JP2009114333A - ハードコートフィルム、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 最表面にハードコートフィルムを具備する液晶表示装置が一般家庭で使用されることを想定し、汚れや付着した塵埃を取り除く行為が頻繁に行なわれる状況でも、傷が付きにくい、硬度の高いハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】 ハードコートフィルムの製造時に、高分子フィルム基材の電気伝導度の調整をハードコート層の塗設工程の前に行ない、引き続きハードコート層の塗設工程を行なう。すなわち高分子フィルム基材の電気伝導度を10−10S/cm以上、10−3S/cm以下に調整し、ハードコート層を塗設する。電気伝導性のある化合物としては、水、NaClなど無機塩を溶解した水、ギ酸、メチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、スクシノニトリル、硫酸、炭酸プロピレンが挙げられる。ハードコート層は、フッ素−シロキサングラフトポリマーと活性エネルギー線硬化樹脂を含有することが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ハードコートフィルム、及びその製造方法に関するものである。
一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶表示装置(LCD)のような表示装置において、表面保護の点から、最表面にハードコートフィルムを設けることが行なわれている。このようなハードコートフィルムは、セルロースアセテート系樹脂(主にトリアセチルセルロース)、ポリエチレンテレフタレート、アクリル系樹脂等の基材フィルム上にハードコート層を設けることで作製される。
また、液晶表示用部材にハードコートフィルムを用いる場合には、延伸配向した偏光膜基材フィルムにヨウ素や二色性染料を吸着させて偏光膜を形成した後、その両面に保護膜を形成した偏光フィルムの保護膜に用いられる。
具体的には、保護膜として一般的に用いられるトリアセテートフィルム等のセルロースエステルフィルムの最上層に、ハードコート層を設けることで用いられる。
偏光膜基材としては、主としてポリビニルアルコール(以下、PVAという)及びその誘導体フィルムが使用される。偏光フィルムは、生産工程において、高品質の製品をより効率的に、すなわち、高速性、量産性があり、歩留りよく、低コストで生産するため、ハードコート層を形成したトリアセテートフィルム等のセルロースエステルフィルムと偏光膜を積層形成するのではなく、先にトリアセテートフィルム等のセルロースエステルフィルムにハードコート層を形成しておき、これを偏光膜に積層する方法が一般的に行なわれている。
また、偏光膜に積層する場合、偏光膜基材フィルムであるPVAとの密着性を向上するため、ハードコート層を形成したトリアセテートフィルム等のセルロースエステルフィルムをアルカリ鹸化処理しておいてから積層する。
一方、ハードコートフィルムは、最表面に用いられることから、ディスプレイ装置の保護膜としての機能が期待され、具体的には、汚れや塵埃が付着しにくいこと、付着しても容易に拭き取れること、及び保存条件に関わらず、硬度や耐擦傷性が強いことが求められる。
昨今のディスプレイ装置の一般家庭へ普及に従い、使用者による汚れや付着した塵埃を取り除く行為が頻繁に行なわれるようになり、最表面の傷の防止機能の向上に対する要望が強く求められている。
ハードコート層の硬度を上げるために、種々の技術が提案されており、下記のような特許文献がある。
特開2002−265650号公報 特許文献1には、実質的にジクロロメタンを含まない溶媒にセルロースアセテートを溶解後、流延して作製したフィルムに、塗設後に反応する化合物を含むハードコート層を塗設することが開示されている。 特開2005−288921号公報 特許文献2には、セルロースアセテートフィルムの表面に、硬化後の体積収縮率が特定の範囲である熱硬化性樹脂、及び活性エネルギー線硬化樹脂を含むハードコート層を積層することが開示されている。 特開2005−298795号公報 特許文献3には、特定の範囲の膜厚最大変化幅を有するセルロースアセテートフィルムの表面に、ハードコート層を塗布する、光学特性に優れた情報記録担体が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の技術では、一般家庭でテレビなどの普及品として使用される液晶表示装置(LCD)のような表示装置の最表面の使用者による汚れや傷付き防止に対しては、表面硬度が不十分であるという問題があった。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、液晶表示装置(LCD)のような表示装置の最表面にハードコートフィルムが設けられて、これが一般家庭で使用されることを想定し、使用者による汚れや付着した塵埃を取り除く行為が頻繁に行なわれるような状況でも、傷が付きにくい、硬度の高いハードコートフィルム、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、高分子フィルム基材の電気伝導度を特定の範囲に調整して、ハードコート層を塗設することにより、高い硬度が得られて、使用者による汚れや付着した塵埃を取り除く行為が頻繁に行なわれるような状況でも、傷がつきにくく、しかもハードコート層が剥がれるようなことがなく、耐久性にも優れていて、従来の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、高分子フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材の電気伝導度を10−10S/cm以上、10−3S/cm以下に調整し、ハードコート層を塗設することを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1に記載のハードコートフィルムの製造方法であって、ハードコート層が、フッ素−シロキサングラフトポリマーと活性エネルギー線硬化樹脂を含有することを特徴としている。
この明細書において、フッ素−シロキサングラフトポリマーとは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン(ポリシロキサンを含む)及び/またはオルガノシロキサン(オルガノポリシロキサンを含む)をグラフト化させて得られる共重合体のポリマーをいうものとする。
請求項3の発明は、請求項2に記載のハードコートフィルムであって、フッ素−シロキサングラフトポリマーと活性エネルギー線硬化樹脂との含有質量比率が、0.05:100〜5.00:100であることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項2または3に記載のハードコートフィルムであって、活性エネルギー線硬化樹脂が、紫外線硬化樹脂であることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、ハードコート層が、有機微粒子及び/または無機微粒子を含有することを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、ハードコート層が、フッ素−アクリル共重合体樹脂を含有することを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材の波長380nmにおける透過率が、10%以下であることを特徴としている。
請求項8の発明は、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材が、セルロースアセテートフィルムであることを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材の膜厚が、15μm以上、95μm以下であることを特徴としている。
請求項10のハードコートフィルムの発明は、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法によって製造されたハードコートフィルムであって、高分子フィルム基材の電気伝導度が10−10S/cm以上、10−3S/cm以下であることを特徴としている。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、高分子フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材の電気伝導度を10−10S/cm以上、10−3S/cm以下に調整し、ハードコート層を塗設するもので、請求項1の発明によれば、液晶表示装置(LCD)のような表示装置の最表面にハードコートフィルムが設けられて、これが一般家庭で使用されることを想定し、使用者による汚れや付着した塵埃を取り除く行為が頻繁に行なわれるような状況でも、傷がつきにくい、硬度の高いハードコートフィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求項2の発明は、請求項1に記載のハードコートフィルムの製造方法であって、ハードコート層が、フッ素−シロキサングラフトポリマーと活性エネルギー線硬化樹脂を含有するもので、請求項2の発明によれば、アルカリ鹸化処理後も優れた膜強度を有するとともに、より過酷な耐久試験後にも、膜強度の低下を抑制できるという効果を奏する。
請求項3の発明は、請求項2に記載のハードコートフィルムであって、フッ素−シロキサングラフトポリマーと活性エネルギー線硬化樹脂との含有重量比率が、0.05:100.0〜5.0:100.0であるもので、請求項3の発明によれば、アルカリ鹸化処理のアルカリ濃度が高い条件や、より過酷な耐久試験において、より優れた膜強度の低下抑制の効果を奏する。
請求項4の発明は、請求項2または3に記載のハードコートフィルムであって、活性エネルギー線硬化樹脂脂が、紫外線硬化樹脂であるもので、請求項4の発明によれば、アルカリ鹸化処理後も優れた膜強度を有するとともに、より過酷な耐久試験において、膜強度の低下を抑制できるという効果を奏する。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、ハードコート層が、有機微粒子及び/または無機微粒子を含有するもので、請求項5の発明によれば、より過酷な耐久試験において、より優れた膜強度の低下抑制の効果を奏する。
請求項6の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、ハードコート層が、フッ素−アクリル共重合体樹脂を含有するもので、請求項6の発明によれば、より過酷な耐久試験において、より優れた膜強度の低下抑制の効果を奏する。
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、高分子フィルム基材の波長380nmにおける透過率が、10%以下であるもので、請求項7の発明によれば、偏光膜基材フィルムであるPVAの紫外線による劣化を防止し得るという効果を奏する。
請求項8の発明は、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材が、セルロースアセテートフィルムであるもので、請求項8の発明によれば、ハードコートフィルムは、熱処理に対する基材変形が小さく、平面性に優れているという効果を奏する。
請求項9の発明は、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材の膜厚が、15μm以上、95μm以下であるもので、請求項9の発明によれば、ハードコートフィルムとしての強度が充分に大きいものであり、しかも例えば液晶表示装置(LCD)のパネルの薄型化などにも充分に対応することができるという効果を奏する。
請求項10のハードコートフィルムの発明は、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法によって製造されたハードコートフィルムであって、高分子フィルム基材の電気伝導度が10−10S/cm以上、10−3S/cm以下であるもので、請求項10のハードコートフィルムの発明によれば、液晶表示装置(LCD)のような表示装置の最表面にハードコートフィルムが設けられて、これが一般家庭で使用されることを想定し、使用者による汚れや付着した塵埃を取り除く行為が頻繁に行なわれるような状況でも、傷がつきにくい、硬度が高いものであるという効果を奏する。
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明によるハードコートフィルムの製造方法は、高分子フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材の電気伝導度を10−10S/cm以上、10−3S/cm以下に調整し、ハードコート層を塗設することを特徴としている。
ここで、高分子フィルム基材の電気伝導度の測定には、例えばビー・エー・エス株式会社製の商品番号1116 SLDの測定器を使用することができる。
高分子フィルム基材の電気伝導度の調整は、ハードコート層の塗布前に、高分子フィルム基材を、電気伝導性のある化合物を含む空間に露出せしめたり、あるいはまた電気伝導性のある液状の化合物に浸漬したりして行なうことができる。
ハードコートフィルムの製造時に、高分子フィルム基材の電気伝導度の調整をハードコート層の塗設工程の前に行ない、引き続きハードコート層の塗設工程を行なうことが、生産効率を上げるうえで、好ましい。
電気伝導性のある化合物としては、水、NaClなど無機塩を溶解した水、ギ酸、メチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、スクシノニトリル、硫酸、炭酸プロピレンが挙げられる。
上記において、高分子フィルム基材の電気伝導度が、10−3S/cmを超えると、ハードコートフィルムとして高い硬度が得られるものの、高温・高湿下での保管中に、ハードコート層がはがれてしまい、ハードコートフィルムとして好ましくない。
また、高分子フィルム基材の電気伝導度が、10−10S/cm未満であれば、硬度が低く、ハードコートフィルムの機能として劣るので、好ましくない。
また、本発明によるハードコートフィルムの製造方法は、ハードコート層が、フッ素−シロキサングラフトポリマーと活性エネルギー線硬化樹脂を含有することを特徴とするもので、本発明のハードコートフィルムによれば、アルカリ溶液による鹸化処理後も優れた膜強度を有し、かつ耐久試験後の膜強度の低下を抑制することができるものである。
(高分子フィルム基材)
つぎに、本発明に用いられる高分子フィルム基材について、説明する。
高分子フィルム基材としては、製造が容易であること、ハードコート層との接着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。
ここでいう透明とは、可視光の透過率60%以上であることをさし、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
また、高分子フィルム基材の波長380nmの光線の透過率は、10%以下であることが好ましい。
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン、JSR社製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン社製)、ポリビニルアセタール、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムまたはガラス板等を挙げることができる。中でも、セルロースエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムが好ましく、本発明においては、特にセルロースエステル系フィルム(例えば、コニカミノルタタック、製品名KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC12UR(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)が、製造上、コスト面、透明性、接着性等の観点から好ましく用いられる。
これらのフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
高分子フィルム基材としては、セルロースエステル系フィルム(以下セルロースエステルフィルムともいう)を用いることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
特に、アセチル基の置換度をX、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースエステルフィルムを用いるのが、好ましい。
2.3≦X+Y≦3.0 0.1≦Y≦2.0
特に、2.5≦X+Y≦2.9 3.0≦Y≦1.2 であることが好ましい。
以下、好ましい透明樹脂フィルムであるセルロースエステルフィルムについて詳細に説明する。
セルロースエステルフィルムは、熱処理による基材変形が少なく、平面性に優れたフィルムを得る上で、陽電子消滅寿命法により求められる自由体積半径が0.250〜0.310nmであることが好ましい。さらに、全自由体積パラメータが1.0〜2.0であるセルロースエステルフィルムであることがより好ましい。
なお、上記自由体積とは、透明樹脂フィルムの分子鎖に占有されていない空隙部分を表している。これは、陽電子消滅寿命法を用いて測定することができる。具体的には、陽電子を試料に入射してから消滅するまでの時間を測定し、その消滅寿命から原子空孔や自由体積の大きさ、数濃度等に関する情報を非破壊的に観察することにより求めることができる。
(陽電子消滅寿命法による自由体積半径と全自由体積パラメータの測定)
下記測定条件にて陽電子消滅寿命と相対強度を測定した。
(測定条件)
陽電子線源:22NaCl(強度1.85MBq)
ガンマ線検出器:プラスチック製シンチレーター+光電子増倍管
装置時間分解能:290ps
測定温度:23℃
総カウント数:100万カウント
試料サイズ:20mm×15mm
20mm×15mmにカットした試料切片を、20枚重ねて約2mmの厚みにした。試料は測定前に24時間真空乾燥を行なった。
照射面積:約10mmφ
1チャンネルあたりの時間:23.3ps/ch
上記の測定条件に従って、陽電子消滅寿命測定を実施し、非線形最小二乗法により3成分解析して、消滅寿命の小さいものから、τ1、τ2、τ3とし、それに応じた強度をI1、I2、I3(I1+I2+I3=100%)とした。
最も寿命の長い平均消滅寿命τ3から、下記式を用いて自由体積半径R(nm)を求めた。τ3が空孔での陽電子消滅に対応し、τ3が大きいほど空孔サイズが大きいと考えられている。
τ3=(1/2)〔1−{R/(R+0.166)}
+(1/2π)sin{2πR/(R+0.166)}〕−1
ここで、0.166(nm)は、空孔の壁から浸出している電子層の厚さに相当する。
さらに、全自由体積パラメータVpは、下記式により求めた。
V3 ={(4/3)π(R}(nm
Vp=I3(%)×V3(nm
ここでI3(%)は、空孔の相対的な数濃度に相当するため、Vpは相対的な空孔量に相当する。
以上の測定を2回繰り返し、その平均値を求めた。
陽電子消滅寿命法は、例えばMATERIAL STAGEvol.4,No.5、2004、p21−25、東レリサーチセンターTHE TRCNEWS、No.80(Jul.2002)p20−22、「ぶんせき」(1988,pp.11−20)に「陽電子消滅法による高分子の自由体積の評価」が掲載されており、これらを参考にすることができる。
セルロースエステルフィルムにおける自由体積半径は、0.250〜0.315nm、好ましくは0.250〜0.310nmであり、さらに好ましい範囲は、0.285〜0.305nmである。自由体積半径が0.250nm未満である。自由体積半径が0.250〜0.315nmでは、熱処理に対する基材変形が小さく、平面性に優れたハードコートフィルム、及び反射防止フィルムが得られる。
セルロースエステルフィルムを形成するセルロースエステルの原料としては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
アシル化剤が、酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行なわれる。具体的には、特開平10−45804号公報に記載の方法等を参考にして合成することができる。
また、セルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
セルロースエステルの数平均分子量は、50000〜250000が、成型した場合の機械的強度が強く、かつ適度なドープ粘度となり好ましく、さらに好ましくは、80000〜150000である。
セルロースエステルフィルムは、一般的に溶液流延製膜法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば、無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造される。
これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解でき、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)として挙げられる。
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させる時に、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
上記の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド、あるいは酢酸メチルが好ましく用いられる。
上記有機溶媒の他に、0.1〜40重量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30重量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。
これらは上記のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70〜95重量%に対してエタノール5〜30重量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることもできる。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。
セルロースエステルフィルムには、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
中でも、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等が好ましい。特に多価アルコールエステル系可塑剤を用いることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは、つぎの一般式(ω)で表わされる。
−(OH)n …(ω)
式中、Rはn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表わす。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
Figure 2009114333
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グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤も好ましく用いることができる。具体的には特開2002−265639号公報の段落番号[0015]〜[0020]記載の多価カルボン酸エステルを可塑剤の一つとして添加することが好ましい。
また、他の可塑剤としてリン酸エステル系可塑剤を用いることもでき、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
