力側歯車組および出力側歯車組の歯を構成したものである。
かかる歯車伝動機構のスラスト支持構造によれば、入力側歯車組が伝動中に発生するスラストと、出力側歯車組が伝動中に発生するスラストとが、相互に逆向きであることによって相互に打ち消し合うこととなり、中間歯車ユニットを固定部に回転自在に支承する軸受のスラスト方向軸受負荷を軽減させることができる。
実開昭59−160950号公報
しかし、上記した従来構造のように入力側歯車組によるスラストと出力側歯車組によるスラストとが相互逆向きとなるよう両歯車組の歯を構成した場合、以下に説明するような問題を生ずる。
中間歯車ユニットの軸長が短くて上記の問題が顕著になる前輪駆動車(FF車)用変速機としてのトランスアクスルに基づき説明する。
図1は、変速ユニットをVベルト式無段変速機で構成したトランスアクスルを展開して示し、図2は、当該トランスアクスルの変速ユニット(Vベルト式無段変速機)およびディファレンシャルギヤ装置間の伝動を司る歯車伝動機構を拡大して示す。
トランスアクスルは図1に示すように、主軸線O1、副軸線O2、中間軸線O3およびディファレンシャルギヤ軸線O4を、相互に平行に配して具える。
主軸線O1上にはプライマリプーリ(図示せず)を配置し、副軸線O2上にはセカンダリプーリ(図示せず)を配置し、
中間軸線O3上には、中間歯車ユニットとしてのリダクションギヤユニット10を配置し、
ディファレンシャルギヤ軸線O4上にはディファレンシャルギヤ装置(図示せず)を配置する。
そして主軸線O1上のプライマリプーリ(図示せず)と、副軸線O2上のセカンダリプーリ(図示せず)との間にVベルト(図示せず)を掛け渡す。
主軸線O1上のプライマリプーリ(図示せず)には、トルクコンバータ(図示せず)および前後進切り替え機構(図示せず)を順次介して、動力源であるエンジンからの回転を入力し、この回転を上記のVベルト(図示せず)により副軸線O2上のセカンダリプーリ(図示せず)に摩擦伝動する。
かかる伝動中、プライマリプーリのプーリV溝を溝幅低下方向(または溝幅増大方向)へ溝幅変更させると同時に、セカンダリプーリのプーリV溝を逆に溝幅増大方向(または溝幅低下方向)へ溝幅変更させることで、これらプライマリプーリおよびセカンダリプーリに対するVベルトの巻き掛け円弧径が連続的に変化し、
エンジン回転を無段変速下に、副軸線O2上のセカンダリプーリと共に回転する副軸11へ伝達することができる。
上記した変速後の回転を軸線O4上のディファレンシャルギヤ装置(図示せず)に伝達する歯車伝動機構は図2に明示するように、中間歯車ユニットであるリダクションギヤユニット10を主たる構成要素とし、これと、
副軸11上に結着されて、上記の変速後回転をリダクションギヤユニット10へ入力する入力歯車12と、
軸線O4上のディファレンシャルギヤ装置に結着されて、このディファレンシャルギヤ装置へ上記の変速後回転を出力する出力歯車(ファイナルドライブリングギヤ)13とで構成する。
中間歯車ユニットであるリダクションギヤユニット10は、入力歯車12に噛合する入力側歯車14と、出力歯車13に噛合する出力側歯車(ファイナルドライブピニオン)15と、これら入力側歯車14および出力側歯車15に共通な中間軸16とで構成する。
入力側歯車14は中間軸16に、セレーション嵌合などにより結着し、出力側歯車15は中間軸16に一体成形し、これらにより入力側歯車14および出力側歯車15を共通な中間軸16と共に一体回転し得るようになす。
しかして、入力側歯車14のピッチ円径は、出力側歯車15のピッチ円径よりも大径とする。
なお中間軸16は、その両端をそれぞれ円錐ころ軸受17,18により、固定部である変速機ケース19に対し回転自在に支持する。
上記の構成において、副軸11への変速後回転は入力歯車12から入力側歯車14に至り、この回転が中間軸16を介してそのまま出力側歯車15に伝達される。
出力側歯車15への回転は、これに噛合している出力歯車13を経て軸線O4上のディファレンシャルギヤ装置に至るが、
上記したごとく入力側歯車14のピッチ円径が出力側歯車15のピッチ円径よりも大きいことにより、ディファレンシャルギヤ装置へは回転が減速下に伝達される。
ディファレンシャルギヤ装置は、伝達された回転を左右駆動輪へ分配出力してこれら車輪を駆動する。
ところで、かかる歯車伝動機構に従来の前記スラスト支持構造を適用して、入力歯車12および入力側歯車14より成る入力側歯車組が伝動中に発生するスラストの向きと、出力歯車13および出力側歯車15より成る出力側歯車組が伝動中に発生するスラストの向きとが逆向きになるよう、これら入力側歯車組および出力側歯車組の歯を構成することにより、軸受17,18のスラスト方向軸受負荷を軽減しようとした場合、
