従来から電子機器に用いられる高効率の電源回路として、インダクタ(つまりコイル)を用いたスイッチングレギュレータが広く用いられている。
スイッチングレギュレータの制御方式には、大きく2つの方式が知られている。1つは一定周波数のクロックパルスのデューティサイクルを変化させて出力電圧が一定になるようにスイッチング制御を行うパルス幅変調(PWM:pulse width modulation)制御方式であり、もう1つはパルス幅が一定でクロックの周期を変化させて出力電圧が一定になるようにスイッチング制御を行うパルス周波数変調(PFM:pulse frequency modulation)制御方式である。
このようなスイッチングレギュレータ(以下、スイッチング電源回路ともいう。)では、コイルに流れる電流量は時間によって増加し、かつ電流を停止した瞬間に電流を流し続けようとするエネルギー量はそのもともと流れていた電流量によって決定する。つまり、クロック信号におけるオン時間がながければ長いほど、多くの電力を供給することとなる。
また、電源の出力電圧(以下、電源電圧ともいう。)のフィードバックには、周波数固定のデューティ制御によりオン時間を決めるもの(PWM制御方式)と、固定オン時間後のオフ時間を制御して、コイルに蓄えられたエネルギーを放出する時間、つまりオフ時間を制御するもの(PFM制御方式)とがある。
PWM制御方式は、スイッチング周波数が固定であることから、ノイズが読みやすく、フィルタ設計がしやすいので、現在一般的に使われいるが、負荷が小さくなっても固定周波数でスイッチングを行うので、スイッチング損失はそのままである。一方、PFM制御方式は、負荷が小さくなると、オフ時間が長くなるので、軽負荷時には損失が減るが、周波数が変化するため、フィルタの設計は困難である。
そこで、以下では、従来のスイッチング電源回路として、一般的に利用されているPWM制御方式のスイッチング電源回路について説明する。
図7は、一般的なPWM降圧型スイッチング電源回路の回路構成を説明するための図である。
このPWM降圧型スイッチング電源回路(以下、単にスイッチング電源回路ともいう。)500は、外部電源ライン524と接地ライン(GND)525bとの間に直列に接続されたPchトランジスタ(以下Pchドライバともいう。)523およびダイオード534と、該Pchトランジスタ523およびダイオード534の接続ノード530と出力ノード525aとの間に接続されたコイル526とを有している。ここで、Pchトランジスタ523は、スイッチ回路を構成するもので、外部電源ライン524と接続ノード530との間に接続されている。また、上記ダイオード534のカソードは、上記接続ノード530に接続され、そのアノードは接地ライン525bに接続されている。
また、スイッチング電源回路500は、出力ノード525aと接地ライン525bとの間に直列に接続された2つの抵抗531および532と、該直列接続の2つの抵抗に並列に接続されたコンデンサ533とを有している。このスイッチング電源回路500では、該出力ノード525aと接地ライン525bとが一対の出力端子を構成しており、この出力端子間には負荷527が接続されるようになっている。ここで、コイル526は、Pchドライバ523のオン時には電源ライン524から電流を供給されることによりエネルギーを蓄積し、該Pchドライバ523がオフしたときには、該蓄積したエネルギにより、接地ライン523bからコンデンサ533に充電電流を供給するものであり、コンデンサ533には、その充電により、Pchドライバ523のオンデューティに応じた電圧が、スイッチング電源回路500の出力電圧Voとして発生する。この出力電圧Voは、外部電源ラインからの入力電圧Vinを所望の電圧値まで降圧した電圧である。このように上記コイル526とコンデンサ533は、外部電源ラインからの入力電圧Vinを降圧する降圧型DC/DCコンバータを構成している。
上記スイッチング電源回路500は、基準電圧Vrefを発生する直流電源504と、上記出力電圧Voを上記2つの抵抗531および532で分割して得られるモニタ電圧FBと基準電圧Vrefとを入力とし、それらの差電圧を増幅して誤差信号電圧Eoを出力するエラーアンプ505とを有している。ここで、該エアーアンプ505の出力ノードとモニタ電圧FBが入力される入力ノードとの間には、該エラーアンプの出力信号を減衰させる、抵抗あるいは容量を含む位相補償器507が接続されており、この位相補償器507により、非常にゲインの大きいエアーアンプ505の出力信号Eoがモニタ電圧FBの変化に対して過剰に変動するのを抑えるようしている。
また、スイッチング電源回路500は、該誤差信号電圧Eoとランプ波形電圧RAMPとを比較し、その誤差電圧をデューティーパルス信号C2に変換するPWMコンパレータ508を有している。
ここで、このようなランプ波形電圧を用いるのは、以下の理由からである。つまり、スイッチング電源回路500の出力電圧VoはDC電圧ではあるが、時系列的に徐々に変化するものであり、該電源回路500の起動時には、該出力電圧Voはゼロレベルから立ち上がるものである。従って、該出力電圧Voのレベルに応じてPchドライバのオンデューティを調整するには、Pchドライバ523の駆動能力を、該出力電圧Voをモニタしながら、Pchドライバのパルス駆動により徐々に変化させてゆく必要がある。該電源回路500では、このようなPchドライバのフィードバック制御を行うために、ランプ波形電圧(基準値)と、出力電圧Voのモニタ信号である誤差信号電圧EoとをPWMコンパレータ508にて時間的に比較しながら、ランプ波形電圧が誤差信号電圧Eoを超えた期間だけ、Pchドライバ523を駆動するようにしている。
さらに、スイッチング電源回路500は、クロック信号Ck3を発生する発振器(OSC)520と、該クロック信号Ck3および上記PWMコンパレータ508からのデューティパルス信号C2に基づいて、上記Pchドライバ523の制御信号Csを発生するPWMロジック519と、該PWMロジック519からの制御信号Csを増幅して、Pchドライバ523にその駆動電圧Buffを供給するバッファ522とを有している。
ここで、上記クロック信号Ck3は、上記ランプ波形電圧RAMPと同一周期で、かつこれと同期した信号である。また、上記PWMロジック519は、セット入力端子(S入力)、リセット入力端子(R入力)、及びラッチ出力端子(Q出力)を有するラッチ回路518から構成されている。このラッチ回路518は、S入力に入力されるデューティパルス信号C2の立上りタイミングでセットされ、つまり、Q出力の信号レベルがハイレベルとなり、R入力に入力されるクロック信号Ck3によりリセットされ、つまりQ出力の信号レベルがローレベルとなる。このラッチ回路518のQ出力からは、上記誤差信号電圧Eoとランプ波形電圧RAMPとの誤差電圧に応じたオンデューティを有するパルス信号が、Pchドライバ523の制御信号Csとして出力される。
