以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の形態に係る電子パッドが含まれる電子打楽器の全体構成を示すブロック図である。この電子打楽器には、打撃用の電子パッドPDが複数含まれる。本実施の形態の電子パッドPDは、ハイハット(以下、「HH」と略記する)シンバルに代用されるハイハット形の電子パッドである。
この電子打楽器は、ROM12、RAM13、タイマ14、記憶装置15、表示装置16、外部インターフェイス17、操作インターフェイス21、音源回路18及び効果回路19が、バス10を介してCPU11にそれぞれ接続されて構成される。
操作インターフェイス21には、パネル操作子22が接続される。パネル操作子22は、各種情報を入力するための操作子であり、例えば、各電子パッドPDにおける検出信号に基づきどのような音色でどのような態様で楽音を発生させるかを設定することができる。また、電子パッドPDには、後述するピエゾセンサ41、複数のシートセンサ31(31f、31r)、37、及びシートスイッチ68が含まれ、これらの検出信号が、操作インターフェイス21を介してCPU11に供給される。
表示装置16は液晶ディスプレイ(LCD)等で構成され、楽譜や文字等の各種情報を表示する。CPU11にはタイマ14が接続される。外部インターフェイス17には、MIDIインターフェイス、LAN(Local Area Network)等の各種インターフェイスが含まれる。効果回路19にはサウンドシステム20が接続されている。
CPU11は、本電子打楽器全体の制御を司る。ROM12は、CPU11が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶する。RAM13は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。タイマ14は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。記憶装置15は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種楽曲データ、各種データ等を記憶する。
外部インターフェイス17は、外部装置とのMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号や各種データの送受信を行う。音源回路18は、電子パッドPDから入力される検出信号に基づく演奏データや予め設定された演奏データ等を楽音信号に変換する。効果回路19は、音源回路18から入力される楽音信号に各種効果を付与し、DAC(Digital-to-Analog Converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム20は、効果回路19から入力される楽音信号等を音響に変換する。
図2は、ハイハット形である電子パッドPDの右側面図である。以降、水平に支持された電子パッドPDにおいて、奏者側を前側とし、左右方向については奏者からみた方向で呼称する。電子パッドPDは、いずれも平面視円形のHHパッド体PDTとボトム台座80とから構成される。HHパッド体PDT、ボトム台座80は、それぞれ、アコースティックハイハットシンバルにおけるトップシンバル、ボトムシンバルに相当する。
図3は、HHパッド体PDTの平面図、図4は、HHパッド体PDTの下面図である。図5は、図3のA−A線に沿う断面図、図6は、図3のB−B線に沿う断面図、図7は、図3のC−C線に沿う断面図である。
まず、概略構成について説明する。図5〜図7に示すように、HHパッド体PDTは、主に、パッド部pd、裏カバー70及び動作検出ユニットUNTから構成される。パッド部pdは、主に、フレーム40、及び打撃面を提供するゴムパッド30から構成される。フレーム40は、余計な振動を内部損失させると共に、強打時の撓みを吸収できるような、PP(ポリプロピレン)等の硬質の材料でなる。裏カバー70は、EVA(エチレン酢酸ビニル樹脂)等の、フレーム40よりも軟質の材料でなり、フレーム40の撓みに沿って変形すると共に、打撃後の余計な振動を抑える。
HHパッド体PDTは、支持部50に水平に且つ揺動自在に支持される。支持部50は、不図示のスタンドにおいて立設される可動支柱47(図9参照)に固定される。可動支柱47は、ペダル48(図9参照)の踏み込み操作により下降動作し、踏み込みを解除すると、不図示の付勢手段によって上昇する。従って、支持部50は、ペダル操作によって上下動作する可動支柱47と一体に上下動作する。可動支柱47からペダル48までのスタンドの構成は、アコースティックHH用のものと同じであり、市販のものが採用可能である。
図2、図5に示すように、HHパッド体PDTの上面において、半径方向中央部に相当するカップ部pdc、エッジ部に相当する周縁部pda、カップ部pdcと周縁部pdaとの間におけるライドエリア(ボウ)pdbが、演奏操作により打撃等される領域として提供される。カップ部pdc及びライドエリアpdbは、専らスティックで打撃されるが、周縁部pdaにおいては、打撃だけでなく、指によって上下から挟むように摘む操作(ミュート操作)もなされる。
これらの手による演奏操作に加えて、上記ペダル48(図9参照)の操作に応じて、HHパッド体PDTの動作検出ユニットUNTがボトム台座80に当接することにより、ハイハットシンバルにおいて特徴的なペダル操作も行える。本実施の形態では特に、HHパッド体PDTの前側領域だけでなく、左右及び後側の領域も含めた全領域を打撃検出対象としていて、演奏表現の態様を拡大している。
次に、各構成を詳細に説明する。
図5〜図7に示すように、支持部50は、主に、金属製等のフェルト支持部材51、回り止めピン54、フェルト52、53、固定用ナット56、57、及び支柱固定具59を含み、これらが一体に構成されてユニット化されている。フェルト支持部材51は、鍔部である基部51aから筒状部51dが上方に一体に突設形成されてなる。基部51aと筒状部51dとは別体構成として、螺合等によって固定してもよい。基部51aからは、後方に向かって金属製等の回り止めピン54が突設される。回り止めピン54は、丸棒を屈曲させた側面視L字状であり、先端は上方に向かって鉛直に延びている。回り止めピン54の鉛直部分の周囲には、塩化ビニル等の緩衝材55が被覆されている。回り止めピン54は、基部51aと一体に形成してもよい。
図5に示すように、フレーム40の半径方向中央部である被支持部40dには、貫通穴40da及び回り止め穴40cが形成されている。回り止めピン54は、フレーム40の回り止め穴40cを貫通して、上方に露出している。従って、平面視において、回り止めピン54は、回り止め穴40cの内壁に囲繞されている。
