JP2009114597A - 有機繊維タイヤコードの熱処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】タイヤコードの熱処理における熱エネルギー効率を改善し、設備の小型、簡易化、及びエネルギーの有効利用を図ることができるタイヤコードの熱処理方法を提供する。
【解決手段】有機繊維タイヤコード12を流動状態にある液体又は粒子からなる熱媒体20中で200〜260℃に加熱し熱処理を施すことを特徴とする有機繊維タイヤコードの熱処理方法である。前記熱媒体20は、溶融金属を用いることができる。また、前記熱媒体としては、平均粒径0.1〜10mmの粒子を用いることができる。
【選択図】図1
【解決手段】有機繊維タイヤコード12を流動状態にある液体又は粒子からなる熱媒体20中で200〜260℃に加熱し熱処理を施すことを特徴とする有機繊維タイヤコードの熱処理方法である。前記熱媒体20は、溶融金属を用いることができる。また、前記熱媒体としては、平均粒径0.1〜10mmの粒子を用いることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、有機繊維タイヤコードの熱処理方法に関し、熱処理時の熱効率を向上することで熱処理装置の小型化、簡易化及び熱エネルギーの省力化を実現できる有機繊維タイヤコードの熱処理方法に関する。
ナイロン、ポリエステルなどの有機繊維は機械的性質、寸法安定性、耐久性に優れ、衣料用のみでなく産業用途にも広く利用されている。産業用としてはゴム資材用途で幅広く使用されており、なかでもタイヤコードではその特徴を生かし多量に利用されている。
例えば、空気入りタイヤの補強材として使用されるナイロン、ポリエステル等の有機繊維コードは、コードとゴム材料間との接着性、コード特性を付与するため接着処理液(ディップ液)に生コードを浸漬した後熱処理を施す、いわゆるディップ処理が行われている。
従来、有機繊維タイヤコードの単体やすだれ織物をディップ処理する場合、図2に示すようなディッピングマシン30により、まず、レットオフ装置に搭載された巻物B1から引き出された生コードCをディップ液を貯留したディップタンク31中で浸漬ロールを通してディップ液中を通過させディッピングすることによって、ディップ液を生コードCに付着させる。ディッピングによりディップ液を含浸された生コードCは絞りロール35によって引き上げられ、長さ方向に張力をかけた状態で乾燥炉32を経て熱処理炉33、34に搬送され所定の延伸条件、温度下で炉内を循環する熱風により一定時間の熱処理が行われ、接着性の付与とコード特性が調整された処理コードPとなり、巻物B2にロール状に巻き取られる。従来、このディッピング処理には、以上の一連の処理を1つの装置で連続して行うことができるディッピング装置が用いられている(例えば、特許文献1)。
上記乾燥炉32や熱処理炉33、34等の加熱炉は、ブタンガス、LNG、灯油などを燃焼させ加熱した炉内の空気を加熱媒体として炉内を循環させ用いていたため、タイヤコードの加熱は炉内の対流伝熱に限られてしまい、このため十分な熱処理効果を得るために長時間の加熱が必要となり、また加熱炉は巨大なものが必要となり、その結果加熱に必要な熱エネルギーは炉の放熱をカバーするのに大部分が消費されエネルギー効率が低かった。
また、タイヤコードの処理速度を上げると、ますます巨大な加熱炉が必要となり、5階建てビル1棟分の規模の加熱炉となっていた。さらに、熱源の発生する熱エネルギーの10%以下が、タイヤコードの熱処理に利用されるだけで、大半の熱エネルギーが炉から逃げてしまい、熱エネルギーの大幅な効率化が求められていた。
特開平10−140123号公報
本発明の目的は、前記の従来技術における問題点を解決するもので、タイヤコードの熱処理における熱エネルギー効率を改善し、設備の小型、簡易化、及びエネルギーの有効利用を図ることができるタイヤコードの熱処理方法を提供することにある。
本発明は、有機繊維タイヤコードを流動状態にある液体又は粒子からなる熱媒体中で200〜260℃に加熱し熱処理を施すことを特徴とする有機繊維タイヤコードの熱処理方法である。
本発明において、前記熱媒体は、溶融金属を用いることができる。また、前記熱媒体としては、平均粒径0.1〜10mmの粒子を用いることができる。
前記有機繊維タイヤコードは、ゴムとの接着剤を付与した後に熱処理を施してもよい。また、熱処理を有機繊維タイヤコードに施した後に、該有機繊維タイヤコードにゴムとの接着剤を付与してもよい。
本発明によれば、従来の大規模な熱処理炉に代えて、タイヤコードを流動状態にある液体又は粒子からなる熱媒体中で熱処理を施すことができるので、処理設備が小型化、簡易化されるとともに、タイヤコードの熱処理に消費される熱エネルギーを大幅に低減することができ、かつ、タイヤコード処理工程の操業性、生産性を向上することができる。
