JP2009114315A - コーティング剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】極性モノマーによってグラフト変性された、プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し、13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、GPCにより求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、示差走査型熱量計により測定したTmが40〜120℃の範囲にあり、Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が特定の式を満たす、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤。
【選択図】なし
Description
例えば、塗膜の粘着性を抑制するために、プロピレンを50〜95モル%、1−ブテンを5〜50モル%含有し、135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布(Mw/Mn)が3以下であるプロピレン系エラストマーに、グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトして得られる変性プロピレン系エラストマーが有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
すなわち、本発明の第1のコーティング剤は、
変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、
(1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
(2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
(4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
(6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
である(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、
グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とする。
変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体40〜90重量%と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマー10〜60重量%とから形成されるハイブリッド樹脂(ただし、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーとの合計を100重量%とする)を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、
(1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
(2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
(4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
(6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
である(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、
グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とする。
(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとの割合(A)/(B)が40/60〜90/10(重量比)であるエラストマー100重量部と、(C)極性モノマー0.1〜10重量部と、(D)ラジカル重合開始剤0.001〜10重量部と、(E)架橋剤0.05〜5.0重量部とを熱処理して得られる極性モノマーグラフト架橋樹脂を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が
(1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
(2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
(4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
(6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
であることを特徴とする。
本発明のコーティング剤は、以下の第1〜3のコーティング剤が挙げられる。
まず、第1〜3のコーティング剤で用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体について説明する。
((A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体)
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)は、以下の(1)〜(6)を満たし、好ましくは(7)、(8)を満たすことを特徴とする。
このmm分率は、ポリマー鎖中に存在する3個の頭−尾結合したプロピレン単位連鎖を表面ジグザグ構造で表したとき、そのメチル基の分岐方向が同一である割合として定義され、下記のように13C−NMRスペクトルから求められる。
ン単位3連鎖について、mm分率が測定される。
プロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)の13C−NMRスペクトルは、サンプル管中でプロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)をロック溶媒として少量の重水素化ベンゼンを含むヘキサクロロブタジエンに完全に溶解させた後、120℃においてプロトン完全デカップリング法により測定される。測定条件は、フリップアングルを45°とし、パルス間隔を3.4T1以上(T1はメチル基のスピン格子緩和時間のうち最長の値)とする。メチレン基およびメチン基のT1は、メチル基より短いので、この条件では試料中のすべての炭素の磁化の回復は99%以上である。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準として頭−尾結合したプロピレン単位5連鎖(mmmm)の第3単位目のメチル基炭素ピークを21.593ppmとして、他の炭素ピークはこれを基準とした。
基炭素E'に基づくピークは第3領域に現れる。
積は、前記構造(v)のメチル基E'のメチル基の隣接メチン基に基づくピーク(33.
3ppm付近で共鳴)の面積より求めることができる。
ン炭素(33.3ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲であり好ましくは1.8〜3.0より好ましくは1.9〜2.5である。
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
好ましくは
146exp(−0.024M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
更に好ましくは
146exp(−0.0265M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
である。このような融点とブテン含量の関係を満たすと、比較的高いプロピレン含量で融点を下げることができ、これによりコーティング剤の貯蔵安定性が良好になる。
以下のように定義される。
ここで、P1、P2はそれぞれ第1モノマー、第2モノマー含量分率であり、P12は全二分子中連鎖中の(第1モノマー)−(第2モノマー)連鎖の割合である。
また、本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)は、プロピレン連鎖中に存在するプロピレンの2,1−挿入あるいは1,3−挿入に基づく異種結合単位(位置不規則単位)を含む構造を少量有していることがある。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)は、上記のようにして求められるプロピレン連鎖中に存在するプロピレンの2,1−挿入に基づく異種結合単位を、全プロピレン構成単位中0.01%以上具体的に0.01〜1.0%程度の割合で含んでいてもよい。