図8は、上記スイッチング電源回路500における主要部から出力される信号の変化を示すタイミングチャートである。
図8中、上記エラーアンプ505が出力する誤差信号電圧Eoは、スイッチング電源回路500の出力電圧Voが目標電圧に近づくに従って、その電圧レベルがハイレベルからローレベルに徐々に変化する電圧である。また、コンパレータ508の出力信号であるデューティーパルス信号C2は、上記ランプ波形電圧RAMPが誤差信号電圧Eo以上に達している状態ではハイレベルとなり、上記ランプ波形電圧RAMPが誤差信号電圧Eoに達していない状態ではローレベルとなる信号である。また、バッファ522からPchドライバ523に供給される駆動信号Buffは、上記ラッチ回路518のQ出力から出力される制御信号Csと同期して変化する信号である。
次に動作について説明する。
このような構成の従来のスイッチング電源回路500では、起動時に、外部電源ライン524からPchドライバ523に外部電源電圧が供給され、また直流電源504が立ち上がる。すると、起動時にはこの電源回路500の出力電圧Voは、ゼロレベルであることから、エラーアンプ505の出力である誤差信号電圧Eoはハイレベル側に張り付いており、これはランプ波形電圧RAMPより遥かに高いレベルにあり、従って、PWMコンパレータ508の出力であるデューティパルス信号C2のレベルはローレベルに維持される。このため、ラッチ回路518のQ出力からの制御信号Csにより、Pchドライバ523はオン状態を維持することとなる。この結果、スイッチング電源回路500の出力電圧Voは徐々に立ち上がる。このとき、エラーアンプ505の正側入力には、該直流電源504から基準電圧Vrefが供給され、PWMコンパレータ508の正側入力にはランプ波形電圧RAMPが供給される。またPWMロジック519のラッチ回路518のR入力には、発振器(OSC)520からクロック信号Ck3が供給される。
この状態では、エラーアンプ505では、直列接続の抵抗131および132の接続ノードに発生する電位が、出力電圧Voのモニタ電圧FBとしてエラーアンプ505の負側入力にフィードバックされている。そして、このモニタ電圧FBと基準電圧Vrefとがエラーアンプ505で比較され、その比較結果である誤差信号電圧EoがPWMコンパレータ508の負側入力に供給される。
すると、PWMコンパレータ508では、誤差信号電圧Eoとランプ波形電圧RAMPとが比較され、その誤差電圧がデューティーパルス信号C2に変換されてPWMロジック519のラッチ回路518のS入力に供給される。ここで、誤差信号電圧Eoは、電源回路の出力電圧Voのレベルが増大するにつれて小さくなり、デューティーパルス信号C2は、ランプ波形電圧RAMPが該誤差信号電圧Eoより大きくなった期間でハイレベルとなる。
ラッチ回路518は、このようなデューティパルス信号C2のハイレベルが入力されたときにセットされて、Q出力はハイレベルとなり、クロック信号Ck3によりリセットされるまで、該Q出力のハイレベルが維持される。また該ラッチ回路518の出力信号であるPchドライバの制御信号Csは、バッファ522により駆動電圧に変換されてPchドライバ523のゲートに印加される。
該Pchドライバ523は、バッファ522の出力がローレベルであるとき導通状態(オン)となり、バッファ522の出力がハイレベルであるとき非導通状態(オフ)となり、出力電圧Voは、そのオンデューティに応じた電位となる。
言い換えると、このスイッチング電源回路500では、入力電圧Vinに対する出力電圧Voが目標電圧になるように、上記外部電源ライン524と上記コイル526との間に接続されたPchドライバ523のオンデューティが制御される。
この時、エラーアンプ505は、出力電圧Voを抵抗531および532で分割したモニタ電圧FBと基準電圧Vrefとの差電圧を増幅し、該エラーアンプ505は、スイッチング電源回路500の出力電圧Voが目標電圧に達していないときはハイ側のレベルとなり、該出力電圧Voが十分な電圧と判断したときはロー側のレベルとなる誤差信号電圧EOを出力する。このように、該誤差信号電圧Eoのレベルは、モニタ電圧FBと基準電圧Vrefとの誤差電圧が小さいほど、ローレベルに近いレベルとなる。
このエラーアンプ505の誤差信号電圧Eoとランプ波形503は、後段のPWMコンパレータ508にて比較され、該比較により得られた誤差電圧は、デューティパルス信号C2に変換される。このパルス信号C2は、後段のPWMラッチ回路518に入力されると、PWMラッチ回路518は、そのハイレベルの期間には、負荷527に供給される電力が十分であると判断し、後段のPchドライバ523をオフさせる。このPWMラッチ回路518の出力は、該発振器520からのクロックの1周期(1/発振周波数)の間、出力レベルを保持し、該発振器520から入力されるリセットパルスCk3で、一旦リセットされる。この時、PWMコンパレータ508の出力がローレベルであれば、またPchドライバ523はオンし、デューティパルス信号C2がハイレベルとなるまで電力を供給する。
しかしながら、このような回路構成のスイッチング電源回路500では起動時に外部電源ライン524と出力ノード525aとがショートした状態となり、負荷527に大電流が流れるという問題がある。
すなわち、このスイッチング電源回路500の出力電圧Voは、その起動時には0Vまで低下していることから、エラーアンプ出力である誤差信号電圧Eoは完全にハイ側に振り切れ、出力ノード525aと接地ライン525bとの間の電圧Voが目標電圧付近まで上昇するまで、ランプ波形電圧RAMPよりも高い電位レベルを保持する。その場合PWMラッチ回路のS入力518は、随時ローレベルとなり、その結果Pchドライバ523は、オン状態を維持する。つまり、この状態では、図8に示すように、バッファ出力Buffには、オンデューティーが100パーセントとなる領域R1が表れ、この状態では、外部電源ライン524と出力ノード525aとの間が低インピーダンスでショートした状態となり、負荷527に大電流が流れ、このような状態は起動時の不安定要因となる。
ところで、このような課題に対しては、ソフトスタート回路付きPWM降圧型スイッチング電源回路が提案されており、すでに一般的に使用されている。
図9は、ソフトスタート回路付きPWM降圧型スイッチング電源回路(以下、単にスイッチング電源回路ともいう。)の一例を示している。
すなわち、図9に示すスイッチング電源回路700は、図7に示すPWM降圧型スイッチング電源回路500の回路構成に加えて、該電源回路の起動時にそのPchドライバ523の動作を制限するソフトスタート回路700aを備えるとともに、該電源回路500におけるPWMロジック回路519に代えて、該ソフトスタート回路700aの出力C1とPWMコンパレータ508の出力C2とに基づいて、Pchドライバの制御信号Csを出力するPWMロジック回路719を備えたものである。