このほか、特開2003−12859号記載のアクリルポリマーなどを含有させることも好ましい。
(アクリルポリマー)
セルロースエステルフィルムは、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示す重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリルポリマーを含有することが好ましい。
該ポリマーの重量平均分子量が500以上30000以下のもので該ポリマーの組成を制御することで、セルロースエステルと該ポリマーとの相溶性を良好にすることができる。
特に、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーについて、好ましくは重量平均分子量が500以上10000以下のものであれば、上記に加え、製膜後のセルロースエステルフィルムの透明性が優れ、透湿度も極めて低く、光学フィルムとして優れた性能を示す。
該ポリマーは重量平均分子量が500以上30000以下であるから、オリゴマーから低分子量ポリマーの間にあると考えられるものである。このようなポリマーを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法でできるだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。
かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、さらに特開2000−128911号または同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
なお、アクリルポリマーとは、芳香環あるいはシクロヘキシル基を有するモノマー単位を有しないアクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマーまたはコポリマーを指す。芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーというのは、必ず芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
また、シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーというのは、シクロヘキシル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
芳香環及びシクロヘキシル基を有さないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。
アクリルポリマーは上記モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30重量%以上を有していることが好ましく、また、メタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40重量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2または4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2または4−クロロフェニル)、アクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、メタクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)等を挙げることができるが、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニチル、メタクリル酸フェネチルを好ましく用いることができる。
芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーの中で、芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位が20〜40重量%を有し、且つアクリル酸またはメタクリル酸メチルエステルモノマー単位を50〜80重量%有することが好ましい。該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20重量%有することが好ましい。
シクロヘキシル基を有するアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等を挙げることができるが、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルを好ましく用いることができる。
シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマー中、シクロヘキシル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を20〜40重量%を有しかつ50〜80重量%有することが好ましい。また、該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20重量%有することが好ましい。
上述のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマー及びシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーは何れもセルロース樹脂との相溶性に優れる。
これらの水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーの場合はホモポリマーではなく、コポリマーの構成単位である。この場合、好ましくは、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位がアクリルポリマー中2〜20重量%含有することが好ましい。
また、側鎖に水酸基を有するポリマーも好ましく用いることができる。水酸基を有するモノマー単位としては、前記したモノマーと同様であるが、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。ポリマー中に水酸基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルモノマー単位はポリマー中2〜20重量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜10重量%である。
前記のようなポリマーが上記の水酸基を有するモノマー単位を2〜20重量%含有したものは、勿論セルロースエステルとの相溶性、保留性、寸法安定性が優れ、透湿度が小さいばかりでなく、偏光板保護フィルムとしての偏光子との接着性に特に優れ、偏光板の耐久性が向上する効果を有している。
アクリルポリマーの主鎖の少なくとも一方の末端に水酸基を有するようにする方法は、特に主鎖の末端に水酸基を有するようにする方法であれば限定ないが、アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート)のような水酸基を有するラジカル重合開始剤を使用する方法、2−メルカプトエタノールのような水酸基を有する連鎖移動剤を使用する方法、水酸基を有する重合停止剤を使用する方法、リビングイオン重合により水酸基を末端に有するようにする方法、特開2000−128911号公報は2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等により得ることができ、特に該公報に記載の方法が好ましい。
この公報記載に関連する方法で作られたポリマーは、綜研化学社製のアクトフロー・シリーズとして市販されており、好ましく用いることができる。上記の末端に水酸基を有するポリマー及び/または側鎖に水酸基を有するポリマーは相溶性、透明性を著しく向上する効果を有する。
さらに、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示すエチレン性不飽和モノマーとして、スチレン類を用いたポリマーであることが負の屈折性を発現させるために好ましい。スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられるが、これらに限定される物ではない。
前記不飽和エチレン性モノマーとして挙げた例示モノマーと共重合してもよく、また複屈折性を制御する目的で、2種以上の上記ポリマーを用いて、セルロースエステルに相溶させて用いても良い。
さらに、セルロースエステルフィルムは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXと、より好ましくは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが好ましい。
(ポリマーX、ポリマーY)
本発明に用いられるポリマーXは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと、分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上、30000以下のポリマーである。
好ましくは、Xaは、分子内に芳香環と親水性基を有しないアクリルまたはメタクリルモノマー、Xbは、分子内に芳香環を有せず親水性基を有するアクリルまたはメタクリルモノマーである。
ポリマーXは、下記の一般式(Q)で表わされる。
−(Xa)m−(Xb)n−(Xc)p− …(Q)
さらに好ましくは、下記の一般式(R)で表わされるポリマーである。
−[CH−C(−R)(−CO)]m−[CH−C(−R
(−CO−OH)−]n−[Xc]p− …(R)
式中、R、Rは、HまたはCHを表わす。Rは、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基を表わす。Rは、−CH−、−C−または−C−を表わす。Xcは、Xa、Xbに重合可能なモノマー単位を表わす。m、n、及びpは、モル組成比を表わす。ただし、m≠0、n≠0、k≠0、m+n+p=100である。
アクリル系ポリマーXを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
アクリル系ポリマーXにおいて、親水性基とは、水酸基、エチレンオキシド連鎖を有する基をいう。
分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaは、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、
i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。
中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(i−、n−)であることが好ましい。
分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbは、水酸基を有するモノマー単位として、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えばアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、及びメタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)である。
Xcとしては、Xa、Xb以外のものでかつ共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、芳香環を有していないものが好ましい。
Xa、Xb、及びXcのモル組成比=m:nは、99:1〜65:35の範囲が好ましく、さらに好ましくは95:5〜75:25の範囲である。Xcのpは0〜10である。Xcは複数のモノマー単位であってもよい。
Xaのモル組成比が多いと、セルロースエステルとの相溶性が良化するが、フィルム厚み方向リタデーション(Rt)値が大きくなる。Xbのモル組成比が多いと、上記相溶性が悪くなるが、厚み方向リタデーション(Rt)を低減させる効果が高い。また、Xbのモル組成比が上記範囲を超えると、製膜時にヘイズが出る傾向があり、これらの最適化を図り、Xa、Xbのモル組成比を決めることが好ましい。
ポリマーXの分子量は、重量平均分子量が5000以上30000以下であり、さらに好ましくは8000以上25000以下である。
重量平均分子量を5000以上とすることにより、セルロースエステルフィルムの、高温高湿下における寸法変化が少ない、偏光板保護フィルムとしてカールが少ない等の利点が得られ好ましい。重量平均分子量が30000を以内とした場合は、セルロースエステルとの相溶性がより向上し、高温高湿下においてのブリードアウト、さらには製膜直後でのヘイズの発生が抑制される。
ポリマーXの重量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することができる。そのような分子量調節方法としては、例えば四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。また、重合温度は通常室温から130℃、好ましくは50℃から100℃で行なわれるが、この温度または重合反応時間を調整することで可能である。
つぎに、ポリマーYは、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上、3000以下のポリマーである。
ここで、ポリマーYの重量平均分子量が500以上では、ポリマーの残存モノマーが減少するので、好ましい。また、ポリマーYの重量平均分子量を3000以下とすることは、厚み方向リタデーション(Rt)値の低下性能を維持するために好ましい。Yaは、好ましくは芳香環を有さないアクリルまたはメタクリルモノマーである。
ポリマーYは、下記の一般式(S)で表わされる。
−(Ya)k−(Yb)q− …(S)
さらに好ましくは、下記の一般式(T)で表わされるポリマーである。
−[CH−C(−R)(−CO)]k−[Yb]q− …(T)
式中、Rは、HまたはCHを表わす。Rは、炭素数1〜12のアルキル基またはシクロアルキル基を表わす。Ybは、Yaと共重合可能なモノマー単位を表わす。k、及びqは、モル組成比を表わす。ただし、k≠0、k+q=100である。
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はない。Ybは複数であってもよい。k+q=100、qは好ましくは0〜30である。
芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーYを構成するエチレン性不飽和モノマーYaは、アクリル酸エステルとして、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、ビニルエステルとして、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル等が好ましい。Ybは複数であってもよい。
ポリマーX、及びポリマーYを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量をあまり大きくしない方法で、できるだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。
ポリマーX、及びポリマーYの重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、さらに特開2000−128911号公報または同2000−344823号公報に記載された一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができる。
ポリマーYは、分子中にチオール基と2級の水酸基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用する重合方法が好ましい。この場合、ポリマーYの末端には、重合触媒、及び連鎖移動剤に起因する水酸基、チオエーテルを有することとなる。この末端残基により、ポリマーYとセルロースエステルとの相溶性を調整することができる。ポリマーX、及びポリマーYの水酸基価は30〜150[mgKOH/g]であることが好ましい。
ここで、水酸基価の測定は、JIS K 0070(1992)に準ずる。この水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数と定義される。
具体的には試料xg(約1g)をフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬(無水酢酸20mlにピリジンを加えて400mlにしたもの)20mlを正確に加える。フラスコの口に空気冷却管を装着し、95〜100℃のグリセリン浴にて加熱する。1時間30分後、冷却し、空気冷却管から精製水1mlを加え、無水酢酸を酢酸に分解する。次に電位差滴定装置を用いて0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行ない、得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。さらに空試験として、試料を入れないで滴定し、滴定曲線の変曲点を求める。水酸基価は、つぎの式によって算出する。
水酸基価={(B−C)×f×28.05/x}+D
式中、Bは、空試験に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、Cは、滴定に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Dは、酸価、また28.05は、水酸化カリウムの1mol量
56.11の1/2を表わす。
ポリマーXとポリマーYのセルロースエステルフィルム中での含有量は、下記式(i)、式(ii)を満足する範囲であることが好ましい。ポリマーXの含有量をxg(重量%=ポリマーXの重量/セルロースエステルの重量×100)、ポリマーYの含有量をyg(重量%)とすると、
式(i) 5≦xg+yg≦35(重量%)
式(ii) 0.05≦yg/(xg+yg)≦0.4
式(i)の好ましい範囲は、10〜25重量%である。
なお、ポリマーの重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
測定条件は、以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G
(昭和電工株式会社製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1重量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所株式会社製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK
standard ポリスチレン(東ソー株式会社製)Mw=1,000,000〜500までの13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
ポリマーXとポリマーYは、総量として5重量%以上であれば、厚み方向リタデーション(Rt)値の低減に十分な作用をする。また、総量として35重量%以下であれば、偏光子PVAとの接着性が良好である。
ポリマーXとポリマーYは、後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒に予め溶解した後ドープ液に添加することができる。
セルロースエステルフィルム中の上記可塑剤の総含有量は、固形分総量に対し、5〜20重量%が好ましく、6〜16重量%がさらに好ましく、特に好ましくは8〜13重量%である。また、2種の可塑剤の含有量は各々少なくとも1重量%以上であり、好ましくは各々2重量%以上含有することである。
多価アルコールエステル系可塑剤は、1〜15重量%含有することが好ましく、特に3〜11重量%含有することが好ましい。多価アルコールエステル系可塑剤の含有量が、少ないと平面性の劣化が認められ、また多すぎると、ブリードアウトがしやすい。多価アルコールエステル系可塑剤とその他の可塑剤との重量比率は、1:4〜4:1の範囲であることが好ましく、1:3〜3:1であることがさらに好ましい。可塑剤の添加量が多すぎても、また少なすぎてもフィルムが変形しやすく好ましくない。
セルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば下記の紫外線吸収剤を具体例として挙げるが、これらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、Ciba製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記の具体例を示すが、これらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)326、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、LA31(旭電化社製)、Sumisorb250(住友化学社製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。
また、特開2001−187825号公報に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、長尺フィルムの面品質を向上させ、塗布性にも優れている。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
また、セルロースエステルフィルムには滑り性を付与するため、微粒子を用いることができる。
微粒子としては、無機化合物の例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
微粒子は、珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に、二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒子径は5〜50nmが好ましく、さらに好ましいのは7〜20nmである。これらは、主に粒子径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。含有量は0.05〜1重量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5重量%が好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、これらの微粒子を使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
微粒子としてポリマー粒子を用いることもでき、ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため、特に好ましく用いられる。
また、セルロースエステルフィルムには、以下に説明する劣化防止剤を含有することが好ましい。
つぎに劣化防止剤について説明する。
(劣化防止剤)
劣化防止剤とは、高分子が熱や酸素、水分、酸などによって分解されることを化学的な作用によって抑制する材料のことである。本発明に用いられる透明基材フィルムは、溶融流延法の場合、特に200℃以上の高温下で成形されるため、高分子の分解・劣化が起きやすい系であり、劣化防止剤をフィルム形成材料中に含有させることが好ましい。
フィルム形成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために劣化防止剤を用いる。