入力側歯車組12,14によって入力側歯車12に作用するスラストの向きが図2に矢α1で示すようなものであると、出力側歯車組13,15によって出力側歯車15に作用するスラストの向きが同図に矢α2で示すようなものとなる。
入力側歯車12に作用するスラストα1は、リダクションギヤユニット10に対し図2に矢β1で示す方向の回転モーメントを付与し、リダクションギヤユニット10を、図2の右端が図の下方へ、また左端が図の上方へ変位する方向へ傾倒させる。
一方で出力側歯車15に作用するスラストα2は、リダクションギヤユニット10に対し図2に矢β2で示す方向の回転モーメントを付与し、リダクションギヤユニット10を、図2の右端が図の下方へ、また左端が図の上方へ変位する方向へ傾倒させる。
従って、入力側歯車12へのスラストα1によるリダクションギヤユニット10への回転モーメントβ1、および、出力側歯車15へのスラストα2によるリダクションギヤユニット10への回転モーメントβ2がともに、リダクションギヤユニット10を、図2の右端が図の下方へ、また左端が図の上方へ変位する方向へ傾倒させることとなり、
当該リダクションギヤユニット10の傾倒が大きくなって、歯車間の噛み合い不良によりギヤノイズが大きくなるという問題を生じる。
この問題は、入力側歯車組12,14が伝動中にα1と逆向きのスラストを発生するよう、また出力側歯車組13,15が伝動中にα2と逆向きのスラストを発生するよう、これら入力側歯車組および出力側歯車組の歯を構成した場合も、
リダクションギヤユニット10が上記と逆方向に大きく傾倒することから同様に生ずることは言うまでもない。
なお、図1,2のようなトランスアクスルのリダクションギヤユニット10に対して従来のスラスト支持構造を適用した場合、
当該リダクションギヤユニット10の軸長が極端に短いことから、上記傾倒による問題が特に顕著となり、その解決が急務である。
上記の問題を解決する手段としては、リダクションギヤユニット10の軸受17,18を図1,2に示す円錐ころ軸受のような予圧式軸受とし、
これら軸受に付与する予圧を大きくしてリダクションギヤユニット10の傾倒を抑制することが考えられ、実際にこの対策が多く用いられている。
しかし、前記ギヤノイズが問題とならなくなるまでリダクションギヤユニット10の傾倒を抑制しようとすると、円錐ころ軸受17,18の予圧を相当に大きくしなければならず、
リダクションギヤユニット10の回転フリクションが、当該大きな軸受予圧に起因して増大し、伝動効率の低下に繋がるという問題を生ずる。
かといって、円錐ころ軸受17,18の予圧を小さくしたのでは、リダクションギヤユニット10の傾倒を、ギヤノイズが問題とならなくなるよう抑制し得ず、予圧式軸受である円錐ころ軸受17,18を用いた意味がなくなる。
本発明は、中間歯車ユニット(リダクションギヤユニット10)の傾倒が生じないか、若しくは少なくとも軽減されて、上記したギヤノイズに関する問題を解消可能な歯車伝動機構のスラスト支持構造を提供し、
これにより、中間歯車ユニット(リダクションギヤユニット10)の支承軸受として予圧式軸受を用いる必要がなくなるようにし、上記した中間歯車ユニット(リダクションギヤユニット10)の回転フリクションに関する問題も生ずることのないようにすることを目的とする。
この目的のため、本発明による歯車伝動機構のスラスト支持構造は、請求項1に記載のごとくに構成する。
先ず、本発明の前提となる歯車伝動機構を説明するに、これは、
入力歯車に噛合した入力側歯車および出力歯車に噛合した出力側歯車を共通な中間軸と共に回転するよう具え、これら入力側歯車、中間軸および出力側歯車よりなる中間歯車ユニットを介し前記入力歯車および出力歯車間での動力伝達を行うようにしたものである。
本発明は、かかる型式の歯車伝動機構において、まず、
前記入力歯車および入力側歯車より成る入力側歯車組が前記伝動中に発生するスラストの向きと、前記出力歯車および出力側歯車より成る出力側歯車組が前記伝動中に発生するスラストの向きとが同じになるよう、これら入力側歯車組および出力側歯車組の歯を構成する。
本発明においては更に、前記入力側歯車組および出力側歯車が発生するスラストに抗して前記中間歯車ユニットを軸線方向に支持するスラスト支持手段を、該中間歯車ユニットおよび固定部間に介在させる。
かかる構成になる本発明のスラスト支持構造によれば、
入力歯車および入力側歯車より成る入力側歯車組が伝動中に発生するスラストの向きと、出力歯車および出力側歯車より成る出力側歯車組が伝動中に発生するスラストの向きとが同じになるよう、これら入力側歯車組および出力側歯車組の歯を構成するため、