フェルト支持部材51には、可動支柱47(図9参照)が挿通されるための挿通穴51cが、基部51aから筒状部51dの全体に亘って上下方向に貫通して形成されている(図3、図4も参照)。筒状部51dの外周側には、雄ネジ51bが螺刻されている。フェルト支持部材51の筒状部51dは、フレーム40の被支持部40dを、クリアランスを有して貫通している。
フェルト支持部材51の、基部51aの上には、フレーム40の被支持部40dを挟んで、ドーナツ状のフェルト53及びフェルト52が順に配設されている。フェルト53、52の各穴に筒状部51dが挿通されている。固定用ナット56、57(固定用ナット56は緩み防止用であって必須ではない)が、フェルト52の上において、フェルト支持部材51の雄ネジ51bに螺合される。鍔部である固定用ナット57と基部51a間に適当な力でフェルト52、53が挟持されて介装される。これにより、HHパッド体PDTが、フェルト支持部材51に対して、フェルト52、53の弾性を介して揺動する、すなわち、前後左右を含む全方向に揺れることが可能となっている。上記固定用ナット56、57による締結力を調節することで、打撃時のHHパッド体PDTの揺れ具合を調節可能である。
ところで、フェルト支持部材51の基部51a、フェルト52、53、固定用ナット56、57のそれぞれの外郭形状は問わない。すなわち、フレーム40の貫通穴40daを貫通してしまわない程度に大きければ、円形でなくてもよい。また、固定用ナット56、57の筒状部51dに対する固定は、螺合方式でなくてもよく、上下方向の所望の位置に固定できる構成であればよい。さらに、フェルト52、53は、弾性部材で構成されていればよく、フェルト製に限られない。
支柱固定具59は、水平方向のスリ割りによって構成される上半部及び下半部とを有している。支柱固定具59の下半部には、上下方向のスリ割りが設けられて、近接した2枚の締結片59b、59cが形成されている(図3参照)。支柱固定具59の下半部の内径部分には、フェルト支持部材51の雄ネジ51bに対応する雌ねじ(図示せず)が形成されている。支柱固定具59の下半部がフェルト支持部材51の上端部に螺合され、2枚の締結片59b、59cがネジ58(図3、図5、図7参照参照)で締結されることで、支柱固定具59の下半部によってフェルト支持部材51の上端部が締め付けられる。これにより、支柱固定具59がフェルト支持部材51に装着固定されている。筒状部51dの上端は、支柱固定具59の下半部の上端付近に位置する。
支柱固定具59には、締め込み式の摘み部49が設けられている。支柱固定具59の上半部の挿通穴59aに可動支柱47(図9参照)が挿通された状態で、摘み部49(図2、図3、図6参照)を締め込むことで、摘み部49の先端が、挿通穴59a内で可動支柱47を押圧するので、可動支柱47の外周面が挿通穴59aの内周面に対して圧接状態となる。これにより、支柱固定具59を介して、支持部50全体が可動支柱47に対して連結固定される。従って、可動支柱47が上下すると、支持部50もそれに連動して上下する。支柱固定具59の可動支柱47に対する固定機構は、上記のような圧接機構であるので、可動支柱47が、ネジ等がない単純な棒状体であっても、支持部50を簡単に連結固定することができる。
なお、可動支柱47の外周面と挿通穴59aの内周面とを圧接させる機構としては、この例に限られない。例えば、支柱固定具59の下半部と同様に、スリ割った部分をネジで締めることで圧接させる機構であってもよい。
支柱固定具59において摘み部49を締めたり緩めたりすることで、支柱固定具59と可動支柱47とを連結固定したり連結固定を解除したりすることができる。その際、摘み部49を多少緩めても、支持部50としては一体のままであるので、支持部50に装着されたままのHHパッド体PDTを、可動支柱47に対して着脱(装着、取り外し)することができる。
また、支持部50においては、フェルト支持部材51に対する支柱固定具59、及び固定用ナット56、57の螺合を解いて、フレーム40の貫通穴40daからフェルト支持部材51を相対的に下方に引き抜くことで、HHパッド体PDTが、支持部50から切り離される。これにより、HHパッド体PDTを、支持部50とは切り離して扱うことができ、例えば、販売や輸送時に嵩張らず、便利である。
図5〜図7に示すように、フレーム40の上側にゴムパッド30が不図示の両面テープまたは接着剤等で固定される。ゴムパッド30は、周縁部pdaにおいて、フレーム40の上側から下側まで回り込んでいて、フレーム40の周縁部を上下から挟持する形で固定されている。また、ゴムパッド30のカップ対応部30aの半径方向内側に、フレーム40の被支持部40dが位置し、被支持部40dは上方に露出している。
図8(a)は、フレーム40の平面図、図8(b)は、フレーム40の裏面図である。フレーム40は、貫通穴40daを有して平面視円形に構成される。図8(a)に示すように、フレーム40の周縁部の上面40aには、シートセンサ31f、31rが接着等によって配設されている(図1、図5〜図7も参照)。シートセンサ31fは、フレーム40の前側の半分以上の領域において配設される。一方、シートセンサ31rは、シートセンサ31fが配設されていない、フレーム40の後側の領域に配設され、両シートセンサ31f、31rで略環状を呈している。各シートセンサ31f、31rからは、センサ導出部31fa、31raが半径方向内側に導出されている。
図8(a)に示すように、フレーム40の被支持部40dの半径方向外側において、上面40aには、シートセンサ37が配設されている。シートセンサ37は、回り止め穴40cを避けた位置において略環状に配設される。各シートセンサ31f、31r、37は、フィルム状センサで、圧力変化を感知して独立して検出信号を出力するものであればよく、圧電型、キャパシタ型等、その種類は問わない。
また、図8(b)に示すように、フレーム40の裏面40b側には、上記ピエゾセンサ41(図1、図5も参照)が接着等によって1つ配設される。ピエゾセンサ41は、フレーム40の周縁部よりやや内側で、ライドエリアpdbに相当する部分の下面に配設されている。ピエゾセンサ41は、圧電素子で構成されるが、振動を感知できる構成であれば、種類は問わない。
フレーム40の裏面40b側には、さらに、信号出力部32、33が配設されている。信号出力部32には、信号線36にてピエゾセンサ41が接続され、信号出力部32は、ピエゾセンサ41からの検出信号を、出力端子34から外部に出力する。信号出力部32にはまた、センサ導出部31fa、31ra(図8(a)参照)と、シートセンサ37からのセンサ導出部(図示せず)も電気的に接続され、これらのセンサからの検出信号を、出力端子34から外部に出力する。信号出力部33は、後述する動作検出ユニットUNTからの検出信号を、出力端子35から外部に出力する。
