JP5285265B2 - タイヤ用コード及びそれを用いた自動二輪車用タイヤ - Google Patents

タイヤ用コード及びそれを用いた自動二輪車用タイヤ Download PDF

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本発明は、加速時の安定性と旋回時のグリップ性能とを両立し得るタイヤコード及びそれを用いた自動二輪車用タイヤに関する。
従来、自動二輪車タイヤのカーカスコードには、レーヨン、ナイロン又はポリエステル等の有機繊維からなる2本のストランドを撚り合わせた有機繊維コードが一般的に用いられている。また、低荷重時の伸びが大きいコードをタイヤの骨格を形成するカーカスコードに用いることにより、旋回時におけるタイヤの路面追従性を高め、ひいては、旋回時のグリップ性能を向上させることが提案されている。しかしながら、このようなタイヤは、カーカスコードに対する荷重が急激に大きくなる加速時には、カーカスの変形が大きくなるため、安定感が失われかつ十分な加速性能が得られないという問題があった。即ち、自動二輪車用タイヤにおいて、旋回時のグリップ性能と、加速時の安定性とは二律背反の関係にあった。関連する文献としては、次のものがある。
特開平2000−190705号公報
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、2.5%及び4.0%の伸びにおける引張荷重を一定範囲に限定することを基本として、カーカスコードとして用いられたときに、加速時の安定性と旋回時のグリップ性とを高い次元で両立させることが可能なタイヤ用コード及びそれを用いた自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、有機繊維からなるタイヤ用コードであって、伸びが2.5%のときの引張荷重W1が50〜90(N)であり、かつ、伸びが4%のときの引張荷重W2(N)と前記引張荷重W1との比(W2/W1)が2.0よりも大きく、前記タイヤ用コードは、アラミド繊維からなる2本のストランドを撚り合わせることにより形成され、かつ、その正量繊度が2000〜3000dtexであることを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、前記各ストランドの繊度の比(D1/D2)は、1.5以上10.0以下である請求項1記載のタイヤ用コードである。
また請求項3記載の発明は、前記各ストランドの10cm当たりの下撚り数は、30回以上120回以下である請求項1又は2に記載のタイヤ用コードである。
また請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載されたタイヤ用コードをカーカスコードとして有することを特徴とする自動二輪車用タイヤである。
本発明のタイヤ用コードは、伸びが2.5%のときの引張荷重W1が50〜90(N)であり、かつ、伸びが4%のときの引張荷重W2(N)と前記引張荷重W1との比(W2/W1)が2.0よりも大きいことを特徴とする。発明者らは、自動二輪車用タイヤについて種々実験を重ねたところ、旋回時のグリップ感は、カーカスコードの伸びが2.5%のときの荷重に大きく影響されることが判明した。そして、この伸び2.5%のときの引張荷重W1を50〜90Nに限定した場合、トレッド部を含めてタイヤの路面追従性が高められ、ひいては旋回時のグリップ感が向上することを知見した。一方、本発明のコードでは、伸びが4.0%のときの引張荷重W2(N)が、2.5%伸び時の引張荷重W1の2.0倍よりも大きく設定されるため、加速時のように大きな引張荷重がカーカスコードに作用するときでもその伸びが抑えられ、タイヤの形状が保持されることにより安定感が増す。このように、本発明のタイヤ用コード及び自動二輪車用タイヤは、加速時の安定性と旋回時のグリップ性能とを高い次元で両立させるのに役立つ。
以下、本発明のタイヤ用コード及びそれを用いた自動二輪車用タイヤの実施の一形態が図面に基づき説明される。図1には、本実施形態の自動二輪車用タイヤ1のタイヤ軸を含むタイヤ子午線断面図を示す。該空気入りタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されしかも2枚のベルトプライ7A、7Bからなるベルト層7とが設けられる。
