JP2009126437A - 車両用シート - Google Patents

Abstract

【課題】 ダッシュボードとシートクッションとの間に乗員の脚が挟まれ難く、また挟まれても乗員を容易に救出できるようにする。
【解決手段】 自動車のフロントシートのシートクッションのフレームに固定されてクッション材１９を支持するシートパン１８は、その前縁の中央部に車体後方に凹む切欠き１８ａを備える。車両の正面衝突時にダッシュボードが後退したとき、ダッシュボードに押された乗員の脚がクッション材１９を弾性変形させながらシートパン１８の切欠き１８ａに嵌合することで、乗員の脚が受ける衝撃を最小限に抑えるとともに、ダッシュボードとシートクッションとの間から乗員の脚を容易に抜き取ることが可能になる。
【選択図】 図４

Description

本発明は、シートクッションのフレームにシートパンを支持し、前記シートパンの表面をクッション材で覆った車両用シートに関する。

自動車の正面衝突時に、インストルメントパネルとシートクッションとの間に乗員の脚が挟まれた場合に、シートをフロアパネルに前後位置調整可能に支持するシートスライド調整装置のロックを解除するロック解除装置を設けることで、シートレールに沿ってシートを後方にスライドさせて乗員の救出を可能にするものが、下記特許文献１により公知である。
特開平１０−１１９６１４号公報

ところで上記従来のものは、インストルメントパネルの変形、あるいは衝突荷重の入力と同時にロック解除装置が作動するので、車両が静止する前にシートスライド調整装置のロックが解除されて二次衝突が発生する可能性があるだけでなく、車両の停止後にシートを後方にスライドさせようとしても、衝突の衝撃でシートレールが変形してシートがスライド不能になる可能性があった。

本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ダッシュボードとシートクッションとの間に乗員の脚が挟まれ難く、また挟まれても乗員を容易に救出できるようにすることを目的とする。

上記目的を達成するために、請求項１に記載された発明によれば、シートクッションのフレームにシートパンを支持し、前記シートパンの表面をクッション材で覆った車両用シートにおいて、前記シートパンの前縁に切欠きを形成し、前記シートクッションに着座した乗員の脚が前記クッション材を変形させながら前記切欠きに嵌合可能としたことを特徴とする車両用シートが提案される。

また請求項２に記載された発明によれば、請求項１の構成に加えて、前記切欠きは前記シートパンの前縁の車幅方向中間部に形成されることを特徴とする車両用シートが提案される。

また請求項３に記載された発明によれば、請求項１の構成に加えて、前記切欠きは前記シートパンの前縁の車幅方向両端部に二つ形成されることを特徴とする車両用シートが提案される。

また請求項４に記載された発明によれば、請求項１〜請求項３の何れか１項の構成に加えて、前記切欠きに前記クッション材を保持可能な脆弱なクッション材保持部材を設けたことを特徴とする車両用シートが提案される。

また請求項５に記載された発明によれば、請求項１〜請求項４の何れか１項の構成に加えて、前記切欠きを覆うクッション材に車体前方に延びる櫛歯状のスリットを形成したことを特徴とする車両用シートが提案される。

尚、実施の形態のサイドフレーム１５、前部連結フレーム１６および後部連結フレーム１７は本発明のフレームに対応する。

請求項１の構成によれば、シートクッションのフレームに支持されて表面をクッション材で覆われたシートパンの前縁に切欠きを形成したので、車両の衝突時にダッシュボード等の車体部材が後退してシートクッションとの間に乗員の脚が挟まれたとき、シートクッションに着座した乗員の脚がクッション材を変形させなら前記切欠きに嵌合することで、乗員の脚が受ける衝撃を最小限に抑えるとともに、車体部材とシートクッションとの間から乗員の脚を容易に抜き取ることが可能になる。

また請求項２の構成によれば、シートパンの前縁の車幅方向中間部に切欠きを形成したので、その切欠きに乗員の左右の脚を逃がすことができる。

また請求項３の構成によれば、シートパンの前縁の車幅方向両端部に二つの切欠きを形成したので、乗員の左右の脚を二つの切欠きにそれぞれ逃がすことができる。

また請求項４の構成によれば、シートパンの切欠きにクッション材を保持可能な脆弱なクッション材保持部材を設けたので、通常時にクッション材保持部材でクッション材を保持して座り心地を確保しながら、車両の衝突時の衝撃でクッション材保持部材を容易に破断して乗員の脚をシートパンの切欠きの内部に確実に逃がすことができる。