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。本実施形態においては、タイヤ用シングルコードのディップ処理加工の例に従い説明するが、本発明は本例に限定されるものではない。
図1は、本発明に係る有機繊維タイヤコードの熱処理装置1の構成を示す概略図である。
図1において、レットオフ装置に搭載された巻物11から引き出されたタイヤコード12は、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)液などのディップ液13を貯溜したディップタンク14中で浸漬ロール15を通してディップ液中を通過させディッピングすることによって、ディップ液13をタイヤコード12に付着させ、熱処理浴16に送られる。
本発明において、タイヤコード12の熱処理は、上記のようにディップ液でタイヤコード12をディップ処理した後に熱処理を施してもよいが、熱処理をタイヤコード12に施した後にディップ処理をしてもよい。また、熱処理前後の両工程でディップ処理を施してもよく、ディップ処理を省略した未ディップ処理のタイヤコード12を熱処理することもできる。
図1に示すように、熱処理浴16の前方と後方にはタイヤコード12の延伸用ロール17、18が設けられ、タイヤコード12は処理浴16内の浸漬ロール19、19間で所定の延伸率で延伸されながら、熱処理が施される。
前記延伸率は、1.2〜4.0%程度であり、ナイロン、ポリエステルなどの材質、コード構造、コードの要求特性などにより調整することができる。
熱処理浴16では、流動状態にある液体又は粒子を熱処理の熱媒体20として使用される。熱媒体20の温度は有機繊維タイヤコードを熱処理するために必要な温度に設定され、その温度は200〜260℃である。処理温度はタイヤコードの材質により、例えば、ナイロン6コードでは200〜210℃、ナイロン66やポリエステルコードでは225〜240℃に設定され、熱処理が施される。
また、タイヤコード12の熱処理時間は、処理浴16内の浸漬ロール19、19間の距離と処理速度で調整される。
熱媒体20としては、処理浴16内で流動性を有する液体又は粒子であれば、特に限定されることなく使用することができる。
液体の熱媒体としては、溶融金属が挙げられ、200〜260℃において溶融状態にある「はんだ」が好適な例として挙げられる。この溶融条件を満たすはんだとしては、(株)ニホンゲンマ製の「NP300、NP303、NP207、NP601」などの鉛フリーはんだ、スズ含有率が20%以上の鉛入りはんだが使用できる。
粒子の熱媒体としては、平均粒径0.1〜10mmの上記処理温度において不溶性の固体粒子であり、好ましい平均粒径は0.2〜8mmである。平均粒径が0.1mm未満の微小粒子は処理浴16中で加熱粒子を撹拌し流動状態にした場合に粒子が周囲に飛散するおそれがあり、平均粒径が10mmを超える場合はタイヤコードとの均一な接触状態が得られず熱伝達効率が低下し好ましくない。
上記粒子は同一の平均粒径を持つもので構成してもよいが、複数の異なる平均粒径のものを組み合わせて使用してもよい。なお、粒子の平均粒径はふるいにより選別することができる。
上記粒子として使用できる固体としては、200〜260℃の処理温度において不溶のものであれれば、特に制限されることはない。例えば、砂、砂利、小石などの岩石に由来するもの、鋼や軟鉄、鋳物屑などの鉄系、アルミニウム、銅などの非鉄系の金属粒子、ガラス粒子、陶器やセラミック粒子などが挙げられる。
また、粒子の形状は、特に限定されず、球形、フットボール形、碁石形、ドーナツ形、立方体などが挙げられる。ただし、タイヤコード12と接触してコードに損傷を与えやすい、例えば角を持つ形状は好ましくなく、外形が局面からなる形状が好ましい。
上記熱媒体20を加熱する手段は、電気加熱、ブタンガスやLNG、灯油などによる燃焼加熱などがあり、処理浴16内を直接加熱するもの、加熱空気を処理浴16内に吹き込む間接加熱のいずれでもよい。
また、処理浴16内には、熱媒体20の温度を浴内で均一にし、タイヤコード12の熱伝達性を向上するため、熱媒体20を流動させる撹拌装置が設けられている。図1に示す例は、浴内に設けたプロペラ状の撹拌装置21であり、圧縮空気を浴内に吹き込むものでもよい。
さらに、熱処理後に浴16外に引き上げられたタイヤコード12に付着している液状又は粒子状の熱媒体20を除去するために、タイヤコード12に振動ないし衝撃を与えるようにする除去装置22を備えることが好ましい。図1に示す例は、首振り(ハタキ)状の衝撃子でタイヤコード12を叩いて、その振動ないし衝撃で熱媒体20を振り落とすものであるが、他の手段によっても勿論かまわない。
上記所定の延伸率、温度、処理時間で熱処理が終了したタイヤコード12は、常法によりワインダーによって巻物23に巻き取られる。
また、処理浴16内の浸漬ロール19、19は、処理浴16の上方に上昇可能な構造が好ましく、これによりコードの浸漬ロール19、19への挿通作業や糸切れ時などトラブル時の対応を行いやすくすることができる。