前記カーカス6は、本発明に係るタイヤ用コード9からなるカーカスコード6C(ともに図3に示される。)が配列された2枚のカーカスプライ6A及び6Bを有する。前記カーカスコード6Cは、タイヤ赤道Cに対して例えば80〜90゜の角度で配列される。また各カーカスプライ6A、6Bは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aからのびて前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを有する。また、前記本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にテーパー状にのびかつ硬質ゴムからなるビードエーペックス8が配され、ビード部4が適宜補強される。
本実施形態において、前記カーカスコード6Cは、(1本当たりの)伸びが2.5%のときの引張荷重W1が50〜90(N)であり、かつ、(1本当たりの)伸びが4%のときの引張荷重W2(N)と前記引張荷重W1との比(W2/W1)が2.0よりも大に設定される。なお、図2には、このようなカーカスコード6Cの一例について、荷重−伸びのグラフを示す。
旋回時のグリップ感を向上させるためには、カーカスコードが2.5%伸びるときの引張荷重W1を50〜90Nに設定することが有効である。なお、2.5%伸び時の荷重を規定したのは、自動二輪車の旋回中、そのカーカスコードには約2.5%の伸びが生じる余地があるためである。即ち、種々の実験を重ねた結果、カーカスコードに2.5%の伸びを生じさせる荷重W1が50N未満では、トレッド部2の路面追従性が向上してグリップ感は高められるものの、腰砕け感が生じやすくなるなど安定性が低下する欠点がある。とりわけ、前記引張荷重W1は、より好ましくは55N以上、さらに好ましくは60N以上が望ましい。
他方、前記2.5%伸び時の引張荷重W1が90Nを超える場合、旋回時のカーカスコードに十分な伸びが与えられず、安定感は増すもののトレッド部の接地性が低下してグリップ性能を高めることができない。このような観点より、前記引張荷重W1は、より好ましくは80N以下、さらに好ましくは70N以下が望ましい。
また、加速時には、車両の走行速度よりもタイヤの回転速度が大きくなるため、空気入りタイヤ1は、リムと路面との間で周方向に大きくせん断変形する。これにより、カーカスコードの伸びは、通常、旋回時よりも大きくなり、約4%の伸びが生じる余地がある。このため、加速時の安定性を高めるためには、カーカスコードの4%伸び時の引張荷重W2をより大きくすることが有効であることを知見した。
即ち、一般的なカーカスコードは、伸びが4%程度までの変形領域では、荷重と伸びとがほぼ比例する。従って、2.5%の伸びのときの引張荷重W1と、4.0%伸びのときの引張荷重W2との比(W2/W1)は約1.6となる。これに対して、本実施形態のカーカスコード6Cでは、図2に示されるように、前記引張荷重の比(W2/W1)が2.0よりも大、より好ましくは2.3以上、さらに好ましくは2.4以上に設定される。つまり、本実施形態のカーカスコードは、伸びが大きくなると、伸び難くなる。
従って、このようなカーカスコード6Cは、旋回時には適度に伸びることによって接地性を高めグリップ性能を向上させる一方、大きな引張荷重が作用する加速時には、その伸びを抑えてカーカスの大きな変形を防ぎ、駆動力を路面に確実に伝えて加速時の安定性を向上し得る。このように、本実施形態の自動二輪車用タイヤ1は、背反事項と考えられていた旋回時のグリップ性能と加速時の安定性とを両立できる。
ここで、前記引張荷重の比(W2/W1)が大きくなりすぎると、タイヤが走行中に受ける荷重の変化に対して、タイヤの剛性変化が大きくなりすぎるため、コントロールしづらくなる(コントロール性能の低下)おそれがあるので、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下が望ましい。
図2に示されるように、本実施形態のカーカスコードは、引張始めの初期伸び領域を除き伸びが2.5%以下の領域では、荷重と伸びとがほぼ比例しているが、伸びが2.5%を超えると、荷重は指数関数的に増加する態様が示される。ただし、このような態様に限定されるものではない。