また請求項５の構成によれば、シートパンの切欠きを覆うクッション材に車体前方に延びる櫛歯状のスリットを形成したので、車両の衝突時にスリットによりクッション材を容易に変形させて乗員の脚をシートパンの切欠きの内部に確実に逃がすことができる。

以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。

図１〜図５は本発明の第１の実施の形態を示すもので、図１は自動車の運転席シートの平面図、図２は図１の２−２線断面図、図３は図２の３−３線断面図、図４はシートパンおよびクッション材の斜視図、図５は車両の正面衝突時の作用説明図である。

図１〜図３に示すように、自動車の運転席であるフロントシート１１は、乗員が着座するシートクッション１２と、シートクッション１２の後端にリクライニング軸１３を介して下端を枢支されたシートバック１４とを備える。シートクッション１２のフレームは、左右のサイドフレーム１５，１５と、両サイドフレーム１５，１５を車幅方向に連結する前部連結フレーム１６および後部連結フレーム１７とで構成されており、両サイドフレーム１５，１５の上部に載置された板金プレス製のシートパン１８の上面が、弾性を有するクッション材１９で覆われる。

フロアパネル２０の上面に車幅方向に伸びる前部クロスメンバ２１および後部クロスメンバ２２が固定されており、これら前部クロスメンバ２１および後部クロスメンバ２２に、車体前後方向に延びる左右一対のシートレール２３，２３を介してシートクッション１２が前後位置調整可能に支持される。各シートレール２３は下側の固定レール２４と上側の可動レール２５とで構成されており、固定レール２４の前部に設けた前部ブラケット２６がボルト２７で前部クロスメンバ２１に固定され、固定レール２４の後端に設けた後部ブラケット２８がボルト２９で後部クロスメンバ２２に固定される。シートクッション１２の各サイドフレーム１５の下面に固定された可動シートレール２５は前後一対のスライダ２５ａ，２５ａを備えており、これらのスライダ２５ａ，２５ａが固定レール２４の内部に摺動自在に係合する。

図４から明らかなように、クッション材１９で覆われるシートパン１８の前縁中央部には、後ろ向きに四角形状に凹む切欠き１８ａが形成される。この切欠き１８ａは、シートパン１８をクッション材１９で覆った状態では外部から目視不能である。

次に、上記構成を備えた本発明の第１の実施の形態の作用を説明する。

図２に示す通常時には、フロントシート１１の前端とダッシュボード３０との間には充分な空間があり、フロントシート１１に着座した乗員の脚Ｌ，Ｌはフロントシート１１およびダッシュボード３０間の空間に配置される。

図５に示すように、車両が正面衝突するとダッシュボード３０が車室内に向かって後退するため、フロントシート１１に着座した乗員の脚Ｌ，Ｌがダッシュボード３０に押されて後退し、フロントシート１１のシートクッション１２の前縁との間に挟まれる可能性がある。しかしながら、本実施の形態ではシートクッション１２のシートパン１８の前縁に切欠き１８ａが形成されているため、弾性を有するクッション材１９を押しつぶしながら乗員の脚Ｌ，Ｌが切欠き１８ａの内部に嵌合し（図１の脚Ｌ（１），Ｌ（１）参照）、後退するダッシュボード３０から受ける衝撃を弱めることができる。

しかも乗員の脚Ｌ，Ｌがダッシュボード３０とシートパン１８との間に強く挟まれることがないため、シートバック１４を後方にリクライニングさせることで、乗員の脚Ｌ，Ｌをシートパン１８の切欠き１８ａから抜き取り、乗員を容易に救出することができる。

図６および図７は本発明の第２の実施の形態を示すもので、図６は自動車の運転席シートの平面図、図７はシートパンおよびクッション材の斜視図である。

上述した第１の実施の形態では、シートパン１８の前縁の中央部に単一の切欠き１８ａが形成されているが、第２の実施の形態では、シートパン１８の前縁の左右両端部にそれぞれ切欠き１８ａ，１８ａが形成されている。この第２の実施の形態によれば、車両の正面衝突時に、シートパン１８の左右の切欠き１８ａ，１８ａに乗員の左右の脚Ｌ，Ｌをそれぞれ嵌合させることで、衝突の衝撃の緩和するとともに脱出を容易にすることができる。