上記のような本発明で用いられる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)は、WO 2004/087775に記載の方法で製造することができる。
((B)スチレン系エラストマー)
本発明に用いる(B)スチレン系エラストマーは、(I)スチレンを10〜60モル%含有するブロック共重合体であり、(II)ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量が5,000〜200,000である。スチレン系エラストマーの市販品として例えば、タフテック(旭化成製)、セプトン(クラレ製)、クレイトン(シェ
ル製)等が挙げられる。
第1のコーティング剤は、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、前記(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とする。
本発明において、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を得るために、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に極性モノマーをグラフト共重合する。極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、不飽和カルボン酸とその無水物およびその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル等を挙げることができるが、不飽和カルボン酸およびその無水物が好ましい。
−NR1R2
(式中、R1は水素原子、メチル基またはエチル基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜12,好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数8〜12、好ましくは6〜9のシクロアルキル基である。なお、上記のアルキル基、シクロアルキル基は、さらに置換基を有しても良い。)
このようなアミノ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノメチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体類、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン等のビニルアミン系誘導体類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体、p−アミノヘキシルコハク酸イミド、2−アミノエチルコハク酸イミド等のイミド類を挙げることができる。
及びエポキシ基を少なくとも1個以上有するモノマーが用いられる。このようなエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、たとえば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、あるいはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、エンドーシスービシクロ[2,2,1]ヘプトー5−エンー2、3―ジカルボン酸(ナジック酸TM)、エンドーシスービシクロ[2,2,1]ヘプトー5−エンー2−メチルー2,3−ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)等の不飽和ジカルボン酸のモノグリシジルエステル(モノグリシジルエステルの場合のアルキル基の炭素数1〜12)、p―スチレンカルボン酸のアルキルグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p―グリシジルエーテル、3,4−エポキシー1−ブテン、3,4−エポキシー3−メチルー1−ブテン、3,4−エポキシー1−ペンテン、3,4−エポキシー3−メチルー1−ペンテン、5,6−エポキシー1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等を挙げることができる。
前記(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、上記極性モノマーから選ばれる少なくとも1種の極性モノマーをグラフト共重合させる方法として、種々の方法を挙げることができる。たとえば、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を有機溶剤に溶解し、上記極性モノマーおよびラジカル重合開始剤を添加して加熱、攪拌してグラフト共重合反応させる方法、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を加熱溶融して、得られる溶融物に極性モノマーおよびラジカル重合開始剤を添加し、攪拌してグラフト共重合させる方法、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、極性モノマーおよびラジカル重合開始剤を予め混合し、得られる混合物を押出機に供給して加熱混練しながらグラフト共重合反応させる方法、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、上記極性モノマーおよびラジカル重合開始剤を有機溶剤に溶解してなる溶液を含浸させ
た後、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が溶解しない最高の温度まで加熱し、グラフト共重合反応させる方法などを挙げることができる。
反応方式は、回分式、連続式のいずれでも良いが、グラフト共重合を均一に行うためには回分式が好ましい。
本発明の第1のコーティング剤を製造するには、前記の変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を、上記有機溶剤に混合すればよいが、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が有機溶剤に溶解しない場合には、微細な粒子に分散することが好ましい。すなわち、該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を溶剤に加えた後、加熱し完全に溶解させ、ついで該溶液を冷却し、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を微粒化して析出させる。予め60〜100℃で析出するように有機溶剤の組成を設定し、この間の平均冷却速度を1〜20℃/時間、好ましくは2〜10℃/時間に調節することが必要である。あるいは親溶剤にのみ溶解し、親溶剤に対する析出が終了した後に貧溶剤を加えて、さらに析出を行っても良い。
第2のコーティング剤は、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体40〜90重量%と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマー10〜60重量%とから形成されるハイブリッド樹脂(ただし、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーとの合計を100重量%とする)を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、前記(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とする。
第2のコーティング剤において、変性スチレン系エラストマーを得るために、スチレン系エラストマーに極性モノマーをグラフト共重合する。極性モノマーをグラフト共重合する方法としては、上述した(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体の変性に用いた方法が挙げられる。
レン・1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン系エラストマーは、ハイブリッド化しない場合には、経時変化でそれぞれの密度差により分層するため、保存安定性に欠ける。
第2のコーティング剤を製造するには、前記のハイブリッド樹脂を、上記溶剤に混合すればよいが、該ハイブリッド樹脂が溶剤に溶解しない場合には、微細な粒子に分散することが好ましい。すなわち、該ハイブリッド樹脂を溶剤に加えた後、加熱し完全に溶解させ、ついで該溶液を冷却し、ハイブリッド樹脂を微粒化して析出させる。予め60〜100℃で析出するように溶剤組成を設定し、この間の平均冷却速度を1〜20℃/時間、好ましくは2〜10℃/時間に調節することが必要である。あるいは親溶剤にのみ溶解し、親溶剤に対する析出が終了した後に貧溶剤を加えて、さらに析出を行っても良い。