ピエゾセンサ41は、主にライドエリアpdbへの打撃による振動を検出し、打撃の有無及びその強さを示す検出信号を出力する。シートセンサ37は、カップ部pdcに対する打撃を検出し、打撃の有無及びその強さを示す検出信号を出力する。シートセンサ31f、31rは、周縁部pdaに対する打撃と上下から押圧するミュート操作とを検出し、打撃及びミュート操作の各有無と、打撃強さとを示す検出信号を出力する。
シートセンサ31f、31rは、同幅であって、共に全長に亘って幅が一様である。しかし、位置に応じてそれぞれ幅を異ならせてもよい。例えば、左右側では、周縁部の打撃位置が正確でない可能性があるので、幅を大きくしてもよい。また、両者の感度を異ならせてもよい。あるいは、感度調節機構を設けてもよい。なお、シートセンサ31f、31rの境目がわかるようなデザインを、ゴムパッド30の上面に設けてもよい。また、ミュート操作検出用に、フレーム40の裏面40b側に、シートセンサ31に相当するシートセンサをさらに設けてもよい。
図3に示すように、フレーム40の回り止め穴40cは、前後方向に長い長穴となっている。回り止め穴40cの前後方向の長さはL1、左右方向の長さはL1より短いL2である。一方、回り止め穴40cを貫通している回り止めピン54は断面円形である。非演奏状態において、回り止めピン54は、回り止め穴40cを貫通して上方に突出している。ところが、回り止めピン54は、HHパッド体PDTの半径方向中心近くであって且つ中心から後側に少しシフトした位置に配設されているので、演奏の邪魔にならず、奏者からみて目障りでもない。
演奏時において、HHパッド体PDTは、支持部50に対して水平方向に回転し得る。しかし、回り止めピン54が、回り止め穴40cの左右の内壁に当接係合することで、HHパッド体PDTの回転角度範囲が規制される。一方、HHパッド体PDTは、打撃により揺動するが、回り止めピン54と回り止め穴40cとの係合によって、その揺動角度範囲も規制される。
例えば、HHパッド体PDTの最前部が打撃されて、HHパッド体PDTが前後方向に揺動したとき、回り止めピン54が、回り止め穴40cの前後の内壁に当接係合することで、HHパッド体PDTの前後方向の揺動角度範囲が規制される。HHパッド体PDTの左部または右部が打撃されて、HHパッド体PDTが左右方向に揺動したときは、回り止めピン54が、回り止め穴40cの左右の内壁に当接係合することで、HHパッド体PDTの左右方向の揺動角度範囲が規制される。同様に、HHパッド体PDTが、前後左右でなく斜め方向に揺動する場合でも、方向に応じて揺動角度範囲が規制される。
ここで、L1>L2であるので、回り止めピン54と回り止め穴40cの内壁との間隔は、左右方向よりも前後方向の方が大きい。従って、HHパッド体PDTは、前後方向の方が左右方向よりも大きく揺動できることになる。これにより、方向によってHHパッド体PDTの最大揺動量を異ならせて、自然で適切な揺動を生じさせることができる。
フレーム40への打撃により、ピエゾセンサ41とシートセンサ31f、31r、37のうち複数が同時に検出信号を出力することがあり得るが、どのセンサの信号をどのように楽音制御に用いるかは任意に設定可能である。例えば、単純に、最も大きな値を示す信号を出力したセンサの信号を楽音制御に用いるようにしてもよい。また、シートセンサ31f、31rについては、周縁部pdaにおけるミュート操作専用または打撃操作専用の検出に用いるようにしてもよい。あるいは、ピエゾセンサ41と協働して打撃を検出すると共に、打撃位置の判断のためにシートセンサ31f、31rの検出信号を用いるようにしてもよい。あるいは、シートセンサ37の出力を用いることなく、カップ部pdcへの打撃検出も、ピエゾセンサ41で検出した信号を専ら用いて行ってもよい。
本実施の形態では、一例として、CPU11が次のように楽音制御する。まず、各センサの出力信号から、総合的に、打撃の有無(タイミング)及び打撃位置を判断する。ここで、周縁部pdaにおいては、2つのシートセンサ31f、31rによって、打撃位置が前側領域なのか後側領域なのかも判断される。また、ライドエリアpdbにおいても、シートセンサ31f、31rによって、ライドエリアpdbのうち前側領域なのか後側領域なのかも判断される。
そして、周縁部pdaの前側/後側領域、ライドエリアpdbの前側/後側領域、カップ部pdcのいずれが打撃されたかによって、発音する音色を異ならせる。これにより、後側での打撃によって、前側とは異なる音色の楽音が発生するので、演奏表現力が拡大される。各センサでの検出信号により、発音中の楽音を消去する後着優先とするか、重複して発音するかは、設定により自由であるが、本実施の形態では、一例として、発音中の楽音を消去することなく重複発音する。
また、ミュート操作については、例えば、ピエゾセンサ41の反応がない状態で、シートセンサ31f、31rのいずれかが一定時間押圧されたことを示す信号を出力したときに、ミュート操作がされたと判断する。ミュート操作がされた場合は、発音中のすべての楽音が減衰制御される。なお、ミュート操作に関しては、シートセンサ31fの出力信号だけを用いてもよい。
図4に示すように、裏カバー70は、パッド部pdの半径方向中央部を下方から覆う基部73と、該基部73からパッド部pdの周縁部pdaにまで放射状に延びた3本の腕部71(71A、71B、71C)とを有し、一体に構成されている。裏カバー70は、フレーム40の裏面40b側に配設される。裏カバー70の各腕部71の先端部が、それぞれフレーム40の周縁部において下方に突出した突設部40eに嵌合されている(図5〜図7参照)。また、裏カバー70は、複数のネジ72によってフレーム40に固定されている。なお、裏カバー70はフレーム40に接着されていてもよい。各腕部71の長さは、HHパッド体PDTの半径の半分以上である。
裏カバー70は、フレーム40と協働して、パッド部pdの振動を伝達する役割を果たす。図4、図8(b)に示すように、ピエゾセンサ41は、平面視において、1つの腕部(腕部71A)がある位置に配置されている。これにより、パッド部pdで発生した打撃振動が打撃検出手段に適切且つ効率的に伝わる。また、図4に示すように、信号出力部32、33は、それぞれ、平面視において、別々の腕部71B、71Cがある位置に配置されている。さらに、信号線36(図8(b)参照)が、裏カバー70の主に基部73によって下方から隠されている。これらにより、ピエゾセンサ41、信号出力部32、33及び信号線36が保護されると共に、外観に表れない。
しかも、信号出力部32、33、ピエゾセンサ41が互いに異なる腕部71の位置に配設されたので、HHパッド体PDT全体の重量バランスを良好にすることが容易である。なお、各腕部71の厚みを含む形状は、異なっていてもよい。腕部71が放射状であることから、例えば、HHパッド体PDT全体の重量バランスを所望に設定するために、あえて異なる形状に設計することも容易である。
