JP2009132622A - 神経突起伸長誘導剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】神経突起伸長誘導作用および神経保護作用を有する化合物を提供する。
【解決手段】本発明者らは、KNK437をはじめとする式(I)
【化1】
Figure 2009132622

(式中、Xが−CH−で、かつRが炭素数1または2のアルキル基、ホルミル基、アセチル基、水素原子又はハロゲン原子を表すか、あるいは、Xが−(CH−で、かつRが炭素数1〜3のアルキル基、ホルミル基、アセチル基、水素原子又はハロゲン原子を表す)で表される化合物に神経突起伸長誘導作用、神経保護作用があること、さらに神経成長因子と組み合わせることで相乗効果を示すことを初めて見いだし、本発明を完成するに至った。
【選択図】 なし

Description

本発明は、神経細胞に対する神経突起伸長誘導剤および神経保護剤、またはその作用に基づく疾病予防並びに治療用の組成物に関する。
神経ネットワーク形成には、まず神経細胞からの神経突起伸長が必要である。認知症やアルツハイマー病を代表とする神経疾患は神経細胞の神経突起消失が認められ、神経突起伸長誘導による治療が有用と考えられている。神経突起伸長誘導による治療が有用と考えられる疾患および作用としては、糖尿病性神経障害、筋萎縮性側索硬化症等の末梢神経疾患に付随する運動障害や知覚障害、あるいはアルツハイマー病、脊髄損傷、パーキンソン病、ハンチントン病等の中枢神経障害、または認知症、脳機能改善、記憶障害改善等がある。
神経突起伸長を誘導する物質として、神経成長因子(NGF)を代表とする神経栄養因子が知られている。しかし、神経栄養因子はタンパク質であるため、血液脳関門を通過できず、神経突起伸長誘導作用を持つ低分子化合物が求められている。神経栄養因子以外で神経突起伸長を誘導する方法は、成長ホルモン遊離ペプチドを用いる方法(特許文献1参照)や熱ショックタンパク質90を用いる方法(特許文献2参照)、ポリアルコキシフラボノイドを用いる方法(特許文献3参照)等が報告されており、また、エピガロカテキンガレートの神経突起伸長作用も報告されている(非特許文献1参照)。
認知症やアルツハイマー病は記憶力の低下や認知機能障害を中心とした臨床症状を持ち、緩やかだが常に進行する進行性の神経細胞変性疾患である。アルツハイマー病を含む認知症患者数は全世界で2,500万人以上であり、その有病率は加齢に伴い増加する傾向を示す。その新しい治療および予防法は、高齢化が進む現在、特にその開発が望まれている。
N−ホルミル−3,4−メチレンジオキシベンジリデン−γ−ブチロラクタム(KNK437)およびその類縁体は、転写因子である熱ショック因子(HSF)の活性化を阻害する化合物であり、HSF活性化により発現誘導される蛋白質、たとえば熱や化学物質等で誘導される熱ショック蛋白質(HSP)の発現誘導を抑制する(特許文献4、非特許文献2参照)。KNK437は、そのHSP発現抑制作用により、癌温熱療法時に細胞が温熱耐性を獲得するのを阻害するのに有効である(特許文献5、非特許文献2、3参照)。また、動物モデル試験により鬱病などのストレス性疾患においても有効であることがわかっている(特許文献6参照)。
しかしながら、一般的に、HSP発現誘導は細胞保護作用として働くことが知られている。このため、HSF活性化を阻害してHSP発現を抑制するKNK437は細胞保護作用を持たず、逆に細胞のストレス耐性を弱くすると通常考えられる。このように、熱ショックタンパク質誘導が虚血等による細胞保護に効果があることは周知の事実であるが、未分化PC12細胞が熱ショックでHSPを発現誘導しても、NGF前処理で分化させたPC12細胞は熱ショックでHSPを発現誘導しない(非特許文献4参照)、すなわち分化した神経細胞では熱ショックタンパク質は神経保護に寄与していないとの報告がある。
また、脳虚血モデルにおいて虚血後のHSP誘導は神経保護に貢献せず、HSP70の発現は虚血耐性の発現に必要ないとの報告(非特許文献5参照)もある。
これまでの報告から、熱ショック因子活性阻害作用により熱ショックタンパク質誘導を阻害するKNK437は、通常では神経突起伸長や神経細胞保護にプラスに働くことはないと推測されるが、神経保護にHSPが関与しないという報告もあり、神経保護作用や神経突起伸長誘導作用については不明であった。
また、種々の脳損傷で神経保護に寄与する低体温療法は虚血障害から脳を守ることが知られており、低体温療法は虚血ストレスによるHSP70の誘導を抑制する。低体温療法において、熱ショックタンパク質誘導を阻害するKNK437が神経細胞保護に働くことは全く予想することができず、これまでに、KNK437の神経突起伸長誘導作用および神経保護作用に関する報告はない。
