JP2009120981A - タイヤ用コード材及びそれを用いた空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】空気入りタイヤのカーカスコードとして好適なタイヤ用コード材を提供する。
【解決手段】タイヤ用コード材9は、有機繊維からなり、第1のストランド9aと、該第1のストランド9aよりも熱収縮率が小さい第2のストランド9bとを撚り合わせることにより形成される。しかも、第1のストランド9aの熱収縮率ε1と、第2のストランド9bの熱収縮率ε2との差(ε1−ε2)が2%以上である。タイヤ用コード材9は、カーカスコードとして好適である。
【選択図】図3

Description

本発明は、熱収縮率が異なるストランドを撚り合せることにより形成されたタイヤ用コード材及びそれを用いた空気入りタイヤの製造方法に関する。
近年、乗用車の高性能化に伴い、高速走行時における操縦安定性が求められている。そのため、タイヤ用コード材(例えばカーカスコード)に、伸びの小さいコード材を用いることにより、タイヤにスリップ角等が与えられたときのタイヤの変形を抑制して、旋回性能などの向上が図られている。しかしながら、伸びが小さいカーカスコードは、直進進行時に路面から入力される微小な振動を吸収し難く、ひいては、乗り心地が悪いという傾向がある。なお、カーカスコードに関する先行技術としては、次のものがある。
特開2001−246908号公報
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、熱収縮率が異なる第1及び第2のストランドを互いに撚り合わせるとともに、それらの熱収縮率の差を一定範囲に限定することを基本として、低引張荷重時に伸び易くする一方、高引張荷重時には伸び難くすることにより、例えばカーカスコードとして用いられたときに、タイヤの操縦安定性と乗り心地との両立を図ることが可能なタイヤ用コード材及びそれを用いた空気入りタイヤの製造方法を提供することを主たる目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、有機繊維からなるタイヤ用コード材であって、第1のストランドと、該第1のストランドよりも熱収縮率が小さい第2のストランドとを撚り合わせることにより形成され、しかも、第1のストランドの熱収縮率ε1(%)と、第2のストランドの熱収縮率ε2(%)との差(ε1−ε2)が2〜5(%)であることを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、正量繊度が2000〜5000(dtex)である請求項1記載のタイヤ用コード材である。
また請求項3記載の発明は、前記第1及び第2のストランドは、ポリエステル繊維からなる請求項1又は2記載のタイヤ用コード材である。
また請求項4記載の発明は、前記第1のストランドは、前記第2のストランドよりも繊度が大きい請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ用コード材である。
また請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載されたタイヤ用コード材をカーカスコードとして用いて生カバーを成型する工程と、前記生カバーを加硫する工程とを含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法である。
本発明のタイヤ用コード材は、ともに有機繊維からなる第1のストランドと該第1のストランドよりも熱収縮率が小さい第2のストランドとを撚り合わせることにより形成される。しかも、第1のストランドと第2のストランドとの熱収縮率の差が一定範囲に限定される。このようなコード材は、タイヤ加硫成形時の熱によって各ストランドが収縮するが、相対的に第1のストランドの方が大きく縮む。このため、コード材は、第1のストランドが直線状へと変化する一方、その周囲を第2のストランドが螺旋状に巻付くような形状へと変わる。そして、このような撚りを有するコード材は、低引張荷重領域では第1のストランドが優先的に荷重を受けるため、比較的伸び易くなる一方、高引張荷重時では、第1及び第2のストランドが略均等に荷重を受けるため、相対的に伸び難くなる。
従って、請求項5記載の発明のように、このようなコード材をカーカスコードとして用いた生カバーを加硫して得られた空気入りタイヤは、カーカスコードに対する引張荷重が小さい通常走行時では、カーカスコードによる振動吸収性能が高まって乗り心地が向上する。他方、カーカスコードに対する荷重が大きくなる旋回走行時では、カーカスの変形が抑制され、ひいては、操縦安定性が向上する。このように、本発明のタイヤ用コード材は、操縦安定性と乗り心地とを高いレベルで両立し得る。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1のタイヤ軸を含むタイヤ子午線断面図を示す。該空気入りタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されしかもスチールコードが用いられた2枚のベルトプライを重ね合わせたベルト層7とが設けられており、この例では乗用車用のラジアルタイヤ1が例示される。