ここで、ソフトスタート回路700aは、定電流源702と、該定電流源702からの電流IBにより充電されるコンデンサ701と、該コンデンサ701の充電による充電電圧SCと上記ランプ波形電圧RAMPとを比較し、その誤差電圧をデューティパルス信号C1に変換して、PWMロジック719に出力するソフトスタートコンパレータ711とを有している。このコンパレータ711では、PWMコンパレータ508と同様に、その正側入力にはランプ波形電圧RAMPが入力されるが、その負側入力には、コンデンサ701の充電電圧SCが入力される。
ここで、PWMコンパレータ508及びソフトスタートコンパレータ711は、それぞれ入力電圧を比較するコンパレータであって、エラーアンプ505だけが、入力電圧の差分を増幅する増幅器である。また、PWMコンパレータ508及びソフトスタートコンパレータ711のそれぞれの正側入力には、同一のランプ波形電圧RAMPが入力される。これらのコンパレータでは、その正側入力に入力される三角波電圧としてのランプ波形電圧RAMPに対して、その負側入力に入力されているDC電圧値によってコンパレータ出力のデューティが変化する。これは、ランプ波形電圧RAMPがその1周期毎に電圧レベルが極端に変化するものであるのに対し、コンデンサ701の充電による充電電圧SCやエラーアンプ505の出力電圧Eoは、その電圧レベルが非常にゆっくりと変化しているからである。もちろんエラーアンプ505は、その出力である誤差信号電圧Eoをモニタしている、つまり出力電圧Voのフィードバック制御系を構成しているので、負荷条件によってその出力レベルが1周期以内で大きく変化する可能性はあるが、その後段にラッチ回路718が接続されているので、Pchドライバ523の出力が、1周期以内で変化することはない。
このようなランプ波形電圧RAMPをコンパレータ508および711の基準電圧として用いるのは、Pchドライバ(スイッチングトランジスタ)523のオンデューティを制御するためである。つまり、このオンデューティを制御しているのは、エラーアンプ505の出力である誤差信号電圧Eoであり、コンデンサの端子電圧SCである。この2つの電圧値は、ランプ波形電圧の1周期以内で反転するものではない。また、これらの電圧はアナログ値であるので、外部電源電圧に対して中間電圧となっている。ところが、これらのアナログ電圧の処理回路の後段のPWMラッチ回路718やPchドライバ523は、すべてロジック回路であるので、ハイ/ロー、つまりVCC電圧とGND電位以外では動作しないことから、これらのアナログ電圧を、ロジックレベルに変換する必要がある。このようなアナログ電圧のロジックレベルへの変換をしているのが、ソフトスタートコンパレータ711であり、PWMコンパレータ508である。
また、ランプ波形電圧の代わりに、それぞれのコンパレータに、一定のリファレンス電圧を用いても、ロジックデータに変換することが可能であるが、ただこうするとゆっくり変化する2つのアナログ信号、つまりエラーアンプ505からの誤差信号電圧Eo及びコンデンサ701の端子電圧SCは、ランプ波形電圧の1周期からみると、ほとんど変化しないものである。この場合、1周期以内で、Pchドライバ523のオン期間とオフ期間とがこまめに繰り返されるのではなくて、長い周期で繰り替えされることとなる。そうすると、この電源回路では、過剰な負荷変動にも対応できなくなり、なおかつ負荷がかなり頻繁に変動しないと、デューティを制御できないといったことになる。
このようなことから、クロック信号の1周期以内でデューティ、つまり、Pchドライバのオン期間とオフ期間とがこまめに繰り返されるようにするために、各コンパレータの基準電圧として、ランプ波形電圧を用いている。
さらに、PWMロジック719は、該2つのコンパレータ508および711の出力を入力とする2入力OR回路717と、該OR回路717の出力に基づいて上記Pchドライバ523の制御信号Csを出力するPWMラッチ回路718とから構成されている。また、上記PWMラッチ回路718は、具体的にはRSフリップフロップ回路であり、そのS入力には、上記OR回路717の出力が入力され、そのR入力には上記発振器(OSC)520からのクロック信号Ck3が入力され、そのQ出力からは制御信号Csが上記バッファ522に出力されるようになっている。
このような構成のスイッチング電源回路700では、図10(a)に示すように、その起動時には、上記コンデンサ701は放電した状態であり、電源システム(スイッチング電源回路)700の起動時点から定電流源702によって該コンデンサ701の充電が行われる。このとき、ソフトスタートコンパレータ711では、PWMコンパレータ508とは逆に、起動時にはその出力レベルC1がハイ側(つまりPchドライバオフ側)に張り付き、充電の時定数に従ってその出力のローパルス幅(Pch/オン側)が開放されてゆく。
このソフトスタートコンパレータ711とPWMコンパレータ508の2つの出力信号C1およびC2は、OR回路717を介してPWMラッチ回路718のS入力(セット側入力)に入力される。これによりソフトスタートコンパレータ711とPWMコンパレータ708のいずれかがハイ信号(Pch/オフ側信号)を出力するとそれが優先され、起動時は、ソフトスタート回路700aにより、また起動後はエラーアンプ508により、Pchドライバ523のスイッチングデューティが調整され、電源回路700の出力電圧Voが安定することとなる。図10(a)の領域R2aは、スイッチングデューティが、ソフトスタート回路700aによる制御から、エラーアンプ508による制御に切り替わる点Tを示している。
なお、特許文献1には、図9に示すソフトスタート回路付きPWM降圧型スイッチング電源回路と同様、PWM形スイッチング電源装置において、起動時に出力電圧が急激に設定電圧以上に上昇するオーバーシュートと称される異常動作を起こさないように、徐々に出力電圧を上昇させるソフトスタート回路を備えたものが開示されている。また、PWM制御方式については、特許文献2などに開示されている。
特開2004−88964号公報
特開2007−209180号公報