第3のコーティング剤は、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとの割合(A)/(B)が40/60〜90/10(重量比)であるエラストマー100重量部と、(C)極性モノマー0.1〜10重量部と、(D)ラジカル重合開始剤0.001〜10重量部と、(E)架橋剤0.05〜5.0重量部とを熱処理して得られる極性モノマーグラフト架橋樹脂を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤であることを特徴とする。
第3のコーティング剤において、極性モノマーグラフト架橋樹脂を得るために、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、(B)スチレン系エラストマーに極性モノマーをグラフト共重合する。(C)極性モノマーとしては、上述した(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体の変性に用いる極性モノマーが挙げられる。
第3のコーティング剤に用いる(D)ラジカル重合開始剤は、前記(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、(B)スチレン系エラストマー、(C)極性モノマーとの反応を促進するものであれば何でも良いが、例えば上述した(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体の変性に用いるラジカル重合開始剤が挙げられる。中でも有機ペルオキシド、有機ペルエステルが好ましい。
第3のコーティング剤に用いる(E)架橋剤は、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとを効率良く、且つ、一段階で架橋するために使用される。(E)架橋剤を使用せずに(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーを反応した場合、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は分子量低減が優先的に起こるため、スチレン系エラストマーとの架橋反応がほとんど起きない。
リルメタクリレート、N,N'−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、
テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等がある。これらの中で特にトリアクリルホマールが好ましい。これらの架橋剤は複数を併用してもよい。
第3のコーティング剤に用いる極性モノマーグラフト架橋樹脂は、例えば(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとからなるエラストマーに、(C)極性モノマー、(D)ラジカル重合開始剤、(E)架橋剤を添加して動的に熱処理することにより得ることができる。ここで、動的に熱処理とは、溶融樹脂を押出機などで混練することを意味する。
溶剤に混合すればよいが、該樹脂が溶剤に溶解しない場合には、微細な粒子に分散することが好ましい。すなわち、該樹脂を溶剤に加えた後、加熱し完全に溶解させ、ついで該溶液を冷却し、極性モノマーグラフト架橋樹脂を微粒化して析出させる。予め60〜100℃で析出するように溶剤組成を設定し、この間の平均冷却速度を1〜20℃/時間、好ましくは2〜10℃/時間に調節することが必要である。あるいは親溶剤にのみ溶解し、親溶剤に対する析出が終了した後に貧溶剤を加えて、さらに析出を行っても良い。
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本発明において、各物性は以下のように測定した。
(1−ブテン含量)
13C−NMRを利用して求めた。
135℃デカリン中で測定し、dl/gで示した。
(分子量分布(Mw/Mn))
分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。
Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル(株)製を用いた。
B値は、10mmφの試料管中で約200mgの共重合体を1mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C−NMRのスペクトルを、通常、測定温度120℃、測定周波数25.05MHz、スペクトル幅1500Hz、フィルター幅1500Hz、パルス繰り返し時間4.2sec、積算回数2000〜5000回の測定条件の下で測定し、このスペクトルからP1、P2、P12(P1はエチレン含量分率、P2は1−ブテン含量分率、P12は全二分子中連鎖中の(エチレン)−(1−ブテン)連鎖の割合)を求めることにより算出した。
ヘキサクロロブタジエン溶液(テトラメチルシランを基準)で13C−NMRスペクトルを測定し、19.5〜21.9ppmに表れるピークの全面積(100%)に対する21
.0〜21.9ppmに表れるピークの面積の割合(%)を求めた。
Polymer,30,1350(1989)を参考にして、前記した方法により13C−NMRスペクトルを利用して求めた。
試料約5mgをアルミパンに詰め10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち20℃/分で室温まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。測定は、パーキンエルマー(株)製DSC−7型装置を用いた。
成形後少なくとも24時間経過した厚さ1.0mmのプレスシートのX線回折測定により求めた。
上記DSC装置を用い、45℃における1/2結晶化時間を求めた。
[製造例1(PBR−1の合成)]
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、900mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン60gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を70℃に昇温し、プロピレンで0.7MPaに加圧した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム(株)製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温70℃、プロピレン圧0.7MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、9.2gであった。また、ポリマーの融点が80.6℃であり、極限粘度[η]が1.18dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
ヘキサンの仕込みを817ml、1−ブテンを50g、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドをジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニルジルコニウムジクロリドにした以外は製造例1と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは、11.5gであった。また、ポリマーの融点が86.3℃であり、極限粘度[η]が2.11dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
ヘキサンの仕込みを800ml、1−ブテンを120g、重合器内温を60℃にした以外は製造例1と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは、10.8gであった。また、ポリマーの融点が69.0℃であり、極限粘度[η]が2.06dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
[製造比較例1(PBR−C1の合成)]
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを830ml、1−ブテンを100g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1mmol加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧0.7MPaにし、トリエチルアルミニウム1mmol、及び塩化マグネシウムに担持されたチタン触媒をTi原子に換算して0.005mmol加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を0.7MPaに保ちながら30分間重合を行
った以外は製造例1と同様の重合後処理を行った。