上記両スラストに伴って、入力側歯車および出力側歯車を含む中間歯車ユニットに作用する回転モーメントが相互逆向きのものとなり、これら回転モーメントが相互に打ち消し合い、これら回転モーメントが中間歯車ユニットを傾倒させることがないか、若しくは、少なくともこの傾倒が緩和される。
よって、中間歯車ユニットの傾倒による歯車間噛合不良を少なくとも緩和することができ、この噛合不良に伴うギヤノイズの悪化に関する問題を解消することができる。
本発明においては更に、入力側歯車組および出力側歯車が発生するスラストに抗して中間歯車ユニットを軸線方向に支持するスラスト支持手段を、中間歯車ユニットおよび固定部間に介在させたため、
中間歯車ユニットの支承軸受に上記のスラストが及ばないこととなり、これにより中間歯車ユニットの支承軸受として円錐ころ軸受のような予圧式軸受を用いる必要がなく、円筒ころ軸受のような予圧を付与しない型式の軸受を用いて中間歯車ユニットを支承することができる。
従って、中間歯車ユニットの支承軸受が予圧を持たず、この予圧に起因して中間歯車ユニットが回転フリクションを増大されることもなく、回転フリクションの増大により伝動効率が低下するという問題も回避することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図3は、図1,2に示すトランスアクスルのリダクションギヤユニット10(中間歯車ユニット)に対して適用した、本発明の一実施例になる歯車伝動機構のスラスト支持構造で、図3では、図1,2におけると同様な部分を同一符号により示した。
本実施例においては、トランスアクスルの副軸線O2上における副軸11に達した無段変速後の回転をディファレンシャルギヤ装置(図示せず)に伝達する歯車伝動機構を、
中間軸線O3上に配置した中間歯車ユニットとしてのリダクションギヤユニット10と、
副軸11上に結着されて、上記無段変速後の回転をリダクションギヤユニット10へ入力する入力歯車12と、
ディファレンシャルギヤ装置(図示せず)に結着されて、このディファレンシャルギヤ装置へ上記の変速後回転を出力する出力歯車(ファイナルドライブリングギヤ)13とで構成する。
中間歯車ユニットであるリダクションギヤユニット10は、入力歯車12に噛合する入力側歯車14と、出力歯車13に噛合する出力側歯車(ファイナルドライブピニオン)15と、これら入力側歯車14および出力側歯車15に共通な中間軸16とで構成する。
入力側歯車14は中間軸16に、セレーション嵌合などにより結着し、出力側歯車15は中間軸16に一体成形し、これらにより入力側歯車14および出力側歯車15を共通な中間軸16と共に一体回転し得るようになす。
しかして、入力側歯車14のピッチ円径は、出力側歯車15のピッチ円径よりも大径とする。
なおリダクションギヤユニット10は、中間軸16の両端をそれぞれ円筒ころ軸受21,22により、変速機ケース19に対し回転自在に支持する。
リダクションギヤユニット10は更に、中間軸16の左端面および変速機ケース19間に介在させた機械式スラスト支持手段であるスラストベアリング23と、入力側歯車14の外周部近傍における右端面および変速機ケース19間に介在させた機械式スラスト支持手段であるスラストベアリング24との間に挟んで、変速機ケース19に対し軸線方向に位置決めする。
上記の構成において、副軸11への変速後回転は入力歯車12から入力側歯車14に至り、この回転が中間軸16を介してそのまま出力側歯車15に伝達される。
出力側歯車15への回転は、これに噛合している出力歯車13を経てディファレンシャルギヤ装置(図示せず)に至るが、
上記したごとく入力側歯車14のピッチ円径が出力側歯車15のピッチ円径よりも大きいことにより、ディファレンシャルギヤ装置へは回転が減速下に伝達される。
ところで本実施例においては特に、入力歯車12および入力側歯車14より成る入力側歯車組が伝動中に発生するスラストの向きと、出力歯車13および出力側歯車15より成る出力側歯車組が伝動中に発生するスラストの向きとが同じ向きになるよう、これら入力側歯車組および出力側歯車組におけるはす歯の傾斜方向を決定する。
入力側歯車組12,14によって入力側歯車12に作用するスラストの向きが図3に矢α1で示すようなものである場合、出力側歯車組13,15によって出力側歯車15に作用するスラストの向きが同図に矢α3で示すようなものとなるよう、入力側歯車組および出力側歯車組の歯を構成する。