強打撃時には、パッド部pdの撓みが、打撃による直接的な振動とは別に振動を発生させる。裏カバー70は、パッド部pdの振動を適度に減衰させ、撓みによる振動に起因する誤動作を抑制する機能も果たす。仮に、裏カバー70が、平面視円形で、パッド部pdの周縁部pdaにまで延設形成されているとすると、パッド部pdの振動抑制効果は高い。しかしながら、円形だと、周縁部pdaに発生している振動が、裏カバーによって必要以上に分散したり吸収されたりして、打撃振動がピエゾセンサ41に適切に伝わりにくい場合がある。
そこで、本実施の形態では、裏カバー70を放射状とし、パッド部pdの周縁部pdaにまで腕部71を延設する構成とした。これにより、打撃振動の伝達を阻害しすぎることなく、有害な振動を効果的に抑制することができる。しかも、円形に比し、軽量化が図られると共に、HHパッド体PDTの中心に裏カバー70の重量を集めてHHパッド体PDTの揺動をより自然なものにすることができる。
ところで、HHパッド体PDTの半径方向における信号出力部32、33の外側端位置は、いずれも腕部71B、71Cの最先端位置より内側に位置している。それらの出力端子34、35は、信号出力部32、33の側方から出ているので、同様に、腕部71B、71Cの最先端位置より内側に位置している。これにより、HHパッド体PDTの周縁部近傍が、出力端子34、35に接続されるコードで重くなって不安定となることが抑制される。また、コードの重さでHHパッド体PDTの自由な動きを阻害されることも抑制される。
図9は、図4のD−D線に沿う、ボトム台座80を含むHHパッド体PDTの部分断面図である。動作検出ユニットUNTは、HHパッド体PDTのうち最下部であって、裏カバー70の下側に配設される(図2、図4〜図7、図9参照)。図9等に示すように、動作検出ユニットUNTは、いずれも平面視ドーナツ状の基板60、及び基板60の下側に配設されるゴム系の弾性部63から構成される。
弾性部63の上部でもある外縁部には、内側に凹となっている挟着部66と、挟着部66に連接して外方に突出した突条状の係着部67とが形成されている。基板60の上面側からは、複数のピン45が突設されており(図5〜図7、図9参照)、これらのピン45が、フレーム40に嵌合されている。これにより、基板60がフレーム40に対して固定される。また、基板60の周縁部が、挟着部66によって上下から挟着されている。さらに、弾性部63の係着部67が、裏カバー70に係着されている。このようにして、動作検出ユニットUNTが、フレーム40及び裏カバー70に対して固定されている。
図10(a)は、弾性部63の平面図である。図10(b)は、図10(a)のE−E線に沿う断面図である。図4、図9、図10(a)、(b)に示すように、弾性部63は、半径方向中央に貫通穴63aを有し、さらに、貫通穴63a下部周りの薄肉部であるスカート部64Bと、スカート部64Bより半径方向外側の厚肉の基部65と、基部65から外縁部までを繋ぐスカート部64Aとを有する。基部65の下面は、半径方向内側にいくにつれて下方に傾斜している。
貫通穴63aには、支持部50の回り止めピン54の根本部の延設方向(後方)と同じ方向に逃げ部63aaが連接形成されている(図4、図10(a)参照)。動作検出ユニットUNTが付いたままのHHパッド体PDTを支持部50に対して着脱する際、逃げ部63aaにより、弾性部63と回り止めピン54との干渉が回避される。すなわち、支持部50のフェルト支持部材51の筒状部51dの外径は、フレーム40の貫通穴40daより小さく、クリアランスを有している。従って、フェルト支持部材51を貫通穴40daに対して抜き差しする際には、HHパッド体PDTに対してフェルト支持部材51を相対的に前方に少しずらして行うことで、弾性部63に回り止めピン54が干渉することなくHHパッド体PDTを着脱することができる。なお、フェルト支持部材51をずらすことなく真っ直ぐ抜き差しできる程度に、逃げ部63aaを十分に大きく設計してもよい。
弾性部63は、ゴムパッド30よりも硬質の弾性材でなるが、上下方向に押圧されると、主としてスカート部64A、64Bの弾性によって、基部65全体が上方に変位するようになっている。これにより、基板60に対して基部65が近接及び離間する。基部65の上面には、アクチュエータ68(68A〜68E)が一体に突設形成されている。アクチュエータ68Aは、弾性部63の半径方向中心を中心とする前後左右の同心の全4箇所に突設され、アクチュエータ68B〜68Eは、左右の各2箇所に突設されている。半径方向外側から内側に向かって、アクチュエータ68A〜68Eの順に位置する。
図10(b)に示すように、アクチュエータ68A〜68Eの順に、上端位置が低くなっていて、アクチュエータ68Aが最も高い。また、ストッパ69が、アクチュエータ68Eと同心の位置において、斜め前の左右及び、斜め後ろの左右の、全4箇所に突設されている。ストッパ69の高さは図示していないが、アクチュエータ68Dと同高である。
図11(a)は、基板60の下面図である。図11(b)は、図11(a)のF−F線に沿う断面図である。基板60は、半径方向中央に貫通穴60bを有する。基板60の平坦な下面である敷設面60aには、弾性部63のアクチュエータ68A〜68Eに対応する複数のシートスイッチ61(61A〜61E)が平面的に敷設されている。基板60の後半部の左側において、各シートスイッチ61からセンサ導出部46が導出され、このセンサ導出部46は、信号出力部33(図4、図6、図8(b))に接続されている。
シートスイッチ61A〜61Eは、平面視において、曲率半径が異なる(半径方向の位置が異なる)同心の略環状または円弧状を呈し、半径方向外側から内側に向かって、シートスイッチ61A〜61Eの順に配設されている。最も外側のシートスイッチ61Aは、平面視において、センサ導出部46が配置される部分を除けば環状を呈するので、「略環状」とも呼称する。次に内側のシートスイッチ61Bも同様であるが、敷設の長さは、曲率半径の違いにより、シートスイッチ61Aの方が少し長い。シートスイッチ61C〜61Eは、左右に分かれて2箇所に敷設される。シートスイッチ61C〜61Eはいずれも円弧状で、外側のものほど円弧の長さが長い。
後述するように、ペダル操作によって、シートスイッチ61C〜61Eに対して、弾性部63の対応するアクチュエータ68A〜68Eが離接する。そして、各アクチュエータ68がそれぞれ対応するシートスイッチ61に当接し押圧したとき、各シートスイッチ61が動作オンを示す信号を出力する。各シートスイッチ61の構成は同様である。一例として、シートスイッチ61Aの構成を説明する。図11(b)に示すように、下側シート43と上側シート44との間にスペーサ42が介在し、スペーサ42がない空間部分がシートスイッチ61Aを構成している。下側シート43、上側シート44の各対向面にそれぞれ設けた接点部43a、44aが互いに当接すると、それを示す信号が出力され、それにより動作のオンが検出される。