ヘキサンを900ml、1−ブテンを60g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1mmol加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧を0.7MPaにし、メチルアルミノキサン0.30mmol、rac−ジメチルシリレン−ビス{1−(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)}ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.001mmol加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を0.7MPaに保ちながら30分間重合を行った以外は製造例1と同様の重合後処理を行った。
ヘキサンを842ml、1−ブテンを95g仕込みにした以外は製造比較例2と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは15.1gであった。また、ポリマーの融点は69.5℃であり、極限粘度[η]が1.95dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表3に示す。
0℃で1秒間、1kg/cm2 の圧力をかけてヒートシールして試料を作成し、この試料の180°剥離強度を表6に記した。
〔比較例1〕
製造比較例1で得られたプロピレン系エラストマー110g、トルエン350mlを攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに入れ、充分な窒素置換をした後、攪拌しながら130℃まで昇温し、完全に溶解させた。ついで、前記温度を保ったまま、無水マレイン酸8.8g(トルエン50mlに溶解)とジクミルパーオキサイド2.4g(トルエン40mlに溶解)をそれぞれ4時間かけて滴下した。滴下終了後、130℃のまま3時間攪拌して後反応を行い、変性プロピレン系エラストマーを得た。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトン1000mlを加えて変性プロピレン系エラストマーを析出した。析出した変性プロピレン系エラストマーをガラスフィルターでろ別後、アセトン1000mlを添加、攪拌して変性プロピレン系エラストマーをアセトン洗浄した。アセトン洗浄とろ別操作を3回ずつ繰り返した後、変性プロピレン系エラストマーを乾燥し、試料を得た。この変性プロピレン系エラストマーの物性を表5に記した。
上記変性プロピレン系エラストマー60gをメチルシクロヘキサン240gに溶解し、樹脂20重量%を含むコーティング剤を得た。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表7に記した。
〔比較例2〕
製造比較例2で得られたプロピレン系エラストマーを比較例1と同じ方法で処理し、コーティング剤を調製した。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表7に記した。
〔比較例3〕
製造比較例3で得られたプロピレン系エラストマーを比較例1と同じ方法で処理し、コーティング剤を調製した。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表7に記した。
〔比較例4〕
比較例1で得た変性プロピレン系エラストマー30gと実施例2で得た変性スチレン系エラストマー30gをメチルシクロヘキサン240gを攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに入れ、充分な窒素置換をした後、150℃で5時間攪拌することでエステル化反応を行い、樹脂20重量%を含むコーティング剤を得た。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表7に記した。
〔比較例5〕
製造比較例1で得られたプロピレン系エラストマー4500g、スチレン系エラストマー(タフテックH1051)5500gに対し、無水マレイン酸を100g、パーへキシン25Bを20g、TAFを40g加え、充分混合した後、2軸押出機(日本プラコン(株)製,スクリューφ30mm,L/D=42,同方向回転,ベント2箇所設置,0.08MPaにベントを減圧)を用いて、押出温度220℃、回転数500回転/分、押出量16kg/時間で押出変性を行った。変性エラストマーの物性を表5に記した。 上記変性エラストマー60gをメチルシクロヘキサン240gに溶解し、樹脂20重量%を含むコーティング剤を得た。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表7に記した。
Claims (5)
- 変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、
(1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
(2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
(4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
(6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
である(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、
グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とするコーティング剤。 - 変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体40〜90重量%と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマー10〜60重量%とから形成されるハイブリッド樹脂(ただし、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーとの合計を100重量%とする)を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、
(1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
(2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
(4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
(6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
である(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、
グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とするコーティング剤。 - 前記極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーが、(I)スチレンを10〜60モル%含有するブロック共重合体であり、(II)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量が5,000〜200,000である(B)スチレン系エラストマーに、グラフト量が0.1〜10重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とする請求項2記載のコーティング剤。
- (A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとの割合(A)/(B)が40/60〜90/10(重量比)であるエラストマー100重量部と、(C)極性モノマー0.1〜10重量部と、(D)ラジカル重合開始剤0.001〜10重量部と、(E)架橋剤0.05〜5.0重量部とを熱処理して得られる極性モノマーグラフト架橋樹脂を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が
(1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
(2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
(4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
(6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
であることを特徴とするコーティング剤。 - 前記(B)スチレン系エラストマーが、(I)スチレンを10〜60モル%含有するブロック共重合体であり、(II)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量が5,000〜200,000であることを特徴とする請求項4に記載のコーティング剤。
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