前記カーカス6は、有機繊維からなるカーカスコードをタイヤ赤道Cに対して例えば80゜〜90゜の角度で配列したラジアル構造の1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aにより構成されている。またカーカスプライ6Aは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aからのびて前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを有する。なお前記カーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびかつ硬質ゴムからなるビードエーペックス8が配され、ビード部4が適宜補強される。
このような空気入りタイヤ1は、慣例に従い、カーカス6を含む未加硫の生カバーを成型する工程と、該生カバーを金型で加硫成形する加硫工程とを経て製造される。
図2には、本実施形態のタイヤ用コード材(以下、単に「コード材」ということがある。)9の加硫成形前の状態が示される。本実施形態において、前記コード材9は、カーカスコードとして用いられるものであって、有機繊維からなる第1のストランド9aと、有機繊維からなりかつ前記第1のストランド9aよりも熱収縮率が小さい第2のストランド9bとが略均等に撚り合わせることにより形成される。該コード材9は、図2に示される状態で前記生カバーのカーカスプライの中に組み入れられる。
このようなコード材9は、前記加硫工程時の熱を受けることにより、少なくとも第1のストランド9aが収縮する。図3には、このような加硫による熱収縮後のコード材9が示される。図3から明らかなように、第1のストランド9aは、第2のストランド9bより熱収縮率が大きいので、第2ストランド9bよりも大きく縮む。このため、第1及び第2のストランド9a、9bが実質的に均等に撚られていたコード材9は、加硫後には、前記第1のストランド9aが螺旋状から直線状へと近づく変形をなす一方、その周りに第2のストランド9bが例えば弛みを有して巻付くような撚り形状へと変化する。つまり、加硫済みの空気入りタイヤ1のカーカスプライ6Aの中では、コード材9は図3の態様で存在する。
以上のようなコード材9の作用について図4を参照しつつ述べる。図4には、前記コード材9における荷重−伸びのグラフが示される。X軸はコード材9の伸び、Y軸はコード材9に作用する引張荷重である。コード材9は、荷重が0〜P1までの低引張荷重領域では、第1のストランド9aが実質的に荷重を受ける。言い換えると、第2のストランド9bは、荷重の増加によって自らの弛みが減少するに止まり、実質的な荷重を負担しない。このため、コード材9は低荷重領域では比較的伸び易くなる。一方、高引張荷重領域(荷重がP1よりも大の領域)では、第2のストランド9bの弛みも無くなり、ひいては第1及び第2のストランド9a、9bの双方で荷重を受け持つ。このため、コード材9は、低荷重領域の場合に比して相対的に伸び難くなる。つまり、本実施形態のコード材9は、低荷重領域での弾性率ELよりも、高荷重領域での弾性率EHが大きくなる。
従って、このようなコード材9がカーカスコードとして組み入れられた本実施形態の空気入りタイヤ1は、カーカスコードの張力が比較的小さい直進走行時では、路面から入力される微小な振動ないし衝撃をカーカスコードの柔軟な伸びによって吸収できるので乗り心地が向上する。他方、カーカスコードの張力が大きくなる旋回走行時では、カーカスコードを伸び難くし、カーカス6の変形を抑えて操縦安定性を向上させる。このように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、操縦安定性と乗り心地とを高いレベルで両立させ得る。
なお、コード材9の弾性率が実質的に変化するときの伸びS(図4)は、特に限定されるものではないが、小さすぎると乗り心地の向上が期待できないおそれがあり、逆に大きすぎると、操縦安定性の向上が期待できないおそれがある。従って、操縦安定性と乗り心地との両立をより確実に達成させるために、前記伸びSは、好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上が望ましく、また好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下が望ましい。