劣化防止剤としては、例えば、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸捕捉剤、金属不活性化剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載がある。これらの中でも、フィルム形成材料中に劣化防止剤として酸化防止剤を含むことが好ましく、本発明の目的効果の点から、上記一般式(Z)で表わされる酸化防止剤を含有することが好ましい。フィルム形成材料中の劣化防止剤は、少なくとも1種以上選択でき、フィルムの透明性から添加する量は、透明基材フィルムを形成する透明基材樹脂100重量%に対して、劣化防止剤の添加量は0.01重量%以上、10重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上、5.0重量%以下であり、さらに好ましくは0.2重量%以上、2.0重量%以下である。
フィルム形成材料は、材料の変質や吸湿性を回避する目的で、構成する材料が1種または複数種のペレットに分割して保存することができる。ペレット化は、加熱時の溶融物の混合性または相溶性が向上でき、または得られたフィルムの光学的な均一性が確保できることもある。
(酸化防止剤)
セルロースエステルフィルムには、以下に示す酸化防止剤を含有することも好ましい。ここで、酸化防止剤としては、酸素によるフィルム形成材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができる。
中でも、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アルキルラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、酸素スカベンジャー等が挙げられる。これらの中でもフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アルキルラジカル捕捉剤が好ましいが、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の2者の組み合わせを用いることがより好ましく、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とアルキルラジカル捕捉剤の3者の組み合わせを用いることが最も好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、溶融成型時の熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、セルロースエステルの重量に対して、0.01重量%以上、10重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上、5.0重量%以下であり、さらに好ましくは0.2重量%以上、2.0重量%以下である。
(フェノール系酸化防止剤)
フェノール系酸化防止剤は既知の化合物であり、パラ−t−ブチルフェノール、パラ−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等のアルキル基置換フェノールの他、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載の、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物、いわゆるヒンダードフェノール系化合物が挙げられるが、これらの中で、ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
ヒンダードフェノールフェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリスリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−tブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのフェノール化合物は、例えば、チバスペシャルティケミカルズから、「IRGANOX1076」及び「IRGANOX1010」という商品名で市販されている。
(リン系酸化防止剤)
リン系酸化防止剤として、ホスファイト系化合物、及びホスホナイト系化合物が挙げられる。ホスファイト系化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン、トリデシルホスファイト等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物;等が挙げられる。上記タイプのホスファイト系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、「SumilizerGP」、旭電化工業株式会社から「ADKSTABPEP−24G」、「ADKSTABPEP−36」、「ADKSTAB3010」、「ADKSTABHP−10」及び「ADKSTAB2112」という商品名で市販されている。
ホスホナイト系化合物の具体例としては、ジメチル−フェニルホスホナイト、ジ−t−ブチル−フェニルホスホナイト、ジフェニル−フェニルホスホナイト、ジ−(4−ペンチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2−t−ブチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2−メチル−3−ペンチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2−メチル−4−オクチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(3−ブチル−4−メチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(3−ヘキシル−4−エチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2,4,6−トリメチルフェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2,3−ジメチル−4−エチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2,6−ジエチル−3−ブチルフェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2,3−ジプロピル−5−ブチルフェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ビフェニル−4−イル−ホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4′−(ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル−ホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−フェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリメチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−エチル−フェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−4−プロピルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジエチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジエチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,5−トリエチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジエチル−4−プロピルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジエチル−6−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジエチル−5−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジエチル−6−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジプロピル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジプロピル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジプロピル−5−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジプロピル−6−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジプロピル−5−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジブチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジブチル−3−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジブチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジブチル−4−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジブチル−3−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジブチル−4−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−3−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−6−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−3−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−6−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−3−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
上記タイプのリン系化合物は、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から「IRGAFOSP−EPQ」、堺化学工業株式会社から「GSY−P101」という商品名で市販されている。
リン系酸化防止剤として、ホスホナイト系化合物が好ましく、中でも、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト等の4,4′−ビフェニレンジホスホナイト化合物が好ましく、特に好ましいものはテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイトである。
(アルキルラジカル捕捉剤)
セルロースエステルフィルムには以下に説明するアルキルラジカル捕捉剤を含有することが好ましい。ここでいうアルキルラジカル捕捉剤とは、アルキルラジカルが速やかに反応しうる基を有し、かつアルキルラジカルと反応後に後続反応が起こらない安定な生成物を与える化合物を意味する。
(ヒンダードアミン光安定剤)
セルロースエステルフィルムには、フィルム形成材料の熱溶融時の劣化防止剤、また製造後に偏光子保護フィルムとして晒される外光や液晶ディスプレイのバックライトからの光に対する劣化防止剤として、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物を添加することが好ましい。ヒンダードアミン光安定剤としては、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。
ヒンダードアミン光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
また、高分子タイプの化合物でもよく、具体例としては、N,N′,N″,N″′−テトラキス−[4,6−ビス−〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルホリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]等の、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物等の、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物等で、数平均分子量(Mn)が2,000〜5,000のものが好ましい。
上記タイプのヒンダードアミン化合物は、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズから、「TINUVIN144」及び「TINUVIN770」、旭電化工業株式会社から「ADKSTABLA−52」という商品名で市販されている。ヒンダードアミン光安定剤は、セルロースエステルの重量に対して、0.1〜10重量%添加することが好ましく、さらに0.2〜5重量%添加することが好ましく、さらに0.5〜2重量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。また、その他に下記構造式で示す化合物をセルロースエステルフィルムは含んでもよく、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社よりHP−136という名称で製造されている。
(酸捕捉剤)
セルロースエステルフィルムには、酸捕捉剤が、高温環境下では酸による分解を抑制することから、含有されることが好ましい。酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物が好ましい。
このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(すなわち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22個の炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)の組成物によって代表わされ例示され得るエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815Cやその他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物も好ましく用いることができる。
さらに上記以外に用いることが可能な酸捕捉剤としては、オキセタン化合物やオキサゾリン化合物、あるいはアルカリ土類金属の有機酸塩やアセチルアセトナート錯体、特開平5−194788号公報の段落番号[0068]〜[0105]に記載されているものが含まれる。
酸捕捉剤は、セルロースエステルの重量に対して、0.1〜10重量%添加することが好ましく、さらに0.2〜5重量%添加することが好ましく、さらに0.5〜2重量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
なお酸捕捉剤は、酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、これらの呼称による差異なく用いることができる。
(金属不活性剤)
セルロースエステルフィルムには、金属不活性剤も含まれることも好ましい。金属不活性剤とは、酸化反応において開始剤あるいは触媒として作用する金属イオン不活性化する化合物を意味し、ヒドラジド系化合物、シュウ酸ジアミド系化合物、トリアゾール系化合物等が挙げられ、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、2−ヒドロキシエチルシュウ酸ジアミド、2−ヒドロキシ−N−(1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ベンズアミド、N−(5−tert−ブチル−2−エトキシフェニル)−N′−(2−エチルフェニル)シュウ酸アミド等が挙げられる。
金属不活性剤は、透明基材フィルムの樹脂100重量%に対して、0.0002〜2重量%添加することが好ましく、さらに0.0005〜2重量%添加することが好ましく、さらに0.001〜1重量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
(その他の添加剤)
セルロースエステルフィルムには、その他の添加剤として、例えば、染料、顔料、蛍光体、二色性色素、リターデーション制御剤、屈折率調整剤、ガス透過抑制剤、抗菌剤、生分解性付与剤などを添加しても良い。
そして、これらの添加剤をセルロースエステルフィルムに含有させる方法としては、各々の材料を固体あるいは液体のまま混合し、加熱溶融し混練して均一な溶融物とした後、流延して、セルロースエステルフィルムを形成する方法であっても、予め全ての材料を溶媒等を用いて、溶解して均一溶液とした後、溶媒を除去して、添加剤とセルロースエステルフィルムの混合物で含有させても良い。
(溶液流延製膜法)
セルロースエステルフィルムの溶液流延製膜法による製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行なわれる。
まず、ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35重量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25重量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98重量%であり、貧溶剤が2〜30重量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
良溶剤は、特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2重量%含有していることが好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶
解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤または膨潤させた後、さらに良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行なってもよい。加熱は外部から行なうことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高すぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70〜105℃がさらに好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
または冷却溶解法も、好ましく用いられ、これによって酢酸メチル等の溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
つぎに、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
濾材の材質は、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、さらに好ましくは50個/m以下であり、さらに好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は、通常の方法で行なうことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
つぎに、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃がさらに好ましい。または、冷却することによって、ウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行なわれるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら、目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行なうことが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40重量%または60〜130重量%であり、特に好ましくは、20〜30重量%または70〜120重量%である。
本発明においては、残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mは、ウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の重量で、Nは、Mを115℃で1時間の加熱後の重量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、さらに乾燥し、残留溶媒量を1重量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1重量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01重量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明によるハードコートフィルム用のセルロースエステルフィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向に延伸し、さらにウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行なうことが特に好ましい。縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.01〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍がさらに好ましい。縦方向及び横方向延伸により面積が1.12〜1.44倍となっていることが好ましく、1.15〜1.32倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることができる。縦方向と横方向の延伸倍率のいずれかが1.01倍未満ではハードコート層を形成する際の紫外線照射による平面性の劣化が生じやすくなる。
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力及びその後の搬送張力によって延伸することが好ましい。例えば剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なうことができるが、簡便さの点で熱風で行なうことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は30〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜180℃の範囲で段階的に高くすることが寸法安定性をよくするためさらに好ましい。
セルロースエステルフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが好ましく用いられる。特に10〜70μmの薄膜フィルムでは平面性と耐擦傷性に優れたハードコートフィルムを得ることが困難であったが、平面性と耐擦傷性に優れた薄膜のハードコートフィルムが得られ、また生産性にも優れているため、セルロースエステルフィルムの膜厚は10〜70μmであることが特に好ましい。さらに好ましくは20〜60μmである。最も好ましくは35〜60μmである。また、共流延法によって多層構成としたセルロースエステルフィルムも好ましく用いることができる。セルロースエステルが多層構成の場合でも紫外線吸収剤と可塑剤を含有する層を有しており、それがコア層、スキン層、もしくはその両方であってもよい。
セルロースエステルフィルムのハードコート層を設ける面の中心線平均粗さ(Ra)は0.001〜1μmのものを用いることができる。
