JP2009114315A - コーティング剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属同士、ポリオレフィン同士、あるいは金属とポリオレフィンとを接着する際等に用いることが可能な低温での貯蔵安定性に優れるコーティング剤を提供すること。
【解決手段】極性モノマーによってグラフト変性された、プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し、13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、GPCにより求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、示差走査型熱量計により測定したTmが40〜120℃の範囲にあり、Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が特定の式を満たす、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、非塩素系コーティング剤に関するものであり、より詳細には塗料、プライマー、接着剤として有用なコーティング剤に関するものである。
金属同士、ポリオレフィン同士、あるいは金属とポリオレフィンとを接着するための接着剤や、ヒートシール剤として、様々なものが提案されている。
例えば、塗膜の粘着性を抑制するために、プロピレンを50〜95モル%、1−ブテンを5〜50モル%含有し、135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布(Mw/Mn)が3以下であるプロピレン系エラストマーに、グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトして得られる変性プロピレン系エラストマーが有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、上記変性プロピレン系エラストマーと、変性スチレン系エラストマーとからなるハイブリッド樹脂を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤(例えば、特許文献2参照)や、上記プロピレン系エラストマーとスチレン系エラストマーとを含むエラストマーと、架橋性モノマーと、ラジカル重合開始剤と架橋剤とを熱処理して得られる極性モノマーグラフト架橋樹脂を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤(例えば、特許文献3参照)が知られている。
しかし、これらのコーティング剤は、低温での貯蔵安定性のさらなる改善が望まれていた。
特開2000−345098号公報 特開2005−325223号公報 特開2006−37000号公報
本発明は前記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、金属同士、ポリオレフィン同士、あるいは金属とポリオレフィンとを接着する際等に用いることが可能な低温での貯蔵安定性に優れるコーティング剤を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記第1〜3のコーティング剤は低温での貯蔵安定性に優れることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1のコーティング剤は、
変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、
(1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
(2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
(4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
(6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
である(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、
グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とする。
本発明の第2のコーティング剤は、
変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体40〜90重量%と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマー10〜60重量%とから形成されるハイブリッド樹脂(ただし、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーとの合計を100重量%とする)を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、
(1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
(2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
(4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
(6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
である(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、
グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とする。
前記極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーが、(I)スチレンを10〜60モル%含有するブロック共重合体であり、(II)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量が5,000〜200,000である(B)スチレン系エラストマーに、グラフト量が0.1〜10重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることが好ましい。
本発明の第3のコーティング剤は、
(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとの割合(A)/(B)が40/60〜90/10(重量比)であるエラストマー100重量部と、(C)極性モノマー0.1〜10重量部と、(D)ラジカル重合開始剤0.001〜10重量部と、(E)架橋剤0.05〜5.0重量部とを熱処理して得られる極性モノマーグラフト架橋樹脂を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が
(1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
(2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
(4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
(6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
であることを特徴とする。
前記(B)スチレン系エラストマーが、(I)スチレンを10〜60モル%含有するブロック共重合体であり、(II)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量が5,000〜200,000であることが好ましい。
本発明のコーティング剤は、金属同士、ポリオレフィン同士、あるいは金属とポリオレフィンとを接着する際等に用いることが可能であり、特定のプロピレン・1−ブテンランダム共重合体の変性物を用いることにより、従来のコーティング剤と比べ、低温での貯蔵安定性に優れる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のコーティング剤は、以下の第1〜3のコーティング剤が挙げられる。
まず、第1〜3のコーティング剤で用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体について説明する。
((A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体)
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)は、以下の(1)〜(6)を満たし、好ましくは(7)、(8)を満たすことを特徴とする。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、(1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%、好ましくは65〜88モル%、より好ましくは70〜85モル%、更に好ましくは70〜75モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%、好ましくは12〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、更に好ましくは25〜30モル%の量を含有している(ただし、全構成単位を100モル%とする)。