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態によるスイッチング電源回路は、外部から供給された電圧を、パルス制御により、コイルを介してコンデンサーに断続的に印加することにより、負荷に対する所望の電圧を該コンデンサーの両端に発生させるスイッチング電源回路において、その起動時にその出力電圧、つまり負荷への印加電圧を制限するソフトスタート回路とともに、該ソフトスタート回路を制御するコントローラ回路を備えたものであり、簡便な回路を追加することにより、想定時間以内に出力電圧が目標電圧付近まで立ち上がらなかった場合に、外部に警告を発したり該スイッチング電源回路の起動を停止したりすることができるようにしたものである。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1によるスイッチング電源回路を説明する図である。
この実施形態1のスイッチング電源回路は、想定時間以内に出力電圧が目標電圧付近まで立ち上がらなかった場合に、外部への警告やフェイルセーフ動作を可能にするエラーフラグを生成するようにしたものである。
図1に示す実施形態1のPWM降圧型スイッチング電源回路(以下、単にスイッチング電源回路ともいう。)100は、外部電源ライン124と接地ライン125bとの間に直列に接続されたPchトランジスタ123およびダイオード129と、該Pchトランジスタ123およびダイオード129の接続ノード130と出力ノード125aとの間に接続されたコイル126とを有しており、一対の出力端子としての出力ノード125a及び接地ライン(GND)125bの間には負荷127が接続される。また、該スイッチング電源回路100は、出力ノード125aと接地ライン125bとの間に直列に接続された2つの抵抗131および132と、該直列接続の2つの抵抗に並列に接続されたコンデンサ133とを有しており、該コンデンサ133は、上記コイル126から供給される電流により充電され、その両端に、外部電源の電圧を降圧した電源電圧(以下、出力電圧ともいう。)Voが発生するものであり、この出力電圧Voが、該出力ノード125aと接地ノード125bとの間に接続された負荷127に供給される。
ここで、Pchトランジスタ123は、外部電源ライン124と接続ライン125bとの間に接続され、上記コイル126を介してコンデンサ133に電流を供給するドライバ(以下Pchドライバという。)である。また、上記ダイオード129のカソードは上記接続ノード130に接続され、そのアノードは上記接地ライン125bに接続され、上記ダイオード129は、上記Pchドライバ123がオフしたときに、該コイル126により接地ライン125bから電流をコンデンサ133に流す電流経路を形成している。
さらに上記スイッチング電源回路100は、基準電圧Vrefを出力する直流電源104と、基準電圧Vrefと、上記出力電圧Voを上記2つの抵抗131および132で分割して得られるモニタ電圧FBとの差電圧を増幅して、該差電圧の変化に応じて変化する誤差信号電圧Eoを出力するエラーアンプ105と、該誤差信号電圧Eoとランプ波形電圧RAMPとを比較し、その誤差電圧をデューティーパルス信号C2に変換して出力するPWMコンパレータ108と、該モニタ電圧FBと上記エラーアンプ105の出力Eoとの位相補償により、該エラーアンプ105の出力の過度な変動を抑える位相補償器107とを有している。
ここで、上記誤差信号電圧Eoは、このスイッチング電源回路100の出力電圧Voが目標電圧に近づくに従って、そのレベルがハイレベル側からローレベル側に変化する電圧である。また、デューティーパルス信号C2は、上記ランプ波形電圧RAMPが誤差信号電圧Eoを超えている期間でハイレベルとなり、上記ランプ波形電圧RAMPが誤差信号電圧Eoを超えない期間でローレベルとなる信号であり、その周期はランプ波形電圧RAMPの周期と同一である。
また、このスイッチング電源回路100は、図9に示す従来のスイッチング電源回路700におけるソフトスタート回路700aと同一の回路構成を有するソフトスタート回路100aと、該スイッチング電源回路700におけるPWMロジック回路719と同一の回路構成を有するPWMロジック回路119と、該PWMロジック回路119にクロックCk3を供給する発振器120と、該PWMロジック回路119の出力を受け、上記Pchドライバ123に駆動電流を供給するバッファ112とを有している。なお、この発振器120は、上記クロックCk3の他に、第1および第2のクロック信号Ck1およびCk2を出力する構成となっている。ここで、クロック信号Ck1とCk2とは、ハイ/ローのデューティ、つまり1クロック周期内でのハイレベルの期間とローレベルの期間との比率が異なるクロック信号であり、それぞれ上記ランプ波形電圧RAMPの周期と同じ周期を有し、かつそれぞれの立下りタイミングは該ランプ波形電圧RAMPの立下りタイミングに同期している。
詳述すると、上記ソフトスタート回路100aは、定電流源102と、該定電流源102からの電流IBにより充電されるコンデンサ101と、該コンデンサ101の充電による充電電圧SCと上記ランプ波形電圧RAMPとを比較し、その誤差電圧を第1のデューティーパルス信号C1に変換して出力するソフトスタートコンパレータ111とを有している。また、PWMロジック回路119は、ソフトスタート回路100aの出力である第1のデューティーパルス信号C1とPWMコンパレータ108の出力である第2のデューティパルス信号C2とを入力とする2入力OR回路117と、その出力に基づいて上記Pchドライバ123を駆動するPWMラッチ回路118とから構成されている。該PWMラッチ回路118は、具体的にはRSフリップフロップ回路であり、そのS入力には上記OR回路117の出力が入力され、そのR入力には上記発振器120からのクロック信号Ck3が入力され、そのQ出力からはラッチ出力が上記バッファ122に出力されるようになっている。
さらに、本実施形態1のスイッチング電源回路100は、PWMコンパレータ108の出力C2を反転するインバータ114と、該インバータ114の出力に基づいて該PWMコンパレータ108の出力C2をモニタするステータスラッチ回路113と、ソフトスタートコンパレータ111の出力C1に基づいて、該ステータスラッチ回路113にモニタ結果を出力させる判定タイミングを出力する判定タイミングラッチ回路128とを有している。
ここで、これらのラッチ回路113および128は、本スイッチング電源回路のステータス判定部を構成しており、これらの回路について詳しく説明する。
該判定タイミング回路128は、データ入力(D入力)、ラッチ出力(Q出力)、およびクロック入力(ck入力)を有するフリップフロップ回路からなり、該D入力にはソフトスタートコンパレータ111の出力C1が入力され、ck入力に入力される発振器120からの第1のクロック信号Ck1の立ち上がりで、該D入力に入力されるソフトスタートコンパレータ111の出力Ck1をラッチしてQ出力に出力するものである。