(溶融流延製膜法)
セルロースエステルフィルムは、溶融流延製膜法によって形成することも、好ましい。
溶液流延製膜法において用いられる溶媒(例えば塩化メチレン等)を用いずに、加熱溶融する溶融流延による成形法は、さらに詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れるセルロースエステルフィルムを得るためには、溶融押し出し法が優れている。
セルロースエステル及び添加剤の混合物を熱風乾燥または真空乾燥した後、溶融押出し、T型ダイよりフィルム状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得る。冷却ドラムの温度は90〜150℃に維持されていることが好ましい。
セルロースエステルと、その他、必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましく、セルロースエステルと添加剤を加熱前に混合することが、さらに好ましい。混合は、混合機等により行なってもよく、また、セルロースエステル調製過程において混合してもよい。混合機を使用する場合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー一般的な混合機を用いることができる。
上記のようにフィルム構成材料を混合した後に、その混合物を押出し機を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよいが、一旦、フィルム構成材料をペレット化した後、該ペレットを押出し機で溶融して製膜するようにしてもよい。また、フィルム構成材料が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、いわゆるおこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機に投入して製膜することも可能である。フィルム構成材料に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
押出し機は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも2軸押出し機でもよい。フィルム構成材料からペレットを作製せずに、直接製膜を行なう場合、適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られるので、使用可能である。フィルム構成材料として、一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。
押出し機内及び押出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
押出し機内のフィルム構成材料の溶融温度は、フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、一般的には、フィルムのガラス転移温度(Tg)に対して、Tg以上、Tg+100℃以下、好ましくはTg+10℃以上、Tg+90℃以下である。具体的には、溶融押出し時の温度は、150〜300℃であることが好ましく、特に180〜270℃の範囲であることが好ましい。さらに200〜250℃の範囲であることが好ましい。押出し時の溶融粘度は、10〜100000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズである。
また、押出し機内でのフィルム構成材料の滞留時間は、短い方が好ましく、5分以内、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内である。滞留時間は、押出し機1の種類、押出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
上記押出し機でフィルム状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得る。冷却ドラムの温度は90〜150℃に維持されていることが好ましい。
セルロースエステルフィルムは、幅手方向もしくは製膜方向に延伸製膜されたフィルムであることが特に好ましい。
前述の冷却ドラムから剥離され、得られた未延伸フィルムを複数のロール群及び/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介して、セルロースエステルのガラス転移温度(Tg)から、Tg+100℃の範囲内に加熱し、一段または多段縦延伸することが好ましい。
つぎに、上記のようにして得られた縦方向に延伸されたセルロースエステルフィルムを横延伸し、ついで熱処理することが好ましい。
熱処理は、ガラス転移温度(Tg)−20℃〜延伸温度の範囲内で、通常0.5〜300秒間搬送しながら行なうことが好ましい。
熱処理されたフィルムは、通常、ガラス転移温度(Tg)以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。また冷却は、最終熱処理温度からガラス転移温度(Tg)までを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。
冷却する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行なえるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながら、これらの処理を行なうことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。なお、冷却速度は、最終熱処理温度をT1、フィルムが最終熱処理温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
本発明によるハードコートフィルムの製造方法は、高分子フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材の電気伝導度を10−10S/cm以上、10−3S/cm以下に調整し、ハードコート層を塗設することを特徴としている。
上記において、高分子フィルム基材の電気伝導度が10−3S/cmを超えると、ハードコートフィルムとして高い硬度が得られるものの、高温・高湿下での保管中に、ハードコート層がはがれてしまい、ハードコートフィルムとして好ましくない。
また、高分子フィルム基材の電気伝導度が10−10S/cm未満であれば、硬度が低く、ハードコートフィルムの機能として劣るので、好ましくない。
高分子フィルム基材の電気伝導度の調整は、ハードコート層の塗布前に、高分子フィルム基材を、電気伝導性のある化合物(調整物質)を含む空間に露出せしめたり、あるいはまた電気伝導性のある液状の化合物(調整物質)に浸漬したりして行なうことができる。
ハードコートフィルムの製造時に、高分子フィルム基材の電気伝導度の調整をハードコート層の塗設工程の前に行ない、引き続きハードコート層の塗設工程を行なうことが、生産効率を上げるうえで、好ましい。
電気伝導性のある化合物としては、水、NaClなど無機塩を溶解した水、ギ酸、メチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、スクシノニトリル、硫酸、炭酸プロピレンが挙げられる。
ここで、電気伝導度の調整方法について、具体的に説明する。
例えば調整物質が、水である場合は、温度30℃、湿度90%RHの水蒸気を含む雰囲気中に、セルロースアシレートフィルムよりなる高分子フィルム基材を5〜10分間保持する。これにより、セルロースアシレートフィルムの電気伝導度は、2×10−4〜5×10−9(S/cm)となる。
また、調整物質が、メチルアセトアミドである場合は、温度30℃で、メチルアセトアミド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に、セルロースアシレートフィルムよりなる高分子フィルム基材を5〜10分間保持する。これにより、セルロースアシレートフィルムの電気伝導度は、1×10−9〜4×10−10(S/cm)となる。
さらに、調整物質が、ギ酸である場合は、温度30℃で、ギ酸蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に、セルロースアシレートフィルムよりなる高分子フィルム基材を5〜10分間保持する。これにより、セルロースアシレートフィルムの電気伝導度は、2×10−6〜2×10−5(S/cm)となる。
つぎに、調整物質が、水である場合に、温度20℃の水中に、セルロースアシレートフィルムよりなる高分子フィルム基材を、10秒間浸漬する。これにより、セルロースアシレートフィルムの電気伝導度は、2×10−3(S/cm)となる。
また、調整物質が、NaCl水溶液である場合に、温度20℃のNaCl水溶液中に、セルロースアシレートフィルムよりなる高分子フィルム基材を、10秒間浸漬する。これにより、セルロースアシレートフィルムの電気伝導度は、1×10−3(S/cm)となる。
また、調整物質が、メチルアセトアミドである場合に、温度20℃のメチルアセトアミドの液中に、セルロースアシレートフィルムよりなる高分子フィルム基材を、10秒間浸漬する。これにより、セルロースアシレートフィルムの電気伝導度は、7×10−5(S/cm)となる。
さらに、調整物質が、メチルホルムアミドである場合に、温度20℃のメチルホルムアミドの液中に、セルロースアシレートフィルムよりなる高分子フィルム基材を、10秒間浸漬する。これにより、セルロースアシレートフィルムの電気伝導度は、4×10−3(S/cm)となる。
なお、電気伝導度調整物質が液状である場合は、セルロースアシレートフィルムを液状電気伝導度調整物質中に浸漬して、引き上げたあと、フィルム表面に付着した液を、物理的なプレートで取り去る、空気を吹き付けて取り去る、あるいはまたロールで挾んで取り去るなどの方法により取り去るのが、好ましい。
また、セルロースアシレートフィルムを電気伝導度の調整方法についての上記の具体的な数値は、例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
(ハードコート層)
本発明のハードコートフィルムには、高分子フィルム基材の表面に、ハードコート層として活性線硬化樹脂を含有する層を設けることが、ハードコートフィルムの取り扱い性やハードコートフィルムを後述する偏光板に使用する際の工程で、傷が付きにくくなることから好ましい。
活性線硬化樹脂層とは、紫外線や電子線のような活性線(以下、活性エネルギー線ともいう。)照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化樹脂層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
本発明によるハードコートフィルムの製造方法は、ハードコート層が、フッ素−シロキサングラフトポリマーと活性エネルギー線硬化樹脂を含有することを特徴とするものである。
ここで、フッ素−シロキサングラフトポリマーについて説明する。
フッ素−シロキサングラフトポリマーは、上記のように、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン(ポリシロキサンを含む)及び/またはオルガノシロキサン(オルガノポリシロキサンを含む)をグラフト化させて得られる共重合体のポリマーをいうものであり、具体的には、以下に示す化合物である。
フッ素−シロキサングラフトポリマーとしては、例えば、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂〔以下、ラジカル重合性フッ素樹脂(A)とも言う〕、(B)下記一般式(1)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、及び/又は下記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、並びに(C)ラジカル重合反応条件下において、ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体を共重合してなるグラフト共重合によって形成される化合物が挙げられる。
Figure 2009114333
式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)、アリール基(例えば、フェニル基)、又はシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)等を挙げることができる。Rは、好ましくは水素原子又はメチル基である。R、R、R、R、及びRは互いに同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R、R、R、及びRは、それぞれ独立してメチル基、又はフェニル基であることが好ましく、Rはメチル基、ブチル基、又はフェニル基であることが好ましい。またnは2以上の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。
Figure 2009114333
式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。また、R、R、R10、R11、及びR12は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R、R、R10、及びR11は、それぞれ独立してメチル基又はフェニル基であることが好ましく、R12はメチル基、ブチル基、又はフェニル基であることが好ましい。pは0〜10の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。qは2以上の整数である。
つぎに、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂について、詳しく説明する。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)は、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)とを反応させることによって得ることができる。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、その構成成分として少なくとも水酸基含有単量体部分とポリフルオロパラフィン部分とを含むものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、繰り返し単位として、下記一般式(3)で表わされる繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表わされる繰り返し単位を含むものである。
Figure 2009114333
式中、R21及びR22は、各繰り返し単位毎に独立して、かつ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜8のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜8のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、xは2以上の整数である。
Figure 2009114333
式中、R23は、繰り返し単位毎に独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜8のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜8のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、R24は、繰り返し単位毎に独立して、OR25a基、CHOR25b基、及びCOOR25c基から選択した2価の基であり、R25a、R25b、及びR25cは、炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、又はヘキサメチレン基)、炭素数6〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロへキシレン基)、炭素数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、及び炭素数6〜10選択した2価の基であり、yは2以上の整数である。
さらに、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、その他の構成成分として、場合により、下記一般式(5)で表わされる繰り返し単位を含むことができる。
Figure 2009114333
式中、R26は、各繰り返し単位毎に独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、R27は、繰り返し単位毎に独立して、OR28a基又はOCOR28b基であり、R28a及びR28bは、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、炭素数6〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、zは2以上の整数である。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、この一般式(5)で表わされる繰り返し単位を含むことで、有機溶剤に対する溶解性が向上する。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)の水酸基価は、5〜250であることが好ましく、10〜200であることがより好ましく、20〜150であることがさらに好ましい。ここで、水酸基価が、5未満であると、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)の導入量が著しく少なくなるために、反応混合物が濁る傾向がある。一方、水酸基価が250を越えると、後述の片末端ラジカル重合性ポリシロキサン〔成分(B)〕との相溶性が悪化し、グラフト共重合が進行しなくなる場合がある。また、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、遊離カルボン酸基を有していても良い。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、公知の方法で調製、あるいは市販品を用いることもできる。市販品としては、ビニルエーテル系フッ素樹脂(ルミフロンLF−100、LF−200、LF−302、LF−400、LF−554、LF−600、LF−986N;旭硝子株式会社製)、アリルエーテル系フッ素樹脂(セフラルコートPX−40、A606X、A202B、CF−803;セントラル硝子株式会社製)、カルボン酸ビニル/アクリル酸エステル系フッ素樹脂(ザフロンFC−110、FC−220、FC−250、FC−275、FC−310、FC−575、XFC−973;東亞合成株式会社製)、又はビニルエーテル/カルボン酸ビニル系フッ素樹脂(フルオネート;大日本インキ化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、単独で使用するか、又は2種類以上を混合して使用することができる。
イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)は、イソシアネート基とラジカル重合性を有する部分とを含む単量体であれば、特に限定されるものではないが、イソシアネート基を有し、それ以外の官能基(例えば、水酸基又はポリシロキサン鎖)を有していないラジカル重合体単量体を用いるのが好ましい。
好適なイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)としては、例えば下記一般式(6)で表わされるラジカル重合性単量体、あるいは下記一般式(7)で表わされるラジカル重合性単量体を用いるのが好ましい。
Figure 2009114333
式中、R36は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基)、炭素原子数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基であり、R37は酸素原子又は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、又はテトラメチレン基)、炭素原子数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、又は炭素原子数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、又はキシリレン基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)である。
Figure 2009114333
式中、R41は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基)、炭素原子数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基であり、R42は酸素原子又は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、又はテトラメチレン基)、炭素原子数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、又は炭素原子数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、又はキシリレン基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)である
ラジカル重合性単量体(A−2)としては、具体的には、メタクリロイルイソシアネート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、又はm−もしくはp−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等があげられる。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)とからラジカル重合性フッ素樹脂(A)を調製する反応では、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)を、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)の水酸基1当量あたり、好ましくは0.001モル以上0.1モル未満の量、より好ましくは0.01モル以上0.08モル未満の量で反応させる。
このイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)が0.001モル未満であると、グラフト共重合が困難となり、反応混合物が濁り、経時的に二層分離するために好ましくない。また、0.1モル以上であると、グラフト共重合の際にゲル化が起こりやすくなり好ましくない。また、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)の反応は、無触媒下あるいは触媒存在下、室温〜80℃で行なうことができる。
こうして得られたラジカル重合性フッ素樹脂(A)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して2〜70重量%、好ましくは4〜60重量%の範囲で用いられる。ラジカル重合性フッ素樹脂(A)が、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して2重量%未満であるとき、グラフト重合時の安定性が低下することがあり、70重量%を越えると、グラフト重合時にゲル化を起こすことがある。