このような荷重−伸びの特性を有するコードを作るためには、例えば、モジュラスが大きく異なる2本のストランドを撚り合わせる方法が挙げられる。このとき、ストランドは、異なる材料で形成される場合の他、同一材料で形成されても良い。同一材料であるにも拘わらずモジュラスを異ならせる方法としては、例えば繊度、撚り及び/又はディップ処理時の張力などに差を設けることが効果的である。繊度及びディップ処理時の張力の増加は、それぞれストランドのモジュラスを大きくするが、撚りに関しては、ストランドのモジュラスと負の相関を示す。
図3には、本実施形態のカーカスコード6C(タイヤ用コード9)の一例を示す。該カーカスコード6Cは、好ましくはモジュラスが大きい第1のストランド10aと、該第1のストランド10aよりもモジュラスが小さい第2のストランド10bとを撚り合わせることにより形成される。そして、各ストランド10a、10bの繊維材料、繊度及び/又は撚り数などを調節することにより、上述した伸びと荷重とが非線形の特性を示すコードが製造される。この実施形態では、第1のストランドの繊度を第2のストランドの繊度よりも大とすることにより、モジュラスに差が設けられている。
自動二輪車用タイヤ1のカーカスコード6Cとしては、該コード6Cの正量繊度は、好ましくは2000dtex以上、より好ましくは2100dtex以上が望ましい。前記コード9の正量繊度が2000dtex未満の場合、カーカス6の剛性が低下しやすく、ひいては旋回時に腰砕け感が生じやすい他、加速時にはタイヤの変形量が大きくなって安定感が低下するおそれがある。他方、前記正量繊度が大きすぎると、コード剛性が過度に大きくなり、旋回時の接地性が低下するおそれがある他、乗り心地が悪化するおそれがある。このような観点より、前記正量繊度は、好ましくは3000dtex以下、より好ましくは2600dtex以下が望ましい。なお、前記正量繊度は、JIS−L1017に準拠して測定される。
また、第1のストランド10a及び第2のストランド10bの各繊度は、特に限定されるものではないが、小さすぎると加速走行時のタイヤ剛性感を低下させるおそれがあり、逆に大きすぎると、加速走行時の乗り心地が悪化するおそれがある。このような観点より、例えば第1のストランド10aの繊度は、好ましくは800dtex以上、より好ましくは1110dtex以上が望ましく、また、好ましくは2100dtex以下、より好ましくは1670dtex以下が望ましい。同様に、第2のストランド10bの繊度は、好ましくは220dtex以上、より好ましくは440dtex以上が望ましく、また、好ましくは2100dtex以下、より好ましくは1670dtex以下が望ましい。
また、前記第1のストランド10a及び第2のストランド10それぞれの10cm当たりの下撚り数についても特に限定されないが、該下撚り数が少なくなると、コードの耐疲労性が低下するおそれがあり、逆に多くなると、コードの撚り工程が複雑化して生産性が悪化する傾向がある。このような観点より、前記各ストランド10a、10bの10cm当たりの下撚り数は、好ましくは30回以上、より好ましくは33回以上が望ましく、また、好ましくは120回以下、より好ましくは100回以下が望ましい。
図4には、さらに具体的な実施形態のカーカスコード6Cの断面図が示される。この実施形態では、繊度の小さい第1のストランド10aにはアラミド繊維が、また繊度の大きい第2のストランド10b(第1のストランドよりもモジュラスは小さい)には66ナイロン繊維が用いられる。なお、第1のストランド10aの繊度D1は1100dtexであり、第2のストランド10bの繊度D2は1400dtexである。繊度の比(D1/D2)は、約1.27である。アラミド繊維は、ナイロン繊維に比べてモジュラスが大きいので、繊度を小さくしてもコードの4.0%伸びの引張荷重W2を大きくするのに役立つ。このように、コード9は、アラミド繊維からなる少なくとも1本のストランドを含むことが望ましい。
また、本実施形態のように、モジュラスの大きいアラミド繊維と、モジュラスが小さい66ナイロン繊維とを撚り合わせる場合、モジュラスの小さい繊維材料からなるストランドの繊度を相対的に大きくすることが望ましい。即ち、繊度の小さい第1のストランド10aにモジュラスの大きい繊維材料を用いることが望ましい。これは、前記荷重の比(W2/W1)が過度に大きくなるのを効果的に防止するのに役立つ。なお、アラミド繊維よりもモジュラスの小さい有機繊維としては、66ナイロンに代えて例えばポリエステルなどが用いられても良い。