特開2005−239712号公報 特開平8−245413号公報 特開2002−60340号公報 米国特許6,613,780号明細書 米国特許6,903,116号明細書 米国特許6,281,229号明細書 J.Neurochemistry,93,1157−1167,(2005) Cancer Res.,60,2942−2948.(2000) Clin.Cancer Res.7,215−219,(2001) Neurochem.Res.21,659−666,(1996) Neurosci.Lett.295,54−58,(2000)
本発明は、神経突起伸長誘導作用および神経保護作用を有する化合物を提供することを課題とする。
本発明者らは、KNK437等の下記式(I)で表される化合物に神経突起伸長誘導作用、神経保護作用があること、さらに神経成長因子と組み合わせることで相乗効果を示すことを見いだし、それを基に本発明を完成するに至った。これまで、KNK437に上記のような効果があることは全く知られていなかった。すなわち、本発明が提供するのは以下の通りである。
[1]式(I)
Figure 2009132622
(式中、Xが−CH−で、かつRが炭素数1または2のアルキル基、ホルミル基、アセチル基、水素原子又はハロゲン原子を表すか、あるいは、Xが−(CH−で、かつRが炭素数1〜3のアルキル基、ホルミル基、アセチル基、水素原子又はハロゲン原子を表す)で表される化合物を有効成分とする神経突起伸長誘導剤。
[2]Xが−CH−、Rがホルミル基である[1]記載の神経突起伸長誘導剤。
[3]Xが−CH−、Rが水素原子である[1]記載の神経突起伸長誘導剤。
[4]Xが−CH−、Rがアセチル基である[1]記載の神経突起伸長誘導剤。
[5]Xが−(CH−、Rが水素原子である[1]記載の神経突起伸長誘導剤。
[6]Xが−(CH−、Rがホルミル基である[1]記載の神経突起伸長誘導剤。
[7]式(I)で表される化合物がE体である[1]記載の神経突起伸長誘導剤。
[8]式(I)で表される化合物がZ体である[1]記載の神経突起伸長誘導剤。
[9]さらに神経成長因子を含む[1]〜[8]いずれか1項記載の神経突起伸長誘導剤。
[10]神経成長因子の作用を相乗的に増加することができる量の式(I)で表される化合物を含有する[9]記載の神経突起伸長誘導剤。
[11][1]〜[10]いずれか1項記載の神経突起伸長誘導剤からなる認知症、アルツハイマー病、あるいは神経学的障害の治療または予防薬。
[12][1]〜[8]いずれか1項記載の式(I)で表される化合物を有効成分とする神経保護剤。
[13]さらに神経成長因子を含む[12]記載の神経保護剤。
[14][12]又は[13]記載の神経保護剤からなる、脳虚血時の神経保護を目的とした治療または予防薬。
[15][12]又は[13]記載の神経保護剤からなる、低体温療法時の神経保護を目的とした治療または予防薬。
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明は、上記式(I)で表される化合物(化合物(I))を含有する神経突起伸長誘導剤に関する。
上記式(I)のRにおける炭素数1または2のアルキル基としては、メチル基、エチル基が挙げられる。
におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
また、式(I)のRにおける炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
好適な実施態様としては、Xが−CH−で、Rがホルミル基である化合物、Xが−CH−で、Rが水素原子である化合物、Xが−CH−で、Rがアセチル基である化合物、また別の好適な実施態様としては、Xは−(CH−で、Rが水素原子である化合物、Xが−(CH−で、Rがホルミル基である化合物が挙げられる。
また、上記式(I)で表される化合物は、E体であってもよいし、Z体であってもよい。
より好ましい実施態様としては、式(I)のXが−CH−でRがホルミル基か、Xが−(CH−でRが水素原子か、あるいはXが−(CH−でRがホルミル基であり、かつ、E体又はZ体の化合物である。
上記化合物(I)の一例として、N−ホルミル−3,4−メチレンジオキシベンジリデン−γ−ブチロラクタム(KNK437)が挙げられる。