なお、前記伸びSは、コード材の荷重−伸びのグラフにおいて、低荷重領域での弾性率ELが、高荷重領域での弾性率EHに変化するときの伸びである。本実施形態のように、前記グラフが、荷重と伸びが比例する低荷重側の直線部L1及び高荷重側の直線部L2を有する場合には、それらの延長線L1a及びL2aの交点Kの伸びとして定められるものとる。
また、前記交点Kでの荷重P1は、好ましくは50N以上、より好ましくは60N以上が望ましく、また好ましくは100N以下、より好ましくは80N以下が望ましい。
また、加硫前の前記コード材9において、第1のストランド9aの熱収縮率ε1(%)と第2のストランド9bの熱収縮率ε2(%)との差(ε1−ε2)は、2〜5%であることが必要である。
前記熱収縮率の差(ε1−ε2)が2%未満の場合、加硫時の熱によって生じる第1のストランド9a及び第2のストランド9bの収縮量の差が小さくなり、ひいては撚り形状に上述の変化が実質的に生じず、ひいては荷重によって弾性率が変化するという上述の作用も得られない。このような観点より、前記熱収縮率の差(ε1−ε2)は、より好ましくは2.5%以上、さらに好ましくは3%以上が望ましい。
他方、前記熱収縮率の差(ε1−ε2)が5%を超える場合、加硫時の熱によって生じる第1のストランド9aの縮み量が第2のストランド9bに比して著しく大きくなる。このため、低荷重領域での第1のストランド9aの伸びが大きくなり、ひいては第1のストランドの耐久性が低下するおそれがある。このような観点より、前記熱収縮率の差(ε1−ε2)は、より好ましくは4.5%以下、さらに好ましくは4%以下が望ましい。
なお、本明細書において、前記熱収縮率は、各ストランドを無負荷の状態で放置しかつ180℃の温度下で30分間加熱した後、室温で30分放冷したときの加熱前後のコードの縮み量yと、縮む前の元のコード長さxとの比(y/x)(%)で表される。
前記熱収縮率の差(ε1−ε2)は、種々の方法によって調節することができる。例えば、双方のストランド9a、9bを同じ有機繊維材料で形成するとともに、第2のストランド9bにのみ、加硫成型に先立つ加熱処理を施し、ある程度の熱収縮を予め発生させておくことにより、熱収縮率の差を調節できる。ただし、双方のストランド9a、9bについて、加硫成形前に、加熱時間及び/又は加熱温度等が異なる加熱処理を施すことによって、それらの熱収縮率に差を設けることもできる。
さらに、第1及び第2のストランド9a、9bに、結晶構造等を異ならせた同じ有機繊維材料を用いることもできる。一例としては、第1のストランド9aにいわゆるレギュラーポリエステル材料を、また第2のストランド9bにハイモジュラス(低熱収縮)ポリエステル材料を使用することもできる。なおレギュラーポリエステル及びハイモジュラスポリエステルの各結晶構造は、夫々結晶領域のサイズ、割合及び/又は配向度が夫々異なる。これにより、ハイモジュラスポリエステルは、低い熱収縮率を、またレギュラーポリエステルは大きい熱収縮率をそれぞれ示すことができる。
また、さらに他の方法としては、第1のストランド9aと第2のストランド9bとに異なる有機繊維材料を用いることもできる。しかしながら、加硫形後のタイヤ性能を安定させるためには、各ストランド9a及び9bに、同じ有機繊維材料を採用することが望ましい。
また、前記第1及び第2のストランド9a、9bを構成する有機繊維としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエステル、ナイロン、レーヨン又はアラミド等を採用することができ、とりわけ、操縦安定性と乗り心地との適度なバランス及び耐疲労性を確保しうるとともに、熱収縮率に差をつけやすいという理由によりポリエステル、中でもポリエチレンテレフタレート繊維が望ましい。
また、第1のストランド9aの熱収縮率ε1及び第2のストランド9bの熱収縮率ε2の各々の値も特に限定されるものではないが、該値が大きすぎると加硫成形時の収縮が過度に大きくなり、ひいてはカーカスコードがタイヤ内腔側に食い込むいわゆるペネトレーションなどの成型不良が生じるおそれがある。他方、熱収縮率ε1及びε2が小さすぎると、両者に十分な差をつけることが困難になる。このような観点より、第1のストランド9aの熱収縮率ε1及び第2のストランド9bの熱収縮率ε2の各値は、いずれも、好ましくは3%以上、より好ましくは3.5%以上が望ましく、また好ましくは8%以下、より好ましくは7.5%以下が望ましい。
また、前記コード材9がカーカスコードとして用いられる場合、その正量繊度が小さすぎると、カーカス6の剛性を十分に確保できず、ひいては耐久性が低下するおそれがある。このような観点より、前記コード材9の正量繊度は、好ましくは2000dtex以上、より好ましくは2100dtex以上、さらに好ましくは2200dtex以上が望ましい。他方、前記コード材9の正量繊度が大きすぎると、カーカス6の剛性が過度に上昇して乗り心地が悪化するおそれがある。また、タイヤ重量が増加し、燃費性能が低下するおそれもある。このような観点より、前記コード材9の正量繊度は、好ましくは5000dtex以下、より好ましくは、4800dtex以下、さらに好ましくは4500dtex以下が望ましい。なお、前記正量繊度は、JIS−L1017に準拠して測定される。