動作検出ユニットUNTにおいては、シートスイッチ61とそれらに対応するアクチュエータ68とで成る組が、5組構成されることになる。敷設面60aは水平であるので、ペダル操作がされていない状態においては、半径方向外側の組のシートスイッチ61及びアクチュエータ68ほど、互いの距離が小さい(図9、図10(a)参照)。ペダル操作によって、基部65が上昇するとき、半径方向における外側の組のシートスイッチ61Aから順に、対応するシートスイッチ61Aに押圧されて検出信号を出力する。
図9に示すように、ボトム台座80は、台座支持部84に支持される。台座支持部84の中心には挿通穴84bが形成される。台座支持部84は、挿通穴84bに可動支柱47が摺動自在に挿通された状態で、不図示のスタンドに対して所定の固着具にて固定され、演奏時においても上下に動かない。なお、台座支持部84は、設置面に対して上下方向の位置が固定されていて、可動支柱47の上下移動を許せば、どのような配設態様でもよい。ペダル48の踏み込み操作により、可動支柱47が挿通穴84b内を上下に摺動する。台座支持部84の半径方向中央部には、上方に向かって位置決め支柱85が突設されている。
一方、ボトム台座80は、アルミニウム等の金属でなる重量部81と弾性材82とからなり、ドーナツ状に構成され、側面視ではほぼ逆台形を呈する。重量部81は、金属製に限られず、ある程度の重量を有する材料で構成すればよい。弾性材82は、ゴム材や硬質のスポンジ等の弾性のある材料で構成されるが、動作検出ユニットUNTの弾性部63よりも硬質である。好ましくは、押圧力を受ける当初は弾性変形しにくく、一旦変形が始まると軽い力で弾性変形していくような材料乃至構成であるのが好ましい。
重量部81の下部に凹部81aが形成され、凹部81a内に、弾性材82が嵌合されている。重量部81の上部には、薄い滑り材83が貼着されている。そして、ボトム台座80の半径方向中央の穴に、台座支持部84から上方に突出した位置決め支柱85が挿通され、弾性材82の下面82aが、台座支持部84の上面である支持面84a上に当接している。従って、ボトム台座80は、台座支持部84に対して固定されておらず、単に載置されているだけである。
この状態で、滑り材83の上面でもあるボトム台座80の平坦な上面80aと動作検出ユニットUNTの弾性部63の最下端との間に距離CLが確保される。従って、ボトム台座80は、HHパッド体PDTとは分離した構成で、HHパッド体PDTの直下に配設される。距離CLは、可動支柱47に対するHHパッド体PDTの上下方向の位置調節、またはスタンド(図示せず)に対する台座支持部84の上下方向の位置調節によって任意に調節可能である。滑り材83は、HHパッド体PDTが揺動しながら下降することを踏まえ、弾性部63が当接し得る範囲のすべてを十分にカバーできるような範囲に配設される。
滑り材83としては、超高分子ポリエチレンを基材としたフィルムを採用している。滑り材83は、ペダル操作時に、弾性部63が円滑に摺接するような材質であればよく、上記材質に限られない。すなわち、シール台紙のようなつるつるした表面を有し、自己潤滑性及び耐摩耗性が高いものが望ましい。なお、滑り材83はシート状としたが、厚みに制約はない。また、材質も上記したのは例示であり、金属であってもよい。また、重量部81の上面にフッ素、ナイロン系樹脂やポリウレタン系樹脂等をコーティングすることで施したものでもよい。あるいは、重量部81の材料を上記のような滑り機能を有する材料とし、滑り材83に相当する部分を重量部81と一体に構成してもよい。
かかる構成において、奏者がペダル48(図9参照)を踏み込むと、そのペダル操作往行程において、可動支柱47と共にHHパッド体PDTが下降し、動作検出ユニットUNTの弾性部63がボトム台座80の上面80aに当接する。その際、HHパッド体PDTは、事前のスティックによる打撃によって揺動している場合があり、必ずしも水平のまま下降するとは限らず、当接した時点で傾いている場合もある。その場合であっても、滑り材83の潤滑性により、弾性部63がボトム台座80の上面80aに対して円滑に摺動し、HHパッド体PDTの姿勢が自動的に水平となるように矯正される。
シートスイッチ61の検出については、まず、ペダル操作往行程において、最も外側のシートスイッチ61Aにアクチュエータ68Aが当接し、検出信号が出力される。特に、アクチュエータ68Aは、円周方向において離間した前後左右の4箇所に配置されているため(図10(a)参照)、弾性部63とボトム台座80との当接初期にHHパッド体PDTがいずれの方向に傾いていたとしても、いずれかのアクチュエータ68Aがそれに対応するシートスイッチ61Aを当接押圧して、オンを検出することができる。しかも、弾性部63は多少変形するが、シートスイッチ61Aが、ほぼ環状に構成されているため、アクチュエータ68Aの当接位置が円周方向に多少ずれたとしても、シートスイッチ61Aを確実に押圧することができる。
ペダル操作往行程において、次のアクチュエータ68B以降のものがシートスイッチ61B以降のものと当接する際には、HHパッド体PDTの姿勢がほぼ水平に矯正されているため、シートスイッチ61が円弧状でなくても、確実に当接する。従って、アクチュエータ68Aから順にアクチュエータ68Eまで、対応するシートスイッチ61に当接していき、それぞれ順番に動作オンが検出されていく。ペダル操作往行程において、基部65の下面の角度は徐々に水平に近づき、すべての組がオンされたとき、基部65の下面がほぼ水平になる。
また、最初に当接する組から4段階目であるアクチュエータ68Dとシートスイッチ61Dとの当接と同時に、ストッパ69が基板60の敷設面60aに当接するようになっている。基板60の敷設面60aのうちストッパ69が当接する部分については、シートスイッチ61は配設されていない。ストッパ69が敷設面60aに当接した後は、抵抗感を感じながらさらに踏み込むことで、アクチュエータ68Eがシートスイッチ61Eに当接する。これにより、ペダル操作のリアル感が得られる。
なお、シートスイッチ61Bについても、シートスイッチ61C〜61Eと同様に円弧状としてもよい。あるいは、設計により、アクチュエータ68Bとシートスイッチ61Bの組がオンする際に、HHパッド体PDTの傾きを十分に矯正できないようであれば、アクチュエータ68Bについても、アクチュエータ68Aと同様に4箇所に設ければ確実性が高くなる。
電子パッドPDの演奏においては、ペダル操作を行わないでスティックでパッド部pdを打撃するオープンハイハット、ペダル48を踏み込んだ状態でスティックにてパッド部pdを打撃するクローズドハイハットのほか、スティックを使わずに、ペダル48を踏み込むだけで発音させるペダル打撃とがある。