式(I)で表される化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、KNK437を具体例に挙げると、以下の方法で得ることができる。まず、N−アセチル−2−ピロリドン(70.0g,0.55mol)とピペロナール(82.0g,0.55mol)のテトラヒドロフラン(500ml)溶液を、水素化ナトリウム(60%鉱物油懸濁物、63.0g,1.57mol)のテトラヒドロフラン(1000ml)懸濁液に、アルゴン雰囲気下、氷冷しながら滴下した後、反応液を室温にて一晩撹拌する。得られた反応液を希硫酸で中和、クロロホルムで抽出、飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥したのち、濾過、減圧にて溶媒留去する。得られた反応物を2−プロパノールで再結晶することにより、N−ホルミル−3,4−メチレンジオキシベンジリデン−γ−ブチロラクタム(KNK437)(79.0g,収率65%)を得ることができる。
本発明の神経突起伸長誘導剤は、さらに神経成長因子(NGF)を含むことが好ましく、更にNGFの作用を相乗的に増加することができる量の化合物(I)を含有することが好ましい。
式(I)で表される化合物は、NGF処理あるいは熱ショック処理なしで、単独で神経突起伸長誘導作用を持ち、さらにNGFの作用を増強することができる。また、単独ではほとんど効果のない量の化合物(I)と、単独でほとんど効果のない量のNGFを組み合わせることで、神経突起伸長誘導作用で相乗的効果を得ることができる。上記「NGFの作用を相乗的に増加することができる量」とは、NGFに対する化合物(I)の量が100質量%以上である。
さらにNGFを含む場合、化合物(I)の好適な実施態様としては、Xが−CH−で、Rがホルミル基である化合物、また別の好適な実施態様としては、Xは−(CH−で、Rが水素原子である化合物が挙げられる。
本発明でいう神経突起とは、神経細胞から伸びる突起であり、樹状突起と軸索突起を指す。
本発明でいう神経突起伸長誘導作用は、神経突起伸長作用および神経突起伸展作用と同義である。また神経突起伸長誘導作用は、神経突起が神経細胞の発生過程で伸長することから神経細胞分化誘導作用も意味しており、さらに神経突起の数を増やすことも神経突起伸長誘導作用に含まれる。
神経突起伸長誘導作用は、例えばラット褐色細胞由来のPC12細胞を用いて評価することができる。PC12細胞は、神経細胞分化と神経突起伸長のモデル系として広く用いられている。例えば、神経突起伸長誘導作用は、顕微鏡観察により神経突起を有する細胞数を算出する方法により総細胞数の中での神経突起を有する細胞数の割合で定量的に表すことができるが、顕微鏡観察以外の、他の方法を用いても良い。
ラット褐色細胞由来PC12細胞は、NGFのような神経性因子の解析に利用されてきた。PC12細胞はHSP70やHSP60のようなHSPの発現を増加させることにより熱ショックストレスに対して保護するが、NGFにより分化したPC12細胞は、熱ショックに対してHSPを発現しない特徴を持つ。すなわち、HSP抑制作用を持つKNK437をはじめとする式(I)で表される化合物は、神経突起伸長誘導作用が知られていないばかりか、神経細胞保護へは関与せず逆に死滅させてしまうと推測されていた。しかし、本発明によりKNK437等の式(I)で表される化合物は、単独でPC12細胞の神経突起伸長を効果的に誘導することが明らかとなり、また、低用量NGF処理の効果を神経突起伸長誘導において相乗的に増加させること、その結果、神経保護的に働くことが明らかとなった。
このように、神経突起伸長誘導作用を確認するためPC12細胞を用いることができるが、この細胞に限定するものではなく同様の試験が実施可能な他の神経細胞を用いても良い。その際、神経細胞を植え継ぐ回数により反応性が異なることがあり、用いるサンプルを同じ濃度で処理してもその神経細胞の神経突起伸長作用が異なることがある。この点を解決するためには、神経突起伸長誘導作用が明らかであるNGFなどの陽性対象と比較することで、その性質を相対的に示すことができる。
KNK437等の式(I)で表される化合物の神経突起伸長誘導メカニズムとしては、部分的にはMAPキナーゼ、p38、GSK3β等のシグナル伝達系の介在が考えられる。NGFとの相違点として、NGFはアセチルコリンエステラーゼ(AchE)活性の増加を示すが、KNK437等にその効果は無く、KNK437等を用いると、NGFがAchEを誘導するのとは別の細胞内メカニズムが働いていると推測される。
本発明の神経突起伸長誘導剤は、神経細胞からの神経突起伸長を促進する効果を有するので、認知症、アルツハイマー病、あるいは神経学的障害の治療または予防薬の製造に用いることができる。
本発明の神経保護剤は、上記式(I)で表される化合物を有効成分とするものである。
化合物(I)の具体例や好適な実施態様は、上記と同様である。本発明の神経保護剤も、さらに神経成長因子(NGF)を含むことが好ましい。