さらに、熱収縮率の大きい第1のストランド9aは、前記第2のストランド9bよりも繊度が大きい(即ち、ストランド径が大きい)ことが望ましい。第1のストランド9aは、低引張荷重時に優先的に荷重を支持する。このため、この第1のストランド9aを相対的に太くすることによって、低荷重領域での第1のストランド9aの破断強度を高め、ひいてはコード全体としての耐久性の低下を防止することが望ましい。他方、第1のストランド9aの繊度が、第2のストランド9bに比して過度に大きくなると、低荷重領域での伸びが失われ乗り心地の向上が期待できないおそれがある。このような観点より、第1のストランド9aの繊度は、第2のストランド9bの繊度の1.2倍以上、より好ましくは1.3倍以上が望ましく、また好ましくは2.2倍以下、より好ましくは2.0倍以下が望ましい。
以上本発明の実施形態につい説明したが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではなく種々の態様に変形して実施し得るのは言うまでもない。
表1の仕様に基づいたテストコードを5cm当り50本打ち込んだ1枚のカーカスプライを用いて生カバーを成型し、これを加硫することによりサイズ215/45ZR17の乗用車用ラジアルタイヤが製造された。そして、各タイヤについて性能がテストされた。なお、各タイヤにおいて、カーカスコード以外はいずれも同一の仕様を有し、ベルト層には、1×4×0.27のスチールコードを5cm当り50本打ち込んだ2枚のベルトプライが用いられた。
テスト方法は次の通りである。
<乗り心地>
各試供タイヤを内圧200kPaで上記リムに組み付けて排気量2000ccの国産乗用車の四輪に装着して凹凸路面を走行させ、そのときの乗り心地がドライバーによる官能により10点法で評価された。数値が大きいほど良好である。
<操縦性・安定性>
各試供タイヤを内圧200kPaで上記リムに組み付けて排気量2000ccの国産乗用車の四輪に装着させるとともに、速度120km/hで乾燥アスファルト路面を走行させ、そのときの操縦性(ステアリング操作に対する応答性、グリップ等に関する特性)及び安定性(ステアリング操作に対するタイヤの剛性感等)がドライバーの官能によりそれぞれ10点法で評価された。数値が大きいほど良好である。
<コード強力保持率>
各タイヤを解体してコードを取りだし、「JIS L 1017 化学繊維タイヤコード試験方法」の付属書1の「2.2.2ディスク疲労強さ(グッドリッチ法)」に準じて、伸長率を0%、圧縮率5%で100時間試験を行い、試験後の伸長・圧縮疲労率(強度保持率)(%)を算出した。数値が大きいほど良好である。
テストの結果を表1に示す。
Figure 2009120981
テストの結果、実施例のコードを用いたタイヤは、操縦安定性及び乗り心地に優れることが確認できた。また、耐久性にも優れることが確認できた。
本実施形態の空気入りタイヤの断面図である。 本実施形態の熱収縮前のタイヤ用コード材の部分拡大図である。 図2の熱収縮後のコード材の部分拡大図である。 タイヤ用コード材の荷重−伸びのグラフである。
符号の説明
1 空気入りタイヤ
9 タイヤ用コード材
9a 第1のストランド
9b 第2のストランド
ε1 第1のストランドの熱収縮率
ε2 第2のストランドの熱収縮率

Claims (5)

  1. 有機繊維からなるタイヤ用コード材であって、
    第1のストランドと、該第1のストランドよりも熱収縮率が小さい第2のストランドとを撚り合わせることにより形成され、しかも、
    第1のストランドの熱収縮率ε1(%)と、第2のストランドの熱収縮率ε2(%)との差(ε1−ε2)が2〜5(%)であることを特徴とするタイヤ用コード材。
  2. 正量繊度が2000〜5000(dtex)である請求項1記載のタイヤ用コード材。
  3. 前記第1及び第2のストランドは、ポリエステル繊維からなる請求項1又は2記載のタイヤ用コード材。
  4. 前記第1のストランドは、前記第2のストランドよりも繊度が大きい請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ用コード材。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載されたタイヤ用コード材をカーカスコードとして用いて生カバーを成型する工程と、前記生カバーを加硫する工程とを含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
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