つぎに、前述の片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)について説明する。片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)の市販品としては、例えば、サイラプレーンFM−0711(数平均分子量1,000、チッソ株式会社製)、サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5,000、チッソ株式会社製)、サイラプレーンFM−0725(数平均分子量10,000、チッソ株式会社製)、X−22−174DX(数平均分子量4,600、信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
また、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、前記一般式(1)で表わされる片末端ラジカル重合性ポリシロキサンを、単独で又は2種類以上混合、あるいは前記一般式(2)で表わされる片末端ラジカル重合性ポリシロキサンを単独で又は2種類以上混合して使用することができ、さらには前記一般式(1)で表わされる片末端ラジカル重合性ポリシロキサンの1種もしくはそれ以上と前記一般式(2)で表わされる片末端ラジカル重合性ポリシロキサンの1種もしくはそれ以上とを混合して使用することができる。
これら片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して4〜40重量%、好ましくは10〜30重量%の範囲で用いられる。片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)が、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して4重量%未満であると、滑り性が不十分となることがあり、40重量%を越えると、重合後の未反応単量体成分が多くなり、塗膜の軟化や未反応単量体成分のブリード等の好ましくない事態を招くことがある。
つぎに、ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)について説明する。
ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)は、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;これらの(メタ)アクリレート系単量体の水素原子をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等で置換した(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ;シェル化学株式会社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸もしくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、又は前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状モノカルボン酸グリシジルエステル(カージュラE、シェル化学株式会社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、又はプロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)は単独、あるいは2種類以上混合して用いてもよく、主として共重合性の観点から(メタ)アクリレート系単量体が好ましく用いられる。
ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)は、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し15〜94重量%、好ましくは30〜70重量%の範囲で用いられる。15重量%未満では共重合体のガラス転移点の調整が困難となり、94重量%を越えると滑り性が不十分となる。
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)とラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)との合計重量に対するラジカル重合性フッ素樹脂(A)の重量の比率〔すなわち、A/(B+C);以下、「フッ素樹脂/アクリル比」と称することがある〕は、2/1〜1/50の範囲であることが好ましい。フッ素樹脂/アクリル比:A/(B+C)が、2/1未満の場合には、光沢の低下。また、フッ素樹脂/アクリル比が1/50を越える場合には、ブレンドしたポリマーの安定性が低下することがある。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)と、ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)とを用いてフッ素−シロキサングラフトポリマーを調製するには、公知の重合方法を用いることができ、特に溶液ラジカル重合法又は非水分散ラジカル重合法を用いるのが最も簡便で好ましい。
また、フッ素−シロキサングラフトポリマーとしては、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂、(B)前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、及び(D)下記一般式(8))で示される片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール、及び(E):成分(A)、(B)、(D)以外のラジカル重合性単量体を、ランダム共重合してなるグラフト共重合からも作製することができる。
Figure 2009114333
式中、R13は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。R14は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくはメチル基である。R15は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状のハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基であり、好ましくはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)、フェニル基、又はアルキル置換フェニル基である。lは、1以上の整数であり、好ましくは2〜100の整数である。また、mは、任意の整数であり、好ましくは0〜10、より好ましくは0である。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、前述の通りであり、片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)について説明する。
片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)としては、公知のものを用いることもできる。具体的には、ブレンマーPME−100、PME−200、PME−400、PME−4000、50POEP−800B(日本油脂株式会社製)、ライトエステルMC、MTG、130MA、041MA(共栄社化学株式会社製)、ライトアクリレートBO−A、EC−A、MTG−A、130A(共栄社化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)は単独又は2種類以上を混合して用いることができる。片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)は、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して1〜25重量%、好ましくは1〜15重量%の範囲で用いられる。
ここで、片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)が、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して1重量%未満あるいは25重量%を越えると、耐汚染性が不十分となる場合がある。
つぎに、成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)について説明する。成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;これらの(メタ)アクリレート系単量体の水素原子をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等で置換した(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ:シェル化学株式会社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、もしくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、又はα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状カルボン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェル化学株式会社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
これら単量体は、単独、あるいは2種類以上を混合して用いてもよく、主として共重合性の観点から(メタ)アクリレート系が好ましく用いられる。
成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し28〜92重量%、好ましくは30〜70重量%の範囲で用いられる。
ここで、ラジカル重合性単量体(E)が、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し28重量%未満では、共重合体のガラス転移点の調整が困難となり、92重量%を越えると、滑り性が不十分となる。
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)と、前記の片末端アルコキシポリアルキレングリコール(D)と、成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)との合計使用重量に対するラジカル重合性フッ素樹脂(A)の使用重量の比率(すなわち、A/(B+D+E);以下、「フッ素樹脂/アクリル比」と称することがある)は、2/1〜1/50の範囲であることが好ましい。フッ素樹脂/アクリル比が2/1未満の場合には、光沢が低下することがある。また、フッ素樹脂/アクリル比が1/50を越える場合には、安定性が低下することがある。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)と、前記の片末端アルコキシポルアリキレングリコール(D)と、成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)とを用いて共重合体を調製するには、公知の任意の重合方法を用いることができ、中でも、溶液ラジカル重合法、又は非水分散ラジカル重合法によるのが最も簡便で、特に好ましい。
また、フッ素−シロキサングラフトポリマーは、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂、(B)上記一般式(1):及び/又は上記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、及び(F)分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体、及び(G)成分(A)、(B)、(F)以外のラジカル重合性単量体を共重合してなるグラフト共重合体等から作製することができる。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、前述の通りであり、分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)について説明する。
分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)は、例えば、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン、1−メトキシ−(パーフルオロ−2−メチル−1−プロペン)、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロデシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。市販品としては、アクリエステル3FE、4FE、5FE、8FE、17FE(三菱レイヨン社製)、ビスコート3F、3FM、4F、8F、8FM(大阪有機化学工業社製)、ライトエステルM−3F、M−4F、M−6F、FM−108、ライトアクリレートFA−108(共栄社化学社製)、M−1110、M−1210、M−1420、M−1620、M−1633、M−1820、M−1833、M−2020、M−3420、M−3433、M−3620、M−3633、M−3820、M−3833、M−4020、M−5210、M−5410、M−5610、M−5810、M−7210、M−7310、R−1110、R−1210、R−1420、R−1433、R−1620、R−1633、R−1820、R−1833、R−2020、R−3420、R−3433、R−3620、R−3633、R−3820、R−3833、R−4020、R−5210、R−5410、R−5610、R−5810、R−7210、R−7310(ダイキン工業社製)、HFIP−M、HFIP−A、TFOL−M、TFOL−A、PFIP−A、HpIP−AE、HFIP−I(セントラル硝子社製)等を挙げることができる。
分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)は単独又は2種類以上を混合して用いることもできる。
また、分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%の範囲で用いられる。1重量%未満とすると安定性が不十分となる場合があり、50重量%を越えると共重合体の価格が高くなり、実用的でない。
成分(A)、(B)、及び(F)以外のラジカル重合性単量体(G)について説明する。成分(A)、(B)、及び(F)以外のラジカル重合性単量体(G)は、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ:シェル化学社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N、N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、もしくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、又は前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状カルボン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェル化学社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
成分(A)、(B)、及び(F)以外のラジカル重合性単量体(G)は、単独あるいは2種類以上を混合して用いてもよく、主として共重合性及び耐黄変性の観点から(メタ)アクリレート系が好ましく用いられる。
前記成分(G)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し4〜93重量%、好ましくは20〜80重量%の範囲で用いられる。4重量%未満では共重合体のガラス転移点の調整が困難となり、93重量%を越えると耐汚染性が不十分となる。
成分(B)、成分(F)、成分(G)との合計使用重量に対する成分(A)の使用重量の比率(すなわち、A/(B+F+G);以下、「フッ素樹脂/アクリル比」と称する)は、2/1〜1/50の範囲であることが好ましい。フッ素樹脂/アクリル比が2/1未満の場合には、光沢が低下することがある。また、フッ素樹脂/アクリル比が1/50を越える場合には撥水性、撥油性が低下することがある。
成分(A)、(B)、(F)、(G)を用いてフッ素−シロキサングラフトポリマーを調製するには、公知の重合方法を用いることができ、中でも溶液ラジカル重合法又は非水分散ラジカル重合法によるのが最も簡便であり、特に推奨される。
上記した重合に用いられる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、又は芳香族炭化水素の混合物(ソルベッソ100、エッソ石油株式会社製)等の芳香族炭化水素系化合物;n−ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット、又はケロシン等の脂肪族、脂環族炭化水素系化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、又はブチルセロソルブアセテート等のエステル系化合物;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、又はブチルセロソルブ等のアルコール系化合物等が挙げることができ、それらの溶剤を単独で又は2種類以上を組合せて用いることができる。
重合は、種々のラジカル重合開始剤、例えば、アゾ系化合物又は過酸化物のラジカル重合開始剤を用いて、常法により実施することができる。重合時間は特に制限されないが、通常1〜48時間の範囲が選ばれる。重合温度は通常30〜120℃、好ましくは60〜100℃である。重合は、さらに必要に応じて公知の連鎖移動剤、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、又はα−メチルスチレンダイマー等を添加して実施することもできる。グラフトポリマーの分子量は特に限定されるものではないが、その重量平均分子量が、ポリスチレン換算のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、好ましくは約5,000〜2,000,000(より好ましくは約10,000〜1,000,000)の範囲である。ここで、グラフトポリマーの重量平均分子量が、5,000未満であれば、造膜性が低下することがあり、2,000,000を越えると重合時にゲル化する危険がある。
また、フッ素−シロキサングラフトポリマーの市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またこれら化合物は混合して用いても良い。
つぎに、本発明において使用する活性エネルギー線硬化樹脂について説明する。
活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、特に、本発明の目的効果の点から、紫外線硬化樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号号公報に記載のものを用いることができる。例えば、ユニディック17−806(大日本インキ株式会社製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン株式会社製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100重量部に対して0.1〜15重量部であり、好ましくは1〜10重量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化株式会社製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学株式会社製);セイカビームPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー株式会社製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製);RCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成株式会社製)、NKハードB−420、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E(新中村化学工業株式会社製)等を適宜選択して利用できる。また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジオキサングリコールアクリレート、エトキシ化アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
ハードコート層には、本発明の目的効果の点から、フッ素−アクリル共重合体樹脂を含有することが好ましい。つぎにフッ素−アクリル共重合体樹脂について説明する。
フッ素−アクリル共重合体樹脂とは、フッ素単量体とアクリル単量体とからなる共重合体樹脂で、特にフッ素単量体セグメントとアクリル単量体セグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。
まず、フッ素系単量体について説明する。フッ素系単量体は、公知のフッ素を含有する単量体であれば、使用可能であるが、その具体例としては、例えば下記一般式(H)〜(N)で示される構造の単量体である。
Figure 2009114333
Figure 2009114333
Figure 2009114333
Figure 2009114333
Figure 2009114333
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Figure 2009114333
一般式(H)〜(N)において、Rは、炭素数が3〜21のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロアルケニル基であり、好ましくは炭素数が6〜12のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロアルケニル基である。炭素数2以下ではフッ素の性能が発現され難く、炭素数22以上ではかなり長鎖になるため重合転化率が低下する傾向にある。
、は水素または炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数10を越える場合は、長鎖になるため重合転化率が低下する傾向にある。Rは、炭素数1〜10のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基である。炭素数10を越える場合は、長鎖になるため重合転化率が低下する傾向にある。
は、水素またはメチル基である。
Arは、アリール基又は、炭素数1〜10のアルキル基、エステル基、ケトン基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、チオール基、エーテル基等の置換基を有したアリール基である。
前記一般式(H)の具体例としては、下記式(H−1)から式(H−14)までの単量体が挙げられる。
F(CF(CHOCOCH=CH…(H−1)
F(CF(CHOCOCH=CH…(H−2)
F(CF10(CHOCOCH=CH…(H−3)
F(CF12(CHOCOCH=CH…(H−4)
H(CFCHOCOCH=CH…(H−5)
(CFCF(CF(CH2)OCOCH=CH…(H−6)
(CFCF(CF(CHOCOCH=CH…(H−7)
F(CF(CH2)OCOC(CH)=CH…(H−8)
F(CF(CH2)OCOC(CH)=CH…(H−9)
F(CF10(CH2)OCOC(CH)=CH…(H−10)
F(CF12(CH2)OCOC(CH)=CH…(H−11)