また、該ステータスラッチ回路113は、データ入力(D入力)、クロック入力(ck入力)、リセット入力(R入力)、およびラッチ出力(Q出力)を有するフリップフロップ回路からなり、そのD入力には上記インバータ114の出力が入力され、ck入力には上記発振器120からの第2のクロック信号Ck2が入力され、R入力には、上記判定タイミングラッチ回路128の出力信号であるCheck信号が入力されるようになっている。
ここで、上記ステータスラッチ回路113は、入力されるクロック信号Ck2の立上りタイミングで、D入力のデータをラッチするものであり、R入力に入力されるCheck信号がハイレベルであるときは、リセット状態を維持し、つまり、D入力のデータのレベルに拘わらず、Q出力をローレベルに固定し、つまりエラーフラグEFは出力せず、一方、R入力に入力されるCheck信号がローレベルであるときは、D入力のデータを、クロック信号Ck2の立上りタイミングでラッチし、Q出力のレベルをハイレベルにする、つまりエラーフラグを出力するものである。なお、上記ラッチ回路113および128はそれぞれ、クロック信号Ck1およびCk2の立上りタイミングでD入力のデータを取り込むものに限定されるものではなく、これらのラッチ回路113および128は、立下りタイミングで、D入力のデータを取り込むものでもよい。
従って、各クロック信号のレベルがローレベルである期間(ロー期間)が、それぞれのラッチ回路を含む信号伝達経路での設定デューティ時間となる。
次に作用効果について説明する。
このスイッチング電源回路100は、Pchドライバ123によってオン/オフデューティを制御して入力電圧Vinを降圧し、出力電圧Voを出力するもの、いわゆるPWM降圧スイッチングレギュレータであり、その起動後の動作、つまり出力電圧Voが目標電圧に達した後の動作は、従来のスイッチング電源回路500あるいは700と同一である。
すなわち、起動が完了した後は、このスイッチング電源回路100では、出力電圧Voが目標電圧になるように、上記外部電源ライン124と上記コイル126との間に接続されたPchドライバ123のオンデューティが制御される。
この時、エラーアンプ105は、出力電圧Voを、抵抗131および132で分割して得られるモニタ電圧FBと基準電圧Vrefとの差電圧を増幅し、スイッチング電源回路100の出力電圧Voが目標電圧に達していないときはハイ側に、該出力電圧Voが十分な電圧と判断したときは、つまり、該出力電圧Voが目標電圧に対する許容範囲内に達していると判断したとき、ロー側にそのレベルが変化する誤差信号電圧Eoを出力する。このように、該誤差信号電圧Eoのレベルは、モニタ電圧FBと基準電圧Vrefとの差電圧が小さいほど、ローレベルに近いレベルとなる。
このエラーアンプ105の誤差信号電圧Eoとランプ波形信号RAMPとは、後段のPWMコンパレータ108にて比較され、該比較により得られた誤差電圧は、デューティパルス信号C2に変換されて出力される。このパルス信号C2は、OR回路117を介して後段のPWMラッチ回路118に入力されると、PWMラッチ回路118は、該パルス信号C2のハイレベルの期間には、負荷127に供給される電力が十分であると判断し、後段のPchドライバ123をオフさせる。このPWMラッチ回路118の出力は、該発振器120からのクロックの1周期(1/発振周波数)の間、出力レベルを保持し、該発振器120から入力されるリセットパルスCk3で、一旦リセットされる。この時、PWMコンパレータ108の出力C2がローレベルであれば、またPchドライバ123はオンし、デューティパルス信号C2がハイレベルとなるまで電力を供給する。
このように、本実施形態1のスイッチング電源回路においても、Pchドライバ123のオン/オフデューティを制御して入力電圧Vinを降圧し、出力電圧Voを目標電圧になるよう制御するPWM降圧スイッチングレギュレータが構成されているので、従来の技術で説明したとおり、起動時は、出力電圧Voが放電されていることから、エラーアンプ105の出力Eoはハイ側に張り付き、これによりPWMコンパレータ108の出力C1はローレベルに保持され、つまりオンデューティ最大状態となっている。この時、ソフトスタートコンパレータ111では、逆に、負側入力のレベルが、ローレベルからゆっくりと定電流源102からのコンデンサ101への充電電流によって上昇することから、該コンパレータ111は、ハイレベル、つまりPchドライバのオンデューティ最小とするレベルから、該Pchドライバの駆動を開始するような信号を出力する。
PWMロジック回路119の入力段は、OR回路117となっており、PWMコンパレータ108、およびソフトスタートコンパレータ111のいずれかが、ハイレベル信号、つまりPchドライバ123のオフ信号を出力した場合、そのステータスが優先される。このことにより、起動時はソフトスタート経路によるデューティ制御が優先され、フルデューティ駆動を防止し、起動の安定性を図っている。
このソフトスタートコンパレータ111によってデューティが開放されていくソフトスタート開放時間は、接続されているコンデンサ101の容量値SCとその充電電流IBによって決まるが、このソフトスタート開放時間と、電源回路の出力電圧Voが目標電圧に到達するまでの時間との間に相関はない。このため、ソフトスタート開放時間は、出力電圧Voが目標電圧付近(目標電圧に対する許容範囲内)まで達するのに要する起動時間に対し十分な余裕を確保する必要がある。
しかしながら、ソフトスタート開放時間を、起動時間に対して十分な余裕を確保したものとできないシステムや、起動時に出力端子に接続されている負荷127の電流が変化するアプリケーションでは、設定しているソフトスタート開放時間以内に起動を完了させることが困難となる場合がある。
この場合、Pchドライバのデューティ制限がかからない状態が発生し、その結果、電源回路の起動時に負荷に対して大電流が流れる状態が続き、起動の安定性が損なわれる。
本発明の実施形態1による電源回路100では、このような課題に対し、PWMコンパレータ108の出力をモニタするステータスラッチ回路113を搭載し、判定タイミングラッチ回路128が発生するソフトスタート期間(ソフトスタート開放時間)の終了間際のタイミングで、PWMコンパレータ108の出力に基づいて、出力電圧が目標電圧付近に達しているかを判定することによりこの問題を回避している。
すなわち、この2つのラッチ回路113および128は、共に発振器120からのクロック信号Ck1およびCk2を用いて動作する。この2つのクロック信号は、上述のとおり、ハイ/ローデューティが異なり、立上りタイミングでそれぞれのラッチ回路はデータを取り込む。従って、それぞれのクロック信号のロー期間がそれぞれの経路の設定デューティ時間となる。