この(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)は、プロピレンおよび1−ブテン以外のオレフィンたとえばエチレンなどから導かれる構成単位を少量たとえば10モル%以下の量で含んでいてもよい。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、(2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティ(mm分率)が85%以上97.5%以下、好ましくは87%以上97%以下、更に好ましくは90%以上97%以下である。本発明ではmm分率を上げ過ぎないことが重要で、特定のmm分率を持たせることにより、比較的高いプロピレン含量で融点を下げることができる。
トリアドアイソタクティシティ(mm分率)は、プロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)の立体規則性を示す指標であり、以下のようにして求めることができる。
このmm分率は、ポリマー鎖中に存在する3個の頭−尾結合したプロピレン単位連鎖を表面ジグザグ構造で表したとき、そのメチル基の分岐方向が同一である割合として定義され、下記のように13C−NMRスペクトルから求められる。
プロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)のmm分率を13C−NMRスペクトルから求める際には、具体的にポリマー鎖中に存在するプロピレン単位を含む3連鎖として、(i)頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖、および(ii)頭−尾結合したプロピレン単位とブテン単位とからなりかつ第2単位目がプロピレン単位であるプロピレン単位・ブテ
ン単位3連鎖について、mm分率が測定される。
これら3連鎖(i)および(ii)中の第2単位目(プロピレン単位)の側鎖メチル基のピーク強度からmm分率が求められる。以下に詳細に説明する。
プロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)の13C−NMRスペクトルは、サンプル管中でプロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)をロック溶媒として少量の重水素化ベンゼンを含むヘキサクロロブタジエンに完全に溶解させた後、120℃においてプロトン完全デカップリング法により測定される。測定条件は、フリップアングルを45°とし、パルス間隔を3.4T1以上(T1はメチル基のスピン格子緩和時間のうち最長の値)とする。メチレン基およびメチン基のT1は、メチル基より短いので、この条件では試料中のすべての炭素の磁化の回復は99%以上である。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準として頭−尾結合したプロピレン単位5連鎖(mmmm)の第3単位目のメチル基炭素ピークを21.593ppmとして、他の炭素ピークはこれを基準とした。
このように測定されたプロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)の13C−NMRスペクトルのうち、プロピレン単位の側鎖メチル基が観測されるメチル炭素領域(約19.5〜21.9ppm)は、第1ピーク領域(約21.0〜21.9ppm)、第2ピーク領域(約20.2〜21.0ppm)、第3ピーク領域(約19.5〜20.2ppm)に分類される。
そしてこれら各領域内には、表1に示すような頭−尾結合した3分子連鎖(i)および(ii)中の第2単位目(プロピレン単位)の側鎖メチル基ピークが観測される。
Figure 2009114315
表1中、Pはプロピレンから導かれる構成単位、Bは1−ブテンから導かれる構成単位を示す。表1に示される頭−尾結合3連鎖(i)および(ii)のうち、(i)3連鎖がすべてプロピレン単位からなるPPP(mm)、PPP(mr)、PPP(rr)についてメチル基の方向を下記に表面ジグザグ構造で図示するが、(ii)ブテン単位を含む3連鎖(PPB、BPB)のmm、mr、rr結合は、このPPPに準ずる。
Figure 2009114315
第1領域では、mm結合したPPP、PPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。第2領域では、mr結合したPPP、PPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基およびrr結合したPPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。
第3領域では、rr結合したPPP3連鎖の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。したがってプロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)のトリアドアイソタクティシティ(mm分率)は、(i)頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖、または(ii)頭−尾結合したプロピレン単位とブテン単位とからなり、かつ第2単位目にプロピレン単位を含むプロピレン・ブテン3連鎖を、3連鎖中の第2単位目のプロピレン単位の側鎖メチル基について、13C−NMRスペクトル(ヘキサクロロブタジエン溶液、テトラメチルシランを基準)で測定したとき、19.5〜21.9ppm(メチル炭素領域)に表れるピークの全面積を100%とした場合に、21.0〜21.9ppm(第1領域)に表れるピークの面積の割合(百分率)として、下記式(1)から求められる。
Figure 2009114315
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)は、このようにして求められるmm分率が上述のように85%以上97.5%以下、好ましくは87%以上97%以下、更に好ましくは90%以上97%以下である。本発明ではmm分率を上げ過ぎないことが重要で、特定のmm分率を持たせることにより、比較的高いプロピレン含量で融点を下げることができる。なおプロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)は、上記のような頭−尾結合した3連鎖(i)および(ii)以外にも、下記構造(iii)、(iv)および(v)で示されるような位置不規則単位を含む部分構造を少量有しており、このような他の結合によるプロピレン単位の側鎖メチル基に由来するピークも上記のメチル炭素領域(19.5〜21.9ppm)内に観測される。
Figure 2009114315
上記の構造(iii)、(iv)および(v)に由来するメチル基のうち、メチル基炭素Aおよびメチル基炭素Bは、それぞれ17.3ppm、17.0ppmで共鳴するので、炭素Aおよび炭素Bに基づくピークは、前記第1〜3領域(19.5〜21.9ppm)内には現れない。さらにこの炭素Aおよび炭素Bは、ともに頭−尾結合に基づくプロピレン3連鎖に関与しないので、上記のトリアドアイソタクティシティ(mm分率)の計算では考慮する必要はない。
またメチル基炭素Cに基づくピーク、メチル基炭素Dに基づくピークおよびメチル基炭素D'に基づくピークは、第2領域に現れ、メチル基炭素Eに基づくピークおよびメチル
基炭素E'に基づくピークは第3領域に現れる。
したがって第1〜3メチル炭素領域には、PPE−メチル基(プロピレン−プロピレン−エチレン連鎖中の側鎖メチル基)(20.7ppm付近)、EPE−メチル基(エチレン−プロピレン−エチレン連鎖中の側鎖メチル基)(19.8ppm付近)、メチル基C、メチル基D、メチル基D'、メチル基Eおよびメチル基E'に基づくピークが現れる。
このようにメチル炭素領域には、頭−尾結合3連鎖(i)および(ii)に基づかないメチル基のピークも観測されるが、上記式によりmm分率を求める際にはこれらは下記のように補正される。
PPE−メチル基に基づくピーク面積は、PPE−メチン基(30.6ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができ、EPE−メチル基に基づくピーク面積は、EPE−メチン基(32.9ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。
メチル基Cに基づくピーク面積は、隣接するメチン基(31.3ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。メチル基Dに基づくピーク面積は、前記構造(iv)のαβメチレン炭素に基づくピーク(34.3ppm付近および34.5ppm付近で共鳴)のピーク面積の和の1/2より求めることができ、メチル基D'に基づくピーク面
積は、前記構造(v)のメチル基E'のメチル基の隣接メチン基に基づくピーク(33.