H(CFCHOCOC(CH)=CH…(H−12)
(CFCF(CF2)(CHOCOC(CH)=CH…(H−13)
(CFCF(CF(CHOCOC(CH)=CH…(H−14)
一般式(I)の具体例として、式(I−1)から式(I−7)までの単量体が挙げられる。
F(CFSON(CH)CHCHOCOCH=CH…(I−1)
F(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH…(I−2)
F(CFSON(CH)(CH10OCOCH=CH…(I−3)
F(CFSO2N(C2H5)C(C)HCHOCOCH=CH… (I−4)
F(CFSON(CH)CHCHOCOC(CH)=CH…(I−5)
F(CFSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH…(I−6)
F(CFSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH…(I−7)
式(J)の具体例として、下記式(J−1)から式(J−4)までの単量体が挙げられる。
F(CFCON(C)CHOCOCH=CH…(J−1)
F(CFCON(CH)CH(CH)CHOCOCH=CH…(J−2)
F(CFCON(CHCHCH)CHCHOCOC(CH)=CH…(J−3)
F(CFCON(C)CHOCOC(CH)=CH…(J−4)
式(K)の具体例として、下記式(K−1)から式(K−4)までの単量体が挙げられる。
F(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH…(K−1)
(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH…(K−2)
F(CFCHCH(OH)CHOCOC(CH)=CH…(K−3)
(CFCF(CF)6CHCH(OH)CHOCOC(CH)=CH…(K−4)
式(L)の具体例として、下記式(L−1)及び式(L−2)の単量体が挙げられる。
(CFCF(CHCHCH(OCOCH)CHOCOCH=CH…(L−1)
(CFCF(CHCHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH…(L−2)
式(M)の具体例として、下記一般式(M−1)から一般式(M−4)までの単量体が挙げられる。
Figure 2009114333
Figure 2009114333
Figure 2009114333
Figure 2009114333
また、式(N)の具体例として、下記一般式(N−1)で表わされる単量体が挙げられる。
Figure 2009114333
式(H)〜(N)以外のフッ素単量体として、例えば
F(CFCHOCH=CH
F(CFCHOCH=CH
F(CF10CHOCH=CH
F(CFCHOCF=CF
F(CFCHOCF=CF
F(CF10CHOCF=CF
F(CFCH=CH
F(CFCH=CH
F(CF10CH=CH
F(CFCF=CF
F(CFCF=CF
F(CF10CF=CF
CH=CF
CF=CF
の単量体が挙げられる。
以上のフッ素単量体は使用に際し、1種または2種以上を混合して用いることができる。フッ素性能発現の観点から、一般式(H)の単量体、一般式(I)の単量体、及び一般式(N)の単量体が有効である。
これらの中では、前記式(H−1)、(H−2)、(H−3)、(H−4)、(H−6)、(H−7)、(H−8)、(H−9)、(H−10)、(H−11)、(H−13)、(H−14)、及び(N−1)として記載した化合物が、特に有効である。
つぎに、アクリル単量体について説明する。
アクリル単量体としては、長鎖アルキルの炭素数が12〜20である(メタ)アクリル酸長鎖アルキルが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ベヘニルが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ベヘニルがさらに好ましいものとして挙げられる。フッ素−アクリル共重合体樹脂中は、上述のエネルギー活性線硬化樹脂に含有して用いる場合には、エネルギー活性線硬化樹脂に対して、0.05重量部以上、10重量部以下が好ましくは、さらに好ましく0.1重量部以上、10重量部以下である。前記範囲で用いることで、本発明の目的効果をより良く発揮する。
フッ素−アクリル共重合体樹脂の分子量に関しては、数平均分子量で5000〜1000000が良く、好ましくは10000〜300000、さらに好ましくは10000〜100000である。5000未満では、本発明の目的効果が十分には発揮されなくなり、また1000000を超えると製造することそのものが困難となる傾向にある。
フッ素−アクリル共重合体樹脂の製造は、ポリメリックペルオキシドを重合開始剤とした。公知の製造プロセス(例えば特公平5−41668号公報、特公平5−59942号公報)により製造できる。
ポリメリックペルオキシドとは1分子中に2個以上のペルオキシ結合を持つ化合物である。ポリメリックペルオキシドとしては、特公平5−59942号公報に記載されている各種ポリメリックペルオキシドの一種または二種以上を使用することができる。
フッ素−アクリル共重合体樹脂の市販品としては、日本油脂株式会社の商品名、モディパーF−200、モディパーF−600、モディパーF−2020等が挙げられる。
また、ハードコート層には、本発明の目的効果の点から、有機微粒子または/及び無機微粒子を含有することが好ましい。
つぎに、有機及び無機微粒子について説明する。
有機及び無機微粒子の粒径は特に制限されないが、以下に記載する防眩性を示さず、かつ本発明の目的効果が発揮されやすい点から、平均粒子径が0.5μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下であって、特に好ましくは、0.1μm〜0.001μmの粒径が好ましい。平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
つぎに、有機微粒子について具体的に説明する。有機微粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、メラミンポリマー、ベンゾグアナミン、またはポリウレタン系微粒子等が挙げられる。
ポリスチレン系微粒子としては、例えば綜研化学製;SX−130H、SX−200H、SX−350H)、積水化成品工業製、SBXシリーズ(SBX−6、SBX−8)等の市販品を挙げられる。
メラミンポリマー系微粒子としては、例えば、日本触媒製:ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;M30、商品名:エポスターGP、グレード;H40〜H110)、日本触媒製:メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;S12、S6、S、SC4)等の市販品を挙げられる。また、コアがメラミン系樹脂からなり、シェルがシリカで充填されたコア−シェル型の球状複合硬化メラミン樹脂粒子等も挙げられる。具体的には特開2006−171033号公報に記載の方法で作製することができ、日産化学工業製:メラミン樹脂・シリカ複合粒子(商品名;オプトビーズ)等の市販品を挙げられる。
ポリメチルメタクリレート系微粒子としては、例えば、綜研化学製;MX150、MX300、日本触媒製;エポスターMA、グレード;MA1002、MA1004、MA1006、MA1010、エポスターMX(エマルジョン)、グレード;MX020W、MX030W、MX050W、MX100W)、積水化成品工業製:MBXシリーズ(MBX−8、MBX12)、日本ペイント社製:MG−151、MG−152、S−1200、S−1500等の市販品を挙げられる。
また、アクリルとスチレンが架橋した有機微粒子も挙げられ、具体例としては、例えば日本ペイント製:FS―102、FS−401、FS−201、MG−351等の市販品が挙げられる。
ベンゾグアナミン系微粒子としては、例えば日本触媒製:ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;L15、M05、MS、SC25)等が挙げられる。
ポリウレタン系微粒子としては、例えば大日精化製ダイミックビーズ、またエチレン・メチルメタクリラート共重合物等が挙げられる。
その他、フッ素含有アクリル樹脂微粒子を含有させても良い。フッ素含有アクリル樹脂微粒子としては、例えばフッ素含有のアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルのモノマーまたはポリマーから形成された微粒子である。フッ素含有のアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの具体例としては、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル)(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル−α−フルオロアクリレートが挙げられる。フッ素含有アクリル樹脂微粒子の中でも、2−(パーフルオロブチル)エチル−α−フルオロアクリレートからなる微粒子、フッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子、フッ素含有メタアクリル酸を架橋剤の存在下にビニル単量体と共重合させた微粒子が好ましく、さらに好ましくはフッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子である。
フッ素含有(メタ)アクリル酸と共重合可能なビニル単量体としては、ビニル基を有するものであればよく、具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル、及びスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類等が挙げられ、これらは単独でまたは混合して用いることができる。重合反応の際に用いられる架橋剤としては、特に限定されないが、2個以上の不飽和基を有するものを用いることが好ましく、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等の2官能性ジメタクリレートや、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
なお、フッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子を製造するための重合反応は、ランダム共重合、及びブロック共重合のいずれでもよい。具体的には、例えば特開2000−169658号公報に記載の方法なども挙げることができ、市販品としては、例えば日本ペイント製:FS−701、根上工業製:MF−0043等の市販品が挙げられる。なお、これらのフッ素含有アクリル樹脂微粒子は、単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機微粒子としては、Al、B、TiO、ZrO、SnO、CeO、P、Sb、MoO、ZnO、WO、MgF、シリカ等を挙げることができるが、これらの中では、本発明の目的効果が発揮されやすい点から、シリカ微粒子が好ましい。
シリカ微粒子としては、例えば日本アエロジル製、アエロジル200、200V、300、デグサ製、アエロジルOX50、TT600、富士シリシア化学製、サイリシア350等の商品名が挙げられる。
シリカ微粒子の中でもコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカとは、二酸化ケイ素をコロイド状に水または有機溶媒に分散させたものであり、特に限定はされないが球状、針状または数珠状である。コロイダルシリカの平均粒径は5〜300nmの範囲が好ましく用いられる。コロイダルシリカの粒径は変動係数が1〜40%の単分散であることが好ましい。平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
このようなコロイダルシリカは市販されており、例えば、日産化学工業社のスノーテックスシリーズ、触媒化成工業社のカタロイド−Sシリーズ、バイエル社のレバシルシリーズ等が挙げられる。
また、アルミナゾルや水酸化アルミニウムでカチオン変性したコロイダルシリカやシリカの一次粒子を2価以上の金属イオンで粒子間を結合し数珠状に連結した数珠状コロイダルシリカも好ましく用いられる。
数珠状コロイダルシリカは、日産化学工業社のスノーテックス−AKシリーズ、スノーテックス−PSシリーズ、スノーテックス−UPシリーズ等があげられ、具体的には、IPS−ST−L(イソプロパノールシリカゾル、粒子径40〜50nm、シリカ濃度30%)、MEK−ST−MS(メチルエチルケトンシリカゾル、粒子径17〜23nm、シリカ濃度35%)等、MEK−ST(メチルエチルケトンシリカゾル、粒子径10〜15nm、シリカ濃度30%)、MEK−ST−L(メチルエチルケトンシリカゾル、粒子径40〜50nm、シリカ濃度30%)、MEK−ST−UP(メチルエチルケトンシリカゾル、粒子径9〜15nm(鎖状構造)、シリカ濃度20%)等が挙げられる。
MgFとしては、日産化学工業社製のMFS−10P(イソプロピルアルコール分散ゾル、粒子系100nm)、NF−10P等が挙げられる。
高速塗布時のレベリング性や取り扱い性から塗工液の液粘度を下げるため、固形濃度を低くした方が良いが、このような状態での塗工液の安定性、また良好な分散性が得られることから、上記有機及び無機微粒子の含有量としては、上記活性エネルギー線硬化樹脂100重量部に対して、0.01〜500重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜100重量部であり、特に好ましくは1〜30重量部である。
その他、ハードコート層には、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物も加えることができる。また、必要に応じてさらに特開2000−241807号公報に記載の微粒子を含んでも良い。
また、ハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、ハードコート層を形成する塗布組成物を塗布し、塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理することで形成できる。塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μmである。
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm、好ましくは5〜150mJ/cmである。また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行なうことが好ましく、さらに好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行なうことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによってさらに平面性優れたフィルムを得ることができる。
ハードコート層を形成する塗布組成物には溶媒が含まれていてもよい。塗布組成物に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒からも適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。
有機溶媒としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等が好ましい。また、有機溶媒の含有量としては塗布組成物中、5〜80重量%が好ましい。
本発明のハードコートフィルムは、防弦性を有さないタイプである。防眩性とは、表面に反射した像の輪郭をぼかすことによって反射像の視認性を低下させて、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置等の使用時に反射像の映り込みが気にならないようにすることであり、具体的には、表面に凹凸形状を設けることによって上記性質が得られる。
本発明のハードコートフィルムのハードコート層はJIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.05μm以下である。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定でき、例えばWYKO社製の非接触表面微細形状計測装置を用いて測定することができる。
さらにハードコート層には、下記シリコーン系界面活性剤あるいはポリオキシエーテル化合物を含有させることが好ましい。これらは塗布性を高める。また、これら成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3重量%の範囲で添加することが好ましい。
ポリオキシエーテル化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキルフェニルエーテル化合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、エマルゲン1108、エマルゲン1118S−70(以上、花王社製)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの市販品としては、エマルゲン103、エマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン147、エマルゲン150、エマルゲン130K(以上、花王社製)、ポリオキシエチレンセチルエーテルの市販品としては、エマルゲン210P、エマルゲン220(以上、花王社製)、ポリオキシエチレンステアリルエーテルの市販品としては、エマルゲン220、エマルゲン306P(以上、花王社製)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの市販品としては、エマルゲンLS−106、エマルゲンLS−110、エマルゲンLS−114、エマルゲンMS−110(以上、花王社製)ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルの市販品としては、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709等が挙げられる。
これらのポリオキシエーテル化合物の中でも、好ましくはポリオキシエチレンオレイルエーテル化合物であり、下記の一般式(9)で表わされる化合物である。
1835−O(CO)nH …(9)
式中、nは2〜40を表わす。
オレイル部分に対するエチレンオキシドの平均付加個数(n)は、2〜40であり、好ましくは2〜10である。また、上記一般式(9)の化合物はエチレンオキシドとオレイルアルコールとを反応させて得られる。
具体的商品としては、エマルゲン404〔ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテル〕、エマルゲン408〔ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテル〕、エマルゲン409P〔ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル〕、エマルゲン420〔ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル〕、エマルゲン430〔ポリオキシエチレン(30)オレイルエーテル〕(以上、花王社製)、日本油脂製NOFABLEEAO−9905(ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル)等が挙げられる。なお、( )内の数字がnの数字を表わす。
ポリオキシエーテル化合物は単独あるいは2種以上を併用しても良い。ハードコート層中のポリオキシエーテル化合物や下記シリコーン界面活性剤の好ましい含有量は、両者の総含有量で0.1〜8.0重量%が好ましく、さらに好ましくは、0.2〜4.0重量%であり、該範囲で添加することで、ハードコート層の中で安定に存在する。
また、下記フッ素界面活性剤、アセチレングリコール系化合物、非イオン性界面活性剤またはラジカル重合性の非イオン性界面活性剤等を併用しても良い。
このため、本発明で言うハードコートフィルムとは、ハードコート層はJIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.05μm以下である。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート等のポリオキシアルキルエステル化合物、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル化合物、等が挙げられる。アセチレングリコール系化合物としてはサーフィノール104E、サーフィノール104PA、サーフィノール420、サーフィノール440、ダイノール604(以上、日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
ラジカル重合性の非イオン性界面活性剤としては、例えば、RMA−564、RMA−568、RMA−1114(以上、商品名、日本乳化剤株式会社製)等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート系重合性界面活性剤などを挙げることができる。
また、ハードコート層は、硬化助剤として多官能チオール化合物を含有してもよく、例えば1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジンー2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。また、市販品としては昭和電工社製、商品名、カレンズMTシリーズ等が挙げられる。多官能チオール化合物は、活性エネルギー線硬化樹脂100重量部に対して、0.01〜50重量部の範囲で添加されることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜30重量部である。前記範囲で添加することで、硬化助剤として好適に作用し、またハードコート層の中でも安定に存在する。
ハードコート層は、2層以上の重層構造を有していてもよい。その中の1層は例えば導電性微粒子、または、イオン性ポリマーを含有する所謂帯電防止層としてもよい。また、種々の表示素子に対する色補正用フィルターとして色調調整機能を有する色調調整剤(染料もしくは顔料等)を含有させてもよい。
また電磁波遮断剤または赤外線吸収剤等を含有させそれぞれの機能を有するようにしてもよい。
本発明のハードコートフィルムは、ハードコートフィルムを構成する高分子フィルム基材と後述する偏光板との接着性を向上させる点から、特に高分子フィルム基材にトリアセテートフイルム等のセルロースエステルフィルムを用いた場合、アルカリ溶液による鹸化処理をすることが好ましい。この場合、ハードコート層もアルカリ鹸化処理され、表面の滑り性や膜強度が劣化しやすくなるが、本発明のハードコートフィルムではこのようなアルカリ鹸化処理後も優れた膜強度を有する点で好ましい。また、アルカリ鹸化処理前にハードコートフィルムのハードコート層に光学フィルム用プロテクトフィルムを貼っておき、アルカリ鹸化処理を行なう方法もあるが、この方法はハードコート層に光学フィルム用プロテクトフィルムを貼り合わせる工程や剥離する工程が増えるため、生産性負荷の増加やコストの点から好ましくない。
なお、光学フィルム用プロテクトフィルムは市販されており、例えば藤森工業株式会社や積水化学工業株式会社等から購入可能である。