図８および図９は本発明の第３の実施の形態を示すもので、図８は自動車の運転席シートの平面図、図９はシートパンおよびクッション材の斜視図である。

第３の実施の形態は上述した第２の実施の形態の変形であって、シートパン１８の左右の切欠き１８ａ，１８ａに対応するクッション材１９に、車体前方に延びる多数のスリット１９ａ…を平行に形成したものである。クッション材１９は表皮によって覆われるため、スリット１９ａ…外部からは目視不能である。

しかして、車両の正面衝突時にシートパン１８の左右の切欠き１８ａ，１８ａに乗員の左右の脚Ｌ，Ｌがそれぞれ嵌合するとき、多数のスリット１９ａ…を有するクッション材１９は容易に変形し、乗員の左右の脚Ｌ，Ｌを切欠き１８ａ，１８ａの内部にスムーズに導入することができる。

次に、図１０に基づいて本発明の第４の実施の形態を説明する。

第４の実施の形態は上述した第１の実施の形態の変形であって、シートパン１８の中央部の切欠き１８ａの開口部を覆うように、車両前後方向の荷重に対して脆弱な、例えば合成樹脂製のクッション材保持部材３１を配置したものである。

シートパン１８に切欠き１８ａを形成すると、クッション材１９の支持が不安定になり、着座した乗員の体重でクッション材１９の前部が沈んで座り心地が悪くなる可能性があるが、このクッション材保持部材３１でクッション材１９の前部を下方から支持することで、クッション材１９の沈みを防止して座り心地を高めることができる。

そして車両の正面衝突時に前方からの荷重が加わると、脆弱なクッション材保持部材３１は容易に破断して乗員の脚Ｌ，Ｌの通過を許容することができる。

次に、図１１に基づいて本発明の第５の実施の形態を説明する。

第５の実施の形態は上述した第４の実施の形態の変形であって、シートパン１８の左右両端部の切欠き１８ａ，１８ａの開口部を覆うように、脆弱な合成樹脂製のクッション材保持部材３１，３１を配置したものである。この第５の実施の形態によっても、上述した第４の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。

以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。

例えば、実施の形態では運転席用のフロントシート１１を例示したが、本発明は助手席用のフロントシートに対しても適用することができる。

第１の実施の形態に係る自動車の運転席シートの平面図 図１の２−２線断面図 図２の３−３線断面図 シートパンおよびクッション材の斜視図 車両の正面衝突時の作用説明図 第２の実施の形態に係る自動車の運転席シートの平面図 シートパンおよびクッション材の斜視図 第３の実施の形態に係る自動車の運転席シートの平面図 シートパンおよびクッション材の斜視図 第４の実施の形態に係るシートパンおよびクッション材の斜視図 第５の実施の形態に係るシートパンおよびクッション材の斜視図

符号の説明

１２ シートクッション
１５ サイドフレーム（フレーム）
１６ 前部連結フレーム（フレーム）
１７ 後部連結フレーム（フレーム）
１８ シートパン
１８ａ 切欠き
１９ クッション材
１９ａ スリット
３１ クッション材保持部材
Ｌ 脚

Claims (5)

1. シートクッション（１２）のフレーム（１５，１６，１７）にシートパン（１８）を支持し、前記シートパン（１８）の表面をクッション材（１９）で覆った車両用シートにおいて、
   前記シートパン（１８）の前縁に切欠（１８ａ）きを形成し、前記シートクッション（１２）に着座した乗員の脚（Ｌ）が前記クッション材（１９）を変形させながら前記切欠き（１８ａ）に嵌合可能としたことを特徴とする車両用シート。
2. 前記切欠き（１８ａ）は前記シートパン（１８）の前縁の車幅方向中間部に形成されることを特徴とする、請求項１に記載の車両用シート。
3. 前記切欠き（１８ａ）は前記シートパン（１８）の前縁の車幅方向両端部に二つ形成されることを特徴とする、請求項１に記載の車両用シート。
4. 前記切欠き（１８ａ）に前記クッション材（１９）を保持可能な脆弱なクッション材保持部材（３１）を設けたことを特徴とする、請求項１〜請求項３の何れか１項に記載の車両用シート。
5. 前記切欠き（１８ａ）を覆うクッション材（１９）に車体前方に延びる櫛歯状のスリット（１９ａ）を形成したことを特徴とする、請求項１〜請求項４の何れか１項に記載の車両用シート。

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