本発明におけるタイヤコードとしては、ナイロン6、ナイロン66、アラミドなどのポリアミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、レーヨン、ポリケトン、ビニロン等、タイヤを始めとして各種ゴム製品に使用できるものは全て適用可能である。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
図1の概略図に示すタイヤコードの熱処理装置を作製した。処理浴長は1.6m、熱媒体温度を235℃、処理速度を60m/分、浸漬ロール19、19間の距離(処理長さ)を1.0m、延伸率を3%として(溶融はんだ浴はジャパンユニック(株)製、USS−350HN型はんだ槽を使用した)、ポリエステルタイヤコード(1670dtex/2、上×下撚数=38×38回/10cm、接着剤未処理糸)を熱処理し、処理コードのコード物性をJIS L1017に準拠し、島津製作所(株)オートグラフDCS−500を用いて測定した。結果を表1に示す。なお、寸法安定性は、6.8N荷重時伸度と乾熱収縮率との和であり、値が小さいほど良好である。
熱媒体は次の通りである。
・実施例1:鉛フリーはんだ((株)ニホンゲンマ「NP303」溶融温度=216〜221℃)
・実施例2:川砂を平均粒径0.5mmにふるい分けしたもの
・実施例3:天津甘栗の焙煎に使用されている、平均長径5mmの碁石状小石。
・実施例1:鉛フリーはんだ((株)ニホンゲンマ「NP303」溶融温度=216〜221℃)
・実施例2:川砂を平均粒径0.5mmにふるい分けしたもの
・実施例3:天津甘栗の焙煎に使用されている、平均長径5mmの碁石状小石。
従来例1、2は、市金工業社(株)製のシングルコード処理機を使用した。
表に示される通り、従来の空気加熱に比べ、溶融はんだ、砂、小石などの加熱流動体による熱処理は、熱処理効果が格段に優れることが分かる。また、処理長さを従来の1/30程度に短縮することができ、熱エネルギーの有効利用が可能となる。
本発明に係る有機繊維タイヤコード熱処理方法は、ナイロン、ポリエステルなどのタイヤコードのシングルコードの熱処理、コードセッターによる複数本タイヤコードの同時処理に、またすだれ織物の熱処理にも使用が可能である。
12……タイヤコード
20……熱媒体
20……熱媒体
Claims (5)
- 有機繊維タイヤコードを流動状態にある液体又は粒子からなる熱媒体中で200〜260℃に加熱し熱処理を施す
ことを特徴とする有機繊維タイヤコードの熱処理方法。 - 前記熱媒体が、溶融金属である
ことを特徴とする請求項1に記載の有機繊維タイヤコードの熱処理方法。 - 前記熱媒体が、平均粒径0.1〜10mmの粒子である
ことを特徴とする請求項1に記載の有機繊維タイヤコードの熱処理方法。 - 前記有機繊維タイヤコードにゴムとの接着剤を付与した後に熱処理を施す
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機繊維タイヤコードの熱処理方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の熱処理を有機繊維タイヤコードに施した後に、該有機繊維タイヤコードにゴムとの接着剤を付与する
ことを特徴とする有機繊維タイヤコードの熱処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007291914A JP2009114597A (ja) | 2007-11-09 | 2007-11-09 | 有機繊維タイヤコードの熱処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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JP2007291914A Withdrawn JP2009114597A (ja) | 2007-11-09 | 2007-11-09 | 有機繊維タイヤコードの熱処理方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017535682A (ja) * | 2014-11-21 | 2017-11-30 | オリエンタル インダストリーズ (スウ ゾウ) リミテッド | 低デニール高モジュラスのポリエステルタイヤコード織物の作製方法 |
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2007
- 2007-11-09 JP JP2007291914A patent/JP2009114597A/ja not_active Withdrawn
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