この設定したデューティタイミングが閾値となっており、判定タイミングラッチ回路128では、設定タイミング後にソフトスタートコンパレータ111の出力C1がローになる時、つまり閾値以降にPchドライバのオフ信号が出力された時(図2(a)および(b)のB点参照)、ステータスラッチ113のリセットラインを開放し、PWMコンパレータ108の出力信号の受付を開始する。このステータスラッチ113はクロック信号Ck2によって設定された閾値以降にPWMコンパレータ108の出力C2がローであるとき時(閾値以前にPchドライバのオフ信号が出力された時)に、エラーフラグ112を出力する。
図2は、本実施形態1のスイッチング電源回路100の主要回路からの出力信号の変化を示すタイミングチャートであり、図2(a)は正常起動シーケンスを示し、図2(b)は異常起動シーケンスを示している。
図2中、コンデンサ101の両端に発生する充電電圧SCは、その電圧レベルがローレベルからハイレベルに徐々に変化する電圧である。コンパレータ111の出力信号であるデューティーパルス信号C1は、上記ランプ波形電圧RAMPが上記充電電圧SCを超えている期間にはハイレベルとなり、上記ランプ波形電圧RAMPが誤差信号電圧Eoに達していない期間ではローレベルとなる信号である。
また、エラーアンプ105が出力する誤差信号電圧Eoは、スイッチング電源回路100の出力電圧Voが目標電圧に近づくに従って、その電圧レベルがハイレベルからローレベルに徐々に変化する電圧である。コンパレータ108の出力信号であるデューティーパルス信号C2は、上記ランプ波形電圧RAMPが誤差信号電圧Eoを超えている状態ではハイレベルとなり、上記ランプ波形電圧RAMPが誤差信号電圧Eoに達していない状態ではローレベルとなる信号である。また、バッファ122からPchドライバ123に供給される駆動信号Buffは、上記ラッチ回路118のQ出力と同期して変化するものである。
図2(a)に示す正常起動シーケンスでは、ステータスラッチ回路113の起動ポイントであるB点前に、ステータスラッチ回路113のデータ取り込みタイミング(クロック信号Ck2の立上りタイミング)でPWMコンパレータ108の出力C2がハイレベルとなっている点Aがあるため、エラーフラグ信号EFは、ローレベルのままとなっている。
逆に、図2(b)に示す異常起動シーケンスでは、ステータスラッチ回路113のデータ取り込みタイミングでPWMコンパレータ108の出力C2がハイレベルとなっているA点は、ステータスラッチ回路113の起動ポイントであるB点以降にある、言い換えると、A点はB点以前にはないので、観測点B点の直後にクロック信号Ck2が立ち上がるタイミングにて、エラーフラグ信号EFがハイレベルとなる。
例えば、第1のクロック信号Ck1のローデューティが70%で、第2のクロック信号Ck2のローデューティが80%とした場合は、ソフトスタートコンパレータ111の経路で制御されているPchドライバ123のオンデューティが70%以上まで増大したとき、PWMコンパレータ108、つまり出力電圧Voをモニタしている経路でのPchドライバ123のオンデューティが80%以下まで低下していなければ、エラーフラグEFがハイレベルとなるということである。
このように、第1および第2のクロック信号Ck1およびCk2のローデューティを設定することにより、ソフトスタート開放時間内の任意のポイントで、エラーアンプ経路の制御状態を観測でき、この観測結果を出力することによって、出力端子128に接続されている負荷127の破損や、周辺素子の劣化、破損などによって規定の起動シーケンスをトレースできなかったことを、マイコン等の制御チップにフィードバックすることができ、その後に発生しうる不具合を未然に防止するフェールセーフ機能として使用することができる。
このように、本実施形態1によるスイッチング電源回路100では、出力電圧Voとその目標電圧とを比較して誤差信号電圧Eoを出力するPWMコンパレータ108の出力(ステータス)をモニタするステータスラッチ回路113を備え、判定タイミングラッチ回路128が発生するソフトスタート期間の終了間際のタイミングで、PWMコンパレータ108の出力信号C2から、出力電圧Voが目標電圧に対する許容範囲内まで立ち上がっているかを判定するようにし、この判定の結果、出力電圧が上記許容範囲内まで立ち上がっていないとき、エラーフラグ信号がハイレベルとなる、つまりエラーフラグを出力するようにしたので、ソフトスタート回路によるデューティ開放時間以内に出力電圧の起動が完了しなかったことによって起動時の安定性が損なわれるのを回避することが可能となる。
また、本実施形態1では、起動時にハイ側に張り付いているエラーアンプ出力が、ソフトスタート開放期間内にデューティ制御可能となるランプ波形振幅の範囲内まで降下しているか否かを、PWMコンパレータの出力に基づいて確認するようにしているので、エラーアンプ出力を観測する観測回路を別途設ける必要はなく、追加回路を最小限に留めることができる。
さらに、PWMコンパレータ108の出力であるデューティパルス信号C2を取り込むタイミングを、Pchドライバ123の駆動周期と一致させることにより、エラーアンプによるデューティ制御のための誤差信号電圧Eoがランプ波形電圧RAMPの振幅範囲内のいずれのレベルまで達しているかをランプ波形電圧の1周期の波形毎に確認することができ、その結果、ソフトスタート開始期間内の判定時点で、ランプ波形電圧の振幅範囲内に誤差信号電圧Eoが含まれていないときには、該判定時点の直後のクロック信号Ck2の立上りタイミングで直ちにエラーフラグを出力することができる。
さらに、このPWMコンパレータの出力であるデューティパルス信号C2に基づいて、フィールドバック制御によるオンデューティを、ソフトスタート開放時間内に観測するので、出力電圧の立上り想定時間の範囲以内に電源回路の起動が完了するか否か、言い換えると、ソフトスタート開放時間の経過後にフルデューティ駆動にならないか否かを監視することができ、その結果、ソフトスタート時間の延長、もしくは外部システムへの警告出力等、起動時の不安定性が生じる問題を未然に回避することができる。
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2によるスイッチング電源回路を説明する図である。
この実施形態2のスイッチング電源回路200は、実施の形態1のスイッチング電源回路100におけるソフトスタート回路100aに代えて、ステータスラッチ回路113からのエラーフラグ信号EFに基づいて充電電流を調整するソフトスタート回路200aを備えたものである。なお、この実施形態2のスイッチング電源回路200のソフトスタート回路以外の構成は実施形態1のものと同一であるので、以下ソフトスタート回路200aについて説明する。
すなわち、ソフトスタート回路200aは、エラーフラグEFに基づいて、出力する電流IBを調整する定電流源220と、該定電流源220からの電流IBにより充電されるコンデンサ101と、該コンデンサの充電により発生する充電電圧SCと上記ランプ波形電圧RAMPとを比較し、その誤差電圧をデューティーパルス信号C1に変換して出力するソフトスタートコンパレータ111とを有している。