3ppm付近で共鳴)の面積より求めることができる。
メチル基Eに基づくピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.7ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができ、メチル基E'に基づくピーク面積は、隣接するメチ
ン炭素(33.3ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。
したがってこれらのピーク面積を第2領域および第3領域の全ピーク面積より差し引くことにより、頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖(i)および(ii)に基づくメチル基のピーク面積を求めることができる。
以上により頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖(i)および(ii)に基づくメチル基のピーク面積を評価することができるので、上記式に従ってmm分率を求めることができる。
なおスペクトル中の各炭素ピークは、文献(Polymer,30,1350(1989))を参考にして帰属することができる。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、(3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲であり好ましくは1.8〜3.0より好ましくは1.9〜2.5である。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、(4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/g、好ましくは0.5〜10dl/gより好ましくは1〜5dl/gである。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、(5)示差走査型熱量計によって測定される融点(Tm)が40〜120℃、好ましくは50〜100℃、更に好ましくは55〜90℃である。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、(6)上記融点(Tm)と、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
好ましくは
146exp(−0.024M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
更に好ましくは
146exp(−0.0265M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
である。このような融点とブテン含量の関係を満たすと、比較的高いプロピレン含量で融点を下げることができ、これによりコーティング剤の貯蔵安定性が良好になる。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、好ましくは(7)融点が75℃以下の場合においてプロピレン・1−ブテンランダム共重合体の45℃で測定した結晶化速度(1/2結晶化時間)が10分以下、より好ましくは7分以下である。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、好ましくは(8)プロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)の共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータB値は、0.9〜1.3、より好ましくは0.95〜1.25、特に好ましくは0.95〜1.2である。
このパラメータB値はコールマン等(B.D.Cole−man and T.G.Fox,J.Polym.Sci.,Al,3183(1963))により提案されており、
以下のように定義される。
B=P12/(2P1・P2
ここで、P1、P2はそれぞれ第1モノマー、第2モノマー含量分率であり、P12は全二分子中連鎖中の(第1モノマー)−(第2モノマー)連鎖の割合である。
なおこのB値は1のときベルヌーイ統計に従い、B<1のとき共重合体はブロック的であり、B>1のとき交互的であり、B=2のとき交合共重合体であることを示す。
また、本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)は、プロピレン連鎖中に存在するプロピレンの2,1−挿入あるいは1,3−挿入に基づく異種結合単位(位置不規則単位)を含む構造を少量有していることがある。
重合時、プロピレンは、通常1,2−挿入(メチレン側が触媒と結合する)して前記のような頭−尾結合したプロピレン連鎖を形成するが、稀に2,1−挿入あるいは1,3−挿入することがある。2,1−挿入および1,3−挿入したプロピレンは、ポリマー中で、前記構造(iii)、(iv)および(v)で示されるような位置不規則単位を形成する。ポリマー構成単位中のプロピレンの2,1−挿入および1,3−挿入の割合は、前記の立体規則性と同様に13C−NMRスペクトルを利用して、Polymer,30,1350(1989)を参考にして下記の式から求めることができる。
プロピレンの2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合は、下記の式から求めることができる。
Figure 2009114315
なおピークが重なることなどにより、Iαβなどの面積が直接スペクトルより求めることが困難な場合は、対応する面積を有する炭素ピークで補正することができる。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)は、上記のようにして求められるプロピレン連鎖中に存在するプロピレンの2,1−挿入に基づく異種結合単位を、全プロピレン構成単位中0.01%以上具体的に0.01〜1.0%程度の割合で含んでいてもよい。
また(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)のプロピレンの1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合は、βγピーク(27.4ppm付近で共鳴)により求めることができる。
本発明に用いる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、プロピレンの1,3−挿入に基づく異種結合の割合が0.05%以下であってもよい。
上記のような本発明で用いられる(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(PBR)は、WO 2004/087775に記載の方法で製造することができる。
((B)スチレン系エラストマー)
本発明に用いる(B)スチレン系エラストマーは、(I)スチレンを10〜60モル%含有するブロック共重合体であり、(II)ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量が5,000〜200,000である。スチレン系エラストマーの市販品として例えば、タフテック(旭化成製)、セプトン(クラレ製)、クレイトン(シェ
ル製)等が挙げられる。
〔第1のコーティング剤〕
第1のコーティング剤は、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、前記(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とする。
なお、本発明において、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体とは極性モノマーによってグラフト変性されたプロピレン・1−ブテンランダム共重合体をしめす。
本発明において、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を得るために、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に極性モノマーをグラフト共重合する。極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、不飽和カルボン酸とその無水物およびその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル等を挙げることができるが、不飽和カルボン酸およびその無水物が好ましい。
水酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、たとえば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシープロピル(メタ)アクリレート、3−クロロー2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(6−ヒドロヘキサノイルオキシ)エチルアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルおよび10−ウンデセンー1−オール、1−オクテンー3−オール、2−メタノールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、N−メチロールアクリルアミド、2−(メタ)アクロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2−ブテン1,4−ジオール、グリセリンモノアルコール等を挙げることができる。
アミノ基含有エチレン性不飽和化合物としては、下式で表されるようなアミノ基または置換アミノ基を少なくとも1種類有するビニル系単量体を挙げることができる。
−NR12