また、図5には、さらに他の具体的な実施形態のコード断面図が示される。この実施形態において、カーカスコード6Cは、第1及び第2のストランド10a、10bが、ともにアラミド繊維から形成される。この実施形態のように、2つのストランド10a及び10bがともにアラミド繊維で構成される場合には、第1のストランド10aの繊度D1と、第2のストランド10bの繊度D2との差をより大きくすることにより、それに応じてモジュラスに差を設けることが望ましい。これにより、前記荷重の比(W2/W1)を適正に設定するのに役立つ。
なお、この実施形態のように、第1及び第2のストランド10a及び10bが同一材料からなる場合、前記各ストランド10a、10bの繊度の比(D1/D2)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは3.8以上が望ましく、また、好ましくは10.0以下、より好ましくは7.6以下が望ましい。
なお、自動二輪車用タイヤ1のカーカスプライとしては、剛性や乗り心地を確保するために、プライ幅5cm当たり前記カーカスコード6Cの打ち込み本数を20〜60(本/5cm)程度とするのが望ましい。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
本発明の効果を確認するために、表1の仕様に基づいたテストコードが試作された。そして、各コードに共通のディップ処理を施した後、これらをプライ巾5cm当たり40本打ち込んだカーカスプライを用いた自動二輪車用ラジアルタイヤ(サイズ:190/50ZR17)が試作され、それらの性能が評価された。なお、自動二輪車用タイヤは、図1に示した基本構成を有し、カーカスコード以外は、同一の仕様とした。また、
また、各テストタイヤは、排気量1000ccの自動二輪車の後輪に装着されるとともに、テストドライバーによる実車走行が行われ、旋回時のグリップ性能、旋回時の安定性、及び加速時の安定性が、それぞれドライバーの官能により5点法で評価された。いずれも数値が大きいほど良好である。なお内圧は290kPa、リムはMT6.00とした。テストの結果などを表1に示す。
Figure 0005285265
テストの結果、実施例のタイヤは、加速時の安定性と旋回時のグリップ性能とを両立していることが確認できた。
本実施形態の自動二輪車用タイヤを例示するタイヤ子午線断面図である。 本実施形態のタイヤ用コードの荷重−伸び曲線である。 本実施形態のタイヤ用コードの部分拡大図である。 本実施形態のタイヤ用コードの断面図である。 他の実施形態のタイヤ用コードの断面図である。
符号の説明
1 自動二輪車用タイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
6 カーカス
6A、6B カーカスプライ
6C カーカスコード
9 タイヤ用コード
10a 第1のストランド
10b 第2のストランド
C タイヤ赤道

Claims (4)

  1. 有機繊維からなるタイヤ用コードであって、
    伸びが2.5%のときの引張荷重W1が50〜90(N)であり、かつ、伸びが4%のときの引張荷重W2(N)と前記引張荷重W1との比(W2/W1)が2.0よりも大きく、
    前記タイヤ用コードは、アラミド繊維からなる2本のストランドを撚り合わせることにより形成され、かつ、その正量繊度が2000〜3000dtexであることを特徴とするタイヤ用コード。
  2. 前記各ストランドの繊度の比(D1/D2)は、1.5以上10.0以下である請求項1に記載のタイヤ用コード。
  3. 前記各ストランドの10cm当たりの下撚り数は、30回以上120回以下である請求項1又は2に記載のタイヤ用コード。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載されたタイヤ用コードをカーカスコードとして有することを特徴とする自動二輪車用タイヤ。
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