アルカリ鹸化処理は、ハードコートフィルムをアルカリ溶液に浸潰した後、水洗して乾燥するサイクルで行なわれるのが、一般的である。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液があげられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1〜3Nであることが好ましく、0.5〜2Nであることがさらに好ましい。前記範囲とすることで優れた偏光板との接着性が得られる。
アルカリ溶液温度は、アルカリ溶液の析出性等の点から、25〜90℃の範囲が好ましく、40〜70℃がさらに好ましい。
近年、生産効率の点から、アルカリ鹸化処理の時間を短くするため、鹸化浴の水酸化イオンの規定濃度を高めて処理される傾向にあるが、このような過酷な条件では、ハードコート層のフッ素−シロキサングラフトポリマーと活性エネルギー線硬化樹脂との含有重量比率をフッ素−シロキサングラフトポリマー:活性エネルギー線硬化樹脂=0.05:100〜5.00:100とすることで、本発明の目的効果をより良く発揮する。
ハードコートフィルムは、ハードコート層の裏面側の高分子フィルム基材に、粘着剤や接着剤を介して、CRT、LCD、PDP、ELDの表面に貼り合わせて用いても良い。
本発明のハードコートフィルムのハードコート層の鉛筆硬度は、2H〜8Hのハードコート層であることが、LCD等の表示装置の表面における使用や、後述の偏光板化工程において傷が付きにくいことから、好ましい。
ハードコートフィルムの鉛筆硬度が2H〜8Hであれば、ハードコート層を有する本発明のハードコートフィルムと見なすことができる。特に好ましくは2.9H〜6.0Hである。
なお、鉛筆硬度は、作製したハードコートフィルム試料を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
(バックコート層)
本発明のハードコートフィルムには、ハードコート層を設けた側と反対側の面にバックコート層を設けてもよい。バックコート層は、ハードコート層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。
すなわち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることができる。なお、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために無機化合物または有機化合物の粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
これらの粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)、シーホスターKE−P10、同KE−P30、同KE−P50、同KE−P100、同KE−P150、同KE−P250(以上、日本触媒株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
有機化合物の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972V、シーホスターKE−P30、同KE−P50、及び同KE−P100がヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。バックコート層に含まれる粒子は、バインダーに対して0.1〜50重量%好ましくは0.1〜10重量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1.5%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層の塗布に用いられる塗布組成物には溶媒が含まれることが好ましい。溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、または炭化水素類(トルエン、キシレン)等があげられ、適宜組み合わされて用いられる。
バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン株式会社製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン株式会社製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマー等が市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することもできる。
例えば、バインダーとして用いられる樹脂としてはセルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステルとアクリル樹脂のブレンド物を用いることが好ましく、アクリル樹脂からなる粒子を用いて、粒子とバインダーとの屈折率差を0〜0.02未満とすることで透明性の高いバックコート層とすることができる。
また、バックコート層の動摩擦係数は0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層を形成する方法としては、上記したバックコート層を形成するための塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。
また、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化処理することで、バックコート層は形成される。
バックコート層は2回以上に分けて塗布することもできる。また、バックコート層は偏光子との接着性を改善するための易接着層を兼ねても良い。
(偏光板)
本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板について述べる。
偏光板は、一般的な方法で作製することができる。本発明のハードコートフィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理したハードコートフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面に該ハードコートフィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。
本発明のハードコートフィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは、面内リタデーション(Ro)が、20〜70nm、厚み方向リタデーション(Rt)が100〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)であることが好ましい。
なお、リタデーション値Ro、Rtは、自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
これらは例えば、特開2002−71957号公報、特開2003−170492号公報記載の方法で作製することができる。または、さらにディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号公報記載の方法で光学異方性層を形成することができる。あるいは面内リタデーション(Ro)が、0〜5nm、厚み方向リタデーション(Rt)が−20〜+20nmの無配向フィルムも好ましく用いられる。
本発明のハードコートフィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。裏面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2(コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行なったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本発明のハードコートフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
(表示装置)
本発明のハードコートフィルム面を表示装置の鑑賞面側に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の表示装置を作製することができる。
本発明のハードコートフィルムは、偏光板に組み込まれ、反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。
また、本発明のハードコートフィルムはハードコート層の反射光の色ムラが著しく少なく、また、反射率が低く、平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。
特に、本発明のハードコートフィルムを、プラズマディスプレイの前面板フイルターとして加工し、装着したプラズマディスプレイは、光干渉ムラもなく優れた視認性を有する表示装置である。また、30型以上の大画面のプラズマディスプレイ表示装置でも、色ムラや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果がある。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
高分子フィルム基材1(セルロースエステルフィルム)の製造
(ドープ液の調製)
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.9) 100重量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5重量部
酸化ケイ素微粒子 0.1重量部
(アエロジルR972V、日本アエロジル株式会社製)
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
メチレンクロライド 400重量部
エタノール 40重量部
ブタノール 5重量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルロースエステルを完全に溶解した。酸化ケイ素微粒子は予め添加する溶媒と少量のセルロースエステルの溶液中に分散して添加した。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープ液を得た。
ついで、得られたドープ液を、温度35℃に保温した流延ダイを通より、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる温度35℃の支持体上に流延して、ウェブを形成した。
つぎに、ウェブを支持体上で乾燥させ、ウェブの残留溶媒量が80重量%になった段階で、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
さらに、ウェブを上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で90℃の乾燥風にて乾燥させながら搬送し、続いてテンターでウェブ両端部を把持した後、130℃で幅方向に延伸前の1.1倍となるように延伸した。テンターでの延伸の後、ウェブを上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で135℃の乾燥風にて乾燥させた。乾燥工程の雰囲気置換率15(回/時間)とした雰囲気内で15分間熱処理した後、室温まで冷却して巻き取り、幅1.5m、膜厚80μm、長さ4000m、屈折率1.49の長尺のセルロースエステルフィルムを作製した。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のウェブ搬送方向の延伸倍率は1.1倍であった。
本発明によるハードコートフィルムの製造方法は、高分子フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材の電気伝導度を10−10S/cm以上、10−3S/cm以下に調整した後、ハードコート層を塗設するものである。
本発明においては、セルロースエステルフィルム基材の電気伝導度の調整をハードコート層の塗設工程の前に行ない、引き続きハードコート層の塗設工程を行なった。
ここで、セルロースエステルフィルム基材の電気伝導度の測定は、ビー・エー・エス株式会社製の商品番号1116 SLDの測定器を使用して、行なった。
まず、実施例1は、電気伝導度調整物質が水である場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、実施例1では、温度30℃、湿度90%RHの水蒸気を含む雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−5(S/cm)であった。
(ハードコートフィルムの作製)
上記の電気伝導度を調整したセルロースエステルフィルムを用いて、下記手順によりハードコートフィルムを作製した。
上記のセルロースエステルフィルム上に、下記のハードコート層塗布組成物1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液を調製し、これをマイクログラビアコーターを用いて塗布し、70℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm、照射量を0.15J/cmとして塗布層を硬化させ、ドライ膜厚9μmのハードコート層を形成した後、下記バックコート層塗布組成物1をウェット膜厚10μmとなるように、ハードコート層を塗布した面とは反対の面に押し出しコーターで塗布し、50℃にて乾燥し、ハードコートフィルムを作製した。なお、ハードコート層の表面粗さを、光学干渉式表面粗さ計(RST/PLUS、WYKO社製)を用いて測定したところ、9nmであった。
(ハードコート層組成物1)
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の調整
以下、フッ素−シロキサングラフトポリマー1の調整に用いた素材の市販品名を示す。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A):セフラルコートCF−803(水酸基価60、数平均分子量15,000;セントラル硝子株式会社製)
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B):サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5,000;チッソ株式会社製)
ラジカル重合開始剤:パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂株式会社製)
硬化剤:スミジュールN3200(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマー;住友バイエルウレタン株式会社製)
〔ラジカル重合性フッ素樹脂(A)の合成〕
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(1554重量部)、キシレン(233重量部)、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(6.3重量部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ウレタン結合を介して50重量%のラジカル重合性フッ素樹脂(A)を得た。
(フッ素−シロキサングラフトポリマー1の調整)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(A)(26.1重量部)、キシレン(19.5重量部)、酢酸n−ブチル(16.3重量部)、メチルメタクリレート(2.4重量部)、n−ブチルメタクリレート(1.8重量部)、ラウリルメタクリレート(1.8重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8重量部)、FM−0721(5.2重量部)、及びパーブチルO(0.1重量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が171,000である35重量%フッ素−シロキサングラフトポリマー1の溶液を得た。
重量平均分子量はGPCにより求めた。またフッ素−シロキサングラフトポリマー1の重量%はHPLC(液体クロマトグラフィー)により求めた。
下記材料を攪拌・混合し、ハードコート層塗布組成物1とした。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 20.0重量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50.0重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 30.0重量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 30.0重量部
イルガキュア184 5.0重量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
イルガキュア907 10.0重量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
フッ素−シロキサングラフトポリマー1(35重量%) 5.0重量部
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート) 2.5重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10重量部
酢酸メチル 20重量部
アセトン 20重量部
メチルエチルケトン 60重量部
シクロヘキサノン 20重量部
本実施例のハードコートフィルムには、ハードコート層を設けた側と反対側の面に下記の塗布組成物1を塗布することにより、バックコート層を設けた。バックコート層は、ハードコート層を設けることで生じるフィルムのカールを矯正するために設けるものである。
(バックコート層塗布組成物1)
ジアセチルセルロース 0.6重量部
アセトン 35重量部
メチルエチルケトン 35重量部
メタノール 35重量部
シリカ粒子の2%メタノール分散液 16重量部
(KE−P30、日本触媒株式会社製)
実施例2〜4
つぎに、上記作製した実施例1のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例1の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例2〜4は、フィルムの電気伝導度調整物質が水である場合である。
実施例2では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃、湿度90%RHの水蒸気を含む雰囲気中に10分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−4(S/cm)となった。
実施例3では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃、湿度70%RHの水蒸気を含む雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、5×10−9(S/cm)となった。
実施例4では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃、湿度70%RHの水蒸気を含む雰囲気中に10分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−8(S/cm)となった。
実施例5と6
つぎに、上記作製した実施例1のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例1の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例5と6は、フィルムの電気伝導度調整物質がメチルアセトアミドである場合である。
実施例5では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、メチルアセトアミド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、4×10−10 (S/cm)となった。
実施例6では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、メチルアセトアミド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に10分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−9(S/cm)となった。
実施例7と8
つぎに、上記作製した実施例1のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例1の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例7と8は、フィルムの電気伝導度調整物質がギ酸である場合である。
実施例7では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、ギ酸蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−6(S/cm)となった。
実施例8では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、ギ酸蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に10分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−5(S/cm)となった。
実施例9
つぎに、上記作製した実施例1のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例1の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例9はフィルムの電気伝導度調整物質が水であり、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度20℃の水中に、10秒間浸漬した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−3(S/cm)となった。
実施例10
つぎに、上記作製した実施例1のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例1の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例10は、フィルムの電気伝導度調整物質がNaCl水溶液である場合であり、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度20℃のNaCl水溶液中に、10秒間浸漬した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−3(S/cm)となった。
実施例11
つぎに、上記作製した実施例1のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例1の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例11は、フィルムの電気伝導度調整物質がメチルアセトアミドである場合であり、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度20℃のメチルアセトアミドの液中に、10秒間浸漬した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、7×10−5(S/cm)となった。
実施例12
つぎに、上記作製した実施例1のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例1の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例12は、フィルムの電気伝導度調整物質がメチルホルムアミドである場合であり、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度20℃のメチルホルムアミドの液中に、10秒間浸漬した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、4×10−3(S/cm)となった。