(式中、R1は水素原子、メチル基またはエチル基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜12,好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数8〜12、好ましくは6〜9のシクロアルキル基である。なお、上記のアルキル基、シクロアルキル基は、さらに置換基を有しても良い。)
このようなアミノ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノメチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体類、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン等のビニルアミン系誘導体類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体、p−アミノヘキシルコハク酸イミド、2−アミノエチルコハク酸イミド等のイミド類を挙げることができる。
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、1分子中に重合可能な不飽和結合基
及びエポキシ基を少なくとも1個以上有するモノマーが用いられる。このようなエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、たとえば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、あるいはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、エンドーシスービシクロ[2,2,1]ヘプトー5−エンー2、3―ジカルボン酸(ナジック酸TM)、エンドーシスービシクロ[2,2,1]ヘプトー5−エンー2−メチルー2,3−ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)等の不飽和ジカルボン酸のモノグリシジルエステル(モノグリシジルエステルの場合のアルキル基の炭素数1〜12)、p―スチレンカルボン酸のアルキルグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p―グリシジルエーテル、3,4−エポキシー1−ブテン、3,4−エポキシー3−メチルー1−ブテン、3,4−エポキシー1−ペンテン、3,4−エポキシー3−メチルー1−ペンテン、5,6−エポキシー1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等を挙げることができる。
不飽和カルボン酸類としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸またはこれらの誘導体(例えば酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等)を挙げることができる。
この誘導体としては、例えば、塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプトー2−エンー5,6−ジカルボン酸ジメチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸アミノエチルおよびメタクリル酸アミノプロピル等を挙げることができる。
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、パーサティック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等を挙げることができる。
これらの極性モノマーは単独あるいは複数で使用することができる。また、上記極性モノマーは(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に対し、グラフト量が0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%となるようにグラフト共重合される。
なお、グラフト量とは、極性モノマーの重量を示し、用いた(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体の重量と極性モノマーの重量との合計が100重量%である。
前記(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、上記極性モノマーから選ばれる少なくとも1種の極性モノマーをグラフト共重合させる方法として、種々の方法を挙げることができる。たとえば、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を有機溶剤に溶解し、上記極性モノマーおよびラジカル重合開始剤を添加して加熱、攪拌してグラフト共重合反応させる方法、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を加熱溶融して、得られる溶融物に極性モノマーおよびラジカル重合開始剤を添加し、攪拌してグラフト共重合させる方法、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、極性モノマーおよびラジカル重合開始剤を予め混合し、得られる混合物を押出機に供給して加熱混練しながらグラフト共重合反応させる方法、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、上記極性モノマーおよびラジカル重合開始剤を有機溶剤に溶解してなる溶液を含浸させ
た後、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が溶解しない最高の温度まで加熱し、グラフト共重合反応させる方法などを挙げることができる。
反応温度は、50℃以上、特に80〜200℃の範囲が好適であり、反応時間は1〜10時間程度である。
反応方式は、回分式、連続式のいずれでも良いが、グラフト共重合を均一に行うためには回分式が好ましい。
使用するラジカル重合開始剤は、前記(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と前記極性モノマーとの反応を促進するものであれば何でも良いが、特に有機ペルオキシド、有機ペルエステルが好ましい。
具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert―ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシンー3、1,4−ビス(tert―ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert―ブチルペルオキシ)ヘキシンー3、2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert―ブチルペルオキシド)ヘキサン、tert−ブチルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペル−sec −オクトエート、tert−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびtert−ブチルペルジエチルアセテートがあり、その他アゾ化合物、たとえば、アゾビスーイソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチルニトリルがある。
これらのうちでは、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシンー3,2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルペルオキシドが好ましい。
ラジカル重合開始剤は、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部程度の量で使用されることが好ましい。グラフト反応は前記の通り、有機溶剤中、または無溶剤で行うことができるが、第1のコーティング剤においては変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を有機溶剤に溶解または分散したコーティング剤を接着剤等として使用するので、有機溶剤中で反応した場合はそのまま、またはさらに同種または他種の有機溶剤を加えて接着剤等を調製する。有機溶剤を用いずにグラフト反応を行った場合には、あらためて有機溶剤を添加してグラフト生成物を溶解し、接着剤等とする。
このように反応時、または反応後に加えて、接着剤等を調製するための有機溶剤としては、特に限定されないが、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル類、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。この中では、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ケトン類が好ましい。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても良い。
第1のコーティング剤における変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体の濃度は、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体および有機溶剤の種類によっても異なるが、固形分濃度で3〜50%、B型粘度計による溶液粘度で5〜4000cps程度とするのが、接着工程における作業性の点で好ましい。
本発明の第1のコーティング剤中には、発明の目的を損なわない範囲において、それ自体公知の顔料、充填剤、安定剤その他の配合剤を任意に配合することができる。