勿論、入力側歯車組12,14によって入力側歯車12に作用するスラストの向きが図3に矢α1で示すとは逆の向きとなるよう、また、出力側歯車組13,15によって出力側歯車15に作用するスラストの向きが同図に矢α3で示すとは逆の向きとなるよう、入力側歯車組および出力側歯車組におけるはす歯の傾斜方向を決定してもよいのは言うまでもない。
入力側歯車12に作用するスラストα1は、リダクションギヤユニット10に対し図3に矢β1で示す方向の回転モーメントを付与し、リダクションギヤユニット10を、図3の右端が図の下方へ、また左端が図の上方へ変位する方向へ傾倒させようとする。
一方で出力側歯車15に作用するスラストα3は、リダクションギヤユニット10に対し図3に矢β3で示す方向の回転モーメントを付与し、リダクションギヤユニット10を、図3の右端が図の上方へ、また左端が図の下方へ変位する方向へ傾倒させようとする。
ところで、入力側歯車12へのスラストα1によるリダクションギヤユニット10への回転モーメントβ1、および、出力側歯車15へのスラストα3によるリダクションギヤユニット10への回転モーメントβ3が相互逆向きであり、一方の回転モーメントによるリダクションギヤユニット10の傾倒力と、他方の回転モーメントによるリダクションギヤユニット10の傾倒力とが相互に打ち消し合って、リダクションギヤユニット10の傾倒を防止、若しくは、少なくとも軽減することができる。
従って本実施例によれば、トランスアクスルにおけるリダクションギヤユニット10の軸長が極端に短くてその傾倒が顕著になるといえども、当該リダクションギヤユニット10の傾倒を少なくとも小さくし得て、リダクションギヤユニット10の傾倒による歯車間の噛み合い不良を少なくとも軽減することができ、これに伴うギヤノイズの悪化を回避することができる。
しかして本実施例では、入力側歯車12に作用するスラストα1と、出力側歯車15に作用するスラストα3とが同じ方向であるため、これらの和値に相当する大きなスラストがリダクションギヤユニット10に作用して、リダクションギヤユニット10を対応する大きな力で図3の右方向へ附勢する。
ところで本実施例においては、この附勢力を、入力側歯車14の外周部近傍における右端面および変速機ケース19間に介在させたスラストベアリング24(スラスト支持手段)で受け止めるため、
当該附勢力がリダクションギヤユニット10の回転支承軸受21,22に及ぶことはなく、これら軸受21,22を、予圧を付与する必要がある円錐ころ軸受に代えて、円筒ころ軸受のような予圧を付与する必要がない軸受となすことができる。
従って、リダクションギヤユニット10の回転支承軸受21,22が予圧を持たず、この予圧に起因してリダクションギヤユニット10が回転フリクションを増大されるということがなく、回転フリクションの増大により伝動効率が低下するという問題を回避することができる。
しかも本実施例では、当該作用効果のためのスラストベアリング24(スラスト支持手段)を入力側歯車14の外周部近傍に配置して、この入力側歯車14および変速機ケース19との間に介在させたため、
スラストベアリング24(スラスト支持手段)が大きな面積で上記の附勢力を受け止めることとなり、応力の低下によりスラストベアリング24(スラスト支持手段)の耐久性を向上させることができる。
なお、入力側歯車12に作用するスラストの向きが図3に矢α1で示すとは逆の向きとなるよう、また、出力側歯車15に作用するスラストの向きが同図に矢α3で示すとは逆の向きとなるよう、入力側歯車組および出力側歯車組におけるはす歯の傾斜方向を決定した場合も、
これらスラストα1,α2によるリダクションギヤユニット10への回転モーメントが、図3に矢β1,α3で示すとは逆方向のものとなって(相互逆向きのものとなって)相互に打ち消し合い、リダクションギヤユニット10の傾倒を防止、若しくは、少なくとも軽減することができる。
従ってこの場合も、リダクションギヤユニット10の傾倒による歯車間の噛み合い不良を生ずることがなく、これに伴うギヤノイズの悪化を回避することができる。
またこの時、上記スラストの和値に相当する大きなスラストがリダクションギヤユニット10に作用して、リダクションギヤユニット10を対応する大きな力で図3の左方向へ附勢するが、この附勢力を、中間軸16の左端面および変速機ケース19間に介在させたスラストベアリング23(スラスト支持手段)で受け止めるため、
当該附勢力がリダクションギヤユニット10の回転支承軸受21,22に及ぶことはなく、これら軸受21,22を、予圧を付与する必要がある円錐ころ軸受に代えて、円筒ころ軸受のような予圧を付与する必要がない軸受となすことができる。