各シートスイッチ61の動作オンの検出出力に応じて、どのように楽音を制御するかは、任意であるが、一例として、次のようなものが挙げられる。例えば、シートスイッチ61Aがオンされていない状態で、ピエゾセンサ41、シートセンサ31f、31r、37(図1等参照)によってパッド部pdの打撃等の操作が検出されたときは、オープンハイハットとして処理し、それに応じた楽音を発生させる。シートスイッチ61のいずれかがオンされている状態で、パッド部pdの打撃が検出されたときは、クローズドハイハットとして処理し、その時点でオンされているシートスイッチ61のうち最も内側のものに応じた音色で楽音を発生させる。特に最も内側のものがシートスイッチ61Dである場合に、アコースティックHHにおけるクローズドハイハットと同じような音色とする。
ペダル打撃時には、例えば、シートスイッチ61Dがオンされた時点でペダル打撃に対応する楽音を発生させる。その際の音量は、例えば、ペダル操作往行程における所定のシートスイッチ(定められた、シートスイッチ61A〜61Cのいずれか1つ)のオンからシートスイッチ61Dのオンまでの時間に応じて設定される。
また、パッド部pdの打撃がなされて発音されている途中でペダルオン/オフ操作がなされた場合は、オン/オフが検出されるシートスイッチ61に応じて音色をリアルタイムに変化させてもよい。ところで、シートセンサ31f、31rによってミュート操作が検出された場合は、ペダル打撃によって発音されている楽音も減衰制御される。
ところで、ペダル操作往行程において、動作検出ユニットUNTの弾性部63は、スカート部64A、64B(図9参照)を介して弾性変形する。それにより、ペダル操作に対する反力(「第1反力」と称する)が発生する。その後、ストッパ69が基板60に当接すると、弾性部63自体は、あまり弾性変形しなくなる。一方、弾性部63がボトム台座80に当接した時点で、ボトム台座80の弾性材82は、台座支持部84の支持面84aから押圧力を受け始めるので、厳密には弾性材82も少し弾性変形を開始する。しかし、弾性材82の剛性は、弾性部63のスカート部64A、64Bに比し十分に大きいため、ペダル操作往行程において、ストッパ69が基板60に当接するまではほとんど弾性変形しない。
しかし、ストッパ69が基板60に当接すると、弾性材82が台座支持部84から受ける押圧力が急激に上昇するので、弾性材82は巨視的な弾性変形を開始する。すなわち、弾性材82は、弾性部63が所定量だけ弾性変形した後に巨視的な弾性変形を起こす。弾性材82の巨視的な弾性変形によって、第1反力に遅れて第2反力が発生する。
ここで、アコースティックのHHシンバルでは、ペダル操作によりトップシンバルがボトムシンバルと当接して反力が発生し、さらに踏み込むと、反力が上昇した後、各シンバルが裏返る方向に少し撓む。裏返りによる反力変化は奏者によって心地よいものであり、しかもその反力変化を感じて適度な強さで踏み込みを止めることができる。
トップシンバルがボトムシンバルと当接してから裏返る方向に撓み始めるまでに発生する反力が、上記した「第1反力」に相当する。そして、両シンバルが裏返る方向に撓み始めた後に発生する反力が、上記した「第2反力」に相当する。これにより、アコースティックHHに似たペダル操作に対するリアルな反力変化を生じさせることができる。なお、好ましい反力変化は感覚的なものであるので、第1反力と第2反力の大きさをどのように設定するかは任意である。
本実施の形態によれば、支持部50の回り止めピン54とフレーム40の回り止め穴40cとの係合により、HHパッド体PDTの揺動角度範囲が規制され、両者の形状的関係によって、前後方向と左右方向とで、規制される揺動角度範囲が異なるようにした(図3、図5等参照)。これにより、方向に応じてHHパッド体PDTの最大揺動量を異ならせて、自然で適切な揺動を生じさせることができる。特に、本実施の形態では、パッド部pdの前部だけでなく左右側部も打撃範囲として考えており、前側での打撃と左側または右側での打撃とで、HHパッド体PDTの揺動角度範囲を異ならせることができる。
また、回り止めピン54と回り止め穴40cとの係合により、HHパッド体PDTの回転角度範囲が規制される。これにより、HHパッド体PDTの揺動を規制する機構が回転止め機能を兼ねることで、コンパクトな構成で回転止めを実現することができる。しかも、揺動及び回転止め機構は、貫通穴である回り止め穴40cに、棒状部材でなる回り止めピン54を貫通して構成されるので、構成が簡単である。
本実施の形態によればまた、裏カバー70が、基部73からパッド部pdの周縁部pdaにまで放射状に延びた3本の腕部71を有するので(図4参照)、軽量化を図ると共に、電子パッドの中心に重量を集めて自然な揺動を実現することができる。しかも、ピエゾセンサ41が、裏カバー70の1つの腕部71(腕部71A)がある位置に配置されたので、打撃振動がピエゾセンサ41に適切且つ効率的に伝わるようにすることができる。
また、信号出力部32、33が、平面視において、裏カバー70の腕部71(腕部71B、71C)がある位置にそれぞれ配置され、下方から腕部71に覆われたので、信号出力部32、33を保護すると共に、外観を向上させることができる。特に、信号出力部32、33が、互いに異なる腕部がある位置に配置され、しかも、それらの腕部は、ピエゾセンサ41が配置された腕部71Aとも異なるので、電子パッドPD全体の重量バランスを良好にすることが容易である。さらに、信号線36(図8(b)参照)が、裏カバー70によって下方から隠されたので、信号線36が保護され、外観も向上する。なお、信号出力部32、33の保護と外観向上の観点に限れば、2つの信号出力部32、33、さらにはピエゾセンサ41も同じ腕部71に隠れるように配置してもよい。
本実施の形態によればまた、HHパッド体PDTのフレーム40の周縁部において、シートセンサ31fは、前側の半分以上の領域において配設される一方、シートセンサ31rは、後側の領域に配設され、それぞれ独立して検出信号を出力する。これにより、パッド部pdの前部の周縁部pdaとは別個に、パッド部pdの後部及び左右の周縁部pdaに対する打撃及びミュート操作打撃も検出可能にして、演奏表現力を拡大することができる。
本実施の形態によればまた、ボトム台座80は固定で、HHパッド体PDTがペダル操作により上下動作する点で、それぞれ、アコースティックHHのボトムシンバル、トップシンバルと同じような動作態様であるので、ペダル打撃時における動作の外観を、アコースティックのHHシンバルに近づけることができる。
また、シートスイッチ61Aが、ほぼ環状であり(図11参照)、且つアクチュエータ68Aは、円周方向において離間した前後左右の4箇所に配置されているため(図10(a)参照)、HHパッド体PDTが傾いた状態で下降したとしても、あるいは弾性部63が多少変形したとしても、シートスイッチ61Aがアクチュエータ68Aにより確実に押圧されるようにして、ペダル操作を正確に検出することができる。