なお、電気伝導度調整物質が液状である実施例9〜12では、セルローストリアセテートフィルムを液状の電気伝導度調整物質中に浸漬して、引き上げたあと、フィルム表面に付着した液を、空気を吹き付けて取り去った。
比較例1〜3
比較のために、上記作製した実施例1のハードコートフィルムの製造において、電気伝導度調整物質が水である場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、比較例1では、温度30℃、湿度30%RHの水蒸気を含む雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−12(S/cm)であった。
比較例2では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃、湿度10%RHの水蒸気を含む雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−14(S/cm)であった。
比較例3では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度40℃、湿度90%RHの水蒸気を含む雰囲気中に30分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、5×10−1(S/cm)であった。
比較例4と5
比較のために、上記作製した実施例5と6のハードコートフィルムの製造において、電気伝導度調整物質がメチルアセトアミドである場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、比較例4では、温度30℃で、メチルアセトアミド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に30分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−1(S/cm)となった。
比較例5では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、メチルアセトアミド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に1分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、3×10−14 (S/cm)となった。
比較例6
比較のために、上記作製した実施例5のハードコートフィルムの製造において、電気伝導度調整物質がメチレンクロライドである場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、メチレンクロライド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に30分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、8×10−16(S/cm)となった。
比較例7
比較のために、上記作製した実施例5のハードコートフィルムの製造において、電気伝導度調整物質がメタノールである場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、メタノール蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に30分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、6×10−16(S/cm)となった。
比較例8
比較のために、上記作製した実施例9のハードコートフィルムの製造において、電気伝導度調整物質がメタノールである場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度20℃のメタノールの液中に、10秒間浸漬した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−16(S/cm)となった。
上記作製した実施例1〜12及び比較例1〜8のハードコートフィルムのハードコート層ついて、下記試験方法により評価した。
(鉛筆硬度)
上記作製した実施例1〜12及び比較例1〜8の各ハードコートフィルムについて、JIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、1Kgのおもりを用いて各硬度の鉛筆で、実施例1〜12及び比較例1〜8の各ハードコートフィルムのハードコート層の表面を引っ掻き、鉛筆硬度を測定した。得られた結果を、下記の表1にまとめて示した。
なお、表1において、鉛筆硬度の測定結果が、小数点を用いて表示されているが、これは、ハードコートフィルムのハードコート層の鉛筆硬度を、より詳細に示すためである。
すなわち、鉛筆硬度の測定は、各硬度の鉛筆を10本ずつ用いて評価し、あるランクの鉛筆硬度を有する10本の鉛筆を用いてハードコートフィルムのハードコート層の表面引っ掻き試験を行なった結果、フィルムの傷付きがゼロであった場合には、ハードコートフィルムの鉛筆硬度をより詳細に示すために、さらに、1ランク上の硬度の10本の鉛筆を用いて同ハードコートフィルムのハードコート層の表面引っ掻き試験を行なった。そして、1ランク上の硬度の10本の鉛筆による試験で、フィルムに傷付きが無い場合の鉛筆の本数を、小数点以下1桁の数値として、上記のあるランクの鉛筆硬度に付加して示した。
例えば実施例1では、硬度3Hの10本の鉛筆で、ハードコートフィルムのハードコート層の表面引っ掻き試験を行なった結果、フィルムの傷付きがゼロであった。そこでさらに、1ランク上の硬度4Hの10本の鉛筆を用いて、同ハードコートフィルムのハードコート層の表面引っ掻き試験を行ない、フィルムに傷付きが無い場合の硬度4Hの鉛筆の本数が5本であったので、この数値を、硬度3Hの小数点以下1桁の数値として付加し、鉛筆硬度「3.5」として示したものである。
なお、鉛筆硬度は、数値が高いほど、フィルム表面が高硬度であることを示し、鉛筆硬度が高いほど、ハードコートフィルムとして好ましく、具体的には、鉛筆硬度2H以上で、実用上好ましく、特に好ましくは、鉛筆硬度3H以上である。
(密着性)
上記作製した実施例1〜12及び比較例1〜8のハードコートフィルムのハードコート層表面に、片刃のカミソリの刃を面に対して90°の角度で切り込みを1mm間隔で縦横に11本入れ、1mm角の碁盤目を100個作製した。この上に市販のセロハン製テープを貼り付け、その一端を手で持って垂直に力強く引っ張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜が剥がされた面積の割合を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:全く剥離されなかった
○:剥離された面積割合が5%未満であった
△:剥離された面積割合が10%未満であった
×:剥離された面積割合が10%以上であった
Figure 2009114333
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜12のハードコートフィルムは、比較例1〜8のハードコートフィルムに比べて、鉛筆硬度、及び密着性のいずれにおいても、優れていることが判る。
実施例13
上記作製した実施例1のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層塗布組成物1のフッ素−シロキサングラフトポリマー1を、以下に調整したフッ素−シロキサングラフトポリマー2に変更した以外は、同様にしてハードコートフィルムを作製した。
フッ素−シロキサングラフトポリマー2の調整
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の調整において、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)を以下の素材に変更し、ラジカル重合性フッ素樹脂(A)、溶媒、単量体、及び開始剤の量を以下にした以外は同様にしてフッ素−シロキサングラフトポリマー2を調整した。
以下、フッ素−シロキサングラフトポリマー2で新たに用いた素材の市販品名を示す。
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B):X−22−174DX(数平均分子量4,600;信越化学工業株式会社製)
(フッ素−シロキサングラフトポリマー2の調整)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、実施例1で合成したラジカル重合性フッ素樹脂(A)(16.8重量部)、キシレン(23.0重量部)、酢酸n−ブチル(15.0重量部)、メチルメタクリレート(2.5重量部)、n−ブチルメタクリレート(2.0重量部)、ラウリルメタクリレート(1.9重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2.4重量部)、X−22−174DX(7.0重量部)、及びパーブチルO(0.1重量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が204,000である35重量%フッ素−シロキサングラフトポリマー2の溶液を得た。重量平均分子量はGPC、フッ素−シロキサングラフトポリマー2の重量%は、HPLCにより求めた。
この実施例13では、上記実施例1の場合と同様に、電気伝導度調整物質が水である場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、実施例13では、温度30℃、湿度90%RHの水蒸気を含む雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−5(S/cm)であった。
(ハードコートフィルムの作製)
上記の電気伝導度を調整したセルロースエステルフィルムを用いて、ハードコートフィルムを、実施例1のハードコート層塗布組成物1のフッ素−シロキサングラフトポリマー1を、上記調整したフッ素−シロキサングラフトポリマー2に変更した以外は、同様にしてハードコートフィルムを作製した。
実施例14〜16
つぎに、上記作製した実施例13のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例13の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例14〜16は、フィルムの電気伝導度調整物質が水である場合である。
実施例14では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃、湿度90%RHの水蒸気を含む雰囲気中に10分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−4(S/cm)となった。
実施例15では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃、湿度70%RHの水蒸気を含む雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、5×10−9(S/cm)となった。
実施例16では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃、湿度70%RHの水蒸気を含む雰囲気中に10分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−8(S/cm)となった。
実施例17と18
つぎに、上記作製した実施例13のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例13の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例17と18は、フィルムの電気伝導度調整物質がメチルアセトアミドである場合である。
実施例17では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、メチルアセトアミド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、4×10−10(S/cm)となった。
実施例18では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、メチルアセトアミド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に10分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−9(S/cm)となった。
実施例19と20
つぎに、上記作製した実施例13のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例13の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例19と20は、フィルムの電気伝導度調整物質がギ酸である場合である。
実施例19では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、ギ酸蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−6(S/cm)となった。
実施例20では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、ギ酸蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に10分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−5(S/cm)となった。
実施例21
つぎに、上記作製した実施例13のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例13の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例21はフィルムの電気伝導度調整物質が水であり、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度20℃の水中に、10秒間浸漬した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−3(S/cm)となった。
実施例22
つぎに、上記作製した実施例13のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例13の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例22は、フィルムの電気伝導度調整物質がNaCl水溶液である場合であり、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度20℃のNaCl水溶液中に、10秒間浸漬した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−3(S/cm)となった。
実施例23
つぎに、上記作製した実施例13のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例13の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例23は、フィルムの電気伝導度調整物質がメチルアセトアミドである場合であり、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度20℃のメチルアセトアミドの液中に、10秒間浸漬した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、7×10−5(S/cm)となった。
実施例24
つぎに、上記作製した実施例13のハードコートフィルムの製造において、ハードコート層の塗設工程前のセルロースエステルフィルムの電気伝導度の調整を、下記のように変更した以外は、実施例13の場合と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。実施例24は、フィルムの電気伝導度調整物質がメチルホルムアミドである場合であり、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度20℃のメチルホルムアミドの液中に、10秒間浸漬した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、4×10−3(S/cm)となった。
なお、電気伝導度調整物質が液状である実施例21〜24では、セルローストリアセテートフィルムを液状の電気伝導度調整物質中に浸漬して、引き上げたあと、フィルム表面に付着した液を、空気を吹き付けて取り去った。
比較例9〜11
比較のために、上記作製した実施例13のハードコートフィルムの製造において、電気伝導度調整物質が水である場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、比較例9では、温度30℃、湿度30%RHの水蒸気を含む雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−12(S/cm)であった。
比較例10では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃、湿度10%RHの水蒸気を含む雰囲気中に5分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−14(S/cm)であった。
比較例11では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度40℃、湿度90%RHの水蒸気を含む雰囲気中に30分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、5×10−1(S/cm)であった。
比較例12と13
比較のために、上記作製した実施例17と18のハードコートフィルムの製造において、電気伝導度調整物質がメチルアセトアミドである場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、比較例12では、温度30℃で、メチルアセトアミド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に30分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、2×10−1(S/cm)となった。
比較例13では、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、メチルアセトアミド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に1分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、3×10−14(S/cm)となった。
比較例14
比較のために、上記作製した実施例17のハードコートフィルムの製造において、電気伝導度調整物質がメチレンクロライドである場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、メチレンクロライド蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に30分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、8×10−16(S/cm)となった。
比較例15
比較のために、上記作製した実施例17のハードコートフィルムの製造において、電気伝導度調整物質がメタノールである場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度30℃で、メタノール蒸気濃度0.03mol/m雰囲気中に30分間保持した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、6×10−16(S/cm)となった。
比較例16
比較のために、上記作製した実施例21のハードコートフィルムの製造において、電気伝導度調整物質がメタノールである場合で、上記セルローストリアセテートフィルムを、温度20℃のメタノールの液中に、10秒間浸漬した。これにより、セルローストリアセテートフィルムの電気伝導度は、1×10−16(S/cm)となった。
上記作製した実施例13〜24及び比較例9〜16のハードコートフィルムのハードコート層ついて、上記試験方法により鉛筆硬度と密着性を評価した。得られた結果を、下記の表2にまとめて示した。
Figure 2009114333
上記表2の結果から明らかなように、本発明の実施例13〜24のハードコートフィルムは、比較例9〜16のハードコートフィルムに比べて、鉛筆硬度、及び密着性のいずれにおいても、優れていることが判る。

Claims (10)

  1. 高分子フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムの製造方法であって、高分子フィルム基材の電気伝導度を10−10S/cm以上、10−3S/cm以下に調整し、ハードコート層を塗設することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
  2. ハードコート層が、フッ素−シロキサングラフトポリマーとエネルギー活性線硬化樹脂を含有することを特徴とする、請求項1に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  3. フッ素−シロキサングラフトポリマーとエネルギー活性線硬化樹脂との含有質量比率が、0.05:100〜5.00:100であることを特徴とする、請求項2に記載のハードコートフィルム。
  4. エネルギー活性線硬化性樹脂が、紫外線硬化樹脂であることを特徴とする、請求項2または3に記載のハードコートフィルム。
  5. ハードコート層が、有機微粒子及び/または無機微粒子を含有することを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  6. ハードコート層が、フッ素−アクリル共重合体樹脂を含有することを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  7. 高分子フィルム基材の波長380nmの光線の透過率が、10%以下であることを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  8. 高分子フィルム基材が、セルロースアセテートフィルムであることを特徴とする、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  9. 高分子フィルム基材の膜厚が、15μm以上、95μm以下であることを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  10. 請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法によって製造されたハードコートフィルムであって、高分子フィルム基材の電気伝導度が10−10S/cm以上、10−3S/cm以下であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
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