従って、リダクションギヤユニット10の回転支承軸受21,22が予圧を持たず、この予圧に起因してリダクションギヤユニット10が回転フリクションを増大されるということがなく、回転フリクションの増大により伝動効率が低下するという問題を回避することができる。
図4は本発明の他の実施例を示し、本実施例は、弾性手段としてのバネ25によりリダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を受け止める弾支式スラスト支持手段を、図3の構成に付加して設けたものである。
バネ25は、円筒軸受21を中間軸16上に取着するローディングナット26と、変速機ケース19との間に介在させる。
本実施例においては、リダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を、スラストベアリング24と共働して、若しくはこれに代わって、弾支式スラスト支持手段を構成するバネ25により受け止めることから、
大きなスラスト(α1+α3)によるリダクションギヤユニット10への附勢力が軸受21,22に及ぶのを防止するという前記の作用効果を同様に達成することができる。
又、同時に軸受23,24にかかる附勢力を低減することができ、軸受23,24の耐久性を向上させることができる。
図5は本発明の更に他の実施例を示し、本実施例は、トランスアクスルの変速制御元圧であるライン圧を用いた油圧式のスラスト支持手段によりリダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を受け止めるようにしたものである。
これがため、円筒軸受21を中間軸16上に取着するのに用いたローディングナット26の外周を変速機ケース19に摺動自在に嵌合して、スラスト(α1+α3)方向に対面する受圧面を提供するローディングナット26および中間軸16の対応端面と、変速機ケース19との間に油圧室31を画成する。
ローディングナット26の外周と変速機ケース19との摺動嵌合部にシールリング32を介在させて油圧室31を外部に対し液密封止し、
変速機ケース19に形成した油路33を油圧室31に通じさせて、上記のライン圧を油圧室31内へ導くようにする。
なお油圧室31へのライン圧は、伝達トルクが大きいほど高くなるよう制御するのが好ましい。
本実施例においては、リダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を、スラストベアリング24と共働して、若しくはこれに代わって、油路33から油圧室31に供給されたライン圧により受け止めることから、
大きなスラスト(α1+α3)によるリダクションギヤユニット10への附勢力が軸受21,22に及ぶのを防止すると同時に軸受23,24にかかる附勢力を低減することができ、軸受23,24の耐久性を向上させることができるという前記の作用効果を同様に達成することができる。
なお油圧室31へのライン圧を上記のごとく、伝達トルクが大きいほど高くなるよう制御すれば、如何なる伝達トルクのもとでも上記の作用効果を確実に達成することができる。
しかも本実施例では、シールリング32の設置により上記の作用効果が確実に達成されるほか、トランスアクスルの変速制御元圧であるライン圧を用いるため、既存の圧力源および油路を流用して当該作用効果を達せすることができ、コスト上も大いに有利である。
図6は本発明の更に別の実施例を示し、本実施例は、上記した図5の実施例と同様な構成になるライン圧を用いた油圧式のスラスト支持手段によりリダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を受け止めるようにしたものである。
これがため、円筒軸受21を中間軸16上に取着するのに用いたローディングナット26の外周を変速機ケース19に摺動自在に嵌合して、スラスト(α1+α3)方向に対面する受圧面を提供するローディングナット26および中間軸16の対応端面と、変速機ケース19との間に油圧室31を画成し、変速機ケース19に形成した油路33を油圧室31に通じさせて、上記のライン圧を油圧室31内へ導くようにするが、
シールリング32を介在させるべき、ローディングナット26の外周と変速機ケース19との摺動嵌合部の直径を図5の実施例よりも大きくして、上記受圧面の面積を図5の実施例よりも大きくする。
本実施例においては、リダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を、スラストベアリング24と共働して、若しくはこれに代わって、油路33から油圧室31に供給されたライン圧により受け止めることから、
大きなスラスト(α1+α3)によるリダクションギヤユニット10への附勢力が軸受21,22に及ぶのを防止すると同時に軸受23,24にかかる附勢力を低減することができ、軸受23,24の耐久性を向上させることができるという前記の作用効果を同様に達成することができるが、上記受圧面積の拡大により低いライン圧のもとでも当該作用効果を確実に達成することができる。
図7は本発明の更に別の実施例を示し、本実施例は、上記した図6の実施例と同様な構成になるライン圧を用いた油圧式のスラスト支持手段によりリダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を受け止めるようにするが、
スラスト(α1+α3)方向に対面する受圧面を提供するローディングナット26および中間軸16の対応端面と、変速機ケース19との間に画成された油圧室31へライン圧を供給するための油路構造を図6とは異ならせる。
この油路構造は、ライン圧を図6の場合とは逆に、リダクションギヤユニット10のスラスト方向後方から油圧室31内へ供給するようになしたもので、
中間軸16を中空として、該中空孔16aの一端開口を油圧室31に通じさせ、変速機ケース19に形成した油路34の先端ノズル35をシールリング36による封止下で中空孔16aの他端開口に嵌合する。
本実施例においては、ライン圧が油路34の先端ノズル35から中間軸16の中空孔16aを経て供給され、リダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を、スラストベアリング24と共働して、若しくはこれに代わって、油圧室31に供給されたライン圧により受け止めることから、
大きなスラスト(α1+α3)によるリダクションギヤユニット10への附勢力が軸受21,22に及ぶのを防止するという前記の作用効果を同様に達成することができる。
ところで本実施例においては、ライン圧をリダクションギヤユニット10のスラスト方向後方から油圧室31内へ供給し得ることから、ライン圧をリダクションギヤユニット10のスラスト方向前方から油圧室31内へ供給することができない場合においても、油圧室31へのライン圧供給油路を成立させることができて設計の自由度が増す。
図8は本発明の更に他の実施例を示し、本実施例も、トランスアクスルの変速制御元圧であるライン圧を用いた油圧式のスラスト支持手段によりリダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を受け止めるようにするが、
特に、スラスト(α1+α3)方向とは逆方向に対面する受圧面にライン圧を作用させて、リダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を受け止めるようにしたものである。
これがため、スラスト(α1+α3)方向とは逆方向における中間軸16の端部にピストン37を同軸に固着し、これを、変速機ケース19に形成したシリンダ38内に摺動自在に嵌合して油圧室39を画成する。
スラスト(α1+α3)方向とは逆方向における中間軸16の端部をシールリング40によりシールして変速機ケース19に嵌合することにより、油圧室39を外部に対し液密封止し、変速機ケース19に形成した油路41を油圧室39に通じさせて、ライン圧をこの油圧室39内へ導くようにする。
本実施例においては、リダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を、スラストベアリング24と共働して、若しくはこれに代わって、油路41から油圧室39に供給されたライン圧により受け止めることから、
大きなスラスト(α1+α3)によるリダクションギヤユニット10への附勢力が軸受21,22に及ぶのを防止すると同時に軸受23,24にかかる附勢力を低減することができ、軸受23,24の耐久性を向上させることができるという前記の作用効果を同様に達成することができる。
また、シールリング40の設置により上記の作用効果をより確実なものにすることができる。
しかも本実施例では、トランスアクスルの変速制御元圧であるライン圧を用いるため、既存の圧力源および油路を流用して当該作用効果を達せすることができ、コスト上も大いに有利である。
また本実施例においては、スラスト(α1+α3)方向とは逆方向に対面する受圧面(ピストン37の図中右端面)にライン圧を作用させて、リダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を受け止めるようにし得ることから、
スラスト(α1+α3)方向に対面する受圧面にライン圧を作用させて、リダクションギヤユニット10への大きなスラスト(α1+α3)を受け止めるようにした図5〜7の構造を採用することができない場合においても、スラスト受け止め構造を成立させることができて設計の自由度が増す。
なお、リダクションギヤユニット10を変速機ケース19に回転自在に支承する軸受21,22の潤滑に当たっては、図9,10に示すごとく、
変速機軸線方向に延在して変速機ケースのライン圧油路に接続されたスプレーバー51などの共通な潤滑油通路を経て、このスプレーバー51(潤滑油通路)に径方向へ(軸受21,22へ)指向するよう設けた潤滑油噴出孔52,53からの潤滑油により潤滑するのがよい。
かようにすることで、軸受21,22が変速機ケースから離れていても、これら軸受21,22の潤滑を確実に行うことができて、その焼損などのトラブルを回避することができる。
またこの際、スプレーバー51などの共通な潤滑油通路に径方向へ(軸受21,22へ)指向させて設けた潤滑油噴出孔52,53から軸受21,22への潤滑油量は、歯車伝動機構の回転速度が速いほど多くなるよう制御することとする。
これにより、如何なる回転速度条件のもとでも、過不足のない適切な軸受21,22の潤滑を行わせることができる。
従来の一般的な歯車伝動機構のスラスト支持構造を破断して示す、Vベルト式無段変速型トランスアクスルの展開断面図である。 図1のスラスト支持構造を具えた歯車伝動機構を拡大して示す拡大断面図である。 図1のVベルト式無段変速型トランスアクスルに適用するのに有用な、本発明の一実施例になるスラスト支持構造を具えた歯車伝動機構を示す、図2と同様な拡大断面図である。 図1のVベルト式無段変速型トランスアクスルに適用するのに有用な、本発明の他の実施例になるスラスト支持構造を具えた歯車伝動機構を示す、図2と同様な拡大断面図である。 図1のVベルト式無段変速型トランスアクスルに適用するのに有用な、本発明の更に他の実施例になるスラスト支持構造を具えた歯車伝動機構を示す、図2と同様な拡大断面図である。 図1のVベルト式無段変速型トランスアクスルに適用するのに有用な、本発明の更に別の実施例になるスラスト支持構造を具えた歯車伝動機構を示す、図2と同様な拡大断面図である。 図1のVベルト式無段変速型トランスアクスルに適用するのに有用な、本発明の他の実施例になるスラスト支持構造を具えた歯車伝動機構を示す拡大断面図である。 図1のVベルト式無段変速型トランスアクスルに適用するのに有用な、本発明の更に他の実施例になるスラスト支持構造を具えた歯車伝動機構を示す、図2と同様な拡大断面図である。 図3〜8のスラスト支持構造を具えた歯車伝動機構におけるリダクションギヤユニットの軸受潤滑構造を、歯車伝動機構の後方から見て示す斜視図である。 同リダクションギヤユニットの軸受潤滑構造を、歯車伝動機構の前方から見て示す斜視図である。
符号の説明
O1 主軸線
O2 副軸線
O3 中間軸線
O4 ディファレンシャルギヤ軸線
10 リダクションギヤユニット(中間歯車ユニット)
11 副軸
12 入力歯車
13 ファイナルドライブリングギヤ(出力歯車)
14 入力側歯車
15 ファイナルドライブピニオン(出力側歯車)
16 中間軸
19 変速機ケース(固定部)
21,22 円筒ころ軸受
23,24 スラストベアリング(機械式スラスト支持手段)
25 バネ(弾性手段)
26 ローディングナット
31 油圧室(油圧式スラスト支持手段)
32 シールリング
33 油路
34 油路
35 先端ノズル
36 シールリング
37 ピストン
38 シリンダ
39 油圧室(油圧式スラスト支持手段)
40 シールリング
51 スプレーバー(共通な潤滑油通路)
52,53 潤滑油噴出孔

Claims (13)

  1. 入力歯車に噛合した入力側歯車および出力歯車に噛合した出力側歯車を共通な中間軸と共に回転するよう具え、これら入力側歯車、中間軸および出力側歯車よりなる中間歯車ユニットを介し前記入力歯車および出力歯車間での動力伝達を行うようにした歯車伝動機構において、
    前記入力歯車および入力側歯車より成る入力側歯車組が前記伝動中に発生するスラストの向きと、前記出力歯車および出力側歯車より成る出力側歯車組が前記伝動中に発生するスラストの向きとが同じになるよう、これら入力側歯車組および出力側歯車組の歯を構成し、
    前記入力側歯車組および出力側歯車が発生するスラストに抗して前記中間歯車ユニットを軸線方向に支持するスラスト支持手段を、該中間歯車ユニットおよび固定部間に介在させたことを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  2. 請求項1に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記中間歯車ユニットが、トランスアクスルにおける変速後の回転を減速してディファレンシャルギヤ装置に伝達するためのリダクションギヤユニットであることを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  3. 請求項1または2に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記スラスト支持手段は、前記中間歯車ユニットおよび固定部間に介在させたスラストベアリングを用いる機械式のスラスト支持手段であることを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  4. 請求項3に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記スラストベアリングを、前記入力側歯車および出力側歯車のうち、前記スラスト方向における歯車と、固定部との間に介在させたことを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  5. 請求項1または2に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記スラスト支持手段は、前記中間歯車ユニットおよび固定部間に介在させた弾性手段を用いる弾支式スラスト支持手段であることを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  6. 自動変速機に用いる、請求項1または2に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記スラスト支持手段は、自動変速機の制御圧であるライン圧を用いた油圧式のスラスト支持手段であることを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  7. 請求項6に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記スラスト支持手段は、前記中間歯車ユニットの前記スラスト方向に対面した受圧面に自動変速機のライン圧を作用させるものであることを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  8. 請求項7に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記スラスト支持手段は、前記受圧面に自動変速機のライン圧を作用させるための油圧室に対しライン圧を、前記中間歯車ユニットの前記スラスト方向後方から前記中間軸の中空孔を経て供給するよう構成したものであることを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  9. 請求項3に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記スラスト支持手段は、前記中間歯車ユニットの前記スラスト方向とは逆方向に対面した受圧面に自動変速機のライン圧を作用させるものであることを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記受圧面にライン圧を作用させるための油圧室は、前記中間歯車ユニットの対応端部を固定部に摺動自在に嵌合して画成し、これら中間歯車ユニットの対応端部と固定部との間にシールリングを介在させたことを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  11. 請求項6〜10のいずれか1項に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記油圧室へのライン圧を、歯車伝動機構の伝達トルクが大きいほど高くなるよう制御する構成にしたことを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記中間歯車ユニットを固定部に回転自在に支承する軸受を、予圧が不要な軸受としたことを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯車伝動機構のスラスト支持構造において、
    前記中間歯車ユニットを固定部に回転自在に支承する軸受をそれぞれ、共通な潤滑油通路に径方向へ指向させて設けた潤滑油噴出孔からの潤滑油により潤滑するよう構成したことを特徴とする歯車伝動機構のスラスト支持構造。
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