また、各アクチュエータ68は、シートスイッチ61に対応する円周において最も離間した2カ所(または4箇所)に存在するので、HHパッド体PDTがいずれの方向に傾いた状態で下降しても、動作を正確に検出することができる。
なお、HHパッド体PDTが傾いた状態で下降しても動作検出を正確に行えるようにする観点からは、アクチュエータ68は、平面視において、対応するシートスイッチ61に対応する円周方向に沿う範囲で且つ該シートスイッチ61の敷設範囲内に設け、該円周において最も離間した少なくとも2カ所に設けるのがよい。その数は限られない。また、アクチュエータ68は、例示したような複数の突設部として構成してもよいが、環状またはそれに近い形状で突条状に構成してもよい。
一方、シートスイッチ61Aは略環状としたが、環状に限られない。すなわち、HHパッド体PDTの傾き及び弾性部63の変形を考慮して、アクチュエータ68Aが当接し得る基板60の敷設面60aに敷設すれば十分である。
本実施の形態によればまた、アコースティックHHのトップシンバルと同じような動作をするHHパッド体PDT自体の上下動作を検出するので、リアルな検出が可能となり、ペダル演奏と発生楽音との関係が、アコースティックHHに近いものとなる。しかもスティック打撃に対しても、ピエゾセンサ41等によって、アコースティックHHと同様のリアルな検出が可能である。
また、動作検出ユニットUNTにおいては、ペダル操作往行程において、半径方向外側の組のアクチュエータ68及びシートスイッチ61から順に当接し、検出信号が出力されるので、段階的検出により、よりリアルな動作を検出することができる。
また、シートスイッチ61については、半径方向内側のものは、円周方向において断続して敷設され、半径方向外側のものほど、円周方向の敷設範囲が広くて環状に近い。これにより、敷設範囲が広い半径方向外側のシートスイッチ61で、動作検出ユニットUNTとボトム台座80との当接初期の確実な動作検出を確保すると共に、HHパッド体PDTの傾きが収まる当接後期に動作を検出する半径方向内側のシートスイッチ61については最低限の敷設範囲として、構成を簡単にし、コストを削減することができる。
本実施の形態によればまた、動作検出ユニットUNTの弾性部63が当接するボトム台座80の上部に、滑り材83を貼着したので、傾いた状態で下降し得るHHパッド体PDTの姿勢を滑り材83の上面80aでの円滑な摺接により矯正して、動作を正確に検出することができる。
本実施の形態によればまた、HHパッド体PDTとボトム台座80とは分離して構成され、ペダル操作を検出するシートスイッチ61を有する動作検出ユニットUNTがユニット化されてHHパッド体PDTに設けられた。さらに、スティック打撃を検出するためのピエゾセンサ41、シートセンサ31f、31r、37が、信号線36、センサ導出部31fa、31ra等を通じて接続される信号出力部32と、シートスイッチ61から導出されるセンサ導出部46が接続される信号出力部33(図4、図6、図8(b))と共に、HHパッド体PDTに設けられた。
これにより、ペダル操作による信号出力に関連する信号出力部33やセンサ導出部46を、スティック打撃による信号出力に関連する信号出力部や配線と共にHHパッド体PDTに集約して、管理を容易にすることができる。すなわち、従来の構成において、トップシンバルとペダルとにセンサを設けた場合、配線や信号出力部が上下2カ所に分かれて配設されることになって、構成が複雑で部品点数も増えるだけでなく、配線が複雑で引っかかりやすい。ところが、本実施の形態では、すべての信号出力部及び配線をHHパッド体PDTに集約して配設したので、アコースティックHHのトップシンバルと同じような動作をするHHパッド体PDTで、スティック打撃とペダル打撃をそれぞれリアルに検出することを可能としながらも、配線及び出力端子の取り扱い等の管理を容易にすることができる。なお、管理容易の効果の観点に限れば、HHパッド体PDTは平面視円形でなくてもよく、例えば、扇型であってもよい。
本実施の形態によればまた、ペダル操作往行程において、動作検出ユニットUNTの弾性部63が、スカート部64A、64B(図9参照)を介して弾性変形する際に第1反力を発生させ、動作検出ユニットUNTのストッパ69が基板60に当接した以降に、ボトム台座80の弾性材82が巨視的な弾性変形を開始して、第2反力を発生させる。このような2段階の反力変化により、アコースティックHHに似たペダル操作に対する反力変化が生じるようにして、違和感が小さいペダル操作感触を実現することができる。なお、この観点に限れば、HHパッド体PDTは平面視円形でなくてもよい。
また、ストッパ69が基板60に当接するタイミングは、4段階(所定段階)目の組であるアクチュエータ68Dとシートスイッチ61Dとの当接と同時となるように設計されている。これにより、シートスイッチ61Dによるクローズドハイハットの検出と第2反力発生開始とのタイミングを合致させて、よりリアルなペダル操作感触を実現することができる。なお、この観点からは、当接タイミングを、ストッパ69が基板60に当接するタイミングと合わせるのは、アクチュエータ68Dとシートスイッチ61Dとの組に限られず、任意に設計可能である。例えば、アクチュエータ68Eとシートスイッチ61Eとの組であってもよい。組の数は5組に限られないが、5組以外に構成する場合であっても、当接タイミングをストッパ69に合わせる組は、好ましくは最後の組より1つ以上前の組とするのが望ましい。
また、第1反力を発生させる動作検出ユニットUNTが、ペダル操作によるHHパッド体PDTの動作を検出する機能を兼ねることで、コンパクトな設計で、HHパッド体PDTの上下動作のリアルな検出を行うことができる。
また、第2反力を発生させる弾性材82は、ボトム台座80において台座支持部84に支持される部分に設けられたので、ペダルオフ操作時において、ボトム台座80が弾性材82の弾性によって台座支持部84に吸着されやすい。これにより、HHパッド体PDTによってボトム台座80が持ち去られないようにし、ボトム台座80を台座支持部84に固定することなく、載置等によって支持させることが可能となり、構成や扱いが簡単である。
本実施の形態によればまた、支持部50が、回り止めピン54(図5参照)を含んで一体に構成され、支持部50に支持されたHHパッド体PDTが、支持部50に対して、相対的な回転が規制されつつ揺動し得る。且つ、支持部50にHHパッド体PDTが装着されたものが、支柱固定具59における摘み部49の操作によってスタンドの可動支柱47に対して着脱自在である。しかも、支柱固定具59の上半部は、単純な圧接機構にて可動支柱47を固定可能である。従って、可動支柱47は単純な棒状体であればよいので、市販のスタンドを汎用的に利用可能である。よって、HHパッド体PDTを、その揺動及び回り止め機能を確保した状態で市販のスタンドに簡単に着脱することができる。また、HHパッド体PDTを、支持部50とは切り離して扱うことができるので、販売や輸送時に嵩張らず、便利である。