本発明の第1のコーティング剤を製造するには、前記の変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を、上記有機溶剤に混合すればよいが、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が有機溶剤に溶解しない場合には、微細な粒子に分散することが好ましい。すなわち、該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を溶剤に加えた後、加熱し完全に溶解させ、ついで該溶液を冷却し、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を微粒化して析出させる。予め60〜100℃で析出するように有機溶剤の組成を設定し、この間の平均冷却速度を1〜20℃/時間、好ましくは2〜10℃/時間に調節することが必要である。あるいは親溶剤にのみ溶解し、親溶剤に対する析出が終了した後に貧溶剤を加えて、さらに析出を行っても良い。
〔第2のコーティング剤〕
第2のコーティング剤は、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体40〜90重量%と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマー10〜60重量%とから形成されるハイブリッド樹脂(ただし、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーとの合計を100重量%とする)を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、前記(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とする。
第2のコーティング剤で用いる変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体としては、前記第1のコーティング剤で用いる変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と同様のものを用いることができる。
なお、本発明において、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーを変性スチレン系エラストマーとも記す。
第2のコーティング剤において、変性スチレン系エラストマーを得るために、スチレン系エラストマーに極性モノマーをグラフト共重合する。極性モノマーをグラフト共重合する方法としては、上述した(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体の変性に用いた方法が挙げられる。
前記スチレン系エラストマーとしては、前記(B)スチレン系エラストマーであることが好ましい。また、変性スチレン系エラストマーとしては、(B)スチレン系エラストマーにグラフト量が0.1〜10重量%、より好ましくは好ましくは0.1〜5重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることが好ましい。
変性スチレン系エラストマーとして、市販品を用いてもよく、市販品として例えば、末端水酸基含有スチレン系エラストマー(クラレ製,ハイブラーHG−664,分子量Mw=50,000,スチレン含量22モル%)等が挙げられる。
スチレン系エラストマーに、上記極性モノマーから選ばれる少なくとも1種の極性モノマーをグラフト共重合させる方法としては、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に極性モノマーをグラフト重合させる方法と同様に行うことができる。
第2のコーティング剤において、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン系エラストマーとをハイブリッド化する方法としては、グラフトモノマー同士の化学反応によって行うことができる。例えば、水酸基含有エチレン性不飽和化合物をグラフトしたエラストマーと不飽和カルボン酸、または無水物をグラフトしたエラストマーとのエステル化反応、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物をグラフトしたエラストマーと不飽和カルボン酸、または無水物をグラフトしたエラストマーとのアミド化反応などが挙げられる。特に、不飽和カルボン酸、または無水物をグラフト変性したプロピレン・1−ブテンランダム共重合体と、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、またはエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物をグラフト変性したスチレン系エラストマーとのエステル化反応が好ましい。
ハイブリッド樹脂は、グラフトプロピレン・1−ブテンランダム共重合体が40〜90重量%、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーが10〜60重量%(ただし、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーとの合計を100重量%とする)をハイブリッド化することにより形成される。より好ましいハイブリッド樹脂は、用いたスチレン系エラストマーのスチレン含量によって異なるが、ハイブリッド樹脂形成するために用いるグラフト変性されたスチレン系エラストマーの比率が10〜40重量%である。ハイブリッド樹脂の組成比率がこの範囲にあると剥離強度の点で好ましい。 また、変性プロピ
レン・1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン系エラストマーは、ハイブリッド化しない場合には、経時変化でそれぞれの密度差により分層するため、保存安定性に欠ける。
ハイブリッド化する際、またはハイブリッド化後に加えて、接着剤等の第2のコーティング剤を調製するための有機溶剤としては、特に限定されないが、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル類、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。この中では、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ケトン類が好ましい。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても良い。
ハイブリッド樹脂を有する第2のコーティング剤の濃度は、ハイブリッド樹脂および溶剤の種類によっても異なるが、固形分濃度で3〜50%、B型粘度計による溶液粘度で5〜4000cps程度とするのが、接着工程における作業性の点で好ましい。
第2のコーティング剤中には、発明の目的を損なわない範囲において、それ自体公知の顔料、充填剤、安定剤その他の配合剤を任意に配合することができる。
第2のコーティング剤を製造するには、前記のハイブリッド樹脂を、上記溶剤に混合すればよいが、該ハイブリッド樹脂が溶剤に溶解しない場合には、微細な粒子に分散することが好ましい。すなわち、該ハイブリッド樹脂を溶剤に加えた後、加熱し完全に溶解させ、ついで該溶液を冷却し、ハイブリッド樹脂を微粒化して析出させる。予め60〜100℃で析出するように溶剤組成を設定し、この間の平均冷却速度を1〜20℃/時間、好ましくは2〜10℃/時間に調節することが必要である。あるいは親溶剤にのみ溶解し、親溶剤に対する析出が終了した後に貧溶剤を加えて、さらに析出を行っても良い。
〔第3のコーティング剤〕
第3のコーティング剤は、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとの割合(A)/(B)が40/60〜90/10(重量比)であるエラストマー100重量部と、(C)極性モノマー0.1〜10重量部と、(D)ラジカル重合開始剤0.001〜10重量部と、(E)架橋剤0.05〜5.0重量部とを熱処理して得られる極性モノマーグラフト架橋樹脂を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤であることを特徴とする。
第3のコーティング剤において、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとの割合(A)/(B)は通常40/60〜90/10(重量比)、好ましくは40/60〜70/30(重量比)である。(A)/(B)の割合がこの範囲にあると、コーティング剤の剥離強度および粘着性の点で好ましい。
((C)極性モノマー)
第3のコーティング剤において、極性モノマーグラフト架橋樹脂を得るために、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、(B)スチレン系エラストマーに極性モノマーをグラフト共重合する。(C)極性モノマーとしては、上述した(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体の変性に用いる極性モノマーが挙げられる。
用いる(C)極性モノマーの量は、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとを含有するエラストマー100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部である。極性モノマーの含有量がこの範囲にあると剥離強度の点で好ましい。
((D)ラジカル重合開始剤)
第3のコーティング剤に用いる(D)ラジカル重合開始剤は、前記(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、(B)スチレン系エラストマー、(C)極性モノマーとの反応を促進するものであれば何でも良いが、例えば上述した(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体の変性に用いるラジカル重合開始剤が挙げられる。中でも有機ペルオキシド、有機ペルエステルが好ましい。