脳虚血とは、脳の血行が不足し、脳組織に十分な酸素、栄養が供給されない状態であり、脳梗塞の原因ともなる。神経系は脳虚血など多くのストレスに感受性が強いことが知られている。通常、神経を保護するHSPの発現は、熱ショック、重金属、化学試薬、虚血を含む生理的、化学的反応により誘導され、神経細胞においてもHSP70の発現は虚血など病態生理学的な条件の下で誘導される。すなわちHSPは神経保護機能を持ち、HSP発現を抑制するKNK437等の化合物(I)は、神経保護作用ではなく逆に阻害することが予想されていた。しかしながら、化合物(I)は、HSPの発現を抑制した状態でも、神経細胞の分化誘導や障害から神経を保護する作用を有する。
本発明の神経保護剤は、化合物(I)が優れた神経保護作用を有することから、脳虚血時の神経保護を目的とした治療または予防薬の製造に用いることができる。
本発明の神経保護剤は、また、HSPが抑制された状態でも優れた神経保護作用を有することから、低体温療法時の神経保護を目的とした治療または予防薬の製造に用いることができる。
低体温療法は、重傷頭部外傷患者に対し体温を32〜33度に下げる頭部外傷等の治療法であり、実験動物や心臓停止患者等の脳損傷で神経保護に寄与することが良く知られている。HSP発現と低体温処置の関係については動物モデルにおいて、虚血後、低体温処置はHSP70誘導なしでニューロンを保護することが知られている。さらに、虚血耐性モデルにおいて、短時間の虚血は引き続きおこる重大障害への耐性を誘導するが、HSP70発現は虚血耐性の誘導に必要ではない。このように、HSPは続いて起こるストレスに一致して発現するが、神経保護作用との関連は薄いと考えられる。低体温療法による神経保護作用の正確なメカニズムおよびストレス誘導型HSP発現抑制が有効であるかどうかは不明である。本発明により初めて、HSP阻害作用を持つKNK437等の化合物(I)が、神経保護剤としての能力を持ち神経突起形成を誘導することが明らかとなった。
本発明化合物の投与方法としては経口、経腸または他の非経口的投与方法のいずれをも選ぶことができる。具体的な製剤形態としては特に限定されず、投与目的や投与経路等に応じて、たとえば錠剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の経口剤;坐剤、軟膏剤、注射剤、点滴剤、局所投与のクリーム若しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることができる。
配合量に関しては特に規定するものではないが、所望の効果を奏する範囲内で適宜選択することができる。
本発明による製剤の坦体としては、経口、経腸、その他非経口的に投与するために適した有機または無機の固体または液体の任意成分を含有することができる。任意成分としては、一般に製剤に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤等の添加物を含有させることができる。結合剤の好適な例としてはデンプン、トレハロース、デキストリン、アラビアゴムなどが挙げられる。賦形剤の好適な例としては、しょ糖、乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、マンニト−ル、結晶セルロース、ゼラチン、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、植物性および動物性脂肪ならびに油、ペクチンなどが挙げられる。滑沢剤の好適な例としてはステアリン酸、タルク、ロウ、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。崩壊剤の好適な例としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチなどが挙げられる。安定剤の好適な例としては油脂、プロピレングリコールなどが挙げられる。乳化剤の好適な例としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。緩衝剤の好適な例としてはリン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液が挙げられる。
本発明の神経突起伸長誘導剤及び神経保護剤を医薬部外品として製剤化して用いる場合は、必要に応じて他の添加剤などを添加して、例えば、軟膏、リニメント剤、エアゾール剤、クリーム、石鹸、洗顔料、全身洗浄料、化粧水、ローション、入浴剤などに使用することができ、局所的に用いることができる。
本発明の化合物は、製剤中に0.001〜100重量%含ませることができる。含有量は、好ましくは0.01〜100重量%、より好ましくは0.1〜90重量%である。
これら製剤の投与量としては、当該化合物(I)換算で成人一人一日当たり、好ましくは0.001〜1000mg/kg体重、より好ましくは0.01〜200mg/kg体重を1回ないし数回に分けて投与する。