なお、本実施の形態においては、回り止めピン54(図5参照)が突設される位置は、基部51aでなくてもよく、可動支柱47に対して固定的な位置から突設されていればよい。
なお、動作検出ユニットUNTがHHパッド体PDTの上下動作を検出するのは、アクチュエータ68とシートスイッチ61の組であったが、検出機構はこれに限られず、押圧されることに起因して信号を出力するものであればよい。例えば、シートスイッチ61に代えて固定接点パターンを設けると共に、アクチュエータ68の先端に可動接点を設けた接点型スイッチとしてもよい。また、検出機能を確保する観点に限っていえば、アクチュエータ68とシートスイッチ61とは、上下関係を逆にしてもよい。
なお、動作の外観をアコースティックのHHシンバルに近づけると共に、トップシンバルと同じようなリアルな動作を検出する観点からは、動作検出ユニットUNTをボトムシンバルに相当する位置に固定的に配設してもよい。その場合は、HHパッド体PDTに配設されて動作検出ユニットUNTに当接する部分に、滑り材83に相当するものを配設する。
(第2の実施の形態)
図12は、本発明の第2の実施の形態の形態に係る電子パッドの右側面図である。本実施の形態では、電子パッドPDとしてシンバル形の電子パッドPDを例示する。この電子パッドPDは、第1の実施の形態におけるボトム台座80を有しないので、シンバルパッド体PDT2のみで構成される。シンバルパッド体PDT2は、HHパッド体PDTに比し、動作検出ユニットUNTが無い点が異なり、その他のパッド部pd、裏カバー70の構成は同様である。また、この電子パッドPDは、第1の実施の形態における支持部50に相当する支持部150に揺動自在に支持される。
図13は、シンバルパッド体PDT2の半径方向中央部の断面図である。このシンバルパッド体PDT2は、シンバル形であるので、それを支持するものは、ペダル操作で上下する可動支柱47(図9参照)とは異なり、設置面(乃至スタンド)に対して固定された固定支柱90である。フェルト支持部材51、フェルト52、53、固定用ナット57は、第1の実施の形態のものに対して形状は異なるが、構成や役割は同様である。フェルト支持部材51が、固定支柱90に固定される。これらにより、フェルト支持部材51に対してシンバルパッド体PDT2が揺動可能に支持される。
また、固定支柱90の、シンバルパッド体PDT2の下方には、基部91が固定され、基部91から、回り止めピン54(図5参照)に相当する回り止めピン92が突設される。回り止めピン92の鉛直長さが回り止めピン54とは異なるが、緩衝材55が被覆され、回り止め穴40cに囲繞されている点で、第1の実施の形態と同様である。これにより、シンバルパッド体PDT2の回転角度規制及び揺動角度範囲規制がなされる。
本実施の形態によれば、HHパッド体PDTに特有な部分を除き、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
なお、第1、第2の実施の形態において、シートセンサ31(図8(a)参照)の配設範囲は、目的に応じて、変形が考えられる。図14は、シートセンサ31の配設範囲の変形例を示すフレーム40の平面図である。
例えば、前後方向と左右方向とで、HHパッド体PDTやシンバルパッド体PDT2の最大揺動量を異ならせて、自然で適切な揺動を生じさせる観点に限れば、シートセンサ31は、少なくとも、フレーム40の前側の半分以上の領域において配設すればよく、それは断続的なものであってもよい。従って、図14(a)、(b)、(d)に示すような配設態様でもよい。
また、パッド部pdの周縁部pdaへの演奏操作について、前部と後部及び/又は左右部とに対する打撃及びミュート操作打撃も検出可能にして、演奏表現力を拡大する観点に限れば、シートセンサ31は、少なくとも、フレーム40の前側の領域と、後側及び/又は左右の領域とにおいて配設すればよく、それは断続的なものであってもよい。従って、図14(a)〜(d)に示すような配設態様でもよい。
なお、第1、第2の実施の形態において、回り止めピン54、92は、回り止め穴40cを貫通する構成であったが、これに限られない。すなわち、平面視において、回り止めピン54、92が、パッド部pdに固定的に設けられた被係合部に囲繞されていて、HHパッド体PDTが揺動して傾いたときに回り止めピン54が係合するような位置関係にあればよく、高さ方向にオーバーラップしていなくてもよい。従って、被係合部も穴に限られない。
例えば、図15に、回転及び揺動規制機構の変形例を部分斜視図として示すように、回り止め穴40cに代えて、パッド部pdに固定的に筒状の被係合部93を設け、回り止めピン54を被係合部93の内側に遊嵌させる。なお、回り止めピン54が被係合部93内に完全に嵌入されていなくても、HHパッド体PDTの揺動時に回り止めピン54が被係合部93に下縁部に係合するように配設すればよい。
また、回り止めピン54、92については、それらの先端部の突設方向は、鉛直でなくてもよく、斜めでもよい。また、回り止めピン54、92の断面形状は問わず、ピンのような形態でなくてもよく、L字形状でなくてもよい。方向によって揺動範囲を異ならせるためには、回り止め穴40cや被係合部93の内壁に対して、前後と左右とのクリアランスの差があればよい。
なお、揺動角度範囲を異ならせる方向は、互いに直角をなす前後方向と左右方向とを例示したが、これに限られず、互いに直角でなくてもよい。シートセンサ31の配設範囲も、揺動角度範囲が異なる方向に応じて設定すればよい。
なお、第1、第2の実施の形態において、裏カバー70の腕部71は3本としたが、これに限るものでなく、放射状にほぼ均等な角度で延設されれば、4本以上でもよい。
なお、第1、第2の実施の形態において、第1反力は動作検出ユニットUNTが発生させ、ハイハットシンバルの裏返りに近似した第2反力はボトム台座80が発生させるように構成したが、ペダル操作時の反力変化をアコースティックなものに近似させる観点からは、反力発生機構を設ける場所は問わない。それぞれ、HHパッド体PDTまたはボトム台座80のいずれかの側に設ければよく、設ける側が一緒であってもよい。位置的な上下関係も問わない。また、反力発生機構の数も、3個以上として、3段階以上の段階的変化を実現してもよい。また、反力発生に限って言えば、ボトム台座80の弾性材82は、ボトム台座80の下側でなく上側に設け、動作検出ユニットUNTと当接させるようにしてもよい。
PD 電子パッド、 PDT HHパッド体、 PDT2 シンバルパッド体、 30 ゴムパッド、 32 信号出力部、 36 信号線、 40 フレーム、 41 ピエゾセンサ(打撃検出手段)、 50、150 支持部、 pd パッド部、 pda 周縁部、 70 裏カバー、 71 腕部、 73 基部