(D)ラジカル重合開始剤は、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとを含有するエラストマー100重量部に対して、通常0.001〜10重量部、好ましくは0.05〜5.0重量部の量で使用される。
((E)架橋剤)
第3のコーティング剤に用いる(E)架橋剤は、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとを効率良く、且つ、一段階で架橋するために使用される。(E)架橋剤を使用せずに(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーを反応した場合、(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体は分子量低減が優先的に起こるため、スチレン系エラストマーとの架橋反応がほとんど起きない。
(E)架橋剤は、例えば、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアクリルホマール、トリメタクリロイルホマール、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、P−キノンジオキシム、P,P'−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、ア
リルメタクリレート、N,N'−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、
テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等がある。これらの中で特にトリアクリルホマールが好ましい。これらの架橋剤は複数を併用してもよい。
(E)架橋剤は、(A)プロピレン系エラストマーと(B)スチレン系エラストマーとからなるエラストマー100重量部に対して、通常0.05〜5.0重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部の量で使用される。架橋剤の使用量がこの範囲にあると架橋効率の点で好ましい。
(極性モノマーグラフト架橋樹脂の製造)
第3のコーティング剤に用いる極性モノマーグラフト架橋樹脂は、例えば(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとからなるエラストマーに、(C)極性モノマー、(D)ラジカル重合開始剤、(E)架橋剤を添加して動的に熱処理することにより得ることができる。ここで、動的に熱処理とは、溶融樹脂を押出機などで混練することを意味する。
(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとからなるエラストマーに、前記(C)極性モノマーをグラフト共重合させる方法として、種々の方法を挙げることができる。たとえば、エラストマーを加熱溶融して、得られる溶融物に(C)極性モノマーおよび(D)ラジカル重合開始剤を添加し、攪拌してグラフト共重合させる方法、エラストマー、(C)極性モノマーおよび(D)ラジカル重合開始剤を予め混合し、得られる混合物を押出機に供給して加熱混練しながらグラフト共重合反応させる方法などを挙げることができる。反応温度は、50℃以上、特に80〜200℃の範囲が好適であり、反応時間は0.05〜5時間程度である。反応方式は、回分式、連続式のいずれでも良いが、グラフト共重合を均一に行うためには回分式が好ましい。(E)架橋剤は、反応前の各エラストマーに予め配合しておくことが好ましく、反応中に添加しても良い。また、得られた極性モノマーグラフト架橋樹脂の135℃、デカリン中で測定される極限粘度は0.1〜5dl/gであることが好ましい。
上記反応時、または反応後に加えて、接着剤等の第3のコーティング剤を調製するための有機溶剤としては、特に限定されないが、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル類、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。この中では、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ケトン類が好ましい。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても良い。
極性モノマーグラフト架橋樹脂を有する第3のコーティング剤の濃度は、極性モノマーグラフト架橋樹脂および溶剤の種類によっても異なるが、固形分濃度で3〜50%、B型粘度計による溶液粘度で5〜4000mPa・s程度とするのが、接着工程における作業性の点で好ましい。第3のコーティング剤の樹脂分散物中には、発明の目的を損なわない範囲において、それ自体公知の顔料、充填剤、安定剤その他の配合剤を任意に配合することができる。
第3のコーティング剤を製造するには、前記の極性モノマーグラフト架橋樹脂を、上記
溶剤に混合すればよいが、該樹脂が溶剤に溶解しない場合には、微細な粒子に分散することが好ましい。すなわち、該樹脂を溶剤に加えた後、加熱し完全に溶解させ、ついで該溶液を冷却し、極性モノマーグラフト架橋樹脂を微粒化して析出させる。予め60〜100℃で析出するように溶剤組成を設定し、この間の平均冷却速度を1〜20℃/時間、好ましくは2〜10℃/時間に調節することが必要である。あるいは親溶剤にのみ溶解し、親溶剤に対する析出が終了した後に貧溶剤を加えて、さらに析出を行っても良い。
本発明の上記第1〜3のコーティング剤は、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体として、上述した特定の(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を用い、該(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体をベースにしているので、金属同士、ポリオレフィン同士、あるいは金属とポリオレフィンとの接着剤やヒートシール剤として、塗膜のべたつきがなく、優れた接着性能および密着性能を示し、かつ低温での保存安定性に優れる。このため、特にPTP包装用接着剤、ラミネート用接着剤、塗料用原料やプライマー原料として有効に使用できる。
〔実施例〕
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[物性測定法]
本発明において、各物性は以下のように測定した。
(1−ブテン含量)
13C−NMRを利用して求めた。
(極限粘度[η])
135℃デカリン中で測定し、dl/gで示した。
(分子量分布(Mw/Mn))
分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。
分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径27mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業(株)製)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品工業(株)製)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー(株)製を用い、1000≦
Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル(株)製を用いた。
(B値)
B値は、10mmφの試料管中で約200mgの共重合体を1mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C−NMRのスペクトルを、通常、測定温度120℃、測定周波数25.05MHz、スペクトル幅1500Hz、フィルター幅1500Hz、パルス繰り返し時間4.2sec、積算回数2000〜5000回の測定条件の下で測定し、このスペクトルからP1、P2、P12(P1はエチレン含量分率、P2は1−ブテン含量分率、P12は全二分子中連鎖中の(エチレン)−(1−ブテン)連鎖の割合)を求めることにより算出した。
(トリアドアイソタクティシティ)
ヘキサクロロブタジエン溶液(テトラメチルシランを基準)で13C−NMRスペクトルを測定し、19.5〜21.9ppmに表れるピークの全面積(100%)に対する21
.0〜21.9ppmに表れるピークの面積の割合(%)を求めた。
(2,1−挿入に基づく異種結合の割合)
Polymer,30,1350(1989)を参考にして、前記した方法により13C−NMRスペクトルを利用して求めた。
(融点(Tm))
試料約5mgをアルミパンに詰め10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち20℃/分で室温まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。測定は、パーキンエルマー(株)製DSC−7型装置を用いた。
(結晶化度)
成形後少なくとも24時間経過した厚さ1.0mmのプレスシートのX線回折測定により求めた。
(結晶化速度)
上記DSC装置を用い、45℃における1/2結晶化時間を求めた。
[製造例1(PBR−1の合成)]
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、900mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン60gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を70℃に昇温し、プロピレンで0.7MPaに加圧した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム(株)製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温70℃、プロピレン圧0.7MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、9.2gであった。また、ポリマーの融点が80.6℃であり、極限粘度[η]が1.18dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