このソフトスタート回路200aは、PWMコンパレータ108の出力が、ステータスラッチ回路113を介してソフトスタート回路200aの定電流源220へフィードバックされる構成となっている。
図4(a)は、上記電源回路220の具体的な回路構成を示す回路図である。
この電源回路220は、一端が外部電源ライン124に接続され、他端が一定の負荷(図示せず)を介して接地側に接続された第1のPchトランジスタ221と、それぞれ一端が外部電源ライン124に接続された第2及び第3のPchトランジスタ222及び223とを有しており、これらのトランジスタのゲートは、第1のPchトランジスタの他端に接続されている。また、該電源回路220は、上記第2のPchトランジスタ222の他端と上記コンデンサ101との間に接続された第1のスイッチ224と、上記第3のPchトランジスタ223の他端と上記コンデンサ101との間に接続された第2のスイッチ225と、上記エラーフラグ信号EFに基づいて上記スイッチ224及び225を開閉制御するスイッチ制御回路226とを有している。
ここで、上記3つのPchトランジスタ221〜223の駆動能力は同一であり、該第2及び第3のPchトランジスタ222及び223は、それぞれ第1のPchトランジスタ221とともにカレントミラー回路を構成しており、そのオン状態では、第1のPchトランジスタと同様に電流Iが流れるようになっている。また、スイッチ制御回路226は、エラーフラグ信号EFがローレベルのときは、上記2つのスイッチ224及び225を共にオンし、上記コンデンサ101に供給される定電流IBは2Iとなり、エラーフラグ信号EFがハイレベルのときは、上記第1及び第2のスイッチの一方をオフし、上記コンデンサ101に供給される定電流IBはIとなるよう構成されている。
次に動作について説明する。
この実施形態2のスイッチング電源回路200では、起動時以外の動作は実施形態1のものと同一であり、以下起動時の動作について説明する。
起動時には、ソフトスタート回路200aでは、コンデンサ101は、その放電した状態から定電流源202によって充電され、これによりコンデンサ101の電位が上昇する。第1のクロック信号Ck1の立上りタイミング、つまりローデューティによって決定しているソフトスタート開放期間における中間観測ポイントB(図5(a)および(b)参照)にて、ステータスラッチ回路113のリセットが解除され、PWMコンパレータ108の出力信号C2が、クロック信号Ck2の立上りタイミングでステータスラッチ回路113に入力される。すると、ステータスラッチ回路113では、この時点でのPWMコンパレータ108の出力信号C2のデューティに応じてエラーフラグ信号EFを出力する。
上記実施の形態1では、異常起動時にはステータスラッチ回路113からエラーフラグ信号EFを外部へ出力していたが、本実施形態2では、このエラーフラグ信号EFは定電流源220に供給され、定電流源220では、このエラーフラグ信号EFに基づいてソフトスタート回路200におけるコンデンサ101への充電電流IBを減少させる。これによりソフトスタート回路200aによるデューティ開放速度が緩和され、実質的にソフトスタート時間を延長することができる。
図5は、この動作を説明するタイミングチャートを示す。
図5(a)は、正常起動時のシーケンスを示し、図5(b)は、異常起動時のシーケンスを示している。
図1に示す実施形態1と同様、ソフトスタート回路200aでは、充電電流IBによりコンデンサ101が充電され、該コンデンサ101の充電電圧SCが増大するにつれて、ソフトスタートコンパレータ111の比較出力C1のローデューティが増大していく。そして、比較出力C1のローデューティが上記ソフトスタート中間観測ポイントBに相当する値に達すると、ステータスラッチ回路113のR入力は、判定タイミングラッチ回路128のQ出力からのCheck信号により開放される。
正常動作時には、ステータスラッチ回路113のR入力が開放された時点Bで、すでに、PWMコンパレータ108の出力C2のローデューティ(つまりPchドライバのオンデューティ)は、クロック信号Ck2により決まる値より小さくなっているので、ステータスラッチ回路113のQ出力はローレベルを維持し、エラーフラグ信号EFのハイレベルがソフトスタート回路200aに出力されることはない。なお、この場合、ステータスラッチ回路113の起動ポイントであるB点前に、ステータスラッチ回路113のデータ取り込みタイミング(クロック信号Ck2の立上りタイミング)でPWMコンパレータ108の出力C2がハイレベルとなっている点Aが位置している。
一方、異常起動時には、ステータスラッチ回路113のR入力が開放された時点Bでは、まだ、PWMコンパレータ108の出力C2のローデューティ(つまりPchドライバのオンデューティ)は、クロック信号Ck2により決まる値より小さくなっていないので、ステータスラッチ回路113のQ出力からのエラーフラグ信号EFがローレベルからハイレベルに変化する。なお、この場合、ステータスラッチ回路113の起動ポイントであるB点の後に、ステータスラッチ回路113のデータ取り込みタイミング(クロック信号Ck2の立上りタイミング)でPWMコンパレータ108の出力C2がハイレベルとなっている点(図示せず)が位置している。
定電流電源202は、このエラーフラグ信号EFのローレベルからハイレベルへのレベル変化に応答して、レベル変化が生じたポイントBから充電電流IBを低減する。
つまり、定電流源220では、スイッチ制御回路226が、エラーフラグ信号EFのローレベルからハイレベルの変化に応じて、上記第1及び第2のスイッチ224及び225の一方をオフし、上記コンデンサ101に供給される定電流IBを、2IからIに変化させる。これにより、コンデンサ101の充電速度は低下し、充電電圧の上昇率は図5(b)の領域R3に示すように低下し、実質的にソフトスタート開放期間が延長されることとなる。
このため、本来であれば、コンデンサ101の電位波形(充電電圧)SCは破線に沿って上昇していくところ、充電電流IBの減少のため、充電電流BIASの変更以降、そのコンデンサの充電電圧の上昇率が実線で示すように下がる。これによってデューティ開放速度が低減される。
このように本実施形態2では、上記実施形態1のスイッチング電源回路の構成に加えて、エラーフラグ信号EFに基づいて、ソフトスタート回路200aにおける定電流源220の出力する電流量IBを変化させるようにしたので、上記実施形態1の効果に加えて、ソフトスタート開放期間の終了間際になっても、電源回路200の出力電圧Voが目標電圧付近まで立ち上がっていないときには、ソフトスタート開放期間を延長することができる効果がある。