また本発明の神経突起伸長誘導剤及び神経保護剤は、その他の医薬を含むことができる。この場合、本発明化合物(I)は必ずしもその製剤中の主成分でなくてもよい。
本発明によれば、神経突起伸長誘導剤および神経保護剤を得ることが出来る。これらは、認知症あるいはアルツハイマー病、神経学的障害の治療または予防、脳虚血時や低体温療法時の神経保護に有効であり、医薬品又は医薬部外品などとして利用できる。
以下に実施例を記載して、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例によって、本発明の範囲は限定的に解釈されるものではない。
(実施例1)
PC12細胞を用いたKNK437とNGFの神経突起伸長誘導効果
PC12細胞を、5%牛胎児血清、5%馬血清、100unit/ml ペニシリン、100mg/ml ストレプトマイシン含有のDMEM培地を用い、5%炭酸ガスを含む湿度100%の条件にて培養した。NGFやKNK437処理前に、培地を2%牛胎児血清を含む培地に置き換えた。PC12細胞は、溶媒対照であるDMSOのみの培地、NGF(50ng/ml)を含む培地、またはKNK437(5、25、50、100、150、200μM)を含む培地で5日間培養し、神経突起を伸ばした細胞数を毎日カウントした。値は平均値±SDで示す。結果を図1に示す。KNK437は濃度依存的に神経突起伸長誘導作用を示した。
(実施例2)
PC12細胞を用いたKNK437とNGFの相乗的神経突起伸長誘導効果
PC12細胞を5%牛胎児血清、5%馬血清、100unit/ml ペニシリン、100mg/ml ストレプトマイシン含有のDMEM培地を用い、5%炭酸ガスを含む湿度100%の条件にて培養し、NGFやKNK437処理前に、培地を2%牛胎児血清を含む培地に置き換えた。NGF(10ng/ml)単独、KNK437(50μM)単独またはNGF(10ng/ml)とKNK437(50μM)を両方添加した培地で5日間培養し、神経突起を伸ばした細胞数をカウントした。値は平均値±SDで示す。***:P<0.001。結果を図2に示す。KNK437とNGFを両方含む培地では、個々では神経突起伸長を示さない濃度で相乗的に神経突起伸長誘導作用を示した。
本発明によれば、神経突起伸長誘導剤および神経保護剤を得ることが出来る。これらは、認知症あるいはアルツハイマー病、神経学的障害の治療または予防、脳虚血時や低体温療法時の神経保護に有効であり、医薬品又は医薬部外品などとして利用できる。
図1は、PC12細胞を用いた神経突起伸長に対するKNK437及びNGFの効果を示す。値は平均値±SDで示す。 図2は、PC12細胞を用いたKNK437とNGFの相乗効果を示す。値は平均値±SDで示す。***:P<0.001。

Claims (15)

  1. 式(I)
    Figure 2009132622
    (式中、Xが−CH−で、かつRが炭素数1または2のアルキル基、ホルミル基、アセチル基、水素原子又はハロゲン原子を表すか、あるいは、Xが−(CH−で、かつRが炭素数1〜3のアルキル基、ホルミル基、アセチル基、水素原子又はハロゲン原子を表す)で表される化合物を有効成分とする神経突起伸長誘導剤。
  2. Xが−CH−、Rがホルミル基である請求項1記載の神経突起伸長誘導剤。
  3. Xが−CH−、Rが水素原子である請求項1記載の神経突起伸長誘導剤。
  4. Xが−CH−、Rがアセチル基である請求項1記載の神経突起伸長誘導剤。
  5. Xが−(CH−、Rが水素原子である請求項1記載の神経突起伸長誘導剤。
  6. Xが−(CH−、Rがホルミル基である請求項1記載の神経突起伸長誘導剤。
  7. 式(I)で表される化合物がE体である請求項1記載の神経突起伸長誘導剤。
  8. 式(I)で表される化合物がZ体である請求項1記載の神経突起伸長誘導剤。
  9. さらに神経成長因子を含む請求項1〜8いずれか1項記載の神経突起伸長誘導剤。
  10. 神経成長因子の作用を相乗的に増加することができる量の式(I)で表される化合物を含有する請求項9記載の神経突起伸長誘導剤。
  11. 請求項1〜10いずれか1項記載の神経突起伸長誘導剤からなる認知症、アルツハイマー病、あるいは神経学的障害の治療または予防薬。
  12. 請求項1〜8いずれか1項記載の式(I)で表される化合物を有効成分とする神経保護剤。
  13. さらに神経成長因子を含む請求項12記載の神経保護剤。
  14. 請求項12又は13記載の神経保護剤からなる、脳虚血時の神経保護を目的とした治療または予防薬。
  15. 請求項12又は13記載の神経保護剤からなる、低体温療法時の神経保護を目的とした治療または予防薬。
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