[製造例2(PBR−2の合成)]
ヘキサンの仕込みを817ml、1−ブテンを50g、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドをジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニルジルコニウムジクロリドにした以外は製造例1と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは、11.5gであった。また、ポリマーの融点が86.3℃であり、極限粘度[η]が2.11dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
[製造例3(PBR−3の合成)]
ヘキサンの仕込みを800ml、1−ブテンを120g、重合器内温を60℃にした以外は製造例1と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは、10.8gであった。また、ポリマーの融点が69.0℃であり、極限粘度[η]が2.06dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
[製造比較例1(PBR−C1の合成)]
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを830ml、1−ブテンを100g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1mmol加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧0.7MPaにし、トリエチルアルミニウム1mmol、及び塩化マグネシウムに担持されたチタン触媒をTi原子に換算して0.005mmol加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を0.7MPaに保ちながら30分間重合を行
った以外は製造例1と同様の重合後処理を行った。
得られたポリマーは33.7gであった。また、ポリマーの融点は110.0℃であり、極限粘度[η]が1.91dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表3に示す。
[製造比較例2(PBR−C2の合成)]
ヘキサンを900ml、1−ブテンを60g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1mmol加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧を0.7MPaにし、メチルアルミノキサン0.30mmol、rac−ジメチルシリレン−ビス{1−(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)}ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.001mmol加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を0.7MPaに保ちながら30分間重合を行った以外は製造例1と同様の重合後処理を行った。
得られたポリマーは39.7gであった。また、ポリマーの融点は88.4℃であり、極限粘度[η]が1.60dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表3に示す。
[製造比較例3(PBR−C3の合成)]
ヘキサンを842ml、1−ブテンを95g仕込みにした以外は製造比較例2と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは15.1gであった。また、ポリマーの融点は69.5℃であり、極限粘度[η]が1.95dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表3に示す。
製造例3とほぼ同じ融点の製造比較例3についてはDSCで45℃における1/2結晶化時間を求めた。
Figure 2009114315
Figure 2009114315
製造例1で得られたプロピレン系エラストマー110g、トルエン350mlを攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに入れ、充分な窒素置換をした後、攪拌しながら130℃まで昇温し、完全に溶解させた。ついで、前記温度を保ったまま、無水マレイン酸8.8g(トルエン50mlに溶解)とジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製,商品名:パークミルD)2.4g(トルエン40mlに溶解)をそれぞれ4時間かけて滴下した。滴下終了後、130℃のまま3時間攪拌して後反応を行い、変性プロピレン系エラストマーを得た。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトン1000mlを加えて変性プロピレン系エラストマーを析出した。析出した変性プロピレン系エラストマーをガラスフィルターでろ別後、アセトン1000mlを添加、攪拌して変性プロピレン系エラストマーをアセトン洗浄した。アセトン洗浄とろ別操作を3回ずつ繰り返した後、変性プロピレン系エラストマーを乾燥し、試料を得た。この変性プロピレン系エラストマーの物性を表4に記した。
上記変性プロピレン系エラストマー60gをメチルシクロヘキサン240gに溶解し、樹脂20重量%を含むコーティング剤を得た。この溶液の安定性を表6に記した。該溶液をバーコーターを用いてアルミ箔に塗布、風乾した後、180℃にセットしたエア・オーブン中で20秒間加熱し、均一透明な塗工箔を得た。塗工箔の加熱成膜直後の粘着性の有無は、室温下にて指で触れることで評価した。この塗工箔とポリプロピレンシート(東セロ(株)製,#500T−T)をJIS Z1707に準拠した方法により100〜20
0℃で1秒間、1kg/cm2 の圧力をかけてヒートシールして試料を作成し、この試料の180°剥離強度を表6に記した。
製造例2で得られたプロピレン系エラストマーを実施例1と同じ方法で処理し、コーティング剤を調製した。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表6に記した。
製造例3で得られたプロピレン系エラストマーを実施例1と同じ方法で処理し、コーティング剤を調製した。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表6に記した。
スチレン系エラストマー(旭化成(株)製,タフテックH1051,分子量Mw=100,000,スチレン含量40重量%)110g、トルエン350mlを攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに入れ、充分な窒素置換をした後、攪拌しながら130℃まで昇温し、完全に溶解させた。ついで、前記温度を保ったまま、ヒドロキシエチルメタアクリレート0.33g(トルエン50mlに溶解)とジクミルパーオキサイド1.2g(トルエン40mlに溶解)をそれぞれ4時間かけて滴下した。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトン1000mlを加えて変性スチレン系エラストマーを析出した。析出した変性スチレン系エラストマーをガラスフィルターでろ別後、アセトン1000mlを添加、攪拌して変性スチレン系エラストマーをアセトン洗浄した。アセトン洗浄とろ別操作を3回ずつ繰り返した後、変性スチレン系エラストマーを乾燥し、試料を得た。この変性スチレン系エラストマーは、グラフト量が0.2重量%、分子量分布(Mw/Mn)が1.6であった。
実施例1で得た変性プロピレン系エラストマー30g、上記変性スチレン系エラストマー30g、メチルシクロヘキサン240gを攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに入れ、充分な窒素置換をした後、150℃で5時間攪拌することでエステル化反応を行い、樹脂20重量%を含むコーティング剤を得た。この変性エラストマーの物性を表4に記した。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表6に記した。
製造例1で得られたプロピレン系エラストマー4500g、スチレン系エラストマー(旭化成(株)製,タフテックH1051)5500gに対し、無水マレイン酸(和光純薬工業(株)製)を100g、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキシン−3(日本油脂(株)製,商品名:パーへキシン25B)を20g、1,3,5−トリアクロイル−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(ダイトーケミックス(株)製,商品名:TAF)を40g加え、ヘンシェルミキサーで充分混合した後、2軸押出機(日本プラコン(株)製,スクリューφ30mm,L/D=42,同方向回転,ベント2箇所設置,0.08MPaにベントを減圧)を用いて、押出温度220℃、回転数500回転/分、押出量16kg/時間で押出変性を行った。変性エラストマーの物性を表4に記した。上記変性エラストマー60gをメチルシクロヘキサン240gに溶解し、樹脂20重量%を含むコーティング剤を得た。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表6に記した。
〔比較例1〕