なお、上記実施形態2では、ソフトスタート回路の定電流源は、カレントミラー回路を構成する3つのPchトランジスタを備え、そのうちの、コンデンサへ充電電流を供給する2つのPchトランジスタ224および225をエラーフラグ信号に応じて切り替えるようにしたものを示しているが、この電源回路は、図4(b)に示すように、上記Pchトランジスタに代えて2つの抵抗を用いたものでもよい。
すなわち、図4(b)に示す電源回路230は、一端が外部電源ライン124に接続された第1及び第2の2つの抵抗231及び232と、第1の抵抗231の他端と上記コンデンサ101との間に接続された第1のスイッチ233と、第2の抵抗232の他端と上記コンデンサ101との間に接続された第2のスイッチ234と、上記エラーフラグ信号EFに基づいて上記スイッチ224及び225を開閉制御するスイッチ制御回路235とを有している。
ここで、上記2つの抵抗はその抵抗値が等しいものとしている。該スイッチ制御回路235は、エラーフラグ信号がローレベルのときは、上記2つのスイッチ233及び234を共にオンし、上記コンデンサ101に供給される定電流IBは2Iとなり、エラーフラグ信号がハイレベルのときは、上記第1及び第2のスイッチ233及び234の一方をオフし、上記コンデンサ101に供給される定電流IBはIとなるよう構成されている。
また、図4(b)に示す電源回路230では、定電流源からの電流の供給経路に位置する抵抗の抵抗値を変えて定電流量を調整しているが、コンデンサの充電電流を調整する回路構成は、上記のものに限るものではなく、例えば、コンデンサ101を容量値可変のものとし、エラーフラグ信号EFのレベルに応じてその容量値を変更するものでもよい。
さらに、上記図4(a)及び図4(b)のように、このソフトスタート回路における電源を定電流源方式、つまり定電流源とコンデンサとにより充電速度が決まるものから、CR充電回路、つまり該定電流の代わりに抵抗を使用ものとした時は、上記のようにコンデンサの容量値C,あるいは抵抗の抵抗値Rのいずれかを変化させるのではなく、その両方をこのエラーフラグ信号に応じて変化させるようにしてもよく、この場合も上記と同様にソフトスタート回路によるデューティ開放速度を緩和することができる。
またさらに、上述したソフトスタート回路における電源の構成例では、エラーフラグ信号に応じて、コンデンサ101の充電電流を低減するものを示したが、場合によっては、定電流源からの充電電流を停止するようにしてもよい。例えば、図4(a)及び図4(b)に示す回路構成の定電流源220及び230では、エラーフラグ信号がハイレベルとなったとき、2つのスイッチをともに開状態とするようにしてもよい。
また、上述したソフトスタート回路における電源の構成例では、エラーフラグ信号EFに応じて、定電流源からの電流量を減少させる、あるいは停止するといった調整を行うものを示しているが、この定電流源からの電流量の調整は3段階以上に分けて段階的に行うようにしてもよい。
例えば、実施形態2のスイッチング電源回路において、PWMコンパレータの出力をモニタするラッチ回路113(図2参照)と、ソフトスタートコンパレータの出力に基づいて判定タイミングを出力する判定タイミングラッチ回路128とをそれぞれ複数設け、出力電圧が目標電圧付近、つまり目標電圧に対する許容範囲内まで立ち上がっているかを、複数ポイントで観測するようにしてもよい。
この場合、各観測点で、出力電圧が目標電圧付近まで立ち上がっていないと判定されるたびに、コンデンサに供給される充電電流を低減することによりソフトスタート開放期間を延長することとなるが、起動時点から時間的に遠い観測点ほど、充電電流を小さな値に変更するのが望ましい。例えば、時間軸上で起動時からの経過時間の小さい順に並ぶ4つの観測点B1〜B4で、それぞれ出力電圧の立上りレベルを判定する場合、観測点B1で、出力電圧Voの立上りが不十分と判定されたときは、充電電流IBをIB/2に制限し、さらに観測点B2〜B4でそれぞれ、出力電圧Voの立上りが不十分と判定されたときは、充電電流をIB/4、IB/8、IB/16といった値に制限する。
この場合、実質的には、ソフトスタート時間を、出力電圧の立上りが完了するまで延長することが可能となり、ソフトスタート回路停止時に発生しうる起動安定性低下をほぼ回避することができる。
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3によるスイッチング電源回路を説明する図である。
この実施形態3のスイッチング電源回路300は、実施の形態1のスイッチング電源回路100におけるソフトスタート回路100aに代えて、ステータスラッチ回路113からのエラーフラグ信号EFが、出力電圧が目標電圧付近まで達していないことを示すときは、ソフトスタート回路によるデューティ制御を最初から行う、つまり、ソフトスタート開放期間を再設定するようにしたソフトスタート回路300aを備えたものである。なお、この実施形態3のスイッチング電源回路300のソフトスタート回路以外の構成は実施形態1のものと同一であるので、以下ソフトスタート回路300aについて説明する。
すなわち、ソフトスタート回路300aは、実施形態1のソフトスタート回路100aに加えて、コンデンサ101と並列に接続されたスイッチ回路301を備え、エラーフラグ信号EFが、出力電圧が目標電圧付近まで達していないことを示すとき、該スイッチ回路301を、該コンデンサ101が放電するよう一時的に導通するように構成したものである。
このような構成の実施形態3のスイッチング電源回路300では、実施形態1のスイッチング電源回路100の構成に加えて、エラーフラグ信号EFが、出力電圧が目標電圧付近まで達していないことを示すとき、該スイッチ回路301を、該コンデンサ101が放電するよう一時的にオンするようにしたので、出力電圧が目標ステータス(目標電圧付近)に到達していないときには、起動シーケンスを一旦停止し、ソフトスタートのデューティ制御を始めから行うといった再起動シーケンスにより、ソフトスタート回路停止時に発生し得る起動安定性低下を未然に防止することができる。
なお、上記実施形態1〜3では、特に説明しなかったが、上記実施形態1〜3のスイッチング電源回路100,200および300の少なくともいずれかは、例えば、ファクシミリ装置や複写機などのOA機器、オーディオレコーダやビデオレコーダといったAV機器、さらにはデスクトップ型パーソナルコンピュータやノート型パーソナルコンピュータなどの電力消費量の大きい電子機器の電源装置として用いられるものである。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、上述の実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。