製造比較例1で得られたプロピレン系エラストマー110g、トルエン350mlを攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに入れ、充分な窒素置換をした後、攪拌しながら130℃まで昇温し、完全に溶解させた。ついで、前記温度を保ったまま、無水マレイン酸8.8g(トルエン50mlに溶解)とジクミルパーオキサイド2.4g(トルエン40mlに溶解)をそれぞれ4時間かけて滴下した。滴下終了後、130℃のまま3時間攪拌して後反応を行い、変性プロピレン系エラストマーを得た。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトン1000mlを加えて変性プロピレン系エラストマーを析出した。析出した変性プロピレン系エラストマーをガラスフィルターでろ別後、アセトン1000mlを添加、攪拌して変性プロピレン系エラストマーをアセトン洗浄した。アセトン洗浄とろ別操作を3回ずつ繰り返した後、変性プロピレン系エラストマーを乾燥し、試料を得た。この変性プロピレン系エラストマーの物性を表5に記した。
上記変性プロピレン系エラストマー60gをメチルシクロヘキサン240gに溶解し、樹脂20重量%を含むコーティング剤を得た。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表7に記した。
〔比較例2〕
製造比較例2で得られたプロピレン系エラストマーを比較例1と同じ方法で処理し、コーティング剤を調製した。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表7に記した。
〔比較例3〕
製造比較例3で得られたプロピレン系エラストマーを比較例1と同じ方法で処理し、コーティング剤を調製した。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表7に記した。
〔比較例4〕
比較例1で得た変性プロピレン系エラストマー30gと実施例2で得た変性スチレン系エラストマー30gをメチルシクロヘキサン240gを攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに入れ、充分な窒素置換をした後、150℃で5時間攪拌することでエステル化反応を行い、樹脂20重量%を含むコーティング剤を得た。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表7に記した。
〔比較例5〕
製造比較例1で得られたプロピレン系エラストマー4500g、スチレン系エラストマー(タフテックH1051)5500gに対し、無水マレイン酸を100g、パーへキシン25Bを20g、TAFを40g加え、充分混合した後、2軸押出機(日本プラコン(株)製,スクリューφ30mm,L/D=42,同方向回転,ベント2箇所設置,0.08MPaにベントを減圧)を用いて、押出温度220℃、回転数500回転/分、押出量16kg/時間で押出変性を行った。変性エラストマーの物性を表5に記した。 上記変性エラストマー60gをメチルシクロヘキサン240gに溶解し、樹脂20重量%を含むコーティング剤を得た。この溶液の安定性と、該溶液を実施例1と同様に評価した結果を表7に記した。
Figure 2009114315
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Figure 2009114315

Claims (5)

  1. 変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
    該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、
    (1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
    (2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
    (3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
    (4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
    (5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
    (6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
    146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
    である(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、
    グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とするコーティング剤。
  2. 変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体40〜90重量%と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマー10〜60重量%とから形成されるハイブリッド樹脂(ただし、変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と、極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーとの合計を100重量%とする)を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
    該変性プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が、
    (1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
    (2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
    (3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
    (4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
    (5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
    (6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
    146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
    である(A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体に、
    グラフト量が0.1〜15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とするコーティング剤。
  3. 前記極性モノマーによってグラフト変性されたスチレン系エラストマーが、(I)スチレンを10〜60モル%含有するブロック共重合体であり、(II)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量が5,000〜200,000である(B)スチレン系エラストマーに、グラフト量が0.1〜10重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とする請求項2記載のコーティング剤。
  4. (A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体と(B)スチレン系エラストマーとの割合(A)/(B)が40/60〜90/10(重量比)であるエラストマー100重量部と、(C)極性モノマー0.1〜10重量部と、(D)ラジカル重合開始剤0.001〜10重量部と、(E)架橋剤0.05〜5.0重量部とを熱処理して得られる極性モノマーグラフト架橋樹脂を有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、
    (A)プロピレン・1−ブテンランダム共重合体が
    (1)プロピレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、1−ブテンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有し(ただし、全構成単位を100モル%とする)、
    (2)13C−NMRスペクトル測定から求められるトリアドアイソタクティシティが85%以上97.5%以下であり、
    (3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1〜3の範囲にあり、
    (4)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
    (5)示差走査型熱量計により測定した融点(Tm)が40〜120℃の範囲にあり、
    (6)該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
    146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
    であることを特徴とするコーティング剤。
  5. 前記(B)スチレン系エラストマーが、(I)スチレンを10〜60モル%含有するブロック共重合体であり、(II)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量が5,000〜200,000であることを特徴とする請求項4に記載